以下、本発明の実施の形態に係る光走査装置について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては光走査装置の一例としてレーザレーダ装置について説明する。
<第1の実施の形態>
(1)レーザレーダ装置の信号処理系
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザレーダ装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。このレーザレーダ装置は、例えば輸送機器に搭載される。
図1のレーザレーダ装置1は、検出対象物10までの距離および検出対象物10の方位を検出するために用いられる。ここで、検出対象物10の方位は、基準方向からの角度で表される。基準方向は、例えば進行方向に垂直な方向に定められる。なお、基準方向は、これに限定されず、進行方向と平行な方向でもよく、または任意の方向に定めることができる。
送光装置70は、レーザ光を発射する。以下、送光装置70から発射されるレーザ光を発射光ELと呼ぶ。モータ30は、後述する反射鏡25(図3)を回転させる。エンコーダ40は、モータ30の回転角度に対応するエンコーダパルスEPを出力するとともに、モータ30の1回転ごとに原点パルスOPを出力する。モータ回転数制御部20は、エンコーダ40から出力されるエンコーダパルスEPに基づいてモータ30の回転速度を一定に制御する。
発光間隔パルス生成部50は、エンコーダ40から出力されるエンコーダパルスEPを逓倍することにより発光間隔パルスEIを生成する。開始信号生成部60は、発光間隔パルス生成部50により生成される発光間隔パルスEIに同期して開始信号STを生成する。送光装置70は、開始信号生成部60により生成される開始信号STに同期して発射光ELを発射する。
受光装置80は、検出対象物10からの反射光RLを受光するとともに、送光装置70からの発射光ELを受光し、受光信号REを出力する。
距離生成部100は、開始信号生成部60により生成される開始信号STおよび受光装置80から出力される受光信号REに基づいて距離を示す距離信号DSを生成するとともに、距離の生成を示す距離生成信号DGを出力する。
一方、角度生成部110は、エンコーダ40から出力される原点パルスOP、開始信号生成部60により生成される開始信号STおよび距離生成部100により生成される距離生成信号DGに基づいて角度を示す角度信号ASを生成する。
レーダ画像生成部120は、信号処理部90により生成される距離信号DSおよび角度生成部110により生成される角度信号ASに基づいてレーダ画像をディスプレイの画面に表示する。
また、発光間隔パルス生成部50、開始信号生成部60、角度生成部110およびレーダ画像生成部120は、CPU(中央演算処理装置)、メモリおよび論理回路等により実現される。
(2)レーザレーダ装置の動作
図2は、図1のレーザレーダ装置1の動作を説明するためのタイミング図である。以下、図2を参照しながら図1のレーザレーダ装置1の動作を説明する。
図2の横軸は時間である。1段目および2段目に原点パルスOPおよびエンコーダパルスEPが示される。また、3段目〜5段目には発光間隔パルスEI、開始信号STおよび発光パルスEmがそれぞれ示されている。発光間隔パルスEI、開始信号STおよび発光パルスEmは、エンコーダパルスEPに比べて時間軸上で拡大されている。さらに、6段目および7段目には受光信号REおよびサンプルデータSMがそれぞれ示されている。受光信号REおよびサンプルデータSMは、発光パルスEmに比べて時間軸上でさらに拡大されている。
図1のモータ30が所定角度回転するごとに、エンコーダ40はエンコーダパルスEPを出力する。本実施の形態では、エンコーダパルスEPは、モータ30が6°回転するごとに生成される。したがって、モータ30が1回転すると、エンコーダ40は60個のエンコーダパルスEPを生成する。また、モータ30が1回転するごとに、エンコーダ40は原点パルスOPを出力する。したがって、原点パルスOPの周期T1はモータ30の1回転の周期に相当する。本実施の形態では、エンコーダ40は、60個のエンコーダパルスEPの生成ごとに原点パルスOPを生成する。
モータ回転数制御部20は、エンコーダパルスEPに応答してモータ30の回転数(回転速度)を一定に制御する。この場合、モータ回転数制御部20は、原点パルスOPの周期T1が一定になるようにモータ30を制御する。
発光間隔パルス生成部50は、エンコーダパルスEPを逓倍することにより発光間隔パルスEIを生成する。本実施の形態では、発光間隔パルスEIの周期T2はエンコーダパルスEPの周期の1/20である。ここで、発光間隔パルスEIの周期T2の間にモータ30が回転する角度(以下、単位角度と呼ぶ)をΔθとする。本実施の形態では、単位角度Δθは0.3°である。この場合、発光間隔パルスEIは、モータ30が0.3°回転するごとに生成される。以下、発光間隔パルスEIの周期T2を発光間隔T2と呼ぶ。
開始信号生成部60は、発光間隔パルスEIの立ち上がりに同期して立ち上がる開始信号STを生成する。
送光装置70は、開始信号STの立ち上がりに同期して立ち上がる発光パルスEmを生成し、発光パルスEmに同期してレーザ光を発射光ELとし発射する。これにより、モータ30が単位角度Δθ回転するごとに、発射光ELが発射される。
送光装置70のLD71からの発射光ELは、検出対象物10に照射される。一部の発射光ELは、受光装置80に入射する。したがって、送光装置70からの発射光ELが受光装置80により受光された後、検出対象物10からの反射光RLが受光装置80により受光される。この場合、受光装置80による発射光ELの受光時点から反射光RLの受光時点までの時間がレーザレーダ装置1から検出対象物10までの距離に比例する。
距離生成部100は、受光信号REのレベルを予め定められたしきい値Thと比較することにより2値化信号を生成する。距離生成部100により2値化信号をサンプルデータSMと呼ぶ。このサンプルデータSMは、受光信号REのレベルがしきい値Thよりも高いときに論理値“1”となり、受光信号REのレベルがしきい値Th以下のときに論理値“0”となる。
また、距離生成部100は、発射光の受光時から反射光の受光時までのサンプルデータSMの論理値“0”の数に基づいて検出対象物10までの距離を算出する。
角度生成部110は、原点パルスOP、開始信号STおよび距離生成信号DGに基づいて角度θ[°]を算出し、角度θを表す角度信号ASを生成する。
