JP5125341B2 - 固相材料及びその製造方法 - Google Patents

固相材料及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5125341B2
JP5125341B2 JP2007235044A JP2007235044A JP5125341B2 JP 5125341 B2 JP5125341 B2 JP 5125341B2 JP 2007235044 A JP2007235044 A JP 2007235044A JP 2007235044 A JP2007235044 A JP 2007235044A JP 5125341 B2 JP5125341 B2 JP 5125341B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solid phase
phase material
light
hydrophilic
solid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007235044A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009065853A (ja
Inventor
誠 毛利
麻美子 成田
真人 塩澤
泰爾 井川
文彦 星野
修 渡辺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP2007235044A priority Critical patent/JP5125341B2/ja
Publication of JP2009065853A publication Critical patent/JP2009065853A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5125341B2 publication Critical patent/JP5125341B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • Physical Or Chemical Processes And Apparatus (AREA)

Description

本発明は、表面が親水化された固相材料及びその製造方法に関する。
近年、固相材料の表面に微小物体を固定化し、固相材料表面における物質の吸着や結合による各種固定化、反応、自己組織化及び分離等の各種の相互作用を生じさせるデバイスの構築が試みられている。このようなデバイスにおける固相材料の表面特性の制御は、相互作用の反応効率、再現性等を確保する観点から重要である。タンパク質などの生体分子を相互作用の対象とするデバイスでは、その使用時及び製造時において、生体分子が疎水性相互作用等により固相材料表面に吸着して、各種の不都合を生じさせる場合がある。このため、生体分子に関連するデバイスにおいては、固相材料表面の親水性制御が特に重要である。
固相材料の親水性を制御しようとする試みは種々行われている。例えば、基板上に光触媒膜を形成し、この光触媒膜に選択的に光照射して部分的に親水化し、表面の親水性の差を利用してタンパク質を固定化する技術が知られている(特許文献1)。また、PEGなどの親水性成分を固相材料のタンパク質を固定しない部分に導入することも知られている(特許文献2)。例えば、アルキレングリコール残基と、微小物体を固定化する活性エステル基などの官能基とを備える高分子材料を用い、微小物体を固定化する官能基と微小物体との共有結合により材料表面に微小物体を固定化するものが開示されている(特許文献3)。
一方、微小物体を固相材料の表面に固定化する技術として、光照射を利用した光固定化法が知られている(特許文献4)。光固定化法は、光応答性成分を含有する固相材料の表面に微小物体を供給し、光照射によって固相に光変形を生じさせることで微小物体を固定化する方法である。光固定化法によってタンパク質やDNAなどの微小物体を固相上の特定領域に固定化し、固定化された微小物体やその微小物体と相互作用する物質の分析・機能解析等を固相上で行うプロテインチップやDNAチップなどとして利用することが検討されている。このような光固定化を意図した固相材料においても、従来の固相材料と同様に、固相材料表面における相互作用や反応の検出精度や再現性を高めるためには、固相材料表面への微小物体及びその他の物質の吸着を抑制することが重要である。
特開2005−7295号公報 特開2004-125462号公報 特開2006−299045号公報 特開2003−329682号公報
しかしながら、これらのいずれの文献においても、相反する作用でもある微小物体の固定化と吸着の抑制とのそれぞれを適切に充足する固相材料は提供されていない。すなわち、微小物体を固相材料の任意の箇所に簡易に固定化するとともにそれ以外の領域において吸着を効果的に抑制することは実現されていない。また、上記特許文献4に開示される光固定化のための固相材料においても、固相表面の生体分子の吸着を抑制可能な親水性の付与は実現されていない。さらに、簡易に必要な表面に生体分子の吸着抑制能を付与する技術も開示されているとはいえない。
例えば、上記特許文献1に開示される技術では、固定化は単なる吸着に基づくものであるため、固定化力が十分であるとはいえないし、望まない領域への吸着の抑制程度も十分でなかった。また、上記特許文献2に開示される技術では、任意の場所に微小物体を固定化することができるユニバーサルな固相材料を提供できない。さらに、特許文献3に開示される技術では、微小物体の固定化後、当該固定化部位以外の活性エステル基等を不活性化する処理を行わねばならない。
また、例えば、上記特許文献4に記載される光固定化を意図した固相材料を、酵素などの生体分子を固定化して酵素反応等を行わせるマイクロリアクタなどとして利用するには、固相材料表面上において酵素等を精度よくまた微細に固定化することが好ましい。このためには、固定化すべき酵素を特定の固相材料表面に供給するのではく、酵素を固相材料の全面に供給した上で光照射時にパターニングを利用して光固定化するのが有利である。このためには非光照射部位における微小物体の吸着性が十分に低減されている必要があるが、本発明者らによれば、上記特許文献4に開示される光固定化用固相材料は、比較的吸着が少ないものの、微細パターニングには不十分であることがわかった。さらに、マイクロリアクタなどとして利用するためには、酵素の反応相手である基質や反応後の反応生成物の吸着を固相材料表面上の反応経路全体にわたって防ぐ必要がある。
また、親水性成分を含む材料を長時間水に浸漬し表面近傍に存在する親水性成分を表面に配向させる方法も考えられるが、この方法では親水化は可能であるものの通常その程度は小さく、ある程度の効果を得るためには、大量の親水性成分を固相材料に導入せねばならず、固相材料自体の特性が低下しかねなかった。
そこで、本発明は、任意の領域において生体分子等の吸着が抑制可能な程度に親水性が付与された固相材料及びその利用を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、微小物体を固相材料の任意の箇所に簡易に固定化するとともにそれ以外の領域において吸着を効果的に抑制することが可能な固相材料及びその利用を提供することを一つの目的とする。さらに、本発明は簡易に任意の箇所に生体分子等の吸着を抑制可能な程度の親水性が付与された固相材料及びその利用を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、固相材料として光応答性成分を含有する光応答性材料に着目した。そして、光応答性材料に親水性成分を含有させるとともに、この光応答性材料の表面に親水性媒体を接触させた状態で光照射することで当該接触領域の光応答性材料の表面の親水性を向上させることができるという知見を得た。本発明はこの知見に基づいて提供されるものであり、具体的には以下の手段が提供される。
本発明によれば、マトリックス中に、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と親水性成分とを含有し、光照射により光可塑化可能な固相材料の少なくとも一部の表面を親水性媒体と接触させた状態で光照射することにより得られる、固相材料が提供される。
本発明の固相材料においては、前記少なくとも一部の表面では光照射前よりも親水性が向上されていることが好ましく、また、前記少なくとも一部の表面では光照射前の水の接触角に比較して光照射後の水の接触角が5°以上低下していることも好ましい。
また、本発明の固相材料においては、前記マトリックスは高分子材料を含み、前記親水性成分及び/又は前記光応答性成分は、前記高分子材料に結合されていることが好ましい。また、前記マトリックスには、以下の式(1)で表されるアルキレングリコール残基含有成分を含有していることが好ましい。さらに、前記マトリックスは高分子材料を含み、前記アルキレングリコール残基含有成分は、前記高分子材料に結合されていることが好ましい。
(ただし、R1は、水素原子、置換基又は前記マトリックスの構成成分に対して連結されている連結基を表し、R2は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Zは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは、1以上100以下の整数を表す。)
本発明によれば、前記微小物体の光固定化用の固相材料である上記いずれかの固相材料が提供される。この固相材料においては、前記少なくとも一部の表面における、以下の式で表される光照射選択的固定化能が3.0倍以上とすることができる。
光照射選択的固定化能=微小物体を前記固相材料の表面に供給して光照射して光固定化したときの固定化量/前記微小物体を光照射しない以外は同一の条件で前記固相材料の表面に供給したときの吸着量
前記微小物体は生体分子とすることができる。また、前記微小物体は生体分子を含むことが好ましく、前記生体分子はタンパク質を含むことがより好ましく、タンパク質としては酵素であることが好ましい。酵素としては、リパーゼ又はセルラーゼ等とすることができる。また、この固相材料は、前記微小物体を選択的光照射によりパターニングして固定化用とすることが好ましい。
本発明によれば、固相材料であって、マトリックス中に光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と親水性成分とを含有し、前記光応答性成分と前記親水性成分とは、光照射により前記固相材料に光変形を誘起するとき、前記少なくとも一部の表面の親水性を向上可能である、材料が提供される。
本発明によれば、固相材料の製造方法であって、マトリックス中に、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と親水性成分とを含有し、光照射により光可塑化可能な固相材料を準備する工程と、前記固相材料の少なくとも一部の表面を親水性媒体と接触させた状態で光照射する工程と、を備える、固相材料の製造方法が提供される。
本発明によれば、固相材料の使用方法であって、上記いずれかの親水化された固相材料の前記少なくとも一部の表面を、疎水性部分を備える微小物体に暴露して前記固相材料を使用するとき、前記微小物体の前記少なくとも一部の表面への吸着を抑制する使用工程、を備える使用方法が提供される。前記使用工程は、前記少なくとも一部の表面の選択された領域に光照射して前記微小物体を固定化する工程であることが好ましい。
