JP5127708B2 - バクテリオファージ及びその使用 - Google Patents

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Description

本発明は、バクテリオファージ及びその使用に関する。特に、本発明はにきびの治療のための組成物中でのその使用に関するが、これに限定されるわけではない。
にきび(Acne Vulgaris)は、皮膚の最も一般的な疾患の1つであり、そして極端に外観を損なう場合は、時として、若者の人格発達に関する深刻な結果を有し、結果として、社会的及び経済的問題を生じる。にきびに罹患した青年は、にきびに罹患していない人と比較して、より高レベルの不安、より大きな社会的抑制、並びに攻撃増大を示す。皮膚疾患の中で、にきびは自殺の原因の第二位である。
にきびは専らヒトの疾患であり、顔面、胸部及び背中のヒト皮脂濾胞の独特の状態である。自発的退行が一般的で、完治まで約15年を要する。しかしながら症例の約5%において、にきびは25歳を過ぎても存続し、40及び50代まで及ぶ。症候が早く始まるほど、疾患の経過は重症になる。疾患の罹患は男性と女性とでの如何なる選択も反映しないが、通常、経過は男性において、より重症である。
個体における疾患の開始は思春期に入るのと一致し、そして皮脂分泌率におけるアンドロゲン駆動性上昇及びアクネ菌(プロピオニバクテリウム・アクネ(Propionibacterium acnes(P. acnes))による皮脂濾胞のコロニー形成増大と関連する。近年のデータは、個体病変の開始は、ケラチン生成細胞の過剰増殖によるというよりむしろ、主に炎症性である、ということを示す。
一般的意見とは反対に、衛生状態及び食生活は、にきびの病因にほとんど又は全く影響を及ぼさない。にきびは、摩擦(生地素材によって引き起こされるにきび(acne mechanica))(Shalita AR (1983) Cosmetics and Toiletries 98: 57-60)及び毛穴目詰まり化粧品(化粧品によるにきび(acne cosmetica))(Mills O.H. & Kilgman A.M. (1988) Dermatol. Clin. 1: 365-370)のような外部因子により悪化され得る。アクネ菌はヒト皮膚の定住菌であり、天然皮膚フローラの主要部分を構成する。疾患の主要因子としてのアクネ菌に関連した多数の状況証拠がある;アクネ菌による皮膚のコロニー形成増大は疾患の開始と関連する;重症にきびを有する患者は正常個体より有意にアクネ菌に対して感作される;患者の全体的免疫学的状態は、同一年齢のにきびに罹患していない個体と比較して、高められる;上首尾の抗生物質治療は、皮膚上のアクネ菌の密度を低減する;そして抗生物質療法の失敗は、患者の皮膚上の抗生物質耐性アクネ菌の存在に関連する。
にきびに関する最新治療は、疾患に寄与する種々の因子に集中している。要するに、抗にきび治療としては、レチノイド及びアゼライン酸(局所治療)及びイソトレチノイン(経口治療)が挙げられる;抗アクネ菌治療としては、ベンゾイルペルオキシド、アゼライン酸、エリスロマイシン、テトラサイクリン、並びにクリンダマイシン(局所治療)及びテトラサイクリン、エリスロマイシン、ミノサイクリン及びトリメトプリム(経口治療)が挙げられる;そして抗炎症治療としては、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン及びニコチンアミド(局所治療)、並びにテトラサイクリン、ミノサイクリン、トリメトプリム及びイソトレチノイン(経口治療)が挙げられる;そして抗脂漏治療としては、スピロノラクトン(局所治療)、並びにダイアネット(商標)及びイソトレチノイン(経口治療)が挙げられる。
にきびのより一般的な軽症及び中等度症例は、通常は局所的に、抗生物質で治療される
。にきびに対する抗生物質の使用を上回って出現する問題が漸増しているが、この場合、治療は長期間、いくつかの症例では2〜3年まで継続する。問題は2つに分けられる。第一に、にきび療法に関するそれらの効能低減という結果を伴う世界的な抗生物質耐性アクネ菌の出現である。第二のそしておそらくはより重要なのは、患者の皮膚上の片利共生的ミクロフローラ、主にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌及びコリネバクテリアにおける抗生物質耐性遺伝子プール漸増の選択である。これらの耐性遺伝子は、関連種、例えば黄色ブドウ球菌(これは病院及び共同体環境における主要な日和見病原体である)に水平移動され得る。したがってにきびの治療に用いられる場合、延長された治療期間に亘って抗生物質の使用を制限するあらゆる努力が必要とされる。にきびのための抗生物質療法を売り込むための認可を得ることは、特に困難になってきている。
これらの治療からの副作用は、ありふれている。軽症刺激性皮膚炎は、事実上すべての局所療法と関連する(Cunliffe W.J., (2001) Pharmaceut. J. 267: 749-752)。抗生物質の経口経過は、それらが処方される状態にかかわらず副作用を有し、これらはしばしば特異性の欠如に起因しており、身体の多数の部位における細菌フローラの多くを(後日)不均衡にする。これは、耐性フローラが繁殖する空間を後に残し、その結果、例えば女性における膣カンジダ症を引き起こす。レチノイド治療は、多数の副作用を有する:それは催奇物質であり;口唇炎、顔面皮膚炎及び結膜炎を引き起こし;二次皮膚感染をもたらし;そして気分変動及びうつ病に関連した。
したがって、アクネ菌を特異的に標的にするにきび療法のための新規の手法を開発する必要がある。
細菌性疾患の治療又は予防のためにバクテリオファージ(天然細菌ウイルス)を用いるという考え方は、1917年にFelix d'Herelleにより、ファージ(「バクテリオファージ」及び「ファージ」という単語は、この明細書全体を通して互換的に用いられる)の発見後、比較的直ぐに実現された。バクテリオファージが細菌宿主に特異的に感染し、迅速にそれを殺害し得るという事実は、これがヒトにおける細菌感染を制御する潜在的に非常に有効な方法である、ということがd'Herelleに示唆された(再検討のためには、"Felix d'Herelle and the Origins of Molecular Biology" William C. Summers (Yale University Press, ISBN 0-300-07127-2)参照)。この可能性は、抗生物質時代の到来のため、決して十分には実現されなかったが、ファージ療法は、それ以来、ソビエト連邦及び東欧の旧国家において、多くの症例で上首尾に遂行されてきた。
薬剤耐性の出現、並びに新規抗生物質開発及び新規ワクチン開発の困難は、治療の代替的方法を見出す必要性が高まっていることを目立たせている。
国際公開番号WO03/080823は、溶原バクテリオファージを突然変異化し、そしてファージのカクテルを産生することにより療法に用いるための候補バクテリオファージを生成する方法を開示する。この開示は、溶原性ファージを特異的に選択し、何らかの細菌に関して、それらが溶菌ファージより多数であり、したがって単離がより容易である、ということを述べている。次に、以下でさらに考察されるように、療法としての溶原性ファージに関連した問題を回避するために、ファージは溶菌性vir突然変異体を産生するように突然変異化されなければならない。アクネ菌の取り扱いが記述されている。
欧州特許第0414304号は、細菌、例えばアクネ菌を殺菌するためのバクテリオファージの使用に関する。アクネ菌の多菌株を溶解することが可能な、そしてさらにアクネ菌でない細菌を溶解することが不可能な、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能なバクテリオファージについての開示はない。
Jong等(Med. Microbiol. Immunol. 161 (1975) 263-271)は、アクネ菌ファージの単離を記載する。該論文は、ファージの分類に集中し、アクネ菌の多菌株を溶解することが可能な、そしてさらにアクネ菌でない細菌を溶解することが不可能な、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能なバクテリオファージについて開示していない。
Puhvel & Reisner(Amer. Soc. Microbiol. 72 (1972) V201)は、アクネ菌の溶原性ファージ耐性菌株の生成に関する要約である。
国際公開番号WO01/51066は、特に免疫無防備状態患者における、感染又は敗血症の危険を低減するためのバクテリオファージの使用に関する。この開示された方法は、免疫無防備状態患者において疾患を引き起こすそれらの機会を低減するために、身体の天然細菌フローラの種々の成員の数的低減又は排除を達成することを目指す。これは、治癒というより特異的な危険の低減であり、特に、ある種の癌、AIDS及び嚢胞性繊維症のような症状を悪化させ、また、移植患者の状態を悪化させる感染に関する。アクネ菌の治療についての記述はなされていない。
米国特許第6121036号は、少なくとも2つのファージを含有する精製宿主特異的非毒性広宿主範囲バクテリオファージ調製物に関する。当該文献は、有効的なファージ療法の特徴のうちのいくつか(即ちそれは、安全であり、広範な宿主範囲を有し、そして大部分の細菌株を殺菌すべきである)を記載し、そして適切なファージのこのような調製物を用いて、アクネ菌感染を治療し得た、ということを示す。しかしながら、ファージがこの目的に適切であるか否か、或いはこのような安全な、溶菌性の、広範な宿主範囲のファージがアクネ菌のために存在することについての開示はなされていない。