具体的には、角度生成部110は、原点パルスOPに応答して角度θを0°にリセットし、開始信号STの立ち上がりごとに角度θに単位角度Δθを積算する。距離生成部100により距離生成信号DGが与えられたときに、角度生成部110は、角度θを示す角度信号ASを出力する。
(3)レーザレーダ装置の光学系
図3は、図1のレーザレーダ装置1の光学系の構成を示す斜視図である。図3ならびに後述する図4〜図10、図17、図18および図21〜図33においては、矢印X,Y,Zで示すように、互いに直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向と定義する。また、X方向の矢印が向く方向を前方とし、その逆を後方とする。また、Z方向の矢印が向く方向を上方とし、その逆を下方とする。また、X方向、Y方向およびZ方向の各矢印が向く方向を+側とし、その逆を−側とする。
また、図3ならびに後述する図4〜図10、図17、図18および図21〜図33においては、上下方向に延びる一の直線を第1軸L1と定義し、第1軸L1上の一の点Aにおいて第1軸L1に対して傾斜して交差する一の直線を第2軸L2と定義する。
また、点Aにおいて第1軸L1に直交する一の直線を第3軸L3と定義し、点Aにおいて第2軸L2および第3軸L3に直交する一の直線を第4軸L4と定義する。
本実施の形態においては、第3軸L3は第1軸L1を回転軸として回転し、第4軸L4は第2軸L2を回転軸として回転する。詳細は後述する。
なお、以下の説明においては、図3に示すレーザレーダ装置1の状態を第1の基準状態と称する。
図3に示すように、レーザレーダ装置1は、ベースプレート201を有する。ベースプレート201は、凹状に湾曲する部分円筒面11を有する。ベースプレート201の上面には、摺動部材202が設けられる。摺動部材202は、摺動部21、放物面鏡22および支柱部23を含む。
摺動部21は、ベースプレート201の部分円筒面11上に摺動可能に設けられる。使用者は、図示しない調整機構により、摺動部21を部分円筒面11上の任意の位置に移動させることができる。また、使用者は、上記調整機構により、摺動部21を部分円筒面11上の任意の位置に固定することができる。なお、調整機構は、機械的に摺動部21を移動させる構成を有してもよく、モータ等により電気的に摺動部21を移動させる構成を有してもよい。
放物面鏡22は、凹形状を有し、摺動部21の上部に設けられる。放物面鏡22は、放物面鏡22の中心点が第1軸L1上に位置するように設けられる。
支柱部23は逆L字形状を有し、摺動部21の後方端において上下方向に延びるように設けられる。支柱部23の一端部には、図1のモータ30が設けられる。モータ30は、ステータ301およびロータ302を有する。ステータ301は、支柱部23に固定される。本実施の形態においては、図示しない供給源からステータ301に電圧が供給されることにより、ロータ302が第1軸L1を回転軸として回転する。モータ30としては、例えば、ブラシレスDCモータを用いることができる。
なお、図1のエンコーダ40は、モータ30に設けられる。エンコーダ40は、例えば、ステータ301に設けられるフォトインタラプタ(図示せず)およびロータ302に設けられるエンコーダ用スリット(図示せず)により構成される。
ロータ302は、下方に向かって延びるように形成される2つのアーム部303,304を有する。アーム部303,304は互いに対向するように設けられる。アーム部303,304の下端部には、揺動フレーム24が取り付けられる。アーム部303,304と揺動フレーム24とは、円柱状の連結軸241,242(後述の図9参照)を介して連結される。
連結軸241,242の一端部は、図示しないベアリングによりアーム部303,304にそれぞれ回転可能に支持される。また、連結軸241,242の他端部は、揺動フレーム24の外周部にそれぞれ固定される。本実施の形態においては、連結軸241,242の軸線方向に延びる直線として第3軸L3が定義される。したがって、揺動フレーム24は、第3軸L3を回転軸として回転可能にアーム部303,304に支持される。
揺動フレーム24の下面に楕円形の反射鏡25の上面が固定される。反射鏡25は、図3に示す第1の基準状態において反射鏡25の中心点が第1軸L1上に位置するように設けられる。反射鏡25と放物面鏡22との間において、支柱部23の略中央部から前方に延びるように支持棒26が設けられる。支持棒26の先端には、鏡筒27が設けられる。
鏡筒27内に送光装置70(図1参照)が設けられ、鏡筒27の下部に受光装置80(図1参照)が設けられる。鏡筒27の上端には、走査光成形レンズ71が設けられる。走査光成形レンズ71は、送光装置70から発射される発射光EL(図1)の直径を所定の大きさに調整する。
本実施の形態においては、送光装置70および受光装置80は、送光装置70の軸線および受光装置80の軸線が第1軸L1に重なるように設けられる。
送光装置70から発射される発射光EL(図1)は、第1軸L1上を通って反射鏡25に入射する。そして、発射光ELは、反射鏡25において反射した後、検出対象物10(図1)に入射する。また、検出対象物10からの反射光RL(図1)は、反射鏡25および放物面鏡22において反射した後、受光装置80に入射する。
次に、図4を用いてレーザレーダ装置1についてさらに詳細に説明する。図4は、レーザレーダ装置1の詳細を説明するための図である。なお、図4には、ロータ302の回転角度θが90°のときのモータ30と揺動フレーム24との関係が示されている。
図4に示すように、モータ30のステータ301の中心部には、角度調整部材31が設けられる。角度調整部材31は、円柱部311およびその円柱部311の一端部に形成される板状の湾曲部312を有する。円柱部311は、円柱部311の軸線が第1軸L1に重なるようにステータ301に固定される。湾曲部312には、厚さ方向に貫通しかつ長手方向に延びるように貫通孔313が形成される。
湾曲部312の下面側には、ボルト314およびナット315によりベアリング32が固定される。本実施の形態においては、第2軸L2は、ベアリング32の軸線方向に延びる直線として定義される。ボルト314のネジ部(図示せず)は、貫通孔313内に挿通されつつベアリング32に螺合される。したがって、ボルト314の締め付けを緩めることにより、ボルト314およびベアリング32を貫通孔313に沿って移動させることができる。それにより、第1軸L1に対する第2軸L2の傾斜角度を調整することができる。第1軸L1に対する第2軸L2の傾斜角度を調整することの効果については後述する。
