本実施形態で説明する呼吸誘導システムは、図2に示すように、利用者が個室の環境において用いるものであり、以下では当該個室をリフレッシュルームRmと呼ぶ。リフレッシュルームRmには、利用者が着座する椅子1と、椅子1の少なくとも前方に映像を提示する映像提示装置2と、リフレッシュルームRmに音環境を提供する音響提示装置3とが配置される。さらに、リフレッシュルームRmには、室内の光環境を形成するために照明装置4も設けられる。映像提示装置2と音響提示装置3と照明装置4とは、後述するように、利用者をリラックス状態に誘導する環境を形成するリラックス誘導手段としての機能と、呼吸情報を利用者に示す呼吸情報提示手段としての機能とを備える。
椅子1は、利用者が楽な姿勢で着座することができるようにリクライニング機能を備えていることが望ましく、また着座した利用者を包み込むように適度のクッション性を備えることが望ましい。椅子1には、図1に示すように、利用者の呼吸を検出する呼吸センサ5が付設される。呼吸センサ5のほかに、利用者の着座を検出する着座センサ6、利用者の心拍あるいは脈拍を検出する拍動センサ7などを椅子1に付設してもよい。
呼吸センサ5としては、利用者の腹部に巻き付けるベルトを備え、腹部の膨張と収縮とを検出するものを用いているが、利用者の呼気の期間(以下、「呼気期間」という)と、吸気の期間(以下、「吸気期間」という)とが分離可能である出力の得られる構成であれば、どのような呼吸センサ5を用いてもよい。たとえば、利用者の腹部に赤外線によるモアレ縞を投影し、モアレ縞をTVカメラで撮像することにより、モアレ縞の変化パターンから腹部の膨張と収縮とを検出することにより、利用者の呼吸を非接触で検出する呼吸センサを用いることも可能である。
なお、拍動センサ7についても利用者に装着のわずらわしさを感じさせないために、椅子1の内部に圧力センサからなる拍動センサ7を配置し、椅子1に着座した利用者の拍動を検出するようにしてもよい。
呼吸センサ5の出力は、センサ処理部11に入力される。センサ処理部11では、呼吸センサ5の出力を用いて、呼気期間か吸気期間かを判断する。
呼気期間と吸気期間との判断には、呼吸センサ5の出力として加速度センサの出力を用いる場合には、収縮方向(たとえば、正とする)と膨張方向(たとえば、負とする)との期間をそれぞれ呼気期間と吸気期間とに対応付ける。ただし、加速度センサの出力には体動などによるノイズが含まれるから、正負2段階のしきい値を設定しておき、呼気期間は加速度センサの出力が正のしきい値を超え、負のしきい値を下回るまでの期間とし、吸気期間は加速度センサの出力が負のしきい値を下回り、正のしきい値を超えるまでの期間とする。
なお、しきい値を設定したことにより、検出した呼気期間および吸気期間と、実際の呼気期間および吸気期間との間に時間差が生じるから、検出した呼気期間および吸気期間には補正が必要である。本実施形態では、時間差を略一定とみなし、検出した呼気期間および吸気期間を、この時間差に相当する一定時間だけシフトさせている。
また、呼気期間と吸気期間との判断には、センサ処理部11において呼吸センサ5の出力を所定の時間間隔(たとえば、0.1s)でサンプリングし、サンプリング値に基づいて腹部の膨張の程度を推算してもよい。すなわち、上記時間間隔で検出した腹部の膨張の程度を表す数値の移動平均を求め、移動平均が正の期間を呼気期間、移動平均が負の期間を吸気期間としてもよい。
なお、移動平均は、時系列データx1,x2,x3,…に対して、たとえば、(x1+x2+x3)/3、(x2+x3+x4)/3を用いるものとする。すなわち、平均するデータのすべてを新たなデータとするのではなく、データを1個ずつシフトさせた平均を用いる。ただし、何個のデータの平均を用いるかは適宜に選択する。
映像提示装置2は、椅子1に着座した利用者に視認可能な映像を提示する画面8を備えている。画面8の大きさや形状は、利用者の視野の全体に映像を展開することができ、利用者に没入感をもたらすように設定される。したがって、画面8は平面状とすることが可能であるが、利用者から見て凹面状とするのが望ましい。ただし、水平方向において凹面であればよく、上下方向においては曲面としなくてもよい。要するに、円筒の壁面における内側面の形状になる。
画面8が平面状である場合には、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイを用いることができるが、画面8を凹面状とする場合には、リフレッシュルームRmの壁面を透過型のスクリーンとし、リフレッシュルームRmの外に配置したプロジェクタからスクリーンに映像を投影する構成を採用する。また、シート状に形成されたELディスプレイのように可撓性を持たせることが可能である場合には、この種のディスプレイを映像提示装置2として用いることができる。
映像提示装置2が提示する映像は、映像内容提供部12により与えられる。映像内容提供部12が提供する映像の具体例は後述する。
