(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1乃至図9を用いて説明する。図1は、本実施形態における車両用エネルギー管理システムの概略の構成及びエネルギーの大まかな流れを模式的に示す図である。図1に示すように、車両用エネルギー管理システム1は、燃料を爆発燃焼させて生成した動力(運動エネルギー)を外部に提供するエンジン10と、エンジン10を制御するエンジン電子制御装置(ECU)11とを有している。エンジンECU11は、各種の制御や演算を行う中央処理装置(CPU)と、各種の制御プログラムや制御定数等が格納された読出し専用の記憶装置(ROM)と、任意の記憶領域においてデータの書込み及び読出しが可能な記憶装置(RAM)とを有している。またエンジンECU11は、通信ネットワーク60を介して接続された他のECUとの間で所定の通信プロトコルに基づきデータを送受信するための通信インターフェイス(I/F)を有している。
また車両用エネルギー管理システム1は、走行中の車両に対して制動力を加えるとともに、車両の慣性エネルギーを回生して回生動力を生成する機械的なブレーキ20と、ブレーキ20を制御するブレーキECU21とを有している。ブレーキECU21は、エンジンECU11と同様にCPU、ROM及びRAMを有し、通信I/Fを介して通信ネットワーク60に接続されている。
さらに車両用エネルギー管理システム1は、車両用空調装置の冷凍サイクルを構成するエンジン駆動式のコンプレッサ30と、車両用空調装置の空調ユニットを構成する電動式のブロワ40と、コンプレッサ30及びブロワ40を含む車両用空調装置を制御する空調ECU31を有している。コンプレッサ30は、空調ECU31の制御に基づき、エンジン10から提供された動力(又はブレーキ20から提供された回生動力)を利用して冷媒を圧縮するようになっている。ブロワ40は、空調ECU31の制御に基づき、外部から提供された電力を利用して空調空気を車室内に送風するようになっている。空調ECU31は、CPU、ROM及びRAMを有し、通信I/Fを介して通信ネットワーク60に接続されている。
冷凍サイクルは、コンプレッサ30の他に、コンプレッサ30で圧縮された高温高圧の冷媒を空気との熱交換により冷却するガスクーラ(高圧側熱交換器)と、ガスクーラで冷却された冷媒を減圧膨張させる膨張弁(減圧手段)と、膨張弁で減圧膨張した低温低圧の冷媒とブロワ40により送風される空調空気との熱交換を行い、空調空気を冷却するとともに冷媒を加熱してコンプレッサ30に戻すエバポレータ(低圧側熱交換器)とを有している。コンプレッサ30、ガスクーラ、膨張弁及びエバポレータは、冷媒配管を介してこの順に環状に接続されている。エバポレータでの空調空気からの吸熱量は、コンプレッサ30の回転数や容量に依存して変化する。すなわち、コンプレッサ30は動力を利用して吸熱のエネルギー(吸熱エネルギー)を生成し、生成した吸熱エネルギーを空調空気に提供するエネルギー利用提供装置と考えることができる。ここで、吸熱エネルギーは、運動エネルギー等を利用して生成されているため、本実施形態においては正(+)のエネルギーとして取り扱う。
図示を省略しているが、車両用空調装置は、エンジン冷却水との熱交換により空調空気を加熱するヒータコアや、電力を用いて空調空気を加熱するPTCヒータ等を有している。ヒータコアは、エンジン10で生成された熱エネルギー(温熱)を利用して空調空気に熱エネルギーを提供するようになっている。PTCヒータは、外部から提供された電力を利用して空調空気に熱エネルギーを提供するようになっている。
また車両用エネルギー管理システム1は、外部から提供された動力を利用して発電し、電力(電気エネルギー)を外部に提供するオルタネータ(エネルギー利用提供装置)50と、オルタネータ50やパワートレイン等を制御するパワートレインECU51とを有している。パワートレインECU51は、CPU、ROM及びRAMを有し、通信I/Fを介して通信ネットワーク60に接続されている。
さらに車両用エネルギー管理システム1は、車両内のエネルギーの需給情報(エネルギー管理情報)を監視及び集計して記憶するエネルギー管理部100を有している。エネルギー管理部100は、例えばCPU、ROM及びRAMを有し、通信I/Fを介して通信ネットワーク60に接続されている。
ここで、エネルギー管理部100は、物理的な構成に関わらず、エンジンECU11、ブレーキECU21、空調ECU31及びパワートレインECU51等との間でエネルギーの需給情報等を送受信又は共有できるようになっていればよい。すなわち、エネルギー管理部100は、図1に示したように他のECUから物理的に独立して設けられた専用のECUであってもよいし、他のECUに物理的に統合された構成であってもよい。
図2は、本実施形態における車両用エネルギー管理システム1の論理的な構成を示す図である。図2に示すように、車両用エネルギー管理システム1は、例えば、1つのエネルギー管理部100と、複数のエネルギー提供部200と、複数のエネルギー利用部300とを有している。各エネルギー提供部200は、エネルギー処理単位毎に独立した論理的なグループであり、動力提供部201、吸熱提供部202、電力提供部203及び回生動力提供部204等により構成されている。各エネルギー提供部200は、それぞれエネルギー管理部100に論理的に接続され、エネルギー管理部100との間で情報の送受信又は共有が可能になっている。また、各エネルギー利用部300は、エネルギー処理単位毎に独立した論理的なグループであり、動力利用部A301、動力利用部B302及び電力利用部303等により構成されている。各エネルギー利用部300は、それぞれエネルギー管理部100に論理的に接続され、エネルギー管理部100との間で情報の送受信又は共有が可能になっている。
