JP5142295B2 - ベシクル及びその製法 - Google Patents

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Description

この発明は、炭化水素鎖の分子端にヌクレオチドを有する脂質分子を水中に分散させて形成されるベシクルに関する。
ベシクルは、両親媒性の脂質分子が集合して形成される閉鎖小胞体であり、脂質膜で隔たれた内水相をもつ。この構造を利用して、ベシクルは細胞モデルとして利用されたり、内水相や脂質膜に様々な物質を内包させたりすることができるため、医薬品、化粧品、食品分野など種々の産業分野でその有用性が周知されている。
ベシクルの調製法としては、いくつかの方法が知られているが(非特許文献1など)、従来のベシクルの調製法は、化学的・物理的に激しい条件で行われるのが一般的であり、その工程も複雑である。有機溶媒、超音波照射、加熱や電圧の印加、又は酸・アルカリ物質の使用は、ベシクルに内包させる物質(例えば、生理活性物質など)によってはその性質を著しく変化・損傷させるおそれがある。また、ベシクルに残存した化学物質が安定性に影響を及ぼしたり、毒性を示したりすることが問題となることから、実用化が困難となっている。さらには、ベシクルが得られるまでの工程が多くなると時間がかかるうえ、エネルギーの損失が大きくコストがかかる。その他、薄膜作成やマイクロチャネルが必要な工程を含む場合、ベシクルの大量生産には大面積の装置が必要となり実用化が困難であった。
本発明者らは、既に開発した、二価又は三価の炭化水素鎖の分子端にヌクレオチドを有するヌクレオチド脂質(特許文献1)を、本発明に利用した。
特許第3660282号
野島庄七・砂本順三編、リポソーム、南工堂、1998年
本発明は、化学的又は物理的な前処理を必要とせず、簡易に且つ安定的にナノサイズのベシクルを形成させる方法及びこのようにして形成されたベシクルを提供することを目的とした。
本発明者らは、炭化水素鎖の分子端にヌクレオチドを有するヌクレオチド脂質(特許文献1)を水溶媒中に分散させると、ナノサイズのベシクルが形成されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記一般式
R−X
(式中、nは2又は3を表し、Xは、それぞれ同じであっても異なってもよく、シチジル酸、ウリジル酸又はチミジル酸のいずれかのヌクレオチドを表し、Rは炭化水素鎖(nが2の場合には二価であり、nが3の場合には三価である。)を表し、該ヌクレオチドのリン酸部分で該炭化水素と結合する。)で表されるヌクレオチド脂質から成る膜が球殻状に閉じた小胞であって、内部に水、水溶性の成分の水溶液又は水に分散性の成分の分散液を含むベシクルである。
また本発明は、下記一般式
R−X
(式中、nは2又は3を表し、Xは、それぞれ同じであっても異なってもよく、シチジル酸、ウリジル酸又はチミジル酸のいずれかのヌクレオチドを表し、Rは炭化水素鎖(nが2の場合には二価であり、nが3の場合には三価である。)を表し、該ヌクレオチドのリン酸部分で該炭化水素と結合する。)で表されるヌクレオチド脂質を水、水溶性の成分の水溶液又は水に分散性の成分の分散液に分散させることから成るベシクルの製法である。
本発明のベシクル分散液中のベシクル径の分布を示す図である。 ベシクル分散液の20℃における光学顕微鏡写真を示す図である。 図2と同じサンプルの偏光顕微鏡写真を示す図である。 ベシクル分散液中のカルセイン(色素)の蛍光強度を示す図である。Ftは、溶液中及びベシクル内に存在するカルセイン(色素)の蛍光強度を示し、Finは、この溶液にCoClを加えたときのカルセイン(色素)の蛍光強度を示し、Fqは、さらにこの溶液にHClを加えたときのカルセイン(色素)の蛍光強度を示す。 低濃度のベシクル分散液中のベシクル径の分布を示す図である。 一か月静置したベシクル分散液の光学顕微鏡像を示す図である。 長期保存後のベシクル分散液中のカルセイン(色素)の蛍光強度を示す図である。Ft'は、溶液中及びベシクル内に存在するカルセインの蛍光強度を示し、Fin'は、この溶液にCoClを加えたときのカルセインの蛍光強度を示し、Fq'は、さらにこの溶液にHClを加えたときのカルセインの蛍光強度を示す。
