1:蒸気タービン、2:タービンケーシング、3:タービンロータ、4:タービン動翼、5:静翼ダイヤフラム、6:動翼植込み部、7:欠陥検査装置、8:結果出力、31:ロータシャフト、32:ロータディスク、33:ロータ溝、41:動翼ブレード、42:翼溝、51:リング、52:静翼ブレード、53:ウエブ、61:き裂、68:固定溝、69:開口部、71、71a:渦電流プローブ、72:ファイバーロッド、72a:アクセスロッド、73:窪み、74:ウエブ孔、75:空隙、76:ケーシング孔、77、77a:ガイドローラ、78:コイル素子、81:インジケーション、82:インジケーション、91:コイルスプリング、92:ケーブル、93:スライディングパッド、94:空力翼、107:テーパ面、71a:クッション、150:移動装置、200:制御装置、300:データ分析装置。
本発明の第1実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置及びタービン動翼の欠陥検出方法について図1乃至図5を用いて説明する。
図1(a)は本発明の第1実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置を設置した蒸気タービンを示す蒸気タービンの部分断面図である。
図1(a)において、蒸気タービン1は、タービンの外周を覆うタービンケーシング2の内部に、タービンロータ3と、このタービンロータ3の外周に環状に配列した動翼ブレード41を有する複数のタービン動翼4と、この環状に配列した複数のタービン動翼4の上流側に近接して配置され、環状に配列した複数の静翼ブレード52を有する静翼ダイヤフラム5とを備えて構造されている。
図1(a)には静翼ブレード52とタービン動翼4とから成るタービン段落は説明の都合上、1段落しか図示していないが、前記タービン段落はタービンロータ3の軸方向に沿って複数段落が配設されているものである。
タービンロータ3は、タービンの回転軸であるロータシャフト31と、ロータシャフト31の外周に取り付けられている環状のロータディスク32と、複数のタービン動翼4の根元部をロータディスク32の外周に沿って環状に配列して取り付けるために、前記タービン動翼4の根元部に形成した翼溝42と嵌め合わせる、ロータディスク32の外周に形成したロータ溝33とから構成されている(以下、方向の記述はタービンの回転軸を基準として、軸方向、径方向、周方向として表す)。
ロータディスク32に環状に多数配列したタービン動翼4は、作動流体である高圧の蒸気流を受け、高圧の蒸気流をタービンの回転エネルギーに変換させる動翼ブレード41と、タービンロータ3に形成したロータ溝33と嵌め合わせられるタービン動翼4の植え込み部に形成された翼溝42とからなる。
前記ロータディスク32に形成したロータ溝33とタービン動翼4の根元部に形成された翼溝42とが嵌め合わせられる連結部位はタービン動翼4の動翼植込み部6と称する。
静翼ダイヤフラム5は、タービンロータ3の軸方向に沿って離間して複数設置された各タービン動翼4の間にそれぞれ配設されている。
静翼ダイヤフラム5は、静翼ダイヤフラム5の外周側でタービンケーシング2に固定されるリング51と、タービン動翼4の動翼ブレード41の上流側、又は下流側に隣接して位置し、該動翼ブレード41を通過した蒸気の流れを整える環状に配列された複数の静翼ブレード52と、ローラ軸方向でタービン動翼4の動翼植込み部6及びロータディスク32に隣接し、静翼ダイヤフラム5の内周側でロータシャフト31に近接して配設される環状のウエブ53とから構成されており、これらの部材が溶接で相互に接合されている。
渦電流プローブ71がタービン翼4の動翼植込み部6の欠陥状況を検出できる低速で蒸気タービンのタービン動翼4を回転させた状態において、本発明の第1実施例であるタービン動翼の動翼植込み部6に生じる欠陥を検出するタービン動翼の欠陥検出装置7は、タービン動翼4の動翼植込み部6に面した位置の静翼ダイヤフラム5の内周側に設置された環状のウエブ53に形成した窪み73の内部で、タービン翼4の動翼植込み部6に生じる欠陥を検出する渦電流プローブ71がロータ軸方向に沿って移動して該タービン翼4の動翼植込み部6の表面に対して離接可能となるように取り付けられている。
