JP5122292B2 - 哺乳動物の味覚細胞の培養方法 - Google Patents

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Description

関連出願のクロスリファレンス
本件は、2004年10月15日に提出し、その全体が本明細書に組み込まれる米国仮出願番号No. 60/636,377の利益を主張する。
発明の分野
本発明は、哺乳動物の味覚細胞の単離および長期間細胞培養のための方法に関する。哺乳動物の味覚細胞は、味覚刺激または味物質(tastants)に応答する哺乳動物の味覚受容体−発現細胞を含む。本発明の方法は、例えば、3ヵ月までまたはそれ以上のような延長された期間の味覚受容体細胞の研究を可能にする。さらに、本発明の方法は、既知の方法に比べて単離する必要のある味覚細胞の由来となる動物の数を低減する。本発明の方法によれば、味覚細胞がインビトロで増殖し、分化することができるので、増殖および分化、例えば、これらのプロセスに必要な栄養素の決定を含む味覚細胞プロセスのインビトロでの研究が可能になる。延長された期間の味覚細胞の培養が可能になったことによって、より長い時間枠を必要とする実験を可能にする。
背景
味蕾は、神経特性および上皮特性の双方に存在する3つの形態型を含む、およそ50〜100個の味覚細胞からなる。免疫細胞化学の特徴づけに基づき、これらの味覚細胞は、タイプI(暗)、タイプII(明)およびタイプIII(中間)に分類される(Yee et al., J Comp Neurol. 2001 Nov 5;440(l):97- 108;Takeda et al, J Comp Neurol. 2004 Nov l;479(l):94-102)。
研究によって、これら味覚細胞のおよそ10%が、神経細胞接着分子(NCAM)に対して免疫反応性を提示することが示された。NCAM反応性細胞はタイプIIIであるが、全てのタイプIII味覚細胞がNCAMに対して免疫反応性ではなく(Nelson and Finger 1993, J. Comp Neurol 336(4): 507- 16)、味覚細胞でのNCAM発現は第IX細胞による神経支配に依存している(Smith et al. 1994, J. Comp Neurol 347(2): 187-96)。これらのおよび他のデータによって、NCAM発現味覚細胞が神経と連絡していることが示唆される。
対照的に、味覚刺激に対する官能的な応答が要求される鍵となる分子は、NCAM免疫反応性細胞には発現しない。例えば、ガストデューシン(gustducin)は、味覚伝達に含まれる鍵となるGタンパク質であり、タイプII細胞においてのみ存在する。しかしながら、ガストデューシンは、NCAM発現細胞においては検出されない(Takeda et al. 1992, J. Electron Microsc. 41(5):375-80; Yang et al 2000, J. Comp Neurol 425(1): 139-51)。
味覚細胞は、基底細胞の増殖により死んだ細胞が置き換わられる、10日という限られた平均寿命を有する上皮細胞系に由来すると考えられている。味覚細胞の初期細胞培養の大多数は、最高で数日間、例えば、最大3〜5日(例えば、マウスの味覚細胞に対し、Spielman et al. 1989, Brain Research 503: 326-29による哺乳動物中枢神経の単離から改変された方法;およびラットの味覚細胞に対し、Kishi et al. 2001, Neuroscience 106(1): 217-25およびStone et al. 2002, Chem. Senses 27: 779-87を参照)続くことが報告されている。
与えられた味物質を検出することができるために、味覚細胞は典型的には、味物質(例えば、苦味、甘味、旨味)に関連する味覚受容体および味覚伝達に必要な分子の両方が必要である。味覚受容体は、T2Rsの1または2個以上またはT1Rsの1または2個以上を含み得る。情報伝達分子は、ガストデューシンおよびホスホリパーゼCを含み得る。少なくとも1つの味覚受容体を発現し、少なくとも1つの味覚刺激/味物質に応答し得る細胞は、ここで「味覚受容体細胞」という。したがって味覚細胞は、細胞タイプの中でも味覚受容体細胞を含む。
今まで、味覚受容体細胞のための細胞培養モデルはなく、インビトロでのいかなる調査も、限られた時間維持される味覚細胞の初期細胞培養に頼る必要があった。
Ookura et al.(2002, In Vitro Cell. Dev. Biol.-Animal 38: 365-72)には、そのインテグリンβ1マーカーに基づいて分類され、NCAMマーカーを発現するマウス味覚上皮から単離された特定のタイプの細胞が記載されている。したがって、このインテグリン陽性持続性マウス細胞培養は、味覚刺激の主要な検出に反応性であるもののような細胞には一般化できない。
Ruiz et al(2001, Chem. Senses 26(7): 861 -73)は、細胞を室温に保つことによって、味蕾由来の初期細胞培養の14日までの維持を報告しており、これは種々の細胞プロセスがゆっくりとなったと考えられている。とりわけ、37℃に保った細胞は、既に報告されているように数日間だけ維持される。室温に保った細胞は、およそ10日で死に始め、これは味覚細胞の予測される平均寿命に相当する。Ruiz et al. 1995 ("Tissue Culture of Rat Taste Buds", Eds Spielman AI, Brand JG Experimental Cell Biology of Taste and Olfaction, CRC Press, 1995)によって刊行されたプロトコールには、培養期間が18日まであると述べられた室温での同様の方法が開示されている。
概要
本発明は、一般的に、味覚受容体細胞を含む哺乳動物の味覚細胞の単離、培養および/またはアッセイの方法ならびに培養した哺乳動物の味覚細胞に関する。
本発明に包含されるものには、適切な細胞培養培地中、コートされた細胞培養容器にて(ここで、「にて」の用語は、培養容器との関係で、その内を含む)味覚細胞を培養し、培地の最初の交換から、少なくとも約5日の間隔で培地を交換することによって、哺乳動物の味覚細胞を培養する方法が挙げられる。いくつかの態様において、味覚細胞は、味覚受容体細胞を含む。いくつかの態様において、味覚細胞は、味覚受容体細胞だけを含む。好ましい態様において、細胞培養培地は、15〜20%MCDB153、10%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質を含有するイスコーヴ(Iscove's)培地である。培養容器のコーティングは、好ましくは、コラーゲンを含む。
本発明に包含されるものとしてまた、タンパク質分解酵素の存在または非存在の単離溶液に対する舌上皮の味覚細胞の暴露の長さが最小化されている舌上皮を単離すること、単離した味覚細胞上皮片を、適切な細胞培養培地中、コートされた細胞培養容器にてインキュベートすること、および、培地の最初の交換から、少なくとも5日の間隔で培地を交換することによる哺乳動物の味覚細胞の単離方法が挙げられる。タンパク質分解酵素を含むまたは含まない単離溶液に対する味覚細胞の暴露の長さは、約30分以下である。いくつかの態様において、味覚細胞は、味覚受容体細胞を含み、そしていくつかの態様において、味覚細胞は、味覚受容体細胞のみを含む。好ましい態様において、細胞培養培地は、MCDB153、FBS、インシュリンおよび抗生物質を含むイスコーブ培地を含む。より好ましい態様において、細胞培養培地は、15〜20%MCDB153、10%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質を含有するイスコーブ培地を含む。培養容器のコーティングは、好ましくは、コラーゲンを含む。
さらに本発明の意図するものは、培養した、または本発明の方法にしたがい端離し培養した味覚細胞である。好ましい態様において、味覚細胞は味覚受容体細胞である。味覚受容体細胞は、好ましくは、少なくとも1つの味覚刺激に応答する。本発明の培養された味覚細胞は、少なくとも約10日間、約37℃で、および少なくとも約20日間、約18〜37℃培養され得る。本発明はまた、味覚細胞の培養を包含する。いくつかの好ましい態様において、本発明は、48時間を越える、好ましくは約5日間を越える、そしてさらに好ましくは約2週間を越える細胞培養において分化する哺乳動物の味覚受容体細胞を提供する。
本発明はまた、約300〜320ミリオスモルのオスモル濃度および約7.0〜7.3のpHを有する味覚細胞アッセイ緩衝液およびかかる緩衝液において味覚細胞を維持する方法を提供する。
トランスフェクトされ、培養されえた哺乳動物の味覚細胞が、さらに意図されている。本発明のトランスフェクトされた細胞は、プラスミドのようなベクターDNAまたはウイルスベクターDNAによってトランスフェクトされ得る。また、培養した哺乳動物の味覚細胞と、限定されないが、例えば、ウイルスベクターDNAまたはプラスミドベクターDNAなどのベクターDNAなどの核酸とを接触させることによる培養した味覚細胞をトランスフェクトする方法が提供される。
培養した哺乳動物の味覚細胞を用いたアッセイ方法もまた、本発明に包含される。いくつかの好ましい態様において、該アッセイ方法で用いられる味覚細胞アッセイ緩衝液は、300〜320ミリオスモルのオスモル濃度および7.0〜7.3のpHを有する。
培養した味覚細胞を候補味覚刺激に暴露すること、および、候補味覚刺激に対する味覚細胞の1以上の細胞応答を、標準の味覚刺激に対する培養された味覚細胞の応答と比較すること、ここで、培養された細胞による標準の味覚刺激に関して、候補味覚刺激に対する細胞応答が標準の味覚刺激に対する培養された味覚細胞による同じ細胞応答がと同じであることは、候補味覚刺激が標準の味覚刺激のようにと同じ味覚応答を味覚細胞に同じ味覚応答を引き起こすことを示す、を含む候補味覚刺激に対する応答を評価する方法が提供される。また、候補培養味覚細胞を既知の味覚刺激に暴露すること、および、既知の味覚刺激に対する候補培養味覚細胞の細胞応答と標準の味覚細胞の細胞応答とを比較すること、ここで、候補味覚細胞による標準の味覚刺激に関して、既知の味覚刺激に対する細胞応答が標準の味覚細胞に対する培養された味覚細胞による同じ既知の味覚刺激に対する細胞応答がと同じであることは、候補味覚細胞が標準の味覚細胞の前記味覚刺激に対する応答を共有することを示す、を含む候補味覚刺激に対する味覚応答の評価方法も提供される。