本発明によれば、微小物体が固定化された固相体の製造方法であって、上記いずれかの固相材料の前記少なくとも一部の表面に微小物体を供給し光照射して前記微小物体を固定化する工程、を備える、製造方法が提供される。前記固定化工程は、前記少なくとも一部の表面の選択された領域に光照射して前記微小物体を固定化する工程とすることが好ましい。
本発明によれば、微小物体が固定化された固相体であって、上記いずれかの固相材料と、前記固相材料の前記少なくとも一部の表面に固定化された微小物体と、を備える、固相体が提供される。前記微小物体は生体分子であることが好ましく、より好ましくは、前記生体分子はポリペプチドである。1種又は2種以上のポリペプチドが1種又は2種以上のパターンで固定化されていることがさらに好ましい。また、本発明の固相体は、前記ポリペプチドによって1種又は2種以上の反応を実施可能なリアクターであることも好ましい。
本発明によれば、微小物体が固定化された固相体の使用方法であって、上記いずれかの固相体に固定化された前記微小物体に前記微小物体と相互作用可能な分子を接触させて相互作用を生じさせる工程と、を備える、使用方法が提供される。
本発明は、固相材料、その使用方法、微小物体が固定化された固相体の製造方法、微小物体が固定化された固相体及び固相体の使用方法に関する。
本発明の固相材料は、マトリックス中に、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と親水性成分とを含有し、光照射により光変形を誘起可能な固相材料の少なくとも一部の表面を親水性媒体と接触させた状態で光照射することにより得られる固相材料である。本発明の固相材料によれば、親水性媒体と接触させた状態で光照射がなされた表面においては、それ以外の領域よりも親水性が向上されている。したがって、疎水性相互作用等に基づく吸着、典型的には吸着が抑制される。このため、本発明の固相材料は、生体分子の吸着を抑制することができる。
その一方、固定化しようとする微小物体を固相材料の当該表面に供給して光照射することで、微小物体を当該表面に光固定することができる。微小物体が疎水性部分を有する生体分子等の微小物体であっても光固定が可能である。このため、当該表面においては、光照射しない部分の吸着を効果的に抑制しつつ同時に微小物体(たとえそれが疎水性部分を有しているとしても)を固定化できる。この結果、本発明の固相材料によれば、光照射により高い選択性で部位選択的に微小物体を光固定することができるとともに、微小物体の固定化部位以外においては、生体分子等の吸着を抑制できる。
なお、本明細書において、「吸着」とは、「微小物体を固相材料に固定化するための光照射時における光非照射領域での吸着」と「固相材料を使用するときなど光非照射時における吸着」との双方を含む。後者の吸着としては、例えば、固相材料に微小物体を固定化した固相体を微小物体と他の成分との各種相互作用とを検出する場合における他の成分の固相材料表面への吸着を包含している。
本発明の固相材料によれば、このような光照射による親水性が向上された表面の領域(以下、親水化領域20ともいう。)は、親水性媒体との接触と光照射との双方が作用することにより固相材料に形成される。このため、親水性媒体の配置パターンと光照射パターンとを組み合わせることにより簡易にかつ高い自由度と精度で親水化領域を固相材料表面にパターニングすることができる。
また、本発明の固相材料によれば、親水化領域20を有しているため、微小物体を固相材料に固定化した固相体をタンパク質などの生体分子の存在下に使用したり、あるいはタンパク質などの生体分子と微小物体との相互作用を検出したりする場合において、意図しない吸着により使用状態が妨げられたり十分な相互作用結果が得られなくなることは回避又は抑制される。
さらに、本発明の固相材料によれば、親水性媒体との接触と光照射とによる簡易な手法で容易に固相材料の表面の任意の箇所を親水化させることができる。このような本発明の固相材料は、上記のような微小物体の固定化への利用に限定されず、生体分子を分析対象とする固相材料又は生体分子の存在下で使用する固相材料として利用することができる。
推論であって本発明を拘束するものではないが、本発明の固相材料は以下に示すようなマトリックス中の光応答性成分及び親水性成分の挙動、特に、親水性成分の挙動(再配置)に基づくものであると考えられる。図1には、光応答性成分を有するモノマーユニットと、親水性成分8を有するモノマーユニットとを含むモノマー組成物を重合して得られるアゾポリマー(例えば、式(4)で表されるものが挙げられる。)からなる固相材料4を例示して光応答性成分8の挙動の概略を示す。
まず、図1(a)に示すように、親水化前の固相材料3を準備する。
図1(b)に示すように、親水化前の固相材料3の表面を親水性媒体Wとしての水に接触させた状態で光照射して、アゾポリマー中の光応答性成分6にシス−トランスの光異性化を生じさせると、固相材料3は光可塑化した状態となる。すると、図1(c)に示すように、光照射中、水性媒体Wと接触する表面に親水性成分8が再配置される。すなわち、光照射により光可塑化した固相材料3において、親水性成分が水性媒体Wと接触する表面を指向して配向され、その結果、光照射後においてもその配向性が維持されて配列(再配置)される。また、親水性媒体Wが水を含むときには、こうした配向及び配列に伴って光照射部位では表面に水の層が形成されることが考えられる。こうして、光照射により水性媒体Wと接触した表面の親水性が向上された固相材料4が得られる。
次に、図1(d)に示すように、親水化領域20を備えることとなった固相材料4にタンパク質などの生体分子(微小物体10)を供給して任意の箇所に光照射する。すると、光照射した部位では、固相材料4が再度光可塑化して、微小物体10が固相材料4に固定化される。本発明を拘束するものではないが、この光照射時、親水性成分8が、水に比較して疎水性である微小物体10の表面から離れると推測される。光固定化は、固相材料4の表面上にある微小物体10に光照射して固相材料4に光変形を誘起させて、微小物体10を固相材料4の表面に固定化するものであり、光照射部位が親水化領域20であっても微小物体10は固定化される。一方、光照射していない部位では、親水化領域20によって固相材料4と微小物体10との疎水性相互作用の発現が抑制され、結果として微小物体10が固相材料4の表面に吸着することが抑制される。こうして、図1(e)に示すように、微小物体10が固定化された固相体2が得られる。
なお、本発明の固相材料によれば、さらに以下の有利な効果を奏することができる。すなわち、自在に親水化領域20を形成できるほか、微小物体の固定化領域も形成できるため、光照射時のパターニング等により必要に応じて任意の場所に微小物体を固定化することができるユニバーサルな固相材料を提供することができる。しかも、微小物体の固定化部位以外においては依然として吸着の抑制を実現しているので、固相材料4を生体分子と接触させて使用する場合における生体分子の微小物体10の固定化部位以外への吸着を抑制できる。この結果、例えば、ブロッキング処理や結合性官能基の不活性化処理も不要となっている。
さらに、本発明の固相材料によれば、酵素などの生体分子を固定化して酵素反応等を行わせるマイクロリアクタなどとして利用することができる。上記のように、当該親水化領域20では微小物体の固定化と生体分子などの吸着が抑制される親水化領域20を自在に形成できるからである。マイクロリアクタなどとして利用するためには、酵素等の固定化時のみならず、タンパク質の反応相手である基質や反応後の反応生成物の吸着を固相材料表面上の反応経路全体にわたって防ぐ必要があるが、このような吸着性を容易に確保できる。また、固相材料の表面の不特定領域に固定化しようとする微小物体を供給しても固定化したい箇所にのみ光照射することで当該箇所にのみ微小物体を固定化できるため、微小物体の固定化を光照射のパターニングを用いることにより微小物体を簡易にかつ確実に所望の箇所に固定化できるようになる。
さらに、本発明の固相材料によれば、光照射を用いることで照射部位の親水性を向上させることができる。すなわち、固相材料全体における親水性成分の含有量を変化させることなく、表面の親水性を簡易にかつ効果的に向上させることができる。したがって、表面親水性を向上させるために大量の親水性成分を固相材料全体に導入する必要がなくなり、親水性成分の導入による固相材料の特性への影響を抑制して親水性以外の特性が確保された固相材料を容易に得ることができる。
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図2は、本発明の固相材料の製造工程を模式的に示す図であり、図3は、本発明の固相材料に微小物体を固定化する工程を模式的に示す図である。なお、これらの図に示す各実施形態は、本発明の説明のために示すものであり、本発明の限定するものではない。
(固相材料)
本発明の固相材料4は、図2に示すように、マトリックス5中に、光応答性成分6と親水性成分8とを含有している固相材料3の少なくとも一部の表面を親水性媒体と接触させた状態で光照射することによって得られる。本発明の固相材料4とその親水化前の固相材料3とは、少なくとも一部の表面の親水性についてのみ相違するものの、それぞれのマトリックス5の組成に関し異なるものではない。したがって、以下の説明では、まず、親水化処理前の固相材料3の組成について説明するが、この構成は親水化処理後の本発明の固相材料4となんら相違するものではなく、そのまま親水化処理後の固相材料4に適用することができる。
(親水化前の固相材料)
本発明の親水化前の固相材料3は、マトリックス5中に光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分6と親水性成分8とを含有し、光照射により光可塑化を誘起可能な親水化用固相材料である。
(マトリックス)
固相材料3のマトリックス5は、光応答性成分6と親水性成分8とを保持し、光照射により固相材料3に光可塑化を誘起できる限りその材料は特に限定しない。例えば、低分子材料又は高分子材料を含む各種の有機材料、ガラスなどの無機材料、有機−無機複合材料等を用いることができる。光応答性成分6及び親水性成分8のマトリックス5中における分散性や結合性等を考慮すると、高分子材料などの有機材料又は高分子材料などの有機材料を含む複合材料であることが好ましい。また、光照射により、親水性成分6を固相材料3の表面近傍に再配置させるには、マトリックス5が光照射中にある程度の分子運動を起こしていることが好ましいという観点からも、マトリックス5は有機材料であることが好ましい。マトリックス5は、より好ましくは高分子材料である。
マトリックス5を構成する高分子材料としては、特に限定しないで各種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーを用いることができる。例えば、(1)オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ジエン系ポリマーなどの炭素多重結合系モノマーの重合体、(2)環状エーテル系ポリマーなどの環状モノマーの重合体、(3)エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ウレア系ポリマーなどの2官能性モノマーの重合体などが挙げられる。これらのうち、共重合の簡便性を考慮すると、オレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマーなどといった二重結合を有するモノマー(以下、二重結合性モノマーともいう)の重合体や、ウレタン系ポリマーが好ましい。より好ましくは、二重結合性モノマーの重合体である。特に、アクリル系ポリマーやメタクリル系ポリマー、アクリル−メタクリルコポリマーは、抗体等のタンパク質を固定化する際の吸着が少なく、抗体チップやマイクロリアクタなどにおいてバックグラウンドシグナルを効果的に抑制することができる。
