JP5139505B2 - プラズマジェット点火プラグの点火装置 - Google Patents

プラズマジェット点火プラグの点火装置 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマを形成して混合気への点火を行う内燃機関用のプラズマジェット点火プラグの点火装置に関するものである。
従来、例えば自動車用の内燃機関であるエンジンの着火用のプラグには、火花放電(単に「放電」ともいう。)により混合気への着火を行うスパークプラグが使用されている。近年、内燃機関の高出力化や低燃費化が求められており、燃焼の広がりが速く、着火限界空燃比のより高い希薄混合気に対しても確実に着火できる着火性の高い点火プラグとして、プラズマジェット点火プラグが知られている。
このようなプラズマジェット点火プラグは、電源に接続されて使用される際に中心電極と接地電極との間の火花放電間隙が形成される。プラズマジェット点火プラグは、この火花放電間隙の周囲をセラミックス等の絶縁碍子で包囲して、キャビティと称する小さな容積の放電空間を形成した構造を有している。重畳式の電源を使用する場合のプラズマジェット点火プラグを一例に説明すると、混合気への点火の際には、まず、中心電極と接地電極との間に高電圧が印加され、火花放電(「トリガー放電」ともいう)が行われる。このときに生じた絶縁破壊によって、両者間には比較的低電圧で電流を流すことができるようになる。そこで更にエネルギーを供給することで放電状態を遷移させ、キャビティ内でプラズマが形成される。そして、形成されたプラズマが連通孔(いわゆるオリフィス)を通じて噴出されることによって、混合気への着火が行われるのである。プラズマの噴出の観点からはこの行程が1回に相当する。
このようなプラズマジェット点火プラグでは、プラズマを形成する際に、一般的なスパークプラグにおいて火花放電のために流される電流よりも大きな電流を火花放電間隙に流す必要がある。流す電流を大きくするためには電流の流れる回路上の電気抵抗値を低くする必要があり、点火装置の回路上や、プラズマジェット点火プラグの内部には、通常、抵抗器が設けられていない(例えば、特許文献1参照。)。
特開昭57−28869号公報
しかしながら、プラズマジェット点火プラグには短時間のうちに大きな電流が流されることとなるため、単位時間あたりの電流値の変動が激しく、大きな電雑ノイズを生じやすいという問題があった。こうした電雑ノイズの発生を抑制するためプラズマジェット点火プラグの内部や点火装置の回路上に安易に抵抗器を設けると、プラズマの形成に十分な大きさのエネルギーが得られなくなる虞があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、プラズマジェット点火プラグの点火時に、プラズマを形成するのに十分な大きさの電流を火花放電間隙に流しつつも、電雑ノイズの発生を抑制することができるプラズマジェット点火プラグの点火装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のプラズマジェット点火プラグの点火装置は、中心電極と接地電極との間に形成される火花放電間隙の少なくとも一部の周囲を包囲して放電空間を形成したキャビティを有し、そのキャビティに設けられた開口部から、前記火花放電間隙における火花放電に伴い前記キャビティ内で形成されるプラズマを噴出するプラズマジェット点火プラグに電圧を印加するためのプラズマジェット点火プラグの点火装置であって、前記火花放電間隙にて絶縁破壊による前記火花放電を発生させるための電圧を前記プラズマジェット点火プラグに印加する放電電圧印加手段と、当該放電電圧印加手段における電圧の印加によって生じた前記火花放電に併せてプラズマを形成するため、前記火花放電間隙にエネルギーを供給するエネルギー供給手段とを備え、前記プラズマジェット点火プラグと前記放電電圧印加手段との間に抵抗器を配設して両者間の電気抵抗値を1KΩ以上20KΩ以下とすると共に、前記プラズマジェット点火プラグと前記エネルギー供給手段との間の電気抵抗値を1Ω以下とするとともに、前記プラズマジェット点火プラグからの一回のプラズマの噴出において、前記火花放電間に流れる電流は、前記放電電圧印加手段から前記火花放電間隙に電圧が印加されて急激に大きくなり絶縁破壊を生ずる第一タイミングにおいて瞬時的にトリガー放電による第一の最大値を迎えた後、前記第一タイミングと略同時またはそれよりも遅延した第二タイミングを基点に前記エネルギー供給手段から前記火花放電間隙へのエネルギーの供給が開始され、徐々に大きくなりつつ、前記第二タイミングよりも遅い第三タイミングにプラズマ放電による第二の最大値を迎えるものであり、前記第二の最大値は前記第一の最大値よりも大きく、且つ、前記第二タイミングを基点とし、前記第三タイミングになるまでにかかる時間をt1[sec.]とし、第二の最大値をI[A]としたときに、t1≦75[μsec.] ・・・ (1)を満たし、且つ、I/t1≦2.5×10[A/sec.] ・・・ (2)を満たし、且つ、I≧5[A] ・・・ (3)を満たすことを特徴とする。
また、請求項2に係る発明のプラズマジェット点火プラグの点火装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記プラズマジェット点火プラグからの一回のプラズマの噴出において、前記第一タイミングを基点とし、前記第三タイミングになるまでにかかる時間をt2[sec.]としたときに、t2≦150[μsec.] ・・・ (4)を満たすことを特徴とする。
また、請求項3に係る発明のプラズマジェット点火プラグの点火装置は、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記プラズマジェット点火プラグからの一回のプラズマの噴出において、前記第二タイミングを基点とし、前記エネルギー供給手段からのエネルギーの供給が終了するまでにかかる時間をt3[sec.]としたときに、t1/t3≦3/5 ・・・ (5)を満たすことを特徴とする。
請求項1に係る発明のプラズマジェット点火プラグの点火装置では、点火の際に、まず、放電電圧印加手段から火花放電間隙に瞬時的に大きな電圧が印加されて、火花放電間隙において絶縁破壊を生ずる。絶縁破壊の際には急激に火花放電間隙に大きな電流が流れることとなるが、放電電圧印加手段と火花放電間隙との間に1KΩ以上20KΩ以下の電気抵抗値をもった抵抗器が配設されているため、絶縁破壊の際に電雑ノイズが発生することを抑制することができる。