さらにここで、培養味覚細胞を、既知の味覚刺激の存在下、候補味覚修飾物質に暴露すること、および、候補味覚修飾物質に対する味覚細胞の1以上の細胞応答を、候補修飾物質の不存在下での細胞応答と比較すること、ここで、候補修飾物質の存在下での刺激に対する前記細胞応答における変化が、味覚修飾物質を示す、を含む、味覚修飾物質の同定方法が提供される。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および例から明確になるであろう。
詳細な説明
ここで、味覚受容体細胞を含む味覚細胞の1、2または3ヵ月またはそれよりも長期間の培養に備えた単離方法および培養方法が提供される。本発明の方法は、生存している細胞の高いパーセンテージを、37℃の温度でさえも維持し、その結果、全ての細胞プロセスがゆっくりとなることがない。
本発明の味覚細胞の単離方法および/または培養方法は、好ましくは、以下のステップ:
− 単離の間、味覚細胞が酵素を含むおよび含まないの両方の単離溶液に暴露される時間を最小化する。例えば、好ましくは味覚細胞は単離溶液に、約30分以上暴露されず、好ましくは約20分以上暴露されず、そして最も好ましくは、約15分以上暴露されない。例えば、味覚細胞は、30分以下、好ましくは20分以下、および最も好ましくは15分以下で、次に記載のように用いるプロナーゼEを含有する単離溶液に好適に暴露される、
− 細胞培養容器は、適切なコーティングでコートされる。本発明の目的のために適切なコーティングは、細胞接着および増殖を行うコーティングである。コーティングは、好ましくはコラーゲンを含む。コーティングは、好ましくは、ポリ−D−リジン、CELL-TAK(登録商標)またはMATRIGEL(登録商標)を含まない、
− 適切な培養培地が用いられる。本発明の目的のために適切な培養培地は、細胞の生存率、増殖および分化をサポートする培養培地である。本発明の方法のために好ましい培養培地は、イスコーブ培地、MCDB153、FBS、インシュリンおよび抗生物質を含む。適切な培養培地の例は、15〜20%MCDB153、10%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質を含有するイスコーブ培地である。培養培地は、好ましくは、単独もしくはウシ胎仔血清(FBS)および抗生物質補給剤を伴なう、DMEM、F12またはMCDB153から選択されない、
− 培地の最初の交換の後に(例えば、24〜48時間での培養培地の最初の交換の後に)、培地は、約5日よりも短い、好ましくは少なくとも約7日、そして最も好ましくは少なくとも約8日の間隔で交換されるべきではない、
の少なくとも1つを包含する。
本発明の方法は、好ましくは、これらのステップの2つまたは3つ以上を含み、より好ましくは、これらのステップの3つ以上を含み、最も好ましくは、ステップの4つ全てを含む。
これらのステップの1つまたは2つ以上を含む味覚細胞培養方法は、少なくとも約10日、約37℃での培養期間、または少なくとも約20日、約18℃〜約37℃での培養期間の後、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも約75%の味覚細胞の生存率を提供する。味覚細胞培養方法は、好ましくは、約1ヵ月から2ヵ月またはそれ以上、約37℃以下の温度での培養期間の後、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも約75%の味覚細胞の生存率を提供する。細胞の生存率は、以下に記載のトリパンブルー試験によって試験され得る。
4つのステップを含む単離方法および培養方法によって、少なくとも約10日、約37℃または少なくとも20日、約18℃〜37℃での培養期間の後、少なくとも約80%〜約90%またはそれ以上の味覚細胞の生存率が達成される。4つのステップの夫々を含む培養方法は、好ましくは、少なくとも約1ヵ月、約37℃以下の温度での培養期間の後、少なくとも約80%、好ましくは約90%、より好ましくは約95%、より好ましくは約98%またはそれ以上の生存率を達成する。
本発明の方法は、
i)細胞が、酵素を含むまたは含まない単離溶液に曝される時間が最小化されている舌上皮を単離すること、
ii)単離した舌上皮を適切なコーティングでコートした細胞培養容器にて適切な細胞培養培地でインキュベートすること、および、
iii)例えば約24〜48時間で、培養培地の最初の交換に続いて、少なくとも約5日の間隔で培地を交換すること
を含む哺乳動物の味覚細胞を単離および培養する方法を含む。
いくつかの好ましい態様において、味覚細胞は味覚受容体細胞を含む。好ましい態様において、味覚細胞は味覚受容体細胞のみを含む。いくつかの態様において、味覚細胞を酵素を含むまたは含まない単離溶液に対して暴露する時間は、約30分以下、より好ましくは約20分以下、および最も好ましくは約15分以下である。いくつかの好ましい態様において、コーティングはコラーゲンである。いくつかの態様において、培養培地の交換の間隔は、少なくとも約7日であり、好ましくは少なくとも約8日である。
本発明の方法によれば、少なくとも約10日、約37℃以下の温度で、または少なくとも約20日、約18℃〜約37℃で、少なくとも約40%の生存率する味覚細胞を維持することが可能である。いくつかの態様において、
少なくとも約10日、約37℃以下の温度で、または少なくとも約20日、約18℃〜約37℃で、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは約95%の生存率が、本発明の方法にしたがって達成される。
味覚細胞は、コートした表面に対し、とくによく接着していることが見出された。したがって、本発明はまた、
i)コートした細胞培養容器にて適切な細胞培養培地で味覚細胞を培養すること、および
ii)例えば、約24〜48時間での培養培地の最初の交換に続いて、少なくとも約5日の間隔で培地を交換すること、
を含む哺乳動物の味覚細胞を培養する方法を提供する。
本発明の方法にしたがい培養された味覚細胞は、当該分野で知られた方法にしたがって単離され得る。好ましくは、味覚細胞は、本明細書で提供された方法にしたがって単離される。いくつかの好ましい態様において、味覚細胞は味覚受容体細胞を含む。いくつかの好ましい態様において、コーティングがコラーゲンである。いくつかの態様において、培養培地の交換の間隔は、少なくとも約7日であり、好ましくは少なくとも約8日である。
本発明はまた、少なくとも約6時間、好ましくは少なくとも約12時間、より好ましくは少なくとも約24時間、改善されたアッセイ緩衝液で味覚細胞を維持する方法を提供する。改善されたアッセイ緩衝液は、約300〜320ミリオスモル、好ましくは300〜310ミリオスモルの規定のオスモル濃度を有する。アッセイ緩衝液のオスモル濃度は、例えば、5M NaClで調整され得る。例えば、約320ミリオスモルを越えるなど、高すぎるオスモル濃度は、細胞が死滅し始め、味覚刺激に対する細胞の応答を決定する場合、カルシウムイメージングアッセイ用のfura-2 AMなどのアッセイ試薬を受け入れなくなるので、避けなければならない(例えば、例9参照)。アッセイ緩衝液は、約7.0〜7.3のpHを有する。改善されたアッセイ緩衝液の好ましいpHは、約7.15〜約7.25である。ベースとなる緩衝液として、任意の好適な緩衝液を用いることができる。必要であれば、ベースとなる緩衝液は、オスモル濃度および/またはpHを調整されてもよい。好適なベースとなる緩衝液は、例えば、改変されたMHNKリンガー溶液(80mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、1mMピルビン酸ナトリウム、20mM Hepes−Na、pH7.2)である。細胞がアッセイの目的のために維持すべきである場合、維持方法は有用である。従来の方法には、味覚刺激に対する反応性を維持しながら、緩衝溶液で匹敵する期間、緩衝溶液で味覚受容体細胞を含む味覚細胞を維持することができるものはなかった。
本発明にしたがって培養された味覚細胞の分析によって、例えば、1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月以下、またはそれ以上の培養期間を通じて、いくつかの機能および分子特性を維持することが示された。特に、細胞は分裂し続け(BrdU標識によって示された)、ガストデューシン、ホスホリパーゼC−ベータ−2(PLC−β2)、TRPM5、T1R3およびT2R5を含む味覚受容体細胞特異的マーカーを発現する細胞へ分化し続ける。さらに、本発明の方法にしたがって培養した味覚細胞は、味覚刺激により活性化される能力を維持している。例えば、本発明の方法に従って培養された味覚細胞は、カルシウムイメージングによって示されるように、デナトニウム(安息香酸デナトニウム)、アセサルフェームK(6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン2,2−ジオキシジカリウム塩)、MSG(グルタミン酸一ナトリウム)、シクロヘキシミド(3−[2−(3,5−ジメチル−2−オキソシクロヘキシル)−2−ヒドロキシエチル]グルタルイミド)、グリシンおよび高K緩衝液(高K緩衝液はカリウムが豊富であり、5M NaClで300〜310に調整したオスモル濃度を有し、5mM NaCl、80mMKCl、1mMMgCl、1mMCaCl、1mMピルビン酸Naおよび20mMHepes−Naを含む改変された改変MHNKリンガー溶液を含む、pH7.2;すべての他の刺激剤は、Sigma, Saint Louis, MO, USAから商業的に入手可能である)を含む1つまたは2つ以上の味覚刺激によって活性化される。カルシウムイメージングは、味覚刺激(外部からのカルシウムの進入または内部のカルシウムの貯留からの放出)の反応のいくつかのメカニズムの1つである味覚刺激による活性化に応答して細胞内カルシウムの上昇を検出する。