なお、コポリマーの重合形態は特に限定しない。ランダムコポリマー、ランダムブロックコポリマー、ブロックコポリマーであってもよい。マトリックス5に均一に光応答性成分6や親水性成分8を分散保持させるには、ランダムコポリマー又はランダムブロックコポリマーであることが好ましく、より好ましくはランダムコポリマーである。
マトリックス5は、光照射による光応答性成分6の分子構造変化等によって結果として固相材料3が光可塑化し、形状変形(以下、光変形ともいう)を生じるように構成されていることが好ましい。本明細書において、光可塑化とは、光応答性成分6を含有するマトリックス5からなる固相材料3に光が照射されたとき、光応答性成分6の光による構造変化などによって固相材料3に可塑性が発現されることをいう。また、光変形とは、通常のマクロな意味での形状変化のほか、分子レベルでの運動による微小物体と固相材料表面との絡み合いなどによる変形も含む。このような変形の中には、変形量や変形形態の問題から通常の観察手段によっては明瞭に観察できないものもある。光可塑化及び光変形は、光応答性成分6がマトリックス5中に存在することにより、光照射時に、例えば、マトリックス5又は光応答性成分6の体積、密度、自由体積などが変化することによって誘起されるものと考えられる。
このようなマトリックス5から構成される固相材料3の三次元形態は特に限定しない。フィルム状体、シート状体、板状体のほか、球状体、不定形状体、針状体、棒状体、薄片状体などの各種の形状を採ることができる。また、固相材料3は、基板や粒子などの適当な支持体の一部又はその表面に保持されていてもよい。支持体としては、ガラス、シリコン、金などの無機材料であってもよいし、高分子材料などの有機材料であってもよい。支持体への薄膜化は、スピンコート、ディップコート、インクジェットなどの既知の方法により行うことができる。
(光応答性成分)
光応答性成分6は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる成分である。より具体的には、光応答性成分6は、光照射によりフォトクロミズムや分子の光誘起配向などを起こす成分である。なお、フォトクロミズムとは、一般的には、光により分子構造等の変化が生じる現象である。本発明で用いる光応答性成分6としては、一般にフォトクロミック化合物といわれる化合物や光異性化等の分子構造変化を伴わないで光誘起配向、光会合等の分子配列の変化(特に異方的な変化)を生じる化合物を用いることができる。
光応答性成分6としては、光照射時に光応答性成分6が大きく変形し、マトリックス5の分子運動性を向上させることができるような成分が好ましい。特に、光照射時の変形により影響される空間的な大きさが大きい光応答性成分6が好ましい。このような光応答性成分6がマトリックス5中に存在することにより、光照射時に、マトリックス5の分子運動性が向上し、親水性基の再配置が進行しやすくなる。したがって、分子構造の変化を伴うフォトクロミック化合物を用いることが好ましい。
光応答性成分6として、こうした光固定にこれまで用いられてきている各種成分を用いることができる。光応答性成分6としては、例えば、アゾ化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物などの有機化合物、カルコゲナイトガラスと総称される無機材料などが挙げられる。光応答性成分6は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
光応答性成分6としては、アゾ基(−N=N−)を有する色素構造を有する化合物(アゾ化合物)であることが好ましい。アゾ化合物は、光照射等によりシス−トランス異性化を起こし、この異性化による分子レベルの運動がマトリックス5を可塑化させて変形を容易にする。なかでも、アミノアゾベンゼンやその誘導体の構造を持つアミノ型アゾベンゼン化合物が好ましい。アミノ型アゾベンゼン化合物は、典型的には、以下の式(2)で表すことができる。
式(2)中、R及びR4は、それぞれ独立して水素原子、置換基を表し、Xは、水素原子、電子吸引性置換基又は電子供与性置換基を表す。
3及びR4における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、アリール基、アリル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基、イソシアネート基、エポキシ基等を例示することができる。特に、R3及びR4における前記置換基の一方が、末端に重合性の二重結合等を有するアクリル酸や(メタ)アクリル酸等のアクリル系化合物及びその他の二重結合性成分であるときには、式(2)は、二重結合性モノマーを表すことができるほか、前記二重結合性成分に由来する重合基を備える光応答性ポリマーを表す。また、R3及びR4における前記置換基の一方が、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等の重縮合又は重付加性の重合性成分であるときには、式(2)は、重合性モノマーを表すほか、前記重合性成分に由来する重合基を備える光応答性モノマーを表す。
また、Xにおける電子吸引性置換基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基又はその誘導体等が挙げられ、電子供与性置換基としては、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、アルキル基等が挙げられる。これらのうち、電子吸引性置換基が結合したものは、光照射中にシス−トランスの異性化を繰り返すことによりマトリックス材料が大きな可塑化作用を有するものと考えられるため好ましい。なお、アゾ化合物である光応答性成分6は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような光応答性成分6は、マトリックス5の構成材料とは別個の成分としてマトリックス5中に添加されていてもよいし、マトリックス5の一部(例えば、マトリックス5が高分子材料であるときにはその主鎖又は側鎖)に化学的な結合を介して存在していてもよい。前者の形態としては、マトリックス5を構成するポリマーと光応答性成分6を含有するポリマーとのポリマーブレンドが挙げられる。後者としては、マトリックス5を構成するポリマーが光応答性成分6を有するモノマーユニットを備えているポリマーが挙げられる。マトリックス5からの溶出やマトリックス5の分子運動性(分子運動性が高いと、光照射中に親水性成分8が固相材料3の表面に再配置しやすくなる。)を高める観点からは、後者の形態が好ましい。なかでも、マトリックス5を構成する高分子材料の主鎖に側鎖として結合していることがより好ましい。さらに、光応答性成分6と後述する親水性成分8とでは、少なくとも光応答性成分6がマトリックス5を構成する高分子材料に結合されていることが好ましい。また、光応答性成分6は、マトリックス5に均一に存在することが好ましいことから、マトリックス5を構成するポリマーは、光応答性成分6を含有するモノマーユニットを含むランダムコポリマー又はランダムブロックコポリマーであることが好ましい。より好ましくはランダムコポリマーである。マトリックス5における光応答性成分6の含有量は、親水化に必要な程度の光可塑性が得られる限り、特に限定されない。
(親水性成分)
親水性成分8は、水との親和性が高い官能基を有する成分である。水との親和性が高い官能基としては、例えば、アミド基、カルボキシル基、水酸基、スルホ酸基、リン酸基、チオール基(メルカプト基)、アミノ基、エーテル基、ウレタン基、イミノ基などがある。水との親和性の高さを考慮すると、好ましくは、アミド基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、チオール基(メルカプト基)、アミノ基である。より好ましくは、アミド基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基である。さらに好ましくは、アミド基である。親水性成分8は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
このような親水性成分8は、マトリックス5の構成材料とは別個の成分としてマトリックス5中に添加されていてもよいし、マトリックス5の一部(例えば、マトリックス5が高分子材料であるときにはその主鎖又は側鎖)に化学的な結合を介して存在していてもよい。マトリックス5からの溶出やマトリックス5の分子運動に伴って親水性成分8が固相材料3の表面に再配置しやすくなることを考慮すると、親水性成分8は、マトリックス5の一部に化学的な結合を介して存在することが好ましい。なかでも、マトリックス5を構成する高分子材料の主鎖に側鎖として結合していることがより好ましい。さらに、マトリックス5を構成する高分材料には光応答性成分6が結合していることが好ましい。
親水性成分8としては、例えば、上記親水性官能基を備える有機化合物やモノマー若しくはモノマーユニットが挙げられる。親水性官能基含有モノマーにおける重合性基は、すでに説明したマトリックス5において用いることのできるポリマーに用いることのできるモノマーと同様の重合性基を用いることができる。
マトリックス5における親水性成分8の含有量は、特に限定しないが、親水性成分8に含まれる親水性官能基部分の重量(例えば、親水性成分としてメタクリルアミドを導入した場合には、メタクリルアミドの重量ではなくアミド基(CONH2)の重量)が、固相材料3の全重量の40質量%以下であることが好ましい。40質量%よりも多くなると、材料の耐水性が低下し、使用中に材料の溶解・膨潤などが起こるおそれがある。より好ましくは20質量%以下である。20質量%より多くなると、親水性成分の増加による効果の向上が認められにくくなり、コストが高くなる。また、好ましくは、1質量%以上である。1質量%以下では効果が認められなくなる。
(その他の成分)
固相材料3のマトリックス5には、光応答性成分6及び親水性成分8以外の成分が含まれていてもよい。光応答性成分6の運動性を向上させる観点からは分子運動性の高い成分を含有することが好ましい。分子運動性の高い成分としては、アルキレングリコール残基を含有するアルキレングリコール残基含有成分、ソルビトールなどの多価アルコールを含む多価アルコール残基含有成分、多価アルコール残基とアルキレングリコール残基との双方を有する成分等が挙げられる。こうした成分を含有することにより、光照射時に親水性成分8の再配置が生じやすくなる。同時に、固相材料3を薄膜として作製するとき、残留応力の発生を抑制して膜質を均一化することができる。
(アルキレングリコール残基含有成分)
アルキレングリコール残基含有成分は、式(1)で表されることができる。ここで、式(1)におけるR1は、水素原子、置換基又は前記マトリックスの構成成分に対して連結されている連結基を表し、R2は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、Zは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは、1以上100以下の整数を表す。アルキレングリコール残基含有成分を含むことで、光応答性成分6に運動性を付与することができる。この結果、例えば、アルキレングリコール残基含有成分を含まない場合に比べて短い又は弱い光照射で同等以上の親水化を図ることができる。
