JP2002165590A - 培養味細胞 - Google Patents
培養味細胞Info
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Abstract
くとも3日間生存する培養味細胞、及びこれを含有する
味蕾細胞培養系を提供する。 【効果】 従来1日以上培養することが不可能であった
味蕾細胞を1週間以上生細胞状態に維持することが可能
になり、また味蕾細胞中にわずか10%程度しか存在しな
いとされる味細胞を分子レベルで特定し、単離取得する
ことが可能になった。
Description
これを含有する味蕾細胞培養系に関する。
物質の受容に始まるが、そのメカニズムの詳細はまだ解
明されていない。味蕾構成細胞は、機能や形態等、あら
ゆる面から見てヘテロな細胞の集団であり、個々の細胞
ごとに性質を解析するためには、それぞれを単離する必
要がある。そのため、これまでに多くのグループが味蕾
を単離して味蕾細胞の性質の解析を試みている。しか
し、味蕾が塊の状態での実験では細胞が重なってしま
い、データの解析が困難であった。また、味蕾細胞を単
離した後は、味蕾が塊の状態でも単一細胞に分離しても
数時間後には1つ1つの細胞の形が丸くなり、培養ディ
ッシュへの接着が非常に弱く、すぐに死んでしまうた
め、味蕾細胞においては、遺伝子を導入する実験等、時
間を要する研究はこれまでに報告されていない。
に頼ってきたが、専門の官能検査士(パネラー)となる
ためには特別の訓練を必要とし、また、高度技術を習得
したパネラーでさえも評価はバラつき、客観的判断がで
きないのが現状である。味物質を受容する味細胞の取得
は、客観的な味覚判定を可能にする味覚センサーの開発
の途を拓くものである。
開発は、さまざまな脂質二重膜を作成し、これらの膜の
流動性・変化を利用することにより行われてきた。しか
しこの方法は、あらかじめ単一味に対する人工膜の変化
をコンピューターに入力し、そのデータを基に解析する
原理で、あくまでも便宜的な味の解析手段であり、生体
応答としての複合的な味の判断は困難である。ヒトが味
を感じる味細胞を使用できれば、より自然に近い受容シ
ステムを確立できる。
容機構解明の手段等として、種々の用途が期待される味
細胞の単離に向けて、まず味細胞を含有する味蕾細胞の
性質を解析しやすい条件の確立、すなわち単離した味蕾
がある程度バラバラに分かれて接着し、数日間生存する
初代培養方法の確立が望まれている。
られる培地を用いて味蕾細胞を培養しても1日程度です
ぐに死んでしまうため、本発明者等はまず、種々の組成
の培地を用いて培養を試みた。その中で、味蕾以外の舌
上皮が層状に重なり、皮膚と似た構造であることから、
皮膚の培養に用いられる培地を使用したところ、1週間
以上生細胞状態を維持することができ、初代培養に成功
した。また、培養した味蕾細胞中には、味覚シグナリン
グに関与する分子群を発現している味細胞が含まれてい
ることも確認された。更に、この培養細胞に対する外来
遺伝子の導入にも成功し、本発明を完成させるに到っ
た。
(9)を提供する。 (1) 有郭乳頭上皮から単離され、培地中において少
なくとも3日間生存する培養味細胞。 (2) ガストデューシン(Gustducin)、ホスホリパ
ーゼCベータ2(PLCβ2)、及びイノシトール三リン酸レ
セプタータイプ3(IP3R3)を発現することを特徴とす
る、上記(1)に記載の培養味細胞。 (3) 上記(1)又は(2)に記載の培養味細胞を含
有する味蕾細胞培養系。 (4) 構成細胞の全てが味蕾細胞由来であり、味細胞
を5〜15%の範囲で含有する、上記(3)に記載の味
蕾細胞培養系。 (5) 外来遺伝子が導入され、機能的に発現している
ことを特徴とする、上記(3)又は(4)に記載の味蕾
