JP5153588B2 - 無線通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、無線伝搬路を介してデータの送受信を行う無線通信装置に関し、特に無線通信装置の符号化及び変調方法、並びに、復号方法に関する。
移動通信などの無線通信方式として、符号化方式及び、変調方式を適切に組み合わせて効率の良い、即ち、理論的な限界であるシャノン限界にいかに肉薄した通信を実現するかという課題への取り組みが、長年にわたり盛んになされてきた。このために、特性の良い符号化(誤り訂正符号化)方式が採用されてきており、1990年代中頃に登場したCDMA(符号分割多元接続)方式のIS-95標準では、拘束長9 (K=9)の畳み込み符号とビタビ復号を用いることで低SNR(信号対雑音電力比)における通信を実現し、システム容量を飛躍的に増大させたことは周知の通りである。更に、第三世代移動通信IMT-2000及び、その改良システムであるHSPA (High Speed Packet Access)、EV-DO等では、誤り訂正符号化方式としてターボ符号化及び繰り返し復号を採用している。更に、次世代システムではLDPC (Low Density Parity Check)符号などの採用も検討されている。一方、これらのIMT-2000の改良システムでは、高速データ通信を実現するために多値変調方式が採用されている。多値変調の方式としては、8PSK, 16QAM, 64QAMなどが規定されており、1シンボルで伝送できるビット数は、それぞれ、3, 4, 6ビットとなる。これら複数のビットを復調する際に、より多くの情報量を引き出すために、ビットの割り当て(マッピング)方法としてGrayマッピングが採用されている。Grayマッピングは、図21(a), 図21(b)に示すように、隣接する信号点間では1ビットのみが異なるようにビットの割り当て(マッピング)を行ったものであり、復調器(デマッパ)単体で取り出すことのできる情報量が最大となるという特徴があるため、広く採用されている。
一方、BICM-ID (Bit Interleaved Coded Modulation with Iterative Decodingという技術(非特許文献1)が提唱され、注目を浴びている。BICM-IDは、変調に対する復調処理と、符号化に対する復号処理とを繰り返して実行し、一方の処理結果を次回の他方の処理で参照するという、いわゆるターボ信号処理方式を、復調処理、復号処理を含めた形で実行するというものである。BICM-ID技術によれば、非特許文献2に示されるように、符号化方式、および、変調方式の各々の単体の特性を改善するのではなく、両者の特性の整合(マッチング)をとることで優れた特性が実現できること明らかとなってきた。非特許文献2では、符号化方式として拘束長3 (K=3)、符号化率1/2 (R=1/2)の畳み込み符号を用いた場合に、単体として優れた特性を発揮するGrayマッピングによる変調方式よりも図22に示すMSP (Modified Set Partitioning) と呼ばれるマッピング方式を採用することで、Grayマッピングを採用する場合よりもBICM-IDとしては格段に優れた特性を発揮することを明らかとしている。また、非特許文献3では、拘束長2 (K=2)、符号化率1/2 (R=1/2)の畳み込み符号を採用し、変調方式としては図24に示す拡張マッピング(extended mapping)と呼ぶ、本来マッピング可能なビット数よりも多くのビットを割り当てる特殊なマッピングを組み合わせたBICM-IDにより、優れた特性が得られることが明らかとされている。
なお、これら非特許文献2、非特許文献3に示されるBICM-ID方式が優れた特性を発揮できることは、非特許文献4で提唱されたEXIT (Extrinsic Information Transfer) 解析を用いてそれぞれの文献中で説明されている。
一方で、前述のLDPC符号など、単体としても優れた特性を持つ符号を用いたBICM-ID方式が非特許文献5等で示されている。
