JP5137347B2 - 熱硬化性コーティング組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体チップパッケージを製造するために、半導体チップどうし、または半導体チップとモールド樹脂もしくはアンダーフィル等を接着させるための熱硬化性コーティング組成物、もしくはパッケージ内の配線等金属どうし、またはそれら金属と封止樹脂を接着させるための熱硬化性コーティング組成物に関する。
半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう。)を含む半導体チップパッケージ(以下、単に「パッケージ」ともいう。)において、チップの表面は種々の材料と界面を形成する。たとえば樹脂封止型パッケージではモールド樹脂と、フリップチップ型パッケージではアンダーフィルと接することとなる。さらに近年、チップの上に他のチップを積層したパッケージが注目を集めている。その代表例はマルチチップパッケージ(スタックドCSPとも云う)である(例えば、非特許文献1参照。)。
このようなパッケージを製造するにあたって、チップと材料の界面には高性能の接着剤が要求される。チップの表面は、シリコンであるか、窒化珪素、二酸化珪素、もしくはホスフォシリケートグラス等の無機材料、又はポリイミド樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂等の有機材料からなる保護膜で被覆されている。またパッケージ内にはリードフレーム等の金属部材が組み込まれるが、これらの金属とモールド樹脂との接着、もしくは金属どうしの接着が求められる場合もある。従って、上記接着剤として使用するためには、これらの材料との接着力が必要である。また、半導体チップはパッケージ形成工程、実装工程、パッケージの信頼性試験で高熱にさらされるので、上記接着剤には優れた耐熱性が要求されている。
耐熱性を有する接着剤の代表例としては、芳香族ポリイミド系の樹脂からなる接着剤が知られている(非特許文献2参照)。しかしながら、上記非特許文献2には、ポリイミド系接着剤の代表例であるポリアミド酸ワニスの問題点として、硬化後にボイドが存在することも開示されている。他にもポリイミド系接着剤の欠点として、加水分解安定性、硬化時の揮発物(水)の発生、品質再現性、及び低剥離強度といった問題点が知られている(非特許文献3参照)。
信頼性の高いパッケージを作成するためには吸湿後のはんだリフロー試験や温度サイクル試験でパッケージにクラックや剥離が生じないことが必須である。しかしながら、パッケージの信頼性試験はパッケージを高湿状態におき200℃以上の温度ではんだリフロー試験を行うので、接着剤の硬化後にボイドが存在すると水が侵入し水蒸気爆発等をおこし、チップの剥離やクラックの発生が生じる場合があった。
また、近年環境問題の観点から半導体や部品をプリント配線板に搭載するにあたり、鉛を含まないはんだが用いられるようになってきた。従来の標準的な鉛/スズ合金からなる共晶はんだの融点が183℃であるのに対し代表的な非鉛はんだであるスズ/銀/銅合金は融点が213℃と高くなる。それに伴いリフロー温度も高くなり接着剤にもこの条件に耐えるものが要求されるようになっている。
ポリイミド系接着剤以外の接着剤の代表例としては、エポキシ樹脂系接着剤がよく知られている。しかしながら、エポキシ樹脂にはその原料に由来した加水分解性の塩素が含まれており、被接着物に金属が含まれる場合には高温高湿試験条件で遊離してきた塩素イオンにより金属の腐食が起きることがあるという問題があった。
このような背景を踏まえて硬化中に水の発生することのないポリイミド系耐熱性接着剤が開示された(特許文献1参照)。その技術を要約すればポリアミド酸型のポリイミド前駆体にかえてポリアミド酸エステル型の前駆体を用いることによって、イミド化により脱離する化合物を水ではなく二重結合を有するモノマーとし、当該モノマーを重合させることにより、耐熱性に優れ、接着後の熱処理でボイドの発生が抑えられ、金属腐食も誘発しないポリイミド系耐熱性接着材料を提供するものであった。
しかし、ここで開示された組成物には有機溶媒が含まれており、基材に被接着材を接着する前にその溶剤の含量が一定量以下になるように乾燥させる必要があった。ここで乾燥が不十分な場合には、他の材料と接着した後の加熱工程において溶媒が気化しボイドができ、密着力が不十分になる場合もあった。
特開2006−160910号公報 藤田著「スタックドCSP」エレクトロニクス実装技術2000、Vol.16、No4、p20 向山、西沢共著「耐熱性接着剤」工業材料第13号、第33巻、p65 三田著「最新耐熱性高分子」総合技術センター、昭和62年発行、p86
本発明は、硬化時にボイドが発生せず、接着後の金属腐食の問題も起こらず、かつ乾燥工程も不要な半導体パッケージ用コーティング材料およびコーティング方法を提供することを目的とする。
特許文献1は、ポリイミド前駆体と重合性の二重結合を有する化合物を有機溶媒に溶解して高粘度の塗布組成物を提供するものであるが、重合性の二重結合を有する常温で液状の単独化合物または混合物のみを用いてポリイミド前駆体を溶解することができれば乾燥工程が不要になると想起した。