音響提示装置3としては、椅子1の周囲を囲むようにリフレッシュルームRmの天井面、床面、壁面に配置した複数個(図2に示す例では8個)のスピーカ9を用いている。具体的には、前後左右上下の任意の位置に音像を形成することができるように、8個のスピーカ9のうち4個を利用者の前方に配置し、残りの4個を利用者の後方の壁面の四隅に配置している。前方に配置した4個のスピーカ9は、映像提示装置2の画面8に提示される映像を妨げないように、床面と天井面とに左右2個ずつ配置される。また、上述したスピーカ9とともに用いて背景音を出力するスピーカ9を設けてもよい。背景音は、上述したスピーカ9から出力する音に混合して出力することも可能である。
音響提示装置3が提示する音は、音響内容提供部13により与えられる。音響内容提供部13が提示する音の具体例は後述する。
照明装置4は、リフレッシュルームRmの全体照明を行うために天井付近に配置された全体灯4aと、椅子1の周囲のみを照明するスポット灯4bと、椅子1の側方に配置され利用者の呼吸周期を誘導するように光出力を時間経過に伴って変化させるリズム灯4cとを備える。リズム灯4cの発光色としては、気分を落ち着かせる効果があると言われている青色ないし水色を用いている。全体灯4aとスポット灯4bとリズム灯4cとは、それぞれ調光器21a,22a,23aに接続されている。したがって、照明制御部14から調光器21a,22a,23aに調光信号を与えることにより、全体灯4aとスポット灯4bとリズム灯4cとの光出力をそれぞれ制御することが可能になっている。
上述したセンサ処理部11と映像内容提供部12と音響内容提供部13と照明制御部14とは、パーソナルコンピュータに必要なハードウェアを付加し、後述する動作を可能にするデータおよびプログラムを与えることにより実現される。
以下では、呼吸センサ5の出力に基づいてセンサ処理部11が検出した呼気期間および吸気期間を、映像内容提供部12と音響内容提供部13と照明制御部14との動作に関連付ける技術について説明する。センサ処理部11により検出した呼気期間と吸気期間とを、映像内容提供部12と音響内容提供部13と照明制御部14との動作に関連付ける処理は誘導制御部10が行う。
ここで、照明制御部14は、全体灯4aやスポット灯4bについては、呼気期間や吸気期間とは無関係に制御する。すなわち、照明制御部14は、利用者がリフレッシュルームRmに入退室する際に全体灯4aを点灯させて室内を照明し、椅子1に着座したことが着座センサ6により検出されると全体灯4aの光出力を低減させることにより利用者の周囲を暗くする。
また、スポット灯4bは、利用者の周辺のみを照明したり、利用者が椅子1に着座しているときに利用者の手元周辺のみを照明したりする目的で用いる。スポット灯4bにより利用者の周辺のみを照明すれば、利用者の近辺と利用者から離れた壁面との明暗差を大きくして、リフレッシュルームRmの壁面を目立たせないようにすることができる。
ところで、誘導制御部10では、センサ処理部11により検出された呼気期間と吸気期間とのうち呼気期間において目標時間を設定し、当該目標時間以上の呼気期間を利用者に達成させるように映像内容提供部12、音響内容提供部13、照明制御部14に指示を与える。すなわち、呼気期間と吸気期間との両方について呼吸を誘導するのではなく、息を吐くときの継続時間にのみ着目して呼吸を誘導する。このため、センサ処理部11は呼気期間の開始時点を検出する呼気開始検出手段として機能するとともに、呼気期間の目標時間を設定する目標値設定手段として機能する。吸気期間はたとえば3〜5s程度であり、呼気期間の目標時間の最大値はたとえば6〜9s程度に設定する。
利用者に呼気期間と吸気期間との両方を意識させると、利用者が緊張し交換神経系が優位になることがあるが、呼気期間にのみ意識を持たせることで利用者に緊張感を与えず副交換神経系を優位にした状態で、中枢神経を賦活させることが可能になる。このような事例は、ヨガや座禅などの呼吸法として知られている。
誘導制御部10は、利用者が椅子1に着座すると呼吸を誘導する動作を開始する。つまり、着座センサ6により椅子1への着座が検出され、規定時間が経過すると動作を開始する。あるいはまた、椅子1に操作部(図示せず)を付設しておき着座後に操作部が操作されると動作を開始する構成を採用してもよい。
誘導制御部10は、動作を開始すると、利用者をリラックス状態(副交感神経が優位、さらには脳波におけるα波が発現する状態のうち中枢神経が非活性である状態)に誘導する映像および音の提示を映像内容提供部12および音響内容提供部13に指示する。
映像内容提供部12が提供する映像としては、自然風景を見せると利用者をリラックス状態に移行させやすくなるという知見に基づいて、たとえば宇宙、海底、森林などを想起させる映像としている。この種の映像は、副交感神経を優位にし、かつ中枢神経を非活性化することが知られている。また、映像として三次元映像を用いることにより、画面8が凹面であることとあいまって立体感を与えている。さらに、立体感を高めるための意味性のないコンピュータグラフィックス画像を合成してもよい。
誘導制御部10は、全体灯4a、スポット灯4b、リズム灯4cのうちの少なくとも一部の光色について、映像内容提供部12が提供する映像の内容に合わせて調節する。たとえば、宇宙や海底の映像であれば照明光を青色とし、森林の映像であれば照明光を緑色とする。