そして絶縁破壊後には、プラズマ形成のためのエネルギーがエネルギー供給手段から供給され、火花放電間隙に電流が流されることとなる。プラズマ形成のためには火花放電間隙に大きな電流を流す必要があるが、エネルギー供給手段と火花放電間隙との間の電気抵抗値は、1Ω以下となっている。従って、エネルギー供給手段と火花放電間隙との間でプラズマ形成のためのエネルギーの損失が少なく、火花放電間隙に流される電流が抑制されにくいので、混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出することができる。
また、(1)の関係式で示すように、t1を75μsec.以下とし、プラズマ形成のために供給されるエネルギーに伴い火花放電間隙を流れる電流が、供給後、最大値Iとなるまでにかかる時間を規定している。形成されたプラズマはキャビティの開口部から火柱状(フレーム状)となって噴出されることとなるが、t1が75μsec.より大きくなると、ある単位時間あたりに火花放電間隙に供給されるエネルギーの量が少なくなる(換言すると、エネルギーの時間密度が小さくなる)ため、形成されたプラズマは十分なエネルギーを有することができず、その噴出長さが短くなって着火性が低下する虞がある。
もっとも、エネルギー供給手段から火花放電間隙にエネルギーを供給する際に流される電流の単位時間あたりの流量に変動が大きいほど電雑ノイズが発生しやすくなる。そこで火花放電間隙に流される電流の最大値Iと、電流が流され始めてから最大値Iとなるまでの時間t1との関係を示す(2)の関係式、すなわちI/t1が2.5×10以下となることを規定している。これにより、単位時間あたりの電流の流量の変動を抑えることができ、電雑ノイズの発生を抑制することができる。
一方、I/t1に制限を設けることによって、火花放電間隙に流される電流の最大値Iが減少すれば、着火に十分な大きさを持ったプラズマが形成されない虞がある。そこで、最大値Iの大きさが5A以上となるように(3)の関係式によって規定している。これにより、プラズマ形成に十分な大きさの電流を火花放電間隙に流すことができ、電雑ノイズの発生を抑制しつつも十分な大きさを持ったプラズマを形成し、噴出させることができる。
また、請求項2に係る発明では、(4)の関係式で示すように、t2を150μsec.以下とし、プラズマ形成のために供給されるエネルギーに伴い火花放電間隙を流れる電流が、絶縁破壊後に、最大値Iとなるまでにかかる時間を規定している。火花放電間隙における絶縁抵抗値は、絶縁破壊が生じた直後に最小値となり、次第に大きくなっていく。このため、絶縁破壊後、比較的早い時期にプラズマ形成のためのエネルギーが供給され、最大値Iとなれば、エネルギーの損失がより少なくて済み、混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出させることができる。t2が150μsec.より大きくなると、着火に十分な大きさを持ったプラズマが形成されなくなる虞がある。
また、請求項3に係る発明では、(5)の関係式で示すように、プラズマ形成のために供給するエネルギーの供給時間に相当するt3と、供給開始後に電流値が最大値Iとなるまでの時間t1との関係、すなわちt1/t3が、3/5以下となることを規定している。t1/t3が1に近づくほど、単位時間あたりの電流値の変動が少なくなり電雑ノイズの発生を低減できるが、単位時間あたりに供給されるエネルギーの量が少なくなる。従って形成されるプラズマは十分なエネルギーを有することができず、着火に十分な大きさを持ったプラズマが形成されなくなる虞がある。混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出させるには、短時間でより多くのエネルギーを火花放電間隙に供給する必要があり、そのためにはt1/t3を3/5以下とするとよい。
プラズマジェット点火プラグ100の部分断面図である。 点火装置200の電気的な回路構成を概略的に示す図である。 火花放電の際に火花放電間隙を流れる電流DIと放電電圧DVを図2のA点の位置で測定したグラフである。 火花放電の際に火花放電間隙を流れる電流DIと放電電圧DVを図2のA点の位置で測定したグラフである。 電雑ノイズのレベルによる良否判定を行うにあたって、プラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流の最大値Iと、最大値Iとなるまでにかかる時間t1との関係を示すグラフである。 プラズマの噴出状態による良否判定を行うにあたって、プラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流の最大値Iと、最大値Iとなるまでにかかる時間t1との関係を示すグラフである。 プラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t1と、着火確率との関係を示すグラフである。 トリガー放電によって火花放電間隙に絶縁破壊が生じてから、プラズマ放電によって火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t2と、着火確率との関係を示すグラフである。 プラズマ放電を開始してから、エネルギーの供給が終了するまでにかかる時間t3に対する、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t1の割合t1/t3と、着火確率との関係を示すグラフである。
以下、本発明を具体化したプラズマジェット点火プラグの点火装置の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明に係る点火装置200によって点火を制御されるプラズマジェット点火プラグ100の構造について説明する。図1は、プラズマジェット点火プラグ100の部分断面図である。なお、図1において、プラズマジェット点火プラグ100の軸線O方向を図面における上下方向とし、下側をプラズマジェット点火プラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。