本発明のベシクルは、炭化水素鎖の両端にヌクレオチドを有するヌクレオチド脂質から成る膜が球殻状に閉じた小胞であって、内部に液体を含む。
本発明で用いるヌクレオチド脂質は下記一般式で表される。
R−X
この式中、nは2又は3、好ましくは2を表す。
Xはシチジル酸、ウリジル酸又はチミジル酸のいずれかのヌクレオチドを表す。
このヌクレオチドは、それぞれ同じであっても異なってもよいが、好ましくは同じである。このヌクレオチドは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド、好ましくはデオキシリボヌクレオチドであり、その2'、3'又は5'の位置、好ましくは3'又は5'の位置に1又は2以上のリン酸を含んでもよい。このヌクレオチド脂質の作製が容易であるという観点から、デオキシチミジンの3'位にモノリン酸が結合したものが好ましい。これらのヌクレオチドの構造は、下式(5'のみ例示する)で表わされる。
Xがアデニル酸やグラニル酸の場合には、シチジル酸、ウリジル酸又はチミジル酸に比べて核酸塩基間のスタッキング相互作用が強い。そのため、アデニン脂質・グアニン脂質を水中に分散させるとヌクレオチド脂質分子同士はスタッキング相互作用により上下に配列し、一次元的に伸びた構造を取りやすいため、繊維状構造体となり、ベシクルのように曲率を持つ球状構造体を形成しないと考えられる。
Rは炭化水素鎖を表し、nが2の場合にはこの炭化水素鎖は二価となり、nが3の場合には三価となる。この炭化水素に特に制限はなく、直鎖、分枝、環式のいずれであってもよい。また、結合手(n=2の場合には2個、n=3の場合には3個)はその炭化水素鎖の末端にあることが好ましい。
この炭化水素鎖の炭素数は12〜20が好ましく、18〜20がより好ましい。また、この炭化水素鎖としては末端に結合手を有するオリゴメチレン基、特に−(CH−(mは好ましくは12〜20、より好ましくは18〜20である。)が好ましい。
このヌクレオチドは、そのリン酸部分で該炭化水素鎖と結合する。
また、上記ヌクレオチドは必ずしも1種類である必要はなく、2種以上を用いてもよい。更に、炭化水素鎖も同様に2種以上を用いてもよい。
以下、本発明のベシクルは以下のようにして作製することができる。
ヌクレオチド脂質を水溶媒に分散させる。この水溶媒は水であってもよいが、水溶性の成分の水溶液、又は水に分散性の成分の分散液であってもよい。
水溶性成分としては、塩、金属塩、ミネラル、単糖類、水溶性ビタミン、アルコール、酸・塩基、アミノ酸、ペプチド、核酸塩基、食品機能性成分(カテキン、グルコシノレート)などが挙げられる。
水に分散性の成分としては、タンパク質、DNA、多糖類、脂質、農薬、色素、脂溶性ビタミン、香気成分などが挙げられる。
溶媒中のヌクレオチド脂質の濃度は好ましくは3×10−5M〜5×10−2M、より好ましくは6×10−5M〜3×10−2Mである。
溶液の温度は通常0℃〜70℃であるが、好ましくは15℃〜25℃である。0℃より低いと溶液が凍結してベシクルが形成されず、70℃より高くてもベシクルが形成されない。
ヌクレオチド脂質を水溶媒に分散させるためには、単にヌクレオチド脂質と水溶媒とを混合すればよいが、混合後攪拌してもよい。この攪拌は、水溶液を手で軽く振るだけでもよいが、振とう機で振動を与えたり、超音波照射を行ったりしてもよい。攪拌の効率を上げるために、上記温度範囲内で加温してもよい。その後、混合液を静置しておくことが好ましい。
その結果、水溶媒中に、本発明のヌクレオチド脂質から成る膜が球殻状に閉じた小胞であるベシクルが生成する。このベシクルの内部には、水溶媒が含まれるが、水溶媒が水溶性の成分や水に分散性の成分を含む場合には、このような成分はベシクルの内部に取り込まれることになる。
