JP5158944B2 - 酵母ゲノム解析による酵母菌株判定法 - Google Patents

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Description

本発明は、ビール酵母の菌株を判別する方法に関する。本発明は、特に、下面ビール酵母の菌株を判別する方法に関する。
ビール酵母には大きく分けて上面ビール酵母と下面ビール酵母とがあることが知られている。ビール醸造では、発酵が終了して沈降した下面ビール酵母を回収して次回の発酵に使用するため、下面ビール酵母とそれ以外の酵母(特に、上面ビール酵母)とを区別することが重要である。また、下面ビール酵母に分類されるものでも菌株が異なると、異なるタイプのビールを造ることができることは知られており、これはビール酵母菌株間のゲノム配列の差異によるものであると考えられている。これらについて明らかにするために、下面ビール酵母のゲノム解析が行われたことが報告されている(特許文献1、非特許文献1、4)。しかし、菌株間のゲノム配列における具体的な差異については、ほとんど示されていない。
また、ビール酵母のゲノム解析によりS.cerevisiae(サッカロミセス・セレビシアエ(SC))型と非S.cerevisiae型(サッカロミセス・バヤナス(S.bayanus)(SB))型の配列が混在するキメラ染色体の存在を示しているが(特許文献1、非特許文献1、4、5、6)、しかし第XVI染色体以外は、どの領域で混在が生じているか明らかにされていない。また、DNAマイクロアレイを用いたハイブリダイゼーション実験の結果、ビール酵母菌株間で染色体の構造が異なることが報告されている(非特許文献2)しかし、各遺伝子のハイブリダイズする強度に変化がなかった場合には、検出することはできないと考えられる。
ビール酵母のゲノム解析によりDNAマイクロアレイを作製し、DNA-DNAハイブリダイゼーションを行ったことが報告されている(特許文献1、非特許文献1)。この結果、高いプローブ輝度を示した遺伝子はコピー数が高くなっている可能性があることを示しているが(特許文献1、非特許文献4、5、6)、染色体上のどの部位がそれに該当するのかは明らかになっていない。またビール酵母のゲノムのSNPを利用して好気成分産生量の違いを検出したことが報告されているが(特許文献2、3)、ゲノム構造の相違と好気成分産生量との関係は明らかになっていない。
従って、ビール酵母の各菌株に固有のゲノム配列や染色体構造については依然として不明な部分が多く、またビール酵母の菌株、特に下面ビール酵母の菌株を明確、簡便かつ迅速に判別できる方法も求められている。
特開2004−283169号公報 特開2007−43908号公報 特開2006−333827号公報 日本農芸化学会2003年度大会講演要旨集p158 日本農芸化学会2005年度大会講演要旨集p247 Winseler, E.A. et al. Genetics Vol.163, p79 (2003) Kodama, Y. et al. Lager brewing yeast (p145, In Comparative genomics using fungi as model P. Sunnerhage J. Piskur eds. Springer 2006) Hond U. et al. Curr. Genet. Vol.45, p360 (2004) Sichacherer J. et al. Plos One Vol.2 No3 e322 (2007)
本発明の目的は、ビール酵母の菌株、特には、下面ビール酵母の菌株を明確、簡便かつ迅速に判別することができる菌株判別方法を提供することである。
また、本発明の目的は、ビール酵母の菌株判別方法に有用な、各菌株に固有のゲノム配列及び/又は染色体構造を有する領域を特異的に増幅することができるプライマーを提供することである。
さらに、本発明の目的は、ビール酵母、特に下面ビール酵母のビール醸造特性を予測する方法を提供することでもある。
本発明者らは、下面ビール酵母の各菌株が固有のゲノム配列及び/又は染色体構造を有していることを見出した。この知見に基づき、判別対象の各菌株に固有のゲノム配列及び/又は染色体構造を検出することによって、ビール酵母の菌株、特には、下面ビール酵母の菌株を明確、簡便かつ迅速に判別する方法を見出した。その方法は、具体的には以下の通りである。
本発明は、判別対象のビール酵母由来のDNAを鋳型として、下面ビール酵母の同一染色体上でS. cerevisiae型塩基配列とS. bayanus型塩基配列との組換えが起こっている箇所を含む領域を特異的に増幅するプライマー対を用いて核酸増幅反応を行うこと、及び、増幅されたポリヌクレオチドを検出することを含む、下面ビール酵母の菌株判別方法を提供する。
好ましくは、プライマー対が、下面ビール酵母の第III染色体、第VII染色体、第VIII染色体、第X染色体及び第XIV染色体からなる群より選択される染色体DNA由来の塩基配列を有する。
より好ましくは、プライマー対が、下面ビール酵母の第X染色体DNA由来の塩基配列を有する。
また好ましくは、プライマー対として、配列番号10、11、20、22及び23のいずれかの塩基配列を有するヌクレオチドと、配列番号12、13、14、15、21及び24のいずれかの塩基配列を有するヌクレオチドとを組合せて用いる。
より好ましくは、配列番号10のヌクレオチドと配列番号12のヌクレオチドとの組合せ、配列番号10のヌクレオチドと配列番号13のヌクレオチドとの組合せ、配列番号11のヌクレオチドと配列番号12のヌクレオチドとの組合せ、及び配列番号11のヌクレオチドと配列番号13のヌクレオチドとの組合せを用いる。
本発明は、さらに、ビール酵母のゲノムDNA由来の塩基配列を有するヌクレオチドを固定したDNAマイクロアレイを用いて、判別対象の下面ビール酵母の菌株に固有のコピー数が異なる染色体及び/又は染色体部分を識別することを含む、下面ビール酵母の菌株判別方法を提供する。
また、本発発明は、ビール酵母のゲノムDNA由来の塩基配列を有するヌクレオチドを固定したDNAマイクロアレイを用いて、複数の下面ビール酵母DNAのシグナルと対照ビール酵母菌株DNAのシグナルを測定する工程、複数の下面ビール酵母DNAのシグナルと対照ビール酵母菌株DNAのシグナルの強度比を算出する工程、および、前記強度比を用いて系統樹を作成する工程、を含む、下面ビール酵母の菌株を分類する方法を提供する。
さらに、本発明は、複数の下面ビール酵母に予めビール醸造特性の分かっている下面ビール酵母を含む上記方法である。また、本発明は上記方法によって分類された下面ビール酵母菌株のビール醸造特性を予測する方法でもある。
本発明により、ビール酵母の菌株、特に下面ビール酵母の菌株を明確、簡便かつ迅速に判別することができる。
また、本発明により、ビール酵母の菌株、特に下面ビール酵母の菌株を明確、簡便かつ迅速に判別するための指標を提供することができる。
さらに本発明により、特定が十分に知られていない下面ビール酵母の醸造特性を予測することができる。
ビール酵母とは一般にビール醸造に使用される酵母を指し、生物学的分類でいうと、例えばサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)が挙げられる。
歴史的には、「上面ビール酵母」と「下面ビール酵母」との区別は、ビール醸造過程で発酵後に見られるビール酵母の動態(表面付近に浮き上がる又は凝集して沈む)により区別されてきたが、今現在、当業者間では、下面ビール酵母と上面ビール酵母とは生物学的分類において異なる種であり、上面ビール酵母は主としてサッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)に分類され、下面ビール酵母はサッカロミセス・セレビシアエとサッカロミセス・バヤナス(S. bayanus)との交雑体であってサッカロミセス・パストリアヌス(S. pastorianus)に分類されるという見解が一般的となっている。よって、本明細書において「ビール酵母のゲノムDNA」とは、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)及びサッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)のゲノムDNAに加えて、サッカロミセス・バヤナス(S. bayanus)のゲノムDNAをも含むものとする。
