以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
[第1実施の形態]
本発明による多光子励起測定装置の第一実施の形態を、図1〜図6を用いて詳細に説明する。なお、ここでは多光子励起測定装置として多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システムを例として説明を行う。
図1は、本発明の第1実施の形態に係る多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システムの概略構成図である。この多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1は、光パルスを出射してこの光パルスを空間伝播によりレーザ走査型顕微鏡4に供給する短パルス光源2、短パルス光源2から入射した光パルスにより試料6の多光子励起による蛍光の検出を行うレーザ走査型顕微鏡4、このレーザ走査型顕微鏡4に接続し、多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1全体の制御を行うとともに、レーザ走査型顕微鏡4からの信号を画像化するコンピュータ81、画像化した上記信号等を表示するモニタ82、コンピュータ81に接続されてコンピュータ81からの命令により短パルス光源2から出射する光パルスの繰り返し周波数を調節するレーザ制御装置83、多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1の使用者が、コンピュータ81に対して入力を行うためのインタフェース装置84とから構成される。ここで、コンピュータ81およびレーザ制御装置83は、制御手段を構成し、また、コンピュータ81とモニタ82は表示手段を構成する。
さらに、レーザ走査型顕微鏡4は、短パルス光源2から入射した光パルスを反射させるミラー41、ミラー41で反射された光を2次元走査させる2次元走査手段42、2次元走査手段42を出射した光パルスを集光して中間像を結像させる瞳投影レンズ43、中間像を結像した光パルスを略平行光にする結像レンズ44、結像レンズ44を出射した略平行光を試料6に集光させる対物レンズ45、および、試料6を載置するステージ7を含んで構成する。ここで、2次元走査手段42は、例えば互いに直交する2本の軸線回りに揺動する2枚のガルバノミラーを近接配置した、いわゆる近接ガルバノミラーにより構成する。また、ステージ7は、試料6を載置するステージ上面を入射する光パルスの光軸方向(Z軸方向)に変位させて対物レンズ45との相対距離を変化させるための駆動機構を備える。以上の構成において、瞳投影レンズ43、結像レンズ44、および対物レンズ45は、照明光学系を形成している。また、2次元走査手段42およびステージ7は、観測点の位置を変位させる観測点変位手段である。
ここで試料6は、例えば、蛍光タンパクが発現した生細胞である。この試料に光パルスを集光すると、蛍光タンパクが多光子吸収により励起され、信号光である蛍光を発する。この多光子吸収過程は非線型過程であり、蛍光強度は、2光子励起の場合、励起光パルスの平均光強度の2乗に比例し、光パルスの時間幅と繰返し周波数に反比例する。
また、レーザ走査顕微鏡4は、結像レンズ44と対物レンズ45との間に配置され、入射光パルスを透過させ、入射光パルスの光路と逆方向に伝播する蛍光を反射させて、入射光パルスと蛍光とを波長によって分離するダイクロイックミラー46と、ダイクロイックミラー46で反射した蛍光を集光させる集光レンズ47と、この集光レンズ47による集光点で蛍光を検出して電気信号に変換する検出器48とを更に備える。ここで、ダイクロイックミラー46は、入射光パルスおよび光パルスの試料6による反射光を透過させ、多光子励起により発生する蛍光を反射させる反射、透過特性を有する。
さらに、レーザ走査顕微鏡4は、コンピュータ81と接続された外部入出力装置49を含んで構成される。この外部入出力装置49は、2次元走査手段42およびステージ7と電気的に接続されており、コンピュータ81からの指令により2次元走査手段42およびステージ7の動作を制御するとともに、検出器48とも電気的に接続され、この検出器48から出力された電気信号を蓄積し、および、コンピュータ81に送信できるように構成されている。
次に短パルス光源2の詳細について説明する。図2は、短パルス光源2の概略構成図である。短パルス光源2は、数百から数千ピコ秒幅の電気パルスを発生させる電気パルス発生器21、この電気パルスにより流入する電流によって利得が瞬間的に発生消滅する、いわゆる利得スイッチ動作により短波長から長波長へと時間的にチャープした数十ピコ秒幅の光パルスを発生させる半導体レーザ22、半導体レーザ22から出射した光パルスを伝播させる、例えば、長さ約1kmのシングルモード光ファイバ23、シングルモード光ファイバ23から出射した光パルスを数十mWから数Wの平均光強度(平均出力)に増幅する二つのファイバ増幅器24、25を含んで構成する。
電気パルス発生器21はレーザ制御装置83と電気的に接続されており、図1のコンピュータ81からの指令を受けたレーザ制御装置83からのパルス繰返し周波数(パルス間隔時間)の指令により、電気パルスの繰返し周波数が、1MHzから200MHz(パルス間隔に換算して5nsから1μs)の範囲で、随時変更可能である。
