以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機1の骨格構造を示す図(スケルトン図)である。この自動変速機1は、フロントエンジンフロントドライブ(FF)車等のエンジン横置き式自動車に適用されるもので、主たる構成要素として、エンジン出力軸2に取付けられたトルクコンバータ3と、トルクコンバータ3の出力回転が入力軸4を介して入力される変速機構5とを有し、変速機構5が入力軸4の軸心上に配置された状態で変速機ケース6に収納されている。
そして、変速機構5の出力回転が、同じく入力軸4の軸心上においてその中間部に配置された出力ギヤ7からカウンタ軸8a上のカウンタドライブ機構8を介して差動装置9に伝達されることにより、左右の車軸9a,9bが駆動されるように構成されている。
トルクコンバータ3は、エンジン出力軸2に連結されたケース3aと、ケース3aに固設されたポンプ3bと、ポンプ3bに対向配置されてこのポンプ3bにより作動油(ATF)を介して駆動されるタービン3cと、ポンプ3bとタービン3cとの間に設けられ、かつ、変速機ケース6にワンウェイクラッチ3dを介して支持されてトルク増大作用をもたらすステータ3eと、ケース3aとタービン3cとの間に設けられ、ケース3aを介してエンジン出力軸2とタービン3cとを直結するロックアップクラッチ3fとを有している。そして、タービン3cの回転が入力軸4を介して変速機構5に伝達されるように構成されている。
一方、変速機構5は、第1,第2,第3プラネタリギヤセット(以下第1,第2,第3ギヤセットと略称する)G10,G20,G30を有し、これらが変速機ケース6内における出力ギヤ7の反トルクコンバータ側において、トルクコンバータ側から順に配置されている。
また、変速機構5を構成する締結要素として、出力ギヤ7のトルクコンバータ側に、第1クラッチC1および第2クラッチC2が配置されるとともに、出力ギヤ7の反トルクコンバータ側には、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3(特定摩擦締結要素)がトルクコンバータ側から順に配置されている。さらに、第1ブレーキB1と並列にワンウェイクラッチ90が配置されている。
第1,第2,第3ギヤセットG10,G20,G30は、何れもシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ11,21,31と、これらサンギヤ11,21,31にそれぞれ噛合する各複数のピニオン12,22,32と、各ピニオン12,22,32を支持するキャリヤ13,23,33と、ピニオン12,22,33にそれぞれ噛合ずるリングギヤ14,24,34とで構成されている。
そして、入力軸4が第3ギヤセットG30のサンギヤ31に連結されている。また、第1ギヤセットG10のサンギヤ11と第2ギヤセットG20のサンギヤ21とが連結されている。また、第1ギヤセットG10のリングギヤ14と第2ギヤセットG20のキャリヤ23とが連結され、第2ギヤセットG20のリングギヤ24と第3ギヤセットG30のキャリヤ33とが連結されている。さらに、第1ギヤセットG10のキャリヤ13に出力ギヤ7が連結されている。
また、第1ギヤセットG10のサンギヤ11及び第2ギヤセットG20のサンギヤ21は、第1クラッチC1を介して入力軸4に断続可能に連結されている。また、第2ギヤセットG20のキャリヤ23は、第2クラッチC2を介して入力軸4に断続可能に連結されている。
さらに、第1ギヤセットG10のリングギヤ14及び第2ギヤセットG20のキャリヤ23は、並列に配置された第1ブレーキB1及びワンウェイクラッチ90を介して変速機ケース6に固定可能に連結されている。ワンウェイクラッチ90は、リングギヤ14やキャリヤ23が正転方向(入力軸4の通常回転方向)に回転しようとするときにはアンロック状態となってそれを許容し、逆転方向に回転しようとするときにはロック状態となってそれを禁止するものである。
また、第2ギヤセットG20のリングギヤ24及び第3ギヤセットG30のキャリヤ33は、第2ブレーキB2を介して変速機ケース6に固定可能に連結されている。そして、第3ギヤセットG30のリングギヤ34は、第3ブレーキB3を介して変速機ケース6に固定可能に連結されている。
以上の構成により、この変速機構5によれば、第1,第2クラッチC1,C2、及び第1〜第3ブレーキB1,B2,B3の締結状態の組合せにより、前進6速と後退速とが得られる。図2に、その変速段と各摩擦締結要素の組合せを示す。○印が締結、無印が解放を示す。なお、本実施形態の自動変速機1は、前進レンジ(Dレンジ)時において、運転者が自動変速モードとマニュアル変速(手動変速)モードとを選択可能である。第2速以上では各摩擦締結要素の締結の組合せが同じなので区別していないが、第1速では異なるので、前者の第1速をD1速(D1st)、後者の第1速をM1速(M1st)として併記している。
以下、図1及び図2を参照して各変速段における変速機構5の動力伝達状態を説明する。まず、M1速(M1st)では、図2に示すように第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が締結する。このとき、入力軸4の回転(以下「入力回転」という)は、第1クラッチC1を介して第1ギヤセットG10のサンギヤ11に入力される。一方、第1ギヤセットG10のリングギヤ14は、第1ブレーキB1を介して変速機ケース6に固定されているので、入力回転は減速された上で、キャリヤ13から出力ギヤ7に出力される。これにより、減速比の大きな1速が得られる。
なお、逆駆動がかかったとき、つまり車両の減速時等において車軸9a,9b側から駆動力が入力されたとき、その逆駆動力は上述と逆の経路を辿って入力軸4に伝達される。これによって強いエンジンブレーキが得られる。
次に、D1速(D1st)では、図2に示すように第1クラッチC1が締結する。このとき、駆動側の入力回転は、第1クラッチC1を介して第1ギヤセットG10のサンギヤ11に入力される。ここで、リングギヤ14の逆回転が許容されていれば、これが逆回転し、出力ギヤ7に駆動力が伝達されないところ、実際にはリングギヤ14の逆転は、ワンウェイクラッチ90がロックすることにより禁止されている。このため、リングギヤ14は変速機ケース6に固定され、上記M1速と同様の1速が得られる。
D1速とM1速との動力伝達状態の実質的な相違は逆駆動時にある。D1速では、逆駆動がかかったとき、ワンウェイクラッチ90がアンロック状態となることによってリングギヤ14の逆回転が許容されるので、これが逆回転し、それによって逆駆動力が入力軸4に伝達されない。従って、エンジンブレーキは殆ど乃至は全く得られない。
次に、第2速(2nd)では、図2に示すように第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが締結される。このとき、入力回転は第1クラッチC1を介して第1ギヤセットG10のサンギヤ11と第2ギヤセットG20のサンギヤ21とに入力される。ここで第2ギヤセットG20においては、第2ブレーキB2によりリングギヤ24が変速機ケース6に固定されているので、サンギヤ21に入力された入力回転は減速された上でキャリヤ23から出力される。
一方、第1ギヤセットG10においては、サンギヤ11からは入力軸4の入力回転が、リングギヤ14からは第2ギヤセットG20のキャリヤ23を介して回転(入力回転数よりも低速)がそれぞれ入力される。これにより、入力回転が減速された上でキャリヤ13から出力ギヤ7に出力される。このときのキャリヤ13の回転数は、リングギヤ14が変速機ケース6に固定された状態にある第1速と比べて高速になっている。つまり、第1速よりも減速比の小さな第2速が得られる。
次に、第3速(3rd)では、図2に示すように第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが締結される。このとき、入力回転は、第1クラッチC1を介して第1ギヤセットG10のサンギヤ11と第2ギヤセットG20のサンギヤ21とに入力されるとともに、入力軸4から直接第3ギヤセットG30のサンギヤ31にも入力される。
ここで、第3ギヤセットG30においては、第3ブレーキB3によりリングギヤ34が変速機ケース6に固定されているので、サンギヤ31に入力された入力回転は、減速された上でキャリヤ33から出力される。
一方、第2ギヤセットG20においては、サンギヤ21からは入力軸4からの入力回転が、リングギヤ24からは第3ギヤセットG30のキャリヤ33を介して回転(入力回転数よりも低速)がそれぞれ入力される。これにより、入力回転が減速された上でキャリヤ23に出力される。このときのキャリヤ23の回転数は、リングギヤ24が変速機ケース6に固定された状態にある第2速に比べて高速となっている。
さらに、第1ギヤセットG10においては、サンギヤ11からは入力軸4の入力回転が、リングギヤ14からは第2ギヤセットG20のキャリヤ23の回転(第2速時よりも高速)がそれぞれ入力される。これにより、入力回転が減速された上でキャリヤ13に出力されて、出力ギヤ7に伝達される。このときのキャリヤ13の回転数は、第2速に比べて高速となり、第2速よりも減速比の小さな第3速が得られる。
次に、第4速(4th)では、図2に示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが締結される。このとき、入力回転は、第1クラッチC1を介して第1ギヤセットG10のサンギヤ11と第2ギヤセットG20のサンギヤ21とに入力されるとともに、第2クラッチC2を介して第2ギヤセットG20のキャリヤ23にも入力される。この第2ギヤセットG20のキャリヤ23は、第1ギヤセットG10のリングギヤ14に連結されているので、結局リングギヤ14にも入力回転が入力されることになる。
こうして第1ギヤセットG10においては、サンギヤ11およびリングギヤ14に入力回転が入力されるため、全体が入力軸4と一体回転する。従って、入力回転がそのままキャリヤ13に出力され、それが出力ギヤ7に伝達されて、減速比が1(直結状態)となった第4速が得られる。
次に、第5速(5th)では、図2に示すように第2クラッチC2と第3ブレーキB3とが締結される。このとき、入力回転は第2クラッチC2を介して第3ギヤセットG20のキャリヤ23に入力されるとともに、入力軸4から直接第3ギヤセットG30のサンギヤ31にも入力される。
ここで、第3ギヤセットG30においては、第3ブレーキB3によりリングギヤ34が変速機ケース6に固定されているので、サンギヤ31に入力された入力回転は、減速された上でキャリヤ33から出力される。
一方、第2ギヤセットG20においては、キャリヤ23からは入力軸4を介して入力回転が、リングギヤ24からは第3ギヤセットG30のキャリヤ33を介して回転(入力回転数よりも低速)がそれぞれ入力される。これにより、入力回転が増速された上でサンギヤ21に出力される。
さらに、第1ギヤセットG10においては、サンギヤ11からは第2ギヤセットG20のサンギヤ21を介して回転(入力回転数よりも高速)が入力されるとともに、リングギヤ14からは第2ギヤセットG20のキャリヤ23を介して入力回転がそれぞれ入力される。これにより、入力回転が増速された上でキャリヤ13に出力され、出力ギヤ7に伝達される。つまり減速比が1より小さなオーバードライブの第5速が得られる。
次に、第6速(6th)では、図2に示すように、第2クラッチC2と第2ブレーキB2とが締結される。このとき、入力回転は第2クラッチC2を介して第2ギヤセットG20のキャリヤ23に入力される。ここで、第2ギヤセットG20においては、第2ブレーキB2によりリングギヤ24が変速機ケース6に固定されているので、キャリヤ23に入力された入力回転が増速された上でサンギヤ21から出力される。このときのサンギヤ21の回転数は、第5速時よりも大きくなっている。