X. Li and J. A. Ritcey, "Bit-interleaved coded modulation with iterative decoding," IEEE Communications Letters, vol.1, pp. 169-171, 1997 F. Schreckenbach, N. Gortz, J. Hagenauer and G. Bauch, "Optimized Symbol Mappings for Bit-Interleaved Coded Modulation with Iterative Decoding," IEEE GLOBECOM 2003, pp.3316-3320, 2003. P. Henkel, "Extended Mappings for Bit-Interleaved Codec Modulation," IEEE PIMRC 2006 S. ten Brink, "Convergence Behavior of Iteratively Decoded Parallel Concatenated Codes," IEEE Transactions on Communications, Vol. 49, No. 10, pp.1727-1737, October 2001 S. ten Brink, G. Kramer, and A. Ashikhmin, "Design of Low-Density Parity-Check Codes for Modulation and Detection," IEEE Transactions on Communications, Vol.52, No.4, April 2004
非特許文献2、非特許文献3に示される畳み込み符号化は、拘束長が3もしくは2と短く、符号単体としては前記IS-95に採用された畳み込み符号よりも特性が悪いものである。また、非特許文献2で示される変調方式MSPは単体ではGrayマッピングよりも特性が劣る。更には、非特許文献3で採用されている拡張マッピング(Extended Mapping)に至っては、雑音が全く無い場合であっても、復調器(デマッパ)単体では各ビットを誤り無く復調することすら不可能な変調方式である。それにも関わらず、これらの方式が優れた特性を発揮するのは、それぞれの文献で示されているEXIT (Extrinsic Information Transfer)チャートからわかるように、復調器(デマッパ)、及び、復号器のEXITカーブがよく整合し、BICM-IDの繰り返し処理の結果、収束する点である復調器のEXITカーブと復号器のEXITカーブとの交差点における相互情報量がほぼ1であることから説明される。
一方、非特許文献2、非特許文献3に示されるEXITチャート(図23, 図25)からは、復調器のEXITカーブと復号器のEXITカーブとの間に、交差点以外の場所で少なからず開きがあることがわかる。復調器のEXITカーブと復号器のEXITカーブとの間の面積は、伝送レートの損失に対応することが知られており、この面積が0に近づくことが、即ち伝送レートが変調信号のコンスタレーション制約におけるシャノン限界に近づくことを意味する。この観点からは、非特許文献2、非特許文献3のBICM-ID方式よりも伝送レートの損失の小さなBICM-ID方式が望まれる。従って、本発明の第一の目的は、伝送レート損失が小さいBICM-ID方式を提供することにある。
また、非特許文献5に示されるBICM-ID方式は、LDPC符号の特性の良さを引き継いでおり、極めて伝送レートの損失が少ないことがEXITチャートを用いて示されている。しかしながら、LDPC符号等の強力な符号を用いるため、復号器の処理量が大きくなる欠点があった。従って、本発明の第二の目的は、復号器の処理量が小さいBICM-ID方式を提供することにある。
本発明では、上記目的を達成するために、送信側無線通信機では、最も単純な符号とされる繰り返し符号を基本とした符号により符号化を行い、符号化された各ビットの順番を入れ替えるインタリーブ処理を経て非Grayマッピング、または、拡張マッピング(Extended Mapping)による多値変調を施して送信する。また、受信側無線通信機では、上記、マッピングに対応した復調処理(デマッパ処理)を行い、復調結果をデインタリーブし、上記、繰り返し符号を基本とした符号の復号処理を行った結果を再度インタリーブし、前記、復調処理は、インタリーブされた復号処理結果を参照して実行することでBICM-ID方式を構成する。
また、情報ビットを符号化する機能と、符号化によって得られる符号語をインタリーブする機能と、インタリーブされたビット列を変調してシンボルに変換して送信する機能とを有する無線通信装置であって、符号化はその符号語を構成するビットが情報ビットを複製したものであり、変調器は、非Grayマッピングを行うことを特徴として信号送信を行う。