図1に示す、プラズマジェット点火プラグ100は、周知のようにアルミナ等を焼成してなる絶縁部材であり、軸線O方向へ延びる軸孔12が形成された筒状の絶縁碍子10を有する。絶縁碍子10は、軸線O方向の略中央に、外径の最も大きな中胴部19を有する。この中胴部19の後端側には、中胴部19よりも縮径された外径を持つ後端側胴部18が、軸線O方向後端側(図1における上側)へ向け延びるように形成されている。また、中胴部19より先端側(図1における下側)には後端側胴部18よりも外径の小さな先端側胴部17が形成されている。さらにその先端側胴部17よりも先端側に、先端側胴部17よりも外径の小さな脚長部13が形成されている。そして絶縁碍子10の軸孔12のうち脚長部13の内周にあたる部分は、軸孔12のうちの他の部分よりも縮径され、電極収容部15として形成されている。この電極収容部15の内周は絶縁碍子10の先端面16に連続し、後述するキャビティ60の開口部14を形成している。
電極収容部15の内部には、銅または銅合金を芯材に用い、Ni合金を外皮とする棒状の中心電極20が保持されている。その中心電極20の先端には、貴金属やWを主成分とする合金からなる円盤状の電極チップ25が、中心電極20と一体となるように接合されている。なお、本実施の形態では、中心電極20と一体になった電極チップ25も含め「中心電極」と称する。この中心電極20の先端面(より具体的には中心電極20と一体に接合された電極チップ25の先端面)と、軸孔12の電極収容部15の内周面とに囲まれて、容積の小さな放電空間が形成されており、本実施の形態では、この放電空間をキャビティ60と称する。また、中心電極20は軸孔12内を後端側へ向けて延びており、金属とガラスの混合物からなる導電性のシール体4を経由して、軸孔12の後端側に設けられた端子金具40と電気的に接続されている。この端子金具40にはプラグキャップ(図示外)を介して高圧ケーブル(図示外)が接続され、後述する点火装置200(図2参照)から高電圧が印加されるようになっている。
また、絶縁碍子10は、鉄系の材料を用いて円筒状に形成された主体金具50に、後端側胴部18の一部から脚長部13にかけての部位の周囲を取り囲まれて、加締めにより保持されている。主体金具50は、図示外の内燃機関のエンジンヘッドにプラズマジェット点火プラグ100を固定するための金具であり、エンジンヘッドの取付孔(図示外)に螺合するねじ山が形成された取付ねじ部52を有する。そして取付ねじ部52の基端側には、プラズマジェット点火プラグ100をエンジンヘッドの取付孔に取り付けた際に、取付孔を介したエンジン内の気密漏れを防止するため、環状のガスケット5が嵌挿されている。
次に、主体金具50の先端には、インコネル(商標名)600または601等の耐火花消耗性に優れたNi系合金を用い、円盤状に形成された接地電極30が設けられている。接地電極30は、厚み方向を軸線O方向に揃え、絶縁碍子10の先端面16に当接した状態で、主体金具50と一体に接合されている。接地電極30の中央には連通孔31が穿設され、キャビティ60の開口部14に連なって同軸に配置されており、この連通孔31を介し、キャビティ60の内部と外気とが連通されている。接地電極30と中心電極20との間は火花放電間隙として形成されており、キャビティ60は、少なくともその一部の周囲を包囲する形態をなす。この火花放電間隙にて行われる火花放電の際にエネルギーが供給されて、キャビティ60内でプラズマが形成され、連通孔31を介し、開口部14から噴出される。
このような構造を有するプラズマジェット点火プラグ100は、図2に示す点火装置200に接続されてエネルギーを供給されることにより、キャビティ60内でプラズマを形成し、開口部14から噴出して混合気への点火を行う。以下、図2を参照し、プラズマジェット点火プラグ100の点火装置200について説明する。図2は、点火装置200の電気的な回路構成を概略的に示す図である。
図2に示す、点火装置200は、プラズマジェット点火プラグ100の中心電極20と接地電極30との間で火花放電を行わせ、さらにエネルギーを供給して発生させたプラズマを噴出させて、混合気への点火を行わせるための装置である。点火装置200は、火花放電回路部110、プラズマ放電回路部130、制御回路部120および電雑ノイズ低減用の抵抗R1を有する。
火花放電回路部110は、火花放電間隙に高電圧を印加することで絶縁破壊させて火花放電を生じさせる、いわゆるトリガー放電を行うための電源回路部である。火花放電回路部110は、駆動制御のためのスイッチ111,112と、逆流防止用のダイオード113,115,117と、火花放電用のエネルギーとしての電荷を蓄えるコンデンサ114と、高電圧発生用の点火コイル116とを有する。自動車のバッテリ190の高圧側に、ダイオード113のアノードがスイッチ111を介して接続され、カソードは、スイッチ112を介して接地されると共に、トリガー放電用の電力を蓄えるコンデンサ114の一端に接続されている。また、コンデンサ114の他端は、ダイオード115のアノードと点火コイル116の一次側の一端に接続されており、ダイオード115のカソードと点火コイル116の一次側の他端は共に接地されている。そして点火コイル116の二次側は、一端が接地され、他端がダイオード117のアノードに接続されている。ダイオード117のカソードは、電気抵抗値が1KΩ以上20KΩ以下に設定された抵抗R1を介し、プラズマジェット点火プラグ100の中心電極20に接続されている。なお、プラズマジェット点火プラグ100の接地電極30は、主体金具50(図1参照)を介し、接地されている。なお、火花放電回路部110が、本発明における「放電電圧印加手段」に相当し、抵抗R1が、本発明における「抵抗器」に相当する。