すなわち、本発明の第一は、(A)下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する二重結合を持った基を、エステル結合を介して側鎖に結合させたポリアミド100質量部、(B)(A)で規定されたポリアミドを溶解する、二重結合を有する25℃で液状のN−ビニルピロリドンと、構造式(3)で示される化合物及びトリアリルイソシアヌレートのいずれかから選ばれる化合物との混合物150〜400質量部、及び(C)ラジカル重合開始剤2〜10質量部を有し、有機溶媒を含有しないことを特徴とする熱硬化性コーティング組成物。
Figure 0005137347
〔式中、Xは4価の芳香族基、Yは2価の芳香族基または珪素含有基である。R1 とR2 は、それぞれ独立に、下記式(2)で表される光重合性の不飽和二重結合を有する一価の有機基である。
Figure 0005137347
(式中、R3 、R4 、及びR5 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3の有機基であり、pは2〜10の整数である。)〕
Figure 0005137347
(式中、R 6 は水素原子またはメチル基、qは1〜20の整数である。)
本発明の第二は、(1)上記の熱硬化性コーティング組成物を、半導体のチップの表面に塗布する工程、(2)熱硬化性コーティング組成物の面に被接着物を載せる工程、
(3)150〜300℃で加熱する工程を含むことを特徴とする半導体チップの接着方法である。
上記チップの接着方法において、被接着物もチップであることが好ましい。また、チップの表面にポリイミド膜が形成されているチップであることが好ましい。
本発明の第三は、(1)上記の熱硬化性コーティング組成物を、配線付き基材の金属配線表面に塗布する工程、(2)150〜300℃で加熱する工程を含むことを特徴とする配線付き基材の表面コーティング方法である。
本発明により、硬化時にボイドが発生せず、接着後の金属腐食の問題も起こらず、かつ乾燥工程も不要な熱硬化性コーティング組成物からなる半導体パッケージ用コーティング材料および該材料を用いたコーティング方法が提供できた。
まず、本発明の熱硬化性コーティング組成物の各成分について、以下詳細に述べる。
本発明の熱硬化性コーティング組成物は、半導体チップ、またはチップを搭載した配線付き基材の表面及び該チップを被接着物と接着することを目的とし、およびパッケージ内の配線どうしを接着することを目的として使用する耐熱性を有する熱硬化性コーティング組成物であり、(A)下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する、二重結合を持った基をエステル結合を介して側鎖に結合させたポリアミド100質量部、(B)(A)で規定されたポリアミドを溶解する二重結合を有する常温で液状の化合物または混合物150〜400質量部、(C)ラジカル重合開始剤2〜10質量部を有することを特徴とする熱硬化性コーティング組成物である。
Figure 0005137347
〔式中、Xは4価の芳香族基、Yは2価の芳香族基または珪素含有基である。R1 とR2 は、それぞれ独立に、下記式(2)で表される光重合性の不飽和二重結合を有する一価の有機基である。
Figure 0005137347
(式中、R3 、R4 、及びR5 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3の有機基であり、pは2〜10の整数である。)〕
本発明の構成成分の1つである(A)二重結合を持った基をエステル結合を介して側鎖に結合させたポリアミドに関して説明をする。
上記構造式(1)中、Xで表される4価の芳香族基の好ましいものの例としては、以下の構造が挙げられる。
Figure 0005137347
また、構造式(1)中、Yで表される2価の芳香族基または珪素含有基の好ましいものの例としては、以下の構造が挙げられる。
Figure 0005137347
上記構造式(1)で示されるポリアミドは、例えば、特開2003−287889号に詳細に記載されているように、前述の構造式(1)に記載の芳香族基Xを持つ酸二無水物と重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類を反応させることによって得られるハーフアシッド/ハーフエステル体を経由して合成することができる。
ここで上述の重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−アクリロイルオキシ−3−プロピルアルコール、2−アクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2−ヒドロキシエチルビニルケトン、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−t−ブトキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルオキシプロピルアクリレート、1−メタクリロイルオキシ−3−プロピルアルコール、2−メタクリルアミドエチルアルコール、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−tert−ブトキシプロピルメタクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルオキシプロピルメタクリレートなどを挙げることができる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを特に好ましく使用することができる。また、これらの使用にあたっては、必要に応じて、単独でも2種以上を混合して用いてもかまわない。
