JP5159125B2 - β−1,3−グルカン/カルボラン複合体 - Google Patents
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T. Takenobu, T.Takano, M. Shiraishi, Y. Murakami, M. Ata, H. Kataura, Y. Achiba, Y. Iwasa,Nature Materials, 2, 683 (2003) S. B. Kaul, R.A. Kaser, J. Am. Chem. Soc., 118, 1223 (1996). P. D. Godfrey,W. J. Crigsby, P. J. Nichols, C. L. Raston, J. Am. Chem. Soc., 119, 9283(1997). A. Harada, S. Takahashi, J. Chem. Commun.,12, 1352 (1988). M-J. Hardie,C-L. Raston., J. Chem. Commun., 12, 1153 (1999). M-J. Hardie,C-L. Raston., Eur. J. Inorg. Chem., 12, 195 (1999). L. Craciun, R.Custelcean, Inorg. Chem, 38, 4916 (1999). L. Deng, H-S.Chan, Z. Xie, J. Am. Chem. Soc, 128, 5219. (2006). A. H. Soloway,W. T. Beverly, A, Barnum, F-G. Rong, R-F. Barth, I-W. Codogni, J. G. Wilson,Chem. Rev., 98, 1515 (1998).
かくして、本発明は、β-1,3-グルカンとカルボランから成る複合体を提供するものである。
さらに、本発明に従えば、上記の複合体を調製する方法であって、β-1,3-グルカンおよびカルボランを極性溶媒溶液中で混合し、水を加えて熟成する工程を含む方法が提供される。
M. Numata, M.Asai, K. Kaneko, T. Hasegawa, N. Fujita, Y. Kitada, K. Sakurai, S. Shinkai,Chem. Lett., 232 (2004). 15 M. Numata,M. Asai, K. Kaneko, A. -H. Bae, T. Hasegawa, N. Fujita, K. Sakurai, S. Shinkai,J. Am. Chem. Soc., 127, 5875 (2005).
以下、本発明に従う複合体化の詳細な条件の例を実施例に沿って記述する。
カルボランとシゾフィラン複合体溶液の調製 室温下条件下でm-カルボラン/DMSO溶液( 2 mg/mL)100μLとSPG/DMSO溶液(10mg/mL)100μLを混合し、水1800μLを加えることによってSPGを巻き戻した(溶液(丸1))。この溶液を2日間室温条件下で静置した。溶液の最終濃度は[SPG]=7.76×10-4 mmol(モノマー単位)、[m-カルボラン]= 6.85×10-4mol/L、Vw(水/全溶媒容積比)=90%である。またm-カルボランの代わりにo-カルボランを用いて同様に溶液を調製した(溶液(丸2))。SPGの代わりに他の多糖(デキストラン、プルラン)を用いた溶液、多糖を含まないカルボランのみの溶液、SPGの巻き戻り過程が起こらない条件で調製したt-SPG溶液も比較例として調製した。溶液調製後、溶液(丸1)には沈殿が見られなかったが、他の溶液からは白い沈殿が確認された。
ICP-Msスペクトル測定(誘導プラズマ結合-マススペクトル測定)によるシゾフィランと複合化したm-カルボランの量の検討 メタノールによる再沈殿操作を行い、複合化していないm-カルボランを取り除いた。溶液を凍結乾燥させ、白色の固体を得た。これを超純水に溶解させ、ICP-Msスペクトル測定を行った。測定の結果、SPG/m-カルボラン複合体中にホウ素は12.4 wt%含まれているということがわかった。同時に、リファレンスとしてo-カルボランを用いたサンプルのICP-Msスペクトル測定を行ったところ、サンプルからホウ素の存在がほとんど確認されなかった(存在量0.04
wt%)。つまり、m-カルボランはSPGと複合化することによって水溶性が向上し、o-カルボランではSPGと相互作用しにくいことが判明した。