次に、プラズマ放電回路部130は、火花放電回路部110によって行われるトリガー放電の際に、絶縁破壊が生じた火花放電間隙に高エネルギーを供給し放電状態を遷移させてプラズマを形成させる、いわゆるプラズマ放電を行うための電源回路部である。プラズマ放電回路部130は、逆流防止用のダイオード131,134と、プラズマ放電用のエネルギーとしての電荷を蓄えるコンデンサ132と、火花放電間隙に流す電流を調整するためのインダクタ133とを有する。ダイオード131のアノードは、火花放電回路部110のダイオード113のカソードに接続されており、カソードは、コンデンサ132を介して接地されると共に、インダクタ133の一端にも接続されている。また、インダクタ133の他端はダイオード134のアノードに接続され、ダイオード134のカソードは、プラズマジェット点火プラグ100の中心電極20に接続されている。なお、ダイオード134と中心電極20とを接続する配線B−A間の内部抵抗R2は、電気抵抗値が1Ω以下となるように設定されている。また、上記のコンデンサ132は、プラズマ形成時のエネルギー、すなわち火花放電間隙へのトリガー放電の際にコンデンサ114から供給されるエネルギー量と、コンデンサ132からのエネルギー量と和が、1回のプラズマ噴出を行うために供給される量(例えば150mJ)となるように、その静電容量が設定されている。なお、プラズマ放電回路部130が、本発明における「エネルギー供給手段」に相当する。
そして、火花放電回路部110およびプラズマ放電回路部130の駆動・非駆動は、制御回路部120により制御されている。制御回路部120は、自動車の電子制御装置(ECU)150に接続されており、ECU150からの点火指示(点火時期を示す制御信号の受信)に基づき、スイッチ111およびスイッチ112のオン・オフを制御する。これにより、コンデンサ114やコンデンサ132の充放電を制御してプラズマジェット点火プラグ100へ電力の供給を行い、火柱状(フレーム状)のプラズマを噴出させることで、混合気への点火を行う。
次に、混合気への点火を行う際の点火装置200の動作について、図2および図3を参照して説明する。図3は、火花放電の際に火花放電間隙を流れる電流DIと放電電圧DVを図2のA点の位置で測定したグラフである。
内燃機関の稼働に伴い本実施の形態のプラズマジェット点火プラグ100による混合気への点火が行われる際には、図2に示すように、ECU150から点火装置200の制御回路部120に、点火時期を示す情報が送信される。点火時期(図3のTaタイミング)より前の時期には、スイッチ111がオンに制御され、火花放電回路部110のコンデンサ114と、プラズマ放電回路部130のコンデンサ132とが充電される。
そして、Taタイミング(図3参照)に点火時期の情報に基づいて制御回路部120によりスイッチ112がオンに制御されると、コンデンサ114に蓄えられた電荷が放出されて点火コイル116の一次側に電流が流れ、二次側に誘導起電力が生ずる。この誘導起電力の発生によって、接地電極30と中心電極20との間の火花放電間隙に高電圧が印加され、A点においてグランドとの電位差が急激に大きくなって、Tbタイミング(図3参照)に絶縁破壊を生じ、火花放電(トリガー放電)が行われる。このとき、トリガー放電によってA点を流れる電流が急激に増えるが、電流の流れる経路上に抵抗R1を配置したことにより、電雑ノイズの発生が低減される。なお、この火花放電の際に、スイッチ111はオフに制御され、また、トリガー放電がなされれば、スイッチ112もオフに制御される。
トリガー放電によって火花放電間隙の絶縁が破壊されると、トリガー放電時よりも低い電位差(放電電圧)で火花放電間隙に電流を流すことができるようになる。Tbタイミングと略同時のTcタイミング(図3参照)にコンデンサ132に蓄えられたエネルギーが放出され始め、火花放電間隙に供給される。インダクタ133によりA点を流れる電流の流量の急激な変動が抑制されるため電流値は次第に上昇していき、Tdタイミングに最大値I[A]となる(図3参照)。また、火花放電間隙における電流の流量の急激な変動が抑制されるため、電雑ノイズの発生が抑制される。
そして、エネルギーの供給に伴い、キャビティ60内において放電状態が遷移し、高エネルギーのプラズマが形成される。プラズマはキャビティ60内で膨張しつつキャビティ60の形状に誘導されて、開口部14から接地電極30の連通孔31を介し、燃焼室内に向けて軸線O方向に伸びるフレーム状となって噴出される。このフレーム状のプラズマによって燃焼室内の混合気が着火し、着火により形成された火炎核が成長して燃焼室内に広がって、混合気の燃焼が行われる。
一方、コンデンサ132に蓄えられたエネルギーの放出に伴い、Tdタイミングに最大値Iの電流が流れた後は次第に減少し、Teタイミングに電流の流量が少なくなってエネルギーの供給が終了すると火花放電間隙が絶縁される(図3参照)。以後、スイッチ111が再度オンに制御され、次回の点火のため、コンデンサ114およびコンデンサ132が、再び充電される。
このように、プラズマジェット点火プラグ100の火花放電時に生じ得る電雑ノイズは、点火装置200に設けられた抵抗R1によって抑制される。ここで、一般的なスパークプラグには、電雑ノイズ低減用の抵抗が内蔵(通常、中心電極と端子金具との間に設けられる。)される場合がある。しかし、図1に示すように、プラズマジェット点火プラグ100は、プラズマ放電時のエネルギーの損失を低減できるように、電雑ノイズ低減用の抵抗を内蔵していない。そこで本実施の形態では、図2に示す、火花放電回路部110とプラズマジェット点火プラグ100との間に電気抵抗値が1KΩ以上20KΩ以下の抵抗R1を設けている。さらに、プラズマ放電回路部130とプラズマジェット点火プラグ100とを接続する配線B−A間の内部抵抗R2の電気抵抗値が、1Ω以下となるように設定している。これにより、トリガー放電時には、火花放電間隙を流れる電流の流量が急激に変動することに伴う電雑ノイズの発生を抑制することができる。一方、プラズマ放電時には、火花放電間隙に供給するエネルギーの損失を抑え、混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出することができる。後述する実施例1によれば、抵抗R1と内部抵抗R2とをこのように規定することで、電雑ノイズの発生を抑制しつつ、プラズマを形成するのに十分な大きさの電流を火花放電間隙に流すことができることがわかった。なお、抵抗R1の電気抵抗値が20KΩより大きい場合、トリガー放電時に火花放電間隙に十分な電位差を生ずることが難しく、火花放電を行えなくなる虞がある。
