JP5115940B2 - 旋網およびこれを用いた操業方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、旋網およびこれを用いた操業方法に係り、特に、長尺な網本体によって魚群を包囲しつつ漁獲するのに好適な旋網およびこれを用いた操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、漁法の一種として、魚群を包囲するようにして円形に網を設置し、網裾を締めて下方から魚群が脱出するのを防止するとともに、囲いを次第に狭めて魚群を漁獲する旋網漁法が採用されている。
【0003】
図17は、このような旋網漁法に用いられている旋網1を示したものであり、この旋網1は、略矩形状の長尺な網本体2を有しており、この網本体2は、大手部2a、身網部2bおよび魚捕部2cの範囲に区分けされている。
【0004】
前記網本体2の図17における上端部には、網本体2に一定の浮力を付与する複数の浮子4が、長手方向に所定の間隔を設けて配設されている。
【0005】
一方、前記網本体2の図17における下端部には、網本体2に一定の重力を付与することによってこの網本体2を海中に沈めるための沈子5が配設されている。
【0006】
従って、海中において、前記網本体2は、その沈子5側の端部が下になり、浮子4側が上になった状態で立つことができるようになっている。
【0007】
このため、網本体2を図18に示すように魚群の周囲に円筒状に張り巡らせることができ、魚群を包囲しつつ漁獲することができるようになっている。
【0008】
前記網本体2の前記沈子5側の端部には、環吊綱11を介して複数の環状のパースリング7が、長手方向に所定の間隔を設けて配設されている。
【0009】
そして、前記パースリング7には、長尺な紐状のパースライン8が貫通されており、このパースライン8によって網本体2の前記沈子5側の端部を含めた沈子側縁部9を絞ることにより、魚群が包囲網から逃げるのを防止することができるようになっている。
【0010】
また、前記網本体2の大手側の端部には、網本体2に牽引力を付与して揚網を行うための紐状の大手綱10が配設されている。
【0011】
さらに、前記網本体2には、必要に応じて、船首絞り綱12、もやい綱13(図20参照)および船首浮子寄せ綱14等の種々の綱が配設されるようになっている。
【0012】
このような構成を有する旋網1を用いた操業は、図19に示す種々の装備を搭載した漁船16によって行われるようになっている。
【0013】
前記漁船16は、投網補助手段としてのレッコボート17を備えており、このレッコボート17は、海上において所定の投網位置を確保するようになっている。
【0014】
また、前記漁船16は、投網手段として、大手綱の牽引を行う大手巻ウインチ18と、曳綱の操作を行う船首浮子兼もやいウインチ19および船首立ローラ21とを備えている。
【0015】
さらに、前記漁船16は、沈子側縁部9を絞るための手段として、パースライン8の操作を行うためのパースウインチ22、起立式ダビット23、環巻ウインチ24および旋回式ワイヤリール25を備えている。
【0016】
この他に、前記漁船16は、揚網手段としてのネットホーラ26、揚網および整反手段としての網捌機28、および魚締め手段としてのサイドホーラ29等を備えている。
【0017】
次に、このような漁船16によって前記旋網1を用いた操業を行う場合は、まず、図20に示すように、投網の補助を行うためのレッコボート17に、もやい綱13、船首浮子寄せ綱14、船首絞り綱12およびパースライン8を取り付け、これを曳航して投網の機会をうかがう。そして、投網を開始する場合は、もやい綱13のストッパフックを解除した後、レッコボート17を後進させることによってこのボート17を投網位置に保持する。
【0018】
次に、旋網1を船上から繰り出しつつ漁船16を魚群6の周囲を取り囲むようにして周状に進行させる。なお、このとき、レッコボート17は所定の投網位置に静止した状態になっている。
【0019】
漁船16が魚群6の周囲を周回し終え、図21に示すようにレッコボート17に近接したところで漁船16の進行を停止する。このとき、旋網1の網本体2は魚群6の周囲を筒状に囲繞した状態になる。
【0020】
次に、もやい綱13、船首浮子寄せ綱14、船首絞り綱12およびパースライン8のそれぞれの端部をレッコボート17から漁船16側に受け取り、パースライン8を環巻ウインチ24に、船首絞り綱12を船首立ローラ21に、そして、船首浮子寄せ綱14を浮子兼もやいウインチ19にそれぞれ連結する。
【0021】
各綱の連結が完了した後、レッコボート17のそれぞれの綱に対応するストッパフックを解除し、旋網1とレッコボート17との連結を解除する。これにより、後続のパースライン8の巻き込み及び揚網のための準備が完了する。
【0022】
そして、パースライン8の巻き込みを行うには、図22に示すように、前記旋網1の配置側に対向する漁船16の裏側に、付属船(図示せず)を配置し、この付属船と漁船16とを裏漕綱30で連結する。