タービン動翼の欠陥検出装置7は、図1(b)に示したように静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成した窪み73内にタービン動翼4の動翼植込み部6に面して設置され、ロータ軸方向の前後に移動して前記タービン翼4の動翼植込み部6の表面に対して離接可能な渦電流プローブ71と、前記渦電流プローブ71にその一端が接続され、静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成した窪み73の底部に設けたウェブ孔74、静翼ダイヤフラム5に設けられた静翼ブレード52内部の空隙75、リング51及びタービンケーシング2に形成したケーシング孔76を順次貫通して前後に移動可能に配設されており、低速でタービン動翼4を回転させた状態で前記渦電流プローブ71によって測定したタービン動翼4の動翼植込み部6における欠陥状況の検出信号をタービンケーシング2の外部に伝達する信号線を兼ねるファイバーロッド72と、前記ファイバーロッド72を前後に移動させるタービンケーシング2の外部に設置された移動装置150と、ファイバーロッド72を通じて伝達された渦電流プローブ71で測定した検出信号に基づいて演算処理してタービン翼4の動翼植込み部6に生じる欠陥の検査結果出力8のインジケーションを表示するタービンケーシング2の外部に設置されたデータ分析装置300とから構成されている。
尚、前記ファイバーロッド72はタービンケーシング2の外部から手動で操作して前後に移動させてもよく、その場合にはファイバーロッド72を移動する移動装置150と、移動装置150を駆動する制御装置200が不要となる。
前記電流プローブ71は、タービン翼4の動翼植込み部6の表面に渦電流を流し、動翼植込み部6に発生する電磁誘導の変化を検出するものであり、データ分析装置300では前記電流プローブ71で検出した電磁誘導の変化に基づいて演算処理することにより動翼植込み部6に発生した傷の位置と深さを検出するものである。
前記渦電流プローブ71の前面には回転可能なガイドローラ77が取り付けられており、渦電流プローブ71をファイバーロッド72の前後の移動操作によってロータ軸方向の前側に移動させ、タービン動翼4の動翼植込み部6を検査する時に渦電流プローブ71の前面に設けたガイドローラ77がロータ軸回りに回転するタービン動翼4の動翼植込み部6の表面と接触するガイドとして機能するようになっている。
そして前記データ分析装置300では、該渦電流プローブ71で測定したタービン動翼4の動翼植込み部6に発生する電磁誘導の変化の検出信号に基づいて前記タービン動翼4の動翼植込み部6における傷等の欠陥状況を分析して欠陥の位置と深さを表示する。
前記渦電流プローブ71は検査対象となるタービン動翼4の動翼植込み部6に相対する静翼ダイヤフラム5の軸方向両側に各1個ずつ設置されている。
即ち前記渦電流プローブ71は、静翼ダイヤフラム5の下流側に位置するタービン動翼4の動翼植込み部6と、静翼ダイヤフラム5の上流側に位置するタービン動翼4の動翼植込み部6(図示せず)とにそれぞれ相対するように、静翼ダイヤフラム5のウエブ53の軸方向両側に形成された窪み73の内部に1個ずつ収納されている。
前記各渦電流プローブ71から渦電流を流して動翼植込み部6に発生する電磁誘導の変化を検出したタービン動翼4の動翼植込み部6における電磁誘導の変化の検出信号は、静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成された窪み73の底部に設けられたウエブ孔74、静翼ダイヤフラム5に設けられた静翼ブレード52内部の空隙75、リング51及びタービンケーシング2に形成されたケーシング孔76を貫通して配設されたファイバーロッド72を通じてタービンケーシング2の外部に設置されたデータ分析装置300に伝達され、前記タービン動翼4の動翼植込み部6における傷等の欠陥状況を分析して欠陥の位置と深さを表示する。
また前記渦電流プローブ71をタービン動翼4の動翼植込み部6の表面に対して離接可能とするために、静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成された窪み73内で渦電流プローブ71をロータ軸方向の前後に移動させるファイバーロッド72をその配設方向の前後に移動させる移動装置150がタービンケーシング2の外部に設置されている。この移動装置150の駆動は制御装置200からの操作指令によって操作される。