本発明はまた、約48時間を越える細胞培養において分裂し続ける味覚受容体細胞を含む味覚細胞を提供する。培養期間に依存して、味覚細胞は、約5日を越えて、好ましくは約2週間を越えて、より好ましくは約4週間を越えて、またはそれ以上の間、分裂し続け得る。顕著なことに、従来技術の方法は、細胞の分化が、単離に続いてすぐの短い期間だけ続くか、または細胞が数日しか生存しない程度に減速するような味覚細胞培養を提供した。Ruiz et al. 2001、前出、によって、既に48時間培養中のBrdUの細胞への添加によっては、実質的にBrdUによって標識されていないことが報告されている。培養中の細胞が継続して分化しているか否かは、当該分野においてよく知られているように、例えば培養の少なくとも2日後に、BrdU標識を用いて容易に試験することができる。本発明の味覚細胞は、高パーセンテージのBrdU標識された細胞、例えば、少なくとも約30%の細胞を示す。好ましくは、少なくとも約40%の細胞、より好ましくは約50%の細胞、さらにより好ましくは約60%の細胞および最も好ましくは少なくとも約70%の細胞が、BrdU標識されている。通常、少なくとも約60〜70%の細胞が標識されている。
哺乳動物の味覚細胞
他の哺乳動物からの材料もまた本発明の方法にしたがって用い得るが、例に記載された単離された味覚乳頭はラットの舌に由来する。全ての哺乳動物は、味蕾およびその細胞および分子構成において味覚細胞の構成中、高い相同性を共有している。したがって、他の哺乳動物の味覚細胞はまた、同様の生存率を有したまま単離および/または長期培養され得る。例えば、用いられ得る一般的な研究動物は、例えば、ラット、マウス、ハムスターおよびモルモットを含むげっ歯動物である。用いられ得る他の哺乳動物には、例えば、ウシ亜科の動物、ブタ、イヌ、ネコおよび霊長動物(例えば、類人猿、サル、ヒト)が含まれる。
味覚細胞の単離方法
提供された酵素および単離溶液とのインキュベーション時間は短く、舌上皮組織および味蕾を単離する単離方法は、当該分野でよく知られているように行われ得る。オリジナルの方法は、Spielman et al. 1989, Brain Research 503: 326-29によって記載されている。この方法の種々の改変は既知であり、例えば、Kishi et al. 2001, Neuroscience 106(1): 217-25, Stone et al. 2002, Chem. Senses 27: 779-87, and Ruiz et al. 2001, Chem. Senses 26(7):861-73に記載されている。
本発明の単離手順は、単離溶液におけるインキュベーションのインキュベーション期間を含み、所望の期間の培養と細胞の生存のために十分に短いタンパク質分解酵素とのインキュベーションが達成され、これはここに記載のように容易に試験され得る。好ましくは、単離溶液およびタンパク質分解酵素との両方とのインキュベーション期間が、約30分以下、好ましくは約20分以下、より好ましくは約15分以下である。本発明は、酵素なしで約2分〜約15分のインキュベーションで単一の単離溶液を用い、好ましくは氷上で、1つまたは2つ以上のタンパク質分解酵素が添加され、約10分〜約15分インキュベートしされる。
本発明の方法において単離に用いられるのに好ましい酵素としては、付着、増殖および分化の能力にダメージを与えることなく、細胞を分離することができるように、約30分以下の短期間において味覚細胞を分離するためにタンパク質を十分に加水分解するプロテアーゼである。好適な加水分解酵素は、例えば、プロナーゼEおよび/またはエラスターゼである。好ましくは、2つ以上の酵素を用いる。例えば、プロナーゼEおよびエラスターゼの組み合わせを本発明の単離方法において用いることができる。プロナーゼEは、Streptomcyes griseusからの非特異的プロテアーゼ混合物であり、例えば、Sigma, Saint Louis, MO, USAから商業的に入手可能である。エラスターゼ、例えば、ブタ膵臓エラスターゼタイプI(pancreatic porcine elastase type I)(異名:膵臓ペプチダーゼE(pancreatopeptidase E)、ブタ膵臓エラスターゼ(Elastase hog pancreas)、CAS番号39445-21-1、酵素番号(Enzyme Commission (EC) Number)3.4.21.36)は、Ala−Xaaの選択的切断サイトを有するエラスチンを含むタンパク質を加水分解し、Sigma, Saint Louis, MO, USAから商業的に入手可能である(例えば、水性懸濁液中1mg/mlエラスターゼ、4単位/タンパク質mg、製造No.E1250)。
代替的に、酵素は当該分野によく知られているようにクローニングされ、発現され得ることができ、例えば、Baumstark et al. 1963, Biochim. Biophys. Acta 676、およびManiatis et al., 1982, “Molecular Cloning, A laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratoryによって記載されている。
舌上皮は、好ましくは、その単離に続いてみじん切りにされる。好ましくは、味覚乳頭の領域(有郭乳頭、葉状乳頭および茸状乳頭の1つまたはそれ以上)から単離された上皮を培地を備えた培養容器へ移した後、単離した上皮を適切な道具、例えば、外科用ブレイドを用いて、みじん切りにし、無傷味蕾並びに部分的に解離した味蕾を含む混合物を提供する。このような混合物に由来する初代細胞培養は、よりよい付着および/またはより長い生存期間および/または増殖によるかも知れない、より長い期間に亘って維持し続けることができる細胞培養を提供する傾向がある。
味覚細胞培養の方法
本発明の方法に用いるべき適切な培養によって、味覚細胞の生存率、増殖および分化を支持する。本発明の方法のための培養培地は、好ましくは、イスコーブ培地、好ましくは、MCDB153培地、FBS、インシュリンおよび抗生物質の1つまたはそれ以上を添加している。細胞培養のための好ましい培地は、例えば、イスコーブ培地、好ましくは、15〜20%MCDB153培地、5〜20%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質の1つまたはそれ以上を添加している。好適なFBS濃度は10%である。好適な抗生物質の組み合わせは、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよびファンギゾン(fungizone)である。好適な濃度は、100U/ml/100μg/ml、ペニシリン/ストレプトマイシン、2.5μg/mlゲンタマイシンおよび0.5μg/mlファンギゾンである
イスコーブ培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)から改変された高度に豊富化された合成培地であり、亜セレン酸ナトリウム、さらなるアミノ酸およびビタミン、ピルビン酸ナトリウム、HEPES緩衝液および硝酸第二鉄に代えて硝酸カリウムを含む。イスコーブ培地は、例えば、Cellgro(登録商標)由来の“Iscove's Modification of DMEM”として、Mediatech Inc, Herndon, VA, USA(製造番号10-016)によって商業的に入手可能である。
例えば、L−グルタミンおよび28mM HEPESを含み、重炭酸ナトリウムを含まないMCDB153培地は、ハムズ栄養培地F−12(Ham’s nutrient mixture F-12)の改変物であり、血清フリーの増殖のために計画された高度に豊富化された培地であり、ホルモン、増殖因子、微量元素または低レベルの透析したウシ胎仔血清タンパク質を利用する。MCDB153は、Sigma, Saint Louis, MO, USA(製造番号M 7403)から商業的に入手可能である。
細胞培養に適切な温度は、所望の速度で細胞増殖および細胞プロセスを可能にする任意の温度であり、例えば、室温(18〜22℃)および約37℃を含む、約18℃〜約37度であり、例えば、35〜39℃である。好ましい温度は、生理的温度である37℃であり、通常の速度の細胞プロセスを提供する。例えば、約37℃で細胞を培養した場合、温度は、当業者に明らかなように、細胞培養系に依存して、およそ37℃を平均として振れるため(例えば、±0.5または1℃)、時間とともに変化する。
細胞培養は、当業者に明らかなように、適切なCO濃度および適切な湿度で、適切な環境で行われる。例えば、選択した培地の緩衝系に依存しながら、約5%のCO濃度が適切である。細胞は、高湿度、例えば約95%の条件下で通常培養される。例えば、ディッシュまたはカバースリップなどの本発明の細胞培養容器は、好ましくはコラーゲンで、より好ましくはI型コラーゲンで、最も好ましくはラットテールI型コラーゲンでコートされる。
例えば、播種後約24〜48時間で行い得る最初の培地の交換の後、任意の続く培地交換は、少なくとも約5日、好ましくは少なくとも約7日、最も好ましくは少なくとも約8日よりも短くない間隔で行われる。培養条件、選択した培地、抗生物質の濃度および増殖速度に依存して、約10日後、培地は通常置換すべきである。
当該分野において知られている任意の方法を細胞の生存率を評価するのに用い得る。例えば、トリパンブルー染色(Sigma, Saint Louis, MO, USA)が用いられ得る。生存率は、以下のように試験し得る:トリパンブルー(Sigma, Saint Louis, MO, USA)を直接、培養容器の細胞培養培地に0.2%(w/v)トリパンブルーの濃度になるように添加する。トリパンブルーは死んだ細胞の細胞核を青色に染色する。5〜10分後、100個の細胞を接眼グリッド(ocular grid)を用いて、10×拡大で位相差顕微鏡下で計数する。生存率は、百分率で決定される(計数された生存する細胞を、計数された全細胞で割り、100倍する)。この手順を2〜3個のカバースリップで繰り返し、平均を決定した。異なるカバースリップ間の偏差は一般的に低い。細胞培養は、少なくとも約80%生存し、より好ましくは少なくとも約80%生存し、より好ましくは少なくとも約90%生存し、より好ましくは少なくとも約95%、さらにより好ましくは少なくとも約98%、さらにより好ましくは少なくとも約99%生存している。