一方、第1ギヤセットG10においては、サンギヤ11からは第2ギヤセットG20のサンギヤ21を介して回転(入力回転数よりも高速、かつ第5速時よりも高速)が入力されるとともに、リングギヤ14からは第2ギヤセットG20のキャリヤ23を介して入力回転がそれぞれ入力される。これにより、入力回転は、第5速時よりも増速された上でキャリヤ13に出力されて、出力ギヤ7に伝達される。つまり、減速比が第5速時より小さなオーバードライブの6速が得られる。
次に、後退速(Rレンジ)では、図2に示すように第1ブレーキB1と第3ブレーキB3とが締結される。このとき、入力回転は、入力軸4から直接第3ギヤセットG30のサンギヤ31に入力される。
ここで、第3ギヤセットG30においては、第3ブレーキB3によりリングギヤ34が変速機ケース6に固定されているので、サンギヤ31に入力された入力回転が減速された上でキャリヤ33から出力される。
一方、第2ギヤセットG20においては、第1ブレーキB1によってキャリヤ23が変速機ケース6に固定されているので、第3ギヤセットG30のキャリヤ33からリングギヤ24に入力された回転は、回転方向が逆転された上でサンギヤ21に出力される。
さらに、第1ギヤセットG10においては、サンギヤ11からは第2ギヤセットG20のサンギヤ21の回転(入力回転とは逆回転)が入力されるとともに、第1ブレーキB1によってリングギヤ14が変速機ケース6に固定されているので、サンギヤ11の回転が減速された上でキャリヤ13に出力されて、出力ギヤ7に伝達される。こうして減速比が負、つまり逆回転出力の後退速が得られる。
以上のように、本実施形態によれば、変速機構5が、構成が簡素で駆動損失や騒音の少ない3つのシングルピニオン型プラネタリギヤセットG10,G20,G30を用いて構成されることになる。これにより、前進6速の自動変速機1として、各変速段の減速比が適正に設定され、しかもコンパクトで、動力伝達効率及び静粛性に優れた自動変速機1が実現される。
ところで、図2に示す各摩擦締結要素(第1,第2クラッチC1,C2、及び第1〜第3ブレーキB1,B2,B3)は、何れも湿式多板のクラッチ又はブレーキであって、図示を省略した油圧ピストン(油圧アクチュエータ)の作動によって係合(締結)状態と解放状態とが切換えられる。この切換は、各摩擦締結要素への油圧の給排を制御する油圧機構によって行われる。以下、その油圧機構について説明する。
図3は、油圧機構に含まれる6個のソレノイドバルブの各シフトレンジ及び各変速段における通電状態を示す図である。各ソレノイドバルブは、図外のコントローラによって電気制御されるアクチュエータである。油圧機構は、上記各ソレノイドバルブの駆動により変速を含む所定の動作がなされるように構成されている。
6個のソレノイドバルブは、単品の機能としては1個のオンオフソレノイドバルブSOL1(以下、オンオフSOL1という)と、5個のリニアソレノイドバルブ(以下、ライン圧リニアVFSPL、第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4という)とに分類される。また、油圧機構における役割から、1個のライン圧ソレノイドバルブ(ライン圧リニアVFSPL)と、5個の変速用ソレノイドバルブ(オンオフSOL1、第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4)とに分類される。なお、後述するように、図中「○」印は連続通電状態、「△」印は部分通電状態、無印は非通電状態を示す。
オンオフSOL1は、ノーマリーオープンタイプのオンオフソレノイドバルブである。ここでノーマリーオープンとは、非通電(以下、オフともいう)時にオープン状態となって入力圧をそのまま出力側に導き、通電(以下、オンともいう)時にクローズ状態となって出力側から油圧を出力しないものをいう。オンオフSOL1は、通電の有無によってクローズ状態とオープン状態とに択一的に切換えられる。図3に示すように、オンオフSOL1は、Rレンジ及びM1速でオンとされてクローズ状態となり、その他の変速段ではオフとされてオープン状態となる。
ライン圧リニアVFSPLは、図略のデューティソレノイドを内蔵し、そのデューティ比を変化させることによって出力圧を調整することができる。ライン圧リニアVFSPLは、運転状態に適したライン圧(各摩擦締結要素に分配供給される油圧)を作るために、デューティ比が絶えず0〜100%の間で変動している。図3には、そのような部分通電状態を△印で示している。ライン圧リニアVFSPLは、ノーマリーオープンタイプであって、非通電時(完全オフ時)に完全オープン状態となり、連続通電時(完全オン時)に完全クローズ状態となる。
第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4は、デューティソレノイドを内蔵して出力圧を調整できる点でライン圧リニアVFSPLと同様であるが、出力圧の調整は専ら変速中に各摩擦締結要素への油圧の給排速度を調節するために行われ、変速時以外の定常時には連続通電(完全オン、図中○印で示す)か、非通電(完全オフ、図中無印で示す)かの何れかが択一選択される。以下、特に記す場合を除き、第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4についてオン又はオフというときには、この完全オン又は完全オフを指すものとする。
第1シフトリニアVFS1は、ノーマリーオープンタイプであって、Rレンジでオンとされ、クローズ状態となる。その他の変速段ではオフとされ、オープン状態となる。
第2シフトリニアVFS2は、ノーマリーオープンタイプであって、D1速、第2速及び第3速でオンとされ、クローズ状態となる。その他の変速段ではオフとされ、オープン状態となる。
第3シフトリニアVFS3は、ノーマリークローズタイプである。ここで、ノーマリークローズとは、ノーマリーオープンとは逆に、オフ時にクローズ状態となって出力側から油圧を出力せず、オン時にオープン状態となって入力圧をそのまま出力側に導くものをいう。第3シフトリニアVFS3は、第2速と第6速でオンとされ、オープン状態となる。その他の変速段ではオフとされ、クローズ状態となる。
第4シフトリニアVFS4は、ノーマリーオープンタイプであって、M1速、D1速、第2速、第4速及び第6速でオンとされ、クローズ状態となる。その他の変速段(第3な速、第5速及びRレンジ)ではオフとされ、オープン状態となる。
図4〜図11は、各シフトレンジ及び各変速段における油圧機構の主要部の油圧回路図である。まず、図4を参照して、この油圧機構の構成について説明する。油圧機構は、その主な構成要素として、上記6個の各ソレノイドバルブに加え、オイルポンプ10、11本のバルブV10〜V20、5個のアキュームレータAC1〜AC5、チェックボールCB1、油圧スイッチPSW、各要素を連結する多数の油路L11〜L69(油圧が作用している油路を太線で示す)、各油路L11〜L69上に適宜設けられたオリフィスF11〜F70等を有している。
オイルポンプ10は、上述したようにエンジンンに連動して駆動されることにより、オイルパン72内に貯留された作動油(ATF)を、オイルフィルター73を介して吸入し、油路L11に吐出する。なお、油路L11の油圧は、後述するプレッシャレギュレータバルブV13(以下PレギュレータバルブV13という)によりライン圧に調圧されている。
図4に示すように、その下段左から順にソレノイドレデューシングバルブV11(以下SOL−RedバルブV11という)、パイロットシフトバルブV12、PレギュレータバルブV13、マニュアルバルブV10、図4の中段左から順にC2カットバルブV14、C1カットバルブV15、B2カットバルブV16、B3カットバルブV17、図4の上段左から順にL/RシフトバルブV18、C1リレイバルブV19、アキュームシフトバルブV20(以下、AccシフトバルブV20という)が配設されている。
上記バルブV10〜V20は、いわゆるスプール弁であり、円筒状(または段付き円筒状)のスプール穴が形成されたアルミニウム製等からなるブロック体(バルブボディ)と、そのスプール穴に僅かな隙間をもって嵌挿され、軸方向に摺動可能なスプールとを有する。また、マニュアルバルブV10以外のバルブは、上記スプールを軸方向の一方側に付勢するリターンスプリングを有している。なお、以下の説明においては、各リターンスプリングが配設された側をバルブの基端側、その逆側を先端側という。
マニュアルバルブV10は、ライン圧をシフトレンジに応じた所定の油路に分配して供給するバルブである。他のバルブが油圧とリターンスプリングの付勢力(以下スプリング力とも言う)とのバランスによって自動的に作動するのに対し、上記マニュアルバルブV10は、手動で作動する。すなわち、マニュアルバルブV10のスプールは、図外のシフトレバーに連設されており、運転者によるシフトレバーの操作に連動して摺動する。
マニュアルバルブV10は、油路L11からライン圧を受け入れ、Pレンジでは、ライン圧を出力せず、R、Dの各レンジでは、それぞれ所定の油路にライン圧を出力する。当回路図では、図を簡潔にするために、マニュアルバルブV10を模式的に図示し、その出力油路を白抜き矢印記号「R」、「D」で表し、この「R」はRレンジで出力される油路を示し、「D」はDレンジで出力される油路を示している。
なお、回路図中の各所に同様の記号が付されているが、これは、その各箇所がマニュアルバルブV10の同記号の出力油路と接続されていることを示す。また、同様の白抜き矢印記号「B」は、マニュアルバルブV10の作動状態の如何に拘わらず、常時ライン圧が作用している油路(例えば油路L11)と接続されていることを示す。
SOL−RedバルブV11は、ライン圧を元圧として、そのライン圧を一定の第1定常圧に減圧して出力する第1定常圧出力バルブである。SOL−RedバルブV11には、その先端側(図の右側)から順に、ポートP11、P12、P13が設けられている。
SOL−RedバルブV11のポートP12には、油路L11からライン圧が供給される。そのライン圧は、一定圧(第1定常圧)に減圧され、ポートP13から出力される。SOL−RedバルブV11のポートP13から出力された第1定常圧は、オリフィスF11を介してポートP11にパイロット圧として印加される。
SOL−RedバルブV11は、そのスプールを先端側に押圧するスプリング力と、ポートP11に印加されたパイロット圧による基端側への押圧力とがバランスするように調圧する。スプールの調圧位置においてリターンスプリング力が一定なので、第1定常圧も一定となる。
第1定常圧の元圧は、オイルポンプ10が駆動している限り、油路L11を経由してポートP12に導かれる。従って、油路L11のライン圧が第1定常圧の設定値よりも低くならない限り(通常、ライン圧は第1定常圧の設定値より高くなるように制御される)、SOL−RedバルブV11は、所定の第1定常圧を出力する。
第1定常圧は、オリフィスF13を介して油路L13に導かれることにより、ライン圧リニアVFSPLに入力される。このライン圧リニアVFSPLは、第1定常圧を元圧としてライン圧用の信号圧(以下、PLソレノイド圧という)を、油路L15に出力する。PLソレノイド圧は、主にPレギュレータバルブV13を制御するための油圧であって、運転状態に応じて適宜高さが調整される油圧である。具体的には、各摩擦締結要素が高いトルク容量を必要とするとき、換言すれば高いライン圧が必要とされるときほど高いPLソレノイド圧とされる。なお、上記PLソレノイド圧は、ライン圧を減圧して得られた第1定常圧を、さらに減圧して得られる油圧なのでライン圧以下の圧力となる。