そして前記欠陥検出装置7によってタービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥状況を検査する欠陥検査時には、図1(b)に渦電流プローブ71の部分拡大図に示したように、制御装置200からの操作指令によってタービンケーシング2の外部に設置した移動装置150を駆動させてファイバーロッド72を前方に押込み、このファイバーロッド72の先端に接続された渦電流プローブ71を窪み73の開口面からロータ軸方向の前側に押出してタービン動翼4の動翼植込み部6の表面に当接させ、前記渦電流プローブ71からタービン翼4の動翼植込み部6の表面に渦電流を流し、また動翼植込み部6に発生する電磁誘導の変化を検出することによってタービン動翼4の動翼植込み部6における欠陥状況を検査する。
渦電流プローブ71の前面にはガイドローラ77が取り付けられており、渦電流プローブ71をロータ軸方向の前側に押出してタービン動翼4の動翼植込み部6の表面と渦電流プローブ71のガイドローラ77とが当接した時に、渦電流プローブ71の表面と動翼植込み部6の表面との間に、渦電流プローブ71に最適な0.5〜1.0mmの所望の隙間d1が形成されるようになっている。
前記渦電流プローブ71は、その前面に設けたガイドローラ77がタービン動翼4の動翼植込み部6の表面と当接する構成にしたことによって、タービンロータの回転によりタービン動翼4の動翼植込み部6がロータ軸方向に振動した場合でも、渦電流プローブ71の表面と動翼植込み部6の表面との間は、0.5〜1.0mmの所望の隙間d1を常に維持することが出来るので、前記渦電流プローブ71を用いてタービン動翼4の動翼植込み部6における欠陥発生の有無を精度良く検査することが可能となる。
またタービン動翼4の動翼植込み部6を検査しない時は、図1(c)に示したように、移動装置150を駆動させて、或いは手動操作によってファイバーロッド72を引き込み、このファイバーロッド72に接続された渦電流プローブ71をタービン動翼4の動翼植込み部6の表面から大きく離間させて窪み73の開口面からロータ軸方向の後側に引き込んで窪み73の内部に収納する。
ファイバーロッド72は、ウェブ孔74のL字曲管に対応する部分は屈曲可能なフレキシブル構造であるが、その他の部分は剛体であり、移動装置150の駆動、或いは手動操作による押込み及び引き込みに対して座屈することなく渦電流プローブ71に適切な押付け力及び引き込み力を与えることが出来る。
ファイバーロッド72の内部には、渦電流プローブ71で検出したタービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥状況の検出信号を伝達するケーブル(図示せず)が内蔵されている。
次にタービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥状況を計測するタービン動翼の欠陥検出装置について更に詳細に説明する。
図2(a)は、図1に示した本発明の第1実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置を設置した静翼ダイヤフラムをタービンロータの軸方向から見た概略構造図である。
図2(a)において、タービン動翼の欠陥検出装置の一部を構成する渦電流プローブ71は、検査対象となるタービン動翼4の動翼植込み部6に相対する、静翼ダイヤフラム5の内周側に設置されたウエブ53の軸方向両側の環状領域に1箇所ずつ形成した窪み73内にそれぞれ設けられている。
図2(b)は、図1に示した本発明の第1実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置を構成する渦電流プローブを示す斜視図である。
検査対象となるタービン動翼4の動翼植込み部6に相対する前記渦電流プローブ71の前面には、タービン翼4の動翼植込み部6の表面に渦電流を流す第1のコイル素子と、渦電流を流したことによってタービン翼4の動翼植込み部6の表面で発生した電磁誘導の変化を検出する第2のコイル素子とをそれぞれ備えて構成された各コイル素子78が径方向に2列直列に配設されており、このコイル素子78は渦電流プローブ71の前面のガイドローラ77がタービン動翼4の検査対象の動翼植込み部6に当接した時に、渦電流プローブ71の前面のコイル素子78とタービン動翼4の動翼植込み部6の表面との間に、0.5〜1.0mmの所望の隙間d1を維持した状態でタービン動翼4の動翼植込み部6の検査対象となる範囲を径方向にカバーできる長さに亘って該渦電流プローブ71の前面に配設されている。