味覚細胞アッセイ
本発明の方法および味覚細胞は、味物質、味修飾剤(taste modifiers)(味を増強、抑制、刺激または阻害する、あるいは特定の味質に影響する刺激を含む)を含む味覚細胞での応答を誘発する候補刺激または化合物、および味覚細胞において特定の応答または効果を誘発するその他の候補刺激または化合物を同定するために、当該分野で知られたアッセイ方法において用いられ得る。例えば、これらのアッセイは、候補の味、味質、味の修飾効果、増殖促進効果、阻害効果または毒性効果を同定し、評価するのに用いられ得る。さらに、味覚欠損(taste loss)の処置のための候補、薬剤開発のための標的および健全な味覚細胞の維持に必要な栄養因子を同定するのに用いられ得る。一般的に、かかるアッセイは、興味ある候補または候補の混合物の、標準に対する、少なくとも1タイプの細胞内応答(例えば、カルシウム濃度に関連する蛍光シグナル)の比較を含む。
候補刺激または化合物は、例えば、味物質の存在下の候補味物質または候補味覚修飾剤であってもよい。標準の刺激または化合物は、知られた味刺激または知られた味質の味物質、または味覚細胞に特定の効果を誘発することができる刺激/化合物であってもよい。かかる効果は、増殖促進効果、抑制効果または毒性効果、または味覚刺激に対する応答の欠損、細胞増殖または味覚細胞の健康の維持であってもよい。候補および標準は、例えば、異なるソース(種、個体、齢など)の味覚細胞など異なる味覚細胞の応答における差異が比較されるべきである場合、同一(例えば、知られた味物質)であってもよい。
本発明の味覚受容体細胞を含む味覚細胞は、候補と標準に暴露され、測定可能なシグナルとなる細胞内の応答が比較される。暴露は、当該分野でよく知られているように、連続的に(consecutively)または同時に(in parallel)行われてもよい。いくつかの刺激または化合物は一緒に試験し得る。
種々の細胞応答は、当該分野によく知られており、カルシウム濃度、pHおよび電位の変化を含む。応答の変化は、規模、待ち時間(刺激暴露と応答との間の時間として規定される)または期間の変化を含み得る。これらの変化は、当該分野でよく知られた検出方法によって検出することができ、それには、カルシウムまたはpHに感受性である蛍光化合物、電位感受性色素(例えば、Hayashi et al. 1996, Biophys J., 71(2):1057-70に記載)および電気生理学的記録(例えば、Ogura et al., J Neurosci. 1997 May 15;17(10):3580-7および Zviman MM et al., J Membr Biol. 1996 Jan;149(2):81-8に記載)が含まれる。
大変多くの特定のアッセイのタイプがあり、どのようにセットアップするかの詳細は当業者には明らかである。例えば、アッセイは、Frank ME, “Taste nerve recording in rodents", In: “Experimental cell biology of taste and olfaction”, Ed by A. Spielman and J. Brand, CRC Press, 1995; Bryant, BP. “Trigeminal nerve recording in rodents”, Ed by A. Spielman and J. Brand, CRC Press, 1995; Gilbertson TA, “Patch-clamping of taste cells in hamster and rat”, Ed by A. Spielman and J. Brand. CRC Press, 1995に記載されているように行ってもよい
いくつかの官能アッセイの概観をここに提供する。
味物質同定/特徴付けアッセイ:
未知の味質の候補に応答する味覚細胞は、既知の味物質のそれと比較され、細胞応答における差異または相同性を同定される。味覚細胞は、例8に記載するように、既知の味物質に対する応答によって、または当業者が知っている匹敵する細胞応答アッセイを用いることにより、同定される。候補に対する細胞応答はモニターされ、味物質に対する同一の細胞の細胞応答と比較される。
修飾剤(味修飾剤)アッセイ:
候補修飾剤(例えば、味修飾剤)の存在下および非存在下での既知の刺激(例えば、既知の味物質)に対する味覚細胞応答を比較した。細胞応答は、検出され比較された。比較によって、応答が増大、減少、遅延、延長または影響を受けなかったことが示され得る。刺激に対する細胞応答の規模の増大または刺激に応答する細胞の頻度の増大を引き起こす候補修飾剤は、候補修飾剤が、刺激(例えば、味物質)の強度を高めることに有用であり、与えられた刺激(例えば、味覚刺激/フレーバー)を高めるために、フード製品のようなある製品に添加するのに有用であろうことを示している。より短い待ち時間またはより長い応答期間を引き起こす刺激または化合物は、増大した強度または変化した質を示す。
上昇した味強度の知見またはより速い若しくはより延長された味知覚によって、刺激または化合物は、その味を増強するためにフード製品に添加され得る、刺激または味エンハンサーとして同定される。低減された応答の規模、より遅い待ち時間または標的刺激に対するより短い応答期間をもたらす候補修飾剤は、標的刺激のマスキング、ブロッキングまたは抑制剤として有用であると同定される。候補修飾剤の存在下に対する非存在下での標的刺激に対する応答における結果に差がない場合、化合物は標的刺激に対する修飾剤ではない。
異なる試験対象における味覚細胞応答の差の決定:
種々のソース由来の味覚細胞の与えられた刺激(例えば、既知の味物質、既知の味物質および味修飾剤)に対する応答を比較する。これらのアッセイを用いることにより、刺激または味物質に対する細胞応答が、種々の培養、個体、種により選択された味覚細胞の種々のソース間で異なるか、または齢、遺伝的構成、代謝状態または栄養状態、疾患の状態、医薬用途および治療的処置における相違と関連して異なるのか決定することができる。
同定された差異によって、特定の種、集団または個体の要求に合わせられた、例えば、フード製品のためのフレーバーおよびフレーバー組成物を標的とした改善された味覚システムの開発が可能となる。例えば、年を取った対象に対する若い対象に由来する細胞において特定の刺激に対する低減された応答性によって、
製品が意図する消費者グループの年齢に依存する消費者のための味質の改善する刺激濃度の必要な増大/低減が同定される。ある種において活性が既知である味修飾剤の有効性が、興味ある種における味覚刺激の有効性を同定するために、異なる種において同定される。
種々の細胞パラメーターに関連する味覚細胞の細胞応答に基づくアッセイ:
測定されたパラメーターは、先に詳述したような応答の差異、味覚刺激に対する応答の頻度、または、細胞の増殖速度を含む特定された細胞パラメーター、味に関連するタンパク質マーカーの発現、味覚細胞の再生(増殖、分化、生存)および例に記載のその他のものを含む。
味覚細胞の再生、修復、増殖、分化、生存および置換に影響を及ぼす候補化合物は、治療薬として有用であり得るのであるが、候補化合物の存在下および非存在下における味覚細胞の応答の比較によって同定することができる。細胞は、インビボまたはインビトロで候補化合物に暴露され得る。
前記のアッセイによって同定された候補刺激または化合物は、当該分野でよく知られている以下の方法の1つまたは2つ以上によってさらに認証され得る。これらには、試験対象の行動試験、官能試験、シグナル伝達試験、生理学的方法(例えば、神経記録)が含まれ、例えば、Spielman, A.I., Brand, J.G. (Editors), “Experimental Cell Biology of Taste and Olfaction”, CRC Press, Boca Raton, FL, pp. 437, 1995およびDoty, R.L. (Ed.): Handbook of Olfaction and Gustation. 2nd edition N.Y.: Marcel Dekker, 2003, 1150 ppに記載されている。
本発明の味覚細胞を用いたアッセイによって同定される刺激または化合物は、フード製品に添加され得る。「フード製品」は、薬剤、口内洗浄液およびその他の口の健康および衛生用製品を含む口腔内で適用される全ての製品を含むことを意味する。さらにペット用のフード製品を含む。
トランスフェクション方法
本発明は、初めて、トランスフェクトされた培養味覚細胞を提供する。他の側面において、したがって、本発明は、例えば、プラスミドベクターによって、トランスフェクトされた培養された味覚細胞、好ましくは、本発明にしたがい培養された味覚細胞に関し、かかる細胞を、例えば、プラスミドベクターを用いることによるトランスフェクションなどによって、製造する方法に関する。
本発明の方法にしたがい培養された味覚細胞および味覚受容体細胞を含む味覚細胞は、例えば、Murray, EJ, editor (1990), Gene Transfer and Expression Protocols: Methods in Moplecular Biology, Vol. 7, Humana Press, Clifton, New Jersey; Perkus ME et al. (1993, J. Tiss. Cult. Meth. 15: 72); Felgner, J. et al. (1993, J. Tiss. Cult. Meth. 15: 63)に記載されている真核細胞のトランスフェクションのための標準の方法を用いてトランスフェクトされ得る。代替的に、例10においてレポーター遺伝子を含む発現ベクター用に示したように、FuGene(登録商標)6 Transfection Reagent (Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を用いてトランスフェクトされてもよい。本発明の味覚細胞はまた、当該分野においてよく知られているように、ウイルスによるトランスフェクションの既知の方法を用いてウイルスによってトランスフェクトすることができる。ウイルスを用いて味覚細胞に遺伝物質を導入する方法は既知である(Kishi et al. 2001, Neuroscience 106(1): 217-25; Stone et al. 2002, Chem. Senses 27: 779-87)。