このようにして得られるベシクルは、通常平均粒径が約20〜100nmである。このベシクルは水溶液中で長期に安定したベシクル構造を保つことができる。
また、得られたベシクルを凍結乾燥することもできる。凍結乾燥した状態で保存し、必要に応じて、再度水を添加することにより再水和させてベシクルを再生することもできる。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
製造例1
ジクロロメタンに1,16−ヘキサデカンジカルボン酸2.2 g(7.0ミリモル)、塩化チオニル3.3 ml(28ミリモル)、N,N−ジメチルホルムアミド1滴を加え、還流下で2時間加熱した。反応後、減圧下で溶媒を完全に留去して得られた酸クロライドを、テトラヒドロフランに溶解した。次に、テトラヒドロフランに水素化リチウムアルミニウム0.5 g(13ミリモル)を加え、−50℃に保った。この溶液中に、先ほどの酸クロライド溶液をゆっくりと滴下した後、室温に戻し、還流下で3時間加熱した。その後24時間室温で撹拌し、酢酸エチル、続いて飽和硫酸ナトリウム水溶液を気泡が発生しなくなるまで加えた。次に反応溶液を減圧下で溶媒を留去し、得られた個体をクロロホルムに懸濁して濾過し、ろ液を減圧下で留去した。得られた個体をヘキサン/酢酸エチル=2/1の溶媒から再結晶し、白色の固体として1,18−オクタデカンジオール1.5gを得た(収率=73%)。
この1,18−オクタデカンジオール0.17 g(0.6ミリモル)と1H−テトラゾール0.2 g(3ミリモル)をテトラヒドロフランに溶解し、N4−ベンゾイル−5'−O−ジメトキシトリチル−2'−デオキシシチジン3'−O−[O−(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]1.0 g(1.2ミリモル)を加えた。室温で24時間かき混ぜた後、反応溶液中に70%t−ブチルヒドロペルオキシド水溶液1.6 mlを加え、30分撹拌した。その後、溶媒を減圧下で留去し、得られた固体を塩化メチレンに溶解してトリフルオロ酢酸2.5mlを加え、30分撹拌した。溶媒を減圧下で留去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製した。カラム溶出液を減圧下溶媒留去し、得られた固体をメタノールに溶解し、28%アンモニア水溶液8 mlを加えて48時間撹拌した。減圧下溶媒留去し、得られた固体をアセトン溶液から再沈澱させることにより、1,18−(オクタデカンジオキシ)ビス(3'−ホスファチジル−2'−デオキシシチジン)(以下「シトシン脂質」という。)0.1gを肌色粉末として得た(収率=21%)。このシトシン脂質の構造式を下式に示す。
生成したシトシン脂質の分析データを示す。
1H-NMR(重水中、25℃)δ(ppm) 1.1〜1.3, 1.5, 3.8, 2.2, 2.5, 3.7, 4.2, 4.7, 6.0, 6.2, 7.8
融点:143℃
薄層クロマトグラフィーのRf値=0.6(クロロホルム/メタノール/水=100/100/5)
製造例2
本製造例では、アデニン脂質1,18−(オクタデカンジオキシ)ビス(3'−ホスファチジル−2'−デオキシアデノシン)(下式)を製造した。
製造例1で得た1,18−オクタデカンジオール0.17 g(0.6ミリモル)と1H−テトラゾール0.2 g(3ミリモル)をテトラヒドロフランに溶解し、N4−ベンゾイル−5'−O−ジメトキシトリチル−2'−デオキシアデノシン3'−O−[O−(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]1.0 g(1.2ミリモル)を加えた。室温で24時間かき混ぜた後、反応溶液中に70%t−ブチルヒドロペルオキシド水溶液1.6 mlを加え、30分撹拌した。その後、溶媒を減圧下で留去し、得られた固体をメタノールに溶解し、28%アンモニア水溶液8 mlを加えて48時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:メタノール)で精製した。カラム溶出液を減圧下溶媒留去し、得られた固体を塩化メチレンに溶解してトリフルオロ酢酸2.5 mlを加え、30分撹拌した。減圧下溶媒留去し、得られた固体をアセトン溶液から再沈澱させることにより、1,18−(オクタデカンジオキシ)ビス(3'−ホスファチジル−2'−デオキシアデノシン)(アデニン脂質)0.2g(収率=39%)を黒色粉末として得た。