もっとも、プラズマ放電時には、火花放電間隙における絶縁破壊は行われた後であるため、電雑ノイズの発生しやすい瞬間的な大電流の供給は行わなくともよいが、放電状態を遷移させるため、火花放電間隙に大きな電流を流す必要がある。そこで本実施の形態では、電流の流量の急激な変動を抑制できる電子部品の一例として、プラズマ放電時に火花放電間隙にエネルギーを供給する経路上に、インダクタ133を設けている。さらに、プラズマ放電時に火花放電間隙へのエネルギーの供給状態に規定を設けている。
具体的に、図3に示すように、Tcタイミングに開始されるプラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流DIの最大値I[A]と、最大値IとなるTdタイミングまでにかかる時間t1[sec.]との関係で、単位時間あたりの電流の流量の変動を示す、I/t1[A/sec.]の値が、
I/t1≦2.5×10[A/sec.]・・・(2)
を満たすことを規定している。後述する実施例2によれば、単位時間あたりの電流値の変動を2.5×10[A/sec.]以下に抑えることで、電雑ノイズの発生を十分に抑制することができる。
一方、(2)式を満たすには火花放電間隙を流れる電流DIの最大値Iが小さければ容易ではあるが、混合気への着火を確実に行えるようにするため、
I≧5[A]・・・(3)
を満たすことを規定して、噴出されるプラズマの大きさが小さくならないようにしている。後述する実施例2によれば、プラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流の最大値Iが5A以上となれば、混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出させることができる。
また、本実施の形態では、Tcタイミングにプラズマ放電を開始してから、火花放電間隙を流れる電流が最大値IとなるTdタイミングまでにかかる時間t1について、
t1≦75[μsec.]・・・(1)
を満たすことを規定している。上記のように、電雑ノイズの発生を抑制するには単位時間あたりの電流値の変動が少ないほどよいが、混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出させるには、短時間で多くのエネルギーを火花放電間隙に供給する必要がある。このためにはプラズマ放電を開始してから、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iに達するまでの時間が早い方がよく、後述する実施例3によれば、t1が75μsec.以下であるとよいことがわかった。
ところで、プラズマ放電の制御形態によっては、火花放電間隙へのエネルギーの供給がトリガー放電に遅れて開始される場合がある。具体的に、図4に示すように、火花放電間隙においてトリガー放電により絶縁破壊が生ずるTbタイミングと、プラズマ放電のための電流が流され始めるTcタイミングとの間に遅延を生じさせる制御がなされる場合がある。こうした場合、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iに達するまでに時間がかかると、火花放電時の絶縁破壊によって低下した絶縁抵抗値が上昇し、供給されるエネルギーの損失が大きくなる。そこで本実施の形態では、Tbタイミングに生じた火花放電間隙の絶縁破壊を基点とし、プラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流DIの最大値IとなるTdタイミングまでにかかる時間t2[sec.]が、
t2≦150[μsec.]・・・(4)
を満たすことを規定している。後述する実施例4によれば、t2が150μsec.以下であれば、プラズマ形成のためのエネルギーが比較的早い時期に供給されるので、エネルギーの損失を抑制し、混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出させることができる。
さらに、Tcタイミングにプラズマ放電を開始してから、エネルギーの供給が終了するTeタイミングまでにかかる時間t3[sec.]に対する、火花放電間隙を流れる電流が最大値IとなるTdタイミングまでにかかる時間t1[sec.]の割合t1/t3が、
t1/t3≦3/5・・・(5)
を満たすことを規定している。t1/t3が1に近づくほど、単位時間あたりの電流値の変動が少なくなり電雑ノイズの発生を低減できるが、混合気への着火に十分な大きさを持ったフレーム状のプラズマを噴出させるには、短時間で多くのエネルギーを火花放電間隙に供給する必要がある。コンデンサ132に蓄えられたエネルギーを短時間でより多く放出するには、後述する実施例5によれば、t1/t3が3/5以下であるとよいことがわかった。
このように、プラズマを形成するのに十分な大きさの電流を火花放電間隙に流しつつも、電雑ノイズの発生を抑制できるようにするために、点火装置200における火花放電時に火花放電間隙へのエネルギーの供給状態に規定を設けた効果を得られたか確認するため、以下に示す各種の評価試験を行った。
[実施例1]
まず、火花放電回路部110とプラズマジェット点火プラグ100との間に1KΩ以上20KΩ以下の抵抗R1を設け、さらに、プラズマ放電回路部130とプラズマジェット点火プラグ100とを接続する配線B−A間の内部抵抗R2を1Ω以下となるように設定したことによる効果を確認するため、評価試験を行った。本評価試験では、Ir−5Ptを材料に、厚みを1.0mm、連通孔の内径をφ1.0mmに形成した接地電極を用意した。この接地電極を組み付け、キャビティの内径をφ0.8mm、キャビティの深さ(軸線O方向の長さ)を1.5mmに形成した試験用のプラズマジェット点火プラグを完成させ、試験用の点火装置に接続した。そして、電気抵抗値を0〜30KΩの範囲で異ならせた複数の抵抗を用意し、抵抗R1として点火装置に組み付けた。また、電気抵抗値を0〜1.5Ωの範囲で異ならせた複数の抵抗を別途用意し、配線B−A間に組み付けて、配線B−Aの内部抵抗R2を模擬した。なお、抵抗R1や内部抵抗R2の電気抵抗値が0Ωである場合の評価試験は、実際には抵抗R1や内部抵抗R2を組み付けずに短絡させて行ったものである。