プラスミドベクタートランスフェクションプロトコールは、困難なウイルスの扱いを避けるという利点がある。本発明の味覚細胞は、容易に視覚化されるトランスフェクトされたタンパク質(緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)など)由来の蛍光シグナルをもたらすプラスミドベクターによって、良好なトランスフェクション効率で十分にトランスフェクトすることができる。本発明の培養細胞を用いると、良好なトランスフェクション効率が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%の1つである。好ましくは、少なくとも約5日以上(例えば、少なくとも約7日、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間および少なくとも約2ヵ月)培養した細胞が用いられる。
以下の例は、本発明の態様のいくつかの側面をより詳細に記載する。これらの例は、ここに記載の本発明の、これに限定されない側面をさらに説明するために提供される。

例1:
ラット味覚乳頭(有郭、葉状)から味覚受容体細胞を含む味覚細胞の単離および細胞培養
用いたラットは、1〜2月齢の成獣オスSprague-Dawleyラットである。ラットは、CO2吸入後の頸椎脱臼によって屠殺した。舌を有郭乳頭近傍で解剖し、直ちに冷やした単離溶液(26mM NaHCO、2.5mM NaHPO、20mMグルコース、65mM NaCl、20mM KClおよび1mM EDTA)に氷上で5〜10分間置いた。
調整物を氷から除き、約1mlの単離溶液を1.5mg/ml プロナーゼE(Streptomyces griseus由来のプロテアーゼ、Sigma, St. Louis, MO, USAから商業的に入手可能、製造番号P 6911、5.5ユニット/mg固体の活性。ユニットの定義:1Uは、37℃でpH7.5の毎分1.0マイクロモル(181マイクログラム)のチロシンに相当する色を産生するようにカゼインを加水分解する)および1mg/ml エラスターゼ(ブタ膵臓エラスターゼタイプIともいう、CAS番号39445-21-1、Sigma, Saint Louis, MO, USAから商業的に入手可能、製造番号E1250、4ユニット/mgタンパク質の水性懸濁液)と混合した。
酵素を含む得られた溶液を、通常のサイズの約2倍に膨らんだ解剖した舌の有郭乳頭および葉状乳頭の舌上皮の下および周辺に25ゲージNORM-JECT(登録商標)シリンジで均一に注射した。酵素液を含む解剖した舌を冷やした単離溶液に置き、室温で15分間インキュベートした。
酵素インキュベーションの後、上皮を穏やかに、下の筋肉層から、解剖顕微鏡(Stereomaster, Fischer Scientific, Pittsburgh, PA)下で剥ぎ、単離溶液に浸した。有郭乳頭および葉状乳頭の領域からの上皮を単離し、培養培地に移した。
以下の培養培地を用いた:
− 10%ウシ胎仔血清(BTI, MA, USA)、15〜20%MCDB153培地(Sigma, Saint Louis, MO, USA)、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質(100U/ml/100μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、2.5μg/mlゲンタマイシンおよび0.5μg/mlファンギゾン)を含むイスコーブ培地(CELLGRO(登録商標)の“Iscove's Modification of DMEM”、 Mediatech Inc, Herndon, VA, USA、製造番号10-016)
− 10%FBSを含むかまたは含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco BRL, NY, USA; Cellgro, USA)
− MCDB153(Sigma, Saint Louis, MO, USA)
培地中、有郭乳頭および葉状乳頭の領域から単離された上皮を、味蕾全体および部分的に解剖した味蕾の両方が存在するように、外科用はさみで小片に刻んだ。上皮片を選択した培養ディッシュまたはカバースリップに播種した。用いた種々の培養ディッシュまたはカバースリップは以下のとおりである:
− ラットテールタイプ1コラーゲンコートした(3.96mg/ml、水に1:4で希釈、BD Sciences, San Diego, CA)18mm丸ガラスカバースリップ(Fisher, USA);
− 無コーティングポリスチレン培養ディッシュ;
− 無コーティングガラスカバースリップ;
− マトリックスゲル(2ml/l、ATCC, USA)でコートしたガラスカバースリップ。
マトリックス溶液をEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫(ATCC, USA、製造番号CRL-2108)から調製した。マトリックスゲルは、次の3つの変形を用いた:細胞を、播種の前にマトリックスゲル内に埋め込み、穏やかにカバースリップに適用した;カバースリップはマトリックスゲルでコートし、細胞をポリマー化マトリックスゲルに播種した;細胞をマトリックスゲルに播種するとともに、ゲルをポリマー化した;
− ポリ−D−リジン(Sigma, Saint Louis, MO, USA、製造番号P-6407、終濃度は0.1mg/mlである)でコートしたガラスカバースリップ
コーティングまたは使用の前、カバースリップは次のように処理した:2M NaOHで1時間インキュベーションおよび70%硝酸(HNO)で一晩インキュベーション、次いで、HCl酸洗浄で1時間インキュベーション。次いで、カバースリップを水中、オートクレーブし、70%エタノールおよび100%エタノールで濯ぎ、風乾した。
培養ディッシュまたはカバースリップを、5%CO含有湿潤環境(95%湿度)、37℃でインキュベートした。培養培地を24〜48時間後に交換し、次いで5〜10日毎に交換した。
細胞の接着は、一晩培養後、顕微鏡(10×)を用いてモニターした。
細胞の生存率は、トリパンブルー(Sigma, Saint Louis, MO, USA)で染色することによって決定した。トリパンブルーは、0.2%(w/v)の濃度で培養ディッシュに添加した。5〜10分後、100個の細胞を接眼グリッドを用い、10×拡大で位相差顕微鏡下で計数した。死んだ細胞は、位相差顕微鏡下で、その青く染まった核によって認識することができる。細胞培養ディッシュまたはカバースリップのエリアは、写真に撮り、細胞の生存率(計数した生存している細胞を計数した総細胞数で割り、100を掛ける)を2〜3個のカバースリップのそれぞれについて100個の細胞を計数することによって決定した。
結果:
細胞を全培養期間モニターし、本発明の単離手順、コラーゲンコートした培養表面およびイスコーブ培養培地を用い続けた場合、細胞は以下の特徴を示した:
個々の細胞および蕾タイプの細胞は、プレーティング後、24〜48時間生存できた。細胞は、7〜8日まで、付着細胞および細胞クラスターの形態で増殖した。5〜7日後、娘細胞を生じさせる細胞クラスターが分離し始めた。細胞は、15〜20日までその元来の形を維持した。15〜20日後、1つまたは2つ以上のプロセスを有するかまたは有しない円形の細胞体を保持しながら、細胞はそのコンパクトな外観を維持しているが、細胞集団の一部は、形態が変化し始めた。20日後、長期培養細胞の大部分は、より平らな外観を得た。細胞は、高い生存率を3週間まで維持し、少なくとも95%の生存率で、ほとんどのディッシュにおいて、少なくとも98%〜99%の生存率であった。
他の単離プロトコールまたはコラーゲンを有しない異なる細胞培養表面を用いた場合、細胞は付着しないか、培養した場合、死んだ細胞の数が遅くとも2週間で急激に増大する。
細胞接着のパーセンテージは、一晩培養後に決定した。細胞を上記のとおり単離し、コラーゲンコートしたカバースリップに播種し、イスコーブ培地+20%MCDB153+10%FBS+10ng/mlインシュリン+抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン+ゲンタマイシン+ファンギゾン)で培養した場合、細胞は、15〜20%の一晩インキュベーション(12〜16時間)の後の細胞付着率を示した。7日後、細胞は、少なくとも90%の生存が見られた。2ヵ月後、細胞は、まだ少なくとも90%生存していた。

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示した酵素で単離し、最適化した表面にて、および最適化した培地で、味覚細胞は、少なくとも2ヵ月まで、3ヵ月まで、潜在的にはそれ以上、維持される。最初の3〜4週間、味覚細胞は、前記のとおり、トリパンブルーの試験で、約98%近くから99%の生存率を維持している。2ヵ月後および3ヵ月で、味覚細胞はまだ、約95%の生存率を維持し、細胞の一部は増殖していた。
例2:
BrdU標識によって示された味覚受容体細胞を含む味覚細胞の増殖
初期細胞培養が増殖性細胞を含むかを決定するために、5−ブロモ−2−デオキシウリジン(BrdU)の取り込みを培養11日目まで次に記載のとおり行った。
味覚細胞の60〜70パーセントは、BrdUで標識されているのが見られ、このことは、味覚細胞が、例1のプロトコールで単離され、以下に詳述するように培養された少なくとも11日までの培養期間後に増殖し続けていることを示している。
