JP5162796B2 - デジタルマイクロホン - Google Patents

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Description

本発明は、従来のデジタルマイクロホンとは全く異なった方式によって、デジタル信号出力を直接的に得ることができるデジタルマイクロホンに関するもので、プロフェッショナル用途のマイクロホンとして好適なものである。
プロフェッショナル用途のオーディオマイクロホンは、100KHz以上の広い周波数帯域と、140dBという極めて大きなダイナミックレンジが必要とされている。かかる要求仕様は現在のデジタル技術で実現することは困難である。本発明は、ユニークな発想のもとに上記の要求仕様を実現することができるデジタルマイクロホンに関する。本発明を説明する前に、従来の関連技術について説明しておく。
従来のデジタル出力マイクロホンは、マイクロホンユニットと、プリアンプと、アナログ・デジタル変換器(以下「AD変換器」という)を主たる構成要素としている。マイクロホンユニットは音波を受けて電気音響変換し、アナログ信号で音声信号を出力する。この音声信号をプリアンプで増幅したあとAD変換器でデジタル信号に変換してマイクロホン出力とする。
図4は、従来のデジタル出力マイクロホンの例を示す。図4において、マイクロホン80は例えばコンデンサーマイクロホンで、音波によってコンデンサーマイクロホンの振動板(以下「メンブレン」という)が振動すると、このメンブレンと対向する固定電極との間の静電容量が変化する。静電容量の変化が電圧の変化となり、これをプリアンプ82によって増幅し、インピーダンス変換してAD変換器に入力しデジタル信号に変換するようになっている。この従来例におけるAD変換器は、高周波クロックに同期して動作しアナログ入力信号を1ビット密度変調デジタル信号に変換するデルタ−シグマ(以下「ΔΣ」という)変調器84と、低周波クロックに同期して動作するデジタルフィルタ86で構成されている。
上記ΔΣ変調器84はAD変換器の中心部分をなしていて、図5に示すように、積分器842、コンパレータなどからなる1ビット量子化器843、デジタル・アナログ変換器(以下「DA変換器」という)845を有してなる。DA変換器845は、1ビット量子化器843の出力をネガティブフィードバックする部分として機能する。かかる構成からなるΔΣ変調器84は、入力アナログ信号を、オーディオ信号の帯域より非常に高い周波数でサンプリング(すなわちオーバーサンプリング)し、1ビットのパルス密度変調デジタル信号に変換する。その結果、量子化ノイズは高周波側に押し出されるノイズシェーピング効果を得ることができる。
ΔΣ変調器を用いたデジタルマイクロホンはすでに知られている。特許文献1に記載されているデジタルマイクロホンはその例である。特許文献1には、音波に対応したアナログ信号からなる音声信号を生成する変換器と、オーバーサンプリングレートでΔΣ変調されたビットストリームの形式で上記アナログ信号からデジタル出力信号を生成するための、シングルビットΔΣ変調AD変換器を備えていることを特徴とするデジタルマイクロホンが記載されている。特許文献1に記載されているデジタルマイクロホンも、基本的には図4、図5に示す従来のデジタルマイクロホンの例と変わりがない。
特表2005−519547号公報
図5に示すようなΔΣ変調器を用いたAD変換器はIC化されていて、特許文献1に記載されているような従来のデジタルマイクロホンにおいては、このIC化されたAD変換器を使用し、マイクロホン本体内に内蔵している。したがって、電気音響変換器としてのマイクロホンユニットからはアナログ信号が出力され、このアナログ信号が、増幅回路、バッファ回路、差動回路などを経てΔΣ変調器を用いたAD変換器に入力される。ここまでがアナログ領域で、AD変換器で変換された後がデジタル領域となる。そのため、上記増幅回路、バッファ回路、差動回路などで生成されるノイズがそのままアナログ信号に加算され、十分に満足できるほどの低ノイズ、かつ、高ダイナミックレンジのデジタルマイクロホンを得ることは困難であった。
本発明は、マイクロホンユニットから直接的にデジタル信号による音声信号を出力することを可能にし、もって、増幅回路、バッファ回路、差動回路などを不要にし、プロフェッショナル用途としても十分に満足することができる低ノイズ、かつ、高ダイナミックレンジのデジタルマイクロホンを得ることを目的とする。