パイロットシフトバルブV12は、主にPレギュレータバルブV13のポートP20にパイロット圧(ライン圧)を導くか否かを切換える切換バルブである。パイロットシフトバルブV12には、先端側から順に、ポートP14、P15、P16、P17、P18、P19が設けられている。
パイロットシフトバルブV12のポートP14には、油路L15からオリフィスF14を介してPLソレノイド圧が印加される。一方、パイロットシフトバルブV12のポートP19には、前進レンジ(Dレンジ)時にライン圧が印加される。従って、Dレンジでは、パイロットシフトバルブV12のポート(前進レンジ時ライン圧供給ポート)P19に印加されるライン圧がポートP14に印加されるPLソレノイド圧に打ち勝って、スプールを先端側(図の左側)に移動させるように付勢する。また、後進レンジ(Rレンジ)時には、パイロットシフトバルブV12のポートP14に印加されるPLソレノイド圧がスプールを基端側に移動させるように付勢する。
パイロットシフトバルブV12のスプールが先端側に位置しているとき(Dレンジ)には、ポートP15とポートP16が連通され、ポートP18が閉じられるとともにポートP17がドレーンされる。一方、パイロットシフトバルブV12のスプールが基端側に位置しているとき(Rレンジ)には、後述するようにポートP15が閉じられるとともに、ポートP16がドレーンされ、ポートP18とポートP17とが連通される。従って、Dレンジでは、ライン圧がポートP15からポートP16へ出力される。このライン圧は油路L17を経由してPレギュレータバルブV13に導かれる。
図11及び図12に示すように、後進レンジ(Rレンジ)において、パイロットシフトバルブV12のポートP18からポートP17へ出力されたライン圧は、油路L18を介して第4シフトリニアVFS4に導かれる。
第4シフトリニアVFS4は、ソレノイドのオフ時にオープン状態となることにより、スプリング力とスプール力とフィードバック圧とのバランスに応じて作動油の出力圧をダイレクトに調節するリニアソレノイドバルブである。この第4シフトリニアVFS4には、車両の前進時および後進時に締結される特定摩擦締結要素、つまり上記第3ブレーキB3の制御油圧となるライン圧が油路L57及びオリフィスF57を介して入力される入力ポートP3aと、このライン圧を第3ブレーキB3に直接出力する出力ポートP3bと、余剰油をドレーンするドレーンポートP3cとが設けられている。
上記第4シフトリニアVFS4のオープン状態では、その入力ポートP3aに付加されたライン圧が出力ポートP3bから出力される。そして、上記入力ポートP3aに付加されたライン圧が設定値よりも高くなると、スプリングの付勢力に抗してスプールが移動することにより、出力ポートP3bがドレーンポートP3cと連通するようになっている。
オイルポンプ10、マニュアルバルブV10及びPレギュレータバルブV13等からなる後進レンジ時ライン圧発生手段と、第4シフトリニアVFS4のドレーンポートP3cとを連結する油路上には、上記パイロットシフトバルブV12からなる切換弁が設けられるとともに、このパイロットシフトバルブV12と第4シフトリニアVFS4のドレーンポートP3cとが連絡油路L18により連絡されている。
そして、後進レンジ(Rレンジ)において、パイロットシフトバルブV12のポートP18に印加された後進レンジ時のライン圧「R」が所定値以上の時には、図12に示すように、パイロットシフトバルブV12及び連絡油路L18を介して第4シフトリニアVFS4のドレーンポートP3cに上記後進レンジ時のライン圧「R」が供給され、このライン圧「R」が所定値未満の時には、上記連絡油路L18がドレーン状態となるように構成されている。
また、上記後進レンジ時のライン圧「R」が所定値以上における第3ブレーキB3からなる摩擦締結要素の締結時には、PレギュレータバルブV13を制御するライン圧リニアVFSPLからなるライン圧ソレノイドバルブにより、運転状態に応じた油圧の制御が実行される。これにより、Rレンジ時の高負荷状態における上記第3ブレーキB3の制御性が保持されるようになっている。
さらに、上記パイロットシフトバルブV12からなる切換弁は、Dレンジ時にライン圧「D」が供給される前進レンジ時ライン圧供給ポートP19を有している。前進レンジ(Dレンジ)時において、オイルポンプ10、マニュアルバルブV10及びPレギュレータバルブV13等からなる前進レンジ時ライン圧発生手段において前進レンジ時のライン圧「D」が、パイロットシフトバルブV12の前進レンジ時ライン圧供給ポートP19に印加されると、スプールが先端側に位置した切換状態となることにより、第4シフトリニアVFS4のドレーンポートPcに連絡する連絡油路L18がドレーン状態となるように構成されている。
PレギュレータバルブV13は、図13に示すように、オイルポンプ10から吐出された作動油のライン圧を調圧する調圧バルブである。PレギュレータバルブV13には、先端側から順に、ポートP20、P21、P22、P23a、P23b、P24が設けられている。
PレギュレータバルブV13のポートP22は、油路L11を介してライン圧が供給されるライン圧供給ポートであり、また、このポートP22は、調圧されたライン圧を、各摩擦締結要素に設けられた油圧アクチュエータ等に出力する出力ポートでもある。PレギュレータバルブV13には、その一方側(当実施形態では、先端部側)に、油路L11からオリフィスF21を介してライン圧が第1パイロット圧として印加されるフィードバックポート21と、油路L17からオリフィスF20を介してライン圧が第2パイロット圧として印加されるフィードバックポート20とが設けられている。但し、PレギュレータバルブV13のフィードバックポートP20には、Dレンジの場合にのみ、上記第2パイロット圧が印加される。
また、PレギュレータバルブV13には、上記ライン圧供給ポートP22を挟んでその他方側(当実施形態では、基端部側)に、リニアVFSPLから油路L15及びオリフィスF24を介してPLソレノイド圧が印加される制御ポートP24が設けられている。
PレギュレータバルブV13は、そのスプールSPL13を先端側(図の右側)に押圧する力と基端側に押圧する力とがバランスすることによりライン圧を調圧するように構成されている。PレギュレータバルブV13のスプールSPL13を先端側に押圧する力は、スプリングSPG13の付勢力と、制御ポートP24に印加されるPLソレノイド圧による押圧力である。
一方、PレギュレータバルブV13のスプールSPL13を基端側に押圧する力は、フィードバックポート20,21に印加されるパイロット圧(第1パイロット圧及び第2パイロット圧の総称)による押圧力である。従って、PレギュレータバルブV13のポートP24に印加されるPLソレノイド圧を増圧すると、バランスを保つためにパイロット圧を増圧させるべくライン圧が高くなる。逆に、PLソレノイド圧を減圧すると、ライン圧が低くなる。
また、Rレンジでは、第2パイロット圧が印加されないので、同じライン圧であればDレンジに比べて基端側への押圧力が小さくなる。従って、バランスを保つために上記第1パイロット圧、すなわちライン圧が高くなる。つまりPLソレノイド圧が同じであれば、Dレンジ時におけるライン圧よりもRレンジ時におけるライン圧の方が高くなる。これは、Rレンジの方が摩擦締結要素に要求されるトルク容量が全般的に大きいことに対処したものである。
また、PレギュレータバルブV13は、ポートP22から供給された作動油(ATF)を、第1ポートP23a及び第2ポートP23bから余剰油として適宜排出することによってライン圧を調圧するように構成されている。第1ポートP23aから排出された余剰油(ATF)は、下記のように第1,第2回路L19a,L19bからトルクコンバータ3等に導かれてその潤滑油となり、また自動変速機1の各部の潤滑油としても利用される。
すなわち、PレギュレータバルブV13からなるライン圧調圧バルブには、オイルポンプ10の吐出量が基準値未満であって、ライン圧が低くても開口する第1ポートP23aと、上記吐出量が基準値以上となった時点で開口する第2ポートP23bとが、上記ポートP22からなるライン圧供給ポートに隣接した位置で上記制御ポート24の設置部側(PレギュレータバルブV13の基端部側)に、上記の順序で設けられている。
そして、PレギュレータバルブV13の第1ポートP23aに連通する第1回路L19aと、第2ポートP23bに連通する第2回路L19bとにより、PレギュレータバルブV13によるライン圧の生成時に排出される余剰油を潤滑部に供給する余剰油回路が形成されている。
PレギュレータバルブV13の第1ポート23aに連通した第1回路L19aは、トルクコンバータ3に連絡されて作動油を供給し、トルクコンバータ3の下流に設けられた作動油ウォーマ(ATFウォーマ)75に連絡されている。この作動油ウォーマ75を出た作動油は、例えばメインシャフト及びメインシャフト周りの回転部材の潤滑個所に作動油を供給して潤滑するメイン潤滑手段74に供給される。
一方、PレギュレータバルブV13の第2ポート23bに連通した第2回路L19bは、ディファレンシャルの潤滑個所に作動を供給して潤滑するディファレンシャル潤滑手段76と、セカンダリシャフト及びのセカンダリシャフト周りの回転部材の潤滑個所に作動油を供給して潤滑するセカンダリ潤滑手段77と、上記作動油ウォーマ75とは別位置、例えばラジエータの側方部等に配設された作動油の外部空冷クーラ78とに連絡されている。
上記構成においてエンジンの停止時には、PレギュレータバルブV13のスプールSPL13が先端部側に位置した切換状態となって、第1,第2ポートP23a,P23bは閉止されている。
そして、エンジンの始動後において、PレギュレータバルブV13の吐出量が基準値未満となるエンジンの低負荷低回転時には、上記ライン圧に応じてPレギュレータバルブV13のスプールSPL13が基端部側に付勢されることにより、図13に示すように、まず第1ポートP23aが開放状態となり、上記メイン潤滑手段74に余剰油が供給されてトルクコンバータ3の主軸受け部等からなる潤滑部が潤滑されるとともに、余剰油が第1回路L19aから上記作動油ウォーマ75に供給されて熱交換される。これにより、エンジンの始動時には作動油が加熱され、かつエンジンの暖機後には作動油ウォーマ75により作動油が冷却される。
また、エンジンの高負荷高回転状態になってオイルポンプ10の吐出量が基準値以上に増大してライン圧が上昇すると、図14に示すように、スプールSPL13が基端部側にさらに移動することにより、第1ポートP23aと第2ポートP23bとが連通して第2ポート23bが開放状態となる。これにより上記余剰油が、ディファレンシャル潤滑手段76及びセカンダリ潤滑手段77に余剰油が供給されてディファレンシャル及びセカンダリシャフトの潤滑個所が潤滑されるとともに、第2回路L19bから外部空冷クーラ78に供給されて、作動油の冷却が促進される。
さらに、上記ライン圧が上昇すると、図15に示すように、オイルパン72に連通する第3ポートP23cが開放状態となって、余剰油の一部がドレーン回路L68を介してオイルパン72内にドレーンされることになる。
なお、図13において、符号79は、ディファレンシャル潤滑手段76及びセカンダリ潤滑手段77等から油圧が逆流するのを阻止するための逆止弁であり、符号80は、必要に応じ、上記外部空冷クーラをバイパスして作動油をドレーンするための安全弁である。第1回路L19aには、トルクコンバータ3のロックアップ有無を切換えるための図略のソレノイドバルブやスプール弁が設けられている。また、第1回路L19aを介して上記メイン潤滑手段74等に供給される作動油量が不足しないように、第1回路L19aはオリフィスF22を介してライン圧の油路L11と接続されている。