動力提供部201は、エンジン10及びエンジンECU11を含み、外部に動力を提供する論理的なグループである。吸熱提供部202は、コンプレッサ30及び空調ECU31を含み、外部に吸熱エネルギーを提供する論理的なグループである。電力提供部203は、オルタネータ50及びパワートレインECU51を含み、外部に電力を提供する論理的なグループである。回生動力提供部204は、ブレーキ20及びブレーキECU21を含み、車両の慣性エネルギーを回生して回生動力を外部に提供する論理的なグループである。
動力利用部A301は、コンプレッサ30及び空調ECU31を含み、外部から提供された動力を利用する論理的なグループである。動力利用部B302は、オルタネータ50及びパワートレインECU51を含み、動力利用部A301と同様に外部から提供された動力を利用する論理的なグループである。電力利用部303は、ブロワ40及び空調ECU31を含み、外部から提供された電力を利用する論理的なグループである。
このように、車両用エネルギー管理システム1の論理的な構成は、物理的な構成とは必ずしも一致しない。例えばコンプレッサ30は、吸熱提供部202に含まれるとともに動力利用部A301にも含まれる。また空調ECU31は、コンプレッサ30と同様に吸熱提供部202及び動力利用部A301の双方に含まれるとともに、さらに電力利用部303にも含まれる。
図3は、車両用エネルギー管理システム1におけるエネルギー管理部100、エネルギー提供部200及びエネルギー利用部300の間の情報の流れを示す図である。図3に示すように、まず各エネルギー提供部200(動力提供部201、吸熱提供部202、電力提供部203及び回生動力提供部204等)は、提供可能エネルギー情報をそれぞれ作成する(ステップS1)。
図4は、提供可能エネルギー情報の一例を示している。図4に示すように、各エネルギー提供部200で作成される提供可能エネルギー情報には、提供側ECUの情報(例えばエンジンECU)、エネルギー提供元の情報(例えばエンジン)、自身が提供可能なエネルギー形態の情報(例えば、高い生成効率で自身が生成可能なエネルギー形態。本例では動力)、自身が提供可能なエネルギー量x1(kWh)(又は提供可能なエネルギーの大きさ(kW))の情報、継続して提供可能な提供可能時間の情報(例えばtc1(秒))及びエネルギーの生成コスト(例えば、単位エネルギー量当たりの燃料使用量z1(ml/kWh))の情報が含まれる。
次に、各エネルギー提供部200は、作成した提供可能エネルギー情報をエネルギー管理部100に通知する(図3のステップS2)。このステップS2は、エネルギー提供部200とエネルギー管理部100とが物理的に独立している場合には、エネルギー提供部200が提供可能エネルギー情報を所定の通信プロトコルに基づき通信ネットワーク60を介してエネルギー管理部100に送信することによって行われる。一方、エネルギー提供部200とエネルギー管理部100とが1つのECUに物理的に統合されている場合には、ステップS2は、当該ECUで提供可能エネルギー情報が作成されてRAMに書き込まれた段階で完了する。
次に、エネルギー管理部100は、エネルギー提供部200から通知された提供可能エネルギー情報に基づいて、利用可能エネルギー・テーブル(利用可能エネルギー情報)を作成する(ステップS3)。
図5は、利用可能エネルギー・テーブルの一例を示している。図5に示すように、利用可能エネルギー・テーブルには、エネルギー提供部200の全体で提供可能なエネルギー、すなわちエネルギー利用部300の全体で利用可能なエネルギーの情報が含まれている。具体的には、利用可能エネルギー・テーブルには、提供側ECU、エネルギー提供元、エネルギー形態、利用可能エネルギー量、利用可能時間及び生成コストの各情報が含まれる。
ここで、エンジン10での動力の生成コストがz1である場合、エンジン10の動力を利用してコンプレッサ30で生成される吸熱エネルギーの生成コストz3と、同様にエンジン10の動力を利用してオルタネータ50で生成される電力の生成コストz4とは、いずれもz1より高く設定される。ただし、ブレーキ20で生成される回生動力の生成コストは例えば0に設定されるため、回生動力を利用してオルタネータ50で生成される電力の生成コストはz1よりも低く設定され得る。
次に、各エネルギー利用部300(動力利用部A301、動力利用部B302及び電力利用部303等)は、エネルギー管理部100で作成された利用可能エネルギー・テーブルを参照する(図3のステップS4)。このステップS4は、エネルギー利用部300とエネルギー管理部100とが物理的に独立している場合には、所定の通信プロトコルに基づき通信ネットワーク60を介して行われる。一方、エネルギー利用部300とエネルギー管理部100とが1つのECUに物理的に統合されている場合には、ステップS4は、当該ECU内のRAMに格納された情報をCPUが読み出すことにより行われる。