このようにして得られたハーフアシッド/ハーフエステル体と、前述の構造式(1)に記載されたYを持つジアミンとを縮合剤を用いて重縮合させることにより構造式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドを得ることができる。上述の方法で製造したポリアミドは、酸塩化物を経由しないため、ポリアミドに不純物として含まれる塩素イオンの含有量を少なくすることができ、半導体チップ用としてより好ましい。
前記構造式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドにおいて、特に下記一般式で示される、4価の芳香族基及び環式脂肪族Xと2価の芳香族基Yとの組合せからなるポリアミドであることがより好ましい。
Figure 0005137347
Figure 0005137347
前記構造式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドにおいて、重量平均分子量は、3,000〜50,000が好ましく、10,000〜40,000がより好ましい。重量平均分子量が3,000より大きい場合硬化後の本組成物の接着力が向上し、50,000よりも小さければ組成物の溶解性が増し、塗布性も向上する。
次の構成成分である(B)ポリアミドを溶解する二重結合を有する常温で液状の化合物は、N−ビニルピロリドン、構造式(3)で示される化合物、もしくはトリアリルイソシアヌレートのいずれかから選ばれる化合物または混合物であることが好ましい。
Figure 0005137347
(式中R6 は水素原子またはメチル基、qは1ないし20の整数である。)
当該化合物としては、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート(新中村化学工業社製;NKエステル14G)等が挙げられる。
本発明の組成物において、(B)二重結合を有する常温で液体の化合物または混合物の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、150〜400質量部の範囲であることが好ましく、200〜300質量部の範囲であることがより好ましい。(B)の化合物または混合物が150質量部以上であると流動性と塗布性が向上し、400質量部以下であると耐熱性が向上する。
(C)のラジカル重合開始剤としては、保存中および塗布操作中では分解が起こらず、塗布層を硬化させるための熱処理時に分解して重合反応を開始させることが必要である。また多くの場合1次硬化が終了してから同じ温度またはそれ以上の温度で長時間2次硬化を行う。そのためには半減期が1分になる温度が90〜140℃であるラジカル開始剤と半減期が1分になる温度が150〜300℃であるラジカル開始剤を混合することが望ましい。
半減期が1分になる温度が90〜140℃であるラジカル開始剤としては、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジスクシニックアシッドパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2―エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキシド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。
半減期が1分になる温度が150〜300℃であるラジカル開始剤としては、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボナート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカルボナート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカルボナート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n―ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジーt−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチルーN−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