国際公開番号WO02/07742は、異なる宿主特異性を有する別のファージからのテイル(tail:尾部)タンパク質コード遺伝子をクローニングすることにより、ファージに関するより広い宿主範囲を強化する方法を開示することを意図としている。当該文献は、ファージ療法の見地から広範な特異性が望ましいということを示すが、天然ファージ変異体から選択するというよりむしろ、二重のテイルファイバー型を有する、したがって対応する二重宿主特異性を有するハイブリッドバクテリオファージの合成構築物を記載している。この特異性は、仮定的に、異なる種菌株だけでなく、一種内のそして異なる属内でも異なる細菌に感染する可能性があるファージの工学処理に本発明を適用するように拡大される。しかしながら、大腸菌の2つの異なる菌株に感染する能力を有するハイブリッドファージが作製された、ということを示す結果を超える、この可能性に関する証拠はない。ヒトにおける遺伝子療法のために適切に修飾されたファージの適用も意図される。にきびの治療のための特定ファージ(修飾又は非修飾の)は開示されていない。単一宿主種特異性を有するが、多菌株特異性を有するアクネ菌バクテリオファージについての記述はない。
米国特許公開番号2005/0032036は、特にシュードモナス(Pseudomonas)及びブドウ球菌株についての言及において、広宿主範囲感染及び溶解を最適化するために、ファージコレクションにより分類し、そしてファージカクテルの組成を確定する方法を記載している。にきびファージ療法の分野に関連した開示はなされていない。
国際公開番号WO2005/009451は、特に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染の治療における、そして特にバイオフィルム内の細菌の治療における、特に伝統的化学抗生物質との組合せ療法の一部としてのバクテリオファージの使用に関する。それは、任意の所定の感染の治療のための療法的価値を有するのに十分に広い宿主特異性を有するファージを見出すことの難しさを記載しており、同時的であれ、別々であれ、逐次的であれ、療法のための多バクテリオファージ型の使用を主張している。当該文献はまた、より
広範な特異性又はより大きな感染能力を有するファージを産生するための遺伝子操作法により、ファージにおけるより大きな毒性が人工的に誘導され得る、ということも示す。バイオフィルム形成を特徴としないアクネ菌についての記述はない。
米国特許公開番号2004/0241825は、バクテリオファージを遺伝子標識し(例えばPCRにより検出されて、ファージの同定を可能にし得るDNAの非機能的伸長による)、非交差反応バクテリオファージを同定する(標的宿主に対するファージを単離し、そしてこれから、非病原性、非標的宿主の5%より多くに感染しないバクテリオファージを単離するための多段階プロセス)ためのいくつかの方法、及び、最後に、宿主細菌による遺伝子修飾に対して耐性であるファージを選択するための方法(バクテリオファージの一試料で細菌に感染し、子孫ファージを単離し、元のバクテリオファージと子孫の制限消化パターンを比較して、遺伝子修飾を示す任意の差異を同定することを包含する)を開示している。この開示中に包含されるのは、一療法に用いるのに適した候補バクテリオファージを同定するに際しての難しさである。アクネ菌へのこの方法の応用は記載されていない。
セントラルコネチカット州立大学のMichael Davisの研究グループによるいくつかの会議の発表は、広宿主範囲特異性を有する溶菌性ファージを同定するための計画を略記している(Vieira T. and Davis M.A. (1999) Viruses as Therapeutic Agents for Treating
Bacterial Infections. Poster presentation on April 24, 1999 at the 53rd Annual Eastern Colleges Science Conference, Sacred Heart University, Fairfield CT;Jedrzkiewicz B. and Davis M.A. (2000) Combating the Antibiotic Resistance Crisis: Therapeutic Use of Bacteriophages (Viruses) for Treating Acne, A Bacterial Disease. Poster presentation on April 1, 2000 at the 54th Annual Eastern Colleges Science Conference, Wagner College, Staten Island NY;Hany C. et al., (2001) The Use of Bacteriophage to Treat Acne, A Bacterial Disease. Poster presentation on March 31, 2001 at the 55th Annual Eastern Colleges Science Conference, Wilkes University, Wilkes-Barre PA;Armack S. et al. (2002) Bacteriophage Therapy For The Treatment Of The Bacterial Disease Acne. Poster presentation on April 27, 2002 at the 56th Annual Eastern Colleges Science Conference, Niagara University, Niagara NY;Aminti K. et al. (2003) Bacteriophage Therapy For The Disease Acne: Identification And Purification Of Candidate Bacteriophage. Poster presentation on April
12, 2003 at the 57th Annual Eastern Colleges Science Conference, Ithaca College, Ithaca NY;Geronimo J. et al (2004) Bacteriophage Therapy For the Skin Disease
Acne. Poster presentation on April 2, 2004 at the 58th Annual Eastern Colleges Science Conference, Manhattan College, Riverdale NY)。このようなファージの特異的特性に、又は特異的ファージ単離物に関連した開示はなされていない。
本発明の第一の態様によれば、アクネ菌を溶解することが可能な、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能な、並びに細菌中で溶原性を維持することが不可能なバクテリオファージが提供される。
このようなファージは、1つの種内の広範囲の細菌株に感染する能力を有するが、絶対的種特異性を有する。これは、有効的なファージ療法の開発における最も重要な、そして通常は達成不可能な目標の1つである。さらに、本発明によるバクテリオファージは純粋に溶菌性であり、即ち、静止期にはバクテリオファージ生活環の溶原期に入ることができない。バクテリオファージの溶原期は有効的な療法の作成においては望ましくなく、そして調節的観点からも許容可能でない。
有益には、このようなバクテリオファージは、にきびの治療に用いられ得る。全身的に送達されるか、経口的か又は局所的に送達されるかにかかわらず、ファージ療法の使用において、副作用は報告されていないし、又は予測されない。バクテリオファージはアクネ菌に対して特異的であり、したがって影響を受けていない皮膚フローラの他の成員を残して、潜在的に有害なフローラの過剰増殖の機会を低減する。したがって正常常在ミクロフローラの防御性は保持される。にきびの治療へのファージ療法手法の特異性は、ミクロフローラの他の成員に現れる薬剤耐性の可能性も排除する。他の抗菌治療は、細菌を排除する広範な筆触(brush stroke)手法を提供し、したがって適切な条件下で、アクネ菌においてだけでなく、病原性能力を有するその他の重要な共生生物、例えば黄色ブドウ球菌においても薬剤耐性を発現する機会を提供する。バクテリオファージ治療のさらなる利点は、それが自己調節性であるという点であり、宿主アクネ菌細胞の集団が減少するにつれ、バクテリオファージ数は低減する。さらに、このようなバクテリオファージは一般的な予防手段として用いられる。非処方化粧品(例えば洗顔料等)中の抗生物質の使用は、安全性及び抗生物質耐性の問題に関する多くの理由のために望ましくない。実際、耐性の発生を低減するための抗生物質の使用を制限するための強力な議論が存在する。バクテリオファージの特異性は、それがこれらの状況に広範に用いるのに適しており、そしてにきびの予防のための一般的な衛生状態の常套手段の一部として用いられ得るということを意味する。さらに、バクテリオファージの使用は、抗生物質に対して耐性になった細菌株に対してさえ有効であり得る。
上記のように、アクネ菌を溶解することが可能であるが、溶原性を維持することが不可能なバクテリオファージの使用は、バクテリオファージが細菌内で休眠中であり得ないという利点を有し、細菌を溶解し、それゆえ細菌を死滅させるに違いない。
好ましくはバクテリオファージは、溶原性を維持するために必要な少なくとも1つの遺伝子を発現する能力を欠く。「発現する能力を欠く」という用語は、例えば1つ又は複数の点突然変異或いはゲノムの全体的又は部分的欠失の結果として、バクテリオファージが溶原性を維持するために必要な十分に機能的なタンパク質産物を産生する能力を欠くということを示すように意図される。さらに好ましくはファージは、溶原性を維持するために必要な少なくとも1つの遺伝子の全部又は一部を欠くゲノムを有する。代替的には、又は付加的には、ファージは、それにもかかわらず、溶原性を維持するファージの能力に影響を及ぼし得る非コード領域におけるゲノムに欠陥(例えば突然変異、挿入又は欠失)をもち、これらは例えばゲノム組込み部位(一箇所又は複数個所)(例えば/att/部位)における、又はレプレッサー結合部位における欠陥で有り得る。ファージは、好ましくは天然であり、そして単離され、人工突然変異がバクテリオファージに導入される必要がないという付加的利点を有する。このような突然変異は、除外される一方、バクテリオファージが投与される個体に有害であり得る潜在的に未知の結果を有し得る。ファージが人工突然変異を含有するか、又はそうでなければ天然でない場合、ファージは単離状態で得られることがさらに好ましい。