【0023】
前記漁船16と前記付属船とを連結した後、この付属船を旋網1の配置位置と逆方向に進行させる裏漕を行いつつ、図22に示すように環巻ウインチ24によってパースライン8の巻き込み操作を行う。これにより、パースライン8の巻き込みあるいは揚網時に漁船16が旋網1や魚群6の重さによって旋網の配置方向に転覆することを防止することができるようになっている。
【0024】
前記パースライン8の巻き込みの際に、前記網本体2の沈子側縁部9は、パースライン8によって巾着の開口のように絞られることとなるため、魚群6を包囲していた網本体2は、筒状の形状から、底部側の開口を徐々に閉じられた形状に変形する。このため、魚群が旋網1の底部から逃げるのを防止しつつ漁獲を行うことができる。
【0025】
そして、前記パースライン8の巻き込みを続け、パースリング7がダビット23まで揚がった時点でダビット23を倒し、パースリング7を船内に引き込む。
【0026】
次に、魚捕側の浮子方端を図23における右舷側に移した後、ストッパロープ31を大手側に連結してストッパフックをかける。そして、揚網ガイドロープ32を網捌機28およびネットホーラ26に通した後、これを網本体2の大手側端部に連結する。
【0027】
さらに、大手綱10を網本体2の大手側端部から取り外した後、揚網ガイドロープ32を巻き取りながら図24に示すようにネットホーラ26を右舷側に移動する。
【0028】
この状態で揚網ガイドロープ32の巻き取りを継続し、ガイドロープ32に強力な張力が掛かった時点で、ストッパロープ31を掛けたストッパフックを解除する。
【0029】
そして、前記ストッパフックの解除後、揚網を開始する。このとき、魚捕側を固縛し、絞り綱12を抜き取り、また、船首浮子寄せ綱14を浮子兼もやいウインチ19から引き出しておく。
【0030】
図25に示すように、揚網動作においては、ネットホーラ26および網捌機28にて揚網された漁具を、次回の投網に支障がないように船体上に整反する。このとき、揚網の進行につれ、船尾側の環吊綱11から順にネットホーラ26に牽引されて張力がかかる。この張力により、環吊綱11とパースリング7との締結状態が解かれ、パースリング7から環吊綱11が離脱する。この離脱した環吊綱11は、浮子綱14と一緒に船体上に揚がる。
【0031】
そして、船体上に揚がった環吊綱11を船尾サイドホーラ29下部にセットしたパースリング7に順次連結する。
【0032】
次に、図26に示すように魚締めを行う場合は、魚締めを行うだけの網地を残し、ネットホーラ26による揚網を中止する。このとき、どれだけの網地を残すかは、漁獲量等に応じて適宜判断する。
【0033】
ネットホーラ26による揚網を中止した後、網地(網本体2)の沈子側端部をサイドホーラ29に乗せ、サイドホーラ29を作動させることによって、沈子側端部から浮子側端部に向かって順に網地を船内に取り込む。そして、パースライン8をパースブロックから脱し、パースダビットを格納する。
【0034】
次に、魚汲みを行う場合は、図27に示すように、前記漁船16の網地を挟んだ対向位置に運搬船33を位置させ、この運搬船33によって、まず、海面から網本体2の浮子側端部を吊り上げて舷側に固縛する。そして、漁船16と運搬船33とをもやい綱13によって連結し、同時に運搬船33に対して漁船16とは逆方向の裏漕を行う。これにより、両船の距離を適度に保つことができる。なお、このとき、サイドホーラ29による揚網は、魚群6の密度が魚汲み可能となるまで継続する。そして、魚群の密度が濃くなったところで、すくい網15によって魚を運搬船33内に取り込む。
【0035】
最後に、漁獲後に再投網の準備を行う場合は、まず、漁船16側から網本体2の魚捕側端部を離してサイドホーラ29を逆転するとともに、運搬船33は、舷側に固縛した網本体2の浮子側端部を一カ所を除いて放した後、漁船16から離れる。これにより、サイドホーラ29によって揚網されていた網地が図28に示すように海中に引き出される。そして、海中に引き出された網地をネットホーラ26によって揚網し、船体上にて整反する。
【0036】
次に、旋回式ワイヤリール25に巻き取られたパースライン8を、パースウインチ22に移した後、パースリング7をパースライン8から抜き取って船尾サイドホーラ11下部にセットする。
【0037】
そして、船首浮子寄せ綱14及び船首絞り綱12を船尾に移し、それぞれを網本体2の魚捕側端部に連結した後、網本体2の大手側端部への大手綱10への連結、ネットホーラ26の左舷側への移動を行い、最後に起立式ダビット23を起こすことによって再投網準備が完了する。
【0038】
以上の方法により旋網1を用いた一連の操業が行われるようになっていた。
【0039】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の旋網1においては、包囲網からの魚群6の逃避を防止する観点から、網本体2の網目1aの大きさを一律に小さく形成していた。また、従来は、パースライン8を網本体2の沈子側縁部9の全長にわたる長さに形成していた。