本発明の組成物において、ラジカル開始剤の含有量は、ポリアミド100質量部に対して、2〜10質量部の範囲であることが好ましく、3〜5質量部の範囲であることがより好ましい。ラジカル開始剤が2質量部以上であると硬化速度が上がり、10質量部以下であると保存安定性が向上する。
本発明の組成物には、上述した(A)(B)(C)の三成分以外にも、他の成分を含有させることができる。例としては、染料、フィラー、重合禁止剤、シランカップリング剤等である。シランカップリング剤としては、二重結合を有する化合物が好ましく、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。その他に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランも好ましく使用することができる。
次に本発明の熱硬化性コーティング組成物の使用法について述べる。
第一の使用法では、第一工程として本発明の耐熱性コーティング組成物(以下、「本組成物」ともいう。)を、半導体チップ、または半導体を形成したウエハーの表面に塗布する。半導体チップはリードフレーム等配線を有する基材等に搭載されてからパッケージに加工される場合が多い。その場合、たとえばリードフレームに搭載しワイヤボンド法で接続させた後、本組成物を塗布することも可能である。
本組成物を塗布する方法は、ディスペンス法、ポッティング法、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、及びスプレーコート法等のうちから、デバイス構造にあわせて選ぶことができそれぞれの方法に適した粘度に調整する必要がある。また、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法を用いれば、所定の部分にのみ本組成物を塗布することも可能となる。
第二の工程では、塗布した本組成物の表面に被接着物をのせる。この場合位置ずれが起こらないよう接着物と被接着物を固定したり、圧力をかけることも推奨される。被接着物が半導体チップ、ガラス板、フィルム、シート、金属、セラミックス等の固形物である場合には、被接着物の接着面にも本組成物を塗布しておいても良い。このケースでは第一の工程を省くことも出来る。
第三の工程では、本組成物を加熱し硬化させる。硬化温度は100〜250℃、好ましくは150〜200℃である。加熱はオーブン炉、ホットプレート、コンベア炉等を使用することが出来る。
第一の工程がフリップチップのチップ面に本組成物を塗布する場合は、第二の工程で被接着物としてアンダーフィルやNCP(Nonconductive Paste)、NCF(Nonconductive Film)ACP(Anisotropic Conductive Paste)、ACF(Anisotropic Conductive Film)等を選ぶことも出来る。また、第一の工程がリードフレーム等配線を有する基材等に搭載されたチップの表面に本組成物を塗布する場合は、第二の工程で被接着物として封止樹脂を選ぶことも出来る。これらの場合はこれらの材料と接着する前に塗布した本組成物を熱硬化させておくことも推奨される。この場合の推奨温度は上記の範囲、推奨時間は1分〜10分の範囲である。
第二の使用法として、リードフレーム等配線基材内の金属の表面に本組成物を塗布し金属と封止樹脂の接着または金属どうしの接着力を向上させるために本組成物を使用することもできる。その場合の塗布方法としては、ディスペンス法、スクリーン印刷法、インクジェット法が推奨され、これらの方法では所定の個所だけに本組成物を塗布することができる。
その後本組成物を加熱硬化させる。硬化温度は100〜250℃、好ましくは150〜200℃である。加熱はオーブン炉、ホットプレート、コンベア炉等を使用することが出来る。
これらの配線基材にはチップが搭載されるがそのチップの表面に本組成物を塗布するという第一の使用法を組み合わせることも出来る。このようにして調整されたチップが搭載された配線基材は封止樹脂で封止されるが、封止樹脂の硬化過程でも本組成物の硬化は進み封止樹脂とチップや配線との密着力の向上が見られる。
以下本発明の具体的態様を実施例などに基づいて説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
[参考例1](ポリアミドAの合成)
γ−ブチロラクトン400mlを入れた2リットル容量のセパラブルフラスコに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物159.9gと2−ヒドロキシエチルメタクリレート136.8gとピリジン81.5gを加え、室温下で16時間攪拌し反応混合物を得た。次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド210.4gをγ−ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル96.4gをγ−ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて滴下した。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ−ブチロラクトン400mlを加えた。生じた沈殿物をろ別し、反応液を得た。
