JP5116331B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

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二輪、四輪自動車及び産業用の液式及び密閉式鉛蓄電池の正極の利用率向上と寿命延長が両立された鉛蓄電池に関するものである。
従来、自動車用鉛蓄電池はSLIバッテリーと呼ばれるように、始動時のスタータ起動、照明、イグニションをはじめ、高級車では100個以上搭載されていると言うモーターの電源として使用されて来たが、始動時のスタータ起動以外はエンジンが発電機を駆動して電力を供給するため、鉛蓄電池はさほど深い放電が行われることはなかった。また、発電機からの充電により、多くの場合は満充電状態に置かれるため、過充電に強いことが求められていた。この鉛蓄電池は同時に過充電時のガス発生による電解液の減少を抑制し、補水の手間をなくすメンテナンスフリー性が求められ、正極基板を構成する合金はPb−Sb系合金からPb−Ca系合金に変更された。
その結果、従来の使用条件では、鉛電池は正極格子グロスや正極格子腐食、エンジンルーム内の高温による負極活物質の収縮、そして高温・過充電による電解液の減少等により寿命となった。
この原因の一つは正極基板合金がPb−Sb系からPb-Ca系に変わったことによるものである。Pb-Sb系合金では基板の酸化で生成した5価のSbイオンは格子−活物質界面の密着性を高めたり活物質に作用してその一部をゲル化し、活物質粒子同士の結合性を強化していると言われる。その結果、深い充放電を繰り返しても格子と活物質の剥離や活物質の軟化が抑制されていた。一方、Pb-Ca系合金ではSbで見られたような作用が弱く、深い充放電を繰り返すと活物質が早期に格子から剥離したり軟化して寿命となった。
そこで、これらを防止し、更に正極利用率を向上するために電解液である硫酸水溶液の拡散を良好にすることが試みられる。そこで一般には正極活物質の密度を低くする方法が採られ、黒鉛に硫酸イオンをインターカレートし、後処理によって予め膨張させた膨張化黒鉛を正極活物質に添加することが提案されている(特許文献1)。
更に、Pb−Ca系合金を正極格子に用いた場合の活物質の剥離や軟化脱落を抑制する手段として、正極にSbを付与することが提案されている(特許文献2)。
特開2004−55309号公報 特開昭49−71429号公報
しかしながら、特許文献1に提案される様な膨張化黒鉛を正極活物質に添加した場合は、活物質の破壊はないが、充電中に酸化消失して形成された空孔の影響でやはり活物質が格子から剥離し易く、また軟化脱落して短寿命となる。
更に、特許文献2に提案される様に、正極にSbを付与した場合は、微量であるとは言えSbの付与は負極の水素過電圧を低下させ、充電時にガス発生による電解液の減少を招き、短寿命であると共にメンテナンスフリー性を損なう結果となった。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行い、正極活物質に膨張化黒鉛及びビスマス(Bi)を添加することにより、正極の利用率向上並びに活物質の格子からの剥離と軟化抑制を両立できることを見出した。これらの効果をもたらす理由は明らかではないが以下のように考える。
膨張化黒鉛を添加した正極では充電時にこれが酸化消失して活物質内部に空孔が形成され、この空孔内部も電解液に対して活性な表面として作用し、高い利用率を発揮する。その結果、軟化の進行が促進されることになる。一方、活物質にBiを添加するとBiが正極活物質であるβ−PbO中にドープされると結晶中の水分子を安定化し、局部的に水酸化鉛に変性し、活物質粒子間で糊の役割を果たして軟化を抑制することが知られている。即ち、膨張化黒鉛によって形成された空孔内部では更に電解液の環境がアルカリ性にシフトする傾向があると考えられ、Biのみ添加した場合以上に軟化抑制効果を発揮するものと考えられる。
膨張黒鉛の添加量は正極活物質の0.1質量%以上2質量%以下が良い。0.1質量%未満では添加効果が期待できず、2質量%を越えると添加効果が飽和するとともに、ペーストの調製が困難となる。
Biの添加量は金属純分として正極活物質の0.01質量%以上0.5質量%以下が良い。0.01質量%未満では添加効果が期待できず、0.5質量%を越えると放電特性が低下する傾向が認められる。特に好ましいのは0.01質量%から0.1質量%である。
正極活物質の密度は活物質の物理的結合により軟化を抑制し正極格子の露出による腐食を抑制するという観点から、水置換法で測定した値が3.6g/cc〜4.5g/ccが好適である。3.6g/cc未満では密度が低く軟化が進行し易い。4.5g/ccを越えると密度が高過ぎて利用率が低下し、容量が確保できない。