式(1)中におけるR1は、水素原子、置換基又は前記マトリックスの構成成分に対して連結されている連結基である。置換基及び連結基は、光照射時の光応答性成分6による光可塑化や親水性成分8の再配置を妨げるものでない限り、特に限定しない。置換基は、例えば、アルキレングリコール残基含有成分をマトリックス5中に添加剤のごとく分散させる場合、R2と同様に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基としてもよいし、マトリックス5を構成する材料との相容性を考慮した成分や官能基としてもよい。また、連結基は、例えば、マトリックス5の一部を構成する官能基としてもよいし、あるいは、マトリックス5の構成成分に対して化学的な結合が可能な官能基としてもよい。連結基は、典型的には、マトリックス5がポリマーのとき、ポリマーを構成するモノマーの重合性官能基が重合した結果得られる構造を有している。
式(1)中におけるR2は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。炭素数が10を超えると、アルキレングリコール残基含有成分の分子運動性が低下しすぎるからである。好ましくは、水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基である。また、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であれば、入手容易性の点からも好ましい。
式(1)中におけるZは、炭素数1〜10のアルキレン基である。炭素数が10を超えると、アルキレングリコール残基含有成分の分子運動性が低下しすぎる。光応答性成分6の運動性を高める観点からは、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基がさらに好ましい。また、炭素数2〜4のアルキレン基であれば、入手容易性の点からも好ましい。
式(1)におけるnは、アルキレングリコール(Z−O)の繰り返し数を示すものであって、1以上100以下の整数である。100を超えると、マトリックス5を構成する材料の特性に与えるアルキレングリコール残基の影響が大きくなりすぎてしまい、マトリックス5の耐久性に影響を与えるおそれがある。好ましくは、1以上50以下の整数であり、より好ましくは、2以上30以下の整数であり、さらに好ましくは4以上25以下の整数である。4以上25以下であれば、光応答性成分6に適当な運動性を付与することができる。また、1以上50以下の整数であれば、入手容易性の点からも好ましい。
なお、繰り返し数nは、異なる繰り返し数で構成されるアルキレングリコール残基含有成分の混合物の平均繰り返し数を示すものであってもよい。また、繰り返し数nが2以上の場合、繰り返されるアルキレングリコール(Z−O)中のアルキレン基の炭素数は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
なお、マトリックスに導入するアルキレングリコール残基含有成分は、上記1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルキレングリコール残基含有成分の含有量は特に限定せず、付与したい運動性の程度等に応じた量を含有することができる。マトリックス5がポリマーの場合には、式(1)のうち−O−(Z−O)n−R2で表されるアルキレングリコール残基の含有量が、マトリックスの質量に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。1質量%未満だと、光応答性成分6の運動性向上効果が得られないからである。また、50質量%を超えると、マトリックス5の耐久性及び耐水性が低下してしまうおそれがある。より好ましくは、5質量%以上30質量%以下である。この範囲であると、適切な運動性を光応答性成分6に付与することができる。
(親水性媒体)
本発明の固相材料4は、親水化処理前の上記固相材料3の少なくとも一部の表面を親水性媒体Wと接触させた状態で光照射して得られる。親水性媒体Wとしては、親水性の液体等の流体、スラリーやエマルジョン等の流動性体及びゲル等の弾性変形体を用いることができる。親水性媒体Wは、固相材料3の表面に接触して光照射されたとき、照射された光が固相材料3の表面への到達可能な程度に光透過性を有し、その表面に光変形及び光固定されにくくかつその表面から容易に除去されるものであることが好ましい。こうした親水性媒体Wを用いることで、親水性媒体Wを介して固相材料3に光照射したとき、固相材料3において光可塑化を生じさせることができる。また、光照射時には、その親水性に基づき、親水性成分8を再配置して固相材料3の表面を親水化することができる。さらに、こうした親水性媒体Wであれば、光照射により光可塑化しても固相材料3の表面に変形を生じさせないため、でその表面から容易に除去することができる。
親水性媒体Wは,液体、エマルジョン、スラリー等の流動体及びゲル等の弾性変形体を用いることができるが、固相材料3との接触状態の形成容易性、操作性(固相材料3の供給及び固相材料3からの除去)、光透過性、光可塑化付与能等の観点から、液体であることが好ましい。また、親水性媒体Wは、少なくともその表面において親水性であればよいが、好ましくは、水を含有し、より好ましくは水を主体としている。典型的には、水を含有する親水性媒体であり、より好ましくは水を主体とする親水性媒体である。水を含有することで、より親水化程度を高めることができると考えられる。したがって、流動体の親水性媒体Wとしては、水及び水と相溶性のある有機溶媒の混液、水を主体とする混液、各種水溶液及び水(典型的には、実験用の純度で提供されるイオン交換水又は蒸留水)等が挙げられる。また、弾性変形体である親水性媒体Wとしては、含水ゲル、含水フィルム等とすることができる。なかでも、親水性媒体Wとしては、水を主体とする液体、水溶液、水を用いることが好ましい。こうした親水性媒体Wには、適宜相溶性又は溶解性成分を含めることができるが、こうした成分としては、例えば、塩化ナトリウムなどの塩、リン酸緩衝剤などのpH緩衝剤、Tween20などの界面活性剤、有機溶剤、有機化合物など特に限定されない。
(本発明の固相材料を得るための光照射)
(1)固相材料3と親水性媒体Wとの接触
本発明の固相材料4を得るには、光照射前の固相材料3の表面に親水性媒体Wを接触させた状態で光照射する。図2(a)に示すように、まず、準備した固相材料3の親水化しようとする表面に親水性媒体Wを接触させる。親水性媒体Wが液体等の流動体のとき、固相材料3の表面の所定領域に親水性媒体Wを滴下等により供給してもよいし、浸漬してもよい。親水性媒体Wがゲルなどの弾性変形体のときも、同様に固相材料3の表面の所定領域にゲルを配置するなどすることができる。
親水性媒体Wは、固相材料3の表面の親水化しようとする領域にのみ接触させるように供給してもよいし、親水化しようとする領域を超えてより広い範囲、例えば、固相材料3の一方の表面全体に供給してもよい。本発明における親水化は、親水性媒体Wの存在と光照射との双方を要し、親水性媒体Wが接触された領域であってかつ光照射がされた領域において親水性が向上される。このため、これらのいずれか一方の供給状態で親水化領域20を規定すればよい。したがって、光照射を固相材料3の表面の親水化したい領域に対して選択的に行う場合には、親水性媒体Wは不特定領域、例えば、固相材料3の一表面全体に供給してもよいし、光照射を固相材料3の表面に対して非選択的に行う場合には、親水性媒体Wを固相材料3の表面の親水化したい領域に選択的に供給すればよい。
親水性媒体Wを固相材料3の表面に選択的に供給する手法は特に限定されない。例えば、スポッター等で流動体である親水性媒体Wを所定のパターンで供給してもよいし、固相材料3の表面の親水化したい領域に対応するパターンに形成したゲル状の親水性媒体Wを固相材料3の表面に配置してもよい。
(2)光照射
次に、図2(b)に示すように、固相材料3の表面に接触させた親水性媒体Wに光照射する。光照射は、マトリックス5中の光応答性成分6に作用してマトリックス5を光可塑化できように、波長、強度及び時間等の条件を適宜設定すればよい。波長は、紫外光〜可視光の範囲の波長から適宜選択すればよい。例えば、光応答性成分が式(2)においてXがシアノ基(CN)であり、R3及びR4がアルキル基である場合には、青色LED等の460nm程度の波長を適当な時間照射することで光可塑化及び光変形可能な状態とすることができる。
なお、光照射を選択的に行うには、例えば、固相材料3の表面に対する光の照射領域に一定の分布を与えることができる。例えば、フォトマスクや干渉光、レーザー光による走査を利用する態様が挙げられる。
親水性媒体Wを介して光が照射されると、照射された光は、固相材料3の親水性媒体Wと接触した表面に到達する。到達した光は、固相材料3のマトリックス5の光応答性成分6に作用して、光異性化等によりマトリックス5を光可塑化する。この結果、図2(c)に示すように、親水性媒体Wが接触する固相材料3の表面の親水性が向上され、親水化領域20を備える本発明の固相材料4を得ることができる。こうした親水化は、すでに図1において説明したように、光可塑化したマトリックス5中の親水性成分8が、親水性媒体Wが接触する表面を指向して再配置することによると推察される。
本発明者らによれば、後述する実施例にも記載するように、光応答性成分6を含有し親水性成分8を含有しない固相材料3では、水などの親水性媒体Wを接触させた状態で光照射してもその前後で接触角が変化しないことを確認している。また、光応答性成分6及び水性成分8を含有する固相材料3を水などの親水性媒体W中に浸漬させても、接触角は若干低下するものの光照射した場合に比べて接触角の低下の度合いは小さく生体分子の吸着を抑制することはできないことがわかっている。
こうして得られた固相材料4の表面の親水化は、水の接触角測定により評価することができる。親水化領域20の接触角が親水性媒体Wに接触させた状態での光照射(親水化処理ともいう。)する前の接触角よりも小さいとき、親水化した、すなわち、親水性が向上したといえる。なお、接触角の測定は、こうした親水化処理の前後で同一条件で行い、得られた親水化処理前後の2つの接触角を比較すればよい。水の接触角は、例えば、固液界面測定装置(協和界面科学(株)製DropMaster500)を用い、イオン交換水2μl、着滴2秒後の画像を取り込み、その画像からθ/2法を用いて算出することができる。なお、少なくとも測定対象領域において5箇所以上異なる位置でした接触角の平均値を、固相材料4における水の接触角とすることが好ましい。なお、この方法と同等に水の接触角を測定できる他の方法を用いてもよい。ここで、この方法と同等に水の接触角を測定できる他の方法とは、この方法と他の方法とによって測定され水の接触角に実質的に同一、より具体的には統計上の有意差が認められない方法をいう。
固相材料4の親水化領域20では、親水化処理前の水の接触角に比較して親水化処理後の水の接触角が5°以上低下していることも好ましい。より好ましくは8°以上低下し、さらに好ましくは10°以上低下している。
本発明の固相材料4は、このように光照射により親水化された親水化領域20を備えている。光照射で親水化できるため、固相材料3の任意の表面を容易に親水化できる。したがって、全面が親水化された固相材料4や、任意の箇所が親水化された固相材料4、特に親水化領域20がパターニングされた固相材料4が提供される。
また、非光照射時における他の分子の吸着を抑制する観点からは、以下の算出式で表される光照射前に対する光照射後の微小物体吸着能が50%以下であることが好ましい。微小物体吸着能が50%以下に低減されていることで相互作用等の検出時におけるバックグラウンドを効果的に低減できる。より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、一層好ましくは15%以下である。