また、情報ビットを符号化する機能と、符号化によって得られる符号語をインタリーブする機能と、インタリーブされたビット列を変調してシンボルに変換して送信する機能とを有する無線通信装置であって、符号化はその符号語を構成するビットが情報ビットを複製したものであり、変調器は、非Grayマッピングを行うことを特徴として信号送信を行い、更に、符号語を構成するビットであって情報ビットを複製して得られたビットは、複数種類の複製数に従って複製されたものであることを特徴とする。
また、情報ビットを符号化する機能と、符号化によって得られる符号語をインタリーブする機能と、インタリーブされたビット列を変調してシンボルに変換して送信する機能とを有する無線通信装置であって、符号化はその符号語を構成するビットが情報ビットを複製したものであり、変調器は、非Grayマッピングを行うことを特徴として信号送信を行い、更に、符号語を構成するビットは、複数の情報ビットに対するパリティビットを複製して得られたビットを含むことを特徴とする。
また、情報ビットを符号化する機能と、符号化によって得られる符号語をインタリーブする機能と、インタリーブされたビット列を変調してシンボルに変換して送信する機能とを有する無線通信装置であって、符号化はその符号語を構成するビットが情報ビットを複製したものであり、変調器は、非Grayマッピングを行うことを特徴として信号送信を行い、更に、変調器は、複数の異なる方式の非Grayマッピングによる変調方式、または、Grayマッピングによる変調方式処理を、所定の割合で混在して実施することを特徴とする。
また、受信されたシンボルからシンボルにマッピングされた複数のビットに関する復調結果を出力するシンボルデマッパと、インタリーバと、デインタリーバと、復号器を有する無線通信装置であって、シンボルデマッパはインタリーバ、及び、デインタリーバに接続され、復号器はデインタリーバとインタリーバに接続された変数ノードデコーダを有し、デマッパは非Grayマッピングによる変調信号の復調を行うことを特徴として信号受信を行う。
また、受信されたシンボルからシンボルにマッピングされた複数のビットに関する復調結果を出力するシンボルデマッパと、インタリーバと、デインタリーバと、復号器を有する無線通信装置であって、シンボルデマッパはインタリーバ、及び、デインタリーバに接続され、復号器はデインタリーバとインタリーバに接続された変数ノードデコーダを有し、デマッパは非Grayマッピングによる変調信号の復調を行うことを特徴として信号受信を行い、更に、変数ノードデコーダの互いにその次数の異なるものが混在していることを特徴とする。
また、受信されたシンボルからシンボルにマッピングされた複数のビットに関する復調結果を出力するシンボルデマッパと、インタリーバと、デインタリーバと、復号器を有する無線通信装置であって、シンボルデマッパはインタリーバ、及び、デインタリーバに接続され、復号器はデインタリーバとインタリーバに接続された変数ノードデコーダを有し、デマッパは非Grayマッピングによる変調信号の復調を行うことを特徴として信号受信を行い、更に、復号器は変数ノードデコーダに接続されたチェックノードデコーダを有することを特徴とする。
また、受信されたシンボルからシンボルにマッピングされた複数のビットに関する復調結果を出力するシンボルデマッパと、インタリーバと、デインタリーバと、復号器を有する無線通信装置であって、シンボルデマッパはインタリーバ、及び、デインタリーバに接続され、復号器はデインタリーバとインタリーバに接続された変数ノードデコーダを有し、デマッパは非Grayマッピングによる変調信号の復調を行うことを特徴として信号受信を行い、更に、復調器は、複数の異なる方式の非Grayマッピングによる変調方式、または、Grayマッピングによる変調方式に対応する復調処理を、所定の割合で行うことを特徴とする。
本発明によれば、符号の構成を適切に選択することで、非特許文献2、非特許文献3よりもEXITカーブの整合(マッチング)を良くする事ができ、伝送速度の損失をより小さくすることができる。これにより、シャノン限界により近い伝送を実現できる。
また、本発明によれば、極めて単純な繰り返し符号を基本としているため、復号器の処理量を小さくすることができる。