味覚細胞は、例1に記載のとおり、ラットから単離され、コラーゲンコートしたカバースリップに播種した。細胞を5〜6日培養し、次いで、10mM DMSOに溶解した50μM BrdU(Sigma, Saint Louis, MO, USA)で24〜48時間処理し、この後、BrdUをイスコーブ培地+20% MCDB153+10%FBS+10ng/mlインシュリン+抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン+ゲンタマイシン+ファンギゾン)での培地の交換により除去した。細胞は、カバースリップにての培養においてさらに3日間維持され、次いで、0.1M PB(pH7.2)中、4%パラホルムアルデヒドで、室温、10分間固定した。固定の後、細胞を免疫組織化学によってBrdU取り込みを分析した。固定後、カバースリップを0.1M PBS(pH7.2)で3回(各5分)洗浄し、内部ペルオキシダーゼをブロックするために、H溶液(4mLリン酸緩衝生理食塩水(PBS)+0.5mL 100%メタノール+0.5mL 30%H)で20分間、室温で処理した。後に、カバースリップをPBSで濯ぎ、次いで、37℃、30分間、2N HClで変性した。変性後、カバースリップをPBSで濯ぎ、非特異的結合を低減するため、室温、1時間、PBS中のブロッキング緩衝液(SuperBlock(登録商標), Pierce Chemical Company, Rockford, IL)でインキュベートした。次いで、カバースリップを0.05%TWEEN20添加10%SuperBlockに希釈したマウス抗BrdU(1:100に希釈、Sigma, Saint Louis, MO, USA、B-2531)において、4℃で一晩インキュベートした。PBSで3回洗浄後、カバースリップを0.05%TWEEN20添加10%SuperBlockに希釈したFITC−共役抗マウスIgG(1:500、Santa Cruz Biotechnology)において、室温で1時間インキュベートした。後にカバースリップをPBSで各5分間3回洗浄し、水で各10分間3回洗浄した。最終的に、カバースリップを封入剤(Vectashield(登録商標)またはDAPIを備えたVectashield(登録商標)、Vector Labs, USA)にマウントした。
ネガティブコントロールとして、抗BrdU抗体によるBrdUの非特異的染色を排除するために、マウスIgGコントロール血清を一次抗体の代わりに用いた。さらなる確認として、標識していない細胞を抗BrdU抗体で染色した。これらのコントロールのうち、BrdUに関連する任意の特異的な染色を示すものはなく、味覚細胞のBrdU染色が特異的であることが見出された。
例3:
RT−PCRによる味覚細胞特異的マーカーの発現
逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)分析は、例1に記載されたように、素早い単離手順で単離し、培養した味覚細胞において、例1に記載したように改変したイスコーブ培地で、コラーゲンコートした培養ディッシュで培養し、行った
以下の味覚細胞特異的マーカーは、RT−PCRで分析した:ガストデューシン、PLC−ベータ−2(PLC−β2)、TRPM5、T1R3およびT2R5。ベータ−アクチン(ハウスキーピング遺伝子)をポジティブコントロールとして用いた。
全RNAを、7〜10日間培養した味覚細胞、2ヵ月間培養した味覚細胞、およびポジティブコントロールとして、ラット舌上皮から単離した。RNAを単離し、逆転写し、以下に記載したようにPCRによって増幅した。すべてのサンプル(7〜10日間、2ヵ月培養した味覚細胞およびラット舌上皮)において、予測されたサイズの増幅産物が検出された。このことは、培養された味覚細胞が、培養2ヵ月後でさえ、味覚細胞特異的マーカーのmRNAを発現し続けたことを示す。
RNAの単離、逆転写およびPCRによる増幅に用いるプロトコール:
各サンプルは、当該分野において知られているTRIZOL試薬(Invitrogen Corp, USA)によって、例えば、製造者の説明に従い、抽出される。代替的に、RNAは、Maniatis et al., 1982, “Molecular Cloning, A laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratoryに記載のように単離、逆転写および増幅されてもよい。
全20μl容量の4μgRNAを、RT−PCR用SUPERSCRIPT First Strand Synthesis System(Invitrogen Corp., USA)を用いて、90分間、42℃で逆転写した。ゲノムDNAの混入をチェックするためのネガティブコントロールとして、RNAサンプルを逆転写酵素の存在および非存在において、並行して処理した。PCR増幅によるゲノムDNAの混入のための後の試験は、ゲノムDNAの混入がなかったことを示している。ガストデューシン、PLC−β2、ベータ−アクチン、T2R3、T1R5およびTRPM5の発現を示すための既知の特異的なプライマーを以下にリストする。
プライマーは、ゲノムDNAから増幅されるフラグメントによる混乱を排除し、標的特異的産物の生成を保証するため、1つまたは2つ以上のイントロンにまたがるように選択される。ガストデューシン、PLC−β2およびβ−アクチンのプライマーは、例えば、Rossler et al. 2000, Chemical Senses 25: 413-421などにおいて先に公開されている。TRPM5は、Heiner et al. 2003, Biochem. J. 371: 1045-1053によって先に公開されている。最初に示したプライマーは順方向プライマーであり、二番目は逆方向である。

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各RT反応のためのcDNAのPCR増幅は、2μlのRT反応1xAmpli Taq Gold(登録商標)PCR緩衝液、2.5mM MgCl、1mMデオキシヌクレオシドトリホスフェート、0.4μMの各プライマーおよび0.25U/μlのAmpli Tag Gold(登録商標)ポリメラーゼ(Applied Biosystems, Foster City, CA)を含む最終容量50μlで行った。PCR増幅は、95℃、5分間の初期変性、続く、94℃30秒間の変性、55℃45秒間のアニーリングおよび72℃30秒間の伸張のサイクルからなる。40サイクルの増幅の後、最後の伸張は、72℃10分間である。PCR産物は、1.4%アガロースゲルで分離し、その予想されたサイズを検証するため0.2μg/mlの臭化エチジウムで染色した。
例4:
味覚受容体細胞特異的バイオマーカー、ガストデューシン、PLC−β2およびBrdUの免疫組織化学的局在
α−ガストデューシンおよびPLC−β2は、味覚刺激に応答する分化した味覚受容体細胞に対するバイオマーカーとして知られている。BrdUは細胞増殖に対する一般的なマーカーである。免疫組織化学は、例1に記載されたように、素早い単離手順で単離し、培養した味覚細胞において、例1に記載したように改変したイスコーブ培地で、コラーゲンコートした培養ディッシュで培養し、行った。分析した味覚細胞を、7〜10日間または2ヵ月培養し、以下のプロトコールに記載のとおり、α−ガストデューシン、PLC−β2およびBrdUに対する免疫活性を試験した。抗体特異性を、非特異的結合を検出するため、抗体特異的イムノグロブリンを用いて確認した。抗体特異的イムノグロブリンでの免疫染色は、非特異的免疫染色の非存在を示す。
α−ガストデューシンおよびPLC−β2の両方に対する免疫活性を7〜10日培養および2ヵ月培養の両方で、同様の発現パターンで観察した。すなわち、これらは同様の形態の細胞において発現する。
免疫活性のためのプロトコール:
コラーゲンコートしたカバースリップに播種した細胞を、0.1Mホスフェート緩衝液(pH、PB)中、4%のパラホルムアルデヒドを用いて、室温、10分間で固定した。リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で3回の洗浄ステップ(各10分間)の後、カバースリップを0.1M PBS中、0.3%Triton X−100、2%正常ヤギ血清および1%牛血清アルブミンで1時間ブロックし、その後さらにPBSで3回洗浄した。ブロッキング溶液に希釈した一次抗体をカバースリップに添加し、+4℃で一晩インキュベートした。用いた一次抗体は、ウサギ抗−ガストデューシンポリクローナル抗体(希釈1:500〜1:1000)およびウサギ抗−PLC−β2ポリクローナル抗体(希釈1:1000、Santa Cruz Biotechnology)であった。次いでカバースリップをPBSで洗浄し、暗下で、ブロッキング緩衝液で希釈したALEXA FLUOR 488抗マウス(1:500、Molecular Probes Inc.)またはALEXA FLUOR 633抗ウサギ(1:500、Molecular Probes Inc.)と、室温1時間反応させた。最後のPBSおよび水での洗浄後、カバースリップをVECTORSHIELDでマウントした。
全ての二重免疫標識研究は、一次抗体、抗BrdUの検出を完了した後、
二次抗体、抗ガストデューシンまたは抗PLC−β2を導入することを除いて、同様の方法で行った。免疫蛍光顕微鏡のためのコントロールは、一次抗体を省略したことからなり、この条件下では免疫活性は見られない。
例5:
並行したガストデューシン、PLC−β2およびBrdUの免疫組織化学の局在
インビトロで増殖した細胞と味覚細胞特異的バイオマーカーの発現との間の関係は、並行してガストデューシン、PLC−β2およびBrdUで二重標識で分析した。実験は、例4に記載のとおり、並行して3つのバイオマーカーの各2つを用いて行った。
7〜10日および2ヵ月培養した味覚細胞には、分化した味覚細胞(ガストデューシン、PLC−β2)ならびに増殖(後者は、BrdU染色によって示される)に特異的なマーカーの発現が示された。実験は、ガストデューシンまたはPLC−β2、それぞれBrdUと組み合わせて二重標識によって行った。いくつかの細胞で、各マーカー(BrdU、ガストデューシンまたはPLC−β2)の1つだけに対するシグナルを示す一方、細胞の大部分は、並行してマーカーの2つ(ガストデューシンおよびBrdU、PLC−β2およびBrdU)に対するシグナルを示した。このことは、細胞がインビトロで増殖し、味覚細胞へ分化したことを示している。