図4において、C2カットバルブV14は、フィルセーフ用のバルブであって、主として第2クラッチC2への油圧供給可否を上流位置で切換える切換バルブである。C2カットバルブV14は、通常時に図4に示すように、スプールが基端部側に位置する切換状態にあって第2クラッチC2に対する作動油の供給を可能にするように構成されている。そして、特定の故障が生じたとき(例えばライン圧リニアVFSPLがオフフェイルした後の再発進以後)に、スプールが先端部側に位置する切換状態となって第2クラッチC2への作動油供給を停止するようになっている。
C2カットバルブV14には、先端から順に、ポートP25、ポートP26、ポートP27、ドレーンポートDP27、ポートP28、ポートP29及びポートP30が設けられている。
C2カットバルブV14のポートP25には、オリフィスF25,F26を介して油路L13から第1定常圧が印加される。オリフィスF25,F26は、2個直列に配設された、いわゆるダブルオリフィスであり、通常のオリフィスよりもより強い絞り作用を有する。また、C2カットバルブV14のポートP25には、オイルポンプ10が駆動している限り第1定常圧が印加される。
C2カットバルブV14のポートP26には、ライン圧リニアVFSPLの出力圧であるPLソレノイド圧が油路L15を経由して印加される。また、C2カットバルブV14のポートP27は、ポートP30と常時連通されている。このC2カットバルブV14のポートP30は、スプリングが設けられたリターンスプリング室に開口している。
C2カットバルブV14のポートP28は、油路L27と接続されている。この油路L27は、その下流においてL/RシフトバルブV18や第2シフトリニアVFS2を経由し、最終的には第2クラッチC2に至る油路である。また、C2カットバルブV14のポートP29には、Dレンジにおいてライン圧が印加される。
上記構成により通常の運転状態においては、C2カットバルブV14のポートP25に印加される第1定常圧に応じ、図4に示すように、C2カットバルブV14のスプールが基端側に位置した切換状態にある。このとき、C2カットバルブV14のポートP29とポートP28とが連通されるので、Dレンジにおいて第2シフトリニアVFS2に元圧が供給可能となる。但し、実際に上記経路から第2シフトリニアVFS2に元圧を供給するには、下流側に配設されたL/RシフトバルブV18のスプールが基端側に位置した切換状態となっている必要がある。
なお、C2カットバルブV14は、一旦、上記の切換状態となると、ポートP25に第1定常圧が印加されているかぎり(つまりオイルポンプ10、ひいてはエンジンが作動している限り)、ポートP26に印加されるPLソレノイド圧の大きさにかかわらず、スプールが基端側に位置した上記切換状態を維持する。
そして、エンジン停止に伴ってオイルポンプ10が停止状態となると、第1定常圧が0になるので、C2カットバルブV14のスプールは、スプリング力によって先端側に位置した切換状態に切換わる。
その後、エンジン(オイルポンプ10)を再始動させると、C2カットバルブV14のポートP25には、第1定常圧が、ポートP26には、PLソレノイド圧が印加される。C2カットバルブV14のポートP25に印加される第1定常圧は、オリフィスF25,F26(ダブルオリフィス)による強い絞り効果のため、ポートP26に印加されるPLソレノイド圧よりも遅れて印加される。従って、C2カットバルブV14のポートP26には、スプールが先端側に位置した切換状態で、PLソレノイド圧が印加される。このPLソレノイド圧は、C2カットバルブV14のポートP27から油路L21を経由してポートP30に導かれ、C2カットバルブV14のスプールを先端側に押圧する。通常、エンジン始動直後は、アクセル開度が0付近であるため、ライン圧は低いので、PLソレノイド圧も、第1定常圧に比べて充分低い。このため、C2カットバルブV14のポートP25に第1定常圧が遅れて印加されると、スプールを基端側に押す力が先端側に押す力(PLソレノイド圧による押圧力+スプリング力)に打ち勝ち、スプールが基端側に位置した切換状態となる。
なお、上記動作をより確実に行わせるために、エンジン始動直後に、一時的にPLソレノイド圧を低減させる制御が実行される。これにより、(基端側への押圧力)>(先端側への押圧力)という状態が確実に創出され、C2カットバルブV14のスプールを基端側に位置させる状態への切換が確実に行われる。以下、この制御をライン圧の低減制御という。
ところが、ライン圧リニアVFSPLがオフフェイルした場合には、C2カットバルブV14のスプールを基端側に位置させる状態への切換が行われない。ライン圧リニアVFSPLは、ノーマリーオープンタイプのソレノイドバルブであって、オフフェイルした時には元圧の第1定常圧をそのまま恒常的に出力するからである。すなわち、ライン圧低減制御の実行前にあっては、ポートP26(〜ポートP30)にPLソレノイド圧が印加された後、遅れてポートP25に第1定常圧が印加されても、スプリング力の分、先端側への押圧力が大きくなり、スプールが先端側に位置した切換状態が維持される。そこで、上記ライン圧の低減制御を実行しても、ライン圧リニアVFSPLがオフフェイルしていてPLソレノイド圧を第1定常圧よりも低減させることができない。従って、C2カットバルブV14のスプールを基端側に位置させる状態への切換が行われず、スプールが先端側に位置した切換状態が維持される。
C2カットバルブV14のスプールが先端側に位置した切換状態のとき、ポートP29に導かれたライン圧が遮断される。従って、C2カットバルブV14のポートP28を介して油路L27に油圧が供給されない。このように第2クラッチC2の上流である油路L27への油圧の供給が遮断されるので、C2カットバルブV14のスプールが先端側に位置した切換状態にあるときには、他の要素(例えばL/RシフトバルブV18の切換位置や、第2シフトリニアVFS2の作動状態)に拘わらず、第2クラッチC2が解放状態となる。
L/RシフトバルブV18は、主として第1ブレーキB1及び第2クラッチC2に対する油圧供給の有無を最終的に切換える切換バルブである。L/RシフトバルブV18には、先端側から順に、ポートP51、P52、P53、P54、P55、P56、P57、P58、P59、P60が設けられている。
L/RシフトバルブV18のポートP51には、オンオフSOL1の出力圧が、油路L22及びオリフィスF51を経由して印加される。図3に示すように、オンオフSOL1は、ノーマリーオープンタイプなので、オン時には出力圧が0となり、オフ時には、元圧である油路L13の第1定常圧をそのまま出力する。従って、L/RシフトバルブV18のポートP51には、オンオフSOL1がオンの時には油圧が印加されず、オフ時には第1定常圧が印加される。
L/RシフトバルブV18のポートP52及びポートP55には、常時ライン圧が供給される。L/RシフトバルブV18のポートP53には、第2シフトリニアVFS2の元圧側に導かれる油路L23が接続されている。L/RシフトバルブV18のポートP54には、C2カットバルブV14のポートP28と連通する油路L27が接続されている。L/RシフトバルブV18のポートP56には、AccシフトバルブV20のポートP65に連通する油路L29が接続されている。なお、油路L29には、油路L29への油圧の供給を検知する油圧スイッチPSWが設けられている。
L/RシフトバルブV18のポートP57には、第2クラッチC2に連通する油路L31と、C1カットバルブV15のポートP31に連通する油路L35が接続されている。L/RシフトバルブV18のポートP58には、第2シフトリニアVFS2からの出力圧を導く油路L25が接続されている。その油路L25には、第2シフトリニアVFS2の出力圧の振動を抑制するオリフィスF25とハイアキュームレータAC4とが設けられている。ハイアキュームレータAC4は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L25の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
L/RシフトバルブV18のポートP59には、第1ブレーキB1に連通する油路L33が接続されている。L/RシフトバルブV18のポートP60には、RレンジのときにオリフィスF60を介してライン圧が供給される。
L/RシフトバルブV18のポートP51に第1定常圧が印加されず、スプールが先端側に位置している状態(図の左側)では、ポートP54が閉じられるとともに、ポートP52とポートP53とが連通される。従って、油路L23にライン圧が導かれ、これが第2シフトリニアVFS2の元圧となる。図3に示すように、第2シフトリニアVFS2は、ノーマリーオープンタイプなので、オン時には油路L25に油圧を出力せず、オフ時には油路L23のライン圧を油路L25に出力する。
また、L/RシフトバルブV18のポートP55とポートP56とが接続されることにより、油路L29にライン圧が導かれる。さらに、L/RシフトバルブV18のポートP57が開放されることにより、油路L31及び油路L35がドレーンされ、かつポートP60が閉じられるとともに、ポートP55とポートP59とが連通されることにより、油路L25に第2シフトリニアVFS2の出力圧があるときは、それが油路L33を経由して第1ブレーキB1に供給される。
一方、L/RシフトバルブV18のポートP51に第1定常圧が印加され、スプールが基端側に位置している状態では、ポートP52が閉じられるとともに、ポートP54とポートP53とが連通される。従って、油路L27にライン圧が導かれているときには、これが油路L23を経由して第2シフトリニアVFS2の元圧となる。
また、L/RシフトバルブV18のポートP55が閉じられるとともにポートP56が開放されることにより、油路L29がドレーンされる。さらに、L/RシフトバルブV18のポートP58とポートP57とが連通されるので、油路L25に第2シフトリニアVFS2の出力圧があるときには、これが油路L31を経由して第2クラッチC2に供給されるとともに、油路L35にも分岐して導かれる。
また、L/RシフトバルブV18のポートP60とポートP59とが連通されることにより、Rレンジのときにはライン圧が油路L33を経由して第1ブレーキB1に供給される。
C1カットバルブV15は、第1クラッチC1への油圧供給可否を上流位置で切換える切換バルブである。C1カットバルブV15は、いわゆる段付きバルブであって、そのスプール最先端側(図の左側)のランド径が他のランド径よりも大きくなっている。C1カットバルブV15には、先端側から順に、ポートP31、P32、P33、P34、P35が設けられている。
C1カットバルブV15のポートP31には、オリフィスF31を介して油路L35が接続されている。また、C1カットバルブV15のポートP32には、B2カットバルブV16のポートP40に連通する油路L55が接続されている。なお、油路L55には、後述するようにB2カットバルブV16のスプールが先端側に位置した切換状態であり、かつB3カットバルブV17が基端側に位置した切換状態であるときに、ライン圧が導かれるようになっている。なお、C1カットバルブV15は、そのポートP32がスプールの段差部に開口しているので、ライン圧が印加されるときには、その大径側と小径側との面積差に作用するライン圧の押圧力が先端側に向けて作用する。
C1カットバルブV15のポートP33には、Dレンジ時にオリフィスF33及びチェックボールCB1を介してライン圧が供給される。チェックボールCB1は、穴とボールとの組合せによる一種の逆止弁であって、ポートP33にライン圧を供給する方向には油路を連通させ、ポートP33から作動油をドレーンする方向には油路を閉じる。従って、ポートP33にライン圧が供給されるときには、オリフィスF33とチェックボールCB1との両方を経由して速やかに油圧が供給され、ポートP33から油圧をドレーンするときにはオリフィスF33のみから緩やかにドレーンされる。
C1カットバルブV15のポートP34には、C1リレイバルブV19のポートP64に連通する油路L39が接続されている。この油路L39は分岐して第1シフトリニアVFS1の元圧側に接続されている。C1カットバルブV15のポートP35には、常時ライン圧が印加されている。このライン圧は、C1カットバルブV15のスプリング力とともにスプールを恒常的に先端側に押圧する。
C1カットバルブV15のポートP31にライン圧(第2シフトリニアVFS2の出力圧)が印加されない場合、及びポートP31とポートP32との両方にライン圧が印加される場合には、スプールが先端側に位置した切換状態となる(後者の場合、油圧による押圧力はバランスするが、スプリング力の分だけ先端側への押圧力が大きくなる)。このとき、C1カットバルブV15のポートP33とポートP34とが連通して、Dレンジであれば油路L39にライン圧が供給される。従って、第1シフトリニアVFS1に元圧が供給される。図3に示すように、第1シフトリニアVFS1は、ノーマリーオープンタイプなので、オフ時には油路L39のライン圧をポートP61,P62に出力し、オン時には出力しない。
一方、C1カットバルブV15のポートP31にライン圧が印加され、かつポートP32にライン圧が印加されない場合には、スプールが基端側に位置した切換状態となる。このとき、ポートP33が閉じられるので油路L39にライン圧が供給されない。なお、この場合、第1シフトリニアVFS1に元圧が供給されないだけでなく、第1クラッチC1への油圧の供給が上流側で遮断されるので、第1シフトリニアVFS1の状態やC1リレイバルブV19の切換位置に拘わらず第1クラッチC1に油圧が供給されない。
C1リレイバルブV19は、第1クラッチC1に対する油圧供給の有無を最終的に切換え、また供給初期における供給経路の切換を行う切換バルブである。C1リレイバルブV19には、先端側から順に、ポートP61、P62、P63、P64が設けられている。
C1リレイバルブV19のポートP61には、オリフィスF61を介して第1シフトリニアVFS1の出力圧が印加される。また、C1リレイバルブV19のポートP62には、第1シフトリニアVFS1の出力圧が直接印加される。C1リレイバルブV19のポートP63には、第1クラッチC1に連通する油路L41が接続されている。この油路L41は、第1シフトリニアVFS1からの出力圧が導かれる油路なので、その出力圧の振動を抑制するオリフィスF63とC1アキュームレータAC1が設けられている。C1アキュームレータAC1は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L41の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
C1リレイバルブV19のポートP61に第1シフトリニアVFS1の出力圧が印加されていない場合、印加されていてもその出力圧が小さい場合、及び印加初期であってオリフィスF61の作用によって印加が遅延されている場合には、スプールが先端側に位置した切換状態となる。このとき、C1リレイバルブV19のポートP64が閉じられるとともにポートP62とポートP63とが連通して、第1シフトリニアVFS1の出力圧があれば、それが油路L41を経由して第1クラッチC1に供給される。
一方、C1リレイバルブV19のポートP61に充分大きな第1シフトリニアVFS1の出力圧が印加されている場合、スプールは基端側に位置した切換状態となる。このとき、C1リレイバルブV19のポートP62が閉じられてポートP64とポートP63とが連通する。従って、油路L39において実質的に第1シフトリニアVFS1がバイパスされ、ライン圧が直接第1クラッチC1に供給される。
B2カットバルブV16は、主に第2ブレーキB2のA作動室B1a及び第2ブレーキB2のB作動室B1bに対する油圧供給の可否を上流位置で切換える切換バルブである。B2カットバルブV16には、先端側(図の右側)から順に、ポートP36、P37、P38、P39、P40、P41が設けられている。
B2カットバルブV16のポートP36には、オリフィスF36を介して油路L63が接続されている。油路L63は、第4シフトリニアVFS4の出力圧が導かれる油路なので、B2カットバルブV16のポートP36には、第4シフトリニアVFS4の出力圧が印加される。B2カットバルブV16のポートP37には、Dレンジのときにライン圧が供給され、ポートP38には、第3シフトリニアVFS3に連通する油路L43が接続されている。B2カットバルブV16のポートP39には、B3カットバルブV17のポートP45と連通する油路L53が接続され、ポートP40には、C1カットバルブV15のポートP32と連通する油路L55が接続され、ポートP41には、常時ライン圧が供給される。
B2カットバルブV16のポートP36に印加される第4シフトリニアVFS4の出力圧が充分小さい場合、スプールが先端側に位置した切換状態となる。このとき、B2カットバルブV16のポートP37とポートP38とが連通して、Dレンジであれば油路L43を経由して第2シフトリニアVFS2に元圧のライン圧が供給される。また、B2カットバルブV16のポートP39とポートP40とが連通することにより、油路L53にライン圧が導かれていれば、それが油路L55に供給される。
一方、B2カットバルブV16のポートP36に印加される第4シフトリニアVFS4の出力圧が充分大きい場合、スプールが基端側に位置した切換状態となる。このとき、B2カットバルブV16のポートP37が閉じられるとともにポートP38が開放されるので油路L48がドレーンされる。従って、第3シフトリニアVFS3に元圧が供給されない。また、B2カットバルブV16のポートP39が閉じられるとともにポートP40が開放されて油路L55がドレーンされる。
図3に示すように、第3シフトリニアVFS3は、ノーマリークローズタイプなので、油路L43に元圧が供給され、かつオン状態のときに油路L45に出力圧を供給する。そして、それが第2ブレーキB2のA作動室B1aに供給される。油路L45には、第2シフトリニアVFS2の出力圧の振動を抑制するオリフィスF38と2/6アキュームレータAC2とが設けられている。2/6アキュームレータAC2は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L45の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
一方、第3シフトリニアVFS3からの出力圧がない場合(油路L43に元圧が供給されていないか又は第3シフトリニアVFS3がオフ(オフフェイルを含む)状態である場合)には、第2ブレーキB2のA作動室B1aに対してライン圧が供給されない。
また、油路L45は、分岐してB3カットバルブV17に連通する油路L47となる。油路L47は、後述するように第2ブレーキB2のB作動室B1bに対する元圧の供給油路である。従って、第3シフトリニアVFS3からの出力圧がない場合には、第2ブレーキB2のB作動室B1bへのライン圧の供給もなされない。
B3カットバルブV17は、主に第3ブレーキB3への油圧供給可否を上流位置で切換えるとともに、第2ブレーキB2のB作動室B1bに対する油圧供給の有無を切換える切換バルブである。B3カットバルブV17には、先端側(図の左側)から順に、ポートP42、P43、P44、P45、P46、P47、P48、P49、P50が設けられている。
B3カットバルブV17のポートP42には、Dレンジのときにライン圧が印加され、ポートP43には、オリフィスF43を介して油路L49が接続されている。油路L49は、油路L47の下流側分岐油路である。従って、B3カットバルブV17のポートP43には、第3シフトリニアVFS3の出力圧が供給され、ポートP44には、第2ブレーキB2のB作動室B1bに連通する油路L51が接続されている。
B3カットバルブV17のポートP45には、B2カットバルブV16のポートP39に連通する油路L53が接続され、ポートP46には、オリフィスF46を介して常時ライン圧が供給されている。B3カットバルブV17のポートP47には、Rレンジのときにライン圧「R」が供給され、ポートP48には、第3シフトリニアVFS3に連通する油路L57が接続されている。B3カットバルブV17のポートP49には、Dレンジのときにライン圧「D」が供給され、ポートP50には、オリフィスF50を介して油路L47が接続され、上記ポートP50には、第3シフトリニアVFS3の出力圧が印加される。
B3カットバルブV17のポートP42にライン圧が印加されない場合、及びポートP42にライン圧が印加され、かつポートP50に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が充分大きい(略ライン圧である)場合には、スプールが先端側に位置した切換状態となる。このとき、B3カットバルブV17のポートP43とポートP44とが連通して、第3シフトリニアVFS3の出力圧があれば、それが油路L51を介して第2ブレーキB2のB作動室B1bに供給される。
また、B3カットバルブV17のポートP46が閉じられるとともに、ポートP45が開放されることにより、油路L53がドレーンされる。また、B3カットバルブV17のポートP49が閉じられるとともに、ポートP47とポートP48とが連通することにより、Rレンジであれば油路L57から第4シフトリニアVFS4に元圧のライン圧が供給される。なお、上述のようにRレンジのときには、油路L18からも第4シフトリニアVFS4にライン圧が供給される(図12参照)。
図3に示すように、第4シフトリニアVFS4は、ノーマリークオープンタイプなので、油路L18又はL57に元圧が供給され、かつオン状態のときに、オリフィスF48を介して出力圧を油路L59に供給する。油路L59には、第4シフトリニアVFS4の出力圧の振動を抑制するオリフィスF48と、3/5アキュームレータAC3とが設けられている。3/5アキュームレータAC3は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L59の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
油路L59は、その下流で油路L61、油路L63及び油路L65に分岐する。油路L61はAccシフトバルブV20のポートP66に連通する。油路L63は、オリフィスF36を介してB2カットバルブV16のポートP36に連通する。そして、油路L65は、オリフィスF66を介して第3ブレーキB3に連通する。
AccシフトバルブV20は、第3ブレーキB3への油圧供給がなされる際に、NRアキュームレータAC5を有効とするか否かを切換える切換バルブである。AccシフトバルブV20には、先端側(図の左側)から順に、ポートP65、P66、P67、P68、P69、P70、P71が設けられている。
AccシフトバルブV20のポートP65には、オリフィスF65を介して油路L29が接続されている。従って、AccシフトバルブV20のポートP65には、L/RシフトバルブV18のスプールが先端側に位置した切換状態であるときにライン圧が印加される。
AccシフトバルブV20のポートP66には、油路L59、L61を経由して第4シフトリニアVFS4の出力圧が供給され、ポートP67には、第3ブレーキB3に連通する油路L69が接続されている。油路L69は、上記油路L65の下流側に設けられた分岐油路である。AccシフトバルブV20のポートP68には、NRアキュームレータAC5に連通する油路L67が接続されている。