本発明では、図1に示すように、送信側無線通信機1において、情報ビットを繰り返し符号ベースの符号化器10で符号化し、インタリーバ11で符号語内のビット順序の入れ替えを行い、変調器12で変調を行ってアンテナから送信する。一方、受信側無線通信機2では、アンテナで受信された信号をデマッパ13で復調し、デインタリーバ14でインタリーバ11の逆処理によりビット順序を元に戻し、繰り返し符号ベースの符号の復号器15で復号する。復号器15で復号された信号は、再度、インタリーバ16を介してデマッパ13に供給され、デマッパ13は、復号器から供給された情報を元にさらに精度の良い復調結果を出力する。このように、デマッパ13、デインタリーバ14、復号器15、インタリーバ16の処理を繰り返して行うことにより、BICM-IDを構成する。
図2に本発明の第一の実施例の送信側通信機の構成を示す。符号化器10は、単純な繰り返し処理のみを行うビット複製器20のみから構成され、入力された情報ビットは、dvビットに複製されてインタリーバ11、変調器12を介して送信される。図3(a)、図3(b)、図4に変調器12のマッピングの例を示す。図3(a)、図3(b)は5ビットを1シンボルにマッピングする変調器の例、図4は、6ビットを1シンボルにマッピングする変調器の例である。図3(a)、図3(b)、図4に示すように、変調器12に於ける変調処理は、前記Grayマッピングではなく、非Grayマッピングによる変調を行う。非Grayマッピングを使う理由は、受信側で繰り返し復号処理を行うためであり、前述のEXITチャート中の収束点において、事前情報がほぼ完全、即ち、復調対象のビット以外のビットが全て確定している状況において出力される情報量が大きくなるようにするためである。非Grayマッピングとしては、非特許文献2に記載される図3(a)に示す規則的なマッピングの他に、図3(b)、図4に示すようなマッピングを使用することができる。図3(b)、図4のマッピングは規則性が見出せないが、EXITカーブの右端で大きな情報量が得られるように探索した結果である。また、図3(b)のように、一つの信号点に複数のビットパタンを割り当てる拡張マッピングであってもかまわない。また、例えば、図3(a)、図3(b)、図4に示すマッピング以外でも非特許文献2に示されるMSEW (Maximum Squared Euclidean Weight)と呼ばれるマッピング等を用いても良い。
次に、第一の実施例における受信側無線通信機2における処理について図5を用いて説明する。デマッパ13は変調器12に対応した復調処理を行う。また、デインタリーバ14、インタリーバ16を介して復号器15(変数ノードデコーダ)に接続される。前述の通り、これらの処理を繰り返して行うことで復号処理が実施される。
受信された信号は、まず、図6(a)に示すように、受信信号、及び、事前(アプリオリ)情報を用いてQAM復調処理を行い、外部情報を出力する。この際、あるビットの外部情報を算出する場合には、同一シンボルの当該ビット以外のビット(m-1ビット)の事前情報と受信信号を用いて、外部情報を算出する。外部情報は、対数尤度比:LLR(Log Likelihood Ratio)の形式で出力するのが一般的である。LLRは、当該ビットが0である確率と1である確率の比の対数表現であり、次式(式1)で表すことがでる。なお、P(b=0)はbが0である確率、P(b=1)はbが1である確率を意味する。
・・・(式1)
同一シンボルの他のビットも同様に復調し、1受信シンボルからmビット分のLLRを算出して出力する。繰り返しの初回においては、復号器15からの事前情報は得られないので、事前情報のLLRを0とする。1受信シンボルにつきmビット分のLLRは、デインタリーバ14に供給される。デインタリーバで順序を入れ替えられた外部情報は、復号器15に事前情報として供給される。復号器15は、送信側符号化器10であるビット複製器20に対応した処理によりデコード処理を行う。図6(b)に示すように同一信号に対するdv個のLLRが事前情報としてデインタリーバ14より得られるので、デコード処理は次式(式2)に示す変数ノードデコーダ(Variable Node Decoder)処理となる。
・・・(式2)
本処理は、LDPC符号の復号方式として知られるSum-Productアルゴリズムの変数ノードデコーダ処理と同じである。この場合、外部情報の算出対象とするビット以外のビットについての外部情報のみを演算することになるので、dv-1ビット分の事前情報から1ビット分の外部情報を算出する式2の演算を、dv回実施することで、各複製ビットに対する外部情報を算出する。
変数ノードデコーダで算出された1情報ビットにつきdv個の外部情報は、インタリーバ16を介して、QAMデマッパ13に供給され、先に述べた図6(a)のデコード処理を実施する。