映像は、静止映像を定位置に表示することが可能であるが、静止映像について画面8に表示される領域を変化させることにより画面8上で移動する映像を生成すると利用者に移動感を与えてリラックス状態への誘導効果が高まる。映像の移動方向は左右方向とし、利用者から見て毎秒1〜5度程度の角度変化が生じるように映像を移動させる。さらに移動感を付与するには、2種類の映像を重ね合わせて表示し、一方の映像を利用者から見て右向きに移動し、他方の映像を利用者から見て左向きに移動するように表示するとよい。たとえば、宇宙を想起させる映像であれば、星雲や近くの星は右向きに移動し、遠くの星は左向きに移動させるのである。なお、映像を移動させる方向は上下方向としてもよい。
一方、音響内容提供部13が提供する音としては、いわゆるヒーリング音楽や自然界に存在する1/fノイズを含む静かな音(せせらぎや葉擦れの音)などを用いる。この種の音は、副交感神経を優位にし、かつ中枢神経を非活性化すると考えられている。この音は、後述する呼吸の誘導の際にも背景音としてスピーカ9からの出力を継続する。背景音となる音は基本的には背景音を出力する専用のスピーカ9からのみ出力させる。ただし、背景音用のスピーカ9ではない他のスピーカ9から背景音を出力する場合には、背景音については各スピーカ9に与える音声信号の増幅率を一定に保つようにする。
誘導制御部10では、自律神経機能について副交感神経を優位にし中枢神経を非活性化するために、映像内容提供部12および音響内容提供部13に上述の動作を規定時間行わせる。また、照明制御部14では、映像内容提供部12や音響内容提供部13が提供する映像や音に合わせて照明装置4を制御する。誘導制御部10のこの動作は、利用者をリラックス状態に導く動作であるから、以下では、この動作を「リラックスモード」の動作と呼ぶ。
すなわち、誘導制御部10は、リラックスモードの動作を行うときには、映像内容提供部12、音響内容提供部13、照明制御部14、映像提示装置2、音響提示装置3、照明装置4とともに、リラックス誘導手段として機能し、リラックス誘導手段の動作により利用者の自律神経機能を副交感神経が優位となる状態に誘導する環境が形成される。また、映像内容提供部(映像内容提供手段)12、音響内容提供部13、照明制御部14は環境提供手段として機能し、映像提示装置(映像提示手段)2、音響提示装置3、照明装置4は、環境提示手段として機能する。
リラックスモードの動作を行うことによって、椅子1に着座した利用者はリラックス状態に誘導され、心拍数や血圧が低下する。リラックスモードの動作は時間により規定する(つまり、リラックスモードを規定時間で終了する)ほか、拍動センサ7により拍動を監視し、心拍数(あるいは脈拍数)のトレンドによりリラックス状態に達したことを推定し、リラックス状態に達した時点でリラックスモードの動作を終了させてもよい。あるいはまた、呼吸センサ3の出力に基づいてセンサ処理部11で検出される呼気期間の長さあるいは呼吸数を計測し、呼気期間が規定した長さに達すると、リラックスモードの動作を終了させることも可能である。
拍動センサ7により検出される心拍あるいは脈拍を用いることによりリラックス状態に達したと判断する動作は以下の原理に従っている。すなわち、心電(ECG)や脈波の周波数は自律神経系の活動を反映していると言われており、たとえば、心電図において1拍ごとの時間間隔を計測することにより周波数を求めたとすると、0.04〜0.15Hzの周波数成分のパワーは交感神経(LF)の亢進の程度を反映し、0.15〜0.4Hzの周波数成分のパワーは副交感神経(HF)の亢進の程度を反映していると言われている。時間間隔は、心電図に含まれるR波やa波の時間間隔(RRI、aaI)により求められる。
いま、図3に示すように、R波に着目するものとし、R波の時間間隔Trを求める。R波の時間間隔Trを求めるにはR波のピーク位置を求める必要があるが、この技術については周知であるからここでは詳述しない。一例としては、R波の振幅が他の成分よりも大きいことを利用して、適宜の閾値でR波のピーク値が含まれる期間を抽出し、当該期間の平均時刻をピーク位置の時刻とみなす方法がある。
求めた時間間隔Trのうち副交感神経系(つまり、0.05〜0.4Hz)の成分について単位時間毎の増加率(傾き)を求めると、傾きが規定の閾値を超えたときに副交感神経系が十分に亢進されたと判断することが可能になる。つまり、傾きが閾値を超えるとリラックス状態であることが推定できる。
また、求めた時間間隔Trについて、横軸をn番目の時間間隔Tr(n)とし、縦軸を(n+1)番目の時間間隔Tr(n+1)としてプロットすると(この解析手法はローレンツプロットと呼ばれている)、たとえば図4のように分布する。この分布の分散状態を用いることによってもリラックス状態を推定することが可能である。すなわち、図4に示している距離Cは副交感神経系が優位になると長くなり(高い周波成分が増加するから)、また分散Sが大きくなる(交感神経系が亢進されたときの周波数範囲が広いから)。したがって、距離Cと分散Sとをそれぞれ規定の閾値と比較することによりリラックス状態であることを推定することができる。