本発明では、ビール酵母の菌株によっては特定の染色体がS.cerevisiae型染色体、S. bayanus型染色体あるいはキメラ染色体(S.cerevisiae型塩基配列とS. bayanus型塩基配列が同一染色体上で見られる染色体)となっていることを利用して菌株を判別する。
本発明の判別方法では、判別対象のビール酵母細胞から抽出及び/又は精製したゲノムDNAを含む試料に対し、本発明のプライマー対を用いて核酸増幅反応を行って、その増幅産物の有無や種類、大きさなどを検出する。あるいは、判別対象の酵母細胞から抽出及び/又は精製したゲノムDNA由来のDNA(例えば、クローン化された酵母DNA断片)を含む試料について、増幅産物の有無や種類、大きさなどを検出してもよい。よって、本明細書において「ビール酵母由来のDNA」は、ビール酵母から抽出(及び精製)されたゲノムDNA並びにそのようなゲノムDNA由来のDNA例えば、クローン化されたビール酵母DNA断片)を含む。
酵母からのゲノムDNA抽出は、公知の方法のいずれを用いて行ってもよい。例えば、Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, P130(1990)などに記載の方法が挙げられる。また、DNA抽出用のキットやカラム等、例えばQiagen社のQiagen Genomic-tip 500/G等を用いて行うこともできる。本発明では、抽出したゲノムDNAをそのまま、核酸増幅反応の鋳型として用いることができる。例えば、PCR法により増幅する場合には約1 ng/mlの濃度で用いることができる。
本発明の判別方法において行う核酸増幅反応は、本技術分野で公知の核酸増幅反応のいずれかを用いることができ、PCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いるのが好ましい。核酸増幅反応に用いる緩衝液、酵素、反応条件その他については、各核酸増幅反応について当業者が通常用いるものを選択することができる。本発明の判別方法では、PCR法により核酸増幅反応を行うことが特に好ましく、例えばSaikiらが開発した方法(Science 230, 1350(1985))を参考にして実施することもできる。
本発明に用いるプライマー対として、具体的には、下面ビール酵母の各菌株に固有のゲノムDNA領域、すなわち、同一染色体上でS. cerevisiae型塩基配列とS. bayanus型塩基配列との組換えが起こっている箇所を含む領域を特異的に増幅できるように設計することが好ましい。そのようなプライマーとして選択するためには、プライマーの塩基配列がSC型又はSB型塩基配列であることが好ましく、特に、3’末端配列がSC型又はSB型塩基配列特異的になるように注意するべきである。また、増幅されるDNA断片が100bp〜10kbpになるように設計することが好ましい。
適切な増幅対象領域としては、キメラ染色体(S.cerevisiae型塩基配列とS. bayanus型塩基配列が同一染色体上で見られる染色体)の存在が推定される染色体が好ましく、例えば下面ビール酵母の第III染色体、第VII染色体、第VIII染色体、第X染色体、第XIV染色体などの染色体上でS. cerevisiae型塩基配列とS. bayanus型塩基配列との組換えが起こっている箇所を含む領域が好ましい。より好ましい増幅対象領域は第X染色体上でS. cerevisiae型塩基配列とS. bayanus型塩基配列との組換えが起こっている箇所を含む領域、最も好ましくは第X染色体右腕の領域である。
本発明において「S.cerevisiae型(SC型)塩基配列」とは、FASTA、BLASTといった配列比較アルゴリズムを用いて、Saccharomyces Genome Database(SGD)(http://www.yeastgenome.org/)に公開されているS.cerevisiaeのゲノム塩基配列と比較した場合に95%以上の相同性を示す塩基配列を指し、「非S.cerevisiae型塩基配列」又は「S. bayanus型(SB型)塩基配列」とは、同様にS.cerevisiaeのゲノム塩基配列と比較した場合に95%未満の相同性を示す塩基配列を指す。
このような増幅対象領域に対して、S.cerevisiae型(SC型)塩基配列特異的なプライマー及び/又はS. bayanus型(SB型)塩基配列特異的なプライマーを設計し、プライマー対として組合せることができる。本発明に使用するプライマーは、下面ビール酵母の染色体DNAに対し増幅対象領域を挟むように特異的にハイブリダイズするものであり、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするプライマーが好ましい。ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、70%以上の相同性を有するDNA同士が優先的にハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士が有意にはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件のより具体的な例としては、サザンハイブリダイゼーションの洗浄条件が50℃、2x SSC、0.1% SDS、好ましくは1x SSC、0.1% SDS、より好ましくは0.1x SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度である条件が挙げられる。これらと同等な条件も当業者には容易に理解できるであろう(例えば、Sambrookら、1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)などに見ることができる)。
当業者であれば、Saccharomyces Genome Database(SGD)(http://www.yeastgenome.org/)やワシントン大学のGenome Sequencing Centerのホームページ(http://genomeold.wustl.edu/projects/yeast/)等で公開されているS.cerevisiaeやS.bayanus等のゲノム塩基配列に基づいて適切なSC型又はSB型塩基配列特異的なプライマー対を設計することができるであろう。本技術分野で通常用いられるプライマー設計用プログラムを用いて設計してもよい。
核酸増幅に用いるプライマー対は、順方向のプライマー(フォワードプライマー(F))と逆方向のプライマー(リバースプライマー(R))との組合せであり、SC型塩基配列特異的なフォワードプライマーとSC型塩基配列特異的なリバースプライマーとの組合せ、SC型塩基配列特異的フォワードプライマーとSB型塩基配列特異的なリバースプライマーとの組合せ、SB型塩基配列特異的なフォワードプライマーとSC型塩基配列特異的なリバースプライマーとの組合せ又はSB型塩基配列特異的なフォワードプライマーとSB型塩基配列特異的なリバースプライマーとの組合せとなり、それぞれ、増幅対象領域がSC-SC型塩基配列、SC-SB型塩基配列、SB-SC型塩基配列又はSB-SB型塩基配列である菌株由来のゲノムDNAが増幅される。
PCRプライマーとしての適当な長さは、一般的には、15merから50merといわれているが、通常は、20merから35merのものが使用される。これらのプライマーの5'末端側に1 bp〜10 bpの任意の塩基配列が付加されていても、又は標識(ビオチンなど)が付加されていても、本発明の方法のためのプライマーとして用いることができる。
本発明のプライマー対を構成するSC型塩基配列特異的なプライマーとしては、例えば配列番号10(F)、配列番号12(R)、配列番号14(R)、配列番号20(F)、配列番号21(R)などの塩基配列を有するものが挙げられ、SB型塩基配列特異的なプライマーとしては、例えば配列番号11(F)、配列番号13(R)、配列番号15(R)、配列番号22(F)、配列番号23(F)、配列番号24(R)などの塩基配列を有するものが挙げられる。