以上、図6(a)〜(b)の処理をインタリーバ、デインタリーバを介して繰り返し実施し、処理が収束するに足る回数の繰り返しの後、復号器15は図6(c)に示す処理にて各変数ノードの復号結果を算出する。復号結果は、事後確率のLLRによって得られるので、dvビット全ての事前情報を式2により演算し、1ビットの情報ビット出力を得る。
以上、第一の実施例によれば、極めて単純な繰り返し符号化とマッピングを組み合わせただけの極めて単純な構成でBICM-IDを構成することができる。前述の通り、BICM-IDにおいて重要なのは、EXITカーブの整合性である。第一の実施例で使用した符号である繰り返し符号のEXITカーブは、基本的に右上がり下凸の形状となる(図15(a)〜(c)、図17(a)〜(c)、図19(a)〜(c)の点線)。従って、BICM-IDに於いて繰り返し符号に対して整合の良い変調方式は、やはり右上がり下凸の形状となる。図3(a)、図3(b)、図4に示した各非GrayマッピングによるQAMマッパで構成された変調器12に対応する復調器13のEXITカーブは、図15(a)〜(c)、図17(a)〜(c)、図19(a)〜(c)実線に示すように右上がり下凸の形状を持ち、繰り返し符号化と組み合わせることで、レート損失の少ないBICM-IDを構成することができる。一般的には、1シンボル当たりに本来伝送できるビット数の2倍程度のビット数をマッピングした非Grayマッピング(拡張マッピングを含む)による変調方式を採用すると、右上がり下凸の形状とすることができ、繰り返し符号のEXITカーブとよく整合するので、本願発明の変調方式として望ましい。
次に、第二の実施例について説明する。第二の実施例では、符号化としてやはり繰り返し符号を用いるが、第一の実施例では全ての情報ビットがdv回の繰り返しとなっているのに対し、図7に示すように、繰り返し数の異なるビット複製器20-1〜20-nを所定の比率(a_1, a_2, ...., a_n)で用いる。繰り返し数の異なる繰り返し符号のEXITカーブは、それぞれ形状が異なり、繰り返し数が大きくなるほど、下凸の形状が顕著になる。従って、複数の繰り返し数を混在させることで、EXITカーブの形状に対する自由度が増し、変調方式に、よりよく整合するEXITカーブを実現することができる。第二の実施例における復号処理は、図8に示すようになる。第一の実施例の図5と殆ど同じであるが、ビットによって変数ノードの次数(dv1, dv2, ...)が異なる点のみが相違である。従って、前記、図6(b), 図6(c)に示した変数ノード処理の次数が情報ビットによって変更するだけで復号が可能となり、復号処理量は第一の実施例と同じと考えてよい。
次に、第三の実施例について説明する。第三の実施例では、符号化として繰り返し符号化に先立ちパリティビットを付加する。図9に示すように符号化器10は、繰り返し符号化を行うビット複製器20の前にdc-1ビットの情報ビットから1ビットのパリティを生成し、情報ビットとあわせてdcビットを出力するパリティ付加器が配置される。パリティ付加器は、ビットの直並列変換器(21, 23)と排他的論理和(ExOR)演算器22から構成される。第三の実施例における復号処理は、図10に示すようにパリティ演算に対応するチェックノードデコーダが変数ノードデコーダに接続することで実現される。復号手順としては、図6(b)に代わり、図11(a)〜(c)の処理を行う。図11(a)では、デインタリーバ14から供給された事前情報に式2の演算を施し、外部情報を算出する。算出された外部情報は、図11(b)に示すチェックノードデコーダに事前情報として入力し次式(式3)の演算を実施して各変数ノードにフィードバックする外部情報を算出する。
・・・(式3)
但し、
・・・(式4)
・・・(式5)
本チェックノード処理は、LDPC符号の復号方式として知られるSum-Productアルゴリズムのチェックノードデコーダ処理と同じである。
図11(b)のチェックノードデコーダから出力された外部情報は、図11(c)の変数ノードデコーダに事前情報としてフィードバックされ、これを用いて変数ノードはデマッパにフィードバックすべき外部情報を式2にて算出する。以上、第三の実施例は、第一の実施例に比較して、図11(a)および図11(b)の処理が追加されているため、復号処理は多少増加する。一方、パリティを付けたことにより、復号器のEXITカーブの右端をより1に近づける効果があり、復号処理が収束した際の残留誤りを減少させる効果がある。また、変数ノードデコーダとチェックノードデコーダとを組み合わせて復号を行う点で第三の実施例の符号化はLDPC符号と類似しているが、本実施例の復号処理(図11)は単体では繰り返し処理を必要としない点がLDPC符号と大きく異なっている。これにより、BICM-ID全体の復号処理において、二重の繰り返し処理を発生しないので、処理量の低減に大きく寄与する。なお、LDPC符号のエラーフロアが繰り返し処理で生じるLLRの相関によって発生するのに対し、本願発明の場合はEXITカーブが、情報量が1よりも僅かに小さな点で交差点することに起因する点でも異なっている。
