JP5155047B2 - 建物の鉛直振動予測方法 - Google Patents

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本発明は、外部振動源からの環境振動による建物の鉛直振動予測方法、及び、これを用いた床構造の設計方法及び建物の鉛直振動評価シートに関するものである。
近年、都市部において、幹線道路、鉄道等の振動源の近くに多くの住宅が建設されている。この様な地盤に建設される建物は、振動源からの影響で建物内部で振動が発生するおそれがある。また一方で、居住者の建物に対する要求レベルの向上により、建物建築後の環境振動問題が発生するケースがある。この様な問題に対しては、各種の振動予測方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
特許第3555728号公報 特開平11−140967号公報 特許第3571619号公報
しかしながら、建物の振動には水平方向の振動と鉛直方向の振動とがあるが、前述の各特許文献の技術は、水平方向の振動予測を基本とし、建物各部屋の各床毎の鉛直方向の振動を予測し得るものではなかった。即ち、建物の水平方向の振動は、建物の平面的なねじれ振動の影響は受けるものの、建物の水平方向の固有振動数と地盤の振動により各階毎に概ね一定の振動の応答値を示すのに対し、鉛直方向の振動は、床の振動特性の影響を受けるので床の振動特性に応じて異なる応答値となるが、床の振動特性は床の支持状態や床を支持する床梁の支持状態などにより異なるので、これらの支持状態の異なる床毎に評価をしなければならない。従って、各特許文献に記載の予測方法では的確な予測をすることができず、同じ建物の同じ階層で、しかも同じ層構成の床であっても振動増幅量が大きくなる部位が発生し、振動が問題になる場合があった。
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、計画する建物の鉛直方向振動の応答値を高い精度で予測することが出来る建物の鉛直振動予測方法、及びこれを用いた床構造の設計方法及び建物の鉛直振動評価シートを提供せんとするものである。
前記目的を達成するための本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第1の構成は、外部振動に起因する環境振動による建物の床上の鉛直方向の振動の応答値を予測する建物の鉛直振動予測方法であって、計画する建物と同一の躯体システムを有する建物における床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、環境振動量に対する床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を予め求めておき、計画する建物の床梁の鉛直方向のたわみ量を前記関係にあてはめることで環境振動量に対する床上の鉛直方向の振動の増幅量を求め、該増幅量に建物の基礎上または建物の近傍地盤上で測定された鉛直方向の環境振動量を加算することで床上の鉛直方向の振動の応答値を予測することを特徴とする。
また、本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記床梁の鉛直方向のたわみ量は、建物の架構情報と、前記床梁の構造性能情報と、床を構成する部材の重量情報と、その床にかかる積載荷重による重量情報とにより算出することを特徴とする。
また、本発明に係る床構造の設計方法は、前述の第1、第2の建物の鉛直振動予測方法により予測された床上の鉛直方向の振動の応答値の大きさが、予め設定した鉛直方向の振動量基準値を超える場合には、架構性能に関わる床梁の本数、該床梁の配置、該床梁を支える柱位置、該床梁の断面性能のうちの少なくとも1つを変更して、前記振動量が前記予め設定した鉛直方向の振動量基準値内に納まるように設計変更することを特徴とする。
また、本発明に係る建物の鉛直振動評価シートの構成は、建設地における外部振動に起因する環境振動量と建物の床梁の鉛直方向のたわみ量により計画する建物の床上の鉛直方向の振動の応答値を予測する評価シートであって、建物の基礎上または建物の近傍地盤上で測定された鉛直方向の環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、該たわみ量に対応する環境振動量に対する前記床上の鉛直方向の振動の増幅量の予測値との関係を一覧表にしたことを特徴とする。