半導体レーザ22はVCSEL(面発光レーザ)を使用し、また、光パルスの波長は試料6の多光子励起に適した波長であれば良く、可視から近赤外や赤外光までの波長が使用可能であるが、本実施の形態では近赤外の980nm帯を用いる。
シングルモード光ファイバ23は、正の群速度分散(GVD)を有し、これによってこのシングルモード光ファイバ23を伝播する光パルスの長波長側が短波長側より速く光ファイバを伝播してチャープが補正される。光パルスの時間幅とその波長の拡がり幅(光スペクトル幅)との積には、限界となる最小値であるトランスフォームリミット(TL)を有することが知られている。すなわち、より短い時間幅の光パルスを得るためにはより広い光スペクトル幅が必要となる。VCSELの光スペクトル幅は1nm程度なので、TLな光パルスの時間幅は3psから5ps程度となる。シングルモード光ファイバ23は、光パルスを数ピコ秒幅のTLな光パルスに変換する。
ファイバ増幅器24、25は、図示しない半導体レーザで励起されるYbがドープされたシングルクラッド光ファイバである。このファイバ増幅器24、25は飽和出力動作の状態となっており、すなわち、入射する光パルスの繰返し周波数によらず略一定の平均光強度(平均出力)の光パルスを出力する。
なお、短パルス光源2には、各光学素子の接続に適宜偏波保持光ファイバが使用され、偏波による動作の不安定を抑制する。また、反射光による半導体レーザ22やファイバ増幅器24、25の損傷を防ぐための光アイソレータや、最適な光スペクトル波形を得るための光フィルタが挿入されている。
図3は、短パルス光源2から出射する光パルスの繰返し周波数と平均光強度、パルス幅、光パルスの強度の尖頭値であるピーク光強度の関係を示すグラフである。ファイバ増幅器24、25の特性により、平均光強度は繰返し周波数の変化に対して略一定である。また、パルス幅(光パルスの時間幅)も繰返し周波数の変化に対して略一定である。パルス幅および平均出力が一定であれば、先に説明したように、多光子励起による蛍光強度は、光パルスの時間幅に反比例する。したがって、繰返し周波数が下がると光パルス当たりのエネルギーは大きくなり、ピーク光強度が高くなることになる。すなわち、ピーク光強度は繰返し周波数に対して反比例の関係となる。
図4は、短パルス光源2から出射する光パルスについて繰返し周波数に対するパルス波形の差異を説明するグラフである。図4において、横軸は時間であり縦軸は光強度である。グラフは、それぞれ繰返し周波数fpがA、2A、3A、4Aの場合の光パルス波形を示している。繰返し周波数(fp)が4A、3A、2A、Aと低くなるにつれて、各光パルスのピーク光強度は高くなる。すなわち、短パルス光源2は、光パルスの繰返し周波数を変更することで、平均照射エネルギー(平均光強度)を変えずに、ピーク光強度を変化させることができる。
本実施の形態の多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1は、観測点のZ軸方向の位置変化に応じて光パルスの繰返し周波数を変化させることにより、試料6の複数のZ軸位置で輝度が略均一となるようにして、XY平面の観測画像を得るようにしたものである。以下に、図1、図5、図6を用いてその動作を説明する。
図5は、本実施の形態の多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1を用いた、顕微鏡観測の手順を示すフローチャートである。この手順は、観測に先立ってZ軸位置に応じた光パルスの繰返し周波数の情報設定を行うための設定段階(ステップS1〜S8)、および、この設定された情報に基づいて観測を行う観測段階(ステップS9〜S15)を含む。
まず、設定段階において、使用者は、図1の試料6をステージ7に載置して、ステージ7上面のZ軸位置を調整して、光パルスの集光点が試料6の最表面に位置するようにする(ステップS1)。このZ軸方向の調整は、使用者が、モニタ82に表示される入力用画面を参照しつつ、例えばキーボードやマウス等のインタフェース装置84を介して、数値情報あるいは微動指令をコンピュータ81に入力すること等により行う。数値情報または微動指令の入力を受けたコンピュータ81は、レーザ走査型顕微鏡4の外部入出力装置49を介してステージ7の駆動機構を動作させて、ステージ7のZ軸位置を調整する。
次に、使用者は、繰返し周波数の調整を以下の要領で行う(ステップS2)。まず、使用者は、インタフェース装置84を介してコンピュータ81に2次元レーザ走査とモニタ82への画像表示を指示する。この指示を受けたコンピュータ81は、レーザ走査型顕微鏡4の外部入出力装置49を介して、2次元走査手段42を駆動させ、試料6の最表面であるXY平面上でレーザ光の光パルスの集光点を走査させる。これによって、光パルスの集光点では、2光子吸収により励起された蛍光が発生する。この蛍光は対物レンズ45を経てダイクロイックミラー46で反射され、集光レンズ47を透過して検知器48で検出されて電気信号に変換され、外部入出力装置49でデジタル数値化されてコンピュータ81に送信される。コンピュータ81では、集光点の現在のXY平面での走査位置情報と検知器48で検出された蛍光による電気信号とから所定の観察面の2次元画像を構成し、モニタ82に表示する。