生成したアデニン脂質の分析データを示す。
1H-NMR(DMSO-d6中、100℃)δ(ppm)1.2〜1.4, 1.6, 2.3, 2.5, 3.5, 3.8, 4.4, 6.3, 8.1, 8.2
融点:225℃(分解)
薄層クロマトグラフィーのRf値=0.5(クロロホルム/メタノール/水=100/100/5)
質量分析値(ESI-QMS、[M-H]-、C38H61N10O12P2として)計算値:911.40、実測値:911.61
製造例3
本製造例では、グアニン脂質1,18−(オクタデカンジオキシ)ビス(3'−ホスファチジル−2'−デオキシグアノシン)を製造した。
製造例1で得た1,18−オクタデカンジオール0.11 g(0.4ミリモル)と1H−テトラゾール0.1 g(1.9ミリモル)をテトラヒドロフランに溶解し、N2−ジメチルホルムアミド−5'−O−ジメトキシトリチル−2'−デオキシグアノシン3'−O−[O−(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]0.6 g(0.8ミリモル)を加えた。28%アンモニア水溶液中での撹拌を、グアニン部位の脱保護のために、60℃に加熱し1時間行った以外は、製造例2のアデニン脂質と同様の操作を行った。1,18−(オクタデカンジオキシ)ビス(3'−ホスファチジル−2'−デオキシグアノシン)(グアニン脂質)0.2g(収率=46%)を黒色粉末として得た。
生成したグアニン脂質の分析データを示す。
1H-NMR(DMSO-d6中、100℃)δ(ppm)1.2〜1.4, 1.6, 2.3, 2.5, 3.5, 3.8, 4.0, 4.3, 5.9, 9.5
融点:230℃(分解)
薄層クロマトグラフィーのRf値=0.4(クロロホルム/メタノール/水=100/100/5)
質量分析値(ESI-QMS、[M-H]-、C38H61N10O14P2として)計算値:943.38、実測値:943.60
実施例1
製造例1で得たシトシン脂質5 mg(5.8μmol)をサンプル容器に計り取り、バッファー水溶液(アプライドバイオシステムズ社、Tris−HCl 1mM、EDTA 0.1mM、pH=8.0)0.2 mlを加え、ボルテックスミキシング(20℃、ボルテックスジーニー2、1000rpm、5秒)を行い、ベシクル分散液を得た(シトシン脂質濃度2.9×10−2M)。
12mm角ガラスセル90°用(Malvern社製、PCS8501)にバッファー水溶液(成分は上記と同じ)1 mlを注入し、上記で得たベシクル分散液0.1 mlを加えて、ゼータサイザーナノZS(Malvern社製)を用いて、動的光散乱法により、ベシクル径の分布を測定した。
測定されたベシクル径の体積割合での分布を図1に示す。図1において、ベシクル分散液中で直径約30nmのベシクルが大部分を占めることがわかる。図1から平均粒子径は28nmである。
上記で調製されたベシクル分散液0.5μlをスライドガラス上に取り、ベシクル分散液を挟むようにカバーガラスをかぶせて、光学顕微鏡(OLYMPUS社製、BX51)と偏光顕微鏡(OLYMPUS社製、BX51)を用いて観察した。この光学顕微鏡写真を図2に示し、偏光顕微鏡写真を図3に示す。図3の偏光顕微鏡写真は、図2の光学顕微鏡写真と同じサンプルの同じ場所を撮影したものである。
光学顕微鏡写真(図2)で多数の球状構造体が観察される。なお、光学顕微鏡観察では、生成したベシクルのうち可視光で観察できる大きさ(通常500nm以上)のもののみが観察されるため、動的光散乱による粒度分布測定結果とは一致しない。