本発明は、ΔΣ変調器を備えることによりデジタル信号出力するデジタルマイクロホンであって、上記ΔΣ変調器は、音波によって振動するメンブレンとこのメンブレンに対向させて配置された配線パターンを含む共振器と、上記メンブレンとの対向位置によって遅延時間を異ならせる遅延回路と、上記共振器を備えることにより上記メンブレンの振動に応じたFM信号を出力するとともに上記遅延回路を介することにより複数のFM信号を出力する発振器と、上記FM信号のエッジを検出する複数のエッジ検出器と、を備え、複数の並列ΔΣ変調信号を出力することを特徴とする。
音波に応じてメンブレンが振動すると、メンブレンと共振器との間の電気的な条件、例えば静電容量、インダクタンスなどが変化し、この電気的な条件の変化に応じて上記共振器の共振周波数が変化し、上記発振器の発信周波数が変化する。すなわち、発振器はメンブレンの振動に応じたFM信号を出力する。このFM信号は1ビット量子化器により量子化されデジタル信号として出力される。
このように、マイクロホン内の電気音響変換部で直接的にFM信号を得ることができ、このFM信号をマイクロホン内の1ビット量子化器によりデジタル信号に変換して出力することができるため、従来のように、マイクロホンから出力されるアナログ信号を、増幅回路、バッファ回路、差動回路などを用いてデジタル信号に変換する必要はない。そのため、上記増幅回路、バッファ回路、差動回路などを用いることによって必然的に生じるノイズがなくなり、プロフェッショナル用途として十分に満足できる低ノイズ、かつ、高ダイナミックレンジのデジタルマイクロホンを得ることができる。
ΔΣ変調器を、音波によって振動するメンブレンおよびこのメンブレンに対向させて配置された対向電極によって形成されたコンデンサーと、このコンデンサーおよびこのコンデンサーに接続されたインダクターによって構成された共振器と、この共振器を備えることにより上記メンブレンの振動に応じたFM信号を出力する発振器と、上記FM信号を高周波クロックでサンプリングして1ビット量子化信号を出力する1ビット量子化器と、を備えることによって構成するものにおいては、コンデンサーマイクロホンユニットの構成を利用して直接的にデジタル信号を出力することが可能なマイクロホンを得ることができる。
以下、本発明にかかるデジタルマイクロホンの実施例について図面を参照しながら説明する。
図1において、符号10は音波によって振動するメンブレンを示す。このメンブレン10に対向させて、基板14に共振器12が配置されている。基板14はバックプレート16の一面側に固定されている。基板14のメンブレン10との対向面には配線パターンが形成されていて、共振器12は上記配線パターンを含んでいる。メンブレン10が音波を受けて振動すると、メンブレン10と共振器12との間の電磁界が変化することによって共振器12の共振周波数が変化する。共振器は発振器の一部を構成していて、この発振器は、メンブレン10の振動に応じた、そして上記共振周波数の変化に応じたFM信号を出力するように構成されている。メンブレン10、共振器12を含む発振器、基板14、バックプレート16は、図示されないユニットケースに組み込まれてマイクロホンユニットを構成している。共振器12を含む発振器は基板14上に集積化して組み込むことができる。
メンブレン10の振動によって生じるメンブレン10と共振器12との間の電磁界の変化は、例えば、コンデンサーの静電容量の変化であってもよいし、インダクターのインダクタンスの変化であってもよい。コンデンサーの静電容量の変化である場合、メンブレン10と上記配線パターンはそれぞれコンデンサーの電極を構成し、メンブレン10の振動により上記コンデンサーの静電容量が変化し共振器の共振周波数が変化するようになっている。インダクタンスの変化である場合、例えば、上記配線パターンがインダクターを構成するようなパターンとなっていて、メンブレン10の振動によって上記インダクターのインダクタンスが変化し共振器の共振周波数が変化するように構成する。
以上、要するに、メンブレン10と配線パターンとの間で、ある種の電磁界分布を形成して共振条件を成立させて共振器を構成することができればよい。配線パターンを工夫することによって、静電容量CとインダクタンスLの両者の機能を持たせ、LC共振器を構成することも可能である。また、共振条件が保たれるものであれば、上記のような静電容量Cによる共振器、またはインダクタンスLによる共振器に限定されるものではない。