使用者は、最適な画像輝度となる繰返し周波数を探して設定するために、モニタ82に表示される画像を見ながら、光パルスの繰返し周波数を順次変更する。この、繰返し周波数の変更は、上記と同様にインタフェース装置84を介してコンピュータ81に数値情報あるいは微変動指令を入力することによって行う。コンピュータ81は、入力された数値情報または微変動情報に応じて、レーザ制御装置83に繰返し周波数の変更の命令を送信する。レーザ制御装置83は、図2に示した短パルス光源2の電気パルス発生器21を制御して、短パルス光源2から出射する光パルスの繰返し周波数を所望の繰返し周波数に変更する。
前述のように、短パルス光源2は、繰返し周波数によらず略一定の平均光強度の光パルスを出力する一方、ピーク光強度は繰返し周波数に対して反比例の関係にある。このため、繰返し周波数を下げるとピーク光強度が高くなり、試料6においてより多くの多光子励起による蛍光が発生する。このため、コンピュータ81が処理してモニタ82に表示する画像の輝度も高くなる。使用者は、このような繰返し周波数の変更による画像の輝度の変化を観察し、例えば画像のコントラストなどの点で、最適な画像が得られる繰返し周波数を見つけて設定する。
使用者が最適な繰返し周波数を設定すると、コンピュータ81は、この時のステージ7の位置を示すZ軸位置情報と、繰返し周波数情報とをコンピュータ81内のメモリに記憶する(ステップS3)。
次に、使用者は、ステップS1と同様の操作によって、試料6の観察をしたい領域の最深部に光パルスの集光点が位置するようにステージ7を移動させる(ステップS4)。そして、ステップS2における最表面の場合と同様にして、ステップS2の場合と略等しい画像輝度が得られる最適な光パルスの繰返し周波数を設定する(ステップS5)。コンピュータ81は、この時のZ軸位置情報と繰返し周波数情報とをステップS3と同様に、コンピュータ81のメモリに記憶する(ステップS6)。
一般に、試料6の最表面から深部へと多光子励起を行う観測面が移動すると、試料媒質での散乱や吸収により光強度が減衰する。また、多光子励起で試料6から発生した蛍光などの信号光も同様に減衰する。したがって、最深部における光パルスの繰返し周波数は、最表面の場合と比較してより低い設定値となる。
次に、使用者は、観測するZ軸の範囲とこのZ軸の範囲でのZ軸方向の分割数を、インタフェース装置84に数値入力することによって、コンピュータ81に設定する(ステップS7)。これらの値が入力されると、前述した最表面と最深部とにおける最適な繰返し周波数に基づき、コンピュータ81は、観測する各Z軸位置を示す数値と各Z軸位置での繰り返し周波数とを含むテーブルを作成して、コンピュータ81のメモリに格納する(ステップS8)。
図6は、Z軸位置と繰返し周波数との関係を示すテーブルの作成方法を説明するグラフである。図6において、上述したステップS3およびステップS6で記憶した最表面および最深部についてのZ軸位置と繰返し周波数とのデータをプロットすると、グラフ上の2点のデータとなる。試料6の特性等に応じて、線形近似、対数近似、累乗近似、または、指数近似などにより、この2点を通る近似式を導出し、この近似式に当てはめて各Z軸位置に対する繰返し周波数を求め、この繰返し周波数をZ軸位置情報とともに格納したテーブルを生成する。
次に、本実施の形態の多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1を用いた顕微鏡観測の観測段階(ステップS9〜S15)について説明する。
使用者が観測開始の指令を、インタフェース装置84を介してコンピュータ81に入力すると(ステップS9)、図1に示すコンピュータ81は観測中であることをモニタ82に表示するとともに、前述の繰返し周波数をZ軸位置情報とともに格納したテーブルの先頭から、例えば最表面のZ軸位置とこのZ軸位置に対応する繰返し周波数とを読み出す。その後、コンピュータ81は、レーザ走査型顕微鏡4の外部入出力装置49にステージ7の設定位置として読み出したZ軸位置を指示し、外部入出力装置49はステージ7の駆動装置を制御してステージ7をこのZ軸位置に移動させる(ステップS10)。
移動が完了すると、ステージ7は完了信号を外部入出力49に出力する。外部入出力装置49は、これを受け取ると完了信号をコンピュータ81に出力する。コンピュータ81はこの完了信号を受け取ると、ステージ7のZ軸位置に対応する繰返し周波数をレーザ制御装置83に出力する。レーザ制御装置83は、コンピュータ81から入力された繰返し周波数に従い短パルス光源2が動作するように信号パルスを短パルス光源2に出力する。これにより、短パルス光源2は指示された繰返し周波数で光パルスを発振する(ステップS11)。