以上、第二の実施例、第三の実施例を組み合わせることで、図12に示す第四の実施例の構成を得ることができる。第四の実施例は、前記、第二の実施例が持つ復号器EXITカーブの設計の自由度、および、第三の実施例が持つ残留誤りの低減の効果を併せ持つことができる。図12の構成は、一見複雑なようだが、実際の処理は図13に示すように、情報ビット列(A)にパリティを付加(B)し、所定の率でビットの複製を行い(図13(C)の例ではdv=3が60%, dv=5が40%)、(D)破線に示す順番でインタリーバ11に供給するのみで実現できる。対応する復号処理は、図14のようになり、復号処理量は第三の実施例の図10とほぼ同等である。
以上、第四の実施例を用いて得られる本発明の特性を図15(a)〜(c)、図17(a)〜(c)、図19(a)〜(c)に例示する。変調器(マッパ)12としては、それぞれ、図3(a)、図3(b)、図4に示したものを使用している。符号化器は、図12に示した構成で、パリティ付加率(dc)、繰り返し数(dv)は各図内に示している。SNR=0dBからSNR=10dBまでの広い範囲にわたり、符号構成、及び、マッピングを適切に選択することでデマッパのEXITカーブ(実線)と復号器のEXITカーブ(破線)を極めて良く整合させることができていることがわかる。これにより、非特許文献2、非特許文献3のEXITチャート(図23, 図25)は、デマッパのEXITカーブが直線的な右上がり特性、復号器のEXITカーブが右上がり逆S特性となっており、レート損失が発生しているのに対し、本発明によるレート損失は極めて小さい。また、以上の構成により達成される伝送レートを図16、図18、図20に示す。実線はシャノン限界として知られるチャネル容量、破線はチャネル容量の90%、黒丸が本願発明の図15、図17、図19によって得られる伝送レートである。図16のSNR=6dBの点以外は、SNR=0dB〜10dBにわたる全領域でほぼチャネル容量の90%を達成できており、本願発明によれば、極めて理論限界に近い伝送レートを達成できることがわかる。なお、図16のSNR=6dBの点のEXITチャートは図15(c)であり、レート損失は他の例に比べて遜色ないにも関わらず、レートが他よりも劣るのは、変調方式が図3(b)によるものであることが原因である。図3(b)は、QPSKを基本とした拡張マッピングであり、1シンボル当たり2ビットが限界となる。従って、高いSNRにおいても2[bits/symbol]を超えることはできない。即ち、変調方式として拡張マッピングを用いる場合も、ベースとなる変調多値数は本来伝送できるビット数を超えるものを選択することが望ましい。逆に言えば、SNRが過剰とならない領域では拡張マッピング(l=5)によるQPSK変調と32QAMがほぼ同等のレートを達成しており、本願発明のBICM-ID方式を、拡張マッピングを使用して構成する事でピーク対平均電力比(PAPR)を小さくすることができるという効果があり、無線デバイス等への要求条件の緩和が可能となる。
以上、第一の実施例から第四の実施例は、符号化器がそれぞれ異なってはいるが、変調器(マッパ)12に供給されるビットの全て、または、その大半が情報ビットを複製したものになっており、基本的には繰り返し符号としての特性を備えている。このことは、復号器のEXITカーブが右上がり下凸という形状となる要因であり、上記実施例に例示していない他の符号化方式でも、上記、変調器(マッパ)に供給されるビットの全て、または、その大半が情報ビットの複製となるものであれば、図3に示す構造の変調器(マッパ)に対応する復調器(デマッパ)のEXITカーブとよく整合するため、符号化方式として代替可能である。