得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて粗ポリマーからなる沈殿物を生成させた。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン(THF)1.5リットルに溶解して粗ポリマー溶液を得た。この溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物をろ別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリアミドA)を得た。ポリアミドAの分子量をゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量は20,000だった。
[参考例2](ポリアミドBの合成)
容量5リットルのセパラブルフラスコに、無水ピロメリット酸65.44g、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物225.56g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート270.69g、ピリジン158.2g、γ−ブチロラクトン1000gを投入、混合し、常温で16時間撹拌放置した。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド412.66gをγ−ブチロラクトン400gに溶解希釈したものを、氷冷下、30分かけて滴下投入し、続いて4,4’−ジアミノジフェニルエーテル185.97gをγ−ブチロラクトン650gに分散させたものを、60分かけて加えた。
氷冷のまま3時間撹拌し、その後エタノールを50g加え、氷冷バスを取り外し、室温で更に1時間撹拌放置した。上記プロセスで析出してきた固形分を加圧濾別した後、反応液を40lのエタノールに滴下投入し、その際析出する重合体を分離、洗浄し、50℃で24時間真空乾燥することにより、ポリアミドBを得た。ポリスチレン換算GPC重量平均分子量(THF溶媒)は30,000であった。
[実施例1]
参考例1にて得られたポリアミドAを用いて以下の方法で組成物を調整し、得られた組成物の接着性の測定及び評価を行った。
テトラエチレングリコールジメタクリレート30.0g、N−ビニルピロリドン13.0g、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製;KBM−503、商品名)0.78g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(118℃での半減期が1分)0.98g、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製;パーヘキシン25B、商品名、194℃での半減期が1分)0.59gの混合物にポリアミドAを19.5g加え均一になるまで撹拌をつづけ組成物1とした。
シリコンウエハーに組成物1をスピンコート法で塗布した。その上に10mm角の大きさに切ったシリコンウエハー片の裏面が接着するように押し付けた。これらを180℃に調整されたホットプレート上に載せ3分間大気中でキュアを行った。その後230℃のホットプレート上で30分間加熱を行った。その結果シリコンウエハー片は強固に固着したことを確認した。
次に下側のシリコンウエハーとシリコンウエハー片の間の接着力を以下に説明するセバスチャン法で測定したところピンの頭に付いているエポキシ樹脂が破壊し60MPa以上の接着力と測定された。また組成物1の硬化膜に1mm間隔のタテ11本ヨコ11本の互いに直交する切れ目をカッターナイフで入れ粘着テープで剥離試験(以下クロスカット試験という)を実施した結果、剥離は認められなかった。
ここでセバスチャン法について述べる。釘の頭の部分が直径2.7mmで長さ12.7mm、太さ1.6mmの釘状のアルミ製ピンを用意する。その頭の部分にはエポキシ樹脂が塗布されていて、このピンを被測定物に頭を下にして立て冶具で固定すし、次にこの全体を160℃で1.5時間加熱しエポキシ樹脂を硬化させる。次に、専用の装置でピンを引き上げピンが基材から剥がれるに要する力を測定しエポキシ樹脂の接着面積で割り接着力をMPaで表現し、剥離個所を検定する方法である。ある力Fでエポキシ樹脂が破壊、またはエポキシ樹脂と被測定物(本実施例では組成物1の硬化膜)の間で剥離した場合は、被測定物のシリコンウエハーに対する接着力はF以上であると判定する。また、ある力Gで被測定物とシリコンウエハーの間で剥離した場合は、被測定物のシリコンウエハーに対する接着力はGであると判定する。
[実施例2]
テトラエチレングリコールジメタクリレート32.5g、N−ビニルピロリドン13.0g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製;KBM−502、商品名)0.8g、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製;パーヘキシルO、商品名、133℃での半減期が1分)0.8g、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(日本油脂社製;ノフマーBC、商品名、285℃での半減期が1分)0.6gの混合物にポリアミドB19.5gを加え均一になるまで撹拌をつづけ組成物2とした。