細胞培養系。
質が細胞質において発現している、上記(5)に記載の
味蕾細胞培養系。 (7) 外来遺伝子がコードするタンパク質が細胞膜上
において発現している、上記(5)に記載の味蕾細胞培
養系。 (8) 外来遺伝子がシグナル伝達系に関与するタンパ
ク質をコードするものである、上記(5)に記載の味蕾
細胞培養系。 (9) 非ヒト動物から味蕾を単離し、mKGM培地中で培
養することを特徴とする、味蕾細胞培養系の作製方法。
明する。本発明の味蕾細胞培養系の作製のためには、ま
ず、動物の味蕾を単離する。動物としては、例えばラッ
ト、マウス、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、
ネコ、ヤギ、ウシ、ブタ、サル、ニワトリ、ヒト等が挙
げられ、特に限定するものではない。具体的には、動物
から舌を摘出し、舌の上皮よりコラゲナーゼとエラスタ
ーゼを使用して味蕾細胞を分離・取得する。味蕾細胞の
単離は、当分野において通常行われており、当業者であ
れば容易に行うことができる。
(Becton, Dickinson社製)をコートしたシャーレに静
置し、培地中で培養する。本発明において、培地は下記
の組成のmKGM(+)培地を用いる。 mKGM(+) : 17.6 g/l MCDB153 (Sigma, MO), 1.2 g/l Na
HCO3, 13.3 mg/l CaCl2(final 0.15 mM), 5 mg/l イン
スリン(Sigma, MO), 0.5 mg/l ハイドロコルチゾン(Sig
ma, MO), 10 mg/l トランスフェリン(Sigma, MO), 14.1
mg/l o-ホスホリルエタノールアミン(Sigma, MO), 10
μg/l 上皮増殖因子(Sigma, MO), 100 U/lペニシリン(S
igma, MO), 100 μg/l ストレプトマイシン(Sigma, M
O), 2 ml/lマトリジェル(Becton Dickinson, MA) and 5
0 mg/l ウシ下垂体抽出物(極東化学, Tokyo, Japan) 培養条件は、好ましくは37℃で、5%CO2存在下にお
ける静置培養である。
いて形態を観察するか、または色素による染色を行って
観察することができる。例えば、トリパンブルーは膜に
傷害のある細胞に速やかに侵入して青く染色するが、生
細胞では排出機構が存在するため、細胞の生死を判定す
ることができる。また、ニュートラルレッドは生きた細
胞を染色することができる。
状を解析する。味蕾細胞においては、サイトケラチン(C
K)8が発現することが知られているため、in situハイブ
リダイゼーションによってサイトケラチンのmRNAを検出
し、味蕾由来の細胞であるか否かを判定することができ
る。
ためには、生体中の味蕾細胞内での発現率や発現パター
ンが知られている種々のタンパク質の発現をマーカーと
することができる。味蕾構成細胞のマーカーとしては、
上記CK8の他、CK18,TR2、PLCβ2、IP3R3、ガストデュー
シン等が挙げられ、味細胞は、ガストデューシン、PLC
β2、及びIP3R3を全て発現することが知られている。
の用途に利用することができる。生体においては、味蕾
構成細胞中に味細胞が約10〜20%含有されることが
知られており、味覚センサーとしての利用、味覚シグナ
リングの解析等に使用する場合には、味蕾細胞培養系は
味細胞を5〜20%の範囲で含有することが好ましい。
本発明においては、1週間以上の培養細胞の生存を確認
したが、味覚センサーとしての利用、外来遺伝子の導入
及びその発現、外来遺伝子がコードするタンパク質の機
能を利用した実験系の使用等において、少なくとも3日
間生存すれば十分である。