図1において、発振器から出力されるFM信号は、1ビット量子化器18に入力される。1ビット量子化器18は、上記FM信号を高周波クロックでサンプリングして1ビット量子化信号を出力する。この1ビット量子化信号はエクスクルーシブオア回路22の一方の入力端子に入力されるとともに、レジスタ20を介してエクスクルーシブオア回路22の他方の入力端子に入力される。レジスタ20は上記サンプリング周波数と同じ周波数の高周波クロックに同期して動作し、上記1ビット量子化信号を、時間をずらしてエクスクルーシブオア回路22に入力する。レジスタ20とエクスクルーシブオア回路22は、1ビット量子化器18から出力される1ビット量子化信号のエッジを検出するエッジ検出器を構成していて、エクスクルーシブオア回路22の出力がΔΣ変調信号となる。このΔΣ変調信号をデジタルフィルタに通せば、複数ビットのデジタル信号を得ることができる。
以上説明した実施例1によれば、メンブレンの変位が直接発振器の発信周波数の変化に変換される。すなわち、音響信号を直接FM信号に変換することができる。このFM信号を高周波クロックでサンプリングして1ビット量子化し、これをレジスタ20とエクスクルーシブオア回路22からなるエッジ検出器に通すことによりΔΣ変調信号を得ることができる。上記発振器の周波数を例えば20GHzというように十分高くし、また、サンプリング周波数もこれと同程度に十分高くすることによって、高いS/N比と、広いダイナミックレンジのデジタルマイクロホンを得ることができる。
実施例1に用いられているΔΣ変調方式は、「FM中間信号を用いるΔΣ変調方式(FMDSM)」と呼ばれるものである。この方式の注目すべき利点は、フィードバック回路を必要としないため原理的にフィードバックエラーを生じることがなく、サンプリングレートを高くするだけで高分解能が得られる点である。しかし、入力信号をFM信号に変換する際に高精度の線形性と広い変調幅が要求され、従来の技術ではその利点を活かすことができなかった。
上記本発明の実施例によれば、メンブレンの変位を直接周波数変調信号に変換することができるため、極めて高精度に、音響信号をΔΣ変調信号に変換することができる。このΔΣ変調信号は、1ビットではあるが既にデジタル信号であるため、以後、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)などにより、ナイキストレートの多ビットのデジタル信号に変換することができる。
次に、図2に示す第2の実施例について説明する。この実施例は、発振器から複数のFM信号を出力させることを可能にし、各FM信号をそれぞれに対応したエッジ検出器に入力することにより、多数の並列ΔΣ変調信号を出力することができるようにしたものである。メンブレン10、共振器12を含む発振器、基板14、バックプレート16は実施例1と同様に構成され、基板14上の配線パターンは共振器12を構成している。共振器12は、実施例1と同様に、静電容量Cの変化により共振周波数が変化するものであってもよいし、インダクタンスの変化によって共振周波数が変化するものであってもよい。その他、ある種の電磁界分布を形成して共振条件を成立させて共振器を構成することができるものであればよい。
基板14には、メンブレン10との対向位置によって遅延時間を異ならせる複数の可変遅延回路13が設けられている。上記発振器は、共振器12による共振周波数信号を出力するとともに、各遅延回路13を介することによって複数のFM信号を出力する。これらのFM信号は個別に1ビット量子化器、エッジ検出器31,32,33,・・・3nに通すことにより、上記FM信号数及びエッジ検出器の数nの並列ΔΣ変調信号を出力するように構成されている。なお、図2では1ビット量子化器はエッジ検出器内に含まれているものとして描かれている。
各エッジ検出器31,32,33,・・・3nは、実施例1におけるレジスタ20とエクスクルーシブオア回路22と同様の回路で構成することができ、それぞれ高周波クロックによって動作するようになっている。
上記第2の実施例は、FM信号を複数の可変遅延回路13により遅延させて位相の異なる複数のFM信号を作り、各FM信号のエッジを検出して並列に出力させるものである。
仮に、遅延時間を固定し、複数のFM信号を出力したとすると、単に、独立した複数のΔΣ変調器を設けたことと等価である。この場合、各ΔΣ変調器の量子化ノイズが互いに無相関であるため、並列化の数を2倍にするごとにS/N比は3dB改善される。