揺動フレーム24の内方には、回転部材33が設けられる。回転部材33は、本体部331を有する。本体部331の両端面には、円柱状の突起部333,334が形成される。突起部333,334の一端部は、図示しないベアリングにより揺動フレーム24にそれぞれ回転可能に支持される。
本実施の形態においては、突起部333,334の軸線方向に延びる直線として第4軸L4が定義される。したがって、回転部材33は、第4軸L4を回転軸として回転可能に揺動フレーム24に支持される。また、本体部331の上面には、円柱状の突起部335が形成される。突起部335は、ベアリング32により回転可能に支持される。これにより、回転部材33は、第2軸L2を回転軸として回転可能にベアリング32に支持される。すなわち、回転部材33は、第2軸L2を回転軸として回転可能かつ第4軸L4を回転軸として回転可能に設けられる。
(4)レーザレーダ装置の動作
以下、ロータ302の回転に伴うレーザレーダ装置1の状態変化について図3〜図10を用いて説明する。
なお、図5〜図10は、第1の基準状態からのロータ302の回転角度θが30°、60°、90°、120°、150°および180°である場合のレーザレーダ装置1の状態を示す図である。
また、第1の基準状態においては、図3に示すように、反射鏡25の下面が第1軸L1に対して略直交する。すなわち、第1の基準状態においては、送光装置70から発射される発射光EL(図1)が反射鏡25に略垂直に入射する。
図3〜図10に示すように、本実施の形態においては、ロータ302が回転することにより、連結軸241,242(図9参照)は、第1軸L1に垂直でかつ点Aを中心とする円周上を移動する。すなわち、第3軸L3が第1軸L1を回転軸として回転する。それにより、揺動フレーム24が第1軸L1周りに回転する。
ここで、図4で説明したように、回転部材33は、第2軸L2を回転軸として回転可能にベアリング32に支持されている。したがって、ロータ302から揺動フレーム24を介して回転部材33に与えられるトルクにより、回転部材33は第2軸L2を回転軸として回転する。それにより、第4軸L4が第2軸L2を回転軸として回転する。
また、図4で説明したように、揺動フレーム24は、第4軸L4を回転軸として回転可能に回転部材33を支持するとともに、第3軸L3を回転軸として回転可能にロータ302に支持されている。そして、第4軸L4は第3軸L3に対して常に直交するように設定されている。
この場合、図3〜図10に示すように、第4軸L4が第2軸L2を回転軸として回転することにより、第4軸L4は第3軸L3を揺動軸として揺動しつつ第1軸L1周りに回転する。それにより、揺動フレーム24は、第3軸L3を揺動軸として揺動しつつ第1軸L1周りに回転する。その結果、反射鏡25が揺動しつつ第1軸L1周りに回転する。
詳細には、ロータ302の回転角度θが0°(第1の基準状態(図3))から90°(図4および図7)の間では、第3軸L3を含みかつ第1軸L1に垂直な平面(以下、第1軸L1に垂直な平面と略記する。)に対する第4軸L4の傾斜角度は、ロータ302の回転角度θの増加に従って増加する。
そのため、ロータ302の回転角度θが0°から90°の間では、ロータ302の回転角度θの増加に従って、第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が増加する。なお、第1の基準状態においては、第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度は0°である。
第1軸L1に垂直な平面に対する第4軸L4の傾斜角度は、ロータ302の回転角度θが90°になるときに最も大きくなる。それにより、図7に示すように、の第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が最大となる。
ロータ302の回転角度θが90°から180°(図10)の間では、第1軸L1に垂直な平面に対する第4軸L4の傾斜角度は、ロータ302の回転角度θの増加に従って減少する。
そのため、ロータ302の回転角度θが90°から180°の間では、ロータ302の回転角度θの増加に従って、第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が減少する。そして、ロータ302の回転角度θが180°になるときに、第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が0°になる。これにより、図10に示すように、レーザレーダ装置1が図3の第1の基準状態と同様の状態(以下、第2の基準状態と称する。)になる。
その後、第2の基準状態からロータ302がさらに180°回転することにより、図3〜図10で説明した各状態と同様の状態を経て、レーザレーダ装置1は第1の基準状態に復帰する。
以上のように、本実施の形態においては、ロータ302が第1の基準状態から90°回転することにより、反射鏡25が第1軸L1周りに90°回転するとともに第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が0°から最大値に変化する。そして、第3軸L3がさらに90°回転することにより、反射鏡25が第1軸L1周りに90°回転するとともに第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が最大値から0°に復帰する。
この場合、反射鏡25の下面の任意の位置における法線は、ロータ302が180°回転することにより、一の円錐面を描くように移動する。したがって、本実施の形態においては、ロータ302が1回転することにより、反射鏡25の下面の法線は、一の円錐面上を2周するように移動する。それにより、反射鏡25において反射する発射光EL(図1)の進行経路も一の円錐面を描くように移動する。詳細は後述する。
なお、図3に示すように、第1の基準状態においては、第1軸L1と反射鏡25の法線とが同一直線上に位置する。また、図4に示すように、ロータ302の回転角度θが90°である場合には、第2軸L2と反射鏡25の法線とが同一直線上に位置する。したがって、ロータ302が回転する際に反射鏡25の下面の法線によって描かれる円錐面の頂角の大きさは、第1軸L1と第2軸L2との間の角の1/2の大きさになる。
(5)発射光ELの走査領域
次に、レーザレーダ装置1の送光装置70から発射される発射光ELの走査領域について図面を用いて説明する。