次に、各エネルギー利用部300は、参照した利用可能エネルギー・テーブルに基づいて利用エネルギー情報を作成する(ステップS5)。例えばエネルギー利用部300は、利用可能エネルギー・テーブルの生成コストの情報に基づき、生成コストの低いエネルギーを優先して利用するようにする。またエネルギー利用部300は、必要とするエネルギー形態に変換可能なエネルギーであれば、異なるエネルギー形態であっても生成コストの低いエネルギーを優先して利用するようにする。
図6は、利用エネルギー情報の一例を示している。図6に示すように、利用可能エネルギー情報には、利用側ECUの情報(例えば空調ECU)、エネルギー利用先の情報(例えばコンプレッサ)、利用するエネルギー形態の情報(例えば動力)、及び利用エネルギー量y1(kWh)の情報が含まれる。
次に、各エネルギー利用部300は、作成した利用エネルギー情報をエネルギー管理部100に通知する(図3のステップS6)。このステップS6は、エネルギー利用部300とエネルギー管理部100とが物理的に独立している場合には、エネルギー利用部300が利用エネルギー情報を所定の通信プロトコルに基づき通信ネットワーク60を介してエネルギー管理部100に送信することによって行われる。一方、エネルギー利用部300とエネルギー管理部100とが1つのECUに物理的に統合されている場合には、ステップS6は、当該ECUで利用エネルギー情報が作成されてRAMに書き込まれた段階で完了する。
次に、エネルギー管理部100は、エネルギー利用部300から通知された利用エネルギー情報に基づいて、必要エネルギー・テーブル(必要エネルギー情報)を作成する(ステップS7)。
図7は、必要エネルギー・テーブルの一例を示している。図7に示すように、必要エネルギー・テーブルには、エネルギー利用部300の全体で利用されるエネルギー、すなわちエネルギー提供部200の全体で必要なエネルギーの情報が含まれる。すなわち、必要エネルギー・テーブルには、利用側ECU、エネルギー利用先、エネルギー形態、及び必要エネルギー量の各情報が含まれる。エネルギー管理部100は、エネルギー形態毎に必要エネルギー量を集計し、必要エネルギー量の多いエネルギー形態、あるいは必要エネルギー量の増加率が高いエネルギー形態から順に優先ランクを付与するようにしてもよい。また、ある単位時間においてエネルギー提供部200から提供されなかったエネルギー形態(例えば優先ランクの低いエネルギー形態)がある場合、次の単位時間以降、そのエネルギー形態に付与される優先ランクを徐々に上昇させるようにしてもよい。これにより、必要エネルギー量の少ない形態のエネルギーがエネルギー利用部300側に全く提供されなくなってしまうという事態を回避できる。
次に、各エネルギー提供部200は、エネルギー管理部100で作成された必要エネルギー・テーブルを参照する(図3のステップS8)。このステップS8は、エネルギー提供部200とエネルギー管理部100とが物理的に独立している場合には、所定の通信プロトコルに基づき通信ネットワーク60を介して行われる。一方、エネルギー提供部200とエネルギー管理部100とが1つのECUに物理的に統合されている場合には、ステップS8は、当該ECU内のRAMに格納された情報をCPUが読み出すことにより行われる。
次に、各エネルギー提供部200は、参照した必要エネルギー・テーブルに基づいて提供可能エネルギー情報を修正し、提供エネルギー情報を作成する(ステップS9)。例えばエネルギー提供部200は、必要エネルギー・テーブルの必要エネルギー量の情報に基づき、必要エネルギー量の多いエネルギーを優先して提供するようにする。また、必要エネルギー・テーブルに上記の優先ランクの情報が含まれていれば、優先ランクの高いエネルギーを優先して提供するようにする。これにより、エネルギー利用部300での利用量の多いエネルギーの供給不足や、エネルギー利用部300での利用量の少ないエネルギーの供給過多を生じ難くすることができる。
図8は、提供エネルギー情報の一例を示している。図8に示すように、提供エネルギー情報には、エネルギー提供元の情報(例えばエンジン)、エネルギー形態の情報(例えば動力)及び提供エネルギー量x11(kWh)の情報が含まれる。
次に、各エネルギー提供部200は、作成した提供エネルギー情報に基づいて、所定の形態及び量のエネルギーを生成し(図3のステップS10)、エネルギー利用部300に提供する(ステップS11)。エネルギー利用部300は、エネルギー提供部200から提供されたエネルギーを利用する(ステップS12)。
以上のステップS1〜S12は、所定の時間間隔で繰り返される。したがって、提供可能エネルギー情報、利用可能エネルギー・テーブル、利用エネルギー情報、必要エネルギー・テーブル及び提供エネルギー情報は、それぞれ動的に更新される。
図9は、本実施形態の車両用エネルギー管理システム1によって得られる効果の例を説明する図である。図9(a)は、エネルギー利用部300で利用される吸熱エネルギー量の時間変化を示すグラフであり、図9(b)は、エネルギー利用部300で利用される電気エネルギー量の時間変化を示すグラフである。図9(c)は、エネルギー利用部300で利用される運動エネルギー量の時間変化を示すグラフであり、図9(d)は、エネルギー提供部200で生成される全体エネルギー量(本例では吸熱エネルギー、電気エネルギー及び運動エネルギーの各生成量の総和)の時間変化を示すグラフである。図9(a)〜(d)の横軸は時間を表し、図9(a)〜(c)の縦軸はエネルギーの過不足の程度を表し、図9(d)の縦軸はエネルギー量を表している。ここで、図9(a)〜(c)の縦軸における「不足」は、エネルギー利用部300で利用されるエネルギー量がエネルギー提供部200から提供されるエネルギー量よりも多い状態を表している。また「過多」は、エネルギー利用部300で利用されるエネルギー量がエネルギー提供部200から提供されるエネルギー量よりも少ない状態を表している。本例では、エネルギー利用部300で利用されるエネルギー量を時間平均した平均レベルのエネルギー(図9(a)〜(d)では破線で示している)は、エネルギー提供部200において常時生成されているものとする。