【0040】
このため、網本体2やパースライン8に要する費用が高くなり、これにともなって旋網1の単価が高価になってしまうといった問題が生じていた。
【0041】
さらに、網目1aの大きさが小さいことにともなって、旋網1の質量が大きくなってしまうため、操業にもおのずと多くの装備や人員を要し、効率的な操業が困難であるといった問題が生じていた。
【0042】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、旋網のコストを低廉化することができるとともに、装備や人員を削減し、効率的な操業を実現することのできる旋網およびこれを用いた操業方法を提供することを目的とするものである。
【0043】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の請求項1に係る旋網の特徴は、前記身網部のうち、大手側の所定範囲の身網部の網目を、この範囲を除いた魚捕側の身網部の網目よりも大きく形成し、前記パースラインを、前記沈子側縁部の魚捕側から大手側に向けて、この沈子側縁部の全長よりも短い長さにわたって配設し、このパースラインの大手側端部を、当該大手側端部に対応する前記沈子側縁部の対応位置に接続した点にある。
【0044】
そして、このような構成を採用したことにより、魚群を最終的に漁獲するために重要な役割を有する魚捕側の身網部の網目と異なり、網目を大きく形成しても実用上問題の少ない大手側の身網部の網目を魚捕側の身網部の網目よりも大きく形成することにより、網地のコストを安価にすることができ、また、パースラインの長さを短く形成することにより、パースラインに要するコストを安価にすることができるため、旋網全体に要するコストを低廉化することができ、その上、旋網の重さを軽減することによって操業に要する人員や装備を低減し、効率的な操業を行うことができる。
【0045】
請求項2に係る旋網の特徴は、請求項1において、前記パースラインの大手側端部を、前記大手側の所定範囲の身網部と、前記魚捕側の身網部との境界に対応する沈子側縁部の対応位置に接続した点にある。
【0046】
そして、このような構成を採用したことにより、漁獲のために必要最低限の範囲までパースラインを形成することにより、漁獲を適正に行いつつ旋網のコストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0047】
請求項3に係る旋網の特徴は、請求項2において、前記対応位置を、前記沈子側縁部の魚捕側端部と大手側端部とのほぼ中間位置に接続した点にある。
【0048】
そして、このような構成を採用したことにより、パースラインの長さを従来の半分近くに低減することができるため、さらに有効に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0049】
請求項4に係る旋網の特徴は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成した点にある。
【0050】
そして、このような構成を採用したことにより、大手側の身網部の網目をさらに大きく形成することができるため、漁獲のために実用上支障が生じない限度において、さらに有効に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0051】
請求項5に係る旋網の特徴は、請求項1乃至請求項のいずれか1項において、前記網目を魚捕側から大手側へ向かって漸次あるいは段階的に大きく形成するとともに前記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成した点にある。
【0052】
そして、このような構成を採用したことにより、最終的な漁獲のための重要度が低くなるにつれて身網部の網目の大きさを徐々に大きくすることができるため、コストの低廉化および旋網の軽量化を図りつつ、さらに適正な漁獲を行うことが可能となる。更に、大手側の身網部の網目をさらに大きく形成することができるため、漁獲のために実用上支障が生じない限度において、さらに有効に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0053】
請求項6に係る旋網を用いた操業方法の特徴は、前記身網部のうち、大手側の所定範囲の身網部の網目を、この範囲を除いた魚捕側の身網部の網目よりも大きく形成し、前記パースラインを、前記沈子側縁部の魚捕側から大手側に向けて、この沈子側縁部の全長よりも短い長さにわたって配設し、このパースラインの大手側端部を、当該大手側端部に対応する前記沈子側縁部の対応位置に接続した状態で、前記パースラインの巻込み及び前記揚網を行う点にある。
【0054】
