JP5122353B2 - ウォームギヤ油組成物およびウォームギヤユニット - Google Patents
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しかしながら、ウォームギヤユニットの伝達効率(伝達効率=出力仕事/入力仕事×100(%))は他の伝達装置の伝達効率に比べて低いため、その改善が望まれていた。伝達効率を向上させる方法として、ウォームギヤユニットの設計、材質、回転数などの改良のほか、ウォームギヤに使用される潤滑油組成物(ウォームギヤ油組成物)の高性能化などが挙げられる。
そこで、PAG以外の基油を用いることで上記問題を回避したウォームギヤ油組成物が開発されている。
例えば、特許文献1には、基油としてポリαオレフィンとアルキル基置換芳香族化合物を用い、有機モリブデン化合物を配合したウォームギヤ油組成物が記載され、特定の材質(アルミニウム、珪素、マンガンを含む銅系合金)のウォームギヤユニットに適したウォームギヤ油組成物を提供している。
(1)高力黄銅製ホイールと鋼鉄製ウォームからなるウォームギヤユニットに使用されるウォームギヤ油組成物であって、炭化水素系合成油および鉱油から選ばれる少なくとも一種の基油と、(A)水酸基含有エステルと、(B)ジチオカーバメートとを含み、組成物全量に対する(A)成分の含有量が1〜18質量%、(B)成分の含有量が0.5〜5質量%であることを特徴とするウォームギヤ油組成物。
本発明のウォームギヤ油組成物は、炭化水素系合成油および鉱油から選ばれる少なくとも一種の基油と、水酸基含有エステルと、ジチオカーバメートとを含有する。
本発明で用いる基油は、炭化水素系合成油および鉱油から選ばれる少なくとも1種からなる。
ウォームギヤユニットは、その特殊な構造および動力伝達機構のため、その摩擦状態は境界潤滑と流体潤滑が混在した複雑な状態であり、油剤選定や負荷条件によってはその温度は180℃以上にもなる。また、塗料やシール材への影響なども考慮すると、ウォームギヤ油組成物に用いられる基油は、酸化安定性、粘度指数、アニリン点が高いことが好ましい。
m2/sである。上記粘度が20mm2/s未満の場合は油膜厚さが小さくなり過ぎ、また50000mm2/sを超える場合は組成物の粘度が高くなりすぎ、機械的あるいは熱的
剪断により粘度が低下する場合がある。基油のアニリン点は好ましくは100℃以上である。アニリン点が100℃以上であれば塗料やゴム等の有機材への悪影響が低減される。
であるものも好ましく使用できる。上記粘度が20mm2/s未満の場合は高温運転時の
油膜強度が不足したり、蒸発損失が大きくなり、また200mm2/sを超える場合は酸
化劣化によって生成したスラッジの溶解性が低下する場合がある。このような理由から、上記範囲は20〜100mm2/sであることが更に好ましい。
さらに、分岐アルキル基で置換されたアルキルベンゼンが好ましく使用できる。このような分岐アルキル基としては、炭素数が8〜30、好ましくは10〜20のものが使用でき、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンを重合したアルキル基などが挙げられる。炭素数が8より小さい場合は低粘度になり油膜強度が不足し、また30より大きい場合は酸化劣化により生成したスラッジの溶解性が不足することがある。
アルキルベンゼンを使用する場合は15質量%以下で配合することが好ましい。これにより、添加剤を溶解させることができるとともに、スラッジも溶解させることができる。また、他の基油と混合し、組成物全体のアニリン点を100℃以上に調整することが好ましい。
これら炭化水素系合成油は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いる水酸基含有エステルは、有機酸と多価アルコールとの反応により得られるエステルである。
これらのうち、伝達効率の点で、オレイン酸やイソステアリン酸などの炭素数18の有機酸を使用することが好ましい。さらに、酸化安定性の点では、イソステアリン酸を単独で使用することが好ましい。
これら有機酸は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いるジチオカーバメートとして、無灰ジチオカーバメート化合物を好適に用いることができる。無灰ジチオカーバメート化合物は、金属原子を含有しないジチオカーバメート化合物であって、好ましくは一般式(1)で表される。
ル基,n−アミル基,イソアミル基,n−ヘキシル基,1−メチルペンチル基,4−メチルペンチル基,1,3−ジメチルブチル基,n−オクチル基,2−エチルヘキシル基,2,2,4−トリメチルペンチル基,2−オクチル基,n−デシル基,イソデシル基,ラウリル基,トリデシル基,パルミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,イソステアリル基など)、炭素数6〜30のシクロアルキル基(具体的には、シクロヘキシル基など)、あるいはフェニル基や炭素数7〜30のアルキルアリール基(具体的には、p−アミルフェニル基,p−オクチルフェニル基,p−ノニルフェニル基,p−ドデシルフェニル基,p−ペンタデシルフェニル基など)が挙げられる。
ジチオカーバメートは、組成物全量基準で、0.5〜5質量%含まれていることが好ましい。より好ましくは1〜4質量%である。ジチオカーバメートの含有量が0.5質量%未満であると伝達効率が悪化するため好ましくない。また、ジチオカーバメートの含有量が5質量%を超えると酸化安定性が悪化するため好ましくない。
これら粘度指数向上剤の配合量は、配合効果の点から、ウォームギヤ油組成物全量基準で、通常0.1〜15質量%程度であり、好ましくは1〜10質量%である。
以下の実施例1〜7および比較例1〜7に示す組成でウォームギヤ油組成物のサンプルを調整した。各実施例および各比較例で使用した基油および添加剤は以下の通りである。
基油1:エチレンプロピレンオリゴマーとして、エチレン・α−オレフィンコポリマーである「ルーカントHC−600」(三井石油化学製、40℃動粘度9850mm2/s)を用いた。
基油2:ポリαオレフィンとして、「デセン−1重合体水添物」(出光興産(株)製、40℃動粘度が46mm2/s)を用いた。
・エステル1:トリメチロールプロパンと、オレイン酸およびイソステアリン酸の混合物とのエステル(ケン化価:176mgKOH/g、水酸基価:40、ヨウ素化(ウイス法):53、40℃動粘度:60mm2/s)
・エステル2:トリメチロールプロパンと、イソステアリン酸とのエステル(酸価:0.1mgKOH/g、ケン化価:176mgKOH/g、水酸基価42.8、40℃動粘度:104.5mm2/s)
・エステル3:オレイン酸モノグリセライドとして、「レオドールMO−50」(花王株式会社製、水酸基価222mgKOH/g、酸価0.07mgKOH/g、ケン化価170mgKOH/g)を使用した。
・酸価:指示薬法 JIS K2501
・ケン化価:JIS K2503
・水酸基価:JIS K0070(中和滴定法)
・ヨウ素価:JIS K0070
・40℃動粘度:JIS K2283
メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)を使用した。
・極圧剤:チオフォスフェートとして、トリス[(2または4)−C9〜C10イソアル
キルフェノール]チオフォスフェートを使用した。
・耐摩耗剤:トリクレジルホスフェート(TCP)
・酸化防止剤1:オクチル化ジフェニルアミン
・酸化防止剤2:2,6−ジ−t−ブチル−4−クレゾール
・金属不活性化剤:N−アルキル化ベンゾトリアゾール
・分散剤:ポリブテニルコハク酸イミド
・防錆剤:オキシアルキルカルボン酸エステル
・消泡剤:ジメチルポリシロキサン
・市販油1:NOKクリューバー製「SYNTHESO HT320」(グリコール基油)
・市販油2:モービル製「SHC632」(合成炭化水素系基油)
・市販油3:出光興産製「ダフニー アルファーウォームMA260」(アルファオレフィン基油+アルキルベンゼン基油+有機モリブデン(Mo1900ppm))
[伝達効率測定装置の構成]
伝達効率測定装置のウォームギヤとして、ツバキエマソン製EW100B30R(高力黄銅製ホイールと鋼鉄製ウォームを有する)を使用した。伝達効率測定装置は、このウォームギヤの一方側に入力トルクメータ、モータを順に接続し、他方側には、出力トルクメータ、増速機、油圧ユニットを順に接続した。また、ウォーギヤに冷風を送るための扇風機を設置した。
[伝達効率の測定]
室温25℃に調整した屋内に前述の伝達効率測定装置を設置し、十分になじみ運転を行ったあと、油を抜き取り、サンプルのウォームギヤ油組成物1.7Lで2回フラッシング運転後、同じサンプル1.7Lを充填し、本試験運転条件で6〜12時間運転し、安定した伝達効率値を測定した。
また、フラッシング運転は、負荷出力トルク15.0kgf/m以下で一回につき5分間実施した。
リング・オン・ブロック摩擦試験を実施した。試験機としては、Faville-Levally corporation製 MODEL FRICTION & BLOCK 試験機を使用した。CGM−3ケイ素化マンガン高力黄銅製のブロックとFalex F-S10のリングを用い、荷重50kgf、油温90℃、回転数200rpm、時間14分後の摩擦係数を測定した。
NOK製のA727(NBR)およびT303(アクリル)のシートより3号ダンベル試験片をとり、各々のダンベルの硬さを測定後、サンプルに720時間浸漬した(A727は100℃、T303は130℃)。浸漬後のダンベルの硬さの変化を測定し、硬さの変化が±10以内を○とし、それ以外を×とした。
厚さ1cm×縦10cm×横5cmの鉄板を紙ヤスリで表面を磨き、ヘキサンで脱脂後、関西ペイント(株)製「カンペ下地111ラッカープライマー赤さび色」(硝化綿塗料)で塗装し、次に関西ペイント(株)製「アクリック1000 2.5G6/3」(硝化綿塗料)で塗装する。塗装を十分に乾燥させた後、塗装された鉄板にサンプルを塗り、室温で24時間放置後、90℃で100時間放置というサイクルを20回繰り返した。なお、室温に冷えるごとにサンプルを塗装した。
20回終了後に、塗装が剥がれていないかどうかを確認した。剥がれていないものを、良好な塗装適合性とした。
上記の方法により評価した実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2に示す。なお、表1および表2に記載されている粘度グレードのうち「VG260」は、旧JISの「工業用潤滑油補助粘度分類」にある補助粘度グレードであり、その他の粘度グレードは、「ISO粘度分類」にあるISO粘度グレードである。
また、比較例4〜6には、ジチオカーバメートが含まれていないため、高い伝達効率が得られなかった。
さらに、比較例7は、水酸基含有エステルの含有量が多いために、伝達効率が十分ではなかった。
Claims (7)
- 高力黄銅製ホイールと鋼鉄製ウォームからなるウォームギヤユニットに使用されるウォームギヤ油組成物であって、
炭化水素系合成油および鉱油から選ばれる少なくとも一種の基油と、
(A)水酸基含有エステルと、
(B)ジチオカーバメートとを含み、
組成物全量に対する(A)成分の含有量が1〜18質量%、(B)成分の含有量が0.5〜5質量%である
ことを特徴とするウォームギヤ油組成物。 - 請求項1に記載のウォームギヤ油組成物において、
水酸基価が0.5〜8mgKOH/gである
ことを特徴とするウォームギヤ油組成物。 - 請求項1または請求項2に記載のウォームギヤ油組成物において、
前記水酸基含有エステルは、オレイン酸およびイソステアリン酸のうち少なくとも一種の有機酸から生成される
ことを特徴とするウォームギヤ油組成物。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載のウォームギヤ油組成物において、
前記水酸基含有エステルは、グリセリン、グリセリン縮合物、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから選ばれる少なくとも一種の多価アルコールから生成される
ことを特徴とするウォームギヤ油組成物。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載のウォームギヤ油組成物において、
前記水酸基含有エステルは、1分子内に平均1基以上の水酸基を有している
ことを特徴とするウォームギヤ油組成物。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載のウォームギヤ油組成物において、
前記炭化水素系合成油は、ポリ−α−オレフィン、エチレン・α−オレフィンコポリマー、エチレンプロピレンコポリマー、ポリブテンおよびアルキルベンゼンから選ばれる少なくとも一種である
ことを特徴とするウォームギヤ油組成物。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載のウォームギヤ油組成物を充填したことを特徴とするウォームギヤユニット。
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