図9に示すように、吸熱エネルギーは、時間t0〜t3間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t3〜t6間では不足している。電気エネルギーは、時間t0〜t1間、t2〜t3間及びt4〜t5間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t1〜t2間、t3〜t4間及びt5〜t6間では不足している。運動エネルギーは、時間t1〜t2間及びt3〜t6間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t0〜t1間及びt2〜t3間では不足している。
時間毎に見ると、時間t1〜t2間は、電気エネルギーが供給不足の状態にあるが、運動エネルギーは例えば制動力の回生等によって供給過多の状態にある。従来の構成では、電気エネルギーの生成効率が低かったとしても不足分の電気エネルギーを生成する必要がある一方、余剰の運動エネルギーは利用されず無駄になる場合があった。本実施形態では、エネルギー利用部300側で利用される電気エネルギーの情報は、利用エネルギー情報としてエネルギー管理部100に通知されているため、エネルギー管理部100で作成される必要エネルギー・テーブルに反映されている。このため、各エネルギー提供部200側では、必要エネルギー・テーブルを参照することによりエネルギー利用部300で利用される電気エネルギー量を把握できる。したがって、エネルギー提供部200を構成する例えばブレーキECU21は、必要な電気エネルギー量に基づき、オルタネータ(又は電動ブレーキ)の負荷トルクを増大させる制御を行う。これにより、矢印a1で示すように、余剰の運動エネルギーを電気エネルギーとして回生することができる。
また、時間t3〜t6間は、車室内の吸熱負荷の増大等によって吸熱エネルギーが供給不足の状態にあるが、運動エネルギーは供給過多の状態にある。従来の構成では、吸熱エネルギーの生成効率が低かったとしても不足分の吸熱エネルギーを生成する必要がある一方、余剰の運動エネルギーは利用されず無駄になる場合があった。本実施形態では、エネルギー利用部300側で利用される吸熱エネルギー量は、利用エネルギー情報としてエネルギー管理部100に通知されているため、エネルギー管理部100で作成される必要エネルギー・テーブルに反映されている。このため、各エネルギー提供部200側では、必要エネルギー・テーブルを参照することによりエネルギー利用部300で利用される吸熱エネルギー量を把握できる。したがって、必要な吸熱エネルギー量に基づき、空調ECU31がコンプレッサ30の回転数を増加させる制御を行うことによって、矢印a2で示すように余剰の運動エネルギーを1回の形態変換を経て吸熱エネルギーとして回生することができる。
仮に、エネルギー利用部300で必要なエネルギーをエネルギー提供部200で把握していない場合、余剰の運動エネルギーが一度電気エネルギーに変換され、電気エネルギーから吸熱エネルギーに再度変換されることもあり得る。この場合、運動エネルギーから2回の形態変換を経て吸熱エネルギーが生成されるため、変換ロスが多くなってしまう。これに対し本実施形態では、各エネルギー提供部200がエネルギー利用部300で必要なエネルギーの形態を把握しているため、余剰のエネルギーと必要なエネルギーとが互いに異なる形態であったとしても、より少ない変換回数で余剰のエネルギーを必要なエネルギーに変換できる。
このように、本実施形態では、各エネルギー利用部300から通知された利用エネルギー情報に基づいてエネルギー管理部100が必要エネルギー・テーブルを動的に作成している。これにより、各エネルギー提供部200は、エネルギー管理部100で一元的に管理される必要エネルギー・テーブルを参照することによって、各エネルギー利用部300に個別に問い合わせるまでもなく、エネルギー利用部300全体で必要なエネルギーの形態及び量を容易に把握できる。このため、エネルギー提供部200は、自身が提供するエネルギーの形態及び量をエネルギーの需要状況に応じて適切に決定でき、エネルギー利用部300で必要な形態及び量のエネルギーを少ない変換回数で提供できるようになっている。したがって、本実施形態によれば、エネルギー授受の範囲を形態の異なるエネルギーにまで拡大できるとともに、エネルギー利用部300での需要の多いエネルギーをエネルギー提供部200が少ない変換ロスで提供できるため、車両全体でのエネルギー効率を向上できる。
また、本実施形態では、各エネルギー提供部200から通知された提供可能エネルギー情報に基づいてエネルギー管理部100が利用可能エネルギー・テーブルを動的に作成している。これにより、各エネルギー利用部300は、エネルギー管理部100で一元的に管理される利用可能エネルギー・テーブルを参照することによって、各エネルギー提供部200に個別に問い合わせるまでもなく、エネルギー提供部200全体で効率良く低コストで生成されるエネルギーの形態及び量を容易に把握できる。このため、エネルギー利用部300は、自身の利用するエネルギーの形態及び量をエネルギーの供給状況に応じて適切に決定できるようになっている。したがって、本実施形態によれば、エネルギー提供部200での生成効率が高く生成コストの低いエネルギーがエネルギー利用部300で優先的に利用されるため、車両全体でのエネルギー効率及びエネルギー生成コストを向上できる。