培養系を確立したものであるが、更に、培養条件を種々
検討することにより、継代培養することも可能である。
また、本発明の味蕾細胞培養系のクローニングにより、
味細胞等の個々の味蕾構成細胞を単離し、更なる性状解
析を進めることも可能である。
能解析等が可能であるが、更に、外来遺伝子を導入する
こともできる。本発明の味蕾細胞培養系に導入するのに
好適な外来遺伝子は、特に限定するものではないが、例
えばαアドレナリンレセプター、味覚レセプター等のレ
セプター、GFP等の蛍光タンパク質、PLCβ2等のシグナ
ル伝達関連分子等が挙げられる。本発明の味蕾細胞培養
系を用いる利点としては、例えば以下のような点が挙げ
られる。
いる味覚レセプターを発現させ、リガンドアッセイをす
ることができる。 (2)味蕾特異的に発現しているシグナル伝達関連分子
を発現させ、味蕾細胞での機能を確認することができ
る。 (3)増殖・分化因子のレセプターを発現させ、そのリ
ガンドを加えることにより、味蕾の増殖・分化機構を解
明することが可能である。
使用される技術のいずれを用いても良く、特に限定する
ものではないが、例えばアデノウイルス、レトロウイル
ス、アデノ随伴ウイルス等のウイルスベクターを用いる
方法が好適に使用できる。リポフェクション、エレクト
ロポレーション、マイクロインジェクション等の一般に
培養細胞への遺伝子導入に使われている方法も可能であ
るが、これらの方法では非常に遺伝子導入効率が低い
(0.1%以下)。これに対し、ウイルスを用いた場合には
90%以上の効率で導入が可能であるので、非常に有効で
ある。
によって確認することが出来る。また、蛍光タンパク質
の場合には、蛍光顕微鏡によって観察するか、蛍光を検
出することで確認することができる。さらに、細胞膜上
に発現するタンパク質の場合、リガンド結合アッセイに
よって確認することが出来、シグナル伝達に関与するタ
ンパク質の場合は、その活性化剤や阻害剤を用いて検出
することが可能である。
アドレナリンレセプター等のレセプターの場合には、ノ
ルアドレナリン等のリガンドとの結合によって生じる細
胞内カルシウム濃度の上昇等を、カルシウム指示薬を用
いたカルシウム測光等によって検出することによって確
認することができる。また、パッチクランプによる電気
生理的手法や、蛍光ラベルしたイノシトール燐酸の細胞
局在変化等によっても確認できる。
説明する。 [実施例1]5〜6週齢のウィスター系ラット(雄)か
ら舌を摘出し、Ca2+-フリーリンガー液(150mM NaCl、
4.7mM KCl、5mM HEPES、7.8mM D-グルコース、2mM EDT
A)に浸した。その後、2mg/ml コラゲナーゼ(TypeI、S
igma)、0.25mg/ml エラスターゼ(Sigma)を含有するm
KGM(-)培地を有郭乳頭の直下に約250μl注入し、室温で
25〜30分間、Ca2+-フリーリンガー液中でインキュベー
トした。mKGM(-)培地の組成は、下記の通りである。 mKGM(-):17.6g/L MCDB153(Sigma)、1.2g/L NaHCO3、
0.5mg/L ハイドロコルチゾン(Sigma)、10mg/L トラン
スフェリン(Sigma)、14.1mg/L o-ホスホリルエタノー
ルアミン(Sigma)、100U/L ペニシリン(Sigma)、100
μg/L ストレプトマイシン(Sigma)、2ml/L マトリジ
ェル(Becton Dickinson) 次いで、有郭乳頭の周りの上皮をハサミで切り取り、ピ
ンセットを用いて有郭乳頭を含む上皮層を筋層から剥が
した。剥がした上皮層は2mM EDTAを含むmKGM(-)に浸し
てコラゲナーゼを失活させると同時に、ピンセットを用
いてエブナー腺を取り除いた。その後、2mM EDTA及び0.