SPG存在溶液のIRスペクトル測定 SPGと複合化することによってm-カルボランのB-H 振動ピーク( 2596 cm-1)に違いがみられると考え、IRスペクトル測定を行った。測定結果を、m-カルボランから得られるIRスペクトル測定結果と比較することにより違いが見られることを期待した。SPG存在下で調製を行った溶液(丸1)に対し、メタノールによる再沈殿を行い、沈殿物を回収した。この操作により複合化していないm-カルボラン、SPGを除去した。その後、透析を行い、溶媒を完全に水に置換した。この溶液を凍結乾燥し、IRスペクトルを測定した。また、リファレンスとしてm-カルボランのみのIRスペクトルを測定し、IRスペクトルの比較を行った。図4のスペクトル測定の結果、SPGを含まないサンプルから得られたIRスペクトルにはB-Hの振動ピークが確認されなかったのに対し、SPG/m-カルボラン複合体のIRスペクトルはSPGとm-カルボランの足し合わせのIRスペクトルが確認された。またm-カルボランのみに比べ、B-Hの振動ピークが9cm-1程高エネルギーシフトしていることが確認された。複数回同じ操作で溶液調製、測定を行っても同様の結果が得られたことからも、この結果はSPGとm-カルボランが相互作用することにより分子振動に変化が生じたことを示している。また、この結果は過去の研究例とも一致している(非特許文献12、13)。m-カルボランの代わりにo-カルボランを用いたサンプルからはカルボラン由来のB-Hの振動ピークは確認されなかった。この結果は、SPGと相互作用する際にm-カルボランとo-カルボランで何らかの違いが起こっていることを示している。さらに他の多糖をSPGの代わりに用いた溶液も同様の操作を行い、B-Hの振動ピークの確認を行った。しかし、ほぼ全てのサンプルからはB-Hの振動ピークと思われるIRスペクトルは確認されなかった。このことからm-カルボランは他の多糖とは相互作用せずにSPGとのみ特異的に相互作用していることを示唆している。さらに巻き戻り過程を経ずにSPG とカルボランを混合したt-SPG溶液のサンプルからはB-Hの振動ピークは確認されなかった。このことからSPGとカルボランの相互作用はSPGの3重螺旋への巻き戻り過程が必要であることを示している。よって、カルボランはSPG内に取り込まれ相互作用することが判明した。
Frixa, M.Scobie, S. J. Black, A. S. Thompson, M. D. Threadgill, Chem. Commun., 2876(2002). P. D. Godfrey,W. J. Grigsby, P. J. Nichols. C. L. Raston, J. Am. Chem. Soc., 119, 9283(1997).
TEM観察 m-カルボランとSPGの複合化によるモルフォロジー変化を見るため溶液を透析により溶媒を完全に水に置換した後、TEMグリッド(カーボン支持膜あり)にキャストし、TEM観察を行った。また、同時にそれぞれリファレンス溶液のTEM観察も行った。その結果、図5に示したようにSPGとの複合化操作を行った溶液からはファイバー状のモルフォロジーが確認されたが、SPGの存在しない溶液や、他の多糖を用いた溶液からはそのようなファイバー状の像が確認されなかった。また、m-カルボランの代わりにo-カルボランを用いた溶液からもファイバー状のモルフォロジーは確認されなかった。これらの結果からも、SPGはm -カルボランと特異的に相互作用していることが示された。
AFM観察 m-カルボランとSPGが複合化することによるモルフォロジーの変化を確認するため、AFM観察を行った。SPG存在溶液とSPG非存在溶液から得られる結果を比較することで、SPGの存在によるモルフォロジーの変化が見られることを期待した。SPG存在溶液、およびSPG非存在溶液に対し透析を行った。この操作により溶媒を完全に水に置換した後、マイカ基盤にキャストし、減圧乾燥させた。各測定サンプルに対し、AFM観察を行った。AFM観察の結果、図6のようにSPG以外の多糖(プルランや、デキストラン、アミロース)溶液からは高さが不均一で4.5nm以上の凝集したような像が見られた。また、SPGを含むサンプルからは、高さの均一な像が確認された。AFMやTEM観察に像に見られるモルフォロジーから、SPGによってカルボランは均一な高さのファイバー状に配列制御されていることが示唆された。また、SPGを含むサンプルから得られたファイバー状モルフォロジーの高さは、2nm程度であることが確認された。SPG3重螺旋状態での高さはおよそ1nmであり、m-カルボラン1つの直径がおよそ1nmであることからすると、もし複合化しているならばSPG内でm-カルボランは1 次元的に配列されていることになる。ICP-Msスペクトル測定の結果から計算を行うと、m-カルボランは複合体中で糖と0.7(mol/mol)の比で複合化していることが認められ、複合体のICP-Msペクトル測定の結果とAFMから得られた平均的な高さはほぼ一致する。また、IRスペクトル測定によりSPGとm-カルボランの相互作用を示唆する結果が得られたことからもSPG内でm-カルボランは1次元的に配列していると考えられる(図7および図8)。
Claims (3)
- β−1,3−グルカンとm−カルボランから成ることを特徴とする複合体。
- β−1,3−グルカンがシゾフィラン、スクレログルカン、レンチナン、パッキマンまたはカードランから選ばれたものであることを特徴とする請求項1の複合体。
- β−1,3−グルカンおよびm−カルボランを極性溶媒溶液中で混合し、水を加えて熟成する工程を含むことを特徴とする、請求項1の複合体を調製する方法。
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