そして、このような方法を採用したことにより、網目を大きく形成しても実用上問題の少ない大手側の身網部の所定範囲の網目を、魚捕側の身網部の網目よりも大きく形成することにより、網地のコストを安価にすることができ、また、パースラインの長さを短く形成することにより、パースラインに要するコストを安価にすることができるため、旋網全体に要するコストを低廉化することができ、その上、網本体の重さを軽減することによって操業に要する人員や装備を軽減し、効率的な操業を行うことができる。
【0055】
請求項7に係る旋網を用いた操業方法の特徴は、請求項6において、前記パースラインの大手側端部を、前記大手側の所定範囲の身網部と、魚捕側の身網部との境界に対応する沈子側縁部の対応位置に接続する点にある。
【0056】
そして、このような方法を採用したことにより、漁獲のために必要最低限の範囲までパースラインを形成することにより、漁獲を適正に行いつつ旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0057】
請求項8に係る旋網を用いた操業方法の特徴は、請求項7において、前記対応位置を、前記沈子側縁部の、魚捕側端部と大手側端部とのほぼ中間位置に接続する点にある。
【0058】
そして、このような方法を採用したことにより、パースラインの長さを従来の半分にすることができるため、さらに有効に製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0059】
請求項9に係る旋網を用いた操業方法の特徴は、請求項6乃至請求項8のいずれか1項において、前記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成する点にある。
【0060】
そして、このような方法を採用したことにより、大手側の身網部の網目をさらに大きく形成することができるため、魚捕のために実用上支障が生じない限度において、さらに有効に旋網のコストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0061】
請求項10に係る旋網を用いた操業方法の特徴は、請求項6乃至請求項のいずれか1項において、前記網目を魚捕側から大手側へ向かって漸次あるいは段階的に大きく形成するとともに前記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成する点にある。
【0062】
そして、このような構成を採用したことにより、最終的な漁獲のための重要度が低くなるにつれて身網部の網目の大きさを徐々に大きくすることができるため、コストの低廉化および旋網の軽量化を図りつつ、さらに適正な漁獲を行うことが可能となる。更に大手側の身網部の網目をさらに大きく形成することができるため、魚捕のために実用上支障が生じない限度において、さらに有効に旋網のコストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0063】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る旋網の実施形態を図1乃至図16を参照して説明する。
【0064】
なお、従来と基本的構成の同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0065】
図1は、本実施形態における旋網35を示す展開図である。
【0066】
図1に示すように、本実施形態における旋網35は、平面略矩形状の網本体36を有しており、この網本体36のうち、図1における右端部側は、魚群6を威嚇して所定の漁獲位置に追い込むための大手側とされており、この大手側は、揚網の際の負荷の低減等の観点から、通常は、網本体36のうちで網目が最も大きく形成されるようになっている。前記網本体36の大手側の端部に配設された三角網37の先端部には、長尺な大手綱10が配設されており、この大手綱10に対して牽引力を付与することによって、旋網35の揚網を行うことができるようになっている。
【0067】
一方、前記網本体36のうち、図1における左端部側は、大手側によって追い込まれた魚群を魚獲するために主要な機能を果たす魚捕側とされており、かかる機能の観点から、前記魚捕側は、通常、網本体36のうちで網目が最も小さく形成されるようになっている。この魚捕側には、三角網38を介して投網位置を確保するための抵抗体39が取り付けられている。また、前記網本体36の図1における上端部には、この上端部に浮力を付与するための複数の浮子4が、上端部の長手方向に所定の間隔を設けて配設されている。
【0068】
そして、前記網本体36のうち、前記大手側と魚捕側との間に挟まれた最も平面積の広い範囲は、身網部とされており、この身網部によって魚群を円環状に包囲しつつ漁獲を行うようになっている。
【0069】
本実施形態においては、図1に示すように、身網部のうち、図1に示す破線よりも右側である大手側の所定範囲の身網部の目合、すなわち菱形形状の各網目40の対角線方向の寸法が、前記大手側の所定範囲を除いた魚捕側の身網部の目合よりも大きく形成されている。
【0070】