次に、第五の実施例について説明する。前述の図15(a)〜(c)、図17(a)〜(c)、図19(a)〜(c)に示したEXITカーブを見ると、SNRが低くなるに従って、復調器(デマッパ)のEXITカーブが下方向に変移している。特に図19(a)において、グラフの左端、即ち、繰り返しの初期段階で復調器(デマッパ)が出力することの出来る情報量が非常に小さくなっていることがわかる。従って、更にSNRが低い場合、復調器(デマッパ)出力が殆ど0となってしまい、復調器(デマッパ)出力を入力とする復号器が出力する情報量も殆ど0となり、結果的に実用的な繰り返し処理回数内に処理が収束できない可能性がある。本、第五の実施例はこのような問題を解決する手段を提供する。
この問題は、本質的には復調器(デマッパ)のEXITカーブの左端における形状に起因する。従って、EXITカーブの整合性を、低いSNRで良くするためにはEXITカーブの左端を高める必要がある。EXITカーブの左端を高めることだけが目的であれば、Grayマッピングを用いればよい。つまり、Gray マッピングでは、シンボルを構成するビットからなるベクトルのハミング距離が最大になるように作られているので、受信信号サンプル値だけからでもビットへの変換が可能となる。つまり、復号器からの入力がなくても、変換後の各ビットは送信された符号化後の情報を多く含んでいる。しかし、このためにGrayマッピングに対する復調器(デマッパ)のEXITカーブは、図23にも示されるように、大きな傾きを持たない。そこで第五の実施例では、前記第一から第四の実施例で使用した非Grayマッピングによる変調方式と、Grayマッピングなどの他のマッピングによる変調方式を混在させて使用する。この場合、混ぜ合わせる比率を変えることで、復調器(デマッパ)のEXITカーブの形状を制御できる。前述の通り、前記第一から第四の実施例で使用した非GrayマッピングのEXITカーブが右上がり下凸の形状となる。一方、GrayマッピングのEXITカーブは図23にも示されるように、水平な直線状となる。従って、例えば、Grayマッピングの比率を高くすれば、EXITカーブの左端が上昇し、傾きは平たんに近づく。逆にGrayマッピングの比率を低くすれば、EXITカーブの左端が下がる。即ち、EXITカーブの左端が極端に低くならなず、全体の形状が右上がり下凸となるように変調方式の混在比率を設定すればよい。
このようにしてEXITカーブの形状を調整された変調方式に、前記第一から第四の実施例に記載した符号化を組み合わせて使用することにより、非常に低いSNRにおいても復調器(デマッパ)のEXITカーブと復号器のEXITカーブの整合性を良くすることができるようになる。この結果、深宇宙通信などのように非常に低いSNR下で行われる通信においても本発明を適用でき、レート損失の少ない通信が可能となる。また、SNRが低い場合でなくても、複数の変調方式を混在させて使用することで、復調器(デマッパ)のEXITカーブの形状を細かく調整することが可能となるので、復調器(デマッパ)のEXITカーブと復号器のEXITカーブの整合性を改善するための自由度が増加し、よりレート損失の小さなBICM-ID方式を提供できる。
なお、本実施例において混在させて使用する変調方式としては、一般的には、異なるEXITカーブをもつ複数の変調方式とすることが出来る。即ち、マッピング規則の異なる変調方式を混在させることや、変調多値数、即ち、信号点数の異なる変調方式を混在させることが可能である。特に、信号点配置が同一の拡張マッピングとGrayマッピングを組み合わせた場合、物理的信号点配置は全く同一なので、変調器、及び、復調器において、複数の変調方式に対して共通のハードウエアを使用することができ、好適である。
以上、各実施例では復調(デマッパ)処理、復号処理に焦点を当てて説明してきたが、無線周波数(RF)回路、タイミング同期、伝搬路の位相回転を補正する検波処理等、通常の無線通信に必要とされる処理が別途必要であることは言うまでも無い。また、上記実施例は無線通信装置として記載しているが、符号化および変調を行う他の通信装置、例えば有線モデム装置などに適用することも可能である。
理論限界に極めて近い伝送レートを達成しながら、符号化として極めて単純な繰り返し符号を基本とした符号を用い、復号処理量が少なくて済むため、無線通信装置をはじめとする各種通信機に広く活用可能である。