好ましい実施形態では、本発明のこの態様によるバクテリオファージは、アクネ菌の複数の菌株を溶解することが可能である。例えば本発明のこの態様によるバクテリオファージは、アクネ菌の5菌株、好ましくは少なくとも10菌株、さらに好ましくは少なくとも16菌株又は少なくとも17菌株、又は少なくとも18菌株、又は少なくとも19菌株、又は少なくとも20菌株を溶解し得ることが可能である。最も好ましくは、バクテリオファージは少なくとも21菌株を溶解することが可能である。
好ましくは、本発明のこの態様によるバクテリオファージは、単離され、本明細書中に
後述されるように特徴付けられるファージから選択される:103609;103672及び1894。
バクテリオファージの以下の単離物は、ブダペスト条約の条項下で、産業、海洋、及び食品の細菌の国立コレクション(The National Collection of Industrial, Marine and Food Bacteria)(NCIMB)(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, United Kingdom)に、以下の寄託番号で寄託されている:寄託番号NCIMB 41332(単離物PA6);寄託番号NCIMB 41334(単離物1874);寄託番号NCIMB 41333(単離物1878);寄託番号NCIMB 41335(単離物1905);寄託番号NCIMB 41349(単離物1894);寄託番号NCIMB 41350(単離物103609);寄託番号NCIMB 41351(単離物103672)。宿主細菌アクネ菌AT1も、NCIMB 41336として寄託された。
バクテリオファージは、配列番号3のDNA配列を含むゲノム、又は配列番号3のDNA配列と少なくとも87%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも88%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するゲノムを有し得る。代替的には又はさらに、バクテリオファージは、配列番号3のDNA配列の機能的断片を含むゲノムを有し得る。例えば機能的断片は、図2に示したオープンリーディングフレーム内から選択され得る。代替的には、機能的断片は、図6のDNA配列と少なくとも95%の配列同一性、好ましくはその配列と少なくとも96%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも97%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列を含み得る。好ましい一実施形態では、機能的断片は、図6のDNA配列を含む。
代替的には、バクテリオファージは、配列番号4のDNA配列を含むゲノム、又は配列番号4のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも89%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するゲノムを有し得る。代替的には又はさらに、バクテリオファージは、配列番号4のDNA配列の機能的断片を含むゲノムを有し得る。例えば機能的断片は、図3に示したオープンリーディングフレーム内から選択され得る。代替的には、機能的断片は、配列番号7のDNA配列と少なくとも95%の配列同一性、好ましくはその配列と少なくとも96%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも97%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列を含み得る。好ましい一実施形態では、機能的断片は、配列番号7のDNA配列を含む。
さらなる代替物では、バクテリオファージは、配列番号5のDNA配列を含むゲノム、又は配列番号5のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも89%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するゲノムを有し得る。代替的には又はさらに、バクテリオファージは、配列番号5のDNA配列の機能的断片を含むゲノムを有し得る。例えば機能的断片は、図4に示したオープンリーディングフレーム内から選択され得る。代替的には、機能的断片は、配列番号8のDNA配列と少なくとも95%の配列同一性、好ましくはその配列と少なくとも96%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも97%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列を含み得る。好ましい一実施形態では、機能的断片は、配列番号8のDNA配
列を含む。
代替的には、又は付加的には、機能的断片は、
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF1と少なくとも63%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF2と少なくとも91%、95%、又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF3と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF4と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF5と少なくとも89%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF6と少なくとも92%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF7と少なくとも96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF8と少なくとも94%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF9と少なくとも95%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF10と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF11と少なくとも93%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF12と少なくとも97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF13と少なくとも99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF14と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF15と少なくとも93%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF16と少なくとも94%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF17と少なくとも97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF18と少なくとも67%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF19と少なくとも80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF20と少なくとも88%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF21と少なくとも86%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF22と少なくとも97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF23と少なくとも98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF24と少なくとも93%、95%又
は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF25と少なくとも87%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF26と少なくとも63%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF27と少なくとも80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF28と少なくとも78%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF29と少なくとも66%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;及び/又は
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF30と少なくとも87%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列
のうちの1つ又は複数のDNA配列を含み得る。
好ましくは機能的断片は、配列番号3、配列番号4及び配列番号5のすべての間に保存されるDNA配列を含む。
バクテリオファージは、寄託番号NCIMB 41349で寄託されたバクテリオファージのゲノムと少なくとも88%の配列同一性、好ましくは少なくとも89%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するゲノムを有し得る。