例6:
共焦点イメージング
蛍光イメージは、UV、アルゴンおよびHeNeレーザーを用いてLeica TCS SP2 スペクトル共焦点顕微鏡 (LEICA Microsystems Inc., Mannheim, Germany)で捕捉した。カバースリップは、HC PL APO CS 20.0×(0.070 NA)対物で見た。用いた励起波長は、適切な波長で検出された発光を有する、DAPIに対し405nm、ALEXA FLUOR 488に対し488nm、ALEXA FLUOR 633に対し633nmである。ピンホールの直径は、蛍光焦点面に対するZ軸の許容し得る解像度を与え、用いられる対象物用のエアリーディスク(Airy disc)の最初の最小の直径でセットされる。レーザービームのためのパワーおよび光電子倍増管の増幅率は、シグナル/ノイズ比を最適化するように調整した。各波長の連続する捕捉は、いくつかの二重標識実験に用い、同時のスキャンを比較した場合、波長または相違に亘って流れ出る。LEICA Scanwareのソフトウェアを、平均して2ラインプラス3フレームで1024×1024ピクセルフォーマットで一方向にスキャニングする共焦点イメージを得るために用いた。デジタルズームを制御するコンピュータは、20×対物で最大2.5×の拡大をするために用いた。デジタルイメージは、LCSソフトウェア(LEICA Microsystems Inc.)を用いて、コントラストおよび明るさを整え、調整される。
例7:
ウェスタンブロットにより分析した味覚受容体細胞特異的マーカーの発現
培養した味覚細胞のガストデューシンおよびPLC−β2の発現に対し、以下に記載するプロトコールにしたがい、ウェスタンブロットを用いた。
試験した培養味覚細胞を、例1に記載のとおり、1週間および2ヵ月間、例1に記載の改変したイスコーブ培地で本発明のコラーゲンコートした培養ディッシュで培養した。
これらの細胞は、分化した味覚細胞特異的バイオマーカー、ガストデューシンおよびPLC−β2の発現を試験した。ポジティブコントロールとして、新たに単離したラット舌葉状および有郭組織ライセートから得られたサンプルを用いた。ガストデューシンおよびPLC−β2の発現は、全てのサンプルで見られた。PLC−β2に対し、抗PLC−β2抗体を用い、2つの明瞭なバンドが、先に報告されたように示された(Wei and Neer 2001, J. Biological Chemistry 276, pp. 2503-2508)。両方のバイオマーカーに対し、ポジティブコントロールは、培養細胞に比べ、強いシグナルおよび発現レベルを有していた。1週間または2ヵ月培養した細胞の間、シグナルレベルに差はなかった。例1に記載のとおり、単離および培養した味覚細胞は、その特異的なバイオマーカーを少なくとも2ヵ月間維持された。
ウェスタンブロットは、当該分野によく知られた標準的なイムノブロッティング技術、例えば、Maniatis et al., 1982, “Molecular Cloning, A laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratoryを用いて行った。
培養した初期ラット味覚細胞(7〜10日齢および1〜2ヵ月齢)を溶解し、ラット有郭乳頭および葉状乳頭からの組織サンプルをプロテアーゼ阻害剤(104mM AEBSF、80μMアプロチニン、2mMロイペプチン(Leupeptin)、4mMベスタチン(Bestatin)および1.5mMペプスタチンA(Pepstatin A))を含むRIPA(150mM NaCl、10mMとリス、pH7.2、0.1%SDS、1% Triton X-100、1%デオキシコレート(Deoxycholate)、5mM EDTA)緩衝液でホモジナイズした。タンパク質濃度は、各サンプルについて、当該分野によく知られているように、Bio-Rad Dc Protein estimation kit (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて、例えば、製造者のプロトコールに従って評価した。タンパク質サンプルは、ベータ−メルカプトエタノールを含むSDSローディング緩衝液を混ぜ、5分間煮沸し、次いで、氷上に5分間置いた。細胞のホモジネートは、SDS−ポリアクリルアミド(5〜15%)勾配ゲル(Bio-Rad Labs.)電気泳動で分離し、1%脱脂粉乳で4℃一晩インキュベートしたPVDF膜(Bio-Rad Labs)に転写した。ウサギ抗ガストデューシンポリクローナル抗体(抗体ガストデューシンI−20、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA、製造番号sc-395)(希釈1:1000)およびウサギ抗PLC−β2ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)(希釈1:1000)を、味覚細胞を同定するために用いた。室温での一次抗体との1.5時間インキュベーションの後、膜を0.05% TWEEN20を含む0.1Mホスフェート緩衝溶液(“PBS/T”)で各15分間インキュベートにより3回洗浄し、濯ぎ、室温で1時間、HRP−共役二次抗ウサギ抗体(希釈1:5000、NA 934, Amersham)と反応させた。膜を大量のPBS/Tで、各15分間のインキュベートにより3回洗浄し、濯いだ。シグナルは、当該分野でよく知られた増大された化学蛍光(ECL)イムノブロット検出システム(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)で、製造者の説明にしたがい、検出した。X線フィルムを後に分析用スキャナーでスキャンした。
例8:
Caイメージングによる種々の味覚刺激に対する味覚細胞の応答の決定
用いた味覚細胞は、例1に記載のように単離し、ラットテールコラーゲンタイプ1でコートしたカバースリップで1週間または2ヵ月間培養した。
Caイメージングは以下のように行った。カバースリップを15〜30分間、1mM Fura−2AM(Molecular Probes Inc., Eugene, OR)および20mg/ml PLURONIC F127(Molecular Probes Inc.)を添加した改変されたMHNKリンガー液(80mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、1mMピルビン酸Naおよび20mM Hepes−Na、pH7.2、5M NaClで300〜310にオスモル濃度を調整した)中、カルシウム感受性色素とインキュベートした。カルシウム感受性色素fura−2 AMは、蛍光で検出することができるfura−2に切断される。
インキュベーションの後、カバースリップを記録チャンバーに置き、続けて表面還流(superfusion)として適用される改変したMHNKリンガー溶液に浸した。
刺激(安息香酸デナトニウム2mMおよび0.5mM、アセサルフェームK250ppm、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)3mM、シクロヘキシミド25μM、グリシン125mM、および高K緩衝液(5mM NaCl、80mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、1mMピルビン酸Naおよび20mM Hepes−Naを含む改変されたMHNKリンガー液、pH7.2、5M NaClで300〜310にオスモル濃度を調整))を、10秒以内にチャンバーのバス溶液の完全な変化を可能にする刺激溶液への表面還流の切り替えによるカバースリップへ適用される。
カルシウムイメージング記録は、Restrepo D., M. Zviman and N.E. Rawson, “The measurement of intracellular calcium in chemosensory cells”, in: Methods in Chemosensory Research, Ed. by A. Spielman and J. Brand. CRC Press, 1995に記載されている標準的なイメージング技術を用いて行った。照射は、顕微鏡と結合したLSR SPECTRAMASTER単色光分光器によって提供される。200×拡大の細胞においてfura−2から放射される光は、510nmで透過され、冷却CCDカメラ(Olympix, Perkin Elmer Life Sciences, Bethesda MD)で記録された。励起波長は340〜380nmであり、放射波長は広帯域フィルタを用いて、510nmである。イメージは、イルミネーター、カメラおよび捕捉を制御し、イメージ比率化および擬似色イメージのディスプレイを行うMerlin Imaging Workstation(Perkin Elmer Life Sciences, Bethesda MD)を用いてデジタル化した。記録するセットアップの導入後、細胞は2日以上の間、生存したままであり、色素漂白の視覚的影響なしに2時間連続的に一度にイメージ化されることができる。
刺激は、改変されたMHNKリンガー溶液に希釈し、重力フロー表面還流装置で、刺激に依存して約10〜60秒を介して適用した。細胞は、少なくとも1つの選択された細胞に対し、Fura−2AMのポジティブシグナルによって示されるように、全ての試験された刺激によって刺激されることが可能である。典型的ないくつかの細胞を試験した。
例9:
アッセイのための改善された緩衝液における味覚細胞の維持
用いた培養味覚細胞は、例8に記載のとおりである。カバースリップの培養した味覚細胞を室温(22〜25℃)、インキュベーターの外で、改善したアッセイ緩衝液にて一晩インキュベートした。改善したアッセイ緩衝液は、5M NaClで300〜310に調整したオスモル濃度を有する改変したMHNKリンガー溶液(80mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、1mMピルビン酸Na、20mM Hepes−Na、pH7.2)である。