本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第1の構成によれば、計画する建物の架構性能情報と、床を支持する梁部材の構造性能情報と、床を構成する部材の重量情報と、その床にかかる積載荷重による重量情報とにより床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量を算出する。この算出値と、一方で、予め、例えば計画する建物と同一の躯体システムを有する多数の建物について求めておいた床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と環境振動量に対する建物の鉛直方向の振動の増幅量との関係を求めておく。そして、計画する建物のたわみ量の算出値をこの関係に当てはめることで、計画する建物の鉛直方向の振動の環境振動量に対する増幅量を予測することが出来る。
また、建設地における環境振動量を、例えば、地盤上若しくは地盤と挙動を同じくする地盤上に設けられたコンクリート土間上やコンクリート基礎上の鉛直方向の振動量を測定することによって求める。そして、この環境振動量に建物各階床の環境振動量に対する鉛直方向の振動の増幅量の予測値を加算することにより、2階以上の床上の鉛直方向の振動の応答値を容易に予測することが出来る。
上記鉛直振動の振動レベルは、人の体感する振動の大きさ、すなわち人体が受ける感覚を評価するもので、JIS Z 8735による感覚補正を行った値を用いることが望ましい。通常、水平方向の環境振動については建物の固有振動数と地盤の卓越振動数による共振を考慮する必要がある。一方で、住宅等の一般的な規模の建物の床は支持スパンがおおむね5m以下と短くかつ軽量であるため、鉛直方向の固有振動数は、水平方向の固有振動数よりも高いおよそ20Hz以上の値を示す。また、地盤を介して建物に入力される環境振動については20Hzを超えるような高周波成分の減衰が大きい。更に人の鉛直方向の振動に対する人体感度は8Hzを超えると減少することが知られている。これらより、人の体感評価では住宅等の一般的な規模の建物の床の鉛直方向の振動については共振の影響をほとんど考慮しなくても良い。
また、本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第2の構成によれば、前記床梁の鉛直方向のたわみ量は、実際に計画する建物であっても、予め求めておくたわみ量と鉛直振動増幅量の関係を求めるための建物モデルであっても、建物の架構情報と、床を支持する梁部材の構造性能情報と、床を構成する部材の重量情報と、その床にかかる積載荷重による重量情報とにより容易に算出することが出来る。
また、本発明に係る床構造の設計方法によれば、前記第1、第2の建物の鉛直振動予測方法により予測された各階居室の床上の鉛直振動の応答値の大きさが、予め設定した鉛直方向の振動量基準値を超える場合には、架構性能に関わる床梁の本数、床梁の配置、床梁を支える柱位置、床梁の断面性能のうちの少なくとも1つを変更して、予測された鉛直振動の応答値が予め設定した鉛直方向の振動量基準値内に納まるように設計変更することが出来る。
例えば、予測された鉛直振動の予測応答値が人の体感レベルである55dBを超える場合は、床の梁断面性能や長さ、梁の本数、梁に対する柱位置等を変更し、振動量基準値内に納まるようにすることが出来る。従って建物の基本的な躯体システムを変更することなく予想される振動問題を事前に解決することが出来る。
また、本発明に係る建物の鉛直振動評価シートによれば、建物の基礎上または建物の近傍地盤で測定された環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、該たわみ量に対応する前記床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を一覧表にすることが出来、個々の建物設計に関係なく簡易に評価することが出来る。
以上のように、本発明によれば、計画する建物の設計時、構造計算により床を支持する床梁のたわみ量を求めることと、建設予定地の地盤の環境振動量を測定することのみで、その建物の環境振動対策が極めて容易にたてられる。特に、使用する部材や躯体構成が規格化されており、構造計算により床梁のたわみ量や構造特性を把握することも容易な鉄骨造の工業化住宅において好適に用いることが出来る。
図により本発明に係る計画する建物の鉛直振動予測方法、床構造の設計方法及び建物の鉛直振動評価シートの一実施形態を具体的に説明する。
尚、以下の具体的説明では、「振動量」と「振動レベル」(加速度、単位はdB)とは同義である。また、「振動(振動レベル)の増幅量」とは「環境振動に対する鉛直方向の振動の増幅量」である。また、単に「振動レベル」、「たわみ」と表現している場合であっても、これらは「鉛直方向の振動レベル」、「鉛直方向のたわみ」を意味するものとする。
先ず、図1〜図3を用いて本発明に係る計画する建物の鉛直振動予測方法の第1実施形態及び本発明に係る建物の鉛直振動評価シート並びに本発明に係る床構造の設計方法の構成について説明する。本実施例における建物は、柱、床梁、床、外壁等を構成する部材の材質、寸法、構法等が規格化、統一化された鉄骨造の工業化住宅である。