さらに本実施形態では、エネルギー提供部200全体で生成されるエネルギー量を時間的に平均化できるため、エネルギー量のピークEp1が従来のエネルギー量のピークEp2よりも小さくなる。したがって、各エネルギー提供部200のエネルギー提供元(エンジン10、ブレーキ20、コンプレッサ30、ブロワ40及びオルタネータ50等)のエネルギー容量を小さくできるため、各エネルギー提供元の体格を小型化できる可能性がある。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図10乃至図13を用いて説明する。図10は、本実施形態における車両用エネルギー管理システム2の概略の構成及びエネルギーの大まかな流れを模式的に示す図である。図10に示すように、車両用エネルギー管理システム2は、第1実施形態の車両用エネルギー管理システム1と比較すると、コンプレッサ30の駆動により生成された吸熱エネルギーの一時的な蓄積及び放出が可能な蓄冷器(エネルギー蓄積部)70をさらに備えている点に特徴を有している。
蓄冷器70の配置構成の一例を簡単に説明する。蓄冷器70は、比熱の比較的大きい蓄冷材料を用いて構成されている。蓄冷器70は、車両用空調装置の冷凍サイクルにおいて、エバポレータと並列に接続された冷媒流路に配置されている。この冷媒流路には、空調ECU31の制御により開閉される電磁弁が設けられている。また蓄冷器70は、車両用空調装置の空調ユニットにおいて、エバポレータが配置された主空気通路と並列に設けられた副空気通路に配置されている。副空気通路には、空調ECU31の制御により開閉されるダンパが設けられている。
通常の空調運転時には、空調ECU31の制御により電磁弁及びダンパがいずれも閉状態にある。これにより、コンプレッサ30で圧縮されて冷凍サイクルを循環する冷媒の全量がエバポレータに流入し、ブロワ40により送風される空調空気の全量が主空気通路(エバポレータ)を通過する。空調空気には、エバポレータでの冷媒との熱交換により吸熱エネルギーが提供される。
蓄冷器70に蓄冷する蓄冷運転時には、空調ECU31の制御によりダンパが閉状態となり、電磁弁が開状態となる。これにより、冷凍サイクルを循環する冷媒の一部が蓄冷器70に流入する。蓄冷器70内の蓄冷材料は、蓄冷器70に流入した冷媒との熱交換により冷却される。すなわち、蓄冷運転時の蓄冷器70は、吸熱エネルギーを蓄積できるようになっている。
蓄冷器70から放冷する放冷運転時には、空調ECU31の制御により電磁弁が閉状態となり、ダンパが開状態となる。これにより、蓄冷器70への冷媒の流入が停止するため、蓄冷器70への蓄冷が停止する。一方、空調空気の一部は副空気通路を流通し、蓄冷器70を通過する。蓄冷器70を通過した空調空気は、蓄冷器70内の冷却された蓄冷材料との熱交換により冷却される。すなわち、放冷運転時の蓄冷器70は、蓄積された吸熱エネルギーを放出して空調空気に提供する吸熱提供部として機能する。
したがって図10に示すように、コンプレッサ30で生成された吸熱エネルギーの流れには、空調空気に直接提供される流れと、蓄冷器70に一時的に蓄積された後に空調空気に提供される流れとが存在することになる。空調ECU31は、蓄冷器70への吸熱エネルギーの蓄積、及び蓄冷器70からの吸熱エネルギーの提供を制御できるようになっている。
図11は本実施形態における提供可能エネルギー情報の一例を示し、図12は本実施形態における利用可能エネルギー・テーブルの一例を示している。図11及び図12に示すように、蓄冷器70は、蓄積された吸熱エネルギーを外部に提供できるため、エンジン10、ブレーキ20、コンプレッサ30、ブロワ40及びオルタネータ50と同様に、提供可能エネルギー情報及び利用可能エネルギー・テーブルにおけるエネルギー提供元になり得る。ここで、蓄冷器70の吸熱エネルギーの生成コストz6は、吸熱エネルギーが生成された時点での生成コストを平均化して算出される。例えば、コンプレッサ30により生成コストzaで生成された吸熱エネルギー量xaと生成コストzbで生成された吸熱エネルギー量xbとが蓄冷器70に蓄積されている場合、蓄冷器70の吸熱エネルギーの生成コストは、(za×xa+zb×xb)/(xa+xb)となる。
また、図示していないが本例の車両用エネルギー管理システム2は、コンプレッサ30又は蓄冷器70から提供される吸熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換システムを備えている。
図13は、本実施形態の車両用エネルギー管理システム2によって得られる効果の例を説明する図である。図13(a)〜(d)は、図9(a)〜(d)と同様に、それぞれ吸熱エネルギー量、電気エネルギー量、運動エネルギー量及び全体エネルギー量の時間変化を示すグラフである。また図13では、蓄冷器70を模式的に表現している。