したがって、リラックスモードにおいて拍動センサ7の出力を用いることにより、利用者がリラックス状態に到達したことを知ることができる。また、事前にこの種のデータを蓄積しておき、副交感神経が十分に亢進する時間を推定することによって、リラックスモードの終了するまでの時間をあらかじめ規定することも可能である。このように利用者がリラックス状態に達した時点でリラックスモードを終了することによって、リラックス状態が長く継続されることによってリラックス状態が阻害されるのを防止することができる。
リラックスモードを終了する他の条件としては、拍動センサ7によりリラックス状態を監視するとともに、制限時間を設定しておき、制限時間内にリラックス状態に達したと推定される場合に、制限時間の満了時にリラックスモードの動作を終了するようにしてもよい。この場合、制限時間内にリラックス状態に達しなければ、利用者はリフレッシュルームRmの利用前に高い緊張状態にあったと考えられるので、映像や音を変更するなど条件を変えてリラックスモードを継続する。
リラックスモードにおいて利用者がリラックス状態に達したことを推定するために、拍動センサ7により計測される心拍数(あるいは脈拍数)を用いたり、呼吸センサ3により計測される呼気期間の長さや呼吸数を用いるほか、脳波、EOG(眼電)、EMG(筋電)、脳血流などを計測する技術を用いてもよい。
すなわち、利用者の生体状態を検出する生体センサ(呼吸センサ3、脳波計、筋電計、血流計など)を用いるのであって、誘導制御部10は、生体センサの出力に基づいて利用者の自律神経系について副交感神経が優位になったことを推定する自律神経活動推定手段として機能する。
なお、呼吸センサ3以外の生体センサを用いるとリラックス状態を高い精度で検出することができるが、利用者には電極などを取り付けることによる違和感が生じるから、できるだけ利用者に違和感が生じない技術によって計測することが要求される。
上述したように、リラックスモードにおいて、利用者について計測した生理状態からリラックス状態に達したと推定されるかリラックスモードが規定した時間(制限時間を含む)に達したことによって、リラックスモードを終了させるから、誘導制御部10は、リラックス状態を推定する自律神経活動推定手段と、規定時間を時限する時限手段との少なくとも一方の動作を行う。
リラックスモードの動作が終了すると、誘導制御部10は、呼吸を誘導する動作に移行する。以下では、この動作を「呼吸誘導モード」の動作と呼ぶ。
呼吸誘導モードの動作では、自律神経機能について副交感神経を優位にした状態を維持するが、呼吸を誘導することにより中枢神経を活性化させる。つまり、リフレッシュ状態(脳波におけるα波(8〜13Hz)のうち速い成分(10〜13Hz)であるα2波が発現し、中枢神経が活性である状態)あるいは集中状態と言われている状態に誘導する。
誘導制御部10は、呼吸誘導モードの動作を行うときには、リラックスモードの動作を行うときと同様に、映像内容提供部12、音響内容提供部13、照明制御部14、映像提示装置2、音響提示装置3、照明装置4とともに、呼吸誘導手段として機能する。呼吸誘導手段として機能する場合には、利用者の呼気期間を延長方向に誘導する。
したがって、誘導制御部10は、リラックス誘導手段の利用により利用者の副交感神経が優位になったと推定される時点で呼吸誘導手段の動作を開始させる誘導制御手段として機能している。また、センサ処理部11は呼気開始検出手段および目標値設定手段として動作するから、センサ処理部11も誘導制御手段として機能する。
上述したように、自律神経活動推定手段と時限手段との一方により利用者がリラックス状態に達したと推定できた時点で、誘導制御部10は、リラックスモードから呼吸誘導モードに移行する。したがって、誘導制御部10は、動作移行手段としての機能も備える。
映像内容提供部12は、呼吸誘導モードでは、呼吸センサ5により検出される利用者の呼吸に合わせて形が変化する誘導図形Im(図5参照)を生成し、映像提示装置2の画面8に表示されているリラックスモードで用いた映像に重ねて誘導図形Imを表示する。
図5に示す誘導図形Imは、微小体積である多数個の立方体状の種図形Isの集合として構成されている(図5では説明を簡単にするために、映像を二次元で表し種図形Isを正方形状に記載している)。図5は時間経過に伴う種図形Isの位置の変化を示しており、左上端から下に向かって時間が経過し、左列の下端に達した後に中央列の上端から下に向かって時間が経過し、中央列の下端に達した後に右列の上端から下に向かって時間が経過する。
図示例では、種図形Isが二次元格子(図示例は、格子の縦横比を1:1とした正方格子であるが格子の縦横比は適宜に設定してよい。なお、実際の映像では三次元格子になる)の格子点上に配列された状態から、吸気期間の開始時点が検出されると誘導図形Imが膨張し、種図形Isが分散して種図形Isの間の距離が大きくなる(左列参照)。種図形Isが分散したときには、種図形Isは整列せずに乱雑ないし無秩序に配置される。その後、呼気期間が開始されると種図形Isが収束を開始し、呼気期間の目標時間として規定された期間が終了した時点で種図形Isが元の二次元格子の格子点上に配列される(中央列)。このように種図形Isが秩序ある配列となった状態を誘導図形Imが完成した状態という。