微小物体吸着能(%)=微小物体を前記固相材料の表面に所定条件で供給したときの吸着量/前記微小物体を光照射前の前記固相材料の表面に前記所定条件で供給したときの吸着量×100
なお、上記算出式における吸着量とは、例えば、吸着された微小物体量に基づくシグナルの強度とすることができる。典型的には、微小物体10を検出するのに用いることのできる可視光、紫外光及び蛍光のいずれかから選択される吸光度、発光強度若しくは蛍光強度又はこれらに基づくパラメータ等とすることができる。また、ここで用いる微小物体10は、生体分子であることが好ましく、より好ましくはタンパク質である。例えば、タンパク質としては、リパーゼやセルラーゼなどの固定化対象となりうる酵素などの生体分子であってもよく、アルブミンや抗体などの固相体2の使用時に用いる生体分子であってもよい。さらに、吸着量を得るための所定の条件は、光照射を伴わないものであれば特に限定しない。例えば、微小物体10を光照射して固定化するときの条件において光照射しない以外は同一の条件とすることができる。
(固相材料の親水化方法又は親水化された固相材料の製造方法)
なお、以上の実施形態によれば、マトリックス5中に光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分6と親水性成分8とを含有し、光照射により前記固相材料に光変形を誘起可能な固相材料3を準備する工程と、前記固相材料3の表面の少なくとも一部に親水性媒体Wを接触させた状態で光照射する工程と、を備える、固相材料3の親水化方法又は親水化された固相材料4の製造方法が提供される。この方法によれば、任意の箇所においてタンパク質などの生体分子の吸着を抑制可能な固相材料4を得ることができる。
(固相材料への微小物体の固定化)
固相材料4は、微小物体を光照射により固定化した固相体を得るための光固定化用の固相材料として用いることができる。固相材料4の表面に供給された微小物体10は、光照射されることで固相材料4の表面に固定(光固定)される。ここで、光固定とは、光応答性成分6を含有する固相材料4の表面に供給された微小物体10を、光照射による光応答性成分6の作用により固相材料4を光可塑化及び光変形させて固定化することをいう。図3には、固相材料4への微小物体10の固定化工程を示す。
本発明の固相材料4に微小物体10を固定化するには、まず、準備された固相材料4の表面に微小物体を供給する。微小物体10を固相材料4の表面に供給する方法は特に限定しないが、微小物体10を液状媒体に溶解又は懸濁させた状態で液状媒体を介して供給することが好ましい。また、微小物体10の供給にあたっては、固相材料4の表面に選択的に供給してもよいし、非選択的に供給してもよい。本発明の固相材料4の親水化領域20では、疎水性部分を有する微小物体10の吸着が抑制されていると同時に光固定化能は確保されているため、親水化領域20に対して微小物体4を非選択的に供給することができる。なお、ここでいう選択的な供給とは、例えば、スポッター等を利用して多数の微小物体10が特定の分布パターンに従って配置される態様などが挙げられる。このようなパターニングの一例としては、微小物体のスポットをアレイ状に供給する態様などが挙げられる。一方、非選択的な供給とは、固相表面4の不特定領域、例えば、微小物体10の非固定化部位を含む領域(例えば、固相材料4のの表面全域)に供給することを含む。
光固定化のための光照射の方法は特に限定しない。各種の伝播光、近接場光又はエバネッセント光などの任意の光が微小物体の存在する固相材料4の表面又はその近傍に到達するように照射すればよい。また、光照射は、固相材料4の表面全域に対して行ってもよいが、固相材料4の表面の固定化すべき所定領域に対して選択的に行うこともできる。
次に、光照射による光固定化について説明する。図3(a)には、表面の全域を親水化領域20とした固相材料4の親水化領域20の全域に対して微小物体10を固定化する際の作用について示す。図3(a)に示すように、固相材料4の親水化領域20に供給された微小物体は、光が照射されると、微小物体10の近傍の固相材料4が再度光可塑化及び光変形して、微小物体10が固定化される。意外にも、親水化領域20には、微小物体10が疎水性部分を有するタンパク質であっても強固に光固定化される。本発明を拘束するものではないが、親水性成分8がタンパク質などの微小物体10の表面から離れていくためと考えられる。一方、光が照射されない部位では、光可塑化や光変形が誘起されないため、微小物体10は光固定されないし、疎水性部分を有する微小物体10は、親水化領域20では強い吸着を生じないため容易に洗い流される。
このように、親水化領域20においては、光非照射時の吸着量に対する光照射時の光固定化量が従来の固相材料や親水化処理前の固相材料3のそれよりも増大している。したがって、微小物体を固定すべき領域も含めて光照射により親水化領域20とすることで、微小物体の固定化箇所以外では微小物体の光照射によらない吸着を抑制でき、微小物体の固定化すべき箇所では、微小物体を固定化できる。このため、光照射による固定化領域の選択性が高まった固相材料を提供できる。
図3(b)には、表面の一部を親水化領域20とした固相材料4の表面の非親水化領域30を含む全体に微小物体10を供給して固定化する際の作用を示す。図3(b)に示すように、非親水化領域30では、親水性が親水化領域20よりも小さいため、非親水化領域30に光照射されたときには、疎水性部分を有する微小物体10は、吸着と光固定の双方の作用により非親水化領域30において固定化される。一方、光が照射されない親水化領域20では、図3(a)と同様、可塑化や光変形が誘起されないため、微小物体10は光固定されないし、疎水性部分を有する微小物体10は、親水化領域20では強い吸着を生じないため容易に洗い流される。
このように、固相材料4の表面に選択的に親水化領域20を形成したとき、非親水化領域を、疎水性部分を有する微小物体10の固定化部位とすることで、より高い選択的固定化能を得ることができる。
なお、光照射を選択的に行うには、例えば、固相材料4の表面に対する光の照射領域に一定の分布を与えることにより、特定の分布パターンに従って固定化することができる。例えば、フォトマスクや干渉光、レーザー光による走査を利用する態様が挙げられる。このような方法により、微小物体の固定化領域が、例えば、マイクロリアクタにおける反応流路となるように固定化を行うことができる。
例えば、光固定化用としての固相材料4においては、少なくとも一部の表面、すなわち、親水化された表面において、以下の算出式で表される光照射による選択的固定化能が3.0倍以上とすることができる。この選択的固定化能が3.0倍以上であれば、光照射部位と光非照射部位との微小物体の固定化量に3.0倍以上の差があるため、光照射部位に光非照射部位と十分なコントラストで微小物体を固定化できる。この結果、光照射のパターンによって微小物体の明瞭なパターンを形成することができる。より好ましくは、5.0倍以上であり、さらに好ましくは7.0倍以上である。