前述したように、旋網35の大手側は、魚群6を威嚇して魚捕側に追い込むことを主要な機能としているが、この大手側に隣接する所定範囲の身網部についても、いちはやく揚網がなされ、漁獲の最終段階に至るまで漁獲物に関与することはないため、その主要機能は、大手側と同様に魚群の威嚇であるということがいえる。
【0071】
従って、前記大手側の所定範囲の身網部についても、魚群に対する威嚇としての機能を発揮し得る大きさであれば、魚群6を最終的に漁獲するために重要な役割を有する魚捕側の身網部ほど目合を小さく形成する必要性も薄いと考えることができる。
【0072】
仮に、目合を魚の体高より大きくしたとしても、目合が600mm程度の大きさであれば、魚は包囲網の外側に逃げることは少ないといった習性も実験上知られている。
【0073】
このため、本実施形態においては、大手側の所定範囲の身網部の目合を大きく形成することによって漁獲を適正に行いつつ網本体36に要するコストの低廉化および軽量化を図ることができるようになっている。
【0074】
なお、図1に示すように、大手側の目合、魚捕側の目合を、それぞれ一様な大きさに形成するようにしてもよいし、また、図2に示すように、魚捕側の端部から大手側の端部に向かって漸次あるいは段階的に目合を大きく形成するようにしてもよい。かかる場合、最終的な漁獲のための重要度が低くなるにつれて身網部の網目の大きさを徐々に大きくすることができるため、コストの低廉化および旋網の軽量化を図りつつ、より良好な漁獲率を得られるであろうことが予想される。
【0075】
また、本実施形態において、網本体36の沈子側縁部9を絞るためのパースライン42は、従来のように網本体2の沈子側縁部9の全長にわたる長さには形成されておらず、図1に示すように、網本体36の魚捕側端部に配設された三角網38の先端から、大手側に向けて沈子側縁部9の全長よりも短い長さにわたって配設されている。
【0076】
そして、前記パースライン42の大手側端部(図1における右端部)は、この大手側端部に対応する沈子側縁部9の対応位置に接続されている。
【0077】
すなわち、前述したように、大手側の所定範囲の身網部は、魚群6に対する威嚇として機能すればよく、沈子側縁部9を絞る必要があるのは、袋網3への漁獲物の汲み上げ段階に至るまで魚群に関与する魚捕側の身網部であると考えれば、大手側の身網部に至るまでパースライン42を延在させなくても実用上問題が少ないと言える。
【0078】
むしろ、本実施形態のようにパースライン42の長さを短くすることによって、パースライン42に要するコストを低減し、旋網35全体の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができるようになっている。また、旋網35の軽量化は、揚網の際に漁船43に作用する負荷を低減することにつながるため、漁船43の転覆を防止しつつ操業を安全に行うことができる。
【0079】
なお、前記パースライン42の大手側端部の接続位置は、図1に示すように、目合が大きく形成された前記大手側の所定範囲の身網部と、目合が小さく形成された魚捕側の身網部との境界に対応する位置であってもよい。これにより、パースライン42を、適正な漁獲を行うため必要最低限とされる範囲にわたる長さに形成することができるため、さらに有効にコストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0080】
また、これに限らず、例えば、前記パースライン42の大手側端部を、前記沈子側縁部9の魚捕側端部と大手側端部とのほぼ中間位置に接続するようにしてもよい。これにより、パースライン42の製造コストおよび重さを従来の半分にすることができる。
【0081】
次に、前記旋網35を適用した本発明に係る旋網35を用いた操業方法の実施形態について説明する。
【0082】
本実施形態においては、図3および図4に示す漁船43を用いて操業を行う。
【0083】
この漁船43は、従来と同様に、パースライン42の巻き込みを行うパースウインチ45や、縦ローラ46、ボラード47、ストッパフック48および三方ローラ49等の種々の装備を有している。ただ、本実施形態においては、網本体36を軽量化することができるため、網の牽引は、船尾側に配設された簡易なボールローラ50によって大手綱10を挟持した状態で行うことができるようになっている。また、本実施形態においては、操業は、2〜5名程度の少人数で行うことができる。
【0084】
まず、図4に示す投網準備段階において、船尾側に、本実施形態における旋網35を装備しておく。
【0085】
この状態から投網を開始する場合は、図5に示すように、海上に抵抗体39を浮かべて所定の投網位置を確保するとともに、漁船43を進行させて魚群6の周囲を周回させつつ旋網35を魚捕側の端部から先に順次海上に繰り出す。
【0086】
すなわち、このとき、網目が細密に形成された魚捕側を先に海上に繰り出し、網目が大きく形成された大手側を後に繰り出すことになるが、一般に、漁網は、網目が細かいほど流水抵抗が大きくなるため海中への沈降速度が遅くなり、一方、網目が大きいほど流水抵抗が小さくなるため沈降速度が速くなるようになっている。従って、本実施形態においては、沈降速度が遅い魚捕側を先に海上に繰り出し、沈降速度が速い大手側を後に繰り出すことにより、旋網35全体の沈降速度を均一化することができる。