このアッセイ緩衝液および上記インキュベーション条件において、細胞は、24時間まで維持され、プジティブFura-2 AMシグナルによって決定されたように(例8に記載のとおり行う)まだ刺激に対して応答する(適用した刺激については例10と同様)。細胞は、試験前24時間と比べて、同じ結果を示した。より高い320のオスモル濃度に暴露した場合、細胞は死に、fura−2AMで染色しない。アッセイ緩衝液の初期味覚細胞培養のこのような維持は、アッセイの目的に有用である。
例10
培養味覚細胞のトランスフェクション
コラーゲンコートしたカバースリップで培養された例1に記載のように単離された味覚細胞を、5〜8μgのpGFP2-MCS-Rluc(h)発現ベクター(BioSignal Packard, Montreal, Canada, 製造番号6310051)で、およびRoche Diagnostics “FuGene 6 Transfection Reagent” Instruction Manual, Version 5, September 2000にしたがって、FuGene(登録商標)6 Transfection Reagent(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)で、単離後5〜7日でトランスフェクトした。15〜24マイクロリットルのFugene 6(登録商標)Transfection Reagentを、50マイクロリットルの無血清培地に添加した。用いた培地は、無血清であること以外、例1に記載のイスコーブ培地を補った。混合物を穏やかに手で混ぜた。5〜8マイクログラムのDNA(pGFP2-MCS-Rluc(h)発現ベクター)を加え、混合物を穏やかに手で混ぜた。混合物を室温で15〜30分間インキュベートし、次いで細胞に滴下して加えた。プレートを穏やかに旋回し、2日間、37℃で細胞培養インキュベーターでインキュベートした。
代替的に、細胞は、当該分野で知られるような、例えば、Murray, EJ, editor (1990), Gene Transfer and Expression Protocols: Methods in Molecular Biology, Vol. 7, Humana Press, Clifton, New Jersey; Perkus ME et al. (1993, J. Tiss. Cult. Meth. 15: 72); Felgner, J. et al. (1993, J. Tiss. Cult. Meth. 15: 63)などに記載されているような真核細胞の標準的なトランスフェクション方法を用いてトランスフェクトしてもよい。
24〜48時間後、細胞を、PBS中、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間で固定し、緑色蛍光タンパク質(GFP)の蛍光シグナルを共焦点顕微鏡で検出した。GFPの発現は、容易に視覚化される。
このことは、本発明の味覚細胞が、典型的に用いられる細胞系よりもインビボにより似たシステムにおいて、実行可能な発現システムを提供することを示している。用いた試験DNA(pGFP2-MCS-Rluc(h)発現ベクター)と同様に、味覚受容体のDNAが過剰発現し得る。
例11:
mT2R5およびhT2R16を用いた培養味覚細胞のトランスフェクションおよびカルシウムイメージング
例11のトランスフェクションは、以下の改変に従い、例10に記載されているように行った:
― 用いたカバースリップはラットテールコラーゲン1コートカバースリップである;
― 単離後、3〜7日後にトランスフェクションを行った;および
― トランスフェクトされるDNAは、GFPを有する例10の発現ベクターまたは、マウスT2R5DNA(sst:mT2R5:HSV/pcDNA3.1-zeo, 6053 bp)またはヒトT2R16DNAをインサートとして(両方のケースで、構築物は、Bufe et al. Nat Genet. 2002 Nov;32(3):397-401によるヒトTAS2R遺伝子のクローニングについて記載されたように形成され得る)、DNAインサートを運ぶ発現ベクターである。
発現は、タグタンパク質(単純ヘルペスウイルスのグリコタンパク質D、HSV−D)に対する抗体を用いて、培養味覚細胞において検出される。トランスフェクトされた細胞およびトランスフェクトしていない細胞を、ガストデューシンに対する抗体(ウサギ抗ガストデューシンポリクローナル抗体(Santa Cruz、1:1000))とともに4℃で一晩インキュベートし、PBSで洗浄し(3回、各15分)、次いで、ヤギ抗ウサギALEXA-633(Molecular Probe、1:500)とともに室温で30分間インキュベートし、PBSで洗浄し(3回、各15分)、次いで、マウス抗HSVタグモノクローナル抗体(Novagen # 69171-3、1:1000)とともに4℃で一晩インキュベートし、PBSで洗浄し(3回、各15分)、次いで、ヤギ抗マウスALEXA 488(Molecular Probe、1:500)とともに室温で30分間インキュベートした。次いで、カバースリップをPBSで3回各10分間洗浄し、水で3回各10分間洗浄し、封入剤(DAPIを含むVectashield(登録商標)または Vectashield(登録商標)、Vector Labs, USA)でマウントし、共焦点顕微鏡または落射蛍光顕微鏡(epifluorescence-equipped microscope)でみた。非特異的免疫活性のためのコントロールは、一次抗体を省くことおよびウサギおよびマウスIgGでの一次抗体の代用を含み、この場合、免疫染色は検出されない。
GFPおよびHSV−Dタグプローブは、過剰発現を示す強い蛍光シグナルを示した。HSV−Dタグ免疫蛍光のシグナルは、T2R5またはT2R16タンパク質の発現と夫々関連する。これらの結果は、本発明の培養味覚細胞が実行可能な発現システムを提供することを示している。
代替的に、トランスフェクトした細胞は、例8に記載のようにカルシウムイメージングアッセイに用いられる。記載のようにT2R5でトランスフェクトされた細胞は、シクロへキシミドの有効濃度1μMでシクロへキシミドの応答で細胞内カルシウムの増大を示し、これはUeda et al., J. Neurosci., 2003. 23(19):7376-7380によってこの受容体でトランスフェクトしたHEK293細胞で観察される濃度と比較可能である。
記載のようにT2R16でトランスフェクトされた細胞は、有効濃度1mMで、フェニル−ベータ−D−グルコピラノシドの応答で細胞内カルシウムの増大を示し、これはBufe et al. Nat Genet. 2002 Nov;32(3):397-401によってこの受容体でトランスフェクトしたHEK293細胞で観察される濃度と比較可能である。
再度、これらの結果は、本発明の培養味覚細胞が実行可能な発現システムを提供することを示している。
本発明は、上記の特定の態様に限定されず、変形、改変および以下の態様で規定される等価の態様を含むことが認識されるべきである。さらに、本発明の種々の態様が所望の特性を提供するために組み合わせられ得るので、開示されたすべての態様は別の手段では必須であるとは限らない。

Claims (10)

  1. 哺乳動物の味覚細胞の培養方法であって、
    a.味覚受容体細胞を含む哺乳動物の味覚細胞を、15〜20%MCDB153培地、5〜20%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質を添加したイスコーブ培地を含む適切な細胞培養培地中、コラーゲンでコートされた細胞培養容器にて培養すること、および
    b.培地の最初の交換から、少なくとも5日の間隔で培地を交換すること、
    を含み、ここで、前記味覚受容体細胞は、少なくとも1つの味覚刺激に対する反応性を維持している、前記方法。
  2. 哺乳動物の味覚受容体細胞の培養物を得る方法であって、
    a.哺乳動物の単離した舌上皮組織をタンパク質分解酵素と接触させること、
    b.哺乳動物の単離した舌上皮組織を、15〜20%MCDB153培地、5〜20%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質を添加したイスコーブ培地を含む細胞培養培地中、コラーゲンでコートされた細胞培養容器にて培養すること、および
    c.24〜48時間後に培地を交換し、次いで5〜10日毎に交換すること、
    を含む、前記方法。
  3. 哺乳動物の培養味覚受容体細胞をトランスフェクトする方法であって:
    哺乳動物の単離した舌上皮組織をタンパク質分解酵素と接触させること;
    哺乳動物の単離した舌上皮組織を、15〜20%MCDB153培地、5〜20%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質を添加したイスコーブ培地を含む細胞培養培地中、コラーゲンでコートされた表面にて培養すること;
    24〜48時間後に培地を交換し、次いで5〜10日毎に交換すること;および
    培養した哺乳動物の味覚受容体細胞を核酸と接触させること、
    を含む、前記方法。
  4. 核酸が、ベクターDNAを含む、請求項3に記載の方法。
  5. タンパク質分解酵素が、プロナーゼEおよびエラスターゼである、請求項2に記載の方法。
  6. 接触の長さが、30分またはそれ以下である、請求項2に記載の方法。
  7. タンパク質分解酵素が、単離溶液に添加される、請求項2に記載の方法。
  8. 単離溶液が、NaHCO、NaHPO、NaCl、KClおよびEDTAを含む、請求項7に記載の方法。
  9. 単離した舌上皮組織が、有郭乳頭および葉状乳頭の領域から単離されたものである、請求項2に記載の方法。
  10. 15〜20%MCDB153培地、5〜20%FBS、10ng/mlインシュリンおよび抗生物質を添加したイスコーブ培地、およびコラーゲンでコートされた細胞培養容器を含む、哺乳動物の味覚細胞を培養するためのキット。
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