PCR反応に用いるポリメラーゼは、一般にPCRに用いられる高温耐性のポリメラーゼでよいが、長い断片を増幅する場合には特に長鎖を増幅することのできるものが好ましい。そのようなポリメラーゼとしてはTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社)などが挙げられる。市販されているPCRキット、例えばタカラバイオ社のPerfectShot Ex Taqなどを用いて行うこともできる。
PCR反応条件は、一般的な条件に従って行うことができる。また、使用するプライマーのGC含量や長さ及び使用する酵素(ポリメラーゼ)の性質などを考慮して、最適な条件(温度、時間、サイクル数)を決定してもよい。キットを用いる場合には、その供給元が提供する使用説明書に沿って行ってもよい。具体的には、熱変性過程92℃〜99℃にて1秒間〜120秒間;アニーリング過程42℃〜65℃にて1秒間〜2分間;伸長過程50℃〜75℃にて1秒間〜20分間のサイクルを1〜50回といったPCR条件を用いることができる。また、アニ−リング過程と伸長過程は、同一温度で行うこともできる。
核酸増幅反応によって増幅されたポリヌクレオチドを大きさによって分離及び/又は精製するために、アガロースゲルやポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動が一般的に用いられる。ゲルのアガロース濃度又はポリアクリルアミド濃度、泳動緩衝液、電圧条件等は、対象とするDNA断片の大きさや所望の分離能に依存し、当業者であれば技術常識に基づいて適切な値や条件を選択することができる。本発明の方法では、50bp〜20kbpのポリヌクレオチドについて、40bp〜20kbpの大きさの違いを検出することができればよい。よって、本発明の方法では、アガロースゲルの場合は0.5%〜5%のアガロース濃度、好ましくは0.8%〜1.5%のアガロース濃度を用いることができる。泳動緩衝液は、例えば、TAE(トリス酢酸)バッファー、TBE(トリスホウ酸)バッファー、TPE(トリスリン酸)バッファーなどを用いることができる。
アガロース電気泳動によって分離したポリヌクレオチドの大きさの違いは、一般に用いられる方法によって検出することができる。例えば、エチジウムブロマイド等を用いて増幅産物のバンドを可視化することによって検出することができる。
上述のようなプライマー対を1以上用いて、判別対象のビール酵母菌株由来のDNAを鋳型として核酸増幅反応(例えばPCR法)を行って得られた増幅産物のパターン、すなわち、増幅産物の有無、種類又は大きさを、S. cerevisiaeに属する対照酵母(例えば実験室酵母又は上面ビール酵母)由来のDNAや他の下面ビール酵母菌株を鋳型として同じプライマー対及び反応条件を用いて核酸増幅反応を行った結果得られる増幅産物のパターンと比較することができる。その結果、判別対象のビール酵母由来のDNAを鋳型として得られた増幅産物のパターンが対照酵母や他の下面ビール酵母菌株の増幅産物のパターンと異なる場合は、異なる菌株であると決定することができる。
また、DNAマイクロアレイを用いて、ビール酵母の各菌株固有の染色体構造を識別することで、菌株を判別することもできる。
DNAマイクロアレイは、あらかじめ調製したヌクレオチドを共有結合などによって基板上に固定化したスポット法によるものであってもよく、又はフォトリソグラフィー技術やコンビナトリアル合成技術を利用してin situ合成法により基板上でヌクレオチドを直接合成したものであってもよい。基板の素材は、ヌクレオチドを安定して固定できるものであればよく、通常用いられる合成樹脂やガラス等でもよい。また基板の形状、ヌクレオチドと基板との固定化方法などは、常法で用いられるものを任意に選択することができる。
DNAマイクロアレイは、アフィメトリクス社やアジレント社等の市販S. cerevisiae用マイクロアレイを用いることもでき、あるいは、Saccharomyces Genome Database(SGD)(http://www.yeastgenome.org/)やワシントン大学のGenome Sequencing Centerのホームページ(http://genomeold.wustl.edu/projects/yeast/)等で公開されているS.cerevisiaeやS.bayanus等の酵母のゲノム塩基配列や下面ビール酵母の判別対象の菌株のゲノム解析を行って決定したゲノム塩基配列に基づいて固定化するオリゴヌクレオチド鎖を設計して作製したカスタムアレイを用いることもできる。
DNAマイクロアレイに固定化するヌクレオチドは、上述するようなビール酵母のゲノムDNAの塩基配列に由来する長さが10b〜50kb、好ましくは20b〜100bのヌクレオチド鎖又は前記ヌクレオチド鎖に相補的なヌクレオチドである。固定化するヌクレオチドは、既知の遺伝子特異的な塩基配列に基づいて設計してもよいが、菌株固有の染色体構造を識別するという観点からは、例えば図13に示すように、1以上の染色体の一部領域又は全領域の塩基配列を一定の長さに分割して網羅するように設計するのが好ましい。本発明のDNAマイクロアレイに固定化するヌクレオチドとしては、例えば、ビール酵母の全染色体ゲノムDNA由来の塩基配列を網羅的に有するものが挙げられる。
DNAマイクロアレイで識別する試料は、判別対象のビール酵母細胞から抽出及び/又は精製したゲノムDNAを断片化して蛍光物質や酵素等で標識したプローブとして調製したものを用いることができる。このようなプローブの調製及びDNAマイクロアレイへのプローブのハイブリダイゼーションは、使用するDNAマイクロアレイに添付されたプロトコール等に従って行えばよい。例えば、アジレント社製マイクロアレイを使用する場合は、アジレント社のOligonucleotide Array-Based CGH for Genomic DNA Analysis手順書に従って行うことができる。またアフィメトリクス社製マイクロアレイを使用する場合は、判別対象の菌株由来のゲノムDNA10μgをWinzelarらの方法(Genetics Vol.163, p79-89 (2003))に従ってDnase Iで消化し、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TAKARA社製)でビオチン化して、DNAマイクロアレイにハイブリダイズさせることができる。
マイクロアレイへのプローブのハイブリダイゼーション及び輝度の検出、シグナル値の抽出及び移動平均の計算は、例えばアフィメトリクス社製Gene Chip Operating Software及びTiling Analysis Softwareを用いて行うことができる。
このようにして得られたデータから、判別対象の各菌株の染色体構造を推定することができる。具体的には、S. cerevisiae由来のヌクレオチドを固定化したDNAマイクロアレイを用いた場合、S. cerevisiaeとの相同性が高い塩基配列を有するプローブは高い輝度を示し、S. cerevisiaeとの相同性が低い塩基配列(例えばS.bayanusとの相同性が高い塩基配列)を有するプローブは特異的にハイブリダイズしないために低い輝度を示す。よって、判別対象の菌株の特定の染色体についてプローブ輝度のシグナル値に差異がある場合は(図13)、判別対の菌株の該染色体又はその一部のコピー数が変化していることを意味する。その場合、プローブ輝度のシグナル値が大きく変化する部位は、S. cerevisiaeとの相同性が高い塩基配列とS. cerevisiaeとの相同性が低い塩基配列との切り替えが起こっている部位である可能性がある。
あるいは、特定の菌株(対照株)のゲノム由来のヌクレオチドを固定化したDNAマイクロアレイを用いた場合、対照株と相同性が高い塩基配列を有するプローブは高い輝度を示し、対照株と相同性が低い塩基配列を有するプローブは低い輝度を示す。よって、特定の染色体についてプローブ輝度のシグナル値に差異がある場合は(図14〜16)、判別対象の菌株の該染色体又はその一部のコピー数が異なることを意味する。その場合、プローブ輝度のシグナル値が大きく変化する部位は、対照株の塩基配列に対して相同性が高い塩基配列と相同性が低い塩基配列との切り替えが起こっている部位である可能性がある。