図1は本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第1実施形態の構成を示すフローチャート、図2は予め求めておいた床梁の鉛直方向のたわみ量と、床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を示す図、図3は建物のコンクリート基礎梁上で測定された環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量情報と、該たわみ量情報に対応する床上の鉛直方向の振動の増幅量とが一覧表にされた評価シートの一例を示す図である。
図1は、外部振動に起因する環境振動による計画する建物の床上の鉛直振動の応答値を予測する建物の鉛直振動予測方法を説明するフローチャートであり、先ず、ステップSにおいて、計画する建物と同一の工業化住宅でありプラン(柱や梁等の部材配置)の異なる多数の既存建物、若しくは計算用の建物モデルについて床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量を算出する。床梁の鉛直方向のたわみ量は、建物の架構情報と、床を支持する床梁部材の構造性能情報と、床を構成する部材の重量情報と、その床にかかる積載加重による重量情報とにより算出することが出来る。
一方、ステップSにおいて、ステップSにおける各床に対応する床上の鉛直方向の振動の増幅量を、予め既存建物について個々に測定するか、若しくは計算用の建物モデルについて解析により求め、ステップSにおいて、予め床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を例えば図2に示すようなグラフデータとして求めておき、そのデータを鉛直振動増幅量データベース1に格納しておく。
図2は同一の工業化住宅である複数の建物において床上の鉛直方向の振動レベルの増幅量を実際に測定することで増幅量を求め、夫々の測定点での鉛直方向のたわみ量と振動レベルの増幅量との関係をプロットし、その結果からグラフデータ化した例である。この例では、増幅量の実測値はたわみ量の増加と共に大きくなり、たわみ量が5mm以下では増幅量の実測値のばらつきが大きくなる傾向を示している。よって、この事例では、たわみ量が5mm以下の場合は安全側の評価をして振動の増幅量を一律5dBとし、5mm以上の場合はたわみ量の増加と共に増幅量が大きくなるものとしてグラフデータ化したものである。
次に、ステップSにおいて、建物の建設地において測定された環境振動量(地盤上の鉛直方向の振動レベル)を測定する。そして、ステップSにおいて、鉛直振動増幅量データベース1に格納された図2に示す振動レベルの増幅量データに基づいて、予め求めておいた建物の床梁の鉛直方向のたわみ量に対応する該床上の鉛直方向の振動の増幅量を求め、この増幅量をステップSで得られた環境振動量に加算する。
次に、ステップSにおいて、図3に示すように、建物の基礎上または建物の近傍地盤上で測定された地盤上の環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量情報と、該たわみ量情報に対応する該床上の鉛直方向の振動の増幅量とが一覧表にされた建物の鉛直振動評価シートとなる建物の床の鉛直たわみ量毎の振動レベル予測シート2を作成する。
即ち、振動レベル予測シート2は、建設地における外部振動源からの環境振動と建物の床梁の鉛直方向のたわみ量により計画する建物の床上の鉛直振動の応答値を予測する評価シートであって、建物の基礎上または建物の近傍地盤で測定された環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、該たわみ量に対応する前記床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を一覧表にしたものであり、更に、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量に対する鉛直振動の予測応答値を付加することが出来る。
そして、前記ステップSで作成された振動レベル予測シート2を建物の設計担当者に渡し、ステップSにおいて、建物の構造計算データより、各階居室の床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量を算出し、予測シート2を参照して床上の鉛直振動の応答値(床の振動レベル)を検討すべき床毎に予測する。
そして、上記建物の鉛直振動予測方法により予測された床上の鉛直振動の応答値の大きさが、予め設定した鉛直方向の振動量基準値を超える場合には、架構性能に関わる床梁の本数、床梁の配置、該床梁を支える柱位置、床梁の断面性能のうちの少なくとも1つを変更して、前記振動量が前記予め設定した鉛直方向の振動量基準値内に納まるように任意に設計変更する。