図13に示すように、吸熱エネルギーは、時間t10〜t13間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t13〜t16間では不足している。電気エネルギーは、時間t11〜t12間、t13〜t14間及びt15〜t16間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t10〜t11間、t12〜t13間及びt14〜t15間では不足している。運動エネルギーは、時間t11〜t12間及びt13〜t16間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t10〜t11間及びt12〜t13間では不足している。
時間毎に見ると、時間t11〜t12間は、車室内の吸熱負荷の減少等によって吸熱エネルギーが供給過多の状態にある。このため、エネルギーの供給不足の状態にあるエネルギー利用部300が存在すれば、エネルギー提供部200は余剰の吸熱エネルギーを外部に提供できる状態にある。ところが、エネルギー提供部200は、必要エネルギー・テーブルを参照することにより、エネルギー利用部300側での吸熱エネルギーの必要量、電気エネルギーの必要量及び運動エネルギーの必要量がいずれも少ないこと(すなわち、いずれのエネルギーも供給過多の状態にあること)を把握できる。したがって、エネルギー提供部200(空調ECU31)は車両用空調装置の蓄冷運転を行い、余剰の吸熱エネルギーを蓄冷器70に蓄積する(図13の矢印a3)。
時間t12〜t13間は、依然として吸熱エネルギーが供給過多の状態にあるため、車両用空調装置の蓄冷運転が継続される。ところが、この時間は電気エネルギーが供給不足の状態にあるため、熱電変換システムを含むエネルギー提供部200は、蓄冷器70に蓄積された吸熱エネルギーの一部を用いて電気エネルギーを生成し、エネルギー利用部300に提供する(図13の矢印a4)。
時間t13〜t16間は、吸熱エネルギーが供給不足の状態にあるため、エネルギー提供部200は車両用空調装置の放冷運転を行う。これにより、蓄冷器70に蓄積された吸熱エネルギーは、そのままのエネルギー形態でエネルギー利用部300に提供される(図13の矢印a5)。
また、時間t13〜t16間は運動エネルギーが供給過多の状態にあり、時間t14〜t15間は電気エネルギーが供給不足の状態にある。したがって、エネルギー提供部200は、エネルギー利用部300で必要な電気エネルギー量に基づき、オルタネータの負荷トルクを増大させる制御を行う。これにより、余剰の運動エネルギーは電気エネルギーとして回生される(図13の矢印a6)。
ところで、時間t13〜t16間においては、吸熱エネルギーが供給不足の状態にあり、運動エネルギーが供給過多の状態にある。したがって、蓄冷器70から吸熱エネルギーを提供するのではなく、余剰の運動エネルギーを吸熱エネルギーに変換することも考えられる。しかしながら、エネルギー形態を変換する際には変換ロスが生じるため、本例のように同形態のエネルギーが蓄積されている場合には同形態のエネルギーが優先して提供される。
以上のように本実施形態では、吸熱エネルギーを一時的に蓄積可能な蓄冷器70が設けられている。蓄冷器70は、エネルギー提供部200及びエネルギー利用部300間のエネルギーの授受においてバッファとして機能するため、エネルギーの生成とエネルギーの提供とを時間的にずらすことができる。すなわち、エネルギー利用部300での吸熱エネルギーの利用量が少なく吸熱エネルギーが供給過多の状態にあるときには、エネルギー提供部200で生成された余剰の吸熱エネルギーはそのままのエネルギー形態で蓄冷器70に蓄積される。一方、エネルギー利用部300での吸熱エネルギーの利用量が多くなり吸熱エネルギーが供給不足の状態になったときには、蓄冷器70に蓄積された吸熱エネルギーはそのままのエネルギー形態でエネルギー利用部300に提供される。したがって本実施形態によれば、図13の矢印a7で示すように、エネルギーを時間差で融通することができるため、エネルギー提供部200で生成されるエネルギー量を時間的に平均化することができる。このため、エネルギー提供部200全体で生成されるエネルギー量のピークEp3は、従来のエネルギー量のピークEp2よりも小さくなるだけでなく、第1実施形態のエネルギー量のピークEp1よりも小さくなる。したがって、各エネルギー提供部200のエネルギー提供元(エンジン10、ブレーキ20、コンプレッサ30、ブロワ40及びオルタネータ50等)のエネルギー容量をさらに小さくできるため、各エネルギー提供元の体格をさらに小型化できる可能性がある。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図14乃至図16を用いて説明する。本実施形態の車両用エネルギー管理システムの物理的な構成は、図10に示した第2実施形態の車両用エネルギー管理システムとほぼ同様である。図14は、本実施形態における車両用エネルギー管理システムを説明する図である。図14(a)〜(d)は、図9(a)〜(d)と同様に、それぞれ吸熱エネルギー量、電気エネルギー量、運動エネルギー量及び全体エネルギー量の時間変化を示すグラフである。
図14に示すように、吸熱エネルギーは、時間t20〜t24間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t24〜t27間では不足している。電気エネルギーは
時間t24〜t25間及びt26〜t27間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t20〜t24間及びt25〜t26間では不足している。運動エネルギーは、時間t20〜t21間、t23〜t24間及びt25〜t26間では平均レベルのエネルギー量で足りているが、時間t21〜t23間、t24〜t25間及びt26〜t27間では不足している。