バクテリオファージは、寄託番号NCIMB 41350で寄託されたバクテリオファージのゲノムと少なくとも87%の配列同一性、好ましくは少なくとも88%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するゲノムを有し得る。
バクテリオファージは、寄託番号NCIMB 41351で寄託されたバクテリオファージのゲノムと少なくとも88%の配列同一性、好ましくは少なくとも89%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するゲノムを有し得る。
「配列同一性」という用語は、本明細書中で用いる場合、2つの配列の大きい方にも見出され得るものと比較される2つの配列の小さい方に存在するヌクレオチドのパーセンテージとして算定され、ヌクレオチドは、好ましくは、両配列中で同一順序で整列される。例えばデフォルトのパラメーター設定を用いて、Blast分析ツール(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)の使用により、配列間の配列同一性のレベルを当業者は容易に確定し得る。好ましくは比較されている2つの配列の短い方の長さは、2つの配列の長い方の長さの少なくとも60%、さらに好ましくはその長さの少なくとも70%、さらに好ましくはその長さの少なくとも80%、さらに好ましくはその長さの少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%である。最も好ましい実施形態では、比較される配列は同一長である。
「機能的断片」という用語は、本明細書中で用いる場合、全長配列自体と実質的に同一の機能性を有する全長配列の一部分を示す。例えば、バクテリオファージゲノムの機能的断片が参照される場合、これは、断片が、バクテリオファージ中に含有されると、本発明によるバクテリオファージ、即ちアクネ菌を溶解することが可能な、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能なバクテリオファージであって、細菌中で溶原性を維持することが不可能なバクテリオファージを生じるということを示す。好ましくは機能
的断片のサイズは、全長配列のサイズの少なくとも30%、さらに好ましくはそのサイズの少なくとも40%、さらに好ましくはそのサイズの少なくとも50%、さらに好ましくはそのサイズの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%又は95%である。
好ましい一実施形態では、バクテリオファージは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13で示されるヌクレオチド配列のうちの1つ又は複数を含まないゲノムを有する。理論に束縛されるものではないが、本発明によるバクテリオファージの特性(即ちバクテリオファージはアクネ菌を溶解することが可能であり、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能であり、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能である)は、バクテリオファージのゲノム由来のこれらの配列のうちの1つ又は複数が存在しないことに関連し得る。
好ましくはバクテリオファージは単離され、そして103609、103672及び1894として特徴付けられる本明細書中のものから選択される。
本発明の第一の態様によるバクテリオファージは、マーカー分子を含むように修飾され得る。「マーカー分子」という用語は、本明細書中で用いる場合、ビオチン、his−タグ又は、例えばバクテリオファージを単離するために使用可能な抗体のように結合相手により認識可能な標識と言ったマーカー又はタグを包含するよう意図されるがこれらに限定されない。アフィニティー精製法に用いるのに適したマーカーとしては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、ScFv及びレクチンが挙げられる。バクテリオファージの他の修飾は、例えばPEG(ポリエチレングリコール)接合体又はポリシアル酸接合体の使用を含めた、ファージの抗原性を低減するために為され得る。修飾は、細菌宿主に対するファージの致死性を増強する分子の付加も包含する。例は、Westwater C. et al. (2003)(Antimicrob. Agents Chemotherapeutics 47: 1301-1307)で与えられている。その他の適切なマーカー及び修飾は、当業者に既知である。マーカー分子はDNAレベルで組み込まれ得るか、又はファージ表面に化学的に付着され得る。
本発明の第二の態様によれば、本発明の第一の態様によるバクテリオファージのゲノムのヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチドが提供される。代替的には、又は付加的には、ポリヌクレオチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5又はその相補的配列のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得るか、又は配列番号3、配列番号4又は配列番号5のうちのいずれか1つのDNA配列の機能的断片を含み得る。バクテリオファージが本発明の第二の態様によるポリヌクレオチドを含む場合、それは本発明の第一の態様によるバクテリオファージの特性を有する。
好ましくはポリヌクレオチドは、配列番号3のDNA配列と少なくとも87%の配列同一性、好ましくはその配列と少なくとも88%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
代替的な好ましい一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号4のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性、好ましくはその配列と少なくとも89%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
さらなる代替的な好ましい一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性、好ましくはその配列と少なくとも89%の配列同一性、さらに好ましくはその配列と少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくはその配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
機能的断片は、図2、図3又は図4のいずれかに示されたオープンリーディングフレーム(ORF)、即ち(それぞれ)配列番号3、配列番号4又は配列番号5内のORFのうちの1つ又は複数から選択され、この境界は、以下の表5で定義される。代替的には、機能的断片は、配列番号6、配列番号7及び配列番号8から選択されるDNA配列のうちのいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、好ましくはそれらの配列のいずれか1つと少なくとも96%の配列同一性、さらに好ましくはそれらの配列のいずれか1つと少なくとも97%の配列同一性、最も好ましくはそれらの配列のうちのいずれか1つと少なくとも98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列を含み得る。さらに好ましい一実施形態では、機能的断片は、配列番号6、配列番号7又は配列番号8のDNA配列を含む。
代替的には、又は付加的には、機能的断片は、
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF1と少なくとも63%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF2と少なくとも91%、95%、又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF3と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF4と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF5と少なくとも89%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF6と少なくとも92%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF7と少なくとも96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF8と少なくとも94%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF9と少なくとも95%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF10と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF11と少なくとも93%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF12と少なくとも97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF13と少なくとも99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF14と少なくとも91%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF15と少なくとも93%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF16と少なくとも94%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF17と少なくとも97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF18と少なくとも67%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF19と少なくとも80%、90%、