25mg/ml エラスターゼ(Sigma)を含有するmKGM(-)中に
上皮層を移し、室温で3分間インキュベートした。更
に、0.05mg/ml DNaseI(Sigma)を含有するmKGM(-)中に
移して室温で5分間インキュベートした後、この有郭乳
頭を含む上皮層をmKGM(+)中に移し、直径が約100μmの
ガラスキャピラリーを用いて味蕾を吸い取った後、mKGM
(+)の入ったマトリジェル(Becton Dickinson社製)コ
ーティングディッシュに蒔いた。培養は37℃、5%CO
2で行った。
の経時的変化を観察した。味蕾単離直後では、味蕾本来
の形態を維持し味孔部分が確認できた(図1A)が、培養
開始1時間後には全ての細胞が丸くなり、apicalとbasal
の区別がなくなり、ディッシュ底面に接着し始めた(図1
B)。8時間後では数は少ないがわずかに細長い形の細胞
が現れはじめた (図1C)。経時的 (12, 24, 36 時間) に
細長い形の細胞の出現割合は増え、長さも伸びてきた
(図1D-F)。約48時間後から扁平な上皮様の形態が観察さ
れ (図1G)、72時間では更にその割合が多くなった (図1
H)。
時間培養後の味蕾細胞のviabilityを検討した。細胞の
ほとんどは死細胞を選択的に染色するトリパンブルーで
染まらず(図2A)、生細胞を染色するニュートラルレッド
により染色された(図2B)。従って、大部分(90%以上)の
細胞が生細胞であることが示された。その後も引き続い
て観察したところ、培養開始から1週間経過した時点に
おいて、接着している細胞の90〜95%の細胞が生存
していた。
時間培養後の味蕾細胞を用い、味蕾細胞のすべてに発現
していることが知られているサイトケラチン(CK)8のin
situハイブリダイゼーション (mRNAを検出)を行った。
まず、GenBankの情報からCK8のプローブ(5'-ATGCAGAAC
ATGAGCATC-3'(配列番号1)及び5'-ACAGCCACTGAGGCTTT
A-3'(配列番号2)(遺伝子登録番号No. M63482の塩基
番号1280-1297及び塩基番号1703-1720に相当))を作製
した。
PBSで室温20分処理し、固定した。PBSで3回(各5分)洗
い、70%エタノールで-20℃30分処理し脱水した後、5mM
MgCl 2/PBS、100mM グリシン/200mM トリス・塩酸 (pH7.
5)でそれぞれ室温10分インキュベートした。50% ホルム
アルデヒド/ 2×SSCで60℃15分処理した後、Asano-Miyo
shi, M.ら、(1998) J. Biochem. (Tokyo) 124, 927-93
3; Yasuoka, A.ら、 (1999) J. Biochem. (Tokyo) 126,
866-873; Kusakabe, Y.ら、 (2000) Chem. Senses 25,
525-531の方法でin situハイブリダイゼーションを行
った。その結果、CK8は全ての培養細胞で発現しており
(図3A)、これらの培養細胞はすべて味蕾由来の細胞
であることが確認された。
時間培養後の味蕾細胞を用い、実施例3と同様にしてPL
Cβ2(5'-GCAATGGGTCAACAGCGCCT-3'(配列番号3)及び
5'-ACCCAATTTCCTCTCTCTTG-3'(配列番号4)(GenBank遺
伝子登録番号No. AJ011035の塩基番号2694-2713及び塩
基番号3905-3924に相当))、ガストデューシン(5'-AT
GCCGTGACTGATATAATA-3'(配列番号5)及び5'-TGCTTGTG
GCAGCCTAATTG-3' '(配列番号6)(GenBank遺伝子登録
番号No. X65747の塩基番号1123-1142及び塩基番号1604-
1623に相当))、及びT1R1, T1R2(Dr. C. S. Zuker.(U
niversity of California, SanDiego La Jolla, CA)か
ら供与)の発現を検討した。その結果、PLCβ2の発現
(約14%の細胞)、T1R1の発現(0.1%)、T1R2の発現
(約8%)、ガストデューシンの発現 (約4%) を認めた
(図3B〜E)。
ング経路に関係する5分子, PLCβ2, IP3R3, ガストデュ
ーシン, Gi2, T1R2をプローブに用い、ラット有郭乳頭