また、判別対象の各菌株からRNAを調製して、上述するようなDNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現量を測定し、判別対象の各菌株の染色体構造を推定することによって、ビール酵母の菌株の判別を行うこともできる。試料の調製は、当業者が通常用いる方法によって全細胞質RNA(トータルRNA)を調製して断片化し標識してプローブとすることができる。このように調製した試料に、例えばアフィメトリクス社製のYeast Genome S98 Arrayなどを用いてマイクロアレイを行って、得られた各プローブ輝度のシグナル強度から、遺伝子発現量を測定することができる。
このようなデータの解析は、一般的な解析ソフト、例えば表計算ソフト(マイクロソフト社EXCEL 2000)やマイクロアレイ用データ解析ソフト(アジレント社 ジーンスプリングver7.3)を用いて行うことができる。
さらに、判別対象の複数の菌株から2株を選択し、各プローブ単独のシグナル値またはシグナル値の移動平均から、基準とする株を1とした変化倍率を求め、染色体毎に整列させた散布図とし、該2株の比較・判別を行うこともできる。
このようにして得られた各菌株の染色体構造についてのデータを集積してデータベース化し、下面ビール酵母の菌株の判別に利用することもできる。さらに、各菌株の染色体構造の相違に基づいて、下面ビール酵母の菌株を判別すると共に下面ビール酵母菌株間の類縁関係を解析してグループ分け(分類)することができる。このようにして判別および分類された下面ビール酵母菌株の各グループに属する菌株はそのビール醸造特性においてグループ内で一定の共通性を有することが明らかになったので、下面酵母菌株がどのグループに属するかが明らかになればその株のビール醸造特性を予測することができる。
具体的には以下のようにして下面ビール酵母の分類およびそのビール醸造特性の予測を行うことができる。
下面ビール酵母のDNA塩基配列を固定化したDNAアレイは前述したようにアフィメトリクス社やアジレント社から市販されているものを利用することができる。試験対象の各種ビール酵母菌株および対照下面ビール酵母菌株から常法に従ってゲノムDNAを抽出し、試験対象の菌株由来のDNAと対照とする下面ビール酵母とをそれぞれ異なる標識でラベルし(たとえば、試験株DNAをCy5で標識し、対照株DNAをCy3で標識する)、これらをプローブとして競合的に前記DNAマイクロアレイとハイブリダイズさせることができる。二種類の標識に由来するシグナル強度の比(例えばCy5/Cy3強度比)を算出し、シグナル強度の低いプローブやCy3シグナル強度自体が低いプローブ由来のシグナル比を除去し、残りのシグナル強度比のパターンに基づいて、複数の試験酵母菌株から系統樹を作成することができる。系統樹作成のためには例えば、アジレント社から提供されているジーンスプリングVer7.3等を利用することができる。このようにして作成した系統樹の樹形に基づいて下面ビール酵母菌株をいくつかのグループに分類することができる。この系統樹の樹形は同じ構成のDNAマイクロアレイを使う限り本質的な変化はないと考えられ、したがって、この分類は再現性があると考えられる。このようにして分類された各グループに属する下面ビール酵母菌株はグループ内では近縁と考えられるのでそれらの醸造特性は同等または類似であると考えられる。したがって、例えば、予め醸造特性の知られている下面ビール酵母菌株を本発明の方法に従って分類した場合にどのグループに属するかが明らかになっている場合、同じグループに属する試験酵母菌株はその特性の分かっている酵母菌株と類似のビール醸造特性を有すると考えられるので、系統樹内のどのグループがどのような醸造特性を有しているかを高い確率で推定することができる。したがって、試験した下面ビール酵母菌株がどのグループに属するかを決定すれば、その試験下面ビール酵母菌株の醸造特性を高い確率で予測することができる。
ビール醸造特性には香気成分(例えば、イソアミルアルコール、β-フェネチルアルコール、酢酸イソアミル、酢酸βフェネチル)や官能評価による特性が含まれる。これらは「BCOJビール分析法」(日本醸造協会)に記載されるような一般的な方法で測定することができる。例えば、ビール発酵の進行度合いの指標である外観エキス濃度(発酵中に測定される麦汁やビール中の麦芽・副原料由来成分のみかけの濃度)について、例えば、発酵開始7日目に外観エキス濃度が3%以上である場合は良好に発酵が進行しているとはいえないので、使用した酵母のビール醸造特性はあまり好ましくないと考えることができる。また、十分に発酵が進行したビールを製造しようとする場合、製品エキス差が0.5%以上となる酵母はこの目的のためにはあまり適していないと評価することができる。本明細書において、製品エキス差とは、ビール醸造終了時になお残存している資化可能物の差を真正エキス(Real extract)の差で表したものをいう。より具体的には、ビール製造後、製品ビールに再び酵母を加えて残存する糖などを酵母によって強制的に発酵(消費)させた場合の発酵前後におけるエキス含量の差である。製品エキス差は、ビール分析の米国の標準書 Methods of Analysis of the American Society of Brewing Chemists のBeer-16 にあるEnd Fermentation の項に記載された“REb (Real extract before fermentation) REa (Real extract after fermentation)”と同等である。さらに、例えば芳醇な香味のあるビールを製造しようとするときは、香気成分について、例えばイソアミルアルコール60ppm以下またはβ-フェネチルアルコール20ppm以下である場合、使用した酵母の醸造特性はこの目的のためには最適ではないと評価することができる。製造されたビールについては、官能評価により、エステル値、コク、マイルドさが対照ビール以上であるかどうかを指標とすることができ、さらに「キレがいい/悪い」「すっきりする/もったりする」「渋くない/渋い」などの判断基準を加味することができる。対照ビールとしては、我が国で市販されている一般的なビールを選ぶことができる。外観エキス、製品エキス差、指標とする香気成分および官能評価等のを含むビール醸造特性の評価項目および判定基準は製造しようとするビールの特性に応じて変更することができる。
本発明の菌株判別方法あるいは分類方法は、単独で用いることもでき、他の判別または分類方法及び/又は指標と組合せて用いて判別または分類の精度をより高めることもできる。
以下の実施例によって、本発明の態様をより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
〔実験1:下面ビール酵母のゲノムライブラリー(プラスミドライブラリー、コスミドライブラリー)の作製〕
(1)下面ビール酵母ゲノムDNAの分離
出願人保有の下面ビール酵母BF1株から、ゲノムDNAを抽出し、制限酵素あるいは超音波処理することで、低分子化し、約40kbpのDNA断片をショ糖密度勾配遠心法等によって分離した。酵母のゲノムDNAの分離は、Qiagen社のQiagen Genomic-tip500/G(Cat. No. 10262) を用いて、QIAGEN Genomic DNA Handbook (August 2001) p44-47に記載されている手順でおこなった。
(2)コスミドライブラリーの作製
分離した下面ビール酵母由来の約40kbpのDNA断片をEPICENTRE社製のコスミドCopyControlpCC1FOSTM(EPICENTRE社Cat. No. CCFOS110)にライゲーションし、さらにin vitro packaging kitを用いて、ラムダファージ粒子にパッケージングした。下面ビール酵母由来DNAが挿入された各コスミドを、大腸菌EPI300-T1R株に形質導入し、下面ビール酵母のコスミドライブラリーを作製した。形質導入された大腸菌は、クロラムフェニコール耐性菌として選択した。