【0087】
そして、漁船43が魚群6の周囲を一周して船首が抵抗体39の位置まで到達したら、漁船43の移動を終了し、図6に示すように抵抗体39を船首左舷側において取り込む。
【0088】
その後、船尾右舷の縦ローラ46によって魚捕側の三角網38を船体に近づけ、これをストッパフック48に連結する。
【0089】
前記投網の終了後、図7に示すようにパースライン42の巻き込みと、揚網の準備を行う。すなわち、船尾側のボールローラ50によって大手綱10を挟持し、また、パースライン42の魚捕側端部をパースウインチ45に接続されたパースライン元綱51に連結する。
【0090】
次に、図8に示すように、パースウインチ45の駆動によってパースライン42の巻き込みを行いつつ前記ボールローラ50の駆動によって大手側の揚網を行う。このとき、パースライン42は、図9に示すようにパースライン42と沈子側縁部9との接続点の位置まで巻き込みを行う。また、船尾側の揚網は、パースライン42の巻き込みとの関係を考慮して、図10に示すように予め旋網に付された揚網中止マーク52の位置まで行う。
【0091】
パースライン42の巻き込みが終了したら、図11および図12に示すように、パースリング7にリングニードル53を貫通させ、その後、このリングニードル53をデリック54に吊り上げる。このリングニードル53を貫通させた後は、パースライン42にかかった張力は緩める。
【0092】
次に、図13および図14に示すように、パースウインチ45を巻き込み時と逆方向に回転させてパースライン42の繰り出しを行いつつ揚網を再開する。これにより、揚網が進行するにつれてパースライン42の接続点が船上に引き上げられた状態を保ちながら船尾側へ移行することができるため、沈子側縁部9からの漁獲物の逃避を防止することができる。
【0093】
そして、揚網がある程度まで終了した後に、図15に示す魚締めを行う。すなわち、まず、船首において魚捕側の三角網38を離脱させて、袋網3を船尾に移す作業を行う。このとき、前記魚捕側の三角網38は、漁獲物が逃避しないように船上に上げた状態で船尾に移す。なお、パースライン42は、袋網3が船尾に移るまでパースウインチ45の元綱51に連結し続ける。
【0094】
魚締めが完了した後、図16に示す魚汲みを行う。すなわち、漁獲物が袋網3に移るように操網を行う。このとき、漁獲物は、ボールローラ50によって船内に取り込まれる。ここで、従来は、運搬船33と漁船16との間に網地を挟んだ状態でしかも裏漕を行いつつ魚汲みを行う必要があったが、本実施形態においては、旋網35の軽量化にともなって従来のような大規模な魚汲みを行う必要がなく、小規模で効率的な漁獲を行うことができる。
【0095】
最後に、パースライン42、パースリング7を再度投網ができるように整理する。その後、投網を行う場合は、抵抗体39を魚捕側の三角網38に連結すればよい。
【0096】
これにより、本実施形態における旋網35を用いた一連の操業が完了する。
【0097】
したがって、本実施形態によれば、大手側の所定範囲の身網部の網目を魚捕側の身網部の網目よりも大きく形成し、パースライン42を、沈子側縁部9の魚捕側端部から大手側に向けて沈子側縁部9の全長よりも短い長さにわたって形成し、このパースライン42の大手側端部を前記沈子側縁部9の対応位置に接続したことにより、網地およびパースライン42に要するコストを安価にすることができ、また、網本体35の重さを軽減することによって操業に要する人員や装備を軽減し、小規模で安全かつ効率的な操業を行うことができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、沈降速度が遅い魚捕側を先に海上に繰り出し、沈降速度が速い大手側を後に繰り出すことにより、旋網35全体の沈降速度を均一化することができるため、より適正な旋網操業を実現することができる。
【0099】
なお、本発明は前記実施形態のものに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0100】
例えば、前記大手側の所定範囲の身網部と、魚捕側の身網部との境界線は、図1および図2の破線に示したように直線状に限る必要はなく、例えば傾斜あるいは階段状に境界を区分するようにしてもよい。
【0101】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の請求項1に係る旋網によれば、旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができ、ひいては操業に要する人員や装備を軽減して安全かつ効率的な操業を行うことができる。
【0102】
請求項2に係る旋網によれば、請求項1に係る旋網の効果に加えて、漁獲を適正に行いつつ旋網のコストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0103】