光照射選択的固定化能=微小物体を前記固相材料の表面に供給して光照射して光固定化したときの固定化量/前記微小物体を光照射しない以外は同一の条件で前記固相材料の表面に供給したときの吸着量
なお、上記算出式における固定化量とは、例えば、光固定化された微小物体量に基づくシグナルの強度とすることができる。典型的には、微小物体10を検出するのに用いることのできる可視光、紫外光及び蛍光のいずれかから選択される吸光度、発光強度若しくは蛍光強度又はそれに基づくパラメータ等とすることができる。また、ここで用いる微小物体10は、生体分子であることが好ましく、より好ましくはタンパク質である。例えば、タンパク質としては、リパーゼやセルラーゼなどの固定化対象となりうる酵素などの生体分子であってもよく、アルブミンや抗体などの固相体2の使用時に用いる生体分子であってもよい。さらに、固定化量を得るための光照射条件等は特に限定しないで、微小物体10の光固定化に用いうる条件であればよい。
微小物体10の光固定化用としての固相材料4は、好ましくは上記した微小物体吸着能を充足していることが好ましい。このような固相材料4を用いることで、光固定化時のみならず使用時における吸着による不具合を効果的に防止できる。
また、光照射条件は、特に限定しないが、青色LEDなどの可視光を用いることが好ましい。また、固定化用の固相材料4としては、生体分子を微小物体として固定化することが好ましく、さらに、生体分子はポリペプチドを含むことがより好ましい。また、この固相材料4は、微小物体を選択的光照射によりパターニングして固定化するのに好ましく用いることができる。微小物体及び光固定化については後段にて詳細に説明する。
以上のことから、固相材料4の使用の他の一形態としては、固相材料4を準備する工程と、固相材料4の表面の少なくとも一部を親水性媒体と接触させた状態で光照射し、光照射後の固相材料4の少なくとも一部の表面を疎水性部分を備える微小物体10に暴露して固相材料4を使用するとき、微小物体10の少なくとも一部の表面への吸着を抑制して使用する工程を備える、使用方法が挙げられる。この使用工程は、少なくとも一部の表面の選択された領域に光照射して微小物体を固定化する工程とすることが好ましい。
(微小物体)
なお、本発明の固相材料4に利用できる微小物体10を以下のように例示できる。微小物体10は、有形である限り、その種類は特に限定されない。例えば、(1)金属、金属酸化物、半導体、セラミックス、ガラスなどの無機材料、(2)いわゆるプラスチックなどの有機材料、(3)タンパク質、核酸、糖類、脂質などの生体分子材料、(4)上記した(1)〜(3)の各種材料から選択される2種以上の材料を複合化した複合材料などから選ばれる1種又は2種以上の材料を用いることができる。好ましくは、生体分子材料である。
(生体分子)
本発明の対象とする生体分子は、一分子のみを意味するものではなく、二分子以上からなる同種分子の集合体であってもよいし、異種分子との複合体であってもよい。さらに、多数の同種又は異種の分子から構成される、例えば自己組織体などの組織体であってもよい。
生体分子としては、特に限定しないで、動物、植物、微生物、ウイルス等生物体に存在する、生物体が生産する又は生物体が代謝する天然由来の分子、これらを人工的に改変した分子であってもよいし、天然分子に依存しないで人工的に設計した分子であってもよい。また、生物から採取した分子のみならず、人工的に本来的にその分子が存在する生物体以外の生物において生産させた分子であってもよいし、生物体外で人工的に化学合成又は酵素等によって合成した分子であってもよい。
生体分子としては、典型的には、タンパク質、核酸、糖類、糖鎖、脂質(リポソームなどの脂質構造体も含む)、骨形成材料などの生体材料、各種の生物細胞及びその一部(例えば、ミトコンドリア、チラコイド、亜ミトコンドリア粒子など)、組織及び生物体自体(例えば、アルコール発酵用や乳酸発酵用の酵母や大腸菌など)などの生物材料が挙げられる。また、生体分子は、固相に固定化されるのに際して、他の有機材料及び/又は無機材料等と複合化されていてもよい。これらのうち、本固相材料に固定化する生体分子はタンパク質であるのが好ましい。
本明細書において、タンパク質とは、任意のサイズ、構造又は機能の、タンパク質、ポリペプチド及びオリゴペプチドを含んでいる。タンパク質としては、例えば、酵素(例えば、セルラーゼ、リパーゼ、ATP合成酵素、アルコール発酵又は乳酸発酵に関与する酵素など)、抗原、抗体、膜タンパク質、プロテオグリカン、レクチン又は細胞膜レセプターが挙げられる。また、抗体は、天然の又は全体的若しくは部分的に合成的に産生された免疫グロブリンを意味する。特異的結合能を保持するその全ての誘導体も包含される。核酸は、1本鎖であっても、2本鎖であってもよい。人工及び天然を問わず、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、DNA−RNAキメラ及び塩基やその他の修飾体を含んでいてもよい。さらに、その鎖長も特に限定しない。また、これらのタンパク質などの生体分子を結合又は吸着した微粒子(例えば、ポリマー微粒子、磁性粒子、シリカ粒子など)も含んでいてもよい。
なお、光固定のための光照射としては、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報、特開2004−251801号公報及び特開2007−51998号広報に記載の照射光や光照射方法を採用することができる。光固定化については、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報、特開2004−251801号公報、特開2006−233004号、特開2006−321719号及び特開2007−51998号広報において既に本出願人が開示しており、これらの方法を本発明における光固定化についても適用することができる。
本発明の親水化された固相材料4は、タンパク質など表面に疎水性部分を有する各種の生体分子やそのほかの分子の疎水性相互作用に基づく固相材料4の表面への吸着が抑制されている。このため、例えば、各種生体分子などの疎水性相互作用を発現するような物質の存在下において、これらの吸着を抑制することができる。したがって、固相材料4は、タンパク質を含む生体分子の存在下で使用される生体デバイス、すなわち、生体内で使用される医療用デバイス、生体分子を分離対象とする分離デバイス、生体分子を分析対象とする分析用デバイス、生体分子による反応を意図した反応デバイス、生体分子の自己組織化を意図した自己組織化デバイス等、各種の生体関連デバイス(容器等も含む)の材料として使用することができる。
こうした固相材料4の使用の一形態としては、固相材料4の少なくとも一部の表面を、疎水性部分を備える微小物体10に暴露して固相材料4を使用するとき、微小物体10の少なくとも一部の表面への吸着を抑制する使用工程、を備える使用方法が挙げられる。この方法によれば、不都合な生体分子等の吸着を抑制して、固相材料4の機能を吸着に妨げられずに発揮させることができる。この使用方法は、生体分子の存在下、あるいは生体分子を分離、分析、反応及び自己組織化等の対象とするデバイスとして固相材料を用いる場合に有用である。
(固相体及びその製造方法)
なお、以上の実施形態によれば、微小物体10が固相材料4に固定化された固相体2及びその製造方法も提供される。すなわち、本発明の固相体2は、固相材料4と、固相材料4の少なくとも一部の表面に固定化された微小物体10と、を備えることができる。上記した本発明の固相材料4の効果を固相体2として発揮することができる。すなわち、高い部位選択性で微小物体10が固定化されており、しかもそれ以外の部位での生体分子等の吸着が抑制された固相体2となっている。また、光照射のパターニングにより自在に微小物体10が固定化された固相体2となっている。さらに、微小物体10の固定化部位以外で生体分子等の吸着が抑制されているため、微小物体10と他の生体分子等との間の反応等の相互作用の吸着による妨害が回避又は抑制された固相体2となっている。
また、本発明の固相体2の製造方法は、固相材料4の少なくとも一部の表面に微小物体10を供給し光照射して微小物体10を固定化する工程、を備えることができる。特に、固相材料4の親水化領域20の選択された領域に光照射して微小物体を固定化することが好ましい。本製造方法によれば、本発明の固相材料4において上述した各種の利点を備えることができる。特に、高い部位選択性で微小物体10を固定化できるとともに、光照射時にパターニングを利用することで自在に微小物体10をパターニングすることができる。
なお、固相体2及びその製造方法においては、既に説明した微小物体10及び固相材料4についての各種の実施態様をそのまま適用することができる。なかでも、本発明の固相体2にあっては、微小物体10はポリペプチドなどのタンパク質であることが好ましい。また、1種又は2種以上のポリペプチドが1種又は2種以上のパターンで固定化されていることが好ましい。そして、これらのポリペプチドによって1種又は2種以上の反応を実施可能なリアクターであることがさらに好ましい。
(固相体の用途)
本発明の固相体2は、目的とする微小物体10の発現、相互作用、翻訳後修飾などといった微小物体の機能解析や、微小物体10を利用した他の物質の分析や機能解析、反応、吸着等に用いることができる。すなわち、本発明の固相体2は、いわゆるプロテインチップやDNAチップ、抗体チップ等として診断や治療等に利用することができる。また、酵素反応等を行わせるバイオリアクタやマイクロバイオリアクタ、ATP合成バイオリアクタなどの各種リアクターや、反応触媒、脱臭剤などの所定物質の除去、VOC(揮発性有機化合物)の低減用触媒、観察対象(例えば、AFM(原子間力顕微鏡)用の試料)を固定化するための基板などとしても利用することができる。特に、本固相材料は、光照射による微細パターニングを利用した微小物体の固定化が可能であることから、マイクロリアクタとしての利用に好適である。
(固相体の使用方法)
本発明の固相体の使用方法は、本発明の固相体2に、微小物体10と相互作用する分子を接触させて前記相互作用を生じさせる使用工程を備えることができる。ここでいう相互作用とは、特に限定しないが、例えば、本発明の固相体2の用途における各種の相互作用が挙げられ、使用工程には、上記固相体2の用途における使用工程を含むことができる。また、本発明の使用方法によれば、上記した本発明の固相材料4及び固相体2に基づく効果を得ることができる。すなわち、固相体2を利用して微小物体10と他の分子との相互作用を発現させるとき、微小物体10の固定化部位以外における生体分子などの他の分子の吸着を抑制できるため、反応性及び再現性に優れる相互作用を生じさせることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下に例示する具体例に限定されるものではない。
(1)アゾポリマーへの親水性成分の導入
以下の式(3)に示す化合物と、市販のメタクリル酸メチル、メタクリル酸あるいはメタクリルアミド(いずれも和光純薬製)を、各種割合で共重合し式(4)に示す固相材料を合成した。ここで、メタクリル酸およびメタクリルアミドは親水性成分にあたる。表1に固相材料の共重合比率と平均分子量を示す。共重合体1は、親水性成分の導入のない固相材料である。共重合体2の親水性基の含有量は6.4質量%、共重合体2の親水性基の含有量は14質量%である。
なお、重合反応は以下のようにして行った。モノマー混合物(合計10mmol)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、40mg、0.24mmol)をDMF(10ml)に溶解した。室温で30分間窒素バブリングを行った後、窒素気流下、60〜70℃で4時間撹拌して重合反応を行った。反応溶液を室温まで冷却した後に、反応溶液をメタノール(500ml)にゆっくりと滴下した。沈殿したポリマーをろ過により回収し、アセトン(10ml)に溶解した。アセトン溶液をメタノール(500ml)にゆっくりと滴下し、再度ポリマーを沈殿させた。ポリマーをろ過により回収し、40℃で一晩真空乾燥させることにより、固相材料を得た。表1に示す得られた固相材料の共重合比は、重クロロホルム溶媒で、日本電子製の超伝導フーリエ変換核磁気共鳴装置(JNM-LA500)を用いて1H-NMRを測定し、プロトンの積分値から算出した。また、分子量は、クロロホルム溶媒で、昭和電工(株)製のGPC(ShodexGPC-101、カラム:K-800RL+K-805L×2)を用いて測定し、ポリスチレン換算の分子量を算出した。
(2)アゾポリマー薄膜の作製
各共重合体50mgを、それぞれピリジン4mLに溶解し、これらの溶液をそれぞれスライドガラス基板上に1mLほど滴下した。そしてスライドガラス基板を4000r.p.m.で回転させて溶媒を除去し、各スライドガラス基板の表層に均一な厚さの高分子フィルムを作製した。これらの高分子フィルムはいずれも膜厚が約40nmであった。
(3)アゾポリマー上へ水をのせた状態での光照射による接触角変化
各アゾポリマー薄膜上にMilliQ水50μlを滴下し、ギャップカバーガラス(松浪硝子工業株式会社、品番:CG00044、サイズ:24mm×60mm、ギャップ:20μm)を用いて全面に展開した。青色LED(20mW/cm)を用いて30分間光照射した。以下、水の存在下で所定の光照射を行う処理を親水化処理という。その後、ギャップカバーガラスを取り外し、窒素気流下で乾燥した。なお、それぞれの共重合体薄膜の比較例として、光照射しない以外は同様に処理した試料も作製した。
(4)接触角の測定
得られた薄膜の親水化処理前後の接触角変化を調べた。接触角は固液界面測定装置(協和界面科学(株)製DropMaster500)を用いて測定した。イオン交換水2μl、着滴2秒後の画像を取り込み、その画像から接触角をθ/2法で算出した。各共重合体薄膜上でイオン交換水を滴下する場所を変えて5回測定し、その平均値を算出した。接触角測定結果を表2に示す。
表2に示すように、親水性成分がない共重合体1では、親水化処理前後での接触角の変化はなく、表面近傍の官能基の再配置は起こっていないと考えられる。一方、共重合体2、3では親水化処理により接触角が10°前後低下しており、親水化処理により確実に親水化していることがわかった。共重合体1〜3の結果から、共重合体2、3では、親水化処理により親水性成分が表面に再配置していることが示唆された。なお、水をのせても光照射しない場合には、いずれも約2°しか接触角は低下しなかった。このことから、表面に親水性成分を局在化させるには、水と光照射の両方を備える親水化処理が必須であることがわかる。
(5)酵素(リパーゼ)の固定
酵素としてLipase PS Amano(製造:天野エンザイム株式会社、販売:和光純薬工業株式会社、細菌Burkholderia cepacia由来)を用いた。リパーゼ 10mgをPBS 1mlに添加し、30分間ゆっくりと攪拌した。リパーゼがすべて溶解しなかったので、遠心分離(14000rpm、5分)により不溶分を取り除いた。得られたリパーゼ溶液の濃度を、溶液の吸光度測定(波長:280nm、光路長:10mm)により算出し、その後、TPBS(Tween20濃度: 0.1%)を用いて所定の濃度(0.5μg/ml)に希釈した。
既に作製したアゾポリマーをスピンコートしたスライドガラス(合計9種類)に50μlのリパーゼ溶液を滴下し、ギャップカバーガラス(松浪硝子工業株式会社、品番:CG00044、サイズ:24mm×60mm、ギャップ:20μm)をかぶせた。これを、溶液が乾燥しないように少量のMilliQ水を入れたリアクションチャンバーに入れ、青色LEDを用いてパワー密度が約20mW/cm2の条件で30分間光照射を行った。ギャップカバーガラスが乗った状態のスライドガラスを0.01%TPBSの中に入れ、液中でギャップカバーガラスを外した。スライドガラスを0.01%TPBSにより10分×3回洗浄し、窒素の吹き付けにより乾燥した。各共重合体につき、光照射を行わず、暗所で30分静置した以外は同様に処理した試料(吸着のしやすさを評価)も作製した。
アゾポリマー上に固定化されたリパーゼの検出には、リパーゼキットS(大日本住友製薬株式会社、ヒト血中リパーゼ測定用試薬)を用いた。リパーゼを固定したアゾポリマー薄膜に、CoverWell Perfusion Chamber(GRACE BIO-LABS製、品番:PC1R-0.5、直径:20mm、深さ:0.5mm)を貼り付け、ウェル内にリパーゼキットの基質液と発色液とを1対10で混合したものを180μl注入した。暗所、25℃で30分間静置した後、ウェル内の溶液をすべて吸出し、1.5mlのマイクロチューブに移した。このマイクロチューブに、反応停止液を360μl加えて撹拌し、吸光度測定に供した。吸光度測定は、MilliQ水を対象試料とし、測定波長が412nm、光路長が10mmの条件で行った。吸光度が大きいほどリパーゼ固定量が多いことを示す。
表3に各条件における吸光度の値を示す。共重合体1では、親水化処理なし、水あり・光照射無し、親水化処理あり(水あり・光照射有り)、いずれの条件でも光固定時と吸着時の吸光度はほぼ同じ値であり、リパーゼの吸着を抑制できないことが分かった。一方、親水性成分を含むアゾポリマー(共重合体2、3)では、親水化処理なし、水あり・光照射無しの条件では、光固定時と吸着時の吸光度はほぼ同じ値であったが、親水化処理あり(水あり・光照射有り)の条件では吸着時の吸光度が大幅に低下し、光固定時との差が大きくなった。水の存在下での光照射処理により、リパーゼの吸着を低減できることがわかった。
また、共重合体2,3においては、親水化処理(水あり・光照射有り)の光固定量が、水あり・光照射なしのそれよりも低いものの、吸着量の大幅な低減に比較すると、小さな低下であった。このため、本発明によって得られる親水化領域は、光照射による固定化能を高く維持しつつ、かつ生体分子等の吸着をきわめて効果的に低減できることがわかった。すなわち、親水化処理により、光照射選択的固定化能(光固定量と吸着量の比)が大幅に向上することがわかった。また、生体分子吸着能(親水化処理をしないときの吸着量に対する親水化処理したときの吸着量の割合)は、共重合体2、3においてそれぞれ20%、12.5%と大幅に減少していた。