95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF20と少なくとも88%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF21と少なくとも86%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF22と少なくとも97%、98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF23と少なくとも98%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF24と少なくとも93%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF25と少なくとも87%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF26と少なくとも63%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF27と少なくとも80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF28と少なくとも78%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF29と少なくとも66%、70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列;及び/又は
配列番号3、配列番号4、又は配列番号5のORF30と少なくとも87%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するDNA配列
のうちの1つ又は複数のDNA配列を含み得る。
ポリヌクレオチドは、図2、図3又は図4のいずれかに示されたオープンリーディングフレームのうちの1つ又は複数を含み得る。
好ましくはポリヌクレオチドは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13で示される配列のうちの1つ又は複数を含まない核酸配列を有する。理論に拘束されるものではないが、本発明の第二の態様によるポリヌクレオチドを含有するバクテリオファージの特性(即ちバクテリオファージはアクネ菌を溶解することが可能であり、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能であり、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能である)は、本発明の第二の態様によるポリヌクレオチド由来のこれらの配列のうちの1つ又は複数が存在しないことに関連し得る。
ポリヌクレオチドはさらに、マーカー分子をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
本発明の第三の態様によれば、本発明の第二の態様によるポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドが提供される。
本発明の第四の態様によれば、本発明の第一の態様による少なくとも1つのバクテリオファージ及びアジュバント、担体又はビヒクルを含む組成物が提供される。
好ましくは組成物は、にきびの予防又は治療に用いるため、又は哺乳類(好ましくはヒト)の外観を改善するために用いるためのものであり、バクテリオファージは有効量で存在する。
「治療」(及び「治療すること」、「治療する」等の同義語)という用語は、本明細書中で用いる場合、にきびの症候の発生の低減又は排除を示すように意図される。例えば症
候は、顔面上の可視的な印、例えば丘疹(直径5mm未満の小隆起紅斑)、浅在性膿疱及び深在性病変(直径5mmより大きい結節及び膿疱)を包含する。深在性病変は、瘢痕をもたらし得る。
組成物は、好ましくはバクテリオファージの2つ以上の異なる単離物を含む。バクテリオファージの2つ以上の単離物の各々は、本発明の第一の態様によるバクテリオファージであり得る。
付加的には、又は代替的には、組成物は、本発明の第二の態様による単離ポリヌクレオチド又は本発明の第三の態様による単離ポリペプチドを含み得る。組成物が、にきびの予防若しくは治療のため、又は哺乳類(好ましくはヒト)の外観を改善するために用いる場合、単離ポリヌクレオチド及び/又は単離ポリペプチドは有効量で存在する。
組成物は、経口投与、静脈内投与又は局所投与に適した形態であり得る。例えば組成物は、経口投与に適した形態であり得るし、そして液体、粉末又は錠剤であり得る。代替的には組成物は、静脈内投与に適した形態であり得るし、そして液体又は液体中に溶解可能な固体であり得る。さらに代替的には、組成物は局所投与に適した形態であり得るし、そしてクリーム、溶液、粉末、スプレー、エーロゾル、カプセル、固体又はゲルの形態であり得るか、又は固体表面に結合され得る。組成物はまた、洗顔料、石鹸、塗布スティック、化粧品または包剤の一部を構成し得る。
組成物中に含有される本発明によるバクテリオファージ、ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、リポソーム、カプセル、担体粒子、又は実際は、組成物内の別個の微小環境中にバクテリオファージ、ポリヌクレオチド若しくはポリペプチドを保持する任意のその他の方法内又はその一部であり得る。代替的には、バクテリオファージ、ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、組成物に直接的に付加され、例えばバクテリオファージは凍結乾燥形態で付加され得る。
本発明のこの態様による組成物は、抗生物質、抗にきび薬、抗アクネ菌薬、抗炎症薬及び抗脂漏薬から選択される少なくとも1つのさらなる作用物質を含み得る。
組成物は、薬学的組成物又は化粧品組成物であり得る。
本発明の第五の態様によれば、にきびの予防又は治療のための薬剤の調製における本発明の第一の態様による少なくとも1つのバクテリオファージの使用が提供される。
薬剤は、バクテリオファージの2つ以上の異なる単離物を含み得る。バクテリオファージの2つ以上の単離物の各々は、本発明の第一の態様によるバクテリオファージであり得る。付加的には、又は代替的には、薬剤は、本発明の第二の態様による単離ポリヌクレオチド又は本発明の第三の態様による単離ポリペプチドを含み得る。薬剤は、抗生物質、抗にきび薬、抗アクネ菌薬、抗炎症薬及び抗脂漏薬から選択される少なくとも1つのさらなる作用物質を含み得る。
薬剤は、経口投与、静脈内投与又は局所投与に適した形態であり得る。例えば薬剤は、経口投与に適した形態であり得るし、そして液体、粉末又は錠剤であり得る。代替的には薬剤は、静脈内投与に適した形態で有り得るし、そして液体又は液体中に溶解可能な固体であり得る。さらに代替的には、薬剤は局所投与に適した形態であり得るし、そしてクリーム、溶液、粉末、スプレー、エーロゾル、カプセル、固体又はゲルの形態であり得るか、又は固体表面に結合され得る。薬剤はまた、洗顔料、石鹸、塗布スティック、化粧品、包帯の一部を構成し得る。
本発明の第六の態様によれば、にきびを予防又は治療する方法であって、有効量の本発明の第一の態様による少なくとも1つのバクテリオファージ及び/又は有効量の本発明の第二の態様による単離ポリヌクレオチド及び/又は有効量の本発明の第三の態様による単離ポリペプチド及び/又は有効量の本発明の第四の態様による組成物をこのような予防又は治療を必要とする個体に投与することを包含する方法が提供される。
本発明の第七の態様によれば、個体の外観を改善する方法であって、有効量の本発明の第一の態様によるバクテリオファージ及び/又は有効量の本発明の第二の態様による単離ポリヌクレオチド及び/又は有効量の本発明の第三の態様による単離ポリペプチド及び/又は有効量の本発明の第四の態様による組成物を個体に投与することを包含する方法が提供される。好ましくは個体は、ヒト個体である。方法は、非治療性化粧方法である。
本発明の第八の態様によれば、アクネ菌を溶解することが可能な、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能な、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能なバクテリオファージを単離する方法であって、以下の:
a)皮膚表面から細菌の試料を獲得すること、
b)プロピオニバクテリアを溶解するバクテリオファージを試料から単離すること、
c)バクテリオファージを単離して、当該バクテリオファージが少なくとも1つのアクネ菌株を溶解することが可能か否かを判定すること、
d)バクテリオファージを試験して、当該バクテリオファージが非アクネ菌株を溶解することが可能か否かを判定すること、
e)バクテリオファージを試験して、当該バクテリオファージがアクネ菌株中で溶原性を維持することが可能か否かを判定すること、及び
f)工程(c)、工程(d)及び工程(e)においてアクネ菌を溶解することが可能であり、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能であり、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能であることが示されたバクテリオファージを検出すること
を包含する方法が提供される。
本発明の第九の態様によれば、アクネ菌を溶解することが可能な、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能な、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能なバクテリオファージを同定する方法であって、以下の:
a)アクネ菌をバクテリオファージに曝露し、且つ、細菌が溶解されることを確定すること、
b)アクネ菌でない細菌のうちの少なくとも1つの種をバクテリオファージに曝露し、且つ、細菌が溶解されないことを確定すること、及び
c)バクテリオファージが細菌中で溶原性を維持することが不可能であることを確定すること
を包含する方法が提供される。
好ましくは、工程(b)では、アクネ菌でない細菌の少なくとも3つの種、さらに好ましくは少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個又は少なくとも50個の異なる細菌株が、バクテリオファージに曝露される。
本発明の第十の態様によれば、本発明の第八の態様又は本発明の第九の態様による方法を用いて単離されるか又は同定されるバクテリオファージが提供される。
本発明の第十一の態様によれば、本発明の第八の態様又は本発明の第九の態様による方
法を用いることにより獲得されるか又は同定されるバクテリオファージが提供される。
これより、本発明の実施形態が添付の図1〜図8を参照して例示目的で記載される。
実験材料及び方法
1. 材料
強化クロストリジウム寒天(RCA;Oxoid CM151(Oxoid Ltd., Basingstoke, UK))
TYG培養液(1%(w/v)トリプトン(Oxoid L42);0.5%(w/v)酵母抽出物(Oxoid L21);0.25%(w/v)グルコース)
トップアガロース(100mlのdH2Oに加え、加熱、融解し、45℃に冷却し、3ml容積に分注し、オートクレーブ処理する0.7gの低融点アガロース)
SM緩衝液(500mlのdH2O中に溶解し、オートクレーブ処理する、2.92gのNaCl;1gのMgSO4・7H2O;25mlの1Mトリス−Cl(pH7.5);0.05gのゼラチン)
2.バクテリオファージ及び細菌コレクション
2.1 試料採取方法
Leeds General Infirmaryの皮膚科に通院している患者から、スクリーニングに用いられるアクネ菌の菌株及びファージ単離物を得た(アクネ菌NCTC737及びDSM16379を除く)。この方法は、Williamson P. & Kligman A.M. (1965) (J. Invest. Dermatol. 45: 498-503)に記載された方法を基礎にしている。
a)皮膚の表面に滅菌金属環を載せ、くっきりと跡が残る位しっかり押し付ける;
b)環中に洗浄液(75mMリン酸緩衝液(pH7.9))1mlをピペット注入する;
c)滅菌テフロン棒で1分間、皮膚の表面を穏やかに擦る;
d)この洗浄液を滅菌ボトルに移し取り、別の1mlの滅菌洗浄液と取り替える;
e)擦り手順を反復し、次に洗浄液を取り出して、最初の試料とともにプールする;
f)6μg/mlのフラゾリドン(ブドウ球菌の増殖を阻害するが、プロピオニバクテリアの増殖を阻害しない)を含有するRCA上に試料の連続希釈液をプレート化(又はスパイラルプレート)を行い、34℃で7日間、嫌気的にインキュベートする;
g)個々の細菌コロニー又はバクテリオファージプラークを回収し(下記の方法2.2を用いて)、そしてバクテリオファージプラークに関して再画線(細菌)又は下記の方法(「ファージストックの調製−溶解物」)により増殖する。
2.2 ファージストックの調製−プラーク選定
a)上記のようにファージ含有細菌をプレート化し、24〜48時間インキュベートする;
b)ガラス製パスツールピペットを用いて、ねじ蓋付きバイアル中の1mlのSM緩衝液中に単一プラークからの寒天の2〜3個のプラグを選定する;
c)4℃で保存する。
2.3 ファージストックの調製−溶解物
a)上記のようにファージ含有細菌をプレート化し、24〜48時間インキュベートする;
b)5mlのSM緩衝液をプレートの上に載せ、時々かき回しながら室温で1時間放置する;
c)滅菌チューブ(プラスチック製一般的チューブ又はファルコンチューブ)中に緩衝液をピペット注入し、次にトップアガロースをプレートから擦り取ってチューブ中に入
れる;
d)4℃で10分間、5000rpm超で遠心分離する;
e)上清を取り出して、滅菌濾過(0.2μmフィルター)する;
f)分取して、4℃で保存する。
3. 宿主範囲試験
3.1 アクネ菌バクテリオファージのプレート化
a)70℃水浴中でトップアガロースを融解し、次に44℃に冷却する;
b)卓上型遠心分離機中で10分間、5000rpmでアクネ菌の培養物を遠心分離する;
c)SM緩衝液中でOD600が2.5になるまで細胞を再懸濁する;
d)微小遠心分離管中のファージの分取液(通常5〜10μl)にアクネ菌100μlを付加し、簡単に混合して、次に34℃で15分間インキュベートする;
e)3mlのトップアガロース中にアクネ菌/ファージ混合物を静かにピペット注入して、反転混合する;
f)乾燥RCAプレート上に注いで、回して表面を被覆する;
g)凝固させて、34℃で24〜48時間、嫌気的にインキュベートする。
3.2 アクネ菌バクテリオファージ感染性検定
a)70℃湯浴中でトップアガロースを融解し、次に44℃に冷却する;
b)卓上型遠心分離機中により5000rpmで10分間、アクネ菌の培養物を遠心分離する;
c)SM緩衝液中でOD600が2.5になるまで細胞を再懸濁する;
d)3mlのトップアガロースにアクネ菌100μlを付加し、振盪して混合する;
e)乾燥RCAプレート上に注いで、かき回して表面を被覆する;
f)アガロースを凝固させて、次にプレートを再び15〜20分間乾燥させる;
g)プレート上に5μlの各ファージをスポッティングする;
h)スポットを吸込ませて、34℃で48時間、嫌気的にインキュベートする。
ファージのハイスループットスクリーニングのために、マルチポイント・イノキュレーターを用いて、プレートの表面にファージスポットを塗布し得る。
3.3 他の非アクネ菌種に対するバクテリオファージの感染性検定
上記の方法を用い、アクネ菌を他の種と置き換えて、細菌の他の種に対してもバクテリオファージ株を試験した。試験した細菌種は、プロピオニバクテリウム・グラヌロサム(Proplonibacterium granulosum)、プロピオニバクテリウム・アビダム(Proplonibacterium avidum)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)及びコリネバクテリウム・ボビス(Corynebacterium bovis)であった。
3.4 ボランティアの皮膚から単離直後のアクネ菌に及ぼすバクテリオファージ103672の感染性検定
ボランティアの背中上の天然アクネ菌数は、約106cfu/cm2(「cfu」は「コロニー形成単位」を意味する)であることが既知であった。スクラブ・ウォッシュ試料を、上記方法2.1に記述したようにボランティアの背中から採取した。小分画を取って、開始アクネ菌数(105cfu/cm2)を確定した。アクネ菌を増殖させるために、残りの試料に対し、2×TYG培養液が1:2になるように希釈した(1×最終TYG濃度)。次にこれをTYG中でさらに希釈して、1(原液)〜10-3の範囲の10倍希釈液を得た。各希釈の2つの試料を分取して、6:1のファージ:細胞比でファージ103672を一方に付加し(最終濃度106pfu/ml、「pfu」は「プラーク形成単位」を意味する)、そして対照としてSMを他方に付加した。次にこれらを、34℃で48時間、
嫌気的にインキュベートした。
インキュベーション後、各試料を1〜10-2まで10倍希釈し、濾過して、10mM硫酸アンモニウム第一鉄(FAS)(これは、遊離ファージを不活性化し得る、この状況では、遊離ファージの繰越し(擬陽性結果を生じ得る)を防止するために用いられる化合物)で処理した。フィルターをRCA+フラゾリドンプレート(RCAF)上でプレート化し、34℃で6日間、嫌気的にインキュベートした。この期間の終了時に、フィルター上のコロニー数を計数することによりコロニー形成単位数(/cm3)を確定し、この数字を用いて、元の未希釈試料中のcfuを算定した。
4. 非溶原性アクネ菌バクテリオファージの同定
以下のように、バクテリオファージを溶原性及び重複感染免疫試験に付した。ファージをアクネ菌AT1の層上にスポッティングしてプラークを生じ、これらを、プラーク内の細菌の増殖を可能にするのに十分な時間インキュベートし、このような細菌は、ファージ感染に対する耐性を発現した。耐性は、細菌細胞の表面(例えば受容体)上の変化により、又は内部的に(例えば制限酵素により)発現し得る。しかしながら溶原性は、「重複感染免疫」と呼ばれるプロセスで関連ファージに耐性を付与する。リソゲンにより発現されるレプレッサータンパク質は、取り込みファージが増殖に必要なタンパク質を合成するのを阻止する。レプレッサータンパク質は、細胞中に移入する任意の相同ファージDNAに対して同一機能を正確に遂行して、同様にファージの産生を阻止する。これは、レプレッサーが結合し得るように、移入DNAがリソゲンに関連する場合にのみ起こる。
混濁プラークの中央を選定し、画線して、ファージ(溶原性であり得るし、そうでないこともある)による感染に対して明らかに耐性である細菌の単一コロニーを得た。この段階で、上記の耐性のメカニズムが獲得されていたか否かを知る方法はなかった。単一コロニーを選定し、トリプトン/酵母抽出物/グルコース(TYG)培養液中で増殖させた後、強化クロストリジウム(RCA)プレート上のトップアガロース中のマット状の層としてプレート化した。第一に、自発性プラーク形成を同定したが、これは、溶原性ファージによる初期感染の結果としてのファージ溶原性を示した。第二に、ファージを層上にスポッティングして、溶原性及び/又は耐性の指標である同一又は他のファージに対する重複感染免疫を調べたが、これは、細菌が特定ファージによる感染に対して免疫性でない限りプラークを形成するためであった。上記のように、それらが同一ファージ単離物による反復感染に対して免疫性である場合、これは、細胞中の溶原性ファージ中のこのファージの存在を示唆する。同様に、それらが別のファージ単離物による感染に対して免疫性である場合、これは、細胞中の溶原性ファージ中の第一のファージの存在を示唆する。このような溶原性を示さないファージは、本発明の実施態様に用いるのに適しているとみなされる。