本発明は、正極の利用率向上と寿命延長が図れ、21世紀において益々重要となる地球環境問題から不可避的に要求される省エネ、自然エネルギーなどの新エネ利用、特に化石燃料消費の多くを占める自動車等の輸送機器の燃費改善に応える、経済的で長期間安定的に作動する鉛蓄電池の改善を提供するものであり、その工業的価値は大きい。
(1)未化成の正極板の製造
酸化鉛100重量部にイオン交換水10重量部、続いて比重1.27の希硫酸10重量部、膨張化黒鉛(粒径100μm〜500μm)を酸化鉛に対し0.5質量%、酸化ビスマスを金属のビスマス(金属純分)として0.05質量%となる様に加えながら混練して正極用ペーストを製造した。ペーストのカップ密度は約144g/2in3に調整した。このペーストをPb−Ca系鉛合金からなる鋳造格子基板に塗布充填し、40℃、湿度95%の雰囲気で24時間熟成し、その後乾燥して未化成板とした。
(2)未化成の負極板の製造
ボールミル法で製造した酸化鉛に、カーボン粉末として比表面積70m/gのアセチレンブラックと硫酸バリウム粉末を添加して乾式混合した。これにリグニンを水溶液として加え、続いてイオン交換水を加えながら混練して水ペーストを調製し、更に比重1.36の希硫酸を加えながら混練して負極活物質ペーストとした。この時に使用したイオン交換水の量は酸化鉛100重量部に対しておよそ10重量部、希硫酸の量は10重量部であった。尚、出来上がったペーストのカップ密度が約140g/2inとなる様にイオン交換水の量を調整した。このペーストをPb−Ca系鉛合金からなる鋳造格子基板に充填し、40℃、湿度95%の雰囲気で24時間熟成し、その後乾燥して未化成板とした。
(3)電池組立、電解液の調製と化成
これらの正極と負極の未化成板を、微細孔セパレータを介して交互に組み合わせ、COS方式で同極性極板同士を溶接して極板群とした。これをポリプロピレン製の電槽に入れ、ヒートシールによってポリプロピレン製の蓋をした。そして、アルミニウムイオンを硫酸塩で0.1mol/l添加した希硫酸電解液を、遊離する電解液が多量存するように注入して電槽化成を行いD23サイズ、50Ah相当の12V鉛蓄電池を作製した。この電池の電解液比重は1.28であった。
(4)容量試験
得られた鉛蓄電池を25℃、5時間率電流で完全充電した後、5時間率電流で放電し容量を測定した。結果を表1に示す。
(5)JIS重負荷寿命試験
得られた鉛蓄電池を25℃、5時間率電流で完全充電した。次に、40℃で20A、1時間定電流放電と5A、5時間定電流充電のJISD5301に準じる重負荷寿命試験を行った。そして、寿命に至るサイクル数を測定した。サイクル数としては150サイクル以上が望ましい。結果を表1に示す。
(6)アイドルストップ寿命試験
得られた鉛蓄電池を25℃、5時間率電流で完全充電した。次に、40℃で50A、59秒間及び300A、1秒間の定電流放電と100A、60秒間、上限電圧14.0Vの定電流・定電圧充電の組合せを1サイクルとするアイドルストップ寿命試験を行った。そして、放電時電圧が7.2V以下になったときを寿命とし、寿命に至るサイクル数を測定した。サイクル数としては30000サイクル以上が望ましい。結果を表1に併せて示す。
Figure 0005116331
表1中、上記の未化成の正極板の製造で記載される方法により得た未化成の正極板を用いた鉛蓄電池を実施例1、その他、正極中の膨張化黒鉛やビスマスの添加量を種種変更したものを実施例2から7として示し、それぞれの添加量は表1に記載の通りである。
更に、比較のために、膨張化黒鉛のみを添加しビスマスを添加しない場合を比較例1から4として示し、膨張化黒鉛の添加量は表1に記載の通りである。
この表1から明らかな通り、膨張化黒鉛とビスマスの両方を添加することで、寿命を向上させることできた。更に容量をも向上することが出来た。
本実施例では正極に重力鋳造格子基板を用いた例を示したが、連続鋳造や圧延、押し出し条を加工したエキスパンド格子基板や打ち抜き格子基板でも同様の効果を得ることができる。また、多量の遊離する電解液を用いる液式鉛蓄電池、極板群に含浸する程度で遊離する電解液の無い密閉式鉛蓄電池に適用することが出来、その用途も自動車用や産業用鉛蓄電池として用いることができる。

Claims (2)

  1. 正極の正極活物質に膨張化黒鉛とビスマスを添加したことを特徴とする鉛蓄電池(但し、充電状態が70%を超え100%未満の中途充電状態で用いられる鉛蓄電池を除く)
  2. 膨張化黒鉛の添加量が正極活物質の0.1質量%以上2.0質量%以下であり、ビスマスの添加量が正極活物質の0.01質量%以上0.5質量%以下である請求項1記載の鉛蓄電池。
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