(6)酵素(セルラーゼ)の固定
(Cy5標識セルラーゼの作製)
次に、Cy5標識したセルラーゼを用いて、セルラーゼ固定の評価を行った。Cy5標識したセルラーゼは、次の操作により作製した。セルラーゼ(SIGMA製、Cellulase from Trichoderma reesei)のPBS溶液(2mg/ml)100μlを、Cy5 Monoreactive dye pack(GE Healthcare製、PA25001)のチューブに入れ、反応剤をすべて溶解した後に、暗所で4時間反応させた。未反応の反応剤を透析により取り除き、Cy5標識したセルラーゼを得た。セルラーゼ1分子に結合しているCy5は約1分子であった。
(アゾポリマー上へのセルラーゼの固定と吸着)
実施例1で作製したアゾポリマー(共重合体1及び3)につき得られた親水化処理前のアゾポリマー薄膜及び親水化処理後のアゾポリマー薄膜上に、Cy5標識したセルラーゼの0.01%TPBS溶液(0.1〜5μg/ml)をスポットし、溶液が乾燥しないように少量のMilliQ水を入れたリアクションチャンバーに入れ、青色LEDを用いてパワー密度が約20mW/cm2の条件で30分間光照射を行った。スライドガラスを0.01%TPBSにより5分×3回洗浄し、窒素の吹き付けにより乾燥した。比較として、光照射を行わず、暗所で30分静置した試料(吸着を評価)も作製した。
(蛍光強度の測定)
アゾポリマー薄膜上に固定あるいは吸着したセルラーゼ量を測定するため、蛍光強度測定を行った。蛍光検出は共焦点レーザー顕微鏡(アフィメトリクス社:428 Array Scanner)を用いて行った。Cy5検出波長における蛍光強度は、励起波長が633nm、検出波長が660〜680nmで行った。表4に共重合体1及び3からなるアゾポリマー薄膜(親水化処理あり・なし)について得られた蛍光強度を示す。ここでは共重合体1の光固定の蛍光強度を100とした相対値で示した。
表4に示すように、親水性成分を備えない共重合体1では親水化処理の有無による光固定量および吸着量の変化はほとんど認められなかったが、親水化成分を備える共重合体3では、親水化処理により光固定量はほとんど低下しないが、吸着量が半分以下となった。これにより、親水化処理により、光照射選択的固定化能(光固定量と吸着量の比)が大幅に向上することがわかった。また、生体分子吸着能(親水化処理をしないときの吸着量に対する親水化処理したときの吸着量の割合)は、共重合体3において大幅に減少していた。
(ポリアルキレングリコール導入による親水化処理時間の短縮)
(1)親水性基とポリアルキレングリコールを導入したアゾポリマーの合成及びアゾポリマー薄膜の作製
式(3)の化合物と、市販のメタクリル酸メチル、メタクリル酸(いずれも和光純薬製)、メタクリル酸ポリエチレングリコールエステル(式(5)、ポリエチレングリコール残基は、ポリエチレングリコール鎖の長さが異なるものの混合物でありjは鎖長平均を表わし、8.5である。Aldrich製)を共重合し、式(6)(共重合体4)を合成した。式(6)(共重合体4の)における共重合比(モル比)n,m,l,及びkは、n:m:l:k=69:10:16:5であった。平均分子量は、数平均分子量(Mn)が13000、重量平均分子量(Mw)が20000、分散度(Mw/Mn)が1.5であった。なお、分子量は、クロロホルム溶媒で、昭和電工(株)製のGPC(ShodexGPC-101、カラム:K-800RL+K-805L×2)を用いて測定し、ポリスチレン換算の分子量を算出した。
得られた共重合体4を用いて実施例1の(2)アゾポリマー薄膜の作製に記載したのと同様の方法でアゾポリマー薄膜を作製した。
(2)アゾポリマー薄膜の親水化処理
共重合体4の薄膜上にMilliQ水50μlを滴下し、ギャップカバーガラス(松浪硝子工業株式会社、品番:CG00044、サイズ:24mm×60mm、ギャップ:20μm)を用いて全面に展開した。青色LED(20mW/cm)を用いて15分間及び30分間光照射して親水化処理した。その後、ギャップカバーガラスを取り外し、窒素気流下で乾燥した。比較としてポリエチレングリコールの導入がない共重合体2(実施例1で作製済み)についても同様の処理を行った。
(4)接触角の測定
得られた薄膜の親水化処理前後の接触角変化を実施例1の(4)接触角の測定に記載の方法と同様の方法で評価した。各親水化処理時間における接触角の値を表5示す。
表5に示すように、共重合体2では、15分の親水化処理では接触角は約5°低下し、30分の親水化処理では約12°低下した。一方、ポリエチレングリコールを導入した共重合体4では、親水化処理時間が15分、30分いずれの場合も、接触角が10°以上低下した。このことから、ポリエチレングリコールの導入により、短時間で表面の親水性を向上できることがわかった。
本発明の固相材料における親水性の発現の概要を示す図である。 本発明の固相材料の製造工程を示す図である。 本発明の固相材料に微小物体を固定化する工程の説明図である。
符号の説明
2 固相体、3 固相材料(親水化前)、4 固相材料、5 マトリックス、6 光応答性成分、8 親水性成分、10 微小物体、20 親水化領域、30 非親水化領域

