JP5150893B2 - 酸化還元物質の信号増幅検出方法及びその測定装置 - Google Patents
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Description
特に酸化還元物質との電子授受を信号増幅して高感度に検出できるので酸化還元物質の定性、定量分析及び酸化還元酵素反応の検出方法に適用するのが効果的である。
特許文献1(特開平10−332423号)には、ケミカルCCD(ケミカル電荷結合素子)のゲート部に溶液を接触させた際に生じる界面電位の変化を半導体内部に蓄積する電荷量に変換及び積算増幅することにより微量な界面電位変化を測定する技術を開示する。
しかし、特許文献1に記載の技術においてはゲート部は絶縁膜で形成されていて、絶縁膜上に集積するプロトン等の電荷分布による絶縁膜分極作用に基づくものであるため、酸化還元物質の電子授受を直接測定できるものではない。
よって、絶縁膜上に集積するプロトンの安定性が低く、測定電位が安定しにくい技術的課題があり、測定電位も原理的にpH応答であるために酸化還元による電子授受を直接的に測定できなかった。
前記ゲート部は半導体基板上に積層した薄膜の絶縁層と、当該絶縁層の上に積層した導電性薄膜からなる導電性層と、当該導電性層に測定対象となる溶液又はガスを接触させるための注入部とを有し、
前記注入部に参照電極を配設するとともに当該参照電極と前記半導体基板の間にゲート電圧の印加手段を有し、
前記導電性層は測定対象となる溶液中又はガス中の酸化還元物質と電子授受作用を有し、前記導電性層の電子授受による絶縁層の分極比率変化をソース電極とドレイン電極との間の出力変化として検出することを特徴とする。
導電性層に酸化還元酵素を固定化すると酸化還元酵素反応や酵素の定性、定量分析に使用しやすくなる。
また酸化還元酵素反応を、導電性層と酵素との間接電子移動(電子メディエータを介する)あるいは直接電子移動により観測できる。
図1に示す例は、シリコン半導体等のp型半導体基板にn型部21aのソース電極21とn型部22aのドレイン電極22とを設けたnpn型チャンネルになっている。
ソース電極21とドレイン電極22との間のゲート部10はp−Siの半導体基板上にSiO2膜等の約50nm絶縁第一層13とその上にSi3N4等の約70nm絶縁第二層12を形成し、さらにその上に金膜等の導電性層を形成してある。
金膜はスパックリング方法にて約50nmの薄膜層となっている。
この金膜は酸化還元物質との電子授受層となるのでその厚さは濃度等の測定範囲に影響を与え、40nm〜2μm程度の範囲がよい。
厚みが厚い方が電子授受量が多くなるが金膜の均一性を確保しやすい点では40nm〜200nm程度がよい。
また、ゲート部には図1に示すようにフッ素樹脂製等の立壁2を設けて測定溶液3を注入する注入部30を設け、注入部30にはAg/AgCl等の参照電極を配設してある。
これにより、酸化還元物質と導電層との電子授受を電荷信号として増幅検出できる。
図2は、検出部が1チャンネルの場合で図3は、検出部がCH1とCH2との2チャンネルとなっていて差分分析が出来るタイプとなっていて電極構造は同じである。
ゲート部で検出した電荷信号をpドープポリシリコン部24a、24b、24cの制御により積算検出できるようになっている。
なお、図2ではpドープポリシリコン部24bを制御してn型部23aに電荷を集積する。
また、各種の酸化還元物質添加による金ゲート型ケミカルCCDの出力電圧変化の濃度依存性を図5に示す。
さらに本発明に係る導電性層(金膜)をゲート部に用いたものと従来の絶縁膜(窒化膜)ゲートとの酸化還元物質添加による出力電圧差の比較を図6に示す。
(実験方法)
(金膜(Au膜))
(1)バッファーで洗浄し、0.1M HEPES−NaOH(pH=7.0) 300μlを添加、15分エイジングを行った。
90分間経時変化を測定した。
(2)各濃度(1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mM、100mM)のフェリシアン化カリウムを10分後に濃度の低い順に15μl添加した。
(3)同様の方法で、フェロシアン化カリウム、アスコルビン酸(VC)、過酸化水素の測定も行った。
(窒化膜(Si3N4))
(1)バッファー洗浄し、まず、HEPES−NaOH(pH=7.0)300μlを添加し、15分エイジングを行った。
20分間経時変化を測定した。
(2)100mMのフェリシアン化カリウムを10分後に15μl添加した。
(3)同様の方法で、フェロシアン化カリウム、アスコルビン酸、過酸化水素の測定も行った。
実験結果において、K3[Fe(CN)6]とH2O2の添加では、45μM〜7mMの濃度範囲で飽和曲線型の濃度依存性を示した。
これは、その電子吸引性によりAu薄膜中の電子を抜き取る為と考えられた。
また、電子供与性のK4[Fe(CN)6]やアスコルビン酸(VC)の添加では、5.5μM〜500μMの濃度範囲において出力減少が見られ、その後ほぼ飽和することが示された。
これは、金薄膜中に電子を送り込むためと考えられた。
また、金膜と窒化膜との酸化還元物質応答を比較すると、金膜と窒素化膜でアスコルビン酸は逆の応答を示した。
これは、金膜で酸化還元の応答を示し窒化膜でpH応答を示したために逆の性質示したと考えられた。