目標時間として規定された期間が終了する前に利用者の吸気期間が開始された場合には、種図形Isが二次元格子の格子点上に整列しないから、誘導図形Imが完成した状態に達する前に種図形Isが再び分散し、利用者は呼気期間が目標時間として規定された期間に達しなかったことを認識する。一方、目標時間として規定された期間が終了した後にも利用者の呼気期間が継続している場合には、誘導図形Imが完成した状態が継続し(右列)、次に吸気期間が開始されると種図形Isは再び分散を開始する(右下)。
呼気期間の目標時間としての期間は、利用者の自律神経機能や中枢神経の状態によって異なり、また利用者ごとの個人差によっても異なる。したがって、リラックスモードの期間における呼吸センサ5の出力から得られる呼気期間に基づいて呼吸誘導モードの開始当初の目標時間を設定するのが望ましい。呼気期間の目標時間は、呼吸誘導モードの期間において徐々に長くする。ただし、呼気期間の目標時間には上限が設定される。呼気期間の目標時間の上限についても、呼吸誘導モードの開始当初の目標時間と同様に、リラックスモードの期間に計測した呼気期間に基づいて決定するのが望ましい。
呼吸誘導モードの期間において、呼気期間の目標時間は、誘導図形Imが完成することを条件として徐々に延長される。すなわち、呼気期間の目標時間は複数段階に設定され、目標時間が到達すべき最終値が規定される。最終値はリラックスモードの期間において呼吸センサ5の出力から求めた利用者の呼吸機能に基づいて設定するのが望ましいが、あらかじめ規定された複数の値から適宜に選択してもよい。
本実施形態では、呼気期間の目標時間がある値に設定されているときに誘導図形Imが複数回(たとえば、3回)連続して完成したときに、呼気期間の目標時間を規定した割合(たとえば、20%)あるいは規定した時間(たとえば、1秒)だけ延長し、呼気期間の目標時間が最終値に達するまで、この手順を繰り返すようにしてある。ただし、定められた時間内に目標時間の最終値に達しなければ呼吸誘導モードを終了する。
なお、呼気期間の目標時間にポイントを規定しておき、誘導図形Imが完成したときに目標時間に応じて規定したポイントを加算し、呼吸誘導モードの終了時に合計ポイントを画面8に表示するようにしてもよい。このようなポイントを表示すれば、呼吸状態の修得の程度を利用者に客観的に認識させることができるから、呼吸状態を習得することへの動機付けになる。
上述の動作では、利用者が誘導図形Imを完成させるには、利用者が呼気期間を目標時間よりも長くするように意識して呼吸を整えればよく、誘導図形Imを完成させたときの満足感を期待して(あるいは、誘導図形Imを完成させようとする欲求により)息を吐く時間を長くしていると、意識しないうちに呼気期間が目標時間の最終値に誘導されることになる。
また、種図形Isの分散と収束とは利用者の呼吸に合わせて行われるから、呼気期間が目標時間に達しない場合でも誘導図形Imが完成した状態にならないだけであって、誘導図形Imに呼気期間を合わせるという利用者の意識を途切れさせることなく継続して使用させることができる。また、呼気期間にのみ目標時間を与えており、吸気期間は利用者の自由であって、呼気期間を長くするために息を多く吐いたとしても吸気期間には必要量の空気を吸うことができるから、呼気期間と吸気期間との両方に目標時間を規定する場合に比較すると無理のない呼吸が可能である。
ところで、呼吸誘導モードでは、音響内容提供部13と照明制御部14とは、誘導図形Imの分散と収束とに同期して制御される。すなわち、映像提示装置2と音響提示装置3と照明装置4とは、利用者に呼気期間と吸気期間との呼吸の状態変化を示す呼吸情報を示すための呼吸情報提示手段として機能する。呼吸情報提示手段は、環境提示手段と同じ感覚器(視覚、聴覚等)を通して利用者に呼吸情報を提示することになる。
呼吸誘導モードでは、音響内容提供部13は呼吸音に似せた音をスピーカ9から出力させ、照明制御部14はリズム灯4cの光出力を変化させる。また、呼吸情報提示手段は、目標値設定手段(センサ処理部11)が設定した呼気期間の目標時間を提示することになる。
音響内容提供部13が提供する音は、ホワイトノイズを加工することにより呼気音と吸気音とに似せた音を生成し(ホワイトノイズのフィルタリングを行い、呼気音と吸気音との周波数特性を変化させ、たとえば、呼気音は吸気音よりも高い周波数成分を含むようにする)、呼気期間の開始を起点として呼気音に似せた音をスピーカ9から出力させ、また吸気期間の開始を起点として吸気音に似せた音をスピーカ9から出力させる。ここで、音像の位置を移動させると、呼吸に対する利用者の没入感をより高めて呼吸を誘導する効果を高めることができる。