NRアキュームレータAC5は、第3ブレーキB3に対する油圧供給の初期に、その立ち上がりを遅延させる特性(いわゆる棚圧特性)を作るためのアクチュエータである。NRアキュームレータAC5は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L67(を含む第3ブレーキB3への供給油路)の容積変化によって、棚圧特性を作る。AccシフトバルブV20のポートP69は、ポートP71と接続されている。また、AccシフトバルブV20のポートP70には、Dレンジのとき、オリフィスF70を介してライン圧が印加される。
AccシフトバルブV20のポートP65にライン圧が印加されない場合、及びポートP65とポートP71とにライン圧が印加される場合(この場合、ライン圧による押圧力がバランスし、リターンスプリング力の分だけ先端側への押圧力が大となる)には、スプールが先端側に位置した切換状態となる。
このとき、AccシフトバルブV20のポートP66とポートP67とが連通して、第4シフトリニアVFS4に出力圧があるときには、それが油路L69を経由して第3ブレーキB3に供給される。この油路L69は、油路L65との並列経路であって、オリフィスF66をバイパスする経路である。つまり、このバイパス経路が連通した場合は、第3ブレーキB3対する油圧の供給が、主にこの経路を介して速やかになされる。また、AccシフトバルブV20のポートP68がドレーンされるので、NRアキュームレータAC5が無効化され、棚圧特性は作られない。
また、AccシフトバルブV20のポートP69が閉じられるとともにポートP70とポートP71とが連通することにより、DレンジであればAccシフトバルブV20のポートP70及びポートP71にライン圧が印加される。
一方、AccシフトバルブV20のポートP65にライン圧が印加され、かつポートP71にライン圧が印加されない場合には、スプールが基端側に位置した切換状態となる。このとき、AccシフトバルブV20のポートP66が閉じられるとともにポートP67とポートP68とが連通する。
従って、第4シフトリニアVFS4に出力圧があるときにはそれが油路L65を経由して第3ブレーキB3に供給されるとともに、その供給初期においてNRアキュームレータAC5が有効に作用する。すなわち、オリフィスF66とNRアキュームレータAC5との作用によって油圧の供給初期に棚圧が形成される。また、AccシフトバルブV20のポートP70が閉じられるとともに、ポートP69が開放されるので、ポートP71も開放(ドレーン)される。
次に、各レンジ、各変速段における各バルブの動作と各摩擦締結要素へのライン圧供給形態について説明する。図4は、Dレンジの自動変速モードにおける第1速(D1速)における主要油圧回路図であり、このD1速では、オンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオン(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオフ(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すように第1クラッチC1が締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は、以下のようになっている。
SOL−RedバルブV11は、油路L13に第1定常圧を出力する。ライン圧リニアVFSPLは、第1定常圧を元圧として油路L15にライン信号圧を出力する。パイロットシフトバルブV12は、ポートP14にライン信号圧が印加され、ポートP19にライン圧が印加されるので、スプールが先端側に位置した切換状態となる。従って、油路L11のライン圧が、パイロットシフトバルブV12のポートP15〜P16及び油路L17を経由してPレギュレータバルブV13のポートP20に導かれ、第2パイロット圧として印加される。また、パイロットシフトバルブV12のポートP17が開放状態となるので油路L18がドレーンされる。PレギュレータバルブV13は、ポートP21に第1パイロット圧、ポートP20に第2パイロット圧が印加されるので、比較的低いDレンジライン圧を出力する。マニュアルバルブV10は、そのライン圧を油路L11から受け入れて、油路Dに出力する。
C2カットバルブV14は、第1ポートP25に第1定常圧が印加され、また上記ライン圧低減制御によって基端側切換状態となる。従って、C2カットバルブV14のポートP29とポートP28とが連通し、ライン圧(第2シフトリニアVFS2の元圧)が油路L27に導かれる。
D1速では、オンオフSOL1がオフとなるので、このオンオフSOL1は、第1定常圧と同じとされるので、同じ大きさの出力圧を油路L22に出力する。L/RシフトバルブV18は、ポートP51にオンオフSOL1の出力圧(第1定常圧)が印加されるので、スプールが基端側に位置した切換状態となる。L/RシフトバルブV18のポートP54とポートP53とが連通して、油路L27からのライン圧が油路L23に出力される。しかし、第2シフトリニアVFS2がオン(クローズ)とされるので、油路L25に、油圧が供給されることはない。従って、L/RシフトバルブV18のポートP58と、ポートP57とが連通するものの、油路L31から第2クラッチC2にライン圧が供給されないので、第2クラッチC2は開放状態となる。また、油路L29及び油路L35にもライン圧が供給されない。L/RシフトバルブV18のポートP60とポートP59とが連通するが、ポートP60にライン圧が供給されないので、油路L33から第1ブレーキB1にもライン圧が供給されず、第1ブレーキB1は開放状態となる。
C1カットバルブV15は、ポートP31に油圧が印加されず、ポートP35にライン圧が印加され、さらに後述するように油路L55に導かれたライン圧がポートP32に印加されるので、スプールが先端側に位置した切換状態となる。従って、C1カットバルブV15のポートP33とポートP34とが連通し、ポートP33に供給されたライン圧が油路L39に出力される。第1シフトリニアVFS1は、油路L39のライン圧を受け、その出力圧をC1リレイバルブV19のポートP61,P62に出力する。
C1リレイバルブV19は、第1シフトリニアVFS1の出力圧が低い締結初期段階では、オリフィスF61の作用も相俟ってポートP61に印加される油圧が低く、スプールが基端側に位置した切換状態となっている。この段階では、C1リレイバルブV19のポートP64が閉じられるとともに、ポートP62がポートP63に連通した状態となって、第1シフトリニアVFS1の出力圧が油路L41を経由して第1クラッチC1に供給される。その後、第1シフトリニアVFS1の出力圧が高められるに従い、C1リレイバルブV19のポートP61への印加油圧が高くなるので、スプールが先端側に位置した切換状態に切換わる。そうすると、図示のように、C1リレイバルブV19のポートP63への連通ポートがポートP62からポートP64に切換わるので、油路L39のライン圧が直接油路L41から第1クラッチC1に供給されるようになる。こうして第1クラッチC1が締結される。
なお、第1シフトリニアVFS1の出力圧は、定常状態ではライン圧となるが、締結初期段階においては適宜調整される。例えばN→D1のシフトチェンジ時においては、第1クラッチC1か適正に締結し、速やかかつトルク変動(N→Dエンゲージショック)の小さなシフトチェンジがなされるように第1シフトリニアVFS1の出力が調整される。
B2カットバルブV16の動作は、ポートP37にライン圧が供給され、ポートP36に油圧が導かれないので、スプールが先端側に位置した切換状態となる。従って、B2カットバルブV16のポート39とポート40とが連通し、油路53に第2信号の元圧が導かれているので、それを油路55に出力する。また、B2カットバルブV16のポートP37とポートP38とが連通するので、第3シフトリニアVFS3に元圧が供給される。但し、第3シフトリニアVFS3がオフとされるので油路L45には油圧が出力されない。従って、第2ブレーキB2のA作動室B1a及び第2ブレーキB2のB作動室B1bに油圧が供給されない。従って、第2ブレーキB2は解放状態となる。
B3カットバルブV17は、ポートP49にライン圧が印加され、ポートP50に第3シフトリニアVFS3の出力圧が印加されないので、スプールが先端側に位置した切換状態となる。従って、B3カットバルブV17のポートP44が開放されて油路L51(つまり第2ブレーキB2のB室B2b)がドレーンされる。また、B3カットバルブV17のポートP49とP48とが連通状態となって、第4シフトリニアVFS4に元圧が供給される。しかし、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)状態であるので、油路L59には油圧が出力されない。従って、AccシフトバルブV20の状態の如何に拘わらず、第3ブレーキB3に油圧が供給されず、第3ブレーキB3が解放状態となる。
図5は、Dレンジのマニュアルモードにおける第1速(M1速)における主要油圧回路図である。図3に示すように、M1速では、オンオフSOL1がオン(クローズ)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(オープン)、第3シフトリニアVFS3がオフ(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すように第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
マニュアルバルブV10、SOL−RedバルブV11、ライン圧リニアVFSPL、パイロットシフトバルブV12、PレギュレータバルブV13及びC2カットバルブV14の動作は、上記D1速の場合と同様である。これはDレンジにおいて共通なので、以下の第2〜第6速の説明では省略する。
C1カットバルブV15、B2カットバルブV16、B3カットバルブV17、C1リレイバルブV19、AccシフトバルブV20、第1シフトリニアVFS1、第3シフトリニアVFS3及び第4シフトリニアVFS4の動作は、上記D1速の場合と同様である。従って、第1クラッチC1が締結状態となり、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が解放状態となる。
一方、D1速とは異なり、オンオフSOL1がオンとされるので、その出力圧が0となる。L/RシフトバルブV18は、ポートP51に印加されるオンオフSOL1の出力圧が0なので、スプールが先端側に位置した切換状態となる。従って、L/RシフトバルブV18のポートP54が閉じられるとともに、ポートP52とポートP53とが連通し、L/RシフトバルブV18のポートP52に供給されたライン圧は、油路L23を経由して第2シフトリニアVFS2に導かれる。
また、L/RシフトバルブV18のポートP55とポートP56とが連通して、ポートP55に供給されたライン圧が油路L29に導かれる。このことは、油圧スイッチPSWによって検知される。つまり、油圧スイッチPSWによってL/RシフトバルブV18のスプールが先端側に位置した切換状態にあることが確認される。その確認を受けて第2シフトリニアVFS2がオフ状態とされる。それによって第2シフトリニアVFS2は、油路L23から受けたライン圧を油路L25に出力する。そして、L/RシフトバルブV18のポートP58とポートP59とが連通しているので、油路L25からポートP58に導かれたライン圧は、油路L33を経由して第1ブレーキB1に供給される。従って、第1ブレーキB1が締結状態となる。
なお、第2シフトリニアVFS2の出力圧は、定常状態ではライン圧となるが、締結初期段階においては適宜調整される。例えば、D1→L1チェンジの場合、第1ブレーキB1の締結によってエンジンブレーキの利きが強くなるが、その際に適正な応答性を確保しつつトルク変動(チェンジショック)が抑制されるように、第2シフトリニアVFS2の出力圧の増大速度が調節される。