このように用意した試験用の点火装置を用い、抵抗R1と内部抵抗R2とを適宜組み合わせて、上記試験用のプラズマジェット点火プラグに大気圧で火花放電を行わせる机上点火試験を行った。なお、点火装置が1回のプラズマ噴出を行うために供給するエネルギー量(トリガー放電用のコンデンサから供給されるエネルギー量と、プラズマ放電用のコンデンサから供給されるエネルギー量と和)は150mJとした。そして、国際無線障害特別委員会(CISPR)によって定められた諸規格のうち、CISPR12として定められた「車両、モータボート及び火花点火エンジン駆動の装置からの妨害波の許容値及び測定法」に記載された測定法に従い、プラズマジェット点火プラグの発生する妨害波(電雑ノイズ)のレベルを測定した。さらに、1回の放電ごとにプラズマジェット点火プラグから噴出されるプラズマを、シャッター開放で撮影した。
電雑ノイズのレベル測定については、上記規格における妨害波のレベルが許容値(基準値)を満たせば(許容値以下であれば)、本実施の形態の点火装置200を用いることによりプラズマジェット点火プラグ100から発生する電雑ノイズを低減する効果が得られるものとした。特に、測定した妨害波のレベルが許容値よりも10dB以上小さかった場合、電雑ノイズの低減に大きな効果が得られるとして「◎」と評価し、許容値より10dB未満の低減であっても十分な効果が得られるとして「○」と評価した。一方、許容値を満たせない場合(許容値より大きければ)、点火装置200を用いることによりプラズマジェット点火プラグ100から発生する電雑ノイズを低減する効果が得られないとして「×」と評価した。この評価試験の結果を表1に示す。
Figure 0005139505
また、プラズマの噴出状態については、プラズマジェット点火プラグから噴出されるプラズマの噴出長さが、接地電極の先端面を基準に1mm以上に達した場合、十分な大きさのプラズマを噴出できたと判定した。そして10回の放電において9回以上、十分な大きさのプラズマを噴出できた場合、点火装置200を用いればプラズマジェット点火プラグ100によるプラズマの噴出を良好に行えるとして「○」と評価した。一方、10回の放電において2回以上正常なプラズマの噴出を行えなかった場合、プラズマの噴出が不十分であるとして「×」と評価した。この評価試験の結果を表2に示す。
Figure 0005139505
表1に示すように、内部抵抗R2を0Ωに固定し、抵抗R1の電気抵抗値を異ならせた場合、抵抗R1が1KΩ未満になると、トリガー放電時に発生する電雑ノイズのレベルが大きく、CISPR12で定められた許容値を満たせなかった。そして内部抵抗R2の電気抵抗値を大きくしていくと、抵抗R1の電気抵抗値を1KΩより小さくしても電雑ノイズのレベルが許容値を満たせることがわかった。具体的に、内部抵抗R2を0.5Ω以上とすれば、抵抗R1が0.5KΩ以上であれば電雑ノイズを許容値まで低減できることがわかった。さらに、内部抵抗R2を1Ω以上とすれば、抵抗R1を0.1KΩまで小さくしても十分に、電雑ノイズを許容値まで低減できることがわかった。このことから、内部抵抗R2の電気抵抗値の大きさにかかわらず、抵抗R1を1KΩ以上とすれば十分に、電雑ノイズを許容値まで低減できることがわかる。
しかし、表2に示すように、内部抵抗R2が1Ωより大きくなると、プラズマ放電時のエネルギーの損失が大きく、十分な大きさのプラズマが形成されなかった。このことは、抵抗R1の電気抵抗値の大きさによらないことが、表2からわかる。従って、内部抵抗R2は、1Ω以下であることが望ましい。また表2より、内部抵抗R2の電気抵抗値の大きさにかかわらず、抵抗R1が20KΩより大きいと、トリガー放電時の放電電圧が低下して火花放電がなされず、プラズマが噴出されないことがわかった。
この評価試験の結果、点火装置200に電気抵抗値が1KΩ以上20KΩ以下の抵抗R1を設け、内部抵抗R2の電気抵抗値は1Ω以下となるようにすれば、プラズマを形成するのに十分な大きさの電流を火花放電間隙に流しつつも、電雑ノイズの発生を抑制することができることを確認できた。
[実施例2]
次に、プラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流の最大値Iと、最大値Iとなるまでにかかる時間t1との関係について確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、実施例1と同様の試験用のプラズマジェット点火プラグを用意し、抵抗R1を20KΩ、内部抵抗R2を1Ωとした試験用の点火装置に接続して、実施例1と同様の机上点火試験を行った。このとき、点火装置のプラズマ放電回路部に使用するインダクタおよびコンデンサとして、インダクタンスの異なる種々のインダクタと、静電容量の異なる種々のコンデンサを用意した。そして、それらインダクタとコンデンサとを適宜組み合わせてプラズマ放電を行わせ、そのとき点Aを流れた電流を測定し、最大値Iと、時間t1とを求めた。さらに、各組み合わせについて、火花放電間隙を流れる電流の最大値Iを、その最大値Iに達するまでの時間t1で割った、単位時間あたりの電流の流量の変動を示す、I/t1の値を求めた。そして、実施例1と同様に、プラズマジェット点火プラグから発生した電雑ノイズのレベル測定と、プラズマの噴出状態の判定とを行った。なお、電雑ノイズのレベル測定については、実施例1で説明したCISPR12で定められた許容値よりも10dB低いレベルを満たすか否かによって、良否判定した。この評価試験の結果を表3および図5,図6に示す。
Figure 0005139505
表3に示すように、I/t1の値が、3.0×10A/sec.以上の場合、プラズマ放電によって発生する電雑ノイズのレベルが大きくなってしまい、CISPR12で定められた許容値よりも10dB低い値を満たせなかった。一方、I/t1の値が、2.5×10A/sec.以下であれば、十分に、電雑ノイズの発生を抑制することができた。このことは、最大値Iと時間t1との関係を図5に示すようにグラフに表すとより明確に確認することができ、I/t1の値を2.5×10A/sec.以下として単位時間あたりの電流の流量の変動を抑えれば、電雑ノイズの発生を抑制することができることがわかった。
また、電流の最大値Iについて着目すると、表3および図6に示すように、最大値Iが5A未満の場合には、火花放電間隙に供給されるエネルギーが少なくなり、十分な大きさのプラズマが形成されなかった。このことから、火花放電間隙を流れる電流の最大値Iが5A以上にできる静電容量を持ったコンデンサを選択しつつ、I/t1の値を2.5×10A/sec.以下にできるインダクタンスを持ったインダクタを用いれば、プラズマを形成するのに十分な大きさの電流を火花放電間隙に流しつつも、電雑ノイズの発生を抑制することができることが確認できた。