次に、図4〜図6を用いて本発明に係る計画する建物の鉛直振動予測方法の第2実施形態の構成について説明する。図4は本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第2実施形態の構成を示すフローチャート、図5及び図6はCAD(Computer Aided Design;コンピュータによる設計製図)画面上に床上の鉛直方向の振動の増幅量及び評価を示した様子を示す図である。
図4において、ステップS〜Sは前記第1実施形態の図1に示したステップS〜Sと同様であるので省略する。図4のステップS11において、建物を設計し、構造計算により建物の検討すべき位置の近傍の床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量を算出する。
一方、ステップSで、予め求めておいた床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係(図2に示す振動レベルの増幅量のグラフ参照)を参照して、ステップSで建物が建設される建物の基礎上または建物の近傍地盤で測定された環境振動量を入力し、ステップS12において、建物の各階の床梁の鉛直方向のたわみ量から求められる床上の鉛直方向の振動の増幅量に、建物の基礎上または建物の近傍地盤上で測定された環境振動量を加算することにより床上の鉛直振動の応答値を各床毎に算出して、図5に示すように、CAD(Computer Aided Design;コンピュータによる支援設計製図)画面上に鉛直方向の振動レベルを表示する。
そして、図6に示すように、鉛直振動レベルの評価を行い、予め設定した鉛直方向の振動量基準値を超える場合には、警告表示を行い(ステップS13)、架構性能に関わる床梁の本数、床梁の配置、該床梁を支える柱位置、床梁の断面性能のうちの少なくとも1つを変更して、前記振動量が前記予め設定した鉛直方向の振動量基準値内に納まるように設計変更することが出来る。
次に図7〜図16を用いて、本発明に係る建物の鉛直振動予測方法により予測した建物各階の部屋毎の振動レベルを検証実験した様子を説明する。図7〜図9は検証した建物の1階〜3階の測定点を示す平面図、図10は小梁のたわみ量の考え方を示す図、図11及び図12は、検証した建物の2階、3階の測定点付近の床梁の鉛直方向のたわみ量を示す平面図、図13は図2に示した床梁の鉛直方向のたわみ量と、床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係グラフから、建物の2階、3階の測定点付近の床梁のたわみ量(6mm、8mm)に基づいて、増幅量(6dB、8dB)を得る様子を示す図、図14は検証した建物の1階〜3階の測定点において種々の振動源により発生した鉛直振動の振動レベルの実測結果を示す図、図15及び図16は検証した建物の2階、3階の測定点付近の床梁のたわみ量から予測した鉛直振動の振動レベルの予測結果を示す図である。
本実施形態で検証を行なった建物は、大型車が通行する幹線道路に面する鉄骨造3階建ての共同住宅であり、道路と建物との離間距離は約3mである。図7〜図9に検証した建物の1階、2階、3階の評価点を示す。評価対象とした部屋は、床梁のたわみ量の比較的大きな2階、3階の北側の居室とした。鉛直振動の振動レベル測定器としては、リオン株式会社製の振動レベル計「VM−53A」を3台用いて検証した建物の1階、2階、3階のそれぞれの評価点を3点同時に計測した。
本実施形態で検証を行なった建物は、既設建物の検証実験であり、建物基礎上からの振動の増幅量と床梁のたわみ量との検証を行い、検証した建物の1階コンクリート基礎梁上の床を基準として、2階B室、3階C室の鉄骨梁上に載置された床上の鉛直振動の検証を行なった。
尚、1階の基準点はA室に限るものではなく、地盤と挙動を同じくする基礎の上の床を適宜選定することができる。また、振動を予測する部屋はB室、C室に限定するものではなく、同様の手法により他の部屋の評価を行うことも可能である。
検証した建物において、床梁の材質や断面形状により決定される断面性能、床梁の配置、荷重等に基づいて計算を行った結果得られた、2階、3階の床梁のたわみ量を図11及び図12に示す。評価点が小梁(他の梁に支持された梁)上の点である場合のたわみ量の考え方について図10を用いて説明すると、両端が大梁5に支持された小梁4のたわみ量は、小梁4単独のたわみ量と、両端が柱5に支持された大梁3単独のたわみ量との合計で表される。なおここで柱5の鉛直方法の変位は充分に小さいものとする。
図11及び図12に示す検証した建物の2階、3階の鉄骨梁の上の床上の評価点(測定点B,C)は小梁である床梁上の点である為、小梁自身の単体のたわみ量と小梁を支持する大梁単独のたわみ量との合計であり、その値は計算によって、測定点Bで6mm、測定点Cで8mmと算出され表示されている。
これら測定点B,Cにおけるたわみ量(測定点Bで6mm、測定点Cで8mm)と、図2に示す振動レベルの増幅量のグラフとにより、各階床の鉛直振動の増幅量は、図13に示すように、測定点Bで「+6dB」、測定点Cで「+8dB」であると予測される。
検証した建物の測定点A〜Cにて測定された鉛直方向の振動レベルを図14に示す。図14においては、各測定値毎に増幅量のばらつきがあるため評価に関しては平均値と最大値により行った。
図14に示すように、測定点Aにおける鉛直方向の振動レベルの実測した最大値は「48dB」で、平均値は「43dB」であった。一方、本発明に係る建物の鉛直振動予測方法により予測した建物各階の部屋毎の振動レベルの増幅量は、図15に示すように、測定点Bでの予測値は、最大値{48dB+6dB=54dB}、平均値{43dB+6dB=49dB}と予測され、図16に示すように、測定点Cでの予測値は、最大値{48dB+8dB=56dB}、平均値{43dB+8dB=51dB}と予測される。
これに対して、図14に示すように、測定点Bでの鉛直方向の振動レベルの実測した最大値は「52dB」で、平均値は「48dB」であり、測定点Cでの鉛直方向の振動レベルの実測した最大値は「55dB」で、平均値は「51dB」であった。
これらのことから、本発明に係る建物の鉛直振動予測方法により予測される鉛直方向の振動レベルの応答値と、実際に測定検証した実測値とは極めて近似した値となり確からしさが実証されたものである。
上記構成によれば、計画する建物の架構性能情報と、床を支持する床梁部材の構造性能情報と、床を構成する部材の重量情報と、その床にかかる積載荷重による重量情報とにより床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量を算出する。この算出値と、一方で、予め、例えば計画する建物と同一の躯体システムを有する多数の建物について求めておいた床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と環境振動量に対する建物の鉛直方向の振動の増幅量との関係を求めておく。そして、計画する建物のたわみ量の算出値をこの関係に当てはめることで、計画する建物の鉛直方向の振動の環境振動量に対する増幅量を予測することが出来る。
また、建設地における環境振動量を、例えば、地盤上若しくは地盤と挙動を同じくする地盤上に設けられたコンクリート土間上やコンクリート基礎上の鉛直方向の振動量を測定することによって求める。そして、この環境振動量に建物各階床の環境振動量に対する鉛直方向の振動の増幅量の予測値を加算することにより、2階以上の床上の鉛直方向の振動の応答値を容易に予測することが出来る。
上記鉛直振動の振動レベルは、人の体感する振動の大きさ、すなわち人体が受ける感覚を評価するもので、JIS Z 8735による感覚補正を行った値を用いることが望ましい。通常、水平方向の環境振動については建物の固有振動数と地盤の卓越振動数による共振を考慮する必要がある。一方で、住宅等の一般的な規模の建物の床は支持スパンがおおむね5m以下と短くかつ軽量であるため、鉛直方向の固有振動数は、水平方向の固有振動数よりも高いおよそ20Hz以上の値を示す。また、地盤を介して建物に入力される環境振動については20Hzを超えるような高周波成分の減衰が大きい。更に人の鉛直方向の振動に対する人体感度は8Hzを超えると減少することが知られている。これらより、人の体感評価では住宅等の一般的な規模の建物の床の鉛直方向の振動については共振の影響をほとんど考慮しなくても良い。
また、床梁の鉛直方向のたわみ量は、実際に計画する建物であっても、予め求めておくたわみ量と鉛直振動増幅量の関係を求めるための建物モデルであっても、建物の架構情報と、床を支持する梁部材の構造性能情報と、床を構成する部材の重量情報と、その床にかかる積載荷重による重量情報とにより容易に算出することが出来る。
また、予測された各階居室の床上の鉛直振動の応答値の大きさが、予め設定した鉛直方向の振動量基準値を超える場合には、架構性能に関わる床梁の本数、床梁の配置、床梁を支える柱位置、床梁の断面性能のうちの少なくとも1つを変更して、予測された鉛直振動の応答値が予め設定した鉛直方向の振動量基準値内に納まるように設計変更することが出来る。
例えば、予測された鉛直振動の予測応答値が人の体感レベルである55dBを超える場合は、床の梁断面性能や長さ、床梁の本数、床梁の配置、梁に対する柱位置、床梁の断面性能のうちの少なくとも1つを変更し、振動量基準値内に納まるようにすることが出来る。従って建物の基本的な躯体システムを変更することなく予想される振動問題を事前に解決することが出来る。