一方、偏光顕微鏡写真(図3)で、円中に十字の像として現れるマルテーゼクロスのパターンが観察されたことから、図2中に観察される球状構造は脂質膜が積層しラメラ構造となっていることが示され、このことから、この球状構造体は、ベシクルと判断される。
実施例2
(1)カルセイン(蛍光色素、同仁化学研究所社製)0.1mMを含む10mM Tris−HClバッファー中に、シトシン脂質加え、ボルテックスミキシング(サイエンティフィックインダストリーズ社製 ボルテックスジーニー2、1000rpm、5秒、20℃)を行い、カルセイン含有ベシクル水溶液を得た(シトシン脂質濃度2.9×10−2M)。
(2)このカルセイン含有ベシクル水溶液40μlを、2mlの10mM Tris−HClバッファーに添加し、蛍光分光光度計(島津製作所製 RF−5300PC、励起波長490nm、蛍光波長520nm)を用いて20℃で蛍光強度を測定した。この時の蛍光強度をFtとする。
(3)次に、10mM CoCl水溶液を60μl添加し、同様に蛍光を測定した。Co2+はカルセイン(蛍光色素)を消光させる効果を持つため、CoClの添加により、溶液中に存在するカルセインのみを消光させ、ベシクル内部に封入されたカルセインのみが発光することになる。この時の蛍光強度をFinとする。
(4)さらに、10%HCl水溶液2μlを添加して、同様に蛍光を測定した。HCl水溶液の添加によりベシクルは破壊されるため、ベシクル内部に封入されていたカルセインが溶液中に漏出し、Co2+と結合して消光する。この時の蛍光強度をFqとする。
これらの蛍光強度を図4に示す。Ftは、溶液中及びベシクル内に存在するカルセイン(色素)の蛍光強度を示す。Finは、溶液にCoClを加えたときのカルセイン(色素)の蛍光強度を示す。溶液中のカルセイン(色素)はCoClにより消光されているが、ベシクル内のカルセイン(色素)は影響を受けず蛍光を示している。Fqは、さらに溶液にHClを加えたときのカルセイン(色素)の蛍光強度が0であることを示し、即ち、発光していない。HClによりベシクルが破壊され、ベシクル内のカルセイン(色素)もCoClにより消光されたためと考えられる。
このことは、溶液中の色素を内側に取り込んだベシクルが生成していることを示している。
また、下式から求めた保持効率(ベシクルに取り込まれた色素の割合)は6.45%であった。
保持効率%=(Fin−Fq×r)/(Ft−Fq×r)
r=1.35(体積変化による補正値)
実施例3
実施例1と同様に、ガラスセルにバッファー水溶液1mlを注入し、実施例1で得たベシクル分散液1μlを注入し、シトシン脂質濃度を2.9×10−5Mとしてベシクル径の分布を測定した。
測定されたベシクル径の体積割合での分布を図5に示す。図5から平均粒子径は28nmである。
濃度が低くなると、粒径分布が広くなっている。粒径60nmと4μmを分布の中心とするベシクルが形成されているが、粒径20nm以下の粒子については、その大きさから内水相をもたないミセルと考えられる。したがって、濃度が低くなるにつれて、粒径分布が広くなるとともにベシクルでない粒子(20nm未満のもの)が生成していることを示している。
実施例4
実施例1で得たベシクル分散液を20℃で1か月静置し、光学顕微鏡による観察を行った。この光学顕微鏡写真を図6に示す。図2(実施例1)と比べても、ベシクルが少なくとも一か月安定に構造を保っていることを示している。
なお、2週間経過後のベシクル分散液について、実施例2と同様にして蛍光強度を測定した。蛍光強度を図7に示す。ベシクル内の色素の蛍光が観測されていることから、長期保存後も本発明のベシクルがその内部に内容物を安定に保持していることを示している。
比較例1、2
製造例2,3で合成したアデニン脂質1,18−(オクタデカンジオキシ)ビス(3'−ホスファチジル−2'−デオキシアデノシン)、グアニン脂質1,18−(オクタデカンジオキシ)ビス(3'−ホスファチジル−2'−デオキシグアノシン)を用いてシトシン脂質と同様の操作で水分散液を調製したところ、沈殿を生じ、ベシクルの生成は認められなかった(結果は示さない。)。