図11は、送光装置70から発射される発射光ELの進行経路を示す概念図である。図11において実線EL1は、送光装置70から反射鏡25へ入射する発射光ELの進行経路を示し、実線EL2は、反射鏡25において反射した発射光ELの進行経路を示し、点Bは、反射鏡25における発射光ELの反射点を示す。なお、図11においては、ロータ302(図7)の回転角度θが90°のときの発射光ELの進行経路を実線EL2で示している。
なお、図3で説明したように、送光装置70から発射される発射光ELは、第1軸L1上を通るように反射鏡25に入射する。したがって、送光装置70から発射される発射光ELは、反射鏡25の中心点に入射する。ここで、本実施の形態においては、反射鏡25が点A(図4)に近接して設けられるので、ロータ302が回転する際に反射鏡25の中心点はほぼ移動しない。そのため、以下においては、説明を簡便にするため、反射鏡25における発射光ELの反射点Bは移動しないものとして説明を行う。
上述したように、ロータ302が回転する際に反射鏡25の下面の法線によって描かれる円錐面の頂角の大きさは、第1軸L1と第2軸L2との間の角の1/2の大きさになる。したがって、第1軸L1と第2軸L2との間の角度をαとすると、反射鏡25の反射点Bにおける法線は、頂角α/2の円錐面を描くように移動する。
反射の法則により、反射鏡25における発射光ELの入射角と反射角とは等しい。そのため、図11に示すように、反射点Bの法線が頂角α/2の一の円錐面を描くように移動する場合、反射点Bにおいて反射する発射光ELは、頂角αの円錐面を描くように移動する。
なお、送光装置70から発射される発射光ELは、第1軸L1上を通って反射鏡25に入射するので、反射点Bにおける発射光ELの反射角β(入射角β)は、第1軸L1と反射鏡25の法線との間の角に等しい。第1軸L1と反射鏡25の法線との間の角β(反射点Bにおける発射光ELの反射角β(入射角β))は、下記式(1)により算出することができる。
β=tan−1(tanα・sinθ) ・・・(1)
なお、反射角βは、反射鏡25の法線と反射鏡25において反射する発射光ELとの間の角を示す。したがって、反射点Bの法線が第2軸L2と一致する図11の例では、反射角βは角度αになる。また、上記式(1)を用いた反射角βの算出は、図示しない制御部により実行される。
ここで、上述したように、本実施の形態においては、ロータ302が1回転することにより、反射点Bの法線は、頂角α/2の円錐面上を2周するように移動する。この場合、反射鏡25の反射点Bにおいて反射する発射光ELは、頂角αの円錐面上を2周するように移動する。すなわち、本実施の形態においては、ロータ302の1回転により、所定の走査領域を発射光ELにより2回走査することができる。それにより、ロータ302の回転速度を速くすることなく発射光ELの走査速度を向上させることが可能になる。
なお、発射光ELの走査領域は、第1軸L1と第2軸L2との間の角度αを調整することにより任意に調整することができる。第1軸L1と第2軸L2との間の角度αは、上述したようにベアリング32(図4)の位置を移動させることにより任意に調整することができる。
また、反射鏡25において反射された発射光ELの走査領域は円錐状に拡がるので、発射光ELが照射される面(以下、走査面と略記する。)上での発射光ELの走査経路は円錐曲面となる。この場合、発射光ELの走査面上での走査経路の形状は、発射光ELの走査面と第2軸L2との間の角度によって決定される。以下、図面を用いて説明する。
図12〜図14は、走査面上での発射光ELの走査経路を説明するための図である。図12は、反射鏡25において反射される発射光ELの進行経路の概念的斜視図であり、図13は、発射光ELの走査面上での走査経路を示す上面図であり、図14は、発射光ELの進行経路の概念的側面図である。
なお、図12〜図14には、走査経路P1〜P4が示されている。図14に示すように、走査経路P1は、走査面と第2軸L2との間の角度がγ1(=90°)のときの走査経路であり、走査経路P2は、走査面と第2軸L2との間の角度がγ2(α(発射光ELの入射角および反射角)<γ2<90°)のときの走査経路である。また、走査経路P3は、走査面と第2軸L2との間の角度がγ3(=α)のときの走査経路であり、走査経路P4は、走査面と第2軸L2との間の角度がγ4(0≦γ4<α)のときの走査経路である。
上述したように、反射鏡25の反射点Bにおいて反射された発射光ELの走査領域は円錐状に拡がるので、任意の走査面における発射光ELの走査経路は円錐曲線となる。ここで、円錐曲線の形状は離心率eにより決定される。また、離心率は走査面と第2軸L2との間の角度によって決定される。したがって、任意の走査面における走査経路の形状は、走査面と第2軸L2との間の角度によって決定される。
例えば、走査面と第2軸L2との間の角度が角度90°となる場合には、発射光ELにより走査面上に形成される円錐曲線の離心率は0になる。この場合、図12および図13に示すように、発射光ELの走査面上での走査経路P1は円形状になる。
また、走査面と第2軸L2との間の角度が角度αより大きく90°より小さい場合には、発射光ELにより走査面上に形成される円錐曲線の離心率は0より大きく1より小さくなる。この場合、図12および図13に示すように、発射光ELの走査面上での走査経路P2は楕円形状になる。
また、走査面と第2軸L2との間の角度が角度αに等しい場合には、発射光ELにより走査面上に形成される円錐曲線の離心率は1になる。この場合、図12および図13に示すように、発射光ELの走査面上での走査経路P3は放物線形状になる。
また、走査面と第3軸L3との間の角度が0より大きく角度α以下である場合には、発射光ELにより走査面上に形成される円錐曲線の離心率は1より大きくなる。この場合、図12および図13に示すように、発射光ELの走査面上での走査経路P4は双曲線形状になる。
このように、本実施の形態においては、走査面と第2軸L2との間の角度を任意に調整することにより、発射光ELの走査面上での走査経路の形状を任意に調整することができる。
なお、走査面と第2軸L2との間の角度は、図示しない調整機構により、摺動部21(図3)を部分円筒面11(図3)上の任意の位置に移動させることにより調整することができる。部分円筒面11は、Y方向に平行でかつ点Aを通る直線を回転中心とする円筒面上に設けられる。
なお、走査面と第2軸L2との間の角度は、ベアリング32(図4)の位置を移動させることによって調整してもよい。
(6)発射光の走査経路の調整例
以下、発射光ELの走査経路の調整例について説明する。