ファージが溶原性になり得るか否かを同定する代替的方法は、例えばファージレプレッサーDNAに対して特異的なプライマーを用いるPCR検出であり、この場合、陽性PCR結果は、ファージレプレッサーDNAの存在、したがって問題となるバクテリオファージが溶原性になる能力を有したことを示す。レプレッサー遺伝子の非存在は溶原性を回避する一方法であるが、溶原性ファージを溶菌性ファージに変換する他の欠失としては、組込み機構の他の部分を除去する任意のもの、即ちファージでコードされたインテグラーゼタンパク質、並びに宿主DNA中への挿入(att部位)のために必要とされるDNA配列が挙げられる。これらの遺伝子又は部位を不活性化する任意の種類のエラー(error)は、所望の溶菌性ファージの表現型、例えば遺伝子/部位の全体的又は部分的除去、並びに機能的不活性化点突然変異(一箇所又は複数)を達成する。代替的には、PCRベースの方法は、対象のバクテリオファージに曝露された細胞中のライゲーションしたcos部位を検出し得る。別の方法は、標識ファージDNAを用いて細菌ゲノム中のリソゲンをプ
ローブするサザンブロッティングである。これらの及びその他のこのような方法は、容易に当業者の能力内であって、当業者等は、ファージが溶原性になり得るか否か、したがってそれが本発明の範囲内であるか否かを確実に同定するために、このような方法にどのように接近するかを明らかに理解している。
5. DNAシーケンシング
以下の方法を用いて、バクテリオファージDNAを抽出し、精製した:
a)ファージのプレート溶解物を調製する(10ml)
b)NaClを1Mになるまで、そしてPEG8000を10%(w/v)になるまで付加して、徐々に溶解する
c)氷上で30分間インキュベートして、ファージを沈殿させる
d)4℃で10分間、10,000gで遠心分離することにより、ファージを回収する
e)1mlのSM緩衝液中に再懸濁する
f)等容積のクロロホルムを付加し、30秒間ボルテックスする
g)4℃で15分間、3000gで遠心分離する
h)ファージを含有する上層を滅菌チューブに取り出す
i)プロテイナーゼKを50μg/mlになるまで、そしてSDSを0.5%(w/v)になるまで付加して、56℃で1時間インキュベートする
j)冷却し、次にフェノール:クロロホルムで2回、クロロホルムで1回抽出する
k)2容積のエタノールでDNAを析出させる
l)パスツールピペットを用いて、DNAを1mlの70%(v/v)エタノールに移す
m)12,000gで2分間の遠心分離によりDNAを取り出し、上清を捨てて、TE緩衝液又はdH2O中にDNAを再溶解する。
シーケンシングは、Lark Technologies Inc.(Houston, Texas)により実行された。PA6、103609、103672及び1894 DNAを上記と同様に調製し、次に、各バクテリオファージに関する全長ゲノム配列を得るためクローンをシーケンシングする、ショットガンライブラリーを調製するために用いた。
6. ORF分析
マークボロドフスキー生物情報学グループ(Mark Borodovsky's Bioinformatics Group)(Georgia Institute of Technology, Atlanta, Georgia)により提供される遺伝子予測プログラムの一ファミリーであるGeneMark(商標)により利用可能なソフトウエアを用いて、いくつかのバクテリオファージ単離物中のオープンリーディングフレーム(ORF)を分析した。ORF分析ツールは、そこでは、以下に記載されるコンピューター計算方法を用いて考え得る遺伝子を同定する発見的手法を用いる:Besemer J. and Borodovsky M. (1999) Nucl. Acids Res. 27: 3911-3920。このプログラムは、インターネットで見出され得る:http://opal.biology.gatech.edu/GeneMark/heuristic#hmm2.cgi
Blast分析ツール(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を用いたデータ比較により、遺伝子産物機能を確定した。
結果
I. ストックしたアクネ菌株に対するバクテリオファージの試験
年齢、起源及び薬剤耐性プロファイルにおけるそれらの多様性に関して選択された21個のアクネ菌株のパネルに対して、46個の独立したバクテリオファージ単離物のコレクションを試験した(表1に列挙)。
Figure 0005127708
各細菌株を溶解する各バクテリオファージの能力を試験して、各ファージの宿主特異性の幅の指標を得た。表2における結果は、概して、全ファージが広範な特異性を有していたということを示す。このうち、14個が、試験した全菌株に感染し得た:PA6、103609、103625、103629、103664、103672、103715、1869、1874、1878、1894、1905、1909及びP37P。
Figure 0005127708
Figure 0005127708
これらの菌株のうち、試験したプロピオニバクテリウム・グラヌロサム、プロピオニバクテリウム・アビダム、表皮ブドウ球菌及びコリネバクテリウム・ボビスに感染する能力を示したものはなかった。
II. ボランティアの皮膚から単離されたアクネ菌に対するバクテリオファージPA6、103609、103625、103629、103664、103672、103715、1869、1874、1878、1894、1905、1909及びP37Pの試験
広範な特異性を有することが上で示された14個の菌株を、ボランティアの皮膚から単離された31個の追加のアクネ菌株に対してさらに試験した。バクテリオファージはすべて、表3に示すように、これらの追加の菌株に対する溶菌活性を示した:
Figure 0005127708
III. 非溶原性アクネ菌バクテリオファージの同定
上記の方法4に略記したように溶原性活性に関してファージをスクリーニングした。上記の表3に列挙した広範な宿主範囲のファージのうちの3つは、上記の方法4に略記したように、これらの実験において溶原性又は耐性の徴候を全く示さなかった。結果を表4に示す。それらはファージ1894、103609及び103672であった。
Figure 0005127708
IV. DNAシーケンシング
バクテリオファージPA6、103609、103672及び1894の各々に関するゲノムを、上記の方法5に略記したようにシーケンシングした。各々に関する配列は、配列番号1(PA6)、配列番号3(103609)、配列番号4(103672)及び配列番号5(1894)で示される。
V. バクテリオファージゲノムのORF分析
PA6ゲノム内のオープンリーディングフレーム(ORF)の分析、及びBlastデータベース分析ツールを用いた予測タンパク質配列のその後の分析は、種々の潜在的遺伝子及び強調された考え得る機能を同定した(図1に示した分析の要約)。ファージゲノムの5’末端は、その構造遺伝子の多くがファージコート及びファージテール(phage coat
and tail)を含む宿主に対して出現する。残りの遺伝子の中で注目すべきは、アクネ菌ゲノムそれ自体の中の他のリシン及びアミダーゼタンパク質と相同性を共有する潜在的リシン(ORF20)である。この遺伝子のDNA配列は配列番号2であり、配列番号1のヌクレオチド15371〜16233に見られ得る。
103609、103672及び1894のゲノムに関して同様の分析を実行した。図2(103609)、図3(103672)、図4(1894)及び表5に要約を示す。さらにまた、各場合のORF20は、潜在的リシンをコードする。この遺伝子に関するDNA配列は、配列番号6(ファージ103609、配列番号3のヌクレオチド15442〜16296)、配列番号7(ファージ103672、配列番号4のヌクレオチド15382〜16245)及び配列番号8(ファージ1894、配列番号5のヌクレオチド15416〜16273)で示される。各バクテリオファージ株に関する各ORFに対する境界を、表5に示す。レプレッサータンパク質はこれらのファージ株における配列相同性分析からは明らかでなく、これは、表4に示した結果により支持されるように、これらが純溶菌性ファージであり、溶原性を維持できないことを示す。したがってこれは、これらのファージ株がファージ療法のための候補としてこの点で理想的であるということを確証している。
Figure 0005127708
Figure 0005127708
3つのバクテリオファージ間のORFにおけるDNA配列の配列同一性(%)を、表6に示す:
Figure 0005127708
図5は、103609、103672及び1894間の配列相同性分析の結果を示し、類似性レベル1.0とは、100%同一性を示し、類似性は3つの配列間の差の性質及び数に従って下がる。この分析は、これら3つのファージすべての間の全体的な配列同一性が86.1%であるということを実証している。
図6は、これら3つのファージと、細菌中で溶原性を維持することが不可能であるという所望の特質を示さないバクテリオファージであるPA6との間の同様の分析の結果を示す(結果は上記III節を参照)。この分析は、これら4つすべてのファージ間の全体的な配列同一性が80.1%であるということを実証している。1894とPA6との間の全体的な配列同一性は87.4%であり、103609とPA6との間は86.8%であり、103672とPA6との間は87.3%である。
図6は、3つのファージ103609、103672及び1894のDNA配列をPA6の配列と比較した場合、低いか又は0%の配列同一性の2つの領域が存在するということを明白に示している。図7及び図8は、これが、他の3つのファージのいずれにも存在しないPA6中のヌクレオチド配列の存在の結果であるということを示す。
図7及び図8に示した配列によるヌクレオチド配列番号付けを参照すると、PA6のヌクレオチド19804〜10843は配列番号9として示され、PA6のヌクレオチド19876〜19901は配列番号10として示され、PA6のヌクレオチド19913〜19969は配列番号11として示され、PA6のヌクレオチド19979〜20054は配列番号12として示され、そしてPA6のヌクレオチド26242〜26620は配列番号13として示される。