における発現の相関性をin situハイブリダイゼーショ
ンにより検定した。厚さ4μmの有郭乳頭味蕾の連続切片
を用いて調べた。この方法では味蕾中の細胞の直径は4
μmより大きいため、一個の細胞が連続した2ないし3切
片に分割されるため、あるプローブ(I)でハイブリダイ
ズした切片を挟んで、隣り合う切片を別のプローブ(II)
でハイブリダイズすることによって、プローブIに陽性
な細胞が、遺伝子IIを発現しているかどうかを調べるこ
とができる。その結果、Gi2, PLCβ2, IP3R3が同一細胞
で発現し、ガストデューシンおよびT1R2発現細胞につい
ては相関が見られないが、いずれもGi2, PLCβ2, IP 3R
3を発現している細胞の中に含まれることが明らかにな
った。
味蕾細胞を用い、実施例4と同様にしてPLCβ2、IP3R3
及びガストデューシンの発現の相関を調べた。その結
果、PLCβ2とIP3R3は同じ細胞に発現し(図4A〜
C)、PLCβ2の発現細胞の約1/2はガストデューシンを
発現していることが明らかになった(図4D〜F)。こ
の結果は、生体中の味蕾細胞での発現率や発現パターン
の相関性と同様の傾向を示した。以上の結果、ガストデ
ューシン, PLCβ2, IP3R3を全て発現している細胞は味
細胞であると判断できた (図4Fの黄色の細胞)。
蕾細胞に外来遺伝子を導入した。外来遺伝子として、GF
P遺伝子を発現するアデノウイルス(Dr. B. Vogelstei
n, The Jhons Hopkins Onkology Center (Baltimore, M
D) より供与(Heら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95,2
509-2514 (1998))を感染させて導入した。アデノウィ
ルスの感染は、24時間培養した味蕾細胞にアデノウィル
ス液(109pfu/ml)入れ、1時間37℃でインキュベートす
る。そのあと、通常の培地に置き換え、36時間後にGFP
の検出を行った。その結果、約90%の細胞に導入され、
細胞質において発現していることが確認された (図
5)。以上から、細胞外から遺伝子を導入でき、導入さ
れた外来遺伝子が味蕾細胞内で発現することが明らかに
なった。
アドレナリンレセプター(α1-AR)遺伝子(安岡(Yasu
okaら、Eur. J. Biochem. 235, 501-507(1996)))を導
入し、タンパク質が細胞膜上に存在することを確認し
た。myc(α1-ARの検出用)抗体染色は以下のようにし
て行った。まず、細胞を4%PFA/PBSで室温20分処理
し、固定した。PBSで3回(各5分)洗い、3%BSA, 1%ヤ
ギ血清/PBSで室温1時間インキュベートしたあとに、抗m
yc IgG(1:1000, Cat.No. R950-25, Invitrogen, CA), 1
%BSA, 1%ヤギ血清/PBSに置き換え、4℃ 一晩インキュベ
ートした。PBSで3回(各5分)洗い、抗マウスIgG Alexa
546 (1:1000, Cat. No. A11030, Molecular Probes, O
R), 1%BSA, 1%ヤギ血清/PBSで室温1時間インキュベート
した。PBSで3回(各5分)洗いGel/Mount (Biomeda, CA)
で封入して共焦点レーザー顕微鏡(LSM510, Carl Zeiss,
Thornwood, NY)で観察した(図6)。
か否かを調べた。すなわち、培養細胞にノルアドレナリ
ンを作用させ、細胞内のカルシウム濃度変化を測定し
た。カルシウム測光は、以下のようにして行った。ガラ
スボトムディッシュで培養した細胞を5μM Fura-PE3-AM
(Texas Fluorescence Lab, TX)/HEPES-tyrode solutio
nで37℃、30分インキュベートした。下記の組成のHEPES
-tyrode solutionに置き換え、さらに37℃30分インキュ
ベートした。HEPES-tyrode solution : 140 mM NaCl,
2.7 mM KCl, 0.15 mM CaCl2, 12 mM NaHCO3, 5.6 mM D-
グルコース, 0.37 mM NaH2PO4, 0.49 mM MgCl2 and 25
mM HEPES (pH 7.4).
