JP5120911B2 - デオキシリボ核酸を安定に含むゲル組成物の製造方法及び該方法により得られたゲル組成物 - Google Patents
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本発明の第二の目的は、従来技術で問題となっていた環境浄化材料の環境中における安定性の問題を解決することができる、DNAを安定に含むゲル組成物の製造方法及び該方法により得られたゲル組成物を提供することにある。
本発明の第三の目的は、環境浄化材料を製造する過程において、放射線照射によって引き起こされるDNAの劣化を出来るだけ低減することができるDNAを安定に含むゲル組成物の製造方法及び該方法により得られたゲル組成物を提供することにある。
放射線照射によって架橋する性質を有する架橋型高分子として水溶性生体高分子であるゼラチンを用い、これをDNAとともに超純水に溶かしたものに対してガンマ線照射を行う例について説明する。
まずゼラチンを超純水に溶解する。このとき調製するゼラチン水溶液の濃度は5重量%〜30重量%の範囲内において選択され、好ましくは10重量%〜30重量%である。ゼラチンの濃度が範囲内より下回ると、ゲルが形成され難くなったり、ゲル化したとしても機械的物性が脆くなるなどし、範囲内を上回ると、溶液の粘度が上昇するためにDNA水溶液との混合が不均一になったりするなどの不都合が生じる。この調製したゼラチン水溶液を第1水溶液とする。一方で、DNAを超純水に溶解する。調製するDNA水溶液の濃度は0.25重量%〜飽和濃度の濃度範囲内である。DNAの濃度がこの範囲内より下回ると、目的とする環境汚染物質の吸着効率が得られなかったり、放射線の照射によって全て分解されてしまったりするなどの不都合が生じる。この調製したDNA水溶液を第2水溶液とする。
放射線照射によって架橋する性質を有する架橋型高分子として水溶性生体高分子であるゼラチンを用い、これをDNAとともに超純水に溶かしたものに対してガンマ線照射を行う例について説明する。
まず上記(a)の製造方法と同様の方法により調製したゼラチン水溶液とDNA水溶液をそれぞれ第1水溶液及び第2水溶液として用意し、上記(a)の製造方法と同様の手法により第1水溶液と第2水溶液を所望の割合で混合し、均一になるまで攪拌し続けることにより、混合高分子溶解液を得る。このように調製したDNA及びゼラチンの双方を含む混合高分子溶解液を、ゾル状態のまま、円筒状容器に充填する。円筒状容器の材質としては、放射線照射でも劣化せず、かつ放射線を透過させる材質が使用される。具体的には、ポリプロピレン製の円筒状容器が好ましい。このDNA及びゼラチンの双方を含む混合高分子溶解液を充填した円筒状容器に対して、ガンマ線を10kGy〜250kGyの範囲内の照射線量で照射することにより、円筒状容器内部に放射線によって架橋した高分子ゲルを支持体としてDNAが固定化された円柱状のゲル組成物を形成することができる。ガンマ線の照射線量が下限照射線量を下回ると、ゲルが形成され難く、上限照射線量を上回ると、一度形成されたゲルの構造に、さらにガンマ線が照射されることによってゲル構造の破壊が起こって物性が低下するなどの不都合が生じる。
放射線照射によって架橋する性質を有する架橋型高分子として水溶性生体高分子であるゼラチンを用い、これをDNAとともに超純水に溶かしたものに対してガンマ線照射を行う例について説明する。
まずゼラチンの水溶液を超純水に溶解する。このとき調製するゼラチン水溶液の濃度は0.0005重量%〜1.0重量%の範囲内において選択され、好ましくは0.0025重量%〜0.01重量%である。この調製したゼラチン水溶液を第1水溶液とする。一方で、DNAを超純水に溶解する。調製するDNA水溶液の濃度は0.00025重量%〜0.05重量%の濃度の範囲内である。この調製したDNA水溶液を第2水溶液とする。