図6は、第2速(2nd)における主要油圧回路図である。図3に示すように、第2速では、オンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオン(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオン(オープン)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すように第1クラッチC1及び第2ブレーキB2が締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
オンオフSOL1、第1シフトリニアVFS1、第2シフトリニアVFS2、C1カットバルブV15、L/RシフトバルブV18及びC1リレイバルブV19の動作は、上記D1速と同様である。従って、第1クラッチC1が締結状態となり、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1が解放状態となる(D1→2変速の場合は、これらの状態が継続される)。
B2カットバルブV16の動作も、上記D1速の場合と同様であって、油路L43に第3シフトリニアVFS3の元圧が導かれる。そして、D1速と異なり、第3シフトリニアVFS3がオンとされるので、油路L45から第2ブレーキB2のA作動室B1aに第2シフトリニアVFS2の出力圧が出力される。従って、第2ブレーキB2が締結する。
なお、締結初期には、第3シフトリニアVFS3によって適宜出力圧(締結圧)が調整され、締結によるトルク変動(例えば1→2変速ショック)が緩和される。また、油路L45から分岐する油路L47,L49にも、第3シフトリニアVFS3の出力圧が導かれる。
B3カットバルブV17は、第3ブレーキB2の締結初期段階であってポートP50に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が低いときには、D1速の場合と同様、スプールが基端側に位置した切換状態となっている。従って、油路L49に導かれた第3シフトリニアVFS3の出力圧は、B3カットバルブV17のポートP43で遮断されている。そして、第2ブレーキB2の締結後期から締結後において、B3カットバルブV17のポートP50に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が大きくなると、図示のようにスプールが先端側に位置した切換状態となる。すると、B3カットバルブV17のポートP43とポートP44とが連通して、第3シフトリニアVFS3の出力圧が油路L51から第2ブレーキB2のB作動室B1bに供給される。
このように第2ブレーキB2は、その締結時においてはA作動室B1aに供給される油圧のみによって締結される。そのため、第3シフトリニアVFS3の出力圧の変化に対する第2ブレーキB2のトルク容量の変化(ゲイン)が小さく、精密で締結時のトルク変動(変速ショック)が小さい締結が行われる。そして、第2ブレーキB2の締結後においては、そのB作動室B1bからの油圧も加わり、大きなトルク容量を確保することができる。
第4シフトリニアVFS4及びAccシフトバルブV20の動作は、上記D1速の場合と同様であり、第3ブレーキB3にライン圧が供給されず、第3ブレーキB3は解放状態となる。
図7は、第3速(3rd)における主要油圧回路図である。図3に示すように、第3速では、オンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオン(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオフ(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となる。その結果、図2に示すように第1クラッチC1及び第3ブレーキB3が締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は、以下のようになっている。
オンオフSOL1、第1シフトリニアVFS1、第2シフトリニアVFS2、C1カットバルブV15、L/RシフトバルブV18及びC1リレイバルブV19の動作は、上記第2速と同様である。従って、第1クラッチC1が締結状態となり、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1が解放状態となる(2→3変速の場合は、これらの状態が継続される)。
一方、第2速と異なり、第3シフトリニアVFS3がオフとされるので、第2ブレーキB2のA作動室B1a及びB作動室B1bへの供給油圧が低下し、第2ブレーキB2が解放状態となる。
そして、B3カットバルブV17は、ポートP50に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が低下するので、スプールが基端側に位置した切換状態となる。従って、B3カットバルブV17のポートP49からポートP48を経て油路L57にライン圧が導かれる。ここで、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)とされるので、油路L59に出力圧が供給される。その出力圧は、その下流側である油路L61,L63,L65に導かれる。
AccシフトバルブV20は、ポートP65に油圧が印加されず、ポートP70にライン圧が印加されるので、スプールが先端側に位置した切換状態となっている。従って、AccシフトバルブV20のポートP66とポートP70とが連通するとともに、ポートP68がドレーンされてNRアキュームレータAC5が無効化される。従って、第4シフトリニアVFS4からの出力圧は、油路L65からの経路と、油路L61及び油路L67からの経路とから、第3ブレーキB3に対して並列に供給され、第3ブレーキB3が速やかに締結する。
なお、例えば2→3変速時においては、第3シフトリニアVFS3の出力圧の低減と第4シフトリニアVFS4の出力圧の増大とは適正な同期が図られるとともに、その油圧変化速度が適宜調節される。これによって、第2ブレーキB2の解放と第3ブレーキB3の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(2→3変速ショック)が緩和される。
B2カットバルブV16においては、そのポートP36に印加される第4シフトリニアVFS4の出力圧が略ライン圧程度まで高くなると、スプールが基端側に位置した切換状態となる。従って、B2カットバルブV16のポートP37が閉じられ、ポートP37からライン圧が供給されない。こうして、第3シフトリニアVFS3の元圧が遮断される。
図8は、第4速(4th)における主要油圧回路図である。図3に示すように、第4速では、オンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(オープン)、第3シフトリニアVFS3がオフ(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すように、第1クラッチC1及び第2クラッチC2が締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は、以下のようになっている。
C1カットバルブV15、C1リレイバルブV19、第1シフトリニアVFS1及び第3シフトリニアVFS3の動作は、上記第3速と同様であって、第1クラッチC1が締結状態となり、第2ブレーキB2が解放状態となる(3→4変速の場合は、これらの状態が継続される)。
B3カットバルブV17及びAccシフトバルブV20の動作は、上記第3速と同様であるが、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)とされるので、第3ブレーキB3に対する油圧の供給が行われず、第3ブレーキB3が解放状態となる。
B2カットバルブV16においては、そのポートP36に印加される第4シフトリニアVFS4の出力圧が低下するので、スプールが先端側に位置した切換状態となる。従って油路L53のライン圧が、B2カットバルブV16のポートP39からポートP40及び油路L55からC1カットバルブV15のポートP32に導かれる。
一方、オンオフSOL1及びL/RシフトバルブV18の動作は、上記第3速と同様であるが、第2シフトリニアVFS2がオフとされるので、油路L23のライン圧が油路L25及び油路L31から第2クラッチC2に供給される。従って、第2クラッチC2が締結状態となり、第1ブレーキB1が解放状態となる。
なお、例えば3→4変速時においては、第4シフトリニアVFS4における出力圧の低減と、第2シフトリニアVFS2における出力圧の増大とは、適正な同期が図られるとともに、その油圧の変化速度が適宜調節される。これによって、第3ブレーキB3の解放と第2クラッチC2の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(3→4変速ショック)が緩和される。
図9は、第5速(5th)における主要油圧回路図である。図3に示すように、第5速では、オンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオン(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(オープン)、第3シフトリニアVFS3がオフ(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となる。その結果、図2に示すように、第2クラッチC2及び第3ブレーキB3が締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は、以下のようになっている。
オンオフSOL1、第2シフトリニアVFS2及びL/RシフトバルブV18の動作は、上記第4速4thと同様であり、第2クラッチC2が締結状態となり、第1ブレーキB1が解放状態となる(4→5変速の場合は、これらの状態が継続される)。
一方、第1シフトリニアVFS1がオンとされることにより、第1クラッチC1への油圧供給が断たれ、第1クラッチC1が解放状態となる。
また、B3カットバルブV17及びAccシフトバルブV20の動作は、第4速4thと同様であるが、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)とされることにより、第3速3rdの場合と同様に、第3ブレーキB3に第4シフトリニアVFS4の出力圧が供給され、第3ブレーキB3が締結する。
なお、例えば4→5変速時においては、第1シフトリニアVFS1における出力圧の低減と、第4シフトリニアVFS4における出力圧の増大とは適正な同期が図られるとともに、その油圧変化速度が適宜調節される。これによって、第1クラッチC1の解放と第3ブレーキB3の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(4→5変速ショック)が緩和される。
図10は、第6速(6th)における主要油圧回路図である。図3に示すように、第6速では、オンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(オープン)、第3シフトリニアVFS3がオン(オープン)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すように、第2クラッチC2及び第2ブレーキB2が締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