図15は、発射光ELの走査面と第2軸L2(図3参照)との間の角度γを60°に固定した状態で、第1軸L1(図3参照)と第2軸L2との間の角度αを10°、20°、30°および40°に設定した場合の発射光ELの走査面上での走査経路を示す図である。なお、図15においては、発射光ELの走査面上における走査領域が楕円によって示されている。
図12〜図14で説明したように、走査面と第2軸L2との間の角度γが角度αより大きく90°より小さい場合には、発射光ELにより走査面上に形成される円錐曲線(走査経路)の離心率は0より大きく1より小さくなる。したがって、図15に示すように、発射光ELの走査面上での走査経路は楕円形状になる。
また、角度αを大きくすることにより、反射鏡25において反射される発射光ELにより形成される円錐の頂角を大きくすることができる。それにより、図15に示すように、発射光ELの走査領域を大きくすることができる。
以上のように、走査面と第2軸L2との間の角度γを固定した状態で第1軸L1と第2軸L2との間の角度α(α<γ<90°)を調整することにより、発射光ELの走査面上での形状を維持した状態で発射光ELの走査領域を大きくすることができる。
図16は、第1軸L1(図3)と第2軸L2との間の角度αを40°に固定した状態で走査面と第2軸L2との間の角度γを90°、80°、70°および60°に設定した場合の発射光ELの走査面上における走査経路の形状を示す図である。
図12〜図14で説明したように、走査面と第2軸L2との間の角度γが90°の場合には、発射光ELにより走査面上に形成される円錐曲線(走査経路)の離心率は0になる。したがって、図16に示すように、角度γが90°の場合には、発射光ELの走査面上での走査経路は円形状になる。
また、角度γが80°、70°および60°の場合には、発射光ELにより走査面上に形成される円錐曲線の離心率は0より大きく1より小さくなる。したがって、発射光ELの走査面上での走査経路は楕円形状になる。また、角度γが小さくなるのに従い、走査領域が大きくなる。
以上のように、第1軸L1と第2軸L2との間の角度αを固定した状態で走査面と第2軸L2との間の角度γを調整することにより、発射光ELの走査面上での走査経路の形状および走査領域の大きさを調整することができる。特に、角度γを小さくした場合には、発射光ELの走査領域を前方に拡大することができるので、前方の検出対象物10を早期に検出することが可能になる。
(7)本実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態においては、モータ30のロータ302の1回転の動作で、所望の走査面上を発射光ELにより2回走査することができる。すなわち、ロータ302の回転速度を速くすることなく発射光ELの走査速度を向上することができる。
この場合、ロータ302の回転速度を速くするための増速機構を設けなくてよいので、レーザレーダ装置1の大型化が防止される。また、ロータ302を回転させるためのトルクを大きくしなくてよいので、小型のモータ30を用いることができる。それにより、レーザレーダ装置1の小型化が可能になる。
以上の結果、小型のレーザレーダ装置1による検出対象物10の高精度な探査が可能になる。
また、ロータ302の回転速度を速くしなくてよいので、モータ30に発生する逆起電力が大きくなることを防止することができる。それにより、モータ30において発生するトルクの値を安定させることができるので、反射鏡25を安定して回転させることができる。以上の結果、発射光ELの高速走査を安定して行うことができ、検出対象物10のより高精度な探査が可能になる。
また、モータ30の回転速度を速くしなくてよいので、モータ30の振動、騒音、および磨耗による劣化を防止することができる。また、低速のモータ30を用いることができるので、レーザレーダ装置1のコスト低下が可能になる。
また、モータ30の回転速度を速くしなくてよいので、低い駆動電圧でモータ30を駆動することができる。そのため、レーザレーダ装置1を駆動するために高性能のバッテリを設けなくてよいので、レーザレーダ装置1の汎用性が向上する。
また、モータ30の回転速度を速くすることなく反射鏡25を高速で回転させることができるので、モータ30と反射鏡25との間に増速機構(例えば、変速ギア)を設けなくてよい。それにより、レーザレーダ装置1の大型化を防止することができる。
また、本実施の形態においては、反射鏡25の裏面を常に受光面として用いることができる。すなわち、1つの反射鏡25によって反射光RLを常時受光することができる。したがって、複数の反射鏡25を設けることなく反射光RLを確実に受光することができるので、レーザレーダ装置1の小型化および軽量化が可能になる。また、この場合、反射鏡25を回転させるために大きなトルクを発生しなくてよいので、安価なモータ30により反射鏡25を安定して回転させることができる。
(8)変形例
上記実施の形態においては、揺動フレーム24に設けられた連結軸241,242(図9)がアーム部303,304(図9)に回転可能に支持されているが、連結軸241,242は揺動フレーム24およびアーム部303,304の少なくとも一方に対して第3軸L3周りに回転可能に設けられていればよい。従って、例えば、揺動フレーム24とは別個に連結軸241,242が設けられ、連結軸241,242が揺動フレーム24およびアーム部303,304に回転可能に支持されてもよい。また、例えば、アーム部303,304に連結軸241,242が設けられ、揺動フレーム24により連結軸241,242が回転可能に支持されてもよい。
また、上記実施の形態においては、回転部材33(図4)に設けられた突起部333,334(図4)が揺動フレーム24に回転可能に支持されているが、突起部333,334は揺動フレーム24および回転部材33の少なくとも一方に対して第4軸L4周りに回転可能に設けられていればよい。従って、例えば、回転部材33とは別個に突起部333,334が設けられ、突起部333,334が揺動フレーム24および回転部材33に回転可能に支持されてもよい。また、例えば、揺動フレーム24に突起部333,334が設けられ、揺動フレーム24により突起部333,334が回転可能に支持されてもよい。
また、上記実施の形態においては、第1軸L1に対する第2軸L2の傾斜角度を機械的に調整しているが、第1軸L1に対する第2軸L2の傾斜角度の調整方法は上記の例に限定されない。例えば、モータ等からなる調整機構を設け、第1軸L1に対する第2軸L2の傾斜角度を電気的に調整してもよい。