[実施例3]
次に、プラズマ放電時に火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t1について確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、実施例1と同様の試験用のプラズマジェット点火プラグを用意し、抵抗R1を20KΩ、内部抵抗R2を1Ωとした試験用の点火装置に接続した。このとき、点火装置が1回のプラズマ噴出を行うために供給するエネルギー量(トリガー放電用のコンデンサから供給されるエネルギー量と、プラズマ放電用のコンデンサからの供給されるエネルギー量と和)は150mJとした。また、プラズマ放電回路部に使用するインダクタとして、インダクタンスの異なる種々のインダクタを用意し、適宜取り換えた上で、試験用のプラズマジェット点火プラグをチャンバーに取り付け、着火性の確認を行った。具体的には、プラズマジェット点火プラグを取り付けた後、チャンバー内を空気とCガスとの混合比(空燃比)を20とした混合気で充填し、気圧を0.05MPaとする(ガス充填工程)。点火装置によりプラズマジェット点火プラグにトリガー放電およびプラズマ放電を行い、混合気への点火を試みる(電圧印加工程)。チャンバー内の圧力変化を圧力センサで測定し、混合気に着火したか否か確認を行う(着火確認工程)。この一連の工程を100回試行し、着火確率を算出した。また、プラズマ放電の際に点Aを流れた電流を測定し、最大値Iに達するまでにかかる時間t1を求めた。この試験の結果を図7のグラフに示す。
図7に示すように、プラズマ放電が開始されてから、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iに達するまでにかかる時間t1が50μsec.以内であれば、100%の着火確率が得られ、75μsec.であっても98%の着火確率を得られた。しかし、時間t1が100μsec.となると着火確率は78%に低下し、それ以上の時間がかかれば、着火確率もさらに低下した。このことから、プラズマ放電が開始されてから、75μsec.以内に、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iに達するように、プラズマ放電回路部に用いるインダクタの選定を行えば、十分な着火性を得られることが確認できた。
[実施例4]
次に、トリガー放電によって火花放電間隙に絶縁破壊が生じてから、プラズマ放電によって火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t2について確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、実施例1と同様の試験用のプラズマジェット点火プラグを用意し、抵抗R1を20KΩ、内部抵抗R2を1Ωとした試験用の点火装置に接続した。このとき、プラズマ放電回路部からプラズマジェット点火プラグにエネルギーを供給する経路上、具体的には配線B−A間にスイッチを設け、火花放電間隙における絶縁破壊が生じてから、プラズマ放電を開始するまでの時間を適宜調整できるようにした。また、プラズマ放電開始から60μsec.後に点Aを流れる電流の最大値Iが50Aとなるように、プラズマ放電回路部に用いるコンデンサを選定した。なお、点火装置が1回のプラズマ噴出を行うために供給するエネルギー量は150mJとなる。
そして試験用のプラズマジェット点火プラグをチャンバーに取り付け、火花放電間隙における絶縁破壊が生じてから、プラズマ放電を開始するまでの時間を適宜調整しつつ、実施例3と同様に、プラズマジェット点火プラグの着火試験を行って、着火確率を求めた。ただし、チャンバー内は、空気とCガスとの混合比(空燃比)を22とした混合気で充填した。さらに、点Aを流れた電流を測定し、トリガー放電により火花放電間隙に絶縁破壊が生じてから、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iに達するまでにかかる時間t2を求めた。この試験の結果を図8のグラフに示す。
図8に示すように、トリガー放電により火花放電間隙に絶縁破壊が生じてから、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iに達するまでにかかる時間t2が100μsec.以内であれば、100%の着火確率が得られ、150μsec.以内でも、98%以上の着火確率を得られた。しかし、時間t2が175μsec.となると着火確率は急激に低下して10%となり、それ以上の時間がかかれば、着火確率もさらに低下した。このことから、トリガー放電により火花放電間隙に絶縁破壊が生じてから、150μsec.以内に、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iに達するように、プラズマ放電回路部に用いるインダクタの選定を行えば、十分な着火性を得られることが確認できた。
[実施例5]
次に、プラズマ放電を開始してから、エネルギーの供給が終了するまでにかかる時間t3に対する、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t1の割合t1/t3について確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、実施例1と同様の試験用のプラズマジェット点火プラグを用意し、抵抗R1を20KΩ、内部抵抗R2を1Ωとした試験用の点火装置に接続した。このとき、実施例4と同様に、プラズマ放電回路部からプラズマジェット点火プラグにエネルギーを供給する経路上(配線B−A間)にスイッチを設け、火花放電間隙における絶縁破壊が生じてから、プラズマ放電を開始するまでの時間を60μsec.遅らせるようにした。また、プラズマ放電開始から60μsec.後に点Aを流れる電流の最大値Iが50Aとなるように、プラズマ放電回路部に用いるコンデンサを選定した。なお、点火装置が1回のプラズマ噴出を行うために供給するエネルギー量は150mJとなる。さらに、プラズマ放電回路部に使用するインダクタとして、インダクタンスの異なる種々のインダクタを用意した。