本発明の送信側無線通信機の構成、受信側無線通信機の構成、アンテナ、および、無線伝搬路の関係を示す図 本発明の第一の実施例の送信側無線通信機の構成を説明する図 本発明の変調器の第一のマッピングの例を示す図 本発明の変調器の第二のマッピングの例を示す図 本発明の第一の実施例の復号処理の構成を示す図 本発明の第一の実施例の復号処理手順を示す図 本発明の第二の実施例の送信側無線通信機の構成を説明する図 本発明の第二の実施例の復号処理の構成を示す図 本発明の第三の実施例の送信側無線通信機の構成を説明する図 本発明の第三の実施例の復号処理の構成を示す図 本発明の第三の実施例の復号器の処理手順を示す図 本発明の第四の実施例の送信側無線通信機の構成を説明する図 本発明の第四の実施例の符号化器の処理手順を説明する図 本発明の第四の実施例の復号処理の構成を示す図 本発明の第四の実施例のEXITチャートの第一の例を示す図 本発明の第四の実施例の伝送レートの第一の例を示す図 本発明の第四の実施例のEXITチャートの第二の例を示す図 本発明の第四の実施例の伝送レートの第二の例を示す図 本発明の第四の実施例のEXITチャートの第三の例を示す図 本発明の第四の実施例の伝送レートの第三の例を示す図 従来の技術のGrayマッピング方式を示す図 従来の技術の非Grayマッピング方式を示す図 従来の技術である非特許文献2によるBICM-ID方式のEXITチャートを示す図 従来の技術である非特許文献3の拡張マッピング方式を示す図 従来の技術である非特許文献3によるBICM-ID方式のEXITチャートを示す図
符号の説明
1・・・送信側無線通信機、 2・・・受信側無線通信機、 10・・・繰り返し符号ベースの符号化器、 11・・・インタリーバ、 12・・・変調器(マッパ)、 13・・・復調器(デマッパ)、 14・・・デインタリーバ、 15・・・ 復号器、 16・・・インタリーバ、 21・・・直列並列変換器、 22・・・排他的論理和演算器、 23・・・並列直列変換器、 24・・・デマルチプレクサ(De-MUX)、 25・・・マルチプレクサ(MUX)

Claims (6)

  1. 情報ビットを符号化する機能と、該符号化によって得られる符号語をインタリーブする機能と、インタリーブされたビット列を変調してシンボルに変換して送信する機能とを有する無線通信装置であって、前記符号化は前記情報ビットを複数種類の複製数に従って複製するものであり、前記変調器は、非Grayマッピングを行うことを特徴とした無線通信装置。
  2. 請求項1に記載の無線通信装置であって、前記符号語を構成するビットは、複数の情報ビットに対するパリティビットを複製して得られたビットを含むことを特徴とする無線通信装置。
  3. 情報ビットを符号化する機能と、該符号化によって得られる符号語をインタリーブする機能と、インタリーブされたビット列を変調してシンボルに変換して送信する機能とを有する無線通信装置であって、前記符号化は前記情報ビットを複数種類の複製数に従って複製するものであり、前記変調器は、非Grayマッピングによる変調方式、または、Grayマッピングによる変調方式を含む複数の異なる変調方式処理を、所定の割合で混在して実施することを特徴とする無線通信装置。
  4. 受信されたシンボルから該シンボルにマッピングされた複数のビットに関する復調結果を出力するシンボルデマッパと、インタリーバと、デインタリーバと、復号器とを有する無線通信装置であって、前記シンボルデマッパは、非Grayマッピングによる変調方式処理に対応する復調処理を行うものであり、前記復号器は、互いに次数の異なるものが混在する変数ノードデコーダを有し、前記デインタリーバは、前記シンボルデマッパからの出力をデインタリーブして前記復号器へ出力し、前記インタリーバは、前記復号器からの出力をインタリーブして前記シンボルデマッパへ出力することを特徴とする無線通信装置。
  5. 請求項4に記載の無線通信装置であって、前記復号器は前記変数ノードデコーダに接続されたチェックノードデコーダを有することを特徴とする無線通信装置。
  6. 受信されたシンボルから該シンボルにマッピングされた複数のビットに関する復調結果を出力するシンボルデマッパと、インタリーバと、デインタリーバと、復号器とを有する無線通信装置であって、前記シンボルデマッパは、非Grayマッピングによる変調方式、または、Grayマッピングによる変調方式を含む複数の異なる変調方式処理に対応する復調処理を行うものであり、前記復号器は、互いに次数の異なるものが混在する変数ノードデコーダを有し、前記デインタリーバは、前記シンボルデマッパからの出力をデインタリーブして前記復号器へ出力し、前記インタリーバは、前記復号器からの出力をインタリーブして前記シンボルデマッパへ出力することを特徴とする無線通信装置。
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