これに対して上記実施例2のデジタルマイクロホンのように、発振周波数と同様に遅延時間もメンブレンの位置によって変化させるようにすると、並列化したそれぞれのΔΣ変調器の量子化ノイズが打ち消され、並列化数を倍にするごとにS/N比が6dB改善される利点がある。
本発明に係るデジタルマイクロホンは、コンデンサーマイクロホン特有の構造をそのまま利用して構成することができる。すなわち、コンデンサーマイクロホンが備えているメンブレンとこれに対向する対向電極とで構成されるコンデンサーを共振器の一部として利用する。かかる構成の実施例を図3に示す。図3において、メンブレン40と対向電極42はコンデンサーマイクロホンユニットにおけるメンブレンおよびこのメンブレンに間隙をおいて対向する対向電極であり、メンブレン40はマイクロホンケースに接続されてアースがとられている。対向電極42はバックプレート46に絶縁体44を介して配置されている。対向電極42にはインダクター50の一端が接続され、インダクター50の他端はアースに接続され、メンブレン40と対向電極42との間で構成されるコンデンサーとインダクター50とで共振器を構成している。対向電極42は負性抵抗回路18を介して1ビット量子化器18に接続されている。この1ビット量子化器18と、レジスタ20、エクスクルーシブオア回路22を備えている点、およびこれら相互の接続は、図1に示す実施例と同じである。
メンブレン40が音波を受けて振動すると、メンブレン40と対向電極42との間で構成されるコンデンサーの容量が変化し、このコンデンサーとインダクター50で構成される共振器の共振周波数が変化する。共振器は発振器の一部を構成していて、この発振器は、メンブレン40の振動に応じた、そして上記共振周波数の変化に応じたFM信号を、負性抵抗回路18を介して出力し、このFM信号は1ビット量子化器18に入力される。以下、1ビット量子化器18、レジスタ20、エクスクルーシブオア回路22は図1に示す実施例と同様に動作し、エクスクルーシブオア回路22からΔΣ変調信号が出力される。このΔΣ変調信号の後処理回路は、第1、第2の実施例と同様に構成することができる。
以上説明した第3の実施例によれば、コンデンサーマイクロホンユニットの構造そのものを利用して、音響信号を直接的にデジタル信号であるΔΣ変調信号に変換することができる。このΔΣ変調信号をデジタルフィルタなどに通せば、複数ビットのデジタル信号を得ることができる。
増幅回路、バッファ回路、差動回路などのアナログ回路は不要であるから、これらのアナログ回路で生成されるノイズに相当する分のノイズが低減され、低ノイズ、かつ、高ダイナミックレンジのデジタルマイクロホンを得ることができる。
本発明にかかるデジタルマイクロホンの第1の実施例を示す概念図である。 本発明にかかるデジタルマイクロホンの第2の実施例を示す概念図である。 本発明にかかるデジタルマイクロホンの第3の実施例を示す概念図である。 従来のデジタルマイクロホンの例を示すブロック図である。 従来のデジタルマイクロホンに適用可能なΔΣ変調器の例を示すブロック図である。
符号の説明
10 メンブレン
12 共振器
14 基板
18 1ビット量子化器
20 レジスタ
22 エクスクルーシブオア回路
31、32、33、3n エッジ検出器
40 メンブレン
42 対向電極
50 インダクター

Claims (3)

  1. ΔΣ変調器を備えることによりデジタル信号出力するデジタルマイクロホンであって、
    上記ΔΣ変調器は、
    音波によって振動するメンブレンとこのメンブレンに対向させて配置された配線パターンを含む共振器と、
    上記メンブレンとの対向位置によって遅延時間を異ならせる遅延回路と、
    上記共振器を備えることにより上記メンブレンの振動に応じたFM信号を出力するとともに上記遅延回路を介することにより複数のFM信号を出力する発振器と、
    上記各FM信号のエッジを検出する複数のエッジ検出器と、を備え、
    複数の並列ΔΣ変調信号を出力するデジタルマイクロホン。
  2. メンブレンと配線パターンはコンデンサーの電極を構成し、メンブレンの振動により上記コンデンサーの静電容量が変化し共振器の共振周波数が変化する請求項1記載のデジタルマイクロホン。
  3. 配線パターンはインダクターを構成し、メンブレンの振動により上記インダクターのインダクタンスが変化し共振器の共振周波数が変化する請求項1記載のデジタルマイクロホン。
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