シリコンウエハーに組成物2をスピンコート法で塗布した。その上に10mm角の大きさに切ったシリコンウエハー片の裏面が接着するように押し付けた。これらを180℃に調整されたホットプレート上に載せ3分間大気中でキュアを行った。その後240℃のホットプレート上で30分間加熱を行った。その結果、シリコンウエハー片は強固に固着した事を確認した。
次に実施例1と同様の試験を行った結果、クロスカット試験で剥離はなく、シリコンウエハー上の組成物Aの硬化膜の下地との密着性をセバスチャン法で測定したところ、60MPaでピンのエポキシ接着剤が破壊した。
[実施例3]
感光性ポリイミド前駆体(旭化成エレクトロニクス社製、PIMEL I−8606M、商品名)をシリコンウエハーに塗布し、100℃のホットプレート上で4分間乾燥後、200mJ/cm2 のi線で露光をした後、350℃で2時間加熱することにより、厚み5μmのポリイミド膜を形成させ、ポリイミド被覆ウエハーとした。
上記ポリイミド被覆ウエハー上に、組成物1をスピンコート法で塗布し、その上に10mm角の大きさに切ったガラス片を押し付けた。これらを220℃に調整されたホットプレート上に載せ90分間大気中でキュアを行った。ガラス片は強固に固着した。また、ガラス片とシリコンウエハーの間には気泡がないことを目視で確認した。
さらにシリコンウエハー上の組成物1の硬化膜の下地との密着性をセバスチャン法で測定したところ、60MPaでピンのエポキシ接着剤が破壊した。
[比較例1]
参考例1で得られたポリアミドA100gをテトラエチレングリコールジメタクリレート65g、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド4g及び2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(日本油脂社製;ノフマーBC、商品名)1.6gとともにN−メチル−2−ピロリドン160gに溶解した。これを比較組成物1と呼ぶ。
組成物1をスピンコートする工程の代りに比較組成物1をスピンコートし80℃のホットプレートで10分乾燥した以外は、実施例3と同じ操作を行った。その結果、ガラス片とウエハーの間に気泡が観察された。また、セバスチャン法では30MPaでガラスと硬化組成物の界面で剥離がみられた。
[実施例4]
ノナエチレングリコールジアクリレート60.0g、N−ビニルピロリドン15.0g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製; KBM−403、商品名)1.1g、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製;パーオクタO、商品名、124℃での半減期が1分)1.2g、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(日本油脂社製; ノフマーBC、商品名)0.8gの混合物に参考例1で得られたポリアミドA30.0gを加え均一になるまで撹拌をつづけ組成物4とした。次に42アロイ製のリードフレームを装着したモデルQFPパッケージを用意し、この組成物4をリードフレームの表面にインクジェット法で塗布した。オーブンを用いて200℃で10分間加熱した。このパッケージを日東電工社製;封止樹脂GC−7450(商品名)を用いてトランスファー成型を行った後、180℃で5時間後硬化を行った。次に、このモデルQFPパッケージを85℃で60%の湿度の環境に168時間放置し、最高温度を260℃に設定したリフロー炉を3回通した。このパッケージを超音波探傷装置(日立建機社製;MISCOPE−HYPER)で測定したところ、パッケージ内の剥離は観察されなかった。
[比較例2]
実施例4で記載したモデルパッケージを用意し、リードフレームの表面に組成物4を塗布せず実施例4と同様の試験を行ったところ、リードフレーム表面は剥離していることが観察された。
参考実施例5
ノナエチレングリコールジアクリレート35.0g、テトラエチレングリコールジメタクリレート35.0g、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製;KBM−503、商品名)1.2g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.8g、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製; パーヘキシン25B、商品名)1.2gの混合溶液にポリアミドAを30g加え均一溶液になるまで撹拌し組成物5とした。
1mm厚みのシリコンウエハーに感光性ポリイミド(旭化成エレクトロニクス社製;PIMEL I−8124ER、商品名)を塗布し、100℃のホットプレート上で4分乾燥して300mJ/cm2のi線露光をした後、350℃で2時間加熱することにより、厚み5μmのポリイミド膜を形成させ、ポリイミド被覆ウエハーとした。