(3)プラスミドライブラリーの作製
分離した下面ビール酵母由来の約1〜3 kbpのDNA断片を、プラスミドpUC18 Sma I/BAP等とライゲーションさせ、ライゲーション反応物を、大腸菌 JM109等に形質転換させた。形質転換させた大腸菌はアンピシリン耐性等によって選択し、プラスミドライブラリーを作製した。
〔実験2:下面ビール酵母のゲノムDNA塩基配列の決定〕
(1)コスミドDNAの分離
コスミドクローンを有する形質導入された大腸菌は、20μg/mlのクロラムフェニコール含有LB培地(1% Tryptone, 0.5% Yeast extract, 1% NaCl)で培養し、キアゲン社のQIAGEN-tip20(Cat. No. 10023) 等を用いて、QIAGEN Plasmid MiniHandbook (October 2001) p13に記載されている手順で、コスミドのDNAを分離した。
(2)プラスミドDNAの分離
プラスミドクローンを有する形質導入された大腸菌は、20μg/mlアンピシリン含有LB培地(1% Tryptone, 0.5% Yeast extract, 1% NaCl)で培養し、キアゲン社QIAGEN-tip20(Cat. No. 10023) 等を用いて、QIAGEN Plasmid MiniHandbook (October 2001) p10-12に記載されている手順で、プラスミドのDNAを分離した。
(3)DNA塩基配列の決定
分離されたコスミドDNAの末端DNA塩基配列は、pCC1TM/pEpiFOSTM Forward Sequencing Primer (EPICENTRE社Cat. No. F5FP010)あるいは、pCC1TM/pEpiFOSTM Reverse Sequencing Primer (EPICENTRE社Cat. No. F5RP010)をシークエンスプライマーとして用いて決定した。ジデオキシ反応はBeckmannCoulter社のGenomeLabTM Dye Terminator Cycle Sequencing with Quick Start Kit(Cat. No. P/N608120)等を用いた。シークエンサーは、BeckmannCoulter社のCEQ2000等を用いた。分離したプラスミドDNAの末端DNA塩基配列は、M13 forward プライマー(タカラバイオ Cat. No. 3887)あるいは、M13 Reverse プライマー (タカラバイオ Cat. No. 3830A) をシークエンスプライマーとして用いて決定した。
〔実験3:アセンブリによる下面ビール酵母ゲノムDNAの構築〕
上記〔実験2〕で得られたDNAシークエンスデータから、下面ビール酵母ゲノムDNAの構築をおこなった。アセンブリ(DNA塩基配列断片を整列し、重ね合わせ、連結する作業)は、コンピューターソフトウエアであるArachneを用いておこなった。その結果、一連の塩基配列であるコンティグ(contig)を形成することができた。また、各コンティグ間の塩基配列が未定であっても、解析に用いた各プラスミド、各コスミドのクローンの情報をあわせることで、各コンティグを連結するスーパーコンティグ(supercontig)あるいは、スキャホールド(scaffold)を作製することができる。今回の結果、36個のスーパーコンティグを作製することができた(図1、表1)。
〔実験4:下面ビール酵母の推定染色体の構築〕
作製したスーパーコンティグから下面ビール酵母のゲノム構造を推定するため、まず、各スーパーコンティグからORF(オープンリーティングフレーム)を予測した。各スーパーコンティグの塩基配列中、翻訳開始コドンであるATGから翻訳終了コドンであるTAA、TAG、TACまでを各ORFとし、予測した各ORFには、ORFナンバー(IDナンバー)を付した。スーパーコンティグNo.33のORFとその相同性について表2に、スーパーコンティグNo.31のORFとその相同性について表3に示した。
表2.スーパーコンティグNo.33内のORFとS.cerevisiaeのORFとの相同性

表3.スーパーコンティグNo.31内のORFとS.cerevisiaeのORFとの相同性

スーパーコンティグNo.33の各ORFは、S. cerevisiaeの第I染色体のORFと高い相同性を示した(表2、平均identity 92%)。一方、スーパーコンティグNo.31の各ORFは、S. cerevisiaeの第I染色体のORFと相同性を示したが、スーパーコンティグNo.33と比較するとその相同性は低いものであった(表3、平均identity 78%)。下面ビール酵母は、S. cerevisiaeとS. bayanusの交雑体であると考えられていることより、スーパーコンティグNo.33は、S. cerevisiae型(SC型)第I染色体のDNA塩基配列を示しており、スーパーコンティグNo.31は、S. bayanus型(SB型)第I染色体のDNA塩基配列を示していると考えられた。この操作を、各スーパーコンティグにおこなった結果、図1及び表1のように、各スーパーコンティグが下面ビール酵母の各染色体のDNA塩基配列を示していると考えられた。
〔実験5:キメラ染色体(S. cerevisiae型のDNA塩基配列とS. bayanus型のDNA塩基配列が同一染色体上で見られる染色体)の存在状態の確認〕
スーパーコンティグによる下面ビール酵母の推定染色体の構築の作業をおこなう中で、S. cerevisiae型のDNA塩基配列とS. bayanus型のDNA塩基配列が同一染色体上で見られる場合があった。S. bayanus型第III染色体の右腕の途中から、S. cerevisiae型のDNA配列が挿入された例を、図2に示す。図2には、上段には、実験室酵母S. cerevisiaeのMATa1遺伝子のDNA塩基配列(配列番号1、Genbank accession number V01313)を示した。下段には、解析した下面ビール酵母BF1株のSB型第III染色体右腕末端のDNA塩基配列を示した(配列番号2)。図2上段の塩基番号700周辺までは、両段の塩基配列は類似してはいるものの相違が見られていたが、図2上段の塩基番号700以降は、両段の塩基配列には、ほとんど差異が認められなかった。実験室酵母S. cerevisiaeでは、接合型を決定するMAT遺伝子は、第III染色体に座乗しているが、類似したHML遺伝子が第III染色体左腕に、HMR遺伝子が第III染色体右腕に座乗していることが知られている。従って、解析した下面ビール酵母BF1株のSB型第III染色体の右腕末端配列(配列番号2)は、実験室酵母のMAT遺伝子と相同性があったことより、SB型第III染色体右腕に座乗しているHMR遺伝子と考えられた。しかし、下面ビール酵母のSB型第III染色体は、図3に見られるような構造になっており、SB型HMR遺伝子の途中の塩基配列より、SC型のHMR遺伝子の配列が挿入された構造になっていると考えられた。このように、S. cerevisiae型のDNA塩基配列とS. bayanus型のDNA塩基配列が同一染色体上で見られる染色体(キメラ染色体)は、SB型第III番染色体以外にも存在した(図1、第VII染色体、第VIII染色体、第X染色体、第XVI染色体)。
〔実験6:下面ビール酵母染色体内のheterogenousな領域の確認〕