l/minの流速でHEPES-tyrode solutionを還流しながら、
途中で100nM ノルアドレナリン (Sigma, MO)/ HEPES-ty
rodesolutionを5〜10秒間細胞にさらした。実際の測
定は、コンピューターでコントロールされたフィルター
チャンジャーを通して340および380nmの波長でFura-PE3
を励起した。その結果、引き起こされた510nmの波長を1
〜5秒のインターバルで倒立顕微鏡(Olympus IX-70)とM
icro Max CCDカメラ(Prinston Instruments,NJ)を通し
て、コンピューターに取りこみ、MetaFlour (Universal
Imaging, PA)で解析した。解析したデータは340nmと38
0nmで励起された510nmの光強度の割合で示した。
細胞内カルシウム濃度の上昇が認められた (図7B)。
これにより、外から導入し、膜上で発現したアドレナリ
ンレセプターによりノルアドレナリンが受容され、その
結果、Gタンパク質、PLCの活性化で生成したIP3が細胞
内小胞体上のIP3レセプターに作用し、そこからカルシ
ウムが流出して細胞内カルシウムの上昇が生じたことが
示された。α1-ARを導入しない細胞では、このような刺
激応答が観察されなかった(図7A)。以上から、細胞
外から導入した遺伝子の細胞膜上における発現、及び導
入した遺伝子がコードするタンパク質の機能をインタク
トな細胞のままで解析し得ることが明らかになった。
ことが不可能であった味蕾細胞を1週間以上生細胞状態
に維持することが可能になった。しかも、本発明者らの
培養した味蕾細胞には味覚シグナリングに関与する分子
群を発現している細胞(味細胞)も含まれていた。本発
明により、従来、味細胞の同定もできず、しかも味蕾細
胞中にわずか10%程度しか存在しないとされる味細胞を
分子レベルで特定し、単離取得することが可能になっ
た。
野がある。 i) 味覚センサー;味細胞は、味刺激を受容し、応答す
ると考えられることから、本発明により得られた培養味
細胞は、味覚センサーとして使用できる可能性がある。 ii) 味細胞株樹立に向けた基盤研究の材料;味細胞がど
のような細胞から形成されるのか、現在のところ不明で
ある。しかしながら、本発明で得られた味蕾細胞培養系
を様々な条件下で培養して単一クローン化し、その細胞
が最終的に味細胞になるのかを追跡する道筋を確立でき
る。すなわち細胞系譜を調べ、最終ゴールとなる味細胞
が本発明により提示される。
得;味細胞に遺伝子を外部より入れることを可能にした
本発明は、味細胞の役割解明─すなわち本細胞の生化学
的性質、味覚シグナリングの詳細を調べて細胞生物学的
解明を容易にするものである。また、味細胞を継代培養
するために必須な因子の解析が可能になることから、将
来の味細胞株樹立に向けた応用研究を展開しうる。
を示す。 A:培養開始直後、B:1時間後、C:8時間後、D:
12時間後、E:24時間後、F:36時間後、G:4
8時間後、H:72時間後
す。 A:トリパンブルー染色、B:ニュートラルレッド染色
シンの発現、D:T1R1の発現、E:T1R2の発現
R3の発現、D:ガストデューシンの発現、E:IP3R3の
発現、F:ガストデューシンとIP3R3の発現
るα1-ARの細胞膜上での発現を示す。 A:抗myc抗体染色(α1-ARの検出)、B:GFP、C:抗
体myc抗体染色とGFPの発現
るノルアドレナリン刺激に対する応答(細胞内カルシウ
ム濃度の上昇)を示す。 A:コントロール、B:α1-AR遺伝子導入味蕾細胞培養
系
Claims (9)
- 【請求項1】 有郭乳頭上皮から単離され、培地中にお
いて少なくとも3日間生存する培養味細胞。 - 【請求項2】 ガストデューシン(Gustducin)、ホス
ホリパーゼCベータ2(PLCβ2)、及びイノシトール三リ
ン酸レセプタータイプ3(IP3R3)を発現することを特
徴とする、請求項1に記載の培養味細胞。 - 【請求項3】 請求項1又は2に記載の培養味細胞を含
有する味蕾細胞培養系。 - 【請求項4】 構成細胞の全てが味蕾細胞由来であり、
味細胞を5〜15%の範囲で含有する、請求項3に記載
の味蕾細胞培養系。 - 【請求項5】 外来遺伝子が導入され、機能的に発現し
ていることを特徴とする、請求項3または4に記載の味
蕾細胞培養系。 - 【請求項6】 外来遺伝子がコードするタンパク質が細
胞質において発現している、請求項5に記載の味蕾細胞
培養系。 - 【請求項7】 外来遺伝子がコードするタンパク質が細
胞膜上において発現している、請求項5に記載の味蕾細
胞培養系。 - 【請求項8】 外来遺伝子がシグナル伝達系に関与する
タンパク質をコードするものである、請求項5に記載の
味蕾細胞培養系。 - 【請求項9】 非ヒト動物から味蕾を単離し、mKGM培地
中で培養することを特徴とする、味蕾細胞培養系の作製
方法。
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Cited By (1)
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WO2006044594A2 (en) | 2004-10-15 | 2006-04-27 | Monell Chemical Senses Center | Methods for culturing mammalian taste cells |
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2000
- 2000-11-29 JP JP2000363018A patent/JP2002165590A/ja active Pending
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