また、上記実施の形態においては、発射光ELとしてレーザ光を用いた場合について説明したが、発射光ELはレーザ光に限定されず、種々の光を用いることができる。
また、上記実施の形態においては、トルク発生装置としてモータ30を用いているが、トルク発生装置はモータ30に限定されない。例えば、手動巻き上げ式または自動巻き上げ式のゼンマイによりトルクを発生してもよい。
また、上記実施の形態においては、反射鏡25として平面反射鏡を用いた場合について説明したが、反射鏡25の形状は上記の例に限定されず、楕円面形状、放物面形状、双曲面形状、球面形状または他の非球面形状を有する反射鏡25を用いてもよい。なお、この場合、反射鏡25の凸面および凹面のどちらの面を反射面としてもよい。
<第2の実施の形態>
図17は、第2の実施の形態に係るレーザレーダ装置の光学系の構成を示す斜視図である。図17に示すレーザレーダ装置1Aが図3〜図10のレーザレーダ装置1と異なるのは以下の点である。
本実施の形態においては、支柱部23の上端部にモータ130が設けられる。モータ130の出力軸131は、回転部材33の突起部335(図3参照)に固定される。なお、回転部材33は、図3の回転部材33と同様の形状を有する。また、出力軸131の回転軸は第2軸L2に一致する。また、支柱部23の前面の上部に、リング状の支持部材140が設けられる。揺動フレーム24の連結軸241,242は、支持部材140上に摺動可能かつ回転可能に設けられる。
以上のような構成において、図示しない供給源からモータ130に電圧が供給されることにより、出力軸131が回転する。それにより、回転部材33が第2軸L2を回転軸として回転する。このとき、連結軸241,242は第3軸L3を回転軸として回転可能に設けられているので、第4軸L4が図3〜図10と同様に第3軸L3を揺動軸として揺動する。その結果、反射鏡25が図3〜図10のレーザレーダ装置1と同様に揺動しつつ回転する。すなわち、出力軸131の1回転により、所定の走査領域を発射光ELにより2回走査することができる。
なお、本実施の形態においては、出力軸131の側方に第1のフォトインタラプタ132が設けられ、出力軸131に鍔状のスリット板133が設けられる。出力軸131の回転角度すなわち第4軸L4の第2軸L2周りの回転角度は、第1のフォトインタラプタ132およびスリット板133により検出される。
ここで、本実施の形態においては、第1のフォトインタラプタ132により検出される第4軸L4の第2軸L2周りの回転角度に基づいて反射鏡25の反射点B(図11)における発射光ELの反射角βが算出される。
詳細には、まず、第1のフォトインタラプタ132により検出される第4軸L4の第2軸L2周りの回転角度θ1に基づいて、第3軸L3の第1軸L1周りの回転角度θが下記式(2)により算出される。なお、下記式(2)においてαは第1軸L1と第2軸L2との間の角である。
θ=tan−1(tanθ1・cosα) ・・・(2)
次いで、上記式(2)により算出された回転角度θおよび上述した式(1)に基づいて反射角βが算出される。
なお、上記式(1)および上記式(2)を用いた反射角βの算出は、図示しない制御部により実行される。
また、支柱部23の前面において支持部材140の下方には、第2のフォトインタラプタ141が設けられる。第2のフォトインタラプタ141は、支柱部23のY方向における中央部に取り付けられる。第2のフォトインタラプタ141は、溝部142を有する。
また、連結軸241,242には、位置検出用の長尺状のタブ2410,2420がそれぞれ設けられている。本実施の形態においては、レーザレーダ装置1Aが第1の基準状態(図3参照)になるときにタブ2410が第2のフォトインタラプタ141の溝部142内を通過し、レーザレーダ装置1Aが第2の基準状態(図10参照)になるときにタブ2420が溝部142内を通過するように各部が構成される。
このような構成において、第2のフォトインタラプタ141によりタブ2410,2420を検出することにより、第1の基準状態(図3参照)および第2の基準状態(図10参照)を検出することができる。それにより、反射角βを正確に算出することが可能になる。
なお、本実施の形態においては、出力軸131の重量を重くすることが好ましい。それにより、出力軸131の慣性モーメントを大きくすることができるので、出力軸131の回転速度を安定させることができる。その結果、レーザレーダ装置1Aの探査精度を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、支持部材140の上面を連結軸241,242が移動するので、連結軸241,242と支持部材140との間の摩擦力を小さくすることが好ましい。
連結軸241,242と支持部材140との間の摩擦力は、例えば、炭窒化チタン(TiCN)またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)等により支持部材140の表面をコーティングすることにより低減することができる。また、例えば、反射鏡25を軽量化することにより連結軸241,242と支持部材140との間の摩擦力を低減してもよい。
なお、反射鏡25を軽量化した場合、反射鏡25の揺動運動に伴う負荷トルクを低減することができる。それにより、モータ130の駆動電圧を低減することができるとともに、出力軸131の回転速度を安定させることができる。
なお、上記においては、第3軸L3の第1軸L1周りの回転角度θを上記式(2)に基づいて算出しているが、回転角度θの算出方法は上記の例に限定されない。例えば、図示しない記憶部に第1軸L1と第2軸L2との間の角度α、第3軸L3の第1軸L1周りの回転角度θおよび第4軸L4の第2軸L2周りの回転角度θ1の関係を記憶させておいてもよい。
図18は、記憶部に記憶される角度α、回転角度θおよび回転角度θ1の関係の一例を示す図である。図18において縦軸は、回転角度θを示し、横軸は、回転角度θ1を示す。なお、図18においては、角度αが15°、30°、45°、60°、75°および85°の場合の回転角度θと回転角度θ1との関係が示されているが、記憶部には、任意の角度αに対応する回転角度θと回転角度θ1との関係が記憶される。
このように、角度α、回転角度θおよび回転角度θ1の関係が記憶部に記憶されている場合、図示しない制御部は、使用者により予め設定される角度αおよび第1のフォトインタラプタ132により検出される回転角度θ1に基づいて第3軸L3の第1軸L1周りの回転角度θを容易かつ迅速に算出することができる。