請求項3に係る旋網によれば、請求項2に係る旋網の効果に加えて、さらに効果的に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0104】
請求項4に係る旋網によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る旋網の効果に加えて、さらに有効に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0105】
請求項5に係る旋網によれば、請求項1乃至請求項のいずれか1項に係る旋網の効果に加えて、旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図りつつさらに適正な漁獲を行うことが可能となり、さらに有効に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0106】
請求項6に係る旋網を用いた操業方法によれば、旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができ、ひいては操業に要する人員や装備を軽減して安全かつ効率的な操業を行うことができる。
【0107】
請求項7に係る旋網を用いた操業方法によれば、請求項6に係る旋網を用いた操業方法の効果に加えて、漁獲を適正に行いつつ旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0108】
請求項8に係る旋網を用いた操業方法によれば、請求項7に係る旋網を用いた操業方法の効果に加えて、さらに効果的に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0109】
請求項9に係る旋網を用いた操業方法によれば、請求項6乃至請求項8のいずれか1項に係る旋網を用いた操業方法の効果に加えて、さらに有効に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【0110】
請求項10に係る旋網を用いた操業方法によれば、請求項6乃至請求項のいずれか1項に係る旋網を用いた操業方法の効果に加えて、旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図りつつさらに適正な漁獲を行うことが可能となり、さらに有効に旋網の製造コストの低廉化および軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る旋網の実施形態を示す展開図
【図2】 本発明に係る旋網の実施形態において、図1の他の実施形態を示す展開図
【図3】 本発明に係る旋網を用いた操業方法を実施するための漁船を示す側面図
【図4】 図3に示した漁船の平面図
【図5】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、投網開始状態を示す図
【図6】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、投網終了状態を示す図
【図7】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、パースラインの巻き込みおよび揚網の準備状態を示す図
【図8】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、パースラインの巻き込みおよび揚網状態を示す図
【図9】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、パースラインの巻き込み終了状態を示す図
【図10】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、パースラインの巻き込み終了状態を示す図
【図11】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、パースリングの処理状態を示す図
【図12】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、図11の次工程におけるパースリングの処理状態を示す図
【図13】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、揚網の再開を示す図
【図14】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、揚網の再開を示す図13の次工程の図
【図15】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、魚締め状態を示す図
【図16】 本発明に係る旋網を用いた操業方法の実施形態において、魚汲み状態を示す図
【図17】 従来から使用されている旋網の一例を示す展開図