たとえば、吸気期間において前方から後方に向かって音像が移動するようにし、呼気期間においては後方から前方に向かって音像が移動するように、前後のスピーカ9の音量(音声信号の増幅率)を調節する。上述のように音像を前後に移動させることによって、息を吸うときには空気を引き込む感覚を利用者に与え、息を吐くときには空気を送り出す感覚を利用者に与えることができる。したがって、呼気期間が目標時間に達したことは、音像が利用者の後方から前方に移動して、後方から聞こえていた音が前方から聞こえるようになることとすればよい。あるいはまた、呼気期間が目標時間に達したときに、別の音(たとえば、「ポロロン」という音)を出力するようにしてもよい。
さらに、音像が利用者の後方に位置するときには左右方向における音像の幅を広げ、音像が利用者の前方に位置するときには左右方向における音像の幅を狭めるようにしてもよい。このような制御は、スピーカ9の配置(前方のスピーカ9の左右間隔を後方のスピーカ9の左右間隔よりも狭める配置)により実現することができるが、スピーカ9に入力する音声信号の位相を制御することにより実現してもよい。
なお、音響内容提供部13が提供する音を、呼気音や吸気音に似せた音とすることは必須ではなく、呼気期間と吸気期間との開始を示すような音であってもよい。ただし、呼気音や吸気音に似せた音を用いると、利用者に違和感を抱かせることなく意識を集中させることができるから、覚醒効果を高めることができると考えられる。
また、照明制御部14は、吸気期間においては時間の経過に伴ってリズム灯4cの光出力を増加させ、呼気期間においては時間の経過に伴ってリズム灯4cの光出力を低下させる。したがって、呼吸によって肺が膨らんだり縮んだりする感覚を光量変化によって演出することができ、利用者に没入感を与えて呼吸に集中させることができる。
ここに、リズム灯4cだけではなく、全体灯4aやスポット灯4bについてもリズム灯4cに同期させて光出力を調節してもよい。また、映像内容提供部12により映像提示装置2の画面8に表示される画像についても、リズム灯4cの光出力の変化に合わせて輝度を変化させるようにしてもよい。このような照明を用いた呼気期間の目標時間としては、室内が明るい状態から暗くなることとしてもよい。さらに、音響提示装置3による音像の移動に伴って照明装置4による配光を変化させるようにしてもよい。たとえば、全体灯4aを多灯で構成したり、可動式のスポット灯4bを用いたりすることにより、最大照度となる位置を音像の位置に対応付けるようにしてもよい。
音響や照明により目標時間を与える場合に、上述した技術では、呼気期間が目標時間に達したことを利用者に明確に知覚させることはできないから、呼気期間の継続時間が目標時間に達したことを利用者に知らせるために、呼気期間において呼吸音とは別に目標時間に達したことを知らせる音を付加したり、目標時間に達したときに全体灯4a、スポット灯4b、リズム灯4cの少なくとも1個の点灯状態(光色も含む)を変化させるか別途の表示灯を点灯させたりしてもよい。
上述の動作により、あらかじめ定めた呼吸状態になるように呼吸を誘導する刺激を利用者に与えるときに、当該刺激に利用者の呼吸情報を含めることになる。すなわち、呼吸誘導手段は、映像提示装置2と音響提示装置3と照明装置4とからなる呼吸情報提示手段と、呼吸センサ5とを含み、呼吸センサ5により検出された呼吸情報を呼吸情報提示手段を通して提示させていることになる。呼吸情報提示手段は、リラックス誘導手段と兼用されていることになる。
この機能により、利用者にとっては呼吸を単に意識するのではなく、呼吸情報が視覚や聴覚に明確によって明示的に知覚され、結果的に呼吸を目標の状態に到達させる意思を誘発しやすくなる。言い換えると、呼吸の知覚と呼吸の誘導とがシームレスに行われることにより、利用者の呼吸情報(呼吸の状態変化)を無理なく無意識的に目標とする状態に誘導することが可能になる。
刺激する知覚の種類や具体的な内容とは無関係に、吸気期間と呼気期間とにおいて刺激を与える情報の変化として上述した動作を表すと、図6のように考えることができる。図6では、主として呼気を表現する情報Aと、主として吸気を表現する情報Bとを示してあり、吸気期間の開始時点では情報Aのみを提示し、吸気期間においては時間の経過に伴って情報Bの比率を高めている。また、呼気期間の開始時点では情報Bのみを提示し、呼気期間においては時間の経過に伴って情報Aの比率を高めている。
上述した例であれば、情報Aは、たとえば誘導図形Imにおいて種図形Isが整列した状態に相当し、情報Bは、たとえば誘導図形Imにおいて種図形Isがもっとも分散した状態に相当する。このように、吸気期間と呼気期間とを同種類の刺激による異なる情報A、Bとして表現し、吸気期間と呼気期間とを示す情報に連続性を持たせることができる。なお、図6においては呼気期間の目標時間の経過後に、次の吸気期間が開始されるまでの間は、情報Bと情報Aとの比率を変化させないようにしている。この動作は、図5における右列のように種図形Isの位置が変化しない状態に相当する。