渦電流プローブ71の前面に設置された回転可能なガイドローラ77は、このコイル素子78の両側に平行して2個設置されており、渦電流プローブ71の内部に保持された車軸(図示せず)に回転可能に固定されている。
図2(c)は、渦電流プローブ71のガイドローラ77が検査対象のタービン動翼4の動翼植込み部6の表面に当接した状態を示すものであり、タービン動翼4の回転に伴なってこのタービン動翼4の動翼植込み部6が矢印で示したように回転すると、この動翼植込み部6の表面に当接した渦電流プローブ71の前面のガイドローラ77もその車軸のまわりに回転して、タービン動翼4の動翼植込み部6の表面とのスムーズな摺動が確保される。
この結果、渦電流プローブ71の前面に設置されたコイル素子78と検査対象のタービン動翼4の動翼植込み部6との間の間隙は、動翼植込み部6に生じた欠陥検出に必要な隙間d1を常に維持できるので、前記渦電流プローブ71のコイル素子78によってタービン動翼4の動翼植込み部6の表面をスキャンすることが出来る。
図3(a)は、本発明の第1実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置による検査対象となるタービン動翼の動翼植込み部を示すタービン動翼の斜視図である。
図3(a)において、タービン動翼4は、図1を引用して説明したように、タービンロータ3を構成するロータシャフト31の外周に取り付けられている環状のロータディスク32に環状に多数配列された構造であり、前記タービン動翼4の動翼植込み部6においてタービン動翼4の根元部に形成した翼溝42がロータディスク32の外周に形成したロータ溝33と嵌め合わされて、タービン動翼4がタービンロータ3のロータディスク32と連結されている。
図3(b)は、図3(a)に示したタービン動翼の動翼植込み部を拡大して示す部分図である。
図3(b)において、タービン動翼4の動翼植込み部6となるタービン動翼4の根元部に形成した翼溝42は逆クリスマスツリー型の複数の凸部を有するジグザグの溝形状であり、このタービン動翼4の根元部に形成した翼溝42が、ロータディスク32に形成されてタービン動翼4の翼溝42の溝形状に対応した複数の凹部を有するジグザクの溝形状をもつロータ溝33と強固な嵌め合いを形成して相互に連結される。
蒸気タービンを通常運転しているタービン回転時には、タービン動翼4に径方向の遠心力をはじめ、ロータ軸方向および周方向の振動荷重などが作用するが、タービン動翼4の動翼植込み部6の前記した嵌め合い構造によってこれらの荷重を支持するため、タービン動翼4の動翼植込み部6の嵌め合い構造に作用する荷重によって局所的に大きな応力が発生し、き裂61が発生するリスクが高くなる。
例えばタービン動翼4の動翼植込み部6の嵌め合い構造に小さなき裂が発生した場合、発生した小さなき裂を長期間放置しておくと大きなき裂に進展して、やがてタービン動翼4の動翼植込み部6の嵌め合い構造の翼溝42、もしくはロータ溝33に損傷等の欠陥となって現れることになりかねない。
そこで、タービン動翼4の植込み部6に前記欠陥が現れる前にタービン動翼4の動翼植込み部6の嵌め合い構造に発生する小さなき裂を確実に検出する必要性がある。
図3(b)に示すように、タービン動翼4の動翼植込み部6の嵌め合い構造に発生したき裂61は、ロータ軸方向の内部で発生したとしても、ロータ軸方向に優先的に進展する性質のため、タービン動翼4の動翼植込み部6の嵌め合い構造を構成するタービン動翼4の根元部に形成した翼溝42、もしくはロータディスク32の外周に形成したロータ溝33が損傷に至る前の段階で、最初にタービン動翼4の動翼植込み部6の表面にき裂61が現れることになる。
このため、タービン動翼4の動翼植込み部6の表面にき裂61が現れた段階で、タービン翼の欠陥検出装置7に備えられた渦電流プローブ71によるタービン動翼4の動翼植込み部6の表面に生じる表面欠陥の検出が原理的に可能となる。
第1実施例のタービン翼の欠陥検出装置7における渦電流プローブ71においては、図2(b)に示したように、タービン翼4の動翼植込み部6の検査対象の範囲を径方向にカバーした長さに亘って配設されたコイル素子78が渦電流プローブ71の前面に設置されている。