スーパーコンティグによる下面ビール酵母の推定染色体の構築の作業をおこなう中で、第X染色体は、アセンブリの結果を詳細に見ると、図4に見られるスーパーコンティグからなることが見出された。Supercontig12内のcontig1054のYJR009Cの翻訳開始点周辺のDNA塩基配列(配列番号3)を、実験室酵母S. cerevisiaeのDNA塩基配列のデータベース(SGD, Saccharomyces Genome Database http://www.yeastgenome.org/)上の第X染色体塩基配列番号453,213から455,181までのものと比較したものを図5に示す。contig1054内のYJR009CのORFのDNA塩基配列(下段の塩基番号で1400周辺まで)は、SGDのものとほとんど一致していたことより、SC型のDNA配列であると考えられた。しかし、その5'非翻訳領域(下段の塩基番号で1400以降)では、SGDの配列とのidentityが低くなっていた。さらに、contig1054内のYJR010Wの配列(配列番号4)は、SGDのYJR010Wの配列(SGDでは、第X染色体塩基配列番号456232から457767まで)と比べるとそのidentityは、1546塩基中1314塩基一致の85%であり、ORFとしては比較的低いものであった(図6)。一方、contig1612内のYJR010Wの配列(配列番号5)は、SGDのYJR010Wの配列(第X染色体塩基配列番号456232から457767まで)とのidentityはきわめて高いものであり(1246塩基中1242塩基一致の99.7%)、SC型YJR010Wであると考えられた(図7)。以上より、contig1054では、YJR009CのORFまではSC型塩基配列、それ以降は、SB型塩基配列であるキメラ構造をとっていると考えられた。
これらの結果から考察すると、解析に用いた下面ビール酵母BF1株の第X染色体の構造は、YJR009Cより、左腕側がSC型塩基配列で、右腕側がSB型塩基配列であるSupercontig 12と、左腕末端から、YJR008Wまで、SB型塩基配列であるSupercontig 23と、YJR010Wから右腕側がSC型塩基配列であるSupercontig30からなると思われた(図4)。しかし、下面ビール酵母の第X染色体の実際の構造がこのようなものであるとは考えにくい。
そこで、contig 1053内にあるSC型YJR008Wの翻訳開始点周辺のDNA塩基配列(配列番号6)と、contig 1809内にあるSB型YJR008Wの翻訳開始点周辺のDNA塩基配列(配列番号7)の比較をおこなった。結果は、図8に示した。また、contig 1612内にあるSC型YJR010Wの翻訳開始点周辺のDNA塩基配列(配列番号8)と、contig 1054内にあるSB型YJR010Wの翻訳開始点周辺のDNA塩基配列(配列番号9)の比較をおこなった。結果は、図9に示した。その結果、SC型YJR008Wの翻訳開始点周辺からは、SC型塩基配列に特異的なPCR Primer 1 SCYJR008WF(配列番号10)と、SB型YJR008Wの翻訳開始点周辺からは、SB型塩基配列に特異的なPCR Primer 2 SBYJR008WF(配列番号11)を選定した。また、SC型YJR010Wの翻訳開始点周辺からは、SC型塩基配列に特異的なPCR Primer 3 SCYJR010WR(配列番号12)を選定した。SB型YJR010Wの翻訳開始点周辺からは、SB型塩基配列に特異的なPCR Primer 4 SBYJR010WR(配列番号13)を選定した。
それぞれのプライマーを用いて、今回の解析に用いた下面ビール酵母BF1株のゲノムDNAをテンプレートとして、PCRをおこなったところ、全てにPCR増幅断片を得た(図10)。この結果より、解析に用いた下面ビール酵母菌株BF1株の第X染色体にはSC-SC型、SC-SB型、SB-SC型、SB-SB型の4種があると推定された(図11)。すなわち、今回、ゲノム解析をおこなった下面ビール酵母BF1株の第X染色体は、図11に見られるheterogenousな構造であると考えられた。
そこで、この領域のゲノムDNAのDNA塩基配列の決定をおこなった。具体的には、SC-SC型第X染色体は、PCR Primer 1 SCYJR008WF(配列番号10)とPCR Primer 5 SCYJR010WR2 (配列番号13)を用いて、PCR増幅をおこない、DNA塩基配列を決定した。PCR Primer 5 SCYJR010WR2 (配列番号14)の塩基配列は、SGDにあるYJR010W翻訳終了点周辺の配列より、SC型塩基配列特異的になるように選択した。SC-SB型型第X染色体は、PCR Primer 1 SCYJR008WF(配列番号10)とPCR Primer 6 SBYJR010WR2(配列番号15)を用いて、PCR増幅をおこない、DNA塩基配列を決定した。PCR Primer 6 SBYJR010WR2(配列番号15)の塩基配列は、contig1054内にあるSB型YJR010W翻訳終了点周辺の配列より、SB型塩基配列特異的になるように選択した。SB-SC型型第X染色体は、PCR Primer 2 SBYJR008WF(配列番号12)とPCR Primer 5 SCYJR010WR2(配列番号14)を用いて、PCR増幅をおこない、DNA塩基配列を決定した。SB-SB型型第X染色体は、PCR Primer 2 SBYJR008WF(配列番号11)とPCR Primer 6 SBYJR010WR2(配列番号15)を用いて、PCR増幅をおこない、DNA塩基配列を決定した。決定した各染色体のDNA塩基配列は、SC-SC型第X染色体(配列番号16)、SC-SB型第X染色体(配列番号17)、SB-SC型第X染色体(配列番号18)、SB-SB型第X染色体(配列番号19)の各配列表に示すとおりであった。
〔実験7:下面ビール酵母染色体内のheterogenousな領域を利用した菌株判別法の開発〕
今回のゲノム解析に用いたBF1株は、第X染色体が図11に見られるheterogenousな構造である。このような構造が、他の下面ビール酵母菌株間にも見られるかどうかを検討した。SC型DNA塩基配列特異的なPCR Primer 1 SCYJR008WF(配列番号10)とPCR Primer 3 SCYJR010WR(配列番号12)、SB型DNA塩基配列特異的なPCR Primer 2 SBYJR008WF(配列番号11)とPCR Primer 4 SBYJR010WR(配列番号13)を用い、SC-SC型第X染色体、SC-SB型第X染色体、SB-SC型第X染色体、SB-SB型第X染色体の増幅をおこなった。これらのプライマーを用いて、各種下面ビール酵母菌株のゲノムDNAをテンプレートにして、PCRをおこなった結果を図12に示す。この結果、この領域が異なる下面ビール酵母菌株を判別することができた。
〔実験8:下面ビール酵母のDNA塩基配列を利用したカスタムDNAマイクロアレイの作製〕 DNAアレイの基板表面に固定するオリゴヌクレオチドの配列は、〔実験2〕で決定したDNA塩基配列に基づいて選択した。
〔実験9:マイクロアレイによる第III染色体右腕の染色体構造の推定〕
ビール酵母菌株の染色体構造がマイクロアレイを用いた方法で推定できるか検討した。
醸造用酵母又は実験室酵母からのゲノムDNAの抽出はQiagen Genomic Tip500/Gを用い、Qiagen社のマニュアルに従って行った。マイクロアレイは、SGD(Saccharomyces Genome Database)等で公開されている酵母ゲノム塩基配列を利用したアフィメトリクス社製カスタムアレイを利用した。下面ビール酵母BF1株から抽出したゲノムDNA10μgをWinzelarらの方法(Genetics Vol.163, p79-89 (2003))に従ってDnase Iで消化し、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TAKARA社製)でビオチン化してDNAマイクロアレイにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション及び輝度の検出、シグナル値の抽出及び移動平均の計算は、アフィメトリクス社製Gene Chip Operating Software及びTiling Analysis Softwareを用いて行った。