他の物質はpH応答がないために、窒化膜で応答を示さなかった。
これらのデータより、ケミカルCCDのゲート部を金薄膜でコートしたため為に酸化還元応答するようになったことが明らかに示された。
そのため、本発明に係るケミカルCCDがガスセンサとして応用可能かどうかを検討した。
例えば電子供与性の目安となるドナー数(DN)が電子受容性の目安であるアクセプター数(AN)に比べて大きな溶媒であるDMSO(ジメチルスルホキシド)の蒸気を金ゲート部に接触させたところ、大きな負の出力変化が観測された。一方AN>DNのメタノールの蒸気を接触させた場合には、正の出力変化が見られた。
これらの結果より電子授受能を持つガス成分の検出に有効であることが示された。
グルコース脱水素酵素(GDH)の酵素反応を図7に示し、濃度依存性を図8に示す。 また、本センサの基質特異性を検討した結果を図9に示す。
(実験方法)
(濃度依存性)
(1)バッファーで洗浄後し、HEPES−NaOH(pH=7.0)240μl、GDH 30μl(終濃度10μg/ml)、フェリシアン化カリウム30μl(終濃度10mM)を添加し、15分エイジングを行った。30分間経時変化を測定した。
(2)10分後に各濃度(0mM、1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mM、100mM)のグルコース30μlを添加した。
(基質特異性)
(1)濃度依存性と同様に溶液を調製し、30分間経時変化を測定した。10分後に各糖(グルコース、フルクトース、スクロース、ガラクトース、ラクトース)30μlを添加した。
(コントロール)
(1)各過程のネガティブコントロールを上記と同様の方法で、測定した。
実験結果より、GDHの酵素反応をリアルタイム観察できた。
また、約10μM〜10mMの濃度範囲でグルコース検出が可能であり、基質特異性も観察された。
また、グルコースやガラクトースには応答しないが、マンノースにはわずかに応答することが示された。
さらにセンサ出力のフルクトース濃度依存性を調べたところ、図11に示すような飽和曲線が得られ、1mM以下のフルクトースをセンシングできた。
以上の結果から、金膜と酵素との直接電子移動を信号増幅して測定でき、酵素センサとして応用可能であることが示された。
以下の図12には、ISFETのゲート表面に金コロイドを吸着により薄膜状に形成した後、緩衝溶液中に浸漬し、還元剤であるフェロシアン化カリウムを添加した際の応答を示す。
金コロイド層をつけていない通常のISFETでは、1mMになるようフェロシアンイオンを添加しても振動ノイズは見られるものの、出力の大きな変動はなかった。一方、金コロイド層を形成したISFETチップの方は、1mMのフェロシアンイオンの添加に伴い、3μV程度の出力低下を示した。
この結果より、ISFETのゲート表面に導電性膜を形成することにより、液中や気体中の酸化還元物質との電子授受をISFETの出力応答として検出できることが示された。
よって一般的に酸化還元物質検出用センサとなるほか、酸化還元性のガス検出器や生体酸化還元物質の検出、定量に用いられる。
さらには、実施例に示すように、酸化還元酵素と導電性ゲート部との直接電子移動あるいは電子メディエーターを介する間接電子移動を利用するバイオセンサやバイオエレクトロニクス素子に応用できる。
11 導電性層
12 絶縁第二層
13 絶縁第一層
21 ソース電極
22 ドレイン電極
30 注入部
Claims (5)
- 半導体基板上の一面の一方にソース電極部を形成し、他方にドレイン電極部を形成し、当該ソース電極部とドレイン電極部との間にゲート部を形成したnpn型又はpnp型のチャンネルを有し、
前記ゲート部は半導体基板上に積層した薄膜の絶縁層と、当該絶縁層の上に積層した導電性薄膜からなる導電性層と、当該導電性層に測定対象となる溶液又はガスを接触させるための注入部とを有し、
前記注入部に参照電極を配設するとともに当該参照電極と前記半導体基板の間にゲート電圧の印加手段を有し、
前記導電性層は測定対象となる溶液中又はガス中の酸化還元物質と電子授受作用を有し、前記導電性層の電子授受による絶縁層の分極比率変化をソース電極とドレイン電極との間の出力変化として検出することを特徴とする酸化還元物質測定装置。 - ゲート部は、導電性層に酸化還元酵素を固定化してあることを特徴とする請求項1記載の酸化還元物質測定装置。
- 請求項1記載の酸化還元物質測定装置を用いて、ゲート電圧の印加に対して前記注入部に注入した測定対象物質によるソース電極とドレイン電極との間の出力変化を測定することを特徴とする酸化還元物質の信号増幅検出法。
- 請求項1記載の酸化還元物質測定装置を用いて、測定溶液の注入部に電子メディエーター物質と酸化還元酵素を含む測定対象物質を注入し、ゲート電圧の印加に対して、前記注入部における酵素反応をソース電極とドレイン電極との間の出力変化として測定することを特徴とする酵素反応の信号増幅検出法。
- 請求項2記載の酸化還元物質測定装置を用いて、
前記注入部に注入した酵素基質を含む測定対象物質に参照電極を配設し、参照電極と半導体基板との間にゲート電圧を印加し、ソース電極とドレイン電極との間の信号増幅出力変化を測定することを特徴とする酵素基質の定性及び定量分析方法。
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