放射線照射によって架橋する性質を有する架橋型高分子として、多糖類誘導体であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を、DNAとして平均塩基対数10kbpのサケ白子由来のDNAをそれぞれ用意した。また、直径1cm、高さ5cmのポリプロピレン製円筒状容器を用意した。この2種の高分子を超純水にCMCの濃度が10重量%、DNAが0.25重量%になるようにそれぞれ添加混合し、ハイブリッドミキサー(株式会社キーエンス社製;HM−500)を用いて、均一なペースト状混合高分子溶解液を調製した。調製したペースト状混合高分子溶解液を複数の円筒状容器に充填し、この混合高分子溶解液を充填した円筒状容器に対して5kGy、10kGy、15kGy、30kGy及び50kGyの照射線量のガンマ線を照射した。
架橋型高分子として、変性タンパク質であるブタの表皮由来のゼラチンと平均塩基対数10kbpのサケ白子由来DNAをそれぞれ用意した。ブタの表皮由来のゼラチンを超純水に対して20重量%の濃度となるように溶解してゼラチン溶解液を調製した。一方で、サケ白子由来DNAを超純水に対して0.5重量%の濃度となるように溶解してDNA溶解液を調製した。この2種の高分子溶解液を40℃に加熱した後に等量比となるように混合した。これによってゼラチンが10重量%濃度、DNAが0.25重量%濃度の混合高分子溶解液を調製した。調製した混合高分子溶解液を実施例1で使用した複数の円筒状容器に充填し、この混合高分子溶解液を充填した円筒状容器に対して10kGy、30kGy、50kGy、100kGy及び230kGyの照射線量のガンマ線を照射した。
ブタの表皮由来のゼラチンの代わりに牛血清アルブミン(BSA)を用いた以外は実施例2と同様にして混合高分子溶解液を調製した。調製した混合高分子溶解液を実施例1で使用した複数の円筒状容器に充填し、この混合高分子溶解液を充填した円筒状容器に対して100kGy及び200kGyの照射線量のガンマ線を照射した。
ブタの表皮由来のゼラチンの代わりに塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(カチナール)を用いた以外は実施例2と同様にして混合高分子溶解液を調製した。調製した混合高分子溶解液を実施例1で使用した複数の円筒状容器に充填し、この混合高分子溶解液を充填した円筒状容器に対して、5kGy、10kGy、30kGy、50kGy、100kGy及び200kGyの照射線量のガンマ線を照射した。
実施例1で使用したものと同様のサケ白子由来のDNAを超純水中に0.25重量%濃度になるように添加混合し、DNA溶解液を調製した。即ち、この溶解液には架橋型高分子は含まれていない。続いて、この調製したDNA溶解液を実施例1で使用した複数の円筒状容器に充填し、このDNA溶解液を充填した円筒状容器に対して、5kGy、10kGy、30kGy、50kGy、100kGy及び200kGyの照射線量のガンマ線を照射した。
実施例1〜4及び比較例1によって得られたゲル組成物を50℃の超純水中に2日間浸漬し、水に不要であるものがあるかどうかを調べた。実施例1〜4及び比較例1においては2日間50℃の超純水中に浸けた結果、水に不要でなおかつ指で触れた際に弾性を持つ成分が確認された。このことから、実施例1〜4においては、放射線照射によって熱に対して安定な放射線架橋ゲルが得られたことがわかった。一方比較例1についてはこのような成分は確認されなかった。このことから、目的とする放射線架橋ゲルを得るためには、適切な照射線量が必要なこと、また適した架橋型水溶性生体高分子およびこの誘導体を選ぶ必要があることがわかる。これらのことを以下の表1にまとめた。
比較試験1によって不溶化した成分が確認された実施例1〜4で得られたゲル組成物について、ゲル分率及び膨潤特性の評価を行った。
このようにして測定した実施例1〜4で得られたゲル組成物のゲル分率の照射線量依存性を図1に示す。図1から明らかなように、製造の際に照射する線量の増加とともに、ゲル分率は急激に増大する傾向が見られた。ブタ表皮由来のゼラチンを用いた実施例2のゲル組成物の場合、ゲル化に必要な線量より低線量(実施例においては5kGy以上の線量)では、ゲル化が起こっていないことが確認された。また、実施例3のゲル組成物の場合、放射線架橋ゲルを得るためには、50kGy以上のガンマ線を照射しなければならない。さらに実施例4のゲル組成物の場合、照射線量が高すぎると逆にゲル分率が低下するなどの傾向が見られた。