Claims (27)

  1. マトリックス中に、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と親水性成分とを含有する固相材料の少なくとも一部の表面を親水性媒体と接触させた状態で光照射することにより親水化した親水化領域を備える微小物体を固定化するための固相材料。
  2. さらに、前記固相材料の表面には、前記親水性媒体と接触させた状態で光照射されない非親水化領域を備える、請求項1に記載の固相材料。
  3. 前記親水化領域の表面では光照射前よりも親水性が向上されている、請求項1又は2に記載の固相材料。
  4. 前記親水化領域の表面では光照射前の水の接触角に比較して光照射後の水の接触角が5°以上低下している、請求項1〜3に記載の固相材料。
  5. 前記マトリックスは高分子材料を含み、前記親水性成分及び/又は前記光応答性成分は、前記高分子材料に結合されている、請求項1〜4のいずれかに記載の固相材料。
  6. 前記マトリックスには、以下の式(1)で表されるアルキレングリコール残基含有成分を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の固相材料。
    (ただし、R1は、水素原子、置換基又は前記マトリックスの構成成分に対して連結されている連結基を表し、R2は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Zは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは、1以上100以下の整数を表す。)
  7. 前記マトリックスは高分子材料を含み、前記アルキレングリコール残基含有成分は、前記高分子材料に結合されている、請求項に記載の固相材料。
  8. 前記親水化領域の表面における、以下の式で表される光照射選択的固定化能が3.0倍以上である、請求項の記載の固相材料。
    光照射選択的固定化能=微小物体を前記固相材料の表面に供給して光照射して光固定化したときの固定化量/前記微小物体を光照射しない以外は同一の条件で前記固相材料の表面に供給したときの吸着量
  9. 前記微小物体は生体分子を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の固相材料。
  10. 前記生体分子はタンパク質を含む、請求項に記載の固相材料。
  11. 前記タンパク質は酵素である、請求項10に記載の固相材料。
  12. 前記酵素はリパーゼ又はセルラーゼである、請求項11に記載の固相材料。
  13. 微小物体を固定化するための固相材料の製造方法であって、
    マトリックス中に、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と親水性成分とを含有する固相材料を準備する工程と、
    前記固相材料の少なくとも一部の表面を親水性媒体と接触させた状態で光照射して親水化領域を形成する工程と、
    を備える、固相材料の製造方法。
  14. 前記親水化領域の形成の際、前記固相材料の表面に、前記親水性媒体と接触させた状態で光照射されない非親水化領域を形成する、請求項13に記載の方法。
  15. 固相材料の使用方法であって、
    請求項1〜12のいずれかに記載の固相材料の表面を疎水性部分を備える微小物体に暴露して前記固相材料を使用するとき、前記親水化領域を前記微小物体の前記少なくとも一部の表面への吸着を抑制する使用工程、を備える、使用方法。
  16. 前記使用工程は、前記親水化領域の表面の選択された領域に光照射して前記微小物体を固定化する工程である、請求項15に記載の使用方法。
  17. 前記使用工程は、請求項2に記載の固相材料の前記非親水化領域の表面の選択された領域に光照射して前記微小物体を固定化する工程である、請求項15に記載の使用方法。
  18. 微小物体が固定化された固相体の製造方法であって、
    請求項1〜12のいずれかに記載の固相材料の前記親水化領域の表面に微小物体を供給し、光照射して前記微小物体を固定化する工程、を備える、製造方法。
  19. 前記固定化工程は、前記親水化領域の表面の選択された領域に光照射して前記微小物体を固定化する工程である、請求項18に記載の製造方法。
  20. 微小物体が固定化された固相体の製造方法であって、
    請求項2に記載の固相材料の表面に微小物体を供給し前記非親水化領域に光照射して前記微小物体を固定化する工程、を備える、製造方法。
  21. 微小物体が固定化された固相体であって、
    請求項1〜12のいずれかに記載の固相材料と、
    前記固相材料の前記親水化領域の表面に固定化された微小物体と、
    を備える、固相体。
  22. 微小物体が固定化された固相体であって、
    請求項2に記載の固相材料と、
    前記固相材料の前記非親水化領域の表面に固定化された微小物体と、
    を備える、固相体。
  23. 前記微小物体は生体分子である、請求項21又は22に記載の固相体。
  24. 前記生体分子はポリペプチドである、請求項23に記載の固相体。
  25. 前記固相体は、1種又は2種以上のポリペプチドが1種又は2種以上のパターンで固定化されている、請求項21〜24のいずれかに記載の固相体。
  26. 前記ポリペプチドによって1種又は2種以上の反応を実施可能なリアクターである、請求項25に記載の固相体。
  27. 微小物体が固定化された固相体の使用方法であって、
    請求項21〜26のいずれかに記載の固相体に固定化された前記微小物体に前記微小物体と相互作用可能な分子を接触させて相互作用を生じさせる工程と、
    を備える、使用方法。
JP2007235044A 2007-09-11 2007-09-11 固相材料及びその製造方法 Expired - Fee Related JP5125341B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007235044A JP5125341B2 (ja) 2007-09-11 2007-09-11 固相材料及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007235044A JP5125341B2 (ja) 2007-09-11 2007-09-11 固相材料及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009065853A JP2009065853A (ja) 2009-04-02
JP5125341B2 true JP5125341B2 (ja) 2013-01-23

Family

ID=40602782

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007235044A Expired - Fee Related JP5125341B2 (ja) 2007-09-11 2007-09-11 固相材料及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5125341B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5438106B2 (ja) * 2009-06-03 2014-03-12 株式会社カネカ 構造体、局在型表面プラズモン共鳴センサ用チップ、及び局在型表面プラズモン共鳴センサ
BR112012024411A2 (pt) * 2010-03-31 2016-05-31 Kaneka Corp estrutura, chip para sensor de ressonância de plásmon de superfície localizada, sensor de ressonância de plásmon de superfície localizada e métodos de fabricação

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4120869B2 (ja) * 2002-09-30 2008-07-16 東洋紡績株式会社 バイオチップ
JP4193515B2 (ja) * 2003-02-21 2008-12-10 株式会社豊田中央研究所 微小物体の光固定化方法、微小物体の光固定化担体及び光固定化材料
JP2006299045A (ja) * 2005-04-19 2006-11-02 Sumitomo Bakelite Co Ltd 医療材料用高分子化合物及び該高分子化合物を用いたバイオチップ用基板

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009065853A (ja) 2009-04-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ansari et al. Molecularly imprinted polymers for capturing and sensing proteins: Current progress and future implications
Hendrickson et al. Bioresponsive hydrogels for sensing applications
Bae et al. Tailored hydrogels for biosensor applications
Pirri et al. Characterization of a polymeric adsorbed coating for DNA microarray glass slides
Shen et al. Interfacial molecular imprinting in nanoparticle-stabilized emulsions
Sun et al. Biomimetic smart interface materials for biological applications
Liu et al. Improved protein conjugation with uniform, macroporous poly (acrylamide-co-acrylic acid) hydrogel microspheres via EDC/NHS chemistry
Rendl et al. Simple one-step process for immobilization of biomolecules on polymer substrates based on surface-attached polymer networks
Brennan Biofriendly sol–gel processing for the entrapment of soluble and membrane-bound proteins: Toward novel solid-phase assays for high-throughput screening
JP2008525763A (ja) 三次元ナノ構造化及びミクロ構造化担体
Kang et al. Mussel-inspired universal bioconjugation of polydiacetylene liposome for droplet-array biosensors
Kubo et al. Recent progress for the selective pharmaceutical analyses using molecularly imprinted adsorbents and their related techniques: A review
Ertürk et al. From imprinting to microcontact imprinting—A new tool to increase selectivity in analytical devices
P Chiriac et al. Sol gel method performed for biomedical products implementation
Reville et al. Customizable molecular recognition: Advancements in design, synthesis, and application of molecularly imprinted polymers
Kang et al. Shape-encoded chitosan–polyacrylamide hybrid hydrogel microparticles with controlled macroporous structures via replica molding for programmable biomacromolecular conjugation
Hussain et al. A review on structural aspects and applications of PAMAM dendrimers in analytical chemistry: Frontiers from separation sciences to chemical sensor technologies
JP5125341B2 (ja) 固相材料及びその製造方法
JP4197279B2 (ja) 生体由来物検出用基板及びその製造方法
JP5194638B2 (ja) 微小物体を固定化する固相材料、微小物体が固定化された固相体及びその製造方法
JP4400668B2 (ja) 微小物体が固定化された固相体の製造方法及びその利用
JP4887863B2 (ja) 光固定化方法及び構造体
JP5099074B2 (ja) ターゲット分子の選択的吸着領域を有する吸着用担体及びその製造方法
JP2007279028A (ja) 孔を有する生体物質構造体及びその製造方法、並びに、それを用いた生体物質担持体、対象物質の精製方法、アフィニティークロマトグラフィー用容器、分離用チップ、対象物質の解析方法、対象物質の解析用分離装置、及びセンサーチップ
JP4193515B2 (ja) 微小物体の光固定化方法、微小物体の光固定化担体及び光固定化材料

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100601

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20100604

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120614

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120626

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120827

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121002

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121015

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151109

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees