JP4470381B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鉛蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両用に用いられる鉛蓄電池は、エンジン始動時の電力供給が主な役割であり、ライトやワイパー等の電気的負荷が増大した時には蓄電池が放電してエネルギーを負荷へ供給し、それ以外はオルタネータにより充電がなされる。
【0003】
近年、車両の燃費向上を目的として、エンジン動力で駆動されていた様々な機器類、例えばパワーステアリングやコンプレッサーといった機器を蓄電池からの電力で駆動するシステムや、車両停止時にエンジンを停止させ(アイドルストップ)、その間、蓄電池から電力供給を行うシステムが実用化されるようになってきた。これらの車両では従来の車両に比較して蓄電池の放電はより深く、またその頻度は大幅に増加している。
【0004】
このように深い放電が頻繁に行われる充放電サイクルで鉛蓄電池を使用した場合、活物質の膨張収縮が著しくなる。その結果、負極の反応表面積の低下がより早期に進行し、充電受入性が急速に低下する。これにより負極板に硫酸鉛が蓄積して比較的早期に蓄電池容量は低下する。
【0005】
このような負極活物質の劣化を改善するために、例えば特許文献1には負極活物質に収縮防止剤として添加する硫酸バリウムの平均粒径を0.5μm以上とすることが示されており、平均粒径0.5μmおよび平均粒径0.7μmの硫酸バリウムを負極活物質量に対して1.0〜5.0質量%添加した例が示されている。
【0006】
一方、従来の鉛蓄電池の極板群構成において、単位セルを構成する極板枚数は負極が正極より1枚多くしたものが用いられている。これは負極の枚数を正極の枚数に対して1枚増やすことで、負極の表面積を正極に対して余裕をもたせ、負極の充電受入性を良好に保ちながら、蓄電池の容量低下を抑制して寿命を維持するためである。
【0007】
ところが近年、鉛蓄電池のエネルギー密度向上や軽量化、価格低減や生産性の向上を図るために格子体をPb−Ca系合金の圧延体をエキスパンド加工して得たものを用いるとともに、両極の構成枚数を同一もしくは負極板の枚数を正極板よりも少なくすることが行われるようになった。
【0008】
しかし一方で、このような負極板枚数を削減した構成の鉛蓄電池では負極反応表面積の低下により、蓄電池の容量低下の影響を受けて容量低下を招きやすい。またPb−Ca系合金の圧延体から得た格子体を正極に用いた場合はPb−Ca系合金の鋳造格子を用いた場合に比較して前記したような容量低下がより顕著となるという課題があった。
【0009】
この要因については定かでないが正極格子体としてPb−Ca系合金の圧延体を用いた場合は鋳造体を比較して正極格子−活物質間の電気抵抗が大きく、充電時の正極の分極を増大させるためと考えられる。その結果、正極で増大した分極に対応して充電時の負極電位が貴に移行し、負極が充電不足傾向になり、結果として負極板に受電不能となった硫酸鉛が蓄積し、さらに充電受入性を低下させると推測できる。
【0010】
また、正極格子−活物質間の電気抵抗がPb−Ca系合金の圧延体においてより大きくなる要因については、正極格子に活物質ペーストを充填し、熟成乾燥する過程において生成する正極格子−活物質間の結合強度が鋳造体を用いたものと比較して低下する傾向があること、また、エキスパンド格子といった圧延体から機械加工を経て得た格子体は鋳造体に比較してその表面が平滑であり、正極格子と活物質との接触面積が少なくなる傾向にあること等によるものと推測できる。
【0011】
【特許文献1】
特開2003−36882号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、蓄電池の生産性向上と価格低減を目的として正極格子体にPb−Ca合金の圧延体を用い、単位セルを構成する負極板枚数が正極板枚数以下とした鉛蓄電池において、深い放電を含む充放電が頻繁に繰返した場合に負極活物質の劣化に起因して発生する蓄電池の容量低下を抑制することによって、安価で長寿命の鉛蓄電池を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、Pb−Ca合金の圧延体からなる正極格子体を備え、平均粒径が1.0μm〜6.0μmの硫酸バリウムを負極活物質量に対して0.5質量%〜4.5質量%添加した負極板を用い、かつ、単位セルを構成する負極板枚数(Nn)を正極板枚数(Np)以下としたことを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1の鉛蓄電池において、硫酸バリウムの平均粒径を1.0μm以上、4.0μm以下としたことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による鉛蓄電池の正極板は、Pb−Ca合金の圧延体にエキスパンド加工あるいはパンチング加工等によって活物質を充填する開口部を形成した格子体に正極活物質ペーストを充填したものである。正極活物質ペーストとしては、従来から知られている一酸化鉛を主成分とした鉛粉に水及び硫酸を添加して混合することで得られる。