図6の動作例では、呼気期間の終了時点が吸気期間の開始時点になっているが、目標時間の後に呼気期間が継続していると、呼気期間から吸気期間への移行の際に、情報Aが変化しない状態がしばらく継続した後に変化が開始されるから、不連続感を与える場合がある。すなわち、図5を参照すればわかるように、呼気期間において目標時間に達する前には種図形Isを収束する方向に移動させており、呼気期間において目標時間に達した後には種図形Isが移動しなくなり、誘導図形Imの形状が変形しない状態が継続する。また、このとき、音響や照明についても目標時間に達した後には変化させていない。このように、変化が停止する期間が継続することにより不連続感が生じるのである。
不連続感を抑制するには、目標時間に達した時点から情報Aの変化を開始する動作を採用することができる。ただし、この動作では、呼気期間であるにもかかわらず吸気期間の動作に移行するから、目標時間に達した後に呼気期間が長く継続していると、利用者に違和感を与える場合がある。
そこで、呼気期間において目標時間に達した後には、吸気期間の開始時点までの間に誘導図形Imの形状をさらに変形させるのが望ましい。たとえば、呼気期間において目標時間に達した後の期間には、図7の右列に示すように、時間の経過に伴って種図形Isの左右の幅寸法を小さくするとともに種図形Isの左右の間隔を小さくするように誘導図形Imを変化させる。また、この変形に加えて時間の経過に伴って輝度を低下させてもよい。あるいはまた、目標時間に達した後には完成した誘導図形Imの上部と下部とを時間の経過に伴って捻れるように変形させたり、誘導図形Imの上下方向の中間部を時間の経過に伴ってくびれるように変形させたりしてもよい。変形させる際の形状については、とくに制限はなく、たとえば立方体を円筒や球に変形させてもよい。
いずれの場合も、目標時間の達成後にも誘導図形Imの変形が止まらないようにし、しかも目標時間に達する前と達した後とでは変形の規則を異ならせることにより、目標時間に達したことを利用者に気付かせることが可能になる。なお、誘導図形Imの形状(全体の形と種図形Isの動き)を変化させるほか、種図形Isの色を変化させる(白→黄→緑など)構成を採用してもよい。
上述の例では、呼吸センサ5の出力を用いてセンサ処理部11において吸気期間と呼気期間とを検出し、呼気期間の目標時間を呼気期間の継続時間により規定しているが、センサ処理部11において呼気期間の呼気量を検出し、呼気期間の目標を呼気期間における呼気量により規定してもよい。また、呼気量が目標量に達したか否かは上述の動作例と同様にして利用者に提示すればよい。
さらに、呼気量は時間の経過に伴って変化するから、呼気量の変化を示すように映像、音、照明を制御してもよい。たとえば、映像であれば、図7に示した目標時間に達した後における誘導図形Imの変形パターンと同様に時間の経過に伴って誘導図形Imを縮ませるように変形させ(つまり、肺内の空気量の減少を誘導図形Imに対応付け)、呼気量が目標量に達した時点で誘導図形Imを消せばよい。
音であれば、呼気期間において呼気量の増加とともに音量を徐々に低減し(つまり、肺内の空気量の減少を音量に対応付け)、呼気量が目標量に達した時点で音を消せばよい。また、照明であれば、複数の照明器具を配置しておき、呼気期間において呼気量の増加とともに光出力を徐々に低減し、呼気量が目標量に達した時点で一部の照明を消灯させればよい。あるいはまた、混色などによって発光色を変化させることができる照明を用い、呼気期間において呼気量の増加とともに光色を徐々に変化させ、呼気量が目標量に達した時点で特定の光色になるように制御する。
以上説明したように、利用者がリフレッシュルームRmに椅子1に着座し、リラックスモードの動作が開始されると、利用者は自律神経機能について副交感神経が優位でありかつ中枢神経が非活性であるリラックス状態に誘導される。その後、呼吸を整える呼吸誘導モードでの動作が開始され、映像、音、照明により利用者の呼気期間が目標時間に誘導されることで、利用者は自律神経機能について副交感神経が優位でありかつ中枢神経が活性である集中状態に誘導される。したがって、リフレッシュルームRmを利用した後には、利用者は脳機能が覚醒することになる。
また、利用者をリラックス状態に誘導した後に集中状態に誘導していることにより、交感神経が優位であるストレス状態から呼吸を誘導する場合よりもストレスを低減させて呼吸の誘導を開始することで、短時間で集中状態へ到達することができると考えられる。したがって、交感神経が優位になり記憶や思考に関する脳機能に低下が見られるときに、リフレッシュルームRmを利用することによって短時間で集中状態に誘導して記憶や思考に関する脳機能を活性化することが可能になる。
なお、リラックスモードにおいて制限時間を設定しているのと同様に、呼吸誘導モードにおいても制限時間を設定し、制限時間内に呼気期間が目標時間に達していない場合には、制限時間の満了とともに呼吸誘導モードも終了する。
呼吸誘導モードの終了の判断には、利用者の生理状態を監視することにより、利用者の中枢神経が非活性から活性に移行したことを推定してもよい。すなわち、中枢神経について拍動数や脈動数や呼吸数などの計測により間接的に推定するほか、脳波、EOG(眼電)、EMG(筋電)、脳血流などを生体センサ(脳波計、筋電計、血流計など)で計測することにより、呼吸誘導モードの終了のタイミングを判断してもよい。たとえば、脳波であればα2波の出現の割合を計測すれば、中枢神経の活性の程度を知ることができる。