この理由として、ヌクレオチド脂質分子の分子端のヌクレオチドが、アデニル酸又はグアニル酸の場合には、これらのヌクレオチドが会合して、ヌクレオチド脂質分子が直線状に繋がり、ベシクルを形成することができないためと考えられる。ちなみに、ヌクレオシドのスタッキングの会合定数は、グアノシン:2.9M−1、アデノシン:4.7〜7.5M−1、シチジン:0.87M−1、チミジン:0.61M−1、ウリジン:0.91M−1(核酸構造、W.ゼンガー著、シュプリンガーフェアラーク東京、1984年)であり、グアノシンとアデノシンの会合定数は他のヌクレオシドよりも高く、アデニル酸とグアニル酸の会合を示唆している。
比較例3
実施例1で得られたベシクル分散液0.5μlをスライドガラス上に取り、カバーガラスで覆ったのち、スライドガラスとカバーガラスの境界をマニキュアでシールした。これをホットプレート(メトラー・トレド社製、FP900サーモシステム)に置き、80℃で光学顕微鏡観察を行った。ベシクル様の球状構造は観察されなかった(結果は示さない。)。
本発明のヌクレオチド脂質は、水中に分散させるだけでナノサイズのベシクルを自発的に形成し、溶媒中に溶解又は分散させた物質をベシクル内に内包させることができる。本発明のベシクルを形成させるためには、有機溶媒や酸・アルカリ等の余分な化学物質、あるいは超音波照射や電圧の印加、真空乾燥などの物理的エネルギーを必要とする工程が不要である。そのため、低コストかつ低エネルギープロセスで特段の装置を必要とせずともベシクルを製造することができ産業上の実用性が高い。さらには、化学的・物理的損傷を受けやすい物質、例えばタンパク質や遺伝子、薬物、食品機能性成分などを内包させたベシクルを製造することが容易にできることから、人工酵素や遺伝子キャリア、MRI造影剤、農薬徐放剤、ドラッグデリバリー、化粧品、食品、など多くの産業分野への応用が期待できる。

Claims (8)

  1. 下記一般式
    R−X
    (式中、nは2又は3を表し、Xは、それぞれ同じであっても異なってもよく、シチジル酸、ウリジル酸又はチミジル酸のいずれかのヌクレオチドを表し、Rは炭化水素鎖(nが2の場合には二価であり、nが3の場合には三価である。)を表し、該ヌクレオチドのリン酸部分で該炭化水素と結合する。)で表されるヌクレオチド脂質から成る膜が球殻状に閉じた小胞であって、内部に水、水溶性の成分の水溶液又は水に分散性の成分の分散液を含むベシクル。
  2. 前記ヌクレオチド脂質が、下記一般式
    R−X
    (式中、Xは同じデオキシリボヌクレオチドを表し、Rは上記で定義したとおりである。)で表される請求項1のベシクル。
  3. 前記ヌクレオチドXがモノリン酸であり、前記Rの炭素数が12〜20である請求項1又は2に記載のベシクル。
  4. 平均直径が20〜100nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載のベシクル。
  5. 下記一般式
    R−X
    (式中、nは2又は3を表し、Xは、それぞれ同じであっても異なってもよく、シチジル酸、ウリジル酸又はチミジル酸のいずれかのヌクレオチドを表し、Rは炭化水素鎖(nが2の場合には二価であり、nが3の場合には三価である。)を表し、該ヌクレオチドのリン酸部分で該炭化水素と結合する。)で表されるヌクレオチド脂質を、0〜70℃で、水、水溶性の成分の水溶液又は水に分散性の成分の分散液に溶解又は分散させることから成るベシクルの製法。
  6. 前記分散させることが、混合し、攪拌し、及び静置することから成る請求項5に記載の製法。
  7. 前記ヌクレオチド脂質が、下記一般式
    R−X
    (式中、Xは同じデオキシリボヌクレオチドを表し、Rは上記で定義したとおりである。)で表される請求項5又は6に記載の製法。
  8. 前記ヌクレオチドXがモノリン酸であり、前記Rの炭素数が12〜20である請求項5〜7のいずれか一項に記載の製法。
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