そしてこのコイル素子78が配設された渦電流プローブ71の前面に設置された回転可能なガイドローラ77をタービン翼4の動翼植込み部6の表面に当接した状態で、図3(b)に矢印で示すように、タービン動翼4の動翼植込み部6を回転させる。
そうすると、図3(b)に二点鎖線で示した検査対象となるタービン動翼4の動翼植込み部6の表面の環状領域全体に欠陥検出装置7の渦電流プローブ71によって渦電流を流し、タービン翼4の動翼植込み部6の表面で発生した電磁誘導の変化をこの渦電流プローブ71で検出することで欠陥発生の有無を検査することができる。
図3(c)は、第1実施例のタービン動翼の欠陥検査装置7に備えた渦電流プローブ71によってタービン動翼4の動翼植込み部6を検査した検出信号に基づいてデータ分析装置300で演算処理して判別した欠陥を検査結果出力8として画面に表示したイメージ図である。
前記した渦電流プローブ71は、タービン動翼4の動翼植込み部6の表面から数mmまでの深さにある欠陥のき裂に反応するため、データ分析装置300によって渦電流プローブ71で測定した検出信号に基づいて演算処理して検出したタービン動翼4の動翼植込み部6に発生したき裂61のほか、タービン動翼4の動翼植込み部6の嵌め合い構造を構成するタービン動翼4の根元部に形成した翼溝42、及びロータディスク32に形成されたロータ溝33にそれぞれ対応した検査結果出力8のインジケーション81を画面に表示するが、これらの翼溝42及びロータ溝33の溝の形状は一定の形状であるので、欠陥のき裂61に対応した不定形の形状のインジケーション82を容易に判別することが可能である。
図4は、本発明の第1実施例であるタービン動翼の欠陥検査装置7を用いて火力発電用の蒸気タービンに備えられたタービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥検査を行なう欠陥検査の手順を示したフローである。
蒸気タービンを定格運転中は、3000rpm又は3600rpmで蒸気タービンが回転しており、この蒸気タービンの検査対象となるタービン動翼4の動翼植込み部6が回転する周速は100m/s以上と高速となるため、欠陥検査装置7に備えられた渦電流プローブ71を用いてタービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥検出を行なうことは不可能である。
そこで、火力発電用の蒸気タービンが運転を休止する1日、ないし数日毎の運転休止期にこの欠陥検査を実施する。
タービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥検査は下記の手順に沿って行われる。
まず、手順101にて、蒸気タービンの定格運転を停止させる。
次に、手順102にて、タービン動翼4の欠陥検出装置7を構成する制御装置200の指令信号によって移動装置150を駆動してタービンケーシング2の外部からファイバーロッド72を押込み、丁度、図1(b)に示したように、渦電流プローブ71を静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成された窪み73の開口面からロータ軸方向の前側に押出し、渦電流プローブ71の前面に配列されたコイル素子78の両側に平行に設けられたガイドローラ77をタービン動翼4の動翼植込み部6の表面に当接させる。
次に手順103にて、蒸気タービン1のロータシャフト31を外部電源モータ(図示せず)によって回転させ、蒸気タービン1を低速で回転させる低速運転を実施する。この蒸気タービン1の低速運転は、タービン動翼4の動翼植込み部6の周速が前記渦電流プローブ71によって欠陥検出が可能な10mm/sで蒸気タービン1のロータシャフト31を回転させる。
次に手順104にて、渦電流プローブ71の校正を実施する。これは、タービン翼4の動翼植込み部6の表面に渦電流を発生させ、タービン翼4の動翼植込み部6の表面で発生した電磁誘導の変化を検出するために、前記渦電流プローブ71の前面に備えられたコイル素子78が経時的および測定環境により感度が変化しやすいためである。
タービン動翼の欠陥検出装置を構成する前記渦電流プローブ71の校正には、図5に示したタービン動翼4の動翼植込み部6の表面に形成された校正スリット62を用いて実施する。
図5に校正スリットの一例を示したように、校正スリット62はタービン動翼4の動翼植込み部6の表面の一箇所に、径方向の検査範囲に亘って深さ1mm、幅0.3mmで設けられており、この校正スリット62を使用して渦電流プローブ71上の各コイル素子78がこの校正スリット62を通過する時のインジケーションの出力度合いに応じて、コイル素子78の感度を調節して渦電流プローブ71の校正を行なう。
なお、動翼植込み部6に校正スリット62を設けずに、翼溝42およびロータ溝33を通過する時のインジケーションで代用して渦電流プローブ71を校正してもよい。
次に手順105にて、低速で回転するタービン動翼4の動翼植込み部6の検査対象に対して、渦電流プローブ71の前面に設置したコイル素子78によって欠陥検査スキャンを実施してタービン翼4の動翼植込み部6の表面に渦電流を流し、検査スキャンで得たタービン翼4の動翼植込み部6の表面で発生した電磁誘導の変化の検出データをコイル素子78で取得してデータ分析装置300に伝達する。
次に手順106にて、データ分析装置300による演算処理によって渦電流プローブ71のコイル素子78で取得した電磁誘導の変化の検出データから、スキャン時の渦電流プローブ71のガタツキや周囲環境等によるノイズ成分を除去する。
次に手順107にて、データ分析装置300によってノイズ成分を除去した渦電流プローブ71のコイル素子78で取得した電磁誘導の変化の検出データに基づいて演算処理して検査結果出力8として、図3(c)に示したような欠陥のき裂に対応したインジケーション画面を表示させる。
そして次の手順108にて、データ分析装置300に表示したインジケーション画面の検査結果出力8に基づいて、インジケーション画面にき裂に起因したインジケーション82が認められるか否かを判定する。
この手順108による判定において、き裂に起因したインジケーション82の発生が認められなかった場合には、タービン動翼4の動翼植込み部6に、き裂は未発生と判断して手順111に進み、検査終了して次回の蒸気タービンの定格運転開始まで待機となる。
しかしながら、この手順108による判定において、き裂に起因したインジケーション82の発生が認められた場合には、次の手順109に進んで外部電源モータによる蒸気タービン1の回転を停止させる。その後、蒸気タービン1のタービンケーシング2を開けて、タービン動翼4の動翼植込み部6の詳細検査を実施する。
そして、この手順109によるタービン動翼4の動翼植込み部6の詳細検査の結果によって、次の手順110にて、状況に応じたタービン動翼4の補修、もしくはタービン動翼4の交換を行い、前記した手順111に進んで検査終了し、次回の蒸気タービンの定格運転開始まで待機となる。
以上の説明から明らかなように、本発明の実施例によれば、ロータの回転に伴なってタービン動翼がロータ軸方向に振動する場合でもタービン動翼の植込み部に生じる欠陥を正確に検出すると共に、多大な手数と期間を要するタービンケーシングの開放作業を行なわずに検査対象となるタービン動翼の動翼植込み部に生じる欠陥の検査を行なうことができるタービン動翼の欠陥検出装置及びタービン動翼の欠陥検出方法が実現できる。
次に本発明の第5実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置及びタービン動翼の欠陥検出方法について図9を用いて説明する。
図9(a)は本発明の第5実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置7aを設置した蒸気タービンを示す蒸気タービンの部分断面図である。
また図9(b)乃至図9(d)は、第5実施例のタービン動翼の欠陥検出装置7aの一部を構成する渦電流プローブ71aの構造図である。
図9(a)乃至図9(d)に示した本発明の第5実施例であるタービン動翼の欠陥検出装置7aは、図1乃至図5に示した第1実施例のタービン動翼の欠陥検出装置7と基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ、以下に説明する。
図9(c)に示したように、本発明の第5実施例のタービン動翼の欠陥検査装置7aに備えられた渦電流プローブ71aは、タービンケーシング2に形成したケーシング孔76よりも幅方向の寸法が狭いスリムな形状の渦電流プローブ71aを採用している。
図9(b)及び図9(c)に示したように、前記渦電流プローブ71aは該電流プローブ71aの径方向の上端で渦電流プローブ71aで検出した検出信号を伝達する信号線を内部に備えた剛体のアクセスロッド72aと連結されている。
更に渦電流プローブ71aの前面に設置されているガイドローラ77aは、コイル素子78の径方向の上下の位置に2つずつ配設されており、これらの構造によって渦電流プローブ71aの周方向のスリム化を可能としている。
図9(a)に示した本発明の第5実施例のタービン動翼の欠陥検出装置7aにおいては、図1に示した第1実施例のタービン動翼の欠陥検出装置7における静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成した窪み73及びウエブ孔74が無い代わりに、静翼ダイヤフラム5のウエブ53には、図9(c)及び図9(d)に示したように渦電流プローブ71aを収納して固定するする静翼ダイヤフラム5の半径方向に開口した固定溝68が設けられ、この固定溝68の径方向上端に開口部69を有する。
この第5実施例のタービン動翼の欠陥検出装置7aにおいては、タービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥状況を検査する検査時に、制御装置200からの指令信号によってタービンケーシング2の外部に設置した移動装置150を駆動させ、或いはタービンケーシング2の外部からの手動操作によって、タービンケーシング2に形成したケーシング孔76を通じて渦電流プローブ71a及びアクセスロッド72aをタービンケーシング2の外部から内部に挿入し、静翼ダイヤフラム5に設置された隣接する静翼ブレード52の間に形成されている空間を移動させて、渦電流プローブ71aを静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成した固定溝68に差し込んで固定する。
そして渦電流プローブ71aの前面のガイドローラ77aを検査対象のタービン動翼4の動翼植込み部6に当接させ、前記渦電流プローブ71aの前面に設置したコイル素子78によってタービン翼4の動翼植込み部6の表面に渦電流を流し、タービン翼4の動翼植込み部6の表面で発生した電磁誘導の変化を該コイル素子78によって検出することによってタービン動翼4の動翼植込み部6における欠陥状況を前述した先の実施例の渦電流プローブ71と同様に検査する。
渦電流プローブ71aはタービンケーシング2に形成したケーシング孔76よりも幅方向の寸法が狭いスリムな形状にしているため、ケーシング孔76を通してタービンケーシング2の内外に出し入れ可能である。
渦電流プローブ71aの背面は、図9(b)に示したように先端に向かって軸方向の厚みが薄くなるようにテーパ面71bとなっており、渦電流プローブ71aを収容する静翼ダイヤフラム5のウエブ53に形成した対応する固定溝68も同じ角度のテーパ面68bを有するように形成されている。
これらのテーパ構造により、静翼ダイヤフラム5のウエブ53とタービン動翼4の動翼植込み部6との間の間隔d2のばらつきを、ウエブ53に形成した固定溝68に差し込む渦電流プローブ71aの差込深さを調節することで吸収可能である。
また、渦電流プローブ71aの背面のテーパ面71bには、弾性体のクッション71cが備えられており、走査時の間隔d2の変動を吸収できるようにしている。クッション71cの材料としては、中実ゴム、中空ゴム、板バネ、あるいは有機発砲体が適用できる。
タービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥状況を検査する検査が終了すると、制御装置200からの指令信号によってタービンケーシング2の外部に設置した移動装置150を駆動させ、或いはタービンケーシング2の外部からの手動操作によって、渦電流プローブ71a及びアクセスロッド72aをタービンケーシング2の内部から外部に引き出して、渦電流プローブ71aを完全にタービンケーシング2の外部に取り出す。
渦電流プローブ71aは、タービン動翼4の動翼植込み部6の欠陥状況を検査する検査時以外は、タービンケーシング2の外側に取り出して安全に保管できるので、タービン動翼の欠陥検査装置7aの信頼性をより高めることができるという利点がある。
本発明の実施例によれば、ロータの回転に伴なってタービン動翼がロータ軸方向に振動する場合でもタービン動翼の植込み部に生じる欠陥を正確に検出すると共に、多大な手数と期間を要するタービンケーシングの開放作業を行なわずに検査対象となるタービン動翼の動翼植込み部に生じる欠陥の検査を行なうことができるタービン動翼の欠陥検出装置及びタービン動翼の欠陥検出方法が実現できる。