コンピュータ81がレーザ制御装置83へ繰返し周波数を出力した時点から、実際に短パルス光源2が設定された繰返し周波数で動作するのに要する所定の時間が経過すると、コンピュータ81は外部入出力装置49に2次元走査手段42の走査開始信号を出力する。外部入出力装置49は、この信号を受け取ると2次元走査手段42に走査開始信号を出力する。この2次元走査手段42は走査開始信号を受け取ると走査を開始するとともに(ステップS12)、試料上の集光点のXY平面内における位置を示す走査位置情報を、外部入出力装置49に出力する。また、外部入出力装置49は、パルス光の集光点の2次元走査による多光子励起により発生した蛍光を検出して検出器48が出力する検出信号を受け取るともにデジタル数値化し、2次元走査手段42が出力する走査位置情報とともに、外部入出力装置49内のメモリ上に設けたテーブルに格納する。(ステップS13)。
2次元走査手段42は、所定の走査を完了すると(ステップS14)完了信号を外部入出力装置49に出力し、外部入出力装置49はこの信号を受け取るとコンピュータ81にこの完了信号を出力するとともに、走査位置情報と検出信号とのテーブルを出力する。コンピュータ81は、走査位置と検出信号とのテーブルを記憶するとともに、これから観測画像を作成し、モニタ82に表示させる(ステップS15)。
次に、コンピュータ81は上述のステップS10〜S15の動作が完了すると、前述の繰返し周波数とZ軸位置情報とを格納したテーブルから、次のZ軸位置および繰返し周波数を読み出し、このZ軸位置と繰返し周波数について、ステップS10〜S15の動作を行う。このようにして、順次のZ軸位置に対する測定を行い、全てのZ軸位置についての測定が完了すると、コンピュータ81は測定を終了してモニタ82にその旨を表示する(ステップS16)。
このとき、Z軸位置の変化に対して、図6に示したようにZ軸位置が試料6の表面から深部へ変化するにつれて、光パルスの繰返し周波数を低く設定するので、光パルスのピーク強度は高くなり、ピーク光強度の二乗に比例する多光子励起効率を高くすることができるので、試料内の散乱・吸収による多光子励起光パルスや試料からの蛍光など信号光の低下を補償することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、多光子励起による蛍光の顕微鏡観察において、平均光強度が略一定の短パルス光源2を用い、試料6のZ軸位置に応じて短パルス光源2から出射する光パルスの繰返し周波数を変化させるようにしたので、試料の深部を観測する場合においても光パルスによる過熱により試料を損傷することなく、測定位置の深さに依存せず略等しい輝度の画像を得ることができる。このことは、特に生細胞などを試料とした時に加熱による損傷を低減できるので有利である。また、利得スイッチ半導体レーザに印加するピコ秒からナノ秒の時間幅の電気パルスの繰返し周波数を変更するだけで、短パルス光源の繰返し周波数を瞬時かつ安定に制御することができる。
[第2実施の形態]
本発明の第2実施の形態では、図1に示した構成の多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1において、試料のXY方向の2次元平面に対して集光点を走査した時、測定する画像の平面内輝度を均一化する。このため、本実施の形態は、使用者によるインタフェース装置84への入力動作、これに基づくコンピュータ81によるレーザ制御装置83を介した短パルス光源2、外部入出力装置49、並びに、この外部入出力装置49を介したステージ7および2次走査装置42の制御の点において第1実施の形態と異なっている。
図7は、光軸からの距離と光パルスの最適な繰返し周波数との関係を説明するためのグラフである。まず、本実施の形態は、所定のZ軸位置において、光軸と垂直なXY平面を走査する際に、集光点の光軸からの距離に応じて短パルス光源2から出射される光パルスの繰返し周波数を変化させるように設定する。以下にこの繰返し周波数の設定方法について説明する。
図1に示した多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1のように、2次元走査手段42により入射光パルスを偏向して2次元走査する場合、一般に、XY平面のほぼ中央である光軸上と、それ以外の点では対物レンズ等の透過光学部品の影響で収差が発生し、集光点の大きさが光軸上の場合と比較して大きくなる。多光子励起により発生する蛍光の強度は、照射される光パルスの光強度の二乗に比例するので集光点が大きくなると、単位面積当たりの光強度が低下して蛍光強度が減少する。
最適な繰返し周波数を求めるに当たり、まず、使用者は、第1実施の形態で説明した方法により、ステージ7を所望のZ軸位置に調節する。次に、使用者は、インタフェース装置84を介してコンピュータ81に、光軸周辺の画像を表示させる命令を入力する。コンピュータ81はこの命令を受けて、外部入力装置49により2次元走査手段42を制御して、光パルスの集光点をXY平面上の光軸上位置の近傍領域のみを走査させる。これによって、当該領域の画像をモニタ82に表示する。使用者はこの画像を見ながら光パルスの最適な繰返し周波数を設定する。2次元走査手段42による集光点の走査から、当該領域をモニタへ表示するまでの各構成要素の動作、および、光パルスの最適な繰返し周波数の設定方法は、第1実施の形態と同様である。
その後、使用者は、インタフェース装置84を介してコンピュータ81に命令を入力して、光パルスの集光点をXY平面上の最外周における所望の点の近傍領域のみを走査させ、当該領域の画像をモニタ82に表示させ、上記と同様に光パルスの最適な繰返し周波数を設定する。
次に、使用者は、観測するXY平面の光軸からの距離による分割数を、インタフェース装置84に数値入力することによって、コンピュータ81に設定する。この値が入力されると、コンピュータ81は、前述した中心軸および最外周における最適な繰返し周波数の2点のデータに基づき、試料6の特性等に応じて、線形近似や対数近似によってこの2点を通る近似式を導出し、この近似式に基づき、観測する各光軸からの距離を示す数値と各光軸からの距離に対応する繰り返し周波数とのテーブルを作成して、コンピュータ81のメモリに格納する。
次に図1を参照して、本実施の形態に係る多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1の動作について説明する。使用者が、インタフェース装置84を介してコンピュータ81に観測開始の指令を入力すると、コンピュータ81は観測中であることをモニタ82に表示するとともに、外部入出力装置49に2次元走査手段42によるXY平面内の集光点の設定位置を指示し、外部入出力装置49は2次元走査手段42にこの設定位置へ集光点を移動させる移動指令を出力する。
2次元走査手段42は移動が完了すると完了信号を外部入出力49に出力し、外部入出力装置49はこれを受け取ると完了信号をコンピュータ81に出力する。コンピュータ81は、この完了信号を受信すると、2次元走査手段42の設定位置に対応する短パルス光源2の繰返し周波数を上述のテーブルから読取り、これをレーザ制御装置83に出力する。レーザ制御装置83は、受け取った繰返し周波数で短パルス光源2が動作するよう信号パルスを短パルス光源2に出力する。これにより、短パルス光源2は指示された繰返し周波数で光パルスを発振する。
このコンピュータ81からのレーザ制御装置83への繰返し周波数が出力された時点から、実際に短パルス光源2が設定された繰返し周波数で動作するのに要する所定の時間が経過すると、コンピュータ81は外部入出力装置49に検出器48の信号取得指令を出力する。外部入出力装置49は、この信号を受け取ると検出器48が出力する検出信号を受け取るとともにデジタル数値化し、2次元走査手段42が出力するXY平面内での走査位置情報とともに、走査位置および検出信号のテーブルに蓄積する。外部入出力装置49は、所望の設定位置の走査が完了するとコンピュータ81に完了信号を出力し、コンピュータ81は次の2次元走査手段42の設定位置の測定へと移る。以下コンピュータ81は各測定位置について上記と同様に測定とデータの蓄積を行う。
XY平面内の全ての測定位置の走査を完了すると、コンピュータ81は外部入出力装置49に完了信号を出力し、外部入出力装置49は、走査位置情報と検出信号のテーブルとをコンピュータ81に出力する。コンピュータ81は、走査位置情報と検出信号とのテーブルを記憶するとともに、これから観測画像を生成するとともに、この画像および完了した旨の表示をモニタ82に表示する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、入射光パルスを偏向して試料を走査する多光子励起による蛍光の顕微鏡観察において、平均光強度が略一定の短パルス光源2を用い、集光点の走査による2次元平面内の観測時に、試料6の光軸からの距離に応じて短パルス光源2から出射する光パルスの繰返し周波数を変化させるようにしたので、試料の最外周を観測する場合においても、光パルスによる過熱により試料を損傷することなく、光学系の収差等による観測点の光量低下や集光点サイズの増大による、多光子励起の効率低下や試料からの蛍光の低下を補償し、測定位置の光軸からの距離に依存せず、観察する平面内で略等しい輝度の画像を得ることができる。このことは、第1実施の形態と同様に、生細胞を試料とするときに有利である。
[第3実施の形態]
本発明の第3実施の形態は、図1に示した構成の多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1において、第1実施の形態と第2実施の形態とを組み合わせて、試料を3次元的に観測して画像化する際に、観測領域内である特定領域について強調した画像を得るものである。
このため、本実施の形態は、使用者によるインタフェース装置84への入力動作、これに基づくコンピュータ81によるレーザ制御装置83を介した短パルス光源2、外部入出力装置49、並びに、この外部入出力装置49を介したステージ7および2次走査装置42の制御の点において第1実施の形態および第2実施の形態と異なっている。
図8は、特定領域の設定方法を示す説明図である。本実施の形態では、三次元試料内の光軸と平行なZ軸位置について少なくとも三点について、光軸と垂直なXY軸平面についてレーザ走査による観測を行う。
まず、使用者は、所定の3つのZ軸位置、例えば、所望の観察範囲におけるZ軸方向の最表面(Z1)、最深部(Z3)、および、Z1とZ3との中間(Z2)のそれぞれについて、第1実施の形態および第2実施の形態に記載した設定段階の動作と同様にして、光軸からの距離に応じた最適な繰返し周波数を決定するとともに、モニタ画像を参照しながら、インタフェース装置84を介してコンピュータ81に特定領域設定コマンドを用いて領域を設定する。これにより、コンピュータ81は、この設定した特定領域をZ軸位置とともに記憶する。
次に、使用者は、所望の観察範囲におけるZ軸方向の分割数を、インタフェース装置84に数値入力することによって、コンピュータ81に設定する。コンピュータ81は、観測を行った最表面のZ1から中間のZ2を経て最深部のZ3までの、Z軸を設定された分割数により分割する。コンピュータ81は、この分割した各Z軸位置がZ1とZ2との間にあるときは、このZ軸位置に対応するXY平面上での特定領域を、Z1およびZ2の輪郭から内挿することによって設定し、また、Z2とZ3との間にあるときは、このZ軸位置に対応するXY平面上での特定領域を、Z2およびZ3の輪郭から内挿することによって設定する。
その後、コンピュータ81は、特定領域外については、蛍光強度が低くなるように、例えば所定の1を超える係数を乗じることなどにより、繰返し周波数を高くした値を算出して、その値を当該測定位置の光パルスの繰返し周波数とする。図9の右側に示すグラフには、Z1とZ3とのXY平面について、このようにして得られた光軸からの距離と光パルスの繰返し周波数との関係を示すグラフを表している。
コンピュータ81は、これらの繰返し周波数を、Z軸位置およびXY平面内の位置情報とともに、コンピュータ81内のメモリに設けられたテーブルに格納する。その後、使用者が、インタフェース装置84を介してコンピュータ81に観測開始の指令を入力すると、コンピュータ81は、レーザ走査型顕微鏡4の外部入力装置49を介して2次元走査手段42にXY平面内での走査を開始させるとともに、順次Z軸位置を前述の分割した各Z軸位置に移動させて、観測を行う。このとき、コンピュータ81は、Z軸位置およびXY平面内の位置情報に基づいて、各観測点に対応した光パルスの繰返し周波数を前述のテーブルから読み出し、第1実施の形態および第2実施の形態で説明したように、レーザ制御装置83を介して短パルス光源2からこの繰り返し周波数の光パルスを出射させる。
その後、第1実施の形態で説明したのと同様の動作により、コンピュータ81は、外部入力装置49からの各観測点の位置情報および検出信号を記憶するとともに、これから観測画像を作成しモニタ82に表示する。このとき、特定領域には繰返し周波数が特定領域外よりも低く、ピーク光強度の高い光パルスが照射されるため、特定領域外の領域より輝度の高い画像が得られる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、図1に示した構成の多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1において、第1実施の形態と第2実施の形態とを組み合わせて、試料6を3次元的に観測して画像化する際に、試料6の特定領域の繰返し周波数を特定領域外の繰返し周波数よりも低くして、試料6に光パルスを照射したので、試料内の特に強調して観測したい領域のみ多光子励起強度を高めて、試料からの強い信号光を得ることが可能となり、信号光の検出器感度の制御や、観測後の信号処理を加えることなく、試料内の特定領域を強調することが可能となる。
[第4実施の形態]
図10は、本発明の第4実施の形態に係る多光子励起測定装置の概略構成図である。本実施の形態は、図1に示された第1〜第3実施形態における多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1において、短パルス光源2とレーザ走査型顕微鏡4とを光ファイバを用いて着脱可能に接続したものであり、その他の部分は第1〜第3実施の形態における構成と同様であるので、異なる部分のみ説明を行う。
このため、本実施の形態では、短パルス光源2には光パルスを出射させる光ファイバコネクタ32を設け、レーザ走査型顕微鏡4にも光パルスを入射させる光ファイバコネクタ33を設ける。さらに、光ファイバコネクタ32と33との間は、シングルモード光ファイバ31で接続する。また、レーザ走査型顕微鏡4には、光ファイバコネクタ33を出射した光パルスを略平行光にするコリメートレンズ51が設けられる。シングルモード光ファイバ31は光パルスの波長に対して損失が小さく、長さは1mから5mの範囲が望ましく、例えば本実施の形態では、長さを1.5mとする。
以上のような構成によって、短パルス光源2から出射する光パルスは、シングルモード光ファイバ31でレーザ走査型顕微鏡4に入射する。この様な構成によっても、第1〜第3実施の形態で示した多光子励起による蛍光顕微鏡観測が可能となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、短パルス光源2とレーザ走査型顕微鏡4とを、光ファイバを介して着脱可能に接続したので、短パルス光源2とレーザ走査型顕微鏡4との光学的接続が容易となり、顕微鏡システムのレイアウトの自由度を高めることができる。
[第5実施の形態]
図11は、本発明の第5実施の形態に係る多光子励起測定装置の概略構成図である。本実施の形態は、図10に示した多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1において、シングルモード光ファイバ31と協働して、光パルスの時間幅を圧縮する機構を設けたものである。
このため、本実施の形態では、レーザ走査型顕微鏡4に、負の分散補償装置53と、コリメートレンズ51を出射した光パルスを反射して上述の負の分散補償装置53に入射させるミラー52と、この負の分散補償装置53から出射した光パルスをミラー41へ入射させるミラー54とをさらに設ける。
負の分散補償装置53は、2枚の回折格子55、56およびミラー57を含み、ミラー52で反射された光パルスを2枚の回折格子55、56で回折をさせて反射した後、ミラー57でその光軸を紙面と垂直方向に折り返し、再び2枚の回折格子55,56で回折させ反射してミラー54へ出射させる。このように、ミラー57で反射させ、回折格子55、56を往復させることにより、光パルスは、入射時とほぼ同じ円形の空間分布で負の分散補償装置53を出射することができる。
また、本実施の形態におけるシングルモード光ファイバ31の長さは、例えば15mである。
図11において、短パルス光源2からシングルモード光ファイバ31に入射した光パルスは、シングルモード光ファイバ31内で非線形光学現象である自己位相変調(SPM)により光スペクトルが拡大し、同時に、正の群速度分散(GVD)により長波長から短波長に時間的にチャープされた数十ピコ秒の光パルスとなる。
この光パルスはレーザ走査型顕微鏡4に入射し、コリメートレンズ52で略平行光化された後、ミラー52により反射される。その後、光パルスは負の分散補償装置53に入射し、ここで負の群速度分散を受ける。シングルモード光ファイバ31の正のGVDで生じたチャープは、負の分散補償装置53で逆のGVDを受けチャープが補償される。また、シングルモード光ファイバ31でのSPMにより光スペクトルが拡大しているので、短パルス光源2から出力された数ピコ秒幅の光パルスは、数百フェムト秒の光パルスに圧縮される。
時間幅が圧縮された光パルスは、負の分散補償装置53を出射して、ミラー54で反射され、ミラー41に入射する。その後の光パルスの光路は、第1〜第4実施の形態と同様である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、シングルモード光ファイバと負の分散補償装置とを設けて光パルスを圧縮するようにしたので、第4実施の形態の効果に加え、数ピコ秒の光パルスを発振する短パルス光源2を使用しながら、非線形パルス圧縮によりこの短パルス光源2から出射する光パルスを圧縮することで、より高い効率の多光子励起が可能なよりピーク光強度の高いフェムト秒の光パルスを試料に照射することが可能となる。また、より安定な数ピコ秒の光パルスを発振する短パルス光源2を用いながら、高価で不安定なフェムト秒の光パルスを発振する短パルス光源を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
[第6実施の形態]
本発明の第6実施の形態は、上述した、第1〜第5実施の形態における多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システム1において、短パルス光源2を、半導体レーザ22を用いずに、能動モードロックファイバリングレーザ9を用いて構成したものである。
図12は、第6実施の形態に係る短パルス光源2の概略構成図である。この短パルス光源2は、能動モードロックファイバリングレーザ9と、この能動モードロックファイバリングレーザ9から出射した光パルスを増幅するファイバ増幅器24、25とから構成する。ファイバ増幅器24、25は、図2を参照して第1実施の形態で説明した短パルス光源2の増幅器24、25と同様の特性を有する。
能動モードロックファイバリングレーザ9は、分岐カプラ91、利得部92、バンドパスフィルタ93、アイソレータ96および分散補償手段97を含んで構成し、これら光学部品の間はシングルモード光ファイバ94によりリング状に接続する。さらに、能動モードロックファイバリングレーザ9は、利得部92に接続された信号発生器95を備える。
利得部92は、希土類添加ファイバにより成る利得媒質とLN(LiNbO3)変調器より成る強度変調器とから構成する。ここで、希土類添加ファイバは、Ybが添加されたシングルモード光ファイバである。この希土類添加ファイバには図示しないWDM(波長分割多重)カプラを接続し、このWDMカプラの合波側には図示しない励起用光源である半導体レーザを光学的に接続する。ここでは半導体レーザは連続発振をする波長915nmのレーザであり、この半導体レーザからの光がWDMカプラによりYb添加ファイバに吸収されることにより980nm帯の利得が発生するように構成する。
分岐カプラ91は入射した光を設定した比率により分岐するものであり、シングルモード光ファイバ94に分岐する比率を反射率と呼び、ファイバ増幅器24への分岐比率を透過率と呼ぶ。
分散補償手段97は負の分散量を持ち、シングルモード光ファイバ94および利得部92の利得媒質が有する正の分散を相殺して、能動モードロックファイバリングレーザ9のリング部分全体としてゼロ分散状態となるようにして、波長により周回速度が異ならないようにする。
アイソレータ96は一方向にのみ光を伝播させる。本実施の形態では、図12において順時計方向、すなわち、分散補償手段97からの光をバンドパスフィルタ93の方向にのみ伝播させ、その逆方向の光は透過させない。
バンドパスフィルタ93は特定の波長帯域にのみ透過特性を持つものであり、これにより広帯域な波長帯である自然放出光を透過させるとともに、これと異なる波長の光により発振が生じることを抑止する。