【0017】
負極格子体には負極活物質ペーストが充填され、負極活物質ペーストは正極と同様に一酸化鉛を主成分とした鉛粉に水及び硫酸を添加後に混合して作製する。この際、鉛粉中に硫酸バリウムを化成終了後の負極活物質に対して0.5質量%〜4.5質量%とする。添加する硫酸バリウムの平均粒径(メジアン径、以降平均粒径と記す。)は1.0μm〜6.0μm、好ましくは1.0μm〜4.0μmとする。
【0018】
硫酸バリウムは4.5質量%を超えて添加しても寿命特性は向上せず、活物質ペースト充填性も低下するため、好ましくない。また、同様に硫酸バリウムの平均粒径も4.0μmを超えるものは硫酸バリウムの効果が低減して寿命特性が低下するために、硫酸バリウムの平均粒径として、上記した1.0μm〜4.0μm範囲内が好ましい。
【0019】
上記で得られた正極板及び負極板を熟成乾燥して未化成板とした後に、両極板をセパレータを介して積層し、同極性の極板耳部を集合溶接した極板群を作製する。なお、極板群を構成する負極板の枚数(Nn)を正極板の枚数(Np)以下とする。この極板群を用い、以降の工程は常法に従うことにより、本発明の鉛蓄電池を得ることができる。
【0020】
この本発明の構成による電池は、深い放電を含む充放電サイクルにおける負極活物質の収縮とこれによる表面積低下を抑制して良好な充電受入性を保つことで、負極活物質中の硫酸鉛蓄積を抑制することによって優れた寿命特性を備えた鉛蓄電池を提供することができる。
【0021】
なお、本発明に用いる正極格子体として、正極における耐過放電性能や正極活物質の結合性改善を目的としてPb−Ca−Sn合金上にSnを1.0〜15質量%あるいはSbを1.0〜10質量%程度のいずれか一方、好ましくは両方を含むPb合金層を正極格子表面に圧着や溶射によって形成したものを用いることができる。また、正極活物質中に硫酸スズや酸化スズ等のスズ化合物を添加することも可能である。
【0022】
【実施例】
本発明例及び比較例による80D26形自動車用鉛蓄電池(以下、電池という)を作製して寿命特性の比較を行った。
【0023】
本発明例及び比較例の電池に用いる正極格子体として、Pb−0.07質量%Ca−1.3質量%Sn合金のスラブ(厚み15mm)を段階的に圧延した圧延鉛シート(厚み1.0mm)をエキスパンド加工して得られたエキスパンド格子体を作成した。またこのエキスパンド格子体と同じ組成の鉛合金を鋳造して鋳造格子体を作成した。これらの格子体に正極活物質ペーストを充填し熟成乾燥を経て未化成状態の正極板を得た。正極活物質は一酸化鉛を75%質量%含み、残部が鉛粉であるボールミル式鉛粉を水と硫酸で混合して得た。
【0024】
また、本発明例及び比較例の電池に用いる負極格子体として、Pb−0.07質量%Ca−0.25質量%Sn合金のスラブ(厚み15mm)を、前記の正極用と同様に圧延した圧延シート(厚み0.8mm)をエキスパンド加工して得た負極格子体を作製した。この負極格子体に負極活物質ペーストを充填し、熟成乾燥して負極板を得た。負極活物質は一酸化鉛を75質量%含み、残部が鉛粉であるボールミル式鉛粉を水と硫酸で混合して得た。なお、本実施例では負極活物質に添加する硫酸バリウムの平均粒径とその添加量を後述する表1に示したように様々に変化させた。
【0025】
セパレータには0.3mm厚の微孔性ポリエチレンシートを用いて、袋状とした。なお、袋状セパレータに収納する極板極性を負極とし、表1に示す構成で本発明例および比較例の電池を作製した。なお、極板構成枚数の変化によっても正極活物質量/負極活物質量の比率を0.95と一定とした。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の各電池について始動用鉛蓄電池で放電が深い充放電が頻繁に行われた場合を想定して以下に示す寿命試験を行った。なお、この寿命試験はJIS D5301で規定された始動用鉛蓄電池の軽負荷寿命試験における放電時間と充電時間を長くしたものである。
【0028】
寿命試験条件
▲1▼放電 25A、6分 (40℃)
▲2▼充電 14.8V(最大電流25A)、15分 (40℃)