また、建物の基礎上または建物の近傍地盤で測定された環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、該たわみ量に対応する前記床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を一覧表にすることが出来、個々の建物設計に関係なく簡易に評価することが出来る。
本発明の活用例として、外部振動源からの環境振動による建物の鉛直振動予測方法、及び、これを用いた床構造の設計方法及び建物の鉛直振動評価シートに適用出来る。
本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第1実施形態の構成を示すフローチャートである。 予め求めておいた床梁の鉛直方向のたわみ量と、床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を示す図である。 建物のコンクリート基礎梁上で測定された環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量情報と、該たわみ量情報に対応する床上の鉛直方向の振動の増幅量とが一覧表にされた評価シートの一例を示す図である。 本発明に係る建物の鉛直振動予測方法の第2実施形態の構成を示すフローチャートである。 CAD画面上に床上の鉛直方向の振動の増幅量及び評価を示した様子を示す図である。 CAD画面上に床上の鉛直方向の振動の増幅量及び評価を示した様子を示す図である。 検証した建物の1階の測定点を示す平面図である。 検証した建物の2階の測定点を示す平面図である。 検証した建物の3階の測定点を示す平面図である。 小梁のたわみ量の考え方を示す図である。 検証した建物の2階の測定点付近の床梁の配置とたわみ量を示す平面図である。 検証した建物の3階の測定点付近の床梁の配置とたわみ量を示す平面図である。 図2に示した床梁のたわみ量と、床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係グラフから、建物の2階、3階の測定点付近の床梁のたわみ量(6mm、8mm)に基づいて、増幅量(+6dB、+8dB)を得る様子を示す図である。 検証した建物の1階〜3階の測定点において種々の振動源により発生した鉛直振動の振動レベルの実測結果を示す図である。 検証した建物の2階の測定点付近の床梁のたわみ量から予測した鉛直振動の振動レベルの予測結果を示す図である。 検証した建物の3階の測定点付近の床梁のたわみ量から予測した鉛直振動の振動レベルの予測結果を示す図である。
符号の説明
1…鉛直振動増幅量データベース
2…振動レベル予測シート
3…大梁(床梁)
4…小梁(床梁)
5…柱

Claims (4)

  1. 外部振動に起因する環境振動による建物の床上の鉛直方向の振動の応答値を予測する建物の鉛直振動予測方法であって、
    計画する建物と同一の躯体システムを有する建物における床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、環境振動量に対する床上の鉛直方向の振動の増幅量との関係を予め求めておき、
    計画する建物の床梁の鉛直方向のたわみ量を前記関係にあてはめることで環境振動量に対する床上の鉛直方向の振動の増幅量を求め、該増幅量に建物の基礎上または建物の近傍地盤上で測定された鉛直方向の環境振動量を加算することで床上の鉛直方向の振動の応答値を予測することを特徴とする建物の鉛直振動予測方法。
  2. 前記床梁の鉛直方向のたわみ量は、建物の架構情報と、前記床梁の構造性能情報と、床を構成する部材の重量情報と、その床にかかる積載荷重による重量情報とにより算出することを特徴とする請求項1に記載の建物の鉛直振動予測方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の建物の鉛直振動予測方法により予測された床上の鉛直方向の振動の応答値の大きさが、予め設定した鉛直方向の振動量基準値を超える場合には、架構性能に関わる床梁の本数、該床梁の配置、該床梁を支える柱位置、該床梁の断面性能のうちの少なくとも1つを変更して、前記振動量が前記予め設定した鉛直方向の振動量基準値内に納まるように設計変更することを特徴とする床構造の設計方法。
  4. 建設地における外部振動に起因する環境振動量と建物の床梁の鉛直方向のたわみ量により計画する建物の床上の鉛直方向の振動の応答値を予測する評価シートであって、
    建物の基礎上または建物の近傍地盤上で測定された鉛直方向の環境振動量と、床を支持する床梁の鉛直方向のたわみ量と、該たわみ量に対応する環境振動量に対する前記床上の鉛直方向の振動の増幅量の予測値との関係を一覧表にしたことを特徴とする建物の鉛直振動評価シート。
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