実施例1〜4で得られたゲル組成物について、発がん物質のひとつであるアクリジンオレンジの吸着性能を調べることで環境浄化材料としての性能を評価した。
Claims (10)
- 放射線照射によって架橋する性質を有する架橋型高分子とデオキシリボ核酸の双方を水又は緩衝液に添加混合して溶解することにより、架橋型高分子及びデオキシリボ核酸の双方を含む混合高分子溶解液を調製する工程と、
前記混合高分子溶解液に対して放射線を照射することにより、デオキシリボ核酸を安定に含むゲル組成物を得る工程と
を含むことを特徴とするゲル組成物の製造方法。 - 放射線照射によって架橋する性質を有する架橋型高分子が、水溶性生体高分子及び水溶性生体高分子の誘導体からなる群より選ばれた1種の高分子又は2種以上の高分子の混合物であり、前記水溶性生体高分子及び水溶性生体高分子の誘導体が、タンパク質、変性タンパク質、ポリアミノ酸、多糖類及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた1種の高分子又は2種以上の高分子の混合物である請求項1記載のゲル組成物の製造方法。
- タンパク質及びその誘導体が、アルブミン、ゼラチン、リゾチーム、ミオシン、可溶性コラーゲン、ヘモグロビン、フィブロゲン、フィブリン、カゼイン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン又は大豆タンパク質であり、
ポリアミノ酸及びその誘導体が、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸又はポリ−γ−リジンであり、
多糖類及びその誘導体がセルロース、デンプン、キチン・キトサン、アルギン酸、カラギーナン、寒天及びそれらの誘導体であり、
セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、
デンプン誘導体が、カルボキシメチルデンプン、カルボキシエチルデンプン、メチルデンプン、エチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン又はヒドロキシプロピルメチルデンプンである請求項2記載のゲル組成物の製造方法。 - 混合高分子溶解液に照射する放射線が電子線、ガンマ線、ベータ線又はイオンビームである請求項1記載のゲル組成物の製造方法。
- 混合高分子溶解液に含まれるデオキシリボ核酸の濃度が0.0001重量%以上かつ飽和濃度以下である請求項1記載のゲル組成物の製造方法。
- 混合高分子溶解液に含まれる水溶性生体高分子、水溶性生体高分子の誘導体又は水溶性生体高分子及び水溶性生体高分子の誘導体の混合物の濃度が0.0025重量%以上かつ飽和濃度以下である請求項2又は3記載のゲル組成物の製造方法。
- ゲル組成物を得る工程が、
調製した混合高分子溶解液を2枚のフィルムで挟む工程と、
前記混合高分子溶解液を挟んだフィルムを袋状に真空成型して袋状物内部に混合高分子溶解液を封入する工程と、
前記内部に混合高分子溶解液を封入した袋状物に対して放射線を照射することにより、袋状物内部にフィルム状ゲル組成物を形成する工程と
から構成される請求項1記載のゲル組成物の製造方法。 - ゲル組成物を得る工程が、
調製した混合高分子溶解液を円筒状容器に充填する工程と、
前記混合高分子溶解液を充填した円筒状容器に対して放射線を照射することにより、前記円筒状容器内部に円筒状ゲル組成物を形成する工程と
から構成される請求項1記載のゲル組成物の製造方法。 - 請求項1ないし8いずれか1項に記載の方法により得られるゲル組成物。
- 組成物の形状がフィルム状、円筒状又は粒子状である請求項9記載のゲル組成物。
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