得られたデータの解析は、表計算ソフト(マイクロソフト社EXCEL 2000)またはデータ解析ソフト(アジレント社 ジーンスプリングver7.3)を用いて行い、各プローブ輝度を染色体毎に整列させて散布図で表した。図13に下面ビール酵母BF1株のS. cerevisiae型ゲノム第III染色体の一部の結果を示した。この図中の右腕部分は、左腕部分よりも各プローブ輝度が高いことから、この右腕部分断片は、BF1株中に左腕部分より多く存在する(すなわち、コピー数が多い)と考えられた。BF1株のS. cerevisiae型(SC型)第III染色体の右腕末端部分は、図3に示されるように、S. bayanus(SB)型第III染色体右腕の途中、図2上段で表記している塩基番号700周辺よりSC型第III染色体右腕に切り替わっていることにより、コピー数の変動が見られたものと考えられる(図3)。図13に示した輝度の上昇位置は、図2の切り替わり部分(図2上段の塩基番号700周辺)に対応していたことから、ビール酵母菌株の染色体構造がマイクロアレイを用いた方法で判別できることがわかった。なお、図13、X軸に記載されている番号は、SGDの第III染色体の塩基番号を示している。配列番号1は、SGDの第III染色体の塩基番号198659から199947に該当する。従って、図13において、輝度に変化がある第III染色体の塩基番号198816周辺は、図2上段の塩基番号700にほぼ一致する。
〔実験10:下面ビール酵母染色体構造を利用した菌株判別法〕
ビール酵母菌株間の染色体構造の差異がマイクロアレイを用いた方法で識別できるか検討した。
各種ビール酵母菌株のシグナル値及び移動平均の算出は、〔実験9〕に記載の方法で行った。得られたデータの解析は、表計算ソフト(マイクロソフト社EXCEL 2000)またはデータ解析ソフト(アジレント社 ジーンスプリングver7.3)を用いて行った。2株の各プローブ単独のシグナル値またはシグナル値の移動平均から、基準とする株を1とした変化倍率を求め、染色体毎に整列させ散布図で表した。
アジレント社製マイクロアレイ(G4486A)を用いS. cerevisiae型ゲノムにつき、下面ビール酵母同士を比較した図を図14、図15、図16に示した。識別する試料の調製は、アジレント社のOligonucleotide Array-Based CGH for Genomic DNA Analysis手順書に従って行った。
BY2株とBF1株の比較では、第VI、XII、XIV染色体の全域及び第I、V、VIII染色体の一部で、BN3株とBF1株の比較では、第I、III、VI染色体の全域及び第V、XII染色体の一部で、B0104株とBF1株の比較では、第XIV染色体の全域で、染色体量比に差異が認められた。
〔実験11:ビール酵母菌株間の染色体構造の差異と遺伝子発現量の比較〕
マイクロアレイを用いて識別したビール酵母菌株の染色体構造の差異が遺伝子発現量から推定される染色体構造の差異と一致するか否か、下面ビール酵母のBF1株とB0104株について検討した。
ビール酵母は、YPD液体培地100mlを用い25℃振とう培養で対数増殖期まで増殖させた後、遠心分離で集菌し、冷水により2回洗浄を行った。菌体1gにTES(10mM Tris-HCl:pH7.4、5mM EDTA、1% SDS)1mlを添加混合後、フェノールクロロホルム1mlを加え混合した。10分毎に攪拌を行いながら65℃で1時間保温後、5000rpmで5分遠心し、上清を別の容器に移した。これをさらにフェノールクロロホルム、続いてクロロホルムイソアミルアルコールで抽出した上清400μlに4M LiCl 40ulとエタノール1mlを添加し遠心した沈殿を乾燥後、TEで溶解し、トータルRNA画分を得た。
マイクロアレイの測定は、アフィメトリクス社製のYeast Genome S98 Arrayを用い、GeneChip Expression Analysis Technical Manualに従い、データを、アフィメトリクス社製Gene Chip Operating Softwareで抽出した。データの解析は、表計算ソフト(マイクロソフト社EXCEL 2000)またはデータ解析ソフト(アジレント社 ジーンスプリングver7.3)を用いて行い、2株の各プローブ単独のシグナル値またはシグナル値の移動平均から、基準とする株を1とした変化倍率を求め、染色体毎に整列させ散布図で表した。
分母を下面ビール酵母BF1株、分子を下面ビール酵母B0104株とした散布図を図17に示す。第XIV染色体の発現が、全般的にB0104株の方がBF1株よりも高かった。B0104株のS. cerevisiae型ゲノム第XIV染色体量(すなわち、コピー数)は、BF1株よりも高くなっており(〔実験10〕、図16)、発現量の差異と染色体量の差異は一致していた。
〔実験12:DNAマイクロアレイを用いた下面ビール酵母の分類および類縁関係の推定〕
実験10の結果に基づき、染色体構造の相違を指標として下面ビール酵母菌株の菌株判定が可能であることが明らかになったので、さらにDNAマクロアレイを用いて下面ビール酵母菌株間の類縁を調べた。
53株の下面ビール酵母菌株から、実験9に記載したのと同様な方法によりゲノムDNAを抽出し、その10μgをWinzelarらの方法(Genetics Vol.163, p79-89 (2003))に従ってDnase Iで消化して断片化した。対照酵母菌株をCy3で標識し、各試験株のDNAをCy5で標識してプローブとした。DNAマイクロアレイは以下のように設計し、Agilent社にカスタムDNAマイクロアレイの作製を依頼した。実験2で決定したDNA塩基配列に基づき、約1200bp間隔で50merの長さの配列を選択し、それらの配列からなる約44000個のオリゴヌクレオチドを合成してマイクロアレイ上に固定した。このDNAマイクロアレイに調製した各試験株プローブと対照株プローブを競合的にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション及び輝度の検出、シグナル値のデータを得た。これらのデータを、データ解析ソフト(Agilent社、ジーンスプリングVer.7.3)を用いて解析した。蛍光強度の低いものおよびシグナル比(Cy5/Cy3)が低いプローブ由来のデータを除外し、残りのプローブについてのシグナル比(Cy5/Cy3)に基づいてジーンスプリングのcondition tree作成機能を使用して系統樹を作成した(図18)。
図18に示したように、染色体構造の相違に基づいて系統樹を作成することにより、下面ビール酵母を分類することができ、さらに類縁関係を推定することができることが示された。なお、図18中の株番号は便宜的に通し番号を付けなおした。
〔実験13:系統樹に基づいて分類した下面ビール酵母群とそれらの醸造特性との関連性評価〕
分類された各グループに属するいくつかの下面ビール酵母菌株と通常用いられる成分の麦汁を用いて、200Lの発酵タンクパイロット設備により発酵を行い、試験ビールを作製した。作製されたビールを、外観エキス、製品エキス差、香気成分(イソアミルアルコールおよびβ-フェネチルアルコール等)について分析し、官能評価も行い、これらの結果に基づいて評価した。その結果を表4に示す。分析は「BCOビール分析法」(日本醸造協会)に記載された方法に従って行った。株番号は図18に対応する。
表4.各グループに属する酵母菌株と醸造特性との関連性
表4.つづき
表4.つづき
表4中、外観エキスが発酵7日目に3%以上である場合、製品エキス差が0.5%以上である場合、または、香気成分特にイソアミルアルコールが60ppm以下である場合若しくはβ-フェネチルアルコールが20ppm以下である場合に、分析値に関する評価を「×」とした。また、エステル値が対照ビール以上、コクが対照ビール以上、またはマイルドさが対照ビール以上である場合に、官能評価を「○」とした。官能評価については、「キレの良さ」等の加点評価、「もったり感」および「渋さ」などの減点評価も考慮した。対照ビールとしては我が国の一般的なビールを想定してこれを基準として評価した。
さらに、培地として1%酵母エキストラクト、2%ペプトン、15%マルトースを用いて各グループに属するいくつかの下面ビール酵母菌株を培養し、産生された香気成分を分析した。その結果を図19に示す。図19に示されたように、分類された各グループと産生される香気成分に相関関係があることが明らかになった。例えば、グループAに比較して、グループB、Iは酢酸イソアミル、酢酸βフェネチルの産生量が多いことが明らかに成った。従って、DNAマイクロアレイを用いた分析結果に基づいて系統樹を作製すると、醸造特性が未知の酵母菌株についてその醸造特性を予測することができることが明らかになった。