上述した中枢神経の活性の程度の推定は誘導制御部10における活性度推定手段において行い、呼吸誘導モードの終了のタイミングは誘導制御部10における動作停止手段が決定する。
このように利用者の中枢神経が非活性か活性かを推定することにより、呼吸誘導モードを終了させるタイミングを正確に決めることができるから、利用者が集中状態に達した後にも呼吸誘導モードを継続することの無駄をなくすことができる。つまり、利用者が集中状態に達したと推定されると、呼吸誘導モードを終了することでリフレッシュルームRmの利用時間を短くし、また呼吸誘導モードを継続することにより、中枢神経が活性から非活性に戻ることを防止することができる。
ところで、呼吸法によって集中状態が誘発されることについては、以下のようなメカニズムが考えられている。すなわち、呼吸法に意識を集中すると、大脳皮質の腹側では、脳の全頭前野が賦活されることにより、前頭基底部におけるACh神経が抑制され、さらにセロトニン神経が活性になり、その結果として大脳皮質の賦活化が抑制されることでα波が発現する。一方、開眼状態では、視覚や聴覚の反応系は賦活しているから、大脳皮質の背側において賦活状態が継続してβ波が発現している。つまり、開眼で覚醒状態であるにもかかわらずα波が発生する。呼吸法によって発現するα波は、閉眼時により発現するα波とは性質や発生機序が異なっており、α波のうち速いα2波になる。言い換えると、呼吸法によりα2波が発現すれば、副交感神経が優位の状態で中枢神経が活性である状態と言うことができる(参考文献:有田秀穂:座禅とセントロニン神経,東邦医学会雑誌,vol.46,No.4(1999))。
したがって、上述したように呼吸誘導モードを終了させるタイミングを決めるために、脳波におけるα2波の出現の割合を用いることができる。また、呼吸法を行っている場合と、呼吸法を行わない場合と、タスク実施中との3条件でα2波のパワーを計測したところ、呼吸法を行っているときにα2波のパワーがもっとも出現しやすいという知見が得られた。さらに、呼吸法を行っている場合にはα2波のパワーが徐々に増加するという知見が得られた。したがって、脳波のうちα2波のパワーについて単位時間毎の増加率を監視し、この増加率が規定した閾値を超えたときに利用者が集中状態に到達したと判断し、呼吸誘導モードを終了させるようにしてもよい。
上述の構成例では、リフレッシュルームRmにおいて利用者が着座する椅子1を配置しているが、椅子1に代えてベッドを用いてもよい。また、上述した構成例では、椅子1を囲むようにスピーカ9を配置することにより、リフレッシュルームRmの任意の位置に音像を形成することを可能にしているが、椅子1の前方にのみスピーカ9を配置し、スピーカ9に与える音響信号の位相や周波数特性を制御することによって、音像の位置を擬似的に制御する構成を採用することも可能である。この技術を採用すれば、スピーカ9の台数を低減させることができ、リフレッシュルームRmを小型化することが可能になる。あるいはまた、椅子1にスピーカ9を配置することにより、スピーカ9の配置スペースを省スペース化することが可能である。
誘導図形Imに関しては、微小な種図形Isを用いて構成するもののほか、紐状などの他の形状の種図形Isを用いて構成することも可能である。また、画像に歪みがある状態や焦点がずれている状態を種図形Isが分散している状態と同様に扱い、画像に歪みがない状態や焦点が合っている状態を誘導図形Imが完成した状態として扱うようにしてもよい。
呼吸誘導モードにおいて呼吸情報を利用者に示すための呼吸情報提示手段として、視覚的手段(映像提示装置2の画面8、照明装置4の全体灯4a、スポット灯4b、リズム灯4c)と、音響的手段(音響提示装置3のスピーカ9)とを例示したが、目と耳以外の感覚器に刺激を与える呼吸情報提示手段を構成することも可能である。たとえば、温度変化を利用したり、皮膚への接触を利用したりしてもよい。温度変化を利用する場合には、温風と冷風との送風装置を設けておき、呼気期間と吸気期間とにおいて送風温度を変化させればよい。また、皮膚への接触を利用する場合には、呼気期間と吸気期間とにおいて接触圧を変化させたり、接触部位の温度を変化させたりすればよい。
リフレッシュルームRmにおいて温度変化を付与することができる場合には、リラックスモードでは利用者が暖かさを感じるように室温を設定し、呼吸誘導モードの際には利用者が涼しさを感じるように室温を設定するのが望ましい。また、リフレッシュルームRmの調湿を可能としている場合には、リラックスモードでは45〜60%程度(望ましくは50%程度)の快適な湿度とする。さらに、リフレッシュルームRmの室内で気流の形成を可能にしている場合には、映像や音像の移動とともに気流を制御する。たとえば、リラックスモードで映像が左右に移動するときには左右方向の気流を形成し、呼吸誘導モードで音像が前後に移動するときには前向きと後向きとの気流を交互に形成する。