次に参考実施例5で得られた組成物5をスピンコート法で塗布し230℃のホットプレート上で10分加熱した。このウエハーからタテ20mmヨコ10mmのサイズのウエハー片を2枚作成した。1枚のウエハー片の組成物5が塗布された面を上にして長辺の両側に厚さ70ミクロンの接着剤付きポリイミドフィルムを貼りタテ10mmヨコ10mmのスペースを作った。
そのスペースにアンダーフィル(九州松下電器社製;EPA160D、商品名)をシリンジから注入した。次にもう1枚のウエハー片を組成物Aが塗布された面を下にして押さえつけアンダーフィルが少量両側からはみ出すのを確認した。はみ出したアンダーフィルをふき取り190℃のオーブン中で20分間加熱した。この構成体を85℃、湿度85%の雰囲気に96時間放置後、最高温度260℃のリフロー炉を10秒通過させる熱処理を2回行った。その後240度のホットプレートの上にこの構成体を置き、上側のウエハー片を横からプッシュゲージで押し接着力を測定した。結果は56kg(553N)の荷重でウエハー片が割れた。
[比較例3]
組成物5を塗布しない以外は参考実施例5と同じ操作を行った。接着力を測定したところ6kg(59N)でポリイミド膜とアンダーフィルの間で剥離した。
[実施例6]
10mm角のシリコンウエハーに代えて30mm角のアルミ箔を接着させた以外は実施例1と同じ実験を行った。1mm幅の切れ目を入れるクロスカット試験を行ったところ、アルミ箔の剥離は観察されなかった。
またプレッシャークッカー試験(131℃、3気圧、100時間)を行った結果、試験の前後ともアルミ箔の腐食がないことを確認した。
[実施例7]
N−ビニルピロリドン40g、テトラエチレングリコールジメタクリレート20g、トリアリルイソシアヌレート10g 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製;KBM−403、商品名)4g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(日本油脂社製;ノフマーBC、商品名)1gの混合溶液にポリアミドAを30g加え溶液と組成物6とした。
次に感光性ポリイミド(旭化成エレクトロニクス社製;PIMEL I−8124C、商品名)をシリコンウエハーに塗布し、100℃のホットプレート上で4分乾燥後、300mJ/cm2 のi線露光をした後、370℃で2時間加熱することにより、厚み5μmのポリイミド膜を形成させ、ポリイミド被覆ウエハーとした。
次に15mm角の大きさに切ったシリコンウエハー片の裏面に上記組成物6を滴下し、その面をポリイミド被覆ウエハーに密着させ220℃のオーブン中で90分間加熱した。
さらにシリコンウエハー上の組成物6の硬化膜の下地との密着性をセバスチャン法で測定したところ、60MPaでピンのエポキシ接着剤が破壊した。
本発明のコーティング組成物は、半導体チップパッケージ製造の分野で好適に利用できる。

Claims (4)

  1. (A)下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する、二重結合を持った基をエステル結合を介して側鎖に結合させたポリアミド100質量部、(B)(A)で規定されたポリアミドを溶解する、二重結合を有する25℃で液状のN−ビニルピロリドンと、構造式(3)で示される化合物及びトリアリルイソシアヌレートのいずれかから選ばれる化合物との混合物150〜400質量部、及び(C)ラジカル重合開始剤2〜10質量部を有し、有機溶媒を含有しないことを特徴とする熱硬化性コーティング組成物。
    Figure 0005137347
    〔式中、Xは4価の芳香族基、Yは2価の芳香族基または珪素含有基である。R1 とR2 は、それぞれ独立に、下記式(2)で表される光重合性の不飽和二重結合を有する一価の有機基である。
    Figure 0005137347
    (式中、R3 、R4 、及びR5 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3の有機基であり、pは2〜10の整数である。)〕
    Figure 0005137347
    (式中、R 6 は水素原子またはメチル基、qは1〜20の整数である。)
  2. (C)ラジカル重合開始剤が、その半減期が1分になる温度が90〜140℃であるものと、1分になる温度が150〜300℃であるものの混合物であることを特徴とする請求項に記載の熱硬化性コーティング組成物。
  3. (1)請求項1、2のいずれか1項に記載の熱硬化性コーティング組成物を、半導体のチップの表面に塗布する工程、(2)熱硬化性コーティング組成物からなる塗布層の上面に被接着物を載せる工程、(3)150〜300℃で加熱する工程を含むことを特徴とする半導体チップの接着方法。
  4. (1)請求項1、2のいずれか1項に記載の熱硬化性コーティング組成物を、配線付き基材の金属配線表面に塗布する工程、(2)150〜300℃で加熱する工程を含むことを特徴とする配線付き基材の表面をコーティングする方法。
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