理論に拘束されるものではないが、これらのDNA挿入物はゲノムの非ORF領域中のPA6に存在するが、このような大きな付加的DNA挿入物の存在は、ゲノムの全体的構造に及ぼす作用を有し、そして例えばORF領域の発現の効力に作用し得る。
VI. 抗アクネ菌治療としてのバクテリオファージ103672の利用
上記の方法3.4に略記したように、ボランティアの皮膚からの細菌の単離直後にアクネ菌に対して、バクテリオファージ103672を試験した。結果は、表7に示すとおりである:
Figure 0005127708
これは明らかに、患者の皮膚から直接単離されたアクネ菌に対するバクテリオファージの効力を示し、そして直接的ににきびの治療方法内であれ、またこのような方法における使用のための薬剤中の成分としてであれ、抗アクネ菌薬としてのこのようなバクテリオファージの有用性を実証している。
指示された種々のORFの推定機能を有するPA6ゲノム中のオープンリーディングフレーム(ORF)の配置を示す図である。 指示された種々のORFの推定機能を有する103609ゲノム中のオープンリーディングフレーム(ORF)の配置を示す図である。 指示された種々のORFの推定機能を有する103672ゲノム中のオープンリーディングフレーム(ORF)の配置を示す図である。 指示された種々のORFの推定機能を有する1894ゲノム中のオープンリーディングフレーム(ORF)の配置を示す図である。 ファージ103672、103609及び1894のDNA配列アラインメントのグラフを示す図である。 PA6対103672、103609及び1894のDNA配列アラインメントのグラフを示す図である。 バクテリオファージ株103609、103672、1894及びPA6のDNA配列の一部分のアラインメントを示す図である。 バクテリオファージ株103609、103672、1894及びPA6のDNA配列のさらなる部分のアラインメントを示す図である。

Claims (29)

  1. アクネ菌(P. acnes)を溶解することが可能な、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能なバクテリオファージであって、単離され、かつ、配列番号3のDNA配列を含むゲノム;又は配列番号3のDNA配列と少なくとも87%の配列同一性を有するゲノムを有するバクテリオファージ;配列番号4のDNA配列を含むゲノム;又は配列番号4のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性を有するゲノムを有するバクテリオファージ;及び配列番号5のDNA配列を含むゲノム;又は配列番号5のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性を有するゲノムを有するバクテリオファージから選択される、バクテリオファージ。
  2. 1894(寄託番号NCIMB 41349)である、請求項1記載の単離バクテリ
    オファージ。
  3. 103609(寄託番号NCIMB 41350)である、請求項に記載のバクテリ
    オファージ。
  4. 103672(寄託番号NCIMB 41351)である、請求項に記載のバクテリ
    オファージ。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のバクテリオファージのゲノムのヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチド。
  6. 配列番号3のヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドであって、該単離ポリヌクレオチドを含むバクテリオファージが請求項1又は3に記載のバクテリオファージである単離ポリヌクレオチド。
  7. 配列番号3のDNA配列と少なくとも87%の配列同一性を有する単離ポリヌクレオチドであって、該単離ポリヌクレオチドを含むバクテリオファージが請求項1又は3のいずれか一項に記載のバクテリオファージである単離ポリヌクレオチド。
  8. 配列番号4のヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドであって、該単離ポリヌクレオチドを含むバクテリオファージが、請求項1又は4に記載のバクテリオファージである単離ポリヌクレオチド。
  9. 配列番号4のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性を有する単離ポリヌクレオチドであって、該単離ポリヌクレオチドを含むバクテリオファージが、請求項1又は4に記載のバクテリオファージである単離ポリヌクレオチド。
  10. 配列番号5のヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドであって、該単離ポリヌクレオチドを含むバクテリオファージが請求項1又は2に記載のバクテリオファージである単離ポリヌクレオチド。
  11. 配列番号5のDNA配列と少なくとも88%の配列同一性を有する単離ポリヌクレオチドであって、該単離ポリヌクレオチドを含むバクテリオファージが請求項1又は2に記載のバクテリオファージである単離ポリヌクレオチド。
  12. 請求項11のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有する単離ポリペプチド。
  13. 請求項1〜のいずれか一項に記載の少なくとも1つのバクテリオファージ及びアジュバント、担体又はビヒクルを含む組成物。
  14. 2つ以上の異なるバクテリオファージを含む、請求項13に記載の組成物。
  15. 前記2つ以上の異なるバクテリオファージの各々が請求項1〜のいずれか一項に記載のバクテリオファージである、請求項14に記載の組成物。
  16. 請求項11のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド及び/又は請求項12に記載の単離ポリペプチド、並びにアジュバント、担体又はビヒクルを含む組成物。
  17. 経口投与、静脈内投与又は局所投与に適した形態である、請求項1316のいずれか一項に記載の組成物。
  18. 抗生物質、抗にきび薬、抗アクネ菌薬、抗炎症薬及び抗脂漏薬から選択される少なくとも1つのさらなる作用物質をさらに含む、請求項1317のいずれか一項に記載の組成物。
  19. にきびの予防又は治療に用いるための組成物であって、少なくとも1つのバクテリオファージの各々が有効量で存在する、請求項1318のいずれか一項に記載の組成物。
  20. にきびの予防又は治療のための薬剤の調製における請求項1〜のいずれか一項に記載の少なくとも1つのバクテリオファージの使用。
  21. 前記薬剤が2つ以上の異なるバクテリオファージを含む、請求項20に記載の使用。
  22. 前記2つ以上のバクテリオファージの各々が請求項1〜のいずれか一項に記載のバクテリオファージである、請求項21に記載の使用。
  23. にきびの予防又は治療のための薬剤の調製における請求項11のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチド及び/又は請求項12に記載の単離ポリペプチドの使用。
  24. 前記薬剤が経口投与、静脈内投与又は局所投与に適した形態である、請求項2023のいずれか一項に記載の使用。
  25. 前記薬剤が抗生物質、抗にきび薬、抗アクネ菌薬、抗炎症薬及び抗脂漏薬から選択される少なくとも1つのさらなる作用物質を含む、請求項2024のいずれか一項に記載の使用。
  26. アクネ菌を溶解することが可能な、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能な、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能な請求項1〜のいずれか一項に記載のバクテリオファージを単離する方法であって、
    a)皮膚表面から細菌の試料を取得すること、
    b)プロピオニバクテリアを溶解するバクテリオファージを前記試料から単離すること、
    c)前記バクテリオファージを試験して、該バクテリオファージが少なくとも1つのアクネ菌株を溶解することが可能か否かを判定すること、
    d)前記バクテリオファージを試験して、該バクテリオファージが非アクネ菌株を溶解することが可能か否かを判定すること、
    e)前記バクテリオファージを試験して、該バクテリオファージがアクネ菌株中で溶原性を維持することが可能か否かを判定すること、及び
    f)工程(c)、工程(d)及び工程(e)においてアクネ菌を溶解することが可能であり、そしてアクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能であり、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能であることが示されたバクテリオファージを単離することを包含する方法。
  27. アクネ菌を溶解することが可能な、アクネ菌でない任意の細菌を溶解することが不可能な、そして細菌中で溶原性を維持することが不可能な請求項1〜のいずれか一項に記載のバクテリオファージを同定する方法であって、
    a)アクネ菌を前記請求項1〜のいずれか一項に記載のバクテリオファージに曝露し、且つ、前記細菌が溶解されることを決定すること、
    b)アクネ菌でない細菌のうちの少なくとも3つの異なる種を前記バクテリオファージに曝露し、且つ、前記細菌が溶解されないことを決定すること、及び
    c)前記バクテリオファージが細菌中で溶原性を維持することが不可能であることを決定すること
    を包含する方法。
  28. 請求項26又は27に記載の方法を用いて単離されるか又は同定されるバクテリオファージ。
  29. 請求項26又は27に記載の方法を用いて取得可能であるか又は同定可能であるバクテリオファージ。
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