以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
(A)無線通信システムの基本構成
図1は、本実施形態の無線通信システムの構成の一例を表す説明図である。
図1において、平面上の任意の形状(この例では一辺30(m)の正方形状)を備えた移動可能領域50が設けられる。この移動可能領域50には、1つの移動局10と、4つの基地局12(第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12D)が設けられ、領域近傍には測位サーバ14が設けられている。
移動局10は、移動可能領域50内を移動可能に配置されている。第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、及び第4基地局12Dは、正方形の移動可能領域50の既知の位置に(この例では4隅それぞれに1つずつ)固定的に配置されている。
測位サーバ14は、例えばLANケーブル等の有線ケーブル52により各基地局12A〜12Dと接続され、互いに情報通信可能となっている。そして、測位サーバ14は、移動局10によって送信された電波信号が上記基地局12A〜12Dによって受信されるときの受信信号強度値に基づき、移動可能領域50内における移動局10の位置を算出する(=測位)。
図2は、上記位置算出のために、移動可能領域50において便宜上設定される座標系を表す説明図である。
図2において、x軸およびy軸を備えた座標系が定義されており、移動可能領域50上の点はこれらx座標系、y座標系において座標が規定される。この例では、(理解の容易のため)x座標y座標の値は、原点(0,0)からの距離[m]に対応させてある。すなわち、第1基地局12Aは座標(0,30)に配置され、第2基地局12Bは座標(0,0)に配置され、第3基地局12Cは座標(30,0)に配置され、第4基地局12Dは座標(30,30)に配置されている。
図3は、移動局10の機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。
図3において、移動局10は、電波を送受信するために用いるアンテナ部20と、平衡不平衡変換器22と、送受信切換部24と、送信アンプ部26と、無線部28と、制御部32と、電池40と、コントローラ401と、増幅率一定の低雑音増幅器27とを有する。なお、時計41についてはRSSI測位方式を行う本実施形態では必ずしも必要ない。
平衡不平衡変換器22は、例えばバラン(Balun)で構成される。この平衡不平衡変換器22は、送受信切換部24の不平衡線路をアンテナ部20に適合するように平衡線路に変換する。
送受信切換部24は、移動局10の送信状態と受信状態とを切り換える。すなわち、送受信切換部24が移動局10を送信状態に切り換えると、移動局10は送信機として機能し、送受信切換部24が移動局10を受信状態に切り換えると、移動局10は受信機として機能する。
無線部28は、移動局10が送信機として機能する場合には、制御部32によって生成される信号を無線通信を行うための形式に変換する。移動局10が受信機として機能する場合には、アンテナ部20によって受信された受信波から制御部32によって処理されるための信号に変換する。この無線部28は、この例では、PLL(Phase Lock Loop)回路29、基準周波数発振部301、VCO(Voltage Contorolled Oscillator)回路31、分周部302及びデジタル変調復調部30などを備えたIC等によって実装される。
PLL回路29は、制御部32からの指令により、VCO回路31、分周部302等を制御して、基準周波数に正確に同期(ロック)した周波数を発振させる回路である。後述の基準周波数発振部301の基準周波数と分周部302の出力信号の周波数が一致するように制御するのである。
基準周波数発振部301は、基準周波数(リファレンス周波数)を発生させる。この基準周波数発振部301は、例えば水晶発振器等により構成される。
VCO回路31は、電圧により発振周波数を制御する。
分周部302は、VCO回路31から出力される信号の周波数を分周(N分割)して、PLL回路29に出力する。この分周する数N(Nは整数)を制御することで任意の周波数を発振できる。
デジタル変調復調部30は、制御部32によって生成される信号をデジタル変調する。またデジタル変調復調部30は、受信された受信信号の復調を行い、生成されたデジタルデータを制御部32に出力する。これにより、移動局10と基地局12との間の無線通信がデジタル通信によって実行される。
送信アンプ部26は、移動局10が送信機として機能する場合に、上記無線部28によって生成された信号波を制御部32からの指令により所定の複数の出力値に増幅する。
制御部32は、スペクトラム拡散部34と、逆拡散処理部341と、ベースバンド信号生成復元部36と、拡散符号発生部38とを有する。この制御部32は、例えば、これら各機能部を制御し拡散符号を発生する機能を有するゲートアレイやマイコンなどによって実装される。
ベースバンド信号生成復元部36は、移動局10が送信機として機能する場合には、伝送したい情報を符号化しベースバンド信号を生成する。またベースバンド信号生成復元部36は、移動局10が受信機として機能する場合には、逆拡散処理部341によって復号されたベースバンド信号から、伝送された情報を取りだす。
拡散符号発生部38は、スペクトラム拡散部34によってスペクトラム拡散を行うための拡散符号を発生させる。この発生させる拡散符号の第1条件は、自己相関関数に高いピークを持つ符号であることである。すなわち、位相差がゼロである場合において自己相関が大きな値となる一方、位相差がゼロでない場合には自己相関が十分に小さいような符号が用いられる。発生させる拡散符号の第2条件は、相互相関が小さい符号であることである。すなわち、符号間における相関が全ての位相差において十分小さい符号列が用いられる。これら2つの条件を満たす符号としては、例えば、M系列符号や、GPSにおいても使用されているGold系列符号等を用いることができる。このGold系列符号は疑似雑音符号(pseudo−noise code;PN信号)の一種である。
スペクトラム拡散部34は、移動局10が送信機として機能する場合に、ベースバンド信号生成復元部36が生成したベースバンド信号を、拡散符号発生部38が発生した拡散符号を用いてスペクトラム拡散を行い、送信のための信号を生成する。具体的には、例えば、上記ベースバンド信号と上記拡散符号との排他的論理和を用いる直接拡散(direct spread)方式が用いられる。
逆拡散処理部341は、移動局10が受信機として機能する場合に、上記デジタル変調復調部30によって復調された受信波に対し、上記拡散符号を用いてスペクトラム逆拡散を行い、ベースバンド信号を取りだす。この受信の場合も、上記送信の場合と同じ拡散符号が用いられる。このようなスペクトラム拡散を利用し本来よりも広い帯域に拡散して送受信することができるのである。
電池40は、上述した送信アンプ26、無線部28、制御部32、時計41等の各機能部に対し、必要な電力を供給する。
なお、上記アンテナ部20、平衡不平衡切換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、制御部32等の、電波の送信及び受信のための機能部が各請求項記載の送信部及び受信部に相当する。
図4は、基地局12A〜12Dの機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。図3と同等の部分については同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図4において、基地局12A〜12Dは、移動局10に備えられたものと共通の機能である、アンテナ部20、平衡不平衡変換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、低雑音増幅器27、制御部32、時計41、電池40等を有する。すなわち、基地局12A〜12Dも、上述の移動局10と同様、送信機(送信部)及び受信機(受信部)としての両方の機能を有する。
時計41は、制御部32ほかの各機能部の動作時や、電波の送信・受信時において参照可能な時刻情報を供給する。この時計41は、例えばリファレンスクロック等により構成される。
また基地局12A〜12Dは、上記以外に、測位サーバ14との通信を行うための有線通信部43と、記憶部(メモリ)45と、RSSI部47とを有する。
RSSI部47は、上記受信部で受信された電波信号に基づき、上記複数の周波数にそれぞれ対応した複数の受信信号強度値を検出する(強度検出手段。詳細は後述)。
有線通信部43は、例えばLANケーブルなどの有線ケーブル52によって測位サーバ14と接続されている。これにより、基地局12は、有線通信部43を介し、RSSI部47によって検出された電波信号の受信信号強度値情報、基地局12各部の動作に関する情報などを、測位サーバ14と送受信可能となっている。
図5は、測位サーバ14の機能的構成を表す機能ブロック図である。
測位サーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたいわゆるコンピュータにより構成されている。これにより、測位サーバ14は、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムにしたがって信号処理を行い、移動局10の位置の算出(=測位)を実行する。この測位サーバ14は、機能的構成として、インターフェース部82と、測位演算部83と、記憶部(メモリ)86とを備えている。
インターフェース部82は、通信ケーブル52を介し接続された基地局12との間で必要となる情報を入出力する。例えば測位サーバ14は、基地局12の作動を指令するコマンド等を上記インターフェース部82を介し出力し、基地局12のRSSI部47で検出された上記受信信号強度値情報をインターフェース部82を介し入力する。
記憶部86は、いわゆるメモリなどの記憶手段であり、測位演算部83等における処理を実行する際に必要となる情報や、インターフェース部82を介して基地局12などから得られた情報を読み出し可能に記憶する。例えば、基地局12の位置に関する情報や、各基地局12A〜12Dから取得した受信信号強度値情報等が記憶される。
測位演算部83は、測位部84と、算出部88と、選択部90とを有する。測位部84は、各基地局12A〜12Dで取得した前述の受信信号強度値情報に基づき、移動可能領域50中の移動局10と各基地局12との距離を算出(測距)し、最終的に移動局10の位置の検出(測位)を行う。
算出部88は、上記複数の周波数に対応した上記複数の受信信号強度値に基づき、各基地局12A〜12Dごとに受信信号強度のばらつき状態量(例えば、標準偏差等)を算出する(詳細は後述する)。また、各基地局12A〜12Dごとに、上記複数の周波数に対応した上記複数の受信信号強度値の平均値を算出する(後述の(1)の変形例を参照)。
選択部90は、複数の基地局12A〜12Dのうち、上記算出部88で算出した上記ばらつき状態量が相対的に小さい基地局12を選択する(詳細は後述する)。また、複数の基地局12A〜12Dに係る上記ばらつき状態量が略等しい場合には、上記算出部88で算出した上記受信信号強度値の平均値が相対的に大きい基地局12を選択する(後述の(1)の変形例を参照)。
なお、図5においては、本実施形態の測位に関する制御作動に直接関係のない機能についてはその記載が省略されている。例えば測位サーバ14には、図示しない電源が設けられ、各機能部に対して必要となる電力が供給されている。
(B)移動局の位置検出の手法原理
図6は、上記測位部84による移動局10の位置を検出する手法原理を説明するための概念的説明図である。なお、図6においては、図示の煩雑を避けるために第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cの3つを用いる場合を例にとって説明する(後述の図7も同様)。
図6において、移動局10は前述したようにxy座標系が設定されている移動可能領域50内を自由な座標位置に移動できるのに対し、3つの基地局12A,12B,12Cは同じ移動可能領域50内でそれぞれ既知の設置位置に固定的に配置されている。そして各基地局12A,12B,12Cは有線ケーブル52を介して測位サーバ14に情報を送受可能に接続されている。この構成において、各基地局12A,12B,12Cから移動局10までの距離に応じた受信信号強度値に基づき、測位サーバ14は、移動局10の位置を算出することができる。つまり、移動局10が電波信号を各基地局12A,12B,12Cに向けて送信する場合、移動局10が電波信号を送信して基地局12において検出される受信信号強度値と、基地局12と移動局10との空間的な距離(伝搬距離)との関係が、例えば図7に示したようなものとなる。
図7は、距離と受信信号強度値との関係を表す図であり、横軸に各基地局及び移動局の位置関係(距離関係)を示し、縦軸に各基地局からの距離に基づく受信信号強度値を示している。
図7において、移動局10が図に示した位置(x,y)に位置している場合における、移動局10からの電波信号の基地局12Aでの受信信号強度値をaとし、基地局12bでの受信信号強度値をbとし、基地局12Cでの受信信号強度値をcとする。図示のように、各基地局12A,12B,12Cでの特性線は、互いに同一形状で、図上において横方向にスライドした態様となっている。これらの各基地局12A〜12Cでの受信信号強度値a,b,cに基づき、伝搬損失特性により、伝搬距離Da,Db,Dcを求めることができる。
ここで、図6に戻り、基地局12A,12B,12Cの座標をそれぞれ、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)とすると、上述の伝搬距離Da,Db,Dcについて、
Da=√{(x−x1)2+(y−y1)2} ・・(1A)
Db=√{(x−x2)2+(y−y2)2} ・・(1B)
Dc=√{(x−x3)2+(y−y3)2} ・・(1C)
が成り立つ。
すると、式(1A)から式(1B)を減じることで、
√{(x−x1)2+(y−y1)2}−√{(x−x2)2+(y−y2)2}=Da−Db …(1D)
また、式(1A)から式(1C)を減じることで、
√{(x−x1)2+(y−y1)2}−√{(x−x3)2+(y−y3)2}=Da−Dc …(1E)
で表される関係が成り立つ。
このとき、(伝搬距離Da,Db,Dcは既知であり)変数はx,yの2つのみであるから、上記(1D),(1E)の2つの式を例えばニュートンラプソン法などを解くことにより、移動局10の位置のx,y座標(x,y)を特定することができる。なお、本実施形態のように4つの基地局12A,12B,12C,12Dを設けることで、さらに精度のよい位置検出を行うことができる。
なお、上記の例では、各基地局12A,12B,12Cは電波信号の受信信号強度値を検出し測位サーバ14に出力するのみであり、測位処理(基地局12A,12B,12Cから移動局10までの距離の算出)は測位サーバ14が行うが、これに限られない。すなわち、各基地局12A,12B,12Cのうちの1つの制御部32が他の基地局12A,12B,12Cの受信信号強度値を収集し、測位するようにしてもよい。
(C)マルチパスの影響
ところで、無線通信を用いた測位システムでの測距用電波信号の送受信においては、壁、障害物等の存在等により、電波信号が複数の経路(例えば、直接波、反射波、透過波、回折波等)によって伝搬するマルチパス(多重波伝送路)が発生する場合がある。このマルチパス環境においては、移動局10から送信された測距用電波信号の直接波に対し、時間差をもって遅れて反射波が基地局12に受信される。そして、この遅れて受信された反射波は、直接波と干渉し、測位精度の低下を招く。以下、その詳細を説明する。
図8は、このようなマルチパス環境にある基地局12における受信信号強度値への影響を説明するための説明図である。横軸に基地局12と移動局10との距離を示しており、図示左側ほど上記距離が近く、図示右側ほど上記距離が遠くなっている。縦軸に基地局12での受信信号強度値を示している。
図8において、点線が、本来の(マルチパスがない環境での)受信信号強度値の曲線を表している。図示のように、受信信号強度値は、図示左端の比較的大きい状態から、上記距離が遠くなるにつれて右下がりに減少する挙動となる。その受信信号強度値の減少度合いは、上記距離が遠くなるほど徐々に小さくなる(右下がりが緩やかになる)。
一方、実線は、マルチパス環境での受信信号強度値の曲線を表している。マルチパス環境では、基地局12で受信される電波信号は干渉を起こす場合がある。例えば、本来の受信電波信号(直接波)の位相と、他の経路による受信電波信号(反射波)の位相とが同相(位相差が略0)の場合、マルチパスなしの(本来の)受信信号強度値に比べ受信信号強度値は大きくなる。一方、上記直接波の位相と反射波の位相とが逆相(位相差が略π)の場合、マルチパスなしの(本来の)受信信号強度値に比べ受信信号強度値は小さくなる。この結果、受信信号強度値は図示のように複雑かつ大きく変動することとなる。
以上のように、マルチパス環境の影響がある基地局12では、移動局10から送信された電波信号の受信信号強度値の検出の際に、受信信号強度値の変動が生じる。この結果、その基地局12では正しい本来の受信信号強度値の検出が困難となる。したがって、移動局10の測位精度の低下を防止するためには、この基地局12を除外した他の基地局12を確実に選択し、それら選択された基地局12の受信信号強度に基づき正確に移動局10を測位する必要がある。
(D)本発明に関わる要部構成
本実施形態においては、上記マルチパス環境の影響が、電波信号を受信する基地局12A〜12Dの設置位置によって異なるという特性(位置依存性)に基づき、マルチパス環境の影響がなるべく小さくなるような基地局12を優先的に選択して、通信を行うものである。
具体的には、移動局10が、互いに異なる複数の周波数に順次切り替えながら各周波数ごとに電波信号の送信を行う。このとき、移動局10が動いておらず各基地局12A〜12Dまでの距離がそれぞれ固定的で変動しない条件の下では、移動局10からの電波信号の信号強度の減少値は同じとなる。このため、(移動局10からの送信出力値が同一であれば)周波数がどのように切り替わっても、各基地局12A〜12Dでの受信信号強度値は一定となる。
しかしながら、電波干渉が生じるマルチパス環境が生じている基地局12があった場合、送信周波数が切り替わったとき、その基地局12の受信信号強度値が変動する。すなわち、マルチパス環境が生じていない基地局12では受信信号強度値がほぼ一定値となるのに対し、マルチパス環境が生じている基地局12では受信信号強度値にばらつきが生じる。
これに対応して、本実施形態では、移動局10が上記複数の周波数を所定の順序で含む1つの周波数順序列を、所定の周期で複数回繰り返すように電波信号を送信する。以下、その手法の詳細を図9〜図11により説明する。
図9は、上記複数の周波数を所定の順序で含む1つの周波数順序を決める手法の一例を説明するための説明図である。図9では、M系列(Maximum length sequence)を用いた例を示している。M系列は、擬似ランダム系列の1つであり、この例では3ビットのレジスタD1,D2,D3で生成されるビット列とする。すなわち、3ビットのレジスタD1,D2,D3では、M系列の周期は23−1=7(1周期=7パターンの組み合わせ)となる。そして、上記7パターンの組合せ別に、互いに異なるチャネル(チャネル番号1〜7)になるように関連づける。
すなわち、レジスタD1,D2,D3が1,0,0のときを、チャネル1に関連づけ、レジスタD1,D2,D3が0,1,0のときを、チャネル2に関連づけ、レジスタD1,D2,D3が1,1,0のときを、チャネル3に関連づけ、レジスタD1,D2,D3が0,0,1のときを、チャネル4に関連づけ、レジスタD1,D2,D3が1,0,1のときを、チャネル5に関連づけ、レジスタD1,D2,D3が0,1,1のときを、チャネル6に関連づけ、レジスタD1,D2,D3が1,1,1のときをチャネル7に関連づける。
そして、上記3つのレジスタD1,D2,D3に関連づけた各チャネル1〜7ごとに互いに異なる周波数を対応させることで、上記7つの周波数を所定の順序で含む1つの周波数順序列を生成する。上記の例では、レジスタD1,D2,D3の値が、初期値(1,1,1)から(0,1,1)→(1,0,1)→(0,1,0)→(0,0,1)→(1,0,0)→(1,1,0)の順で遷移していることから、チャネル7→チャネル6→チャネル5→チャネル2→チャネル4→チャネル1→チャネル3の順の周波数順序列を生成することができる。
図10は、上記7つのチャネル1〜7にそれぞれ対応した周波数の一例を表す図である。図10に示す例では、チャネル1を2410[MHz]に対応させ、チャネル2を2420[MHz]に対応させ、チャネル3を2430[MHz]に対応させ、チャネル4を2440[MHz]に対応させ、チャネル5を2450[MHz]に対応させ、チャネル6を2460[MHz]に対応させ、チャネル7を2470[MHz]に対応させている。
図11(a)は、上記複数の周波数で電波信号を送信する手法を説明するための説明図である。横軸に時間を示し、縦軸に複数の周波数にそれぞれ対応した上記のチャネル番号を示している。なお、図に示したTcは電波信号の1チップの時間間隔(チップ幅)を示している。図11(a)において、この例では、移動局10は、前述の図9と同様、上記1チップごとにチャネル7→チャネル6→チャネル5→チャネル2→チャネル4→チャネル1→チャネル3という順序列で周波数(チャネル)を切り替え、これを1周期としている。そして、移動局10は、上記順序列を2周期繰り返し電波信号を送信している(黒塗りで示した格子部分が電波信号を送信している周波数を表す)。このようにして、いわゆる周波数ホッピング・スペクトラム拡散(Frequency Hopping Spread Spectrum;FHSS)方式により電波信号を送信することができる。
図11(b)は、移動局10から送信される電波信号に含まれる送信フレームの構成を表す図である。図11(b)において、この例では、上記送信フレームは、順に「PR」、「BOF」、「ID」、「ばらつき状態量算出予告部」、「検出コード」、「FEC」、「EOF」の各部によって構成されている。
「PR」(Preamble)は、通信の開始を知らせるためにデータの送付に先立ってデータ同期を確立するために送信するコードである。「BOF」(Begin Of Frame)は、フレームの開始を表すコードである。「ID」(Identfier)は、電波信号の識別コードである。「ばらつき状態量算出予告部」は、上記ばらつき状態量を算出するために受信信号強度値を測定(検出)することを知らせる(予告する)コードである。
「検出コード」は、受信信号強度値を検出するタイミング(サンプリングタイミング)を表すコードである。各基地局12は、上記7つの周波数順序列における上記「検出コード」に対応した信号の受信時における受信信号強度値を検出する。
「FEC」(Forward Error Correction)は、エラーの訂正や検出を行わせるためのコードであり、BCH符号やRS符号により生成されたビット列が送信される。「EOF」(End Of Frame)は、フレームの終了を表すコードである。
次に、移動局10から送信された上記周波数順序列に対応して、基地局12で上記所定の順序の各周波数ごとに電波信号を受信する手法を説明する。
図12は、基地局12において、上記所定の順序の各周波数ごとに電波信号を受信する手法を説明するための説明図である。図中、上段に示す移動局10と中段に示す基地局12との間を縦方向に結ぶ矢印が、移動局10と基地局12との間の通信の挙動を示す。矢印の向きは通信方向を示しており、矢印の先が向いている機器が受信側である。また、図中右向きに時間軸がとられており、右へ行くほど時間が経過したことを表す。
図12において、移動局10は上記図11(a)と同様に、1チップごとにチャネル7→チャネル6→チャネル5→チャネル2→チャネル4→チャネル1→チャネル3という順序列で周波数(チャネル)を切り替え、これを1周期とし、上記周波数順序列を2周期繰り返し電波信号を送信している(黒塗りで示した格子部分が電波信号を送信している周波数を表す)。
一方、基地局12は、上記周波数順序列及び各チャネル1〜CH7に対応した周波数情報等を記憶部45に記憶している。したがって、基地局12は、移動局10から送信された上記周波数順序列に沿った周波数切り替えに対応して、周波数を上記周波数順序列に沿って切り替えながら電波信号を受信することができる。
すなわち、まず最初に、時間C0において、基地局10が、移動局10に対し、電波信号の送信要求信号を送信すると、移動局10は受信状態から送信状態に切り替わる。そして、時間C1において移動局10は、基地局12に対し、上記周波数順序列の1番目のチャネル7で電波信号を送信する。
その後、基地局12は、(上記時間C0において移動局10に対し電波信号の送信要求信号を送信したのに対応して)、時間C2において、送信状態から受信状態に切り替わる。ここで、基地局12が受信状態になる時間C2は、移動局10がチャネル7で電波信号を送信する時間C1より後である。したがって、時間C1においては、基地局12は、移動局10からチャネル7で送信された電波信号を受信することができず(同期することができず)、次に移動局10からチャネル7で電波信号が送信されるまで(2周期目の時間C8まで)、チャネル7の電波信号を受信する状態で待機する(網掛け部分参照)。
そして、時間C8において、移動局10は、チャネル7で電波信号を送信し、チャネル7の電波信号を受信する状態で待機している基地局12は、移動局10からチャネル7で送信された電波信号を受信する(=同期捕捉)。以下、時間C9〜C14は、基地局12は、移動局から送信される上記周波数順序列に沿った周波数切り替えに対応して、周波数を上記周波数順序列に沿って切り替えながら電波信号を受信する(=同期追跡)。
以上の結果、基地局12は、移動局10と同期した時間C3〜C14における、上記図11(b)で前述した検出コードに対応する信号受信時の受信信号強度値を検出する(図12の下段参照)。
図13は、測位サーバ14の記憶部86に記憶された、各基地局12A〜12Dにおける、複数の周波数(j)にそれぞれ対応した複数の受信信号強度値の一例を表す図である。カッコ内のjは、周波数(チャネル)の順序列の番号を表しており、この例では、前述の順序に沿い、チャネル7をj=1とし、チャネル6をj=2とし、チャネル5をj=3とし、チャネル2をj=4とし、チャネル4をj=5とし、チャネル1をj=5とし、チャネル3をj=7(jmax)としている。そして、各基地局12A〜12Dにおける、周波数(j)で受信した電波信号の受信信号強度値(nW換算値)を、RSSI(j,12A)〜RSSI(j,12D)で表している。
図13において、まず、基地局12Aにおいては、チャネル7での受信信号強度がRSSI(1,12A)=2.20[nW]であり、以下同様に、チャネル6ではRSSI(2,12A)=2.27[nW]、チャネル5ではRSSI(3,12A)=2.35[nW]であり、チャネル2ではRSSI(4,12A)=2.35[nW]であり、チャネル4ではRSSI(5,12A)=2.20[nW]であり、チャネル1ではRSSI(6,12A)=2.18[nW]であり、チャネル3ではRSSI(7,12A)=2.11[nW]となっている。
同様に、基地局12Bにおいては、チャネル7ではRSSI(1,12B)=2.24[nW]であり、チャネル6ではRSSI(2,12B)=2.33[nW]であり、チャネル5ではRSSI(3,12B)=2.04[nW]であり、チャネル2ではRSSI(4,12B)=2.28[nW]であり、チャネル4ではRSSI(5,12B)=2.28[nW]であり、チャネル1ではRSSI(6,12B)=2.03[nW]であり、チャネル3ではRSSI(7,12B)=2.30[nW]となっている。
基地局12Cでは、チャネル7ではRSSI(1,12C)=2.15[nW]であり、チャネル6ではRSSI(2,12C)=2.08[nW]であり、チャネル5ではRSSI(3,12C)=2.33[nW]であり、チャネル2ではRSSI(4,12C)=2.11[nW]であり、チャネル4ではRSSI(5,12C)=2.21[nW]であり、チャネル1ではRSSI(6,12C)=2.18[nW]であり、チャネル3ではRSSI(7,12C)=2.03[nW]となっている。
基地局12Dでは、チャネル7ではRSSI(1,12D)=2.24[nW]であり、チャネル6ではRSSI(2,12D)=2.55[nW]であり、チャネル5ではRSSI(3,12D)=2.29[nW]であり、チャネル2ではRSSI(4,12D)=1.68[nW]であり、チャネル4ではRSSI(5,12D)=1.80[nW]であり、チャネル1ではRSSI(6,12D)=1.63[nW]であり、チャネル3ではRSSI(7,12D)=1.57[nW]となっている。
以上のようにして検出された上記RSSI(j,12A)〜RSSI(j,12D)に基づき、各基地局12A〜12Dごとに受信信号強度のばらつき状態量(この例では、標準偏差SD)を算出する。
すなわち、例えば、RSSI(j,12)〜RSSI(jmax,12)の平均値をmとすると、
SD=√[{(RSSI(1,12)−m)2+(RSSI(2,12)−m)2
+・・+(RSSI(jmax,12)−m)2}/(jmax−1)]
…(2A)
が成り立つ。
例えば、基地局12Aについて、この(2A)の式に上記図13の例における値を代入すると、基地局12Aにおける、上記RSSI(1,12A)〜RSSI(7,12A)の標準偏差SDは、
SD=0.12247
となる。
その他の基地局12B,12C,12Dについても、同様にして標準偏差を求めることができる。すなわち、基地局12Bでは上記RSSI(1,12B)〜RSSI(7,12B)の標準偏差SD=0.12570となり、基地局12Cでは上記RSSI(1,12C)〜RSSI(7,12C)の標準偏差SD=0.09788となり、基地局12Dでは上記RSSI(1,12D)〜RSSI(7,12D)の標準偏差SD=0.38836となる。図14は、上記の標準偏差の算出結果を表した図である。
本実施形態では、この結果に基づき、基地局12A〜12Dのうち、上記算出した受信信号強度の標準偏差SDが小さい基地局12から順に優先順位を付ける。この例では、図示のように、上記標準偏差SDが1番小さい基地局12は1位、その次は2位、・・のようになっている。すなわち、基地局12Cが標準偏差SD(=0.09788)が相対的に最も小さく、優先順位1位となる。以下、基地局12A(SD=0.12247)が2位、基地局12B(SD=0.12570)が3位、基地局12D(SD=0.38826)が4位となる。
そして、上記優先順位が高いもの(=標準偏差SDが小さいもの)から順に所定の個数(例えば、3つ)の基地局12を選択する。この例では、基地局12C,12A,12Bの順に3つの基地局12が選択される。このようにして、マルチパス環境の影響がなるべく小さくなるような基地局12を優先的に選択することができるのである。
(E)制御シーケンス
図15は、本実施形態において、測位サーバ14、基地局12A〜12D、移動局10の間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。前述したように、測位サーバ14と基地局12A〜12Dとの間は有線ケーブル52を介した信号の送受である。また、基地局12A〜12Dと移動局10との間は、無線通信を介した信号の送受となっている。
まず最初に、ステップSS10において、(測位サーバ14の操作権限がある)管理者等により、測位サーバ14の図示していない操作部により測位開始の旨の操作が行われたかどうかを判定する。管理者等が測位開始操作を行うまでステップSS10の判定が満たされずループ待機する。管理者等が測位開始操作を行ったらステップSS10の判定が満たされて、ステップSS20に移る。なお、上記測位開始の旨の操作は管理者等により行われるが、測位サーバ14の図示していないタイマ等の計時手段により、管理者等が設定した時刻になったら自動的に測位開始するようにしてもよい。
次に、ステップSS20において、測位サーバ14の測位部84が有線ケーブル52を介し、各基地局12A〜12D(あるいは特定の1つの基地局12でもよい)に対し、移動局10への電波信号の送信要求信号を送信するよう指示信号を出力する。これにより、ステップSR10で、各基地局12A〜12Dの無線部28がアンテナ部20を介し移動局10に向けて電波信号の送信要求信号を送信する。
そして、移動局10の無線部28がアンテナ部20を介し、上記電波信号の送信要求信号を受信し、ステップST10において、移動局10の制御部32が、電波送信処理(詳細は後述)を実行して、移動局10の無線部28がアンテナ部20を介し各基地局12A〜12Dに向けて、互いに異なる複数の周波数に切り替えつつ各周波数ごとに電波信号を送信する。
そして、ステップSR20において、各基地局12A〜12Dの制御部32が、電波受信処理(詳細は後述)を実行して、RSSI部47で検出した複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値を記憶部45に格納し、ステップSR30に移る。
ステップSR30では、各基地局12A〜12Dの制御部32が、上記ステップSR20で検出した、上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値を有線ケーブル52を介して測位サーバ14に出力する。
そして、ステップSS30において、測位サーバ14の測位部84が、記憶部86にアクセスし、各基地局12A〜12Dから入力した上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値を格納し、ステップSS40に移る。
ステップSS40では、測位サーバ14の算出部88が、記憶部86にアクセスし、各基地局12A〜12Dごとの上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値を取得する。そして、各基地局12A〜12Dごとの上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値に基づき、前述した(2A)の式により、各基地局12A〜12Dごとに、受信信号強度のばらつき状態量(前述の例では標準偏差SD)を算出する(状態量算出手段)。その後、ステップSS50に移る。
ステップSS50では、測位サーバ14の選択部90が、基地局選択処理(詳細は後述)を実行して、上記複数(この例では4つ)の基地局12A〜12Dのうち、上記ステップSS40で算出した受信信号強度のばらつき状態量が相対的に小さい基地局12を選択する。その後、ステップSS60に移る。
ステップSS60では、測位サーバ14の測位部84が、上記ステップSS50で選択された各基地局12の受信信号強度値に基づき、移動局10の位置を、図6及び図7を用いて前述した手法により算出する(測位処理手段)。そして、このフローを終了する。
図16は、上記図11(a)を用いて説明した制御態様を実行するために、上記図15において移動局10の制御部32が実行するステップST10の詳細手順を表すフローチャートである。
図16において、まずステップST11では、周波数順序列の周期カウントの番号iをi=1とする。次に、ステップST12では、前述した周波数(チャネル)カウントの番号jをj=1とする。
そして、ステップST13において、アンテナ部20を介し無線部28が各基地局12に向けて、複数の(前述の例では7つの)周波数を所定の順序で含む1つの周波数順序列における、j番目の周波数(j)で電波信号を送信する。そして、ステップST14に移る。
ステップST14では、予め定められた周波数(チャネル)カウントの番号jmax(この例では前述したようにjmax=7)にjが等しくなったかどうかを判定する。jmaxより小さい場合(この例ではj=1〜6であった場合)は判定が満たされず、ステップST15に移る。
ステップSS15では、上記周波数(チャネル)カウントの番号jに1を加え、上記ステップST13に戻り、以降、同様の手順を繰り返す。これにより、1つの周波数順序列において周波数カウントが1つずつ増加されながら電波信号が送信されることとなる(前述の図11(a)及び図12、特に図11(a)左側の「1周期」参照)。そして、j=jmax(この例ではj=7)となったら上記ステップST14の判定が満たされ、ステップST16に移る。
ステップST16では、予め定められた周波数順序列の周期カウントの番号imax(この例では前述したようにimax=2)にiが等しくなったかどうかを判定する。imaxより小さい場合(この例ではi=1であった場合)は判定が満たされず、ステップST17に移る。
ステップST17では、上記周波数順序列の周期カウントの番号iに1を加え、上記ステップST12に戻り、以降、同様の手順を繰り返す。これにより、周波数順序列が1つずつ移りながら、各周波数順序列において周波数カウントが1つずつ増加して電波信号が送信されることとなる(前述の図11(a)や図12参照)。そして、i=imax(この例ではi=2)となったら上記ステップST16の判定が満たされ、このルーチンを終了する。
なおこれらステップST11〜ステップST17が、各請求項記載の送信制御手段を構成する。
図17は、上記図12を用いて説明した制御態様を実行するために、上記図15において基地局12の制御部32が実行するステップSR20の詳細手順を表すフローチャートである。
図17において、まずステップSR21では、周波数(チャネル)カウントの番号jをj=1とする。
次に、ステップSR22では、アンテナ部20を介し無線部28において、移動局10から周波数(j)で送信された電波信号を受信したかどうかを判定する。移動局10から周波数(j)で送信された電波信号を受信するまで判定が満たされずループ待機し、移動局10から周波数(j)で送信された電波信号を受信したらステップSR22の判定が満たされて、ステップSR23に移る。
ステップSR23では、RSSI部47が、上記周波数(j)で受信された電波信号の検出コード(前述の図11(b)参照)に対応した信号の受信時における受信信号強度値を検出(測定)し、ステップSR24に移る。
ステップSR24では、記憶部45にアクセスし、上記ステップSR23で検出した周波数(j)に対応した受信信号強度値を格納し、ステップSR25に移る。
ステップSR25では、予め定められた周波数(チャネル)カウントの番号jmax(この例では前述したようにjmax=7)にjが等しくなったかどうかを判定する。jmaxより小さい場合(この例ではj=1〜6であった場合)は判定が満たされず、ステップSR26に移る。
ステップSR26では、上記周波数(チャネル)カウントの番号jに1を加え、上記ステップSR22に戻り、以降、同様の手順を繰り返す。そして、j=jmax(この例ではj=7)となったら上記ステップSR25の判定が満たされ、このルーチンを終了する。なおこれらステップSR21、ステップSR22、ステップSR25、ステップSR26が、各請求項記載の受信制御手段を構成する。
図18は、上記図15において測位サーバ14の選択部90が実行するステップSS50の詳細手順を表すフローチャートである。
図18において、まずステップSS51では、記憶部86にアクセスし、上記ステップSS40で算出した各基地局12A〜12Dごとの受信信号強度のばらつき状態量(この例では、標準偏差SD)を取得し、ステップSS54に移る。
ステップSS54では、上記ステップSS51で取得した各基地局12A〜12Dごとの標準偏差SDを比較し、各基地局12A〜12Dのうち、上記標準偏差SDが小さい基地局12から順に優先順位を付ける。そして、ステップSS59に移る。
ステップSS59では、上記優先順位に基づき、各基地局12A〜12Dのうち、上記優先順位が高いもの(=標準偏差SDが小さいもの)から順に所定の個数(前述の例では、3つ)の基地局12を選択する。そして、このルーチンを終了する。
なお、上記ステップSS59が、各請求項記載の第1選択手段を構成する。
以上説明したように、本実施形態の無線通信システム8においては、移動局10の制御部32の制御に基づき、無線部28から送信された電波信号が、複数の(前述の例では4つの)基地局12A〜12Dに備えられた無線部28で受信され、このときの電波信号による受信信号強度値が各基地局12A〜12DのRSSI部47で検出される(ステップSR23)。そしてこのとき、前述の手法により切り替えられる複数の周波数での、各基地局12A〜12Dにおける受信信号強度値のばらつき状態量(前述の例では、標準偏差SD)が算出される(ステップSS40)。このとき特に、移動局10から送信される電波信号の複数の周波数への切り替えを、1つの周波数順序列として複数回繰り返すことにより、マルチパス環境下にある基地局12における受信信号強度値のばらつきを確実に検出することができる。そして、上記各基地局12A〜12Dにおける受信信号強度値のばらつき状態量が相対的に小さい基地局12が(測位に使用すべき基地局として)優先して選択される(ステップSS59)。言い換えれば、上記ばらつき状態量が相対的に大きい基地局12は選択されずに除外される。これにより、マルチパス環境の影響が小さい基地局12のみを選択することができるので、移動局10と精度よく正しい通信を行えている基地局12のみを確実に識別することができる。このとき、相関計算を用いて基地局の選択を行う場合のように、基地局12や移動局10の構造の複雑化等を招くことがない。
また、本実施形態では特に、上記選択された基地局12において高精度に算出された受信信号強度値を用いて測位処理を行う(ステップSS60)。これにより、精度よく移動局10の測位を行うことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
(1)ばらつきが同じ時は受信信号強度値の平均値の大きい基地局を選択する場合
すなわち、複数の基地局12に係る上記ばらつき状態量が略等しい場合には、当該基地局12の上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値が大きい基地局12を選択するようにしてもよい。
図19は、本変形例における、基地局12を選択する手法を説明するための説明図である。
図19において、前述したように、基地局12Aにおける標準偏差SDは、上記(2A)の式により、0.12247である。以下同様に、基地局12Bにおける標準偏差SDは0.12570、基地局12Cにおける標準偏差SDは0.38826、基地局12Dにおける標準偏差SDは0.38826となっている。
このとき、本変形例では、上記したように、各基地局12A〜12Dごとに、上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値を算出する。この例では、基地局12Aにおける上記平均値は2.21[nW]、基地局12Bにおける上記平均値は2.22[nW]、基地局12Cにおける上記平均値は2.16[nW]、基地局12Dにおける上記平均値は、1.97[nW]となっている。
そして、本変形例では、複数の基地局12に係る上記標準偏差SDの値が等しい(あるいは所定の近傍範囲で略等しくなっていてもよい)場合には、上記算出した複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値が相対的に大きい基地局12を選択する。
上記の例では、基地局12Cにおける標準偏差SDと、基地局12Dにおける標準偏差SDとが、互いに0.38826と等しい関係にある(上記基地局12の選択の優先順位を付けると等しい順位となる)。この場合、当該基地局12における上記平均値を比較し、上記平均値が相対的に大きい基地局12を上記優先順位が高くなるようにする。すなわち、図19に示す例では、基地局12Cにおける上記平均値は、2.16[nW]であり、基地局12Dにおける上記平均値は、1.97[nW]であるので、基地局12Cと基地局12Dとでは、基地局12Cの方が優先順位が高くなる。
したがって、この場合、図示のように、各基地局12A〜12Dのうち、基地局12Aにおける標準偏差SD(0.12247)が相対的に最も小さく、基地局12Aが上記優先順位1位となり、次に、基地局12B(SD=0.12570)が2位となる。そして、基地局12C(SD=0.38826、平均値=2.16[nW])が3位となり、基地局12D(SD=0.38826、平均値=1.97[nW])が4位となる。
そして、各基地局12A〜12Dのうち、上記優先順位が高いものから順に所定の個数(この例では、3つ)の基地局12を選択する。この例では、基地局12A,12B,12Cの順に3つの基地局12が選択される。
図20は、本変形例における測位サーバ14、基地局12A〜12D、移動局10の間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図であり、上記実施形態の図15に対応する図である。図15と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図20では、図15の測位サーバ14に関するステップSS50に代えてステップSS50′を設け、さらにステップSS40とステップSS50′との間に、新たにステップSS45を設けた点が図15と異なる。
すなわち、ステップSS40において、各基地局12A〜12Dごとに、受信信号強度のばらつき状態量(前述の例では標準偏差SD)を算出したら、新たに設けたステップSS45に移る。
ステップSS45では、測位サーバ14の算出部88が、各基地局12A〜12Dごとに、上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値を算出する(平均値算出手段)。なお、平均値を用いるのではなく、強度変化比[=(最大値−最小値)/平均値]を用いるようにしてもよい。この場合、近くて平均値が大きくても変動が多い(マルチパス大)基地局より、遠くて平均値が小さくても変動が少ない(マルチパス小)方を選ぶことが可能となる。その後、新たに設けたステップSS50′に移る。
ステップSS50′では、測位サーバ14の選択部90が、基地局選択処理(詳細は後述)を実行して、上記複数の基地局12A〜12Dのうち、所定の個数(前述の例では、3つ)の基地局12を選択する。その後、ステップSS60に移る。
その後のステップSS60は、図15と同様であるので説明を省略する。
図21は、本変形例における測位サーバ14の選択部90が実行するステップSS50′の詳細手順を表すフローチャートであり、上記実施形態の図18に対応する図である。図18と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図21に示すフローでは、図18のステップSS51に代えてステップSS51′を設け、さらに、ステップSS54とステップSS59との間に新たにステップSS55とステップSS58とを設けている。
図21では、まず最初に、ステップSS51′において、記憶部86にアクセスし、各基地局12A〜12Dごとの上記標準偏差SD及び複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値を取得する。そして、ステップSS54に移る。
ステップSS54は、図18と同様であり、上記ステップSS51′で取得した各基地局12A〜12Dごとの標準偏差SDを比較し、各基地局12A〜12Dのうち、上記標準偏差SDが小さい基地局12から順に優先順位を付ける。そして、新たに設けたステップSS55に移る。
ステップSS55では、各基地局12A〜12Dのうち、上記ステップSS54で付けた優先順位が等しい(=標準偏差SDが等しい)基地局12があるかどうかを判定する。各基地局12A〜12Dのうち、上記ステップSS54で付けた優先順位が等しい基地局12がなければ、判定が満たされずステップSS59に移る。各基地局12A〜12Dのうち、上記ステップSS54で付けた優先順位が等しい基地局12があれば、ステップSS55の判定が満たされ新たに設けたステップSS58に移る。
ステップSS58では、上記ステップSS51′で取得した、上記ステップSS54で付けた優先順位が等しい基地局12に係る複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値を比較し、上記平均値が大きい当該基地局12から順に改めて優先順位を付けなおす。そして、ステップSS59に移る。
その後のステップSS59は、図15と同様である(本変形例における第1選択手段を構成する)ので説明を省略する。
本変形例によれば、基地局12の受信信号強度値の平均値を求めることにより(ステップSS45)、各基地局12A〜12Dにおける受信信号強度値のばらつきのみならず、受信信号強度値そのものの大小に応じた各種処理が可能となる。具体的には、受信信号強度値の標準偏差SDがほぼ同じ(すなわちマルチパスの影響の度合いがほぼ同じ)基地局12がある場合に、当該基地局12のうち受信信号強度値が大きい基地局12を選択している(ステップSS58,SS59)。この結果、より高精度な測位を行うことができる。
(2)受信信号強度値が小さい基地局を予め選択から除外する場合
すなわち、上記実施形態及び上記(1)の変形例での上記標準偏差SDに基づく基地局12の選択に先立ち、上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値が所定のしきい値未満の基地局12については、上記選択の対象除外とする場合である。
図22は、本変形例における測位サーバ14、基地局12A〜12D、移動局10の間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図であり、上記実施形態の図15、上記(1)の変形例の図20に対応する図である。図15及び図20と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図22では、図20の測位サーバ14に関するステップSS50′に代えてステップSS50″を設けた点が図20と異なる。
すなわち、ステップSS45において、各基地局12A〜12Dごとに、上記複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値を算出したら、新たに設けたステップSS50″に移る。
ステップSS50″では、測位サーバ14の選択部90が、基地局選択処理(詳細は後述)を実行して、上記複数の基地局12A〜12Dのうち、所定の個数(前述の例では、3つ)の基地局12を選択する。その後、ステップSS60に移る。
その後のステップSS60は、図15と同様であるので説明を省略する。
図23は、本変形例における測位サーバ14の選択部90が実行するステップSS50″の詳細手順を表すフローチャートであり、上記実施形態の図18、上記(1)の変形例の図21に対応する図である。図18及び図21と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図23に示すフローでは、図18のステップSS51に代えてステップSS51′を、ステップSS54に代えてステップSS54′を設け、さらに、新たに設けたステップSS51′と新たに設けたステップSS54′との間に新たにステップSS53を設けている。
図23では、まず最初に、ステップSS51′において図21と同様に、記憶部86にアクセスし、各基地局12A〜12Dごとの上記標準偏差SD及び複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値を取得する。そして、新たに設けたステップSS53に移る。
ステップSS53では、各基地局12A〜12Dごとに、上記ステップSS51′で取得した複数の周波数に対応した複数の受信信号強度値の平均値と、所定のしきい値(例えば、2.00[nW])とを比較する。そして、各基地局12A〜12Dのうち、上記平均値が、上記しきい値以上の基地局12のみを選択する(第2選択手段)。そして、新たに設けたステップSS54′に移る。
ステップSS54′では、上記ステップSS53で選択した各基地局12ごとに、上記ステップSS51′で取得した上記標準偏差SDを比較し、当該基地局12のうち、上記標準偏差SDが相対的に小さい基地局12から順に優先順位を付ける。そして、ステップSS59に移る。
その後のステップSS59は、図15と同様である(本変形例における第1選択手段)ので説明を省略する。
本変形例によれば、基地局12における受信信号強度値が所定値より小さくそもそも精度向上があまり期待できない基地局12を、ステップSS59の前に、最終的な選択対象から予め除外しておく(ステップSS53)。これにより、ステップSS59における標準偏差SDに基づく基地局12の選択を、より効率的に行うことができる(特に基地局12の数が多ければ多いほど効果的である)。
(3)その他
以上においては、被測位局として移動可能な移動局10が設けられる場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、上記基地局12のように固定的に配置されるものに対し無線通信を介して測位を行う場合であっても、本発明を適用することができる。この場合も、上記同様、マルチパス環境の影響により生じる受信信号強度値のばらつきを是正して、測位精度を向上することができる。
また、図15〜図18、図20〜図23に示すシーケンスやフローは本発明を図示する手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。