そして試験用のプラズマジェット点火プラグをチャンバーに取り付け、プラズマ放電回路部にインダクタンスの異なる種々のインダクタを適宜交換して組み付け、実施例3と同様に、プラズマジェット点火プラグの着火試験を行って、着火確率を求めた。ただし、チャンバー内は、空気とCガスとの混合比(空燃比)を24とした混合気で充填した。さらに、点Aを流れた電流を測定し、プラズマ放電を開始してから、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t1と、エネルギーの供給が終了するまでにかかる時間t3とを求め、t1/t3を算出した。この試験の結果を図9のグラフに示す。
図9に示すように、t1/t3が0.3(3/10)以下であれば、100%の着火確率が得られ、0.6(3/5)以下であっても90%以上の着火確率を得られた。しかし、t1/t3が0.7(7/10)になると着火確率は急激に低下して25%となり、それ以上の値となれば、着火確率もさらに低下した。このことから、プラズマ放電を開始してから、エネルギーの供給が終了するまでにかかる時間t3に対する、火花放電間隙を流れる電流が最大値Iとなるまでにかかる時間t1の割合t1/t3が3/5以下となるように、プラズマ放電回路部に用いるインダクタの選定を行えば、十分な着火性を得られることが確認できた。
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、点火装置200としてCDI式の電源を例に説明したが、フルトランジスター式、ポイント(接点)式など、その他のいかなる点火方式のものとしてもよい。また、本発明では中心電極20側から接地電極30側へ電流が流れる形態であるが、極性を入れ替え、接地電極30側から中心電極20側へ電流が流れるような電源や回路構成としてもよい。また、点火装置200は、150mJの出力を行うもの(すなわち火花放電間隙へのトリガー放電のためコンデンサ114に蓄えるエネルギー量と、プラズマ放電のためコンデンサ132に蓄えるエネルギー量との和が150mJとなるように調整したもの)を例に挙げたが、これに限るものではない。
また、本実施の形態では、プラズマ放電時に火花放電間隙にエネルギーを供給する経路上にインダクタ133を設け、電流の流量の急激な変動を抑制することで火花放電間隙へのエネルギーの供給を持続的に行った。もちろん、インダクタ133の使用に限るものではなく、例えばPWM制御を行っても、プラズマ放電時に、コンデンサ132に蓄えられたエネルギーが瞬時的に放出されてしまうのを抑制し、火花放電間隙への持続的なエネルギーの供給を行うことが可能である。
14 開口部
20 中心電極
30 接地電極
60 キャビティ
100 プラズマジェット点火プラグ
110 火花放電回路部
130 プラズマ放電回路部
200 点火装置
R1 抵抗
R2 内部抵抗

Claims (3)

  1. 中心電極と接地電極との間に形成される火花放電間隙の少なくとも一部の周囲を包囲して放電空間を形成したキャビティを有し、そのキャビティに設けられた開口部から、前記火花放電間隙における火花放電に伴い前記キャビティ内で形成されるプラズマを噴出するプラズマジェット点火プラグに電圧を印加するためのプラズマジェット点火プラグの点火装置であって、
    前記火花放電間隙にて絶縁破壊による前記火花放電を発生させるための電圧を前記プラズマジェット点火プラグに印加する放電電圧印加手段と、
    当該放電電圧印加手段における電圧の印加によって生じた前記火花放電に併せてプラズマを形成するため、前記火花放電間隙にエネルギーを供給するエネルギー供給手段と
    を備え、
    前記プラズマジェット点火プラグと前記放電電圧印加手段との間に抵抗器を配設して両者間の電気抵抗値を1KΩ以上20KΩ以下とすると共に、前記プラズマジェット点火プラグと前記エネルギー供給手段との間の電気抵抗値を1Ω以下とするとともに、
    前記プラズマジェット点火プラグからの一回のプラズマの噴出において、
    前記火花放電間に流れる電流は、前記放電電圧印加手段から前記火花放電間隙に電圧が印加されて急激に大きくなり絶縁破壊を生ずる第一タイミングにおいて瞬時的にトリガー放電による第一の最大値を迎えた後、前記第一タイミングと略同時またはそれよりも遅延した第二タイミングを基点に前記エネルギー供給手段から前記火花放電間隙へのエネルギーの供給が開始され、徐々に大きくなりつつ、前記第二タイミングよりも遅い第三タイミングにプラズマ放電による第二の最大値を迎えるものであり、
    前記第二の最大値は前記第一の最大値よりも大きく、且つ、
    前記第二タイミングを基点とし、前記第三タイミングになるまでにかかる時間をt1[sec.]とし、第二の最大値をI[A]としたときに、
    t1≦75[μsec.] ・・・ (1)
    を満たし、且つ、
    I/t1≦2.5×10[A/sec.] ・・・ (2)
    を満たし、且つ、
    I≧5[A] ・・・ (3)
    を満たすことを特徴とするプラズマジェット点火プラグの点火装置。
  2. 前記プラズマジェット点火プラグからの一回のプラズマの噴出において、
    前記第一タイミングを基点とし、前記第三タイミングになるまでにかかる時間をt2[sec.]としたときに、
    t2≦150[μsec.] ・・・ (4)
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載のプラズマジェット点火プラグの点火装置。
  3. 前記プラズマジェット点火プラグからの一回のプラズマの噴出において、
    前記第二タイミングを基点とし、前記エネルギー供給手段からのエネルギーの供給が終了するまでにかかる時間をt3[sec.]としたときに、
    t1/t3≦3/5 ・・・ (5)
    を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマジェット点火プラグの点火装置。
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