下面ビール酵母のゲノム構造を示す。太い枠で囲まれた部分は実験室酵母S.cerivisiae型(SC型)配列を有することを表し、細い枠で囲まれた部分はS.bayanus型(SB型)配列を有することを示す。SB型塩基配列を有する染色体のうち、SC型配列と比較して、別の番号の染色体との間に組換えが起こっているようにみられる染色体については、相同性のあるSC型染色体の番号を枠内にローマ数字で示した。 実験室酵母S.cerevisiaeのMATa1遺伝子のDNA配列(上段)と下面ビール酵母BF1株のSB型第III染色体右腕末端のDNA配列(下段)を比較した結果を示す。下線部分は、identityが高い領域を示す。 下面ビール酵母の第III染色体の構造を示す。図中、SC-MHL、SC-MAT、SC-HMRはそれぞれ、SC型MHL遺伝子、SC型MAT遺伝子、SC型HMR遺伝子の相対的位置を表し、SB-MHL、SB-MAT、SB-HMRはそれぞれSB型MHL遺伝子、SB型MAT遺伝子、SB型HMR遺伝子の相対的位置を表す。 スーパーコンティグを用いて推定した下面ビール酵母の第X染色体の構造を示す。アセンブリソフトウェアArachneを用いてスーパーコンティグのアセンブリを行い、下面ビール酵母の第X染色体の構造を推定した。 Supercontig 12内のcontig 1054中のYJR009Cの翻訳開始点付近のDNA配列(配列番号3)と実験室酵母S.cerivisiaeのゲノムデータベース(SGD)上の第X染色体塩基配列番号453,213から455,181までの領域との相同性を比較した結果を示す。下線部は、identityが高い部分を示し、二重線下線部は、YJR009Cの翻訳開始点(相補鎖)を示す。 contig 1054内のYJR010Wの配列(配列番号4)とSGD中のYJR010Wの配列との相同性を比較した結果を示す。 contig 1612内のYJR010Wの配列(配列番号5)とSGD中のYJR010Wの配列との相同性を比較した結果を示す。 contig 1053内のSC型YJR008Wの翻訳開始点付近の配列(配列番号6)とcontig 1809内のSB型YJR008Wの翻訳開始点付近の配列(配列番号7)との相同性を比較した結果を示す。実線下線部は、PCR Primer 1 SCYJR008WFの塩基配列(配列番号10)を示し、点線下線部は、PCR Primer 2 SBYJR008WFの塩基配列(配列番号11)を示し、二重線下線部は、各YJR008Wの翻訳開始点を示す。 contig 1612内にあるSC型YJR010Wの翻訳開始点周辺のDNA塩基配列(配列番号8)とcontig 1054内にあるSB型YJR010Wの翻訳開始点周辺のDNA塩基配列(配列番号9)との相同性を比較した結果を示す。実線下線部は、PCR Primer3 SCYJR010WRの相補鎖の塩基配列(配列番号12)を示し、点線下線部は、PCR Primer4 SBYJR010WRの相補鎖の塩基配列(配列番号13)を示し、二重線下線部は、YJR010Wの翻訳開始点を示す。 下面ビール酵母(BF1株)のゲノムをテンプレートとしたPCRの結果を示す。(A)各プライマーの組み合わせを用いて増幅したDNA断片のアガロース電気泳動。レーン1:PCR Primer 1 SCYJR008WF とPCR Primer 3 SCYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、レーン2:PCR Primer 1 SCYJR08WF とPCR Primer 4 SBYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、レーン3:PCR Primer 2 SBYJR008WFとPCR Primer 3 SCYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、レーン4:PCR Primer 2 SBYJR008WRとPCR Primer 4 SBYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、MはM: 分子量マーカー λ Hind III 消化物である。(B)各PCRプライマーの相対的位置関係を示す。 下面ビール酵母(BF1株)の第X染色体の構造を示す。実際のBF1株の染色体は4種類からなると推定された。 各下面ビール酵母菌株の染色体多様性を示す。下面ビール酵母BF1株(a)、NCYC520株(b)、S.carlsbergensisT CBS1513(c)、Weihenstephan 128株(d)およびMn1株(e)のゲノムDNAをテンプレートとし、各種プライマー対を用いて行ったPCRの結果を示す。レーン1:PCR Primer 1 SCYJR008WF とPCR Primer 3 SCYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、レーン2:PCR Primer 1 SCYJR08WF とPCR Primer 4 SBYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、レーン3:PCR Primer 2 SBYJR008WFとPCR Primer 3 SCYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、レーン4:PCR Primer 2 SBYJR008WRとPCR Primer 4 SBYJR010WRとをPCRプライマー対とした増幅結果、MはM: 分子量マーカー λ Hind III 消化物である。 DNAマイクロアレイを用いた解析結果を示す。図は下面酵母SC型ゲノム第III染色体上の各プローブ輝度の分布を示している。横軸はSGDにおける第III染色体の塩基配列番号を示す。 下面酵母間の染色体量を比較した結果を示す。データは染色体についてBF1株の染色体量に対するBY-2株の染色体の相対量を示す。縦軸は染色体量の相対比を示し、横軸は対応する領域の染色体上の位置を示す。 下面酵母間の染色体量を比較した結果を示す。データは染色体についてBF1株の染色体量に対するBN-3株の染色体の相対量を示す。縦軸は染色体量の相対比を示し、横軸は対応する領域の染色体上の位置を示す。 下面酵母間の染色体量を比較した結果を示す。データは染色体についてBF1株の染色体量に対するB0104株の染色体の相対量を示す。縦軸は染色体量の相対比を示し、横軸は対応する領域の染色体上の位置を示す。 下面酵母間の遺伝子発現量を比較した結果を示す。データは染色体についてBF1株の発現量に対するB0104株の発現量の比を示す。縦軸は発現量の相対比を示し、横軸は対応する領域の染色体上の位置を示す。 染色体構造に基づいて作成した、下面ビール酵母菌株の系統樹を示す。 図18の系統図に基づき分離した各グループに属する酵母下部の香気成分産生量のグラフである。図19A,B,DおよびEにおいて横軸は菌株番号、縦軸はppmを表し、図19CおよびFにおいて横軸は菌株番号、縦軸は産生量の比を表す。図19A:酢酸イソアミル産生量、図19B:酢酸βフェネチル産生量、図19C:酢酸イソアミル/イソアミルアルコール産生量の比、図19D:イソアミルアルコール産生量、図19E:βフェネチルアルコール産生量、図19F:酢酸フェネチル/フェネチルアルコール産生量の比。

Claims (1)

  1. 判別対象のビール酵母由来のDNAを鋳型として、下面ビール酵母の同一染色体上でS. ce
    revisiae型塩基配列とS. bayanus型塩基配列との組換えが起こっている箇所を含む領域を特異的に増幅するプライマー対を用いて核酸増幅反応を行うこと、及び、増幅されたポリヌクレオチドを検出することを含む、下面ビール酵母の菌株判別方法であって、前記プライマー対として、配列番号10のヌクレオチドと配列番号12のヌクレオチドとの組合せ、配列番号10のヌクレオチドと配列番号13のヌクレオチドとの組合せ、配列番号11のヌクレオチドと配列番号12のヌクレオチドとの組合せ、及び配列番号11のヌクレオチドと配列番号13のヌクレオチドとの組合せを用いる、前記方法。
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