オンオフSOL1、第1シフトリニアVFS1、第2シフトリニアVFS2、C1カットバルブV15、L/RシフトバルブV18及びC1リレイバルブV19の動作は、上記第5速5thと同様であり、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が解放され、第2クラッチC2が締結される(5→6変速の場合は、その状態が継続される)。
一方、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)とされることにより第3ブレーキB3への供給油圧が低下し、第3ブレーキB3が解放される。
第4シフトリニアVFS4の出力圧が低下すると、B2カットバルブV16のスプールが先端側に位置した切換状態となるので、第3シフトリニアVFS3に元圧が供給される。そして、第3シフトリニアVFS3がオン(オープン)とされることにより第2ブレーキB2のA作動室B1aに出力圧が供給され、第2ブレーキB2が締結する。
また、第2速の場合と同様に、第3シフトリニアVFS3の出力圧が高くなると、B3カットバルブV17のスプールが先端側に位置した切換状態となり、ポートP43とポートP44とが連通し、第2ブレーキB2のB室B2bにも第3シフトリニアFFS3の出力圧が供給される。
なお、例えば5→6変速時においては、第4シフトリニアVFS4における出力圧の低減と、第3シフトリニアVFS3における出力圧の増大とは、適正な同期が図られるとともに、その油圧の変化速度が適宜調節される。これによって、第3ブレーキB3の解放と、第2ブレーキB2の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(5→6変速ショック)が緩和される。
図11は、Rレンジ時における主要油圧回路図である。図3に示すように、RレンジではオンオフSOL1がオン(クローズ)、第1シフトリニアVFS1がオン(クローズ)、第2シフトリニアVFS2がオフ(オープン)、第3シフトリニアVFS3がオフ(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となっている。その結果、図2に示すように、第3ブレーキB3と、第1ブレーキB1とが締結される。この締結動作を達成する各バルブの作動状態は、以下のようになっている。
SOL−RedバルブV11及びライン圧リニアVFSPLの動作は、上記Dレンジの場合と同様であって、油路L13には第1定常圧が出力されるとともに、油路L15にはPLソレノイド圧が出力される。
パイロットシフトバルブV12は、そのポートP14にPLソレノイド圧が印加され、ポートP19にライン圧が印加されないので、スプールが基端側に位置した切換状態となる。従って、パイロットシフトバルブV12のポートP15が閉じられて、油路L17にライン圧が出力されない。つまり、PレギュレータバルブV13のフィードバックポートP20に第2パイロット圧が印加されない。また、パイロットシフトバルブV12のポートP18とポートP17とが連通されるので、油路L18にライン圧が導かれる。
上記PレギュレータバルブV13は、フィードバックポートP21に第1パイロット圧が印加され、これに隣接したフィードバックポートP20に第2パイロット圧が印加されないので、比較的高いRレンジ時ライン圧を出力する。マニュアルバルブV10は、そのライン圧を油路L11から受け入れ、油路「R」に出力する。
C2カットバルブV14の作動は、スプールが基端側に位置した切換状態となっているものの、ポートP29にライン圧が供給されないので、油路L27に対して油圧が出力されることはない。
オンオフSOL1、第2シフトリニアVFS2、L/RシフトバルブV18及び油圧スイッチPSWの作動は上、記M1速の場合と同様であって、第2クラッチC2が解放状態となり、第1ブレーキB1が締結される。また、油路L29にライン圧が出力され、これが油圧スイッチPSWによって検知される。
一方、B3カットバルブV17は、ポートP42にライン圧が印加されないので、スプールが先端側に位置した切換状態となる。従って、B3カットバルブV17のポートP49が閉じられるとともに、ポートP47とポートP48とが連通することにより、ポートP47からポートP48を介して油路L57及び第4シフトリニアVFS4にライン圧が供給される。そして、第4シフトリニアVFS4がオフとされるので、その出力ポートから油路L59に出力圧が供給される。
AccシフトバルブV20は、そのポートP65に油路L29からのライン圧が印加され、ポートP70にライン圧が印加されないので、スプールが基端側に位置した切換状態となる。従って、AccシフトバルブV20のポートP66が閉じられるとともに、ポートP68とポートP67とが連通され、NRアキュームレータAC5が有効化される。リニアソレノイドバルブである第4シフトリニアVFS4からの出力圧は、油路L65のみから第3ブレーキB3に供給されて、第3ブレーキB3が締結する。その際、NRアキュームレータAC5によって形成された適切な棚圧が供給される。
なお、第4シフトリニアVFS4は、油圧スイッチPSWによる油路L29の油圧上昇を確認した後に、出力圧を増大させる。すなわち、L/RシフトバルブV18のスプールが確実に先端側に位置した切換状態となり、またAccシフトバルブV20のスプールが基端側に位置した切換状態となって、NRアキュームレータAC5が有効化された後に出力圧を増大させることにより、より確実な油圧制御を行うことができる。
そして、例えばRレンジへのシフトチェンジ時においては、第2シフトリニアVFS2の出力圧増大と、第4シフトリニアVFS4の出力圧増大とが互いに同期を取りつつ行われる。これによって、第1ブレーキB1の締結と、第3ブレーキB3の締結とが円滑に行われ、上記シフトチェンジによるトルク変動が緩和される。
また、後進レンジ(Rレンジ)において、パイロットシフトバルブV12のポートP18に印加された後進レンジ時のライン圧「R」が所定値以上の場合には、図11及び図12に示すように連絡油路L18が連通状態となって上記後進レンジ時のライン圧「R」が第4シフトリニアVFS4のドレーンポートP3cに供給され、その出力ポートP3bから油路L59,L65等を介して第3ブレーキB3に上記後進レンジ時のライン圧「R」が供給される。
以上説明したように、当実施形態の自動変速機ATの制御装置は、各ソレノイドバルブが正常であるときには、前進6段という多段変速を行うことにより、より静粛で低燃費の走行を実現することができる。
そして、オイルポンプ10から吐出されて各摩擦締結要素等からなる油圧アクチュエータに供給される作動油のライン圧を調節するPレギュレータバルブV13からなるライン圧調圧バルブと、このPレギュレータバルブV13によるライン圧の生成時に排出される余剰油を潤滑部に供給する余剰油回路とを備えた自動変速機1の油圧制御装置において、上記PレギュレータバルブV13に、オイルポンプ10の吐出量が基準値未満であっても開口する第1ポートP23aと、上記吐出量が基準値以上となった時点で開口する第2ポートP23bとを設けるとともに、上記余剰油回路に、上記第1ポートP23aに連通する第1回路L19aと、上記第2ポートP23bに連通する第2回路L19bを設けたため、簡単な構成で必要個所に対する潤滑を適正に実行できる等の利点がある。
すなわち、上記実施形態では、第1ポート23aに連通した第1回路L19aを、メインシャフト及びメインシャフト周りの回転部材の潤滑個所に作動油を供給して潤滑するメイン潤滑手段74に接続するとともに、第2ポート23bに連通した第2回路L19bを、ディファレンシャルの潤滑個所に作動油を供給して潤滑するディファレンシャル潤滑手段(デフ潤滑手段)76と、上方に位置するセカンダリシャフト及びその周り回転部材の潤滑個所に設けられた潤滑部に作動油を供給して潤滑するセカンダリ潤滑手段77とに連絡したため、オイルポンプ10の吐出量が少なく、燃費の低減効果に大きな影響があるエンジンの低回転低負荷時に、不必要な潤滑が行われるのを防止し、これによってディファレンシャルにおける撹拌抵抗が増大するのを効果的に防止できるという利点がある。
したがって、エンジンの低回転低負荷時には、不必要な作動油供給を防止しつつ、必要個所に潤滑油を供給するとともに、上記撹拌抵抗が増大すること等に起因して燃費が悪化するのを効果的に防止することができる。しかも、オイルポンプ10の吐出量が多く、かつディファレンシャルの潤滑個所や、セカンダリシャフト及びその周りの回転部材の潤滑個所等からなる潤滑部に充分な量の潤滑油を供給することが望まれるエンジンの高回転高負荷時には、上記第2回路L19bを介してディファレンシャル潤滑手段76及びセカンダリ潤滑手段77に作動油を供給することにより、充分に潤滑できるという利点がある。
また、上記実施形態に示すように、第1ポート23aに連通した第1回路L19aを、自動変速機のトルクコンバータ3の下流に設けられた作動油ウォーマ(ATFウォーマ)75に連絡するとともに、第2ポート23bに連通した第2回路L19bを、上記作動油ウォーマ75とは別位置、例えばラジエータの側方部等に配設された作動油の外部空冷クーラ78に接続した場合には、エンジンの始動直後等の低回転低負荷時に、作動油ウォーマ(ATFウォーマ)75において熱交換を行うことにより、作動油の流動性を迅速に高めることができる。そして、作動油が高温状態となる傾向があるエンジンの高回転高負荷時には、上記作動油ウォーマ75及び外部空冷クーラ78の両方において作動油を効果的に冷却することにより、その過加熱を防止できるという利点がある。
さらに、上記実施形態では、ライン圧供給ポートP22を挟んでその一方側に、上記ライン圧を制御するための制御圧が印加される制御ポートP24が設けられるとともに、上記ライン圧供給ポートP22の他方側にライン圧のフィートバック制御圧が印加されるフィードバックポートP20,P21とが設けられたPレギュレータバルブV13からなるライン圧調圧バルブにおいて、上記ライン圧供給ポートP22に隣接した位置で制御ポートP24の設置部側に、上記第1ポートP23aと上記第2ポートP23bとを、この順序で配設したため、PレギュレータバルブV13を小型化してその構成を効果的に簡略化できるとともに、作動油のリーク量を効果的に低減して燃費をさらに向上できるという利点がある。
すなわち、図16に示すように、PレギュレータバルブV13aに一対のライン圧供給ポートP22a,22bを設けるとともに、このライン圧供給ポート22a,22bに隣接させて、それぞれ第1ポートP23Aと第2ポートP23Bとを分けて配設することもできるが、このように構成した場合には、上記一対のライン圧供給ポートP22a,22bが必要となるので、バルブ長が長くなるとともに、作動油のリーク量が多くなることが避けられない。
これに対して図14等に示す実施形態のように、ライン圧供給ポートP22に隣接した位置で上記制御ポートP24の設置部側に、上記第1ポートP23aと第2ポートP23bとをこの順序で配設した場合には、共通のライン圧供給ポートP22から上記第1ポートP23a及び上記第2ポートP23bに対して作動油を供給することができるため、バルブ長が長くなるのを防止するとともに、作動油のリーク量が多くなるのを防止できるという利点がある。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、自動変速機ATの骨格構造や摩擦締結要素の構成及びその締結パターン、各ソレノイドバルブの構成及びその通電パターン、具体的な油圧回路等は、上記実施形態以外のものであってもよい。
また自動変速機ATは前進6段のものでなくてもよく、5段以下または7段以上のものであってもよい。但し、より多段化の進んだ自動変速機ATに適用することにより、本発明の効果を顕著に享受することができる。