【図18】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法の一例を示す図
【図19】 従来から採用されている旋網を用いた操業を行うための漁船を示す平面図
【図20】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、投網準備状態を示した図
【図21】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、投網終了状態を示す図
【図22】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、環巻き状態を示す図
【図23】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、環巻き終了状態を示す図
【図24】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、揚網準備状態を示す図
【図25】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、揚網状態を示す図
【図26】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、魚締め状態を示す図
【図27】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、魚汲み状態を示す図
【図28】 従来から採用されている旋網を用いた操業方法において、再投網準備状態を示す図
【符号の説明】
4 浮子
5 沈子
6 魚群
7 パースリング
35 旋網
36 網本体
40 網目
42 パースライン

Claims (10)

  1. 所定の大きさの網目が形成され、大手側から身網部を経て魚捕側に至る長尺状に形成された網本体を有し、この網本体を海中に沈めるための沈子が配設された前記網本体の沈子側縁部に、この沈子側縁部を揚網の際に絞るためのパースラインを前記沈子側縁部に沿うように配設した旋網において、前記身網部のうち、大手側の所定範囲の身網部の網目を、この範囲を除いた魚捕側の身網部の網目よりも大きく形成し、前記パースラインを、前記沈子側縁部の魚捕側から大手側に向けて、この沈子側縁部の全長よりも短い長さにわたって配設し、このパースラインの大手側端部を、当該大手側端部に対応する前記沈子側縁部の対応位置に接続したことを特徴とする旋網。
  2. 前記パースラインの大手側端部を、前記大手側の所定範囲の身網部と、前記魚捕側の身網部との境界に対応する沈子側縁部の対応位置に接続したことを特徴とする請求項1に記載の旋網。
  3. 前記対応位置を、前記沈子側縁部の魚捕側端部と大手側端部とのほぼ中間位置に接続したことを特徴とする請求項2に記載の旋網。
  4. 前記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の旋網。
  5. 前記網目を魚捕側から大手側へ向かって漸次あるいは段階的に大きく形成するとともに記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の旋網。
  6. 所定の大きさの網目が形成され、大手側から身網部を経て魚捕側に至る長尺状に形成された網本体の沈子側縁部にパースラインを設けた旋網を、魚群の周囲に環状に配置した後、前記パースラインの巻込みおよび網本体の揚網を行うことにより、前記沈子側縁部を絞りつつ前記網本体に包囲された魚群の漁獲を行う旋網を用いた操業方法において、前記身網部のうち、大手側の所定範囲の身網部の網目を、この範囲を除いた魚捕側の身網部の網目よりも大きく形成し、前記パースラインを、前記沈子側縁部の魚捕側から大手側に向けて、この沈子側縁部の全長よりも短い長さにわたって配設し、このパースラインの大手側端部を、当該大手側端部に対応する前記沈子側縁部の対応位置に接続した状態で、前記パースラインの巻込み及び前記揚網を行うことを特徴とする旋網を用いた操業方法。
  7. 前記パースラインの大手側端部を、前記大手側の所定範囲の身網部と、魚捕側の身網部との境界に対応する沈子側縁部の対応位置に接続することを特徴とする請求項6に記載の旋網を用いた操業方法。
  8. 前記対応位置を、前記沈子側縁部の、魚捕側端部と大手側端部とのほぼ中間位置に接続することを特徴とする請求項7に記載の旋網を用いた操業方法。
  9. 前記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の旋網を用いた操業方法。
  10. 前記網目を魚捕側から大手側へ向かって漸次あるいは段階的に大きく形成するとともに前記大手側の所定範囲の身網部の網目を漁獲対象となる魚の体高よりも大きく形成することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の旋網を用いた操業方法。
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