また、上記においては反射角βを上記式(1)に基づいて算出しているが、反射角βの算出方法は上記の例に限定されない。例えば、図示しない記憶部に角度α、回転角度θおよび反射角βの関係を記憶させておいてもよい。
図19は、記憶部に記憶される角度α、回転角度θおよび反射角βの関係の一例を示す図である。図19において縦軸は、反射角βを示し、横軸は、回転角度θを示す。なお、図19においては、角度αが15°、30°、45°、60°、75°および85°の場合の反射角βと回転角度θとの関係が示されているが、記憶部には、任意の角度αに対応する反射角βと回転角度θとの関係が記憶される。
このように、角度α、反射角βおよび回転角度θの関係が記憶部に記憶されている場合、図示しない制御部は、使用者により予め設定される角度αおよび図18に示した関係に基づいて算出される回転角度θ(または式(2)に基づいて算出される回転角度θ)に基づいて反射角βを容易かつ迅速に算出することができる。
<第3の実施の形態>
図20は、第2の実施の形態に係るレーザレーダ装置の光学系の構成を示す斜視図である。図20に示すレーザレーダ装置1Bが図3〜図10のレーザレーダ装置1と異なるのは以下の点である。
本実施の形態においては、支柱部23の一端部に図4と同様の湾曲部312が形成される。湾曲部312には、図4と同様にベアリング32および回転部材33が取り付けられる。また、支柱部23の前面の上部にモータ3010が設けられる。モータ3010は、円弧状のステータ3011およびリング状のロータ3012を有する。
ステータ3011は、円弧状の溝部を有し、支柱部23に固定されている。ロータ3012は、ステータ3011の上記溝部内に回転可能に嵌め込まれる。ロータ3012の上面には、支持部3013,3014が形成される。揺動フレーム24の連結軸241,242(図9参照)は、支持部3013,3014に回転可能に支持される。
本実施の形態においては、図示しない供給源からステータ3011に電圧が供給されることにより、第1軸L1を回転軸としてロータ3012が回転する。このとき、連結軸241,242は第3軸L3を回転軸として回転可能に設けられているので、第4軸L4が図3〜図10と同様に第3軸L3を揺動軸として揺動する。その結果、反射鏡25が図3〜図10のレーザレーダ装置1と同様に揺動しつつ回転する。すなわち、ロータ3012の1回転により、所定の走査領域を発射光ELにより2回走査することができる。
なお、本実施の形態に係るレーザレーダ装置1Bにおいても、図17と同様に第1および第2のフォトインタラプタ132,141、スリット板133、およびタブ2410,2420を設けてもよい。この場合、図17のレーザレーダ装置1Aと同様に、上記の式(1)および式(2)または図18および図19に示した関係を用いて発射光ELの反射角βを容易かつ正確に算出することができる。
また、本実施の形態においては、連結軸241,242が支持部3013,3014に回転可能に支持されるので、連結軸241,242と支持部3013,3014との間の摩擦力を小さくすることが好ましい。連結軸241,242と支持部3013,3014との間の摩擦力は、例えば、反射鏡25を軽量化することにより低減することができる。
なお、反射鏡25を軽量化した場合、反射鏡25の揺動運動に伴う負荷トルクを低減することができる。それにより、モータ3010の駆動電圧を低減することができるとともに、ロータ3012の回転速度を安定させることができる。
<第4の実施の形態>
図21〜図33は、第4の実施の形態に係るレーザレーダ装置の光学系の構成を示す斜視図である。以下の説明においては、図21に示すレーザレーダ装置1Cの状態を基準状態と称する。なお、本実施の形態においては、後述するように角度調整部材31が回転可能に設けられている。図22〜図33は、角度調整部材31の基準状態からの回転角度θが30°、60°、90°、・・・、330°および360°である場合のレーザレーダ装置1Cの状態を示す図である。
図21〜図33のレーザレーダ装置1Cが図3〜図10のレーザレーダ装置1と異なるのは以下の点である。
本実施の形態においては、図示しない固定機構によりロータ302が固定可能に設けられている。また、角度調整部材31の円柱部311がモータ30の出力軸としてステータ301に回転可能かつ図示しない固定機構により固定可能に設けられている。すなわち、本実施の形態においては、ロータ302および角度調整部材31が共に回転可能に設けられている。また、図示しない固定機構により、ロータ302および角度調整部材31を任意に固定することができる。本実施の形態に係るレーザレーダ装置1Cは、ロータ302および角度調整部材31のいずれか一方が固定された状態で使用される。
なお、ロータ302および角度調整部材31の固定機構は、ロータ302および角度調整部材31を機械的に固定する構成を有してもよく、ロータ302および角度調整部材31を電気的に固定する構成を有してもよい。
以下、レーザレーダ装置1Cの動作について説明する。なお、角度調整部材31が固定されている場合には、レーザレーダ装置1Cは、第1の実施の形態に係るレーザレーダ装置1(図3)と同様の動作を行う。したがって、以下においては、ロータ302が固定されている場合のレーザレーダ装置1Cの動作について説明する。
本実施の形態においては、ロータ302が固定されている状態でモータ30に電圧が供給されることにより、角度調整部材31が円柱部311(第1軸L1)を回転軸として回転する。
この場合、ロータ302が固定されているので、揺動フレーム24の第1軸L1周りの回転が禁止される。それにより、回転部材33の第1軸L1周りの回転も禁止される。したがって、角度調整部材31が回転しても、揺動フレーム24および回転部材33は、第1軸L1周りには回転しない。
一方、図3〜図10で説明したように、揺動フレーム24は第3軸L3周りに回転可能に設けられている。また、揺動フレーム24、回転部材33および角度調整部材31は、第2軸L2と第4軸L4とが常に直交するように連結されている。
この場合、図21〜図33に示すように、揺動フレーム24および回転部材33は、角度調整部材31が回転することにより、第3軸L3を揺動軸として揺動する。それにより、反射鏡25が揺動する。
詳細には、角度調整部材31の回転角度θが0°から90°の間では、図21〜図24に示すように、角度調整部材31の回転角度θの増加に従って、第1軸L1に垂直な平面に対する第4軸L4の傾斜角度が増加する。それにより、第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が増加する。そして、図24に示すように、角度調整部材31の回転角度θが90°になるときに、第1軸L1に垂直な平面に対する第4軸L4の傾斜角度が最大になる。それにより、第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が最大になる。