時間t20〜t22間は、吸熱エネルギーが供給過多の状態にあり、電気エネルギーが供給不足の状態にある。各エネルギー提供部200側では、必要エネルギー・テーブルを参照することにより、エネルギー利用部300側で必要な電気エネルギー量を把握できる。したがって、エネルギー提供部200は、必要な電気エネルギー量に基づいて熱電変換システムを作動させる。これにより、余剰の吸熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
時間t22〜t24間は、依然として吸熱エネルギーが供給過多の状態にあり、電気エネルギーが供給不足の状態にある。ところが、吸熱エネルギーの利用量は徐々に増加しており、電気エネルギーの利用量は徐々に減少している。エネルギー利用部300を構成する空調ECU31は、所定時間毎に作成される利用エネルギー情報に基づき、吸熱エネルギーの利用量が徐々に増加していること、すなわち吸熱エネルギーの余剰量が徐々に減少していることを把握できる。このときエネルギー利用部300は、吸熱エネルギーの余剰量の減少に基づいて将来的な吸熱エネルギーの供給不足を予測すると、現時点での吸熱エネルギーの需要だけでなく将来的な吸熱エネルギーの需要もエネルギー管理部100に通知する。
図15は本実施形態における利用エネルギー情報の一例を示し、図16は本実施形態における必要エネルギー・テーブルの一例を示している。エネルギー利用部300は、図15に示すように、現時点での吸熱エネルギーの利用エネルギー情報(通常情報)と、将来的な吸熱エネルギーの利用エネルギー情報(予約情報)とを作成し、エネルギー管理部100に通知する。エネルギー管理部100は、利用エネルギー情報に基づいて、図16に示すような必要エネルギー・テーブルを作成する。予約情報には、通常情報と同一形式の情報に加えて、利用開始時間の情報(例えばT1(秒)経過後)及び利用継続時間の情報(例えばT2(秒))等が含まれる。すなわち、利用開始時間及び利用継続時間の情報の有無により、通常情報であるか予約情報であるかが識別される。
図14に戻り、時間t23〜t24間は、運動エネルギーが例えば制動力の回生によって供給過多の状態にある。本実施形態では、エネルギー提供部200は、必要エネルギー・テーブルを参照して吸熱エネルギーの予約情報を把握すると、現時点で供給不足の状態にある電気エネルギーを生成することよりも、将来的に需要の高まる吸熱エネルギーを先行して蓄積することを優先する。すなわち、エネルギー提供部200を構成する例えば空調ECU31は車両用空調装置の蓄冷運転を行い、余剰の運動エネルギーを吸熱エネルギーに変換して蓄冷器70に蓄積する(図14の矢印a8)。
時間t24〜t27間は、吸熱エネルギーが供給不足の状態にあるため、空調ECU31は車両用空調装置の放冷運転を行う。これにより、蓄冷器70に蓄積された吸熱エネルギーは、そのままのエネルギー形態でエネルギー利用部300に提供される(図14の矢印a9)。
このうち時間t25〜t26は、運動エネルギーが供給過多の状態にあるため、エネルギー提供部200は、余剰の運動エネルギーを吸熱エネルギーに変換し、吸熱エネルギーを直接又は蓄冷器70を介してエネルギー利用部300に提供する(図14の矢印a10)。
本実施形態では、エネルギー利用部300がエネルギー管理部100に予約情報を通知することにより、現時点でのエネルギーの需要に関わらず、将来的に利用するエネルギーを予約できるようになっている。このため、第2実施形態ではエネルギーの需要が発生してからエネルギーを蓄積するのに対し、本実施形態ではエネルギーの需要を予測できた時点から先行してエネルギーを蓄積できる。したがって、本実施形態によればエネルギー提供部200で生成されるエネルギー量をより平均化できるため、エネルギー提供部200全体で生成されるエネルギー量のピークEp4を、従来のエネルギー量のピークEp2よりも小さくできるだけでなく、第2実施形態のエネルギー量のピークEp3よりも小さくできる。したがって、各エネルギー提供部のエネルギー提供元のエネルギー容量をさらに小さくできるため、各エネルギー提供元の体格をさらに小型化できる可能性がある。
例えばコンプレッサ強制カットモード時のように、車両走行性能を優先するために、負荷となるエネルギーの利用が一時的に制限される場合、エネルギー利用部300側では当該エネルギーが制限解除後に不足することを前もって予測できる。したがって、このようなエネルギー利用制限モードが存在する車両に対しては、本実施形態を容易に適用できる。
また本実施形態では、現時点で需要のあるエネルギー形態よりも予約されたエネルギー形態の方が生成効率が高い場合、予約されたエネルギーを優先的に生成して蓄積しておくことができる。これにより、エネルギー提供部200でのエネルギーの生成コストを低減できるため、車両全体のエネルギー生成効率を向上できる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図17を用いて説明する。図17は、本実施形態における車両用エネルギー管理システム4の概略の構成及びエネルギーの大まかな流れを示す図である。図17に示すように、車両用エネルギー管理システム4は、第1実施形態の車両用エネルギー管理システム1と比較すると、エネルギーの流れにおいて機械的なブレーキ20と並列に設けられた電動ブレーキ22と、エネルギーの流れにおいてエンジン駆動式のコンプレッサ30と並列に設けられた電動コンプレッサ32とをさらに備えている点に特徴を有している。