信号発生器95は、利得部92の強度変調器に接続されており、レーザ制御装置83からの指令により、この利得部の時間的な透過特性を変調することができる。
以上のような構成により、利得部92から発した自然放出光は、シングルモード光ファイバ94を介して分岐カプラ91で一部がファイバ増幅器24へ分岐し、残りの部分が分散補償手段97、アイソレータ96、バンドパスフィルタ93の順に伝播し、再び利得部92のYb添加ファイバに到達し増幅される。利得部92による利得が、分岐カプラ91の透過率とその他損失の合計を上回ると、この自然放出光がこのリング状の経路の伝播過程を繰り返すことにより増幅され、レーザ発振する。
ここで、利得部92の利得発生の時間幅とタイミングが、利得発生時に自然放出光がシングルモード光ファイバ94で接続されたリング状の経路を周回して、再び利得部92に到達する時間間隔に一致するように、図示しない強度変調器に接続された信号発生器95の信号発生周波数を設定することにより、モードロック状態が達成される。この場合、分岐カプラ91からファイバ増幅器24に出射するレーザ光は、信号発生器95の信号発生周波数と同じ繰返し周波数を有するパルス光となる。
さらに、上記リング状の経路の周回を繰り返すことによって、能動モードロックファイバリングレーザ9から発振するレーザ光の光パルスの時間幅を数ピコ秒の短パルス光とすることが可能となる。また、このモードロック状態は、シングルモード光ファイバ94で接続されたリング状の経路内に1個の光パルスが存在する場合を基本状態とし、2個以上の光パルスが存在するようにもできる。これは、信号発生器95の周波数を基本状態の整数倍に設定することにより可能となる。これによって、基本状態における光パルスの周波数の整数倍の値に、光パルスの繰返し周波数を調整することができる。
このようにして、能動モードロックファイバリングレーザ9から出射した短パルス光は、2つのファイバ増幅器24、25で数十mWから数Wの平均光強度(平均出力)に増幅され、短パルス光源2から出力される。このようにして出射された光パルスを用いることで、第1〜第5実施の形態に記載したと同様な観測を行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、短パルス光源2に能動モードロックファイバリングレーザ9を用いたので、能動モードロックファイバリングレーザ9の強度変調器に印加する変調電気信号の繰返し時間間隔を変更するだけで、短パルス光源2の繰返し周波数を瞬時かつ安定に制御することが可能となる。
以上,本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で幾多の変形または変更が可能である。
例えば、多光子励起測定装置として多光子励起レーザ走査型蛍光顕微鏡システムを例として説明を行ったが、多光子励起(非線形励起)を伴う他の顕微鏡システムにも適用が可能である。また、試料としては主として生細胞を対象として説明を行ったが、半導体材料など他の試料に対しても適用可能である。
図2を用いて第1実施の形態で説明した半導体レーザ22は、面発光レーザ(VCSEL)に限られず、量子井戸分布帰還型レーザダイオード(QWDFBLD)や量子ドット分布帰還型レーザダイオード(QDDFBLD)等が使用可能である。また、ファイバ増幅器24、25は、半導体レーザで励起されるYbがドープされたシングルクラッド光ファイバであるとしたが、これに限られない。ファイバ増幅器の増幅にはファイバレーザを用いても良く、被励起媒質はNdやTmやErがドープされたシングルクラッドまたはダブルクラッド、断面に空孔がある光ファイバ等を用いても良い。
また、本発明の第1実施の形態では光軸に平行なZ軸上のZ軸位置について、最表面と最深部の2点のデータから近似を行ったが、3つ以上のZ軸位置について測定を行い3点以上から近似を行っても良い。
さらに、第2実施例においては、光軸上と最外周における2点のデータから近似を行ったが、3つ以上の光軸からの距離の位置で測定を行い3点以上から近似を行っても良い。また収差の場合、光学シミュレーションの結果と実際の結果は比較的一致するので、測定は光軸上の1点とし、光学シミュレーションによる近似式にこの測定結果を代入して用いる近似式としても良い。
第3実施の形態では、図8において特定領域を円で設定しているが、三角形、四角形または多角形であっても良い。また、測定するZ軸位置を3点としたが、より多くの位置で測定をすることが望ましい。さらに、第3実施の形態では、特定領域の内外で繰り返し周波数を変更する例を示したが、照明光学系と平行なZ方向および光軸と垂直なXY面内の任意の組合せの座標に相当する観測点において、照明用光源と観察点とを結ぶ直線距離が遠いほど繰返し周波数を低くするような制御を行って、3次元的に一定の蛍光輝度を得るようにしても良い。
さらに、第5実施の形態において、負の分散補償装置53としては、回折格子対に代えてプリズム対、グリズム対などを使用することもできる。
また、第6実施の形態において、利得部92は、利得媒質である希土類添加ファイバと強度変調器との組合せのものを使用したが、これに限られない。例えば、利得媒質と変調手段を兼ねる半導体光増幅器を使用しても良い。