角度調整部材31の回転角度θが90°から180°の間では、図24〜図27に示すように、角度調整部材31の回転角度θの増加に従って第1軸L1に垂直な平面に対する第4軸L4の傾斜角度が減少する。それにより、第1軸L1に垂直な平面に対する反射鏡25の傾斜角度が減少する。そして、図27に示すように、角度調整部材31の回転角度θが180°になるときに、第4軸L4が第1軸L1に垂直になる。それにより、反射鏡25が第1軸L1に垂直な平面に対して平行になる。
なお、本実施の形態においては、図21〜図27に示すように、角度調整部材31が基準状態から180°回転する際には、反射鏡25の下面が+Y方向側を向くように反射鏡25が傾斜する。
角度調整部材31の回転角度θが180°から360°の間では、図27〜図33に示すように、上記と同様の動作により反射鏡25の下面が−Y方向側を向くように反射鏡25が傾斜する。そして、角度調整部材31の回転角度θが360°になることにより、レーザレーダ装置1Cの状態が基準状態に復帰し、反射鏡25が第1軸L1に垂直な平面に対して平行になる。
以上のように、本実施の形態においては、角度調整部材31の回転角度θが0°から180°の間では、反射鏡25の下面が+Y方向側に向かって傾斜し、角度調整部材31の回転角度θが180°から360°の間では、反射鏡25の下面が−Y方向側に向かって傾斜する。
この場合、発射光ELの走査面上における走査経路は、角度調整部材31が基準状態から1回転することにより、所定の直線経路を一往復するように移動する。以下、発射光ELの走査面上における走査経路を詳細に説明する。なお、以下の説明では、基準状態(図21)における発射光ELの走査面上での位置を基準位置とする。
基準状態から角度調整部材31が回転を開始することにより、発射光ELは、走査面上において基準位置から遠ざかるように+Y方向に移動する。そして、角度調整部材31の回転角度θが90°になるとき(図24)に、発射光ELは、基準位置から最も離間する位置に移動する。以下、角度調整部材31の回転角度が0°から90°まで増加するときの走査面上での発射光ELの走査経路を第1経路と称する。
角度調整部材31の回転角度θが90°を超えてさらに増加することにより、発射光ELは、第1経路上を基準位置に近づくように−Y方向に移動する。そして、角度調整部材31の回転角度が180°になるとき(図27)に、発射光ELが基準位置に復帰する。
その後、角度調整部材31の回転角度θが180°を超えてさらに増加することにより、発射光ELは、基準位置から遠ざかるように−Y方向に移動する。そして、角度調整部材31の回転角度θが270°になるとき(図27)に、発射光ELは、基準位置から最も離間する位置に移動する。以下、角度調整部材31の回転角度が180°から270°まで増加するときの走査面上での発射光ELの走査経路を第2経路と称する。
角度調整部材31の回転角度θが270°を超えてさらに増加することにより、発射光ELは、第2経路上を基準位置に近づくように+Y方向に移動する。そして、角度調整部材31の回転角度が360°になるとき(図33)に、発射光ELが基準位置に復帰する。
以上のように、本実施の形態においては、ロータ302を固定して角度調整部材31を回転させることにより、走査面上における発射光ELの走査経路を直線経路にすることができる。
すなわち、本実施の形態においては、ロータ302および角度調整部材31を選択的に固定することにより発射光ELの走査経路を任意に変更することができる。それにより、レーザレーダ装置1Cの利便性が向上する。
<レーザレーダ装置を備えた輸送機器>
次に、上記実施の形態に係るレーザレーダ装置1(1A,1Bまたは1C)を備えた輸送機器の例として自動二輪車について説明する。
図34は、レーザレーダ装置1(1A,1Bまたは1C)を備えた自動二輪車を示す模式図である。
図34の自動二輪車1300においては、車体1310の前部下方に前輪1320が設けられ、後部下方に後輪1330が設けられる。車体1310の中央部には、ECU(電子制御装置)1340が設けられる。車体1310の前端部および後端部に上記実施の形態に係るレーザレーダ装置1がそれぞれ取り付けられる。
また、車体1310においてハンドル1360の後方下部にディスプレイ1350が設けられる。
前端部のレーザレーダ装置1は、主として自動二輪車1300の前方および側方の物体の距離および角度を測定する。後端部のレーザレーダ装置1は、主として自動二輪車1300の後方および側方の物体の距離および物体の角度を測定する。前端部および後端部のレーザレーダ装置1により測定された距離および角度はECU1340に与えられる。
ECU1340は、前端部および後端部のレーザレーダ装置1により測定された距離および角度をディスプレイ1350にレーダ画像として表示させる。それにより、乗員は、周囲の物体までの距離および物体の方位を視覚的に認識することができる。
上記のレーザレーダ装置1,1A,1B,1Cは、自動二輪車に限らず、4輪の自動車、3輪の自動車、電動自転車、滑走艇、水上バイク、電動車椅子、航空機、無人ヘリ、4輪バギー(All Terrain Vehicle)、無人搬送機、ゴルフカート、等の種々の輸送機器に用いることができる。
なお、上記のレーザレーダ装置1,1A,1B,1Cは、港湾、駐車場、交差点等において監視設備として固定設置されてもよい。
<請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応>
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態では、送光装置70が送光部の例であり、モータ30,3010,130がトルク発生装置の例であり、揺動フレーム24が揺動部材の例であり、ロータ302、支持部3013,3014、および支持部材140が第1の支持部材の例であり、回転部材33が第2の支持部材の例であり、ボルト314およびベアリング32が調整部の例であり、摺動部21および支柱部23が第3の支持部材の例であり、ベースプレート201が第4の支持部材の例であり、車体1310が本体部の例であり、後輪1330が駆動部の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。