▲3▼判定放電 582A 30秒 (25℃)
▲1▼および▲2▼の充放電サイクルを480サイクル毎に▲3▼の判定放電を行う。
【0029】
判定放電時の放電末期電圧が7.2Vまで低下した時点を寿命とする。
【0030】
上記の寿命試験結果を表1に示す。なお、試験結果は電池A−1の寿命サイクルを100とした場合における百分率で表示した。その結果、表1から明らかなように、極板群を構成する負極板枚数(Nn)が正極板枚数(Np)以下とした電池では、負極活物質に添加する硫酸バリウムの添加量が0.5質量%〜4.5質量%であり、硫酸バリウムの平均粒径を1.0μm以上、6.0μm以下とすることにより、良好な寿命サイクル特性を得られることが分かる。但し、硫酸バリウム平均粒径に関しては平均粒径を6.0μmとした場合、寿命特性が低下するため、平均粒径を1.0〜4.0μmの範囲とすることが好ましい。
【0031】
また、極板群を構成する負極板枚数(Nn)が正極板枚数(Np)以下において、比較例の電池(電池B−1〜B−4、電池B−9、電池C−1)は急激に寿命低下する傾向がある。一方、このような極板構成枚数であっても本発明例の電池(電池B−5〜電池B−8、電池B−10〜B−12、電池C−2〜C−4)は良好な寿命特性を示す。したがって、本発明の効果はこのような極板構成枚数の電池により顕著にあらわれる。
【0032】
一方、正極格子体として鋳造格子体を用いた比較例の電池(電池D−1〜D−3)は正極格子体としてエキスパンド格子体を用いて電池と比較して硫酸バリウム粒径および添加量が及ぼす寿命特性の影響は少ない。したがって、本発明の効果はエキスパンド格子体を正極に用いた電池に顕著にあらわれる。
【0033】
寿命試験後の各試験電池について分解調査を行ったところ、比較例の電池において負極板枚数が正極板枚数以下の電池(電池B−1〜電池B−4、電池B−9、電池C−1)は負極板枚数が正極板枚数よりも1枚多い電池(電池A−1)と比較して負極活物質中の硫酸鉛の蓄積がより顕著に進行する傾向にあった。一方、本発明例の電池(電池B−5、電池B−7、電池B−8、電池B−10〜B−12、電池C−2〜C−4)では負極活物質中の硫酸鉛の蓄積は若干見られるものの、前記した比較例の電池と比較すれば軽微であった。なお、これら本発明例の電池はいずれも正極活物質の軟化が顕著に見られた。
【0034】
なお、鋳造格子体を正極に用いた比較例の電池(電池D−1〜D−3)はいずれも正極格子体の腐食が顕著に進行していた。また硫酸バリウムの平均粒径をそれぞれ1.0μm、4.0μmとした電池(電池D−2、電池D−3)は平均粒径を0.7μmとした電池D−1よりも負極活物質中の硫酸鉛の蓄積度合いは緩和されていた。また、それに従い、寿命特性の若干の改善が見られた。鋳造格子体を正極に用いた電池では負極活物質の劣化に先行して正極格子体が腐食により劣化したため、本発明の寿命改善効果はそれほど得られなかった。
【0035】
以上のことから、正極にPb−Ca合金のエキスパンド格子体を用い、極板群を構成する負極板の枚数(Nn)を正極板の枚数(Np)以下、かつ負極活物質中に添加する硫酸バリウムの平均粒径を1.0μm以上、6.0μm以下、好ましくは1.0μm〜4.0μmの範囲とし、その添加量を負極活物質量に対して0.5質量%〜4.5質量%とすることにより、負極活物質中の硫酸鉛の蓄積を抑制し、これに起因する蓄電池寿命の低下を抑制することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本発明の構成によれば、生産性にすぐれたPb−Ca合金のエキスパンド格子体といった、Pb−Ca合金の圧延体正極に用い、極板群を構成する負極板の枚数(Nn)を正極板の枚数(Np)以下とした鉛蓄電池においても、深い放電が入る充放電サイクルでの負極活物質の劣化による寿命低下を抑制することができる。したがって、本発明は寿命特性にすぐれた鉛蓄電池を生産性よく、安価に提供できることから、工業上、極めて有用である。
Claims (2)
- Pb−Ca合金の圧延体からなる正極格子体を備え、平均粒径が1.0μm以上、6.0μm以下の硫酸バリウムを負極活物質量に対して0.5質量%〜4.5質量%添加した負極板を用い、かつ、単位セルを構成する負極板枚数(Nn)を正極板枚数(Np)以下としたことを特徴とする鉛蓄電池。
- 前記硫酸バリウムの平均粒径を1.0μm以上、4.0μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
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