電動ブレーキ22は、ブレーキECU21の制御により車両に対して制動力を加えるとともに、車両の慣性エネルギーを回生して回生電力を生成するようになっている。電動ブレーキ22及びブレーキECU21は、外部に回生電力を提供する回生電力提供部として機能する。ブレーキ20と電動ブレーキ22とは、ブレーキECU21の制御により切り替えられて選択的に使用されるか又は同時に使用されるようになっている。
電動コンプレッサ32は、例えば電動ブレーキ22から提供された回生電力を利用して、空調ECU31の制御により冷凍サイクル内の冷媒を圧縮するようになっている。電動コンプレッサ32は、電力を利用して吸熱エネルギーを生成し、生成した吸熱エネルギーを空調空気に提供していると考えることができる。すなわち電動コンプレッサ32及び空調ECU31は、外部から提供された電力を利用する電力利用部として機能するとともに、外部に吸熱エネルギーを提供する吸熱提供部として機能する。コンプレッサ30と電動コンプレッサ32とは、空調ECU31の制御により切り替えられて選択的に使用されるか又は同時に使用されるようになっている。
車両に対して制動力を加える際、エネルギー提供部200としてのブレーキECU21は、エネルギー管理部100で作成された必要エネルギー・テーブルを参照する。そしてブレーキECU21は、エネルギー利用部300側での動力の利用量が多い、あるいは動力の優先ランクが高いと判断した場合、機械的なブレーキ20を主に作動させる。これにより、ブレーキ20によって回生動力が多く生成されるため、エネルギー利用部300(例えばオルタネータ50)側に生成コストの低い動力を提供できる。またブレーキECU21は、逆に、電力の利用量が多い、あるいは電力の優先ランクが高いと判断した場合、電動ブレーキ22を主に作動させる。これにより、電動ブレーキ22によって回生電力が多く生成されるため、エネルギー利用部300(例えば電動コンプレッサ32)に生成コストの低い電力を提供できる。
一方、エネルギー利用部300としての空調ECU31は、エネルギー管理部100で作成された利用可能エネルギー・テーブルを参照する。そして空調ECU31は、エネルギー提供部200側での動力の生成コストが低いと判断した場合には、エンジン駆動式のコンプレッサ30を主に作動させ、電力の生成コストが低いと判断した場合には、電動コンプレッサ32を主に作動させる。例えば、車両制動時に電動ブレーキ22が主に作動した場合、多くの回生電力が生成されるため、電力の生成コストが低くなる。したがって空調ECU31は、電動コンプレッサ32を主に作動させる。これにより、生成コストの低いエネルギーをそのままのエネルギー形態で利用して吸熱エネルギーを生成できるため、吸熱エネルギーの生成コストを低減できるとともに、車両全体のエネルギー効率を向上できる。
このように本実施形態では、車両に対して制動力を加える点において共通であり、回生するエネルギーの形態において異なる機械的なブレーキ20及び電動ブレーキ22が設けられている。したがって、エネルギー利用部300側のエネルギーの利用状況に基づいて、ブレーキ20と電動ブレーキ22とを切り替えて又は同時に作動させることにより、需要の多いエネルギーを低い生成コストで提供できる。
また本実施形態では、利用するエネルギーの形態において異なり、生成するエネルギーの形態において共通なエンジン駆動式のコンプレッサ30及び電動コンプレッサ32が設けられている。したがって、エネルギー提供部200側からのエネルギーの提供状況に基づいて、コンプレッサ30と電動コンプレッサ32とを切り替えて又は同時に作動させることにより、生成コストの低いエネルギーをそのままのエネルギー形態で効率良く利用できる。
(その他の実施形態)
上記実施形態において、エネルギー管理部100は、エネルギーの生成コストの値をエネルギー提供部200及びエネルギー利用部300間のエネルギーの需給関係に基づいて調整するようにしてもよい。例えば、生成コストの値は、提供量の少ないエネルギーや利用量の多いエネルギーでは高めに設定され、提供量の多いエネルギーや利用量の少ないエネルギーでは低めに設定される。これにより、利用の集中する特定のエネルギーの供給不足や他のエネルギーの供給過剰等が解消され、生成されたエネルギーを効率良く利用することができる。
また上記実施形態では、走行用の駆動源としてエンジン10を備えた車両を例に挙げたが、本発明は、走行用の駆動源として電動モータを備えた車両や、エンジン及び電動モータの双方を備えた車両等にも適用可能である。
さらに上記実施形態では、主に吸熱エネルギー、電気エネルギー及び運動エネルギーをエネルギー形態の例に挙げたが、熱エネルギー(温熱)や光エネルギー、音エネルギー等の他のエネルギー形態を含んでいてもよい。
また上記第1乃至第3実施形態では、エンジン10からの動力を用いて駆動するエンジン駆動式のコンプレッサ30を例に挙げたが、電力を用いて駆動する電動式のコンプレッサを用いることもできる。
さらに上記第2及び第3実施形態では、吸熱エネルギーを一時的に蓄積する蓄冷器70をエネルギー蓄積部の例に挙げたが、熱エネルギーを一時的に蓄積する蓄熱器や、電気エネルギーを一時的に蓄積するバッテリー等をエネルギー蓄積部として用いてもよい。