複数のPONシステムにおいて光ファイバを共有する場合に生じる、あるシステムにおけるレンジング処理がもたらす併設された他システムへの影響及び通信中のデータへの影響を最小限に抑えることを目的とする。そのためファイバ共有しているPONシステム間で各システムのPON区間通信タイミングを相互に共有する仕組みを実現した。これによりPON基本機能を保持しながら、複数PONの運用を効率化できる。PON併設の形態には複数のバリエーションが考えられるが、本案はその全ての構成に適用できる。
複数のPONが光ファイバを共有した形で併設される場合のシステム構成には、複数のバリエーションが考えられる。例えば、複数のPONが共通の上り波長を用いる場合や、共通の下り波長を用いる場合である。それらの組合せにより構成されるシステムは、上り通信と下り通信で用いられる波長の組合せ別に大別して4通りが考えられる。
このうち、併設された個々のPONが上り、下り共に互いに異なる波長を使用する場合は従来(既存の勧告)と同様の運用方法を適用できる。問題になるのは、上り通信か下り通信のいずれかが共通波長を使用する場合である。
例えば、上り波長を共通とした場合、複数のONUからの信号を合波した後のファイバ上(すなわち、OLT側に敷設された多重化信号を伝送するためのファイバ上)において全ONUからの信号が混在するため、OLT側で正しい信号を受信できない。これを回避するため、従来はPONシステム個別に実施していたONU毎の通信時間制御を、ファイバを共有する全てのONUに対して統括的に実施しなければならない。このとき、ONUが属するOLTに依らず、上り通信で同波長を用いる全てのONUが対象となる。ONU間の時間多重通信を行うため、OLT側で通信タイミングの制御を行う必要がある。
また下り波長を共有する場合、複数のPONシステムで下り通信フレームのヘッダ情報を共有する形になる。従って、この場合は各OLTが自身の配下に存在するONUに対して指示を出す(フレームを送出する)タイミングを独立に決定することができず、同一ファイバに接続されている他のOLTとの間でフレーム送信タイミングを常に調整しながら、自身の管理するONUの制御を行う必要がある。このとき、ONUに対して上り通信帯域を通知するタイミングが、全PONの間で連動する。従って、仮に上り通信において一つ一つのPONがそれぞれ独自の波長を使用していたとしても、OLTからの帯域指示タイミング(DBA処理のタイミング及び帯域制御周期)が何らかの同期をとった状態下で動作しなければならない。すなわちPON制御信号の時間多重通信を行うため、OLT側で通信タイミングの制御を行う必要がある。
上記のとおり、上り波長共存及び下り波長共存のいずれの場合にも、PON区間におけるフレーム送信タイミングの制御が必要である。PONでは上り方向と下り方向どちらのフレーム送信タイミングについても、全てOLT側で管理する。従って複数のOLT間において帯域情報及び通信タイミング(クロック)情報を共有する手段が重要である。大まかには、各OLTの通信タイミング情報を管理する機能を、OLTの外部に備えるシステムと、OLTそれぞれが互いに他のOLTのタイミング制御情報を持つシステムとが考えられる。また、これらのシステムにおける帯域(タイミング)制御方法として、二通りの方法を採ることがえきる。すなわち、前者のシステムでは外部のタイミング情報管理部が、また後者のシステムではOLTのうちいずれかが主体的に他のOLTに通信タイミングを指示する集中制御方式と、各OLTが自律的にタイミングを決定し、その結果を相互にシェアする分散処理方式である。
本発明の実施例としては、個々のPONの通信レートやPON区間で使用する通信プロトコルの種別は問わない。例えば、ITU-Tで標準化が進められているGPONとIEEEで標準化されているGE-PON、またGPONと次世代PON(例えばITU-T系の10GPON、若しくはIEEE 802.3avで議論されている10GEPONなど)の組合せでも良い。以下の説明では、一例としてITU-T G-PONのフレーム構成を仮定する。
本発明の典型的な実施例として、ここでは先ず、上り波長が共通であって、OLT外部にタイミング情報管理部を備え、タイミング情報管理部が主体的にOLTにクロックを供給するシステムを例として説明する。その後、下り波長が共通する場合、下り・上り波長が共通する場合についての実施例及び効果を説明する。
図1は、本発明の適用先として想定される、複数PONで光ファイバを共有する場合の一般的なシステム構成である。OLT-A(1-A)は、ONU-A-1からONU-A-NAまでのNA台のONUを配下に持ち、これらONUの立ち上げ、DBAによる帯域制御、状態管理を行う。OLT-B(1-B)は、ONU-B-1からONU-B-NBまでのNB台のONUを配下に持ち、これらONUの立ち上げ、帯域制御、状態管理を行う。OLT-AとOLT-Bは、PON区間(ODN区間)において、光ファイバ100を共有する。共有光ファイバ100とOLT-A及びOLT-Bは、それぞれOLT接続用光ファイバ111−A、111−Bを介して接続される。共有光ファイバ100とOLT接続用光ファイバは、波長多重器(WDM)120によって接続されている。波長多重器(WDM)120は、OLT-AからONUへ送信される信号とOLT-BからONUへ送信される信号を合波する機能を有する。
本システムにおいて、OLT-Aからその配下のONUへ送信される信号(以下、OLTからONUへ向かう信号を下り信号または下り通信、逆方向に送信される信号を上り信号または上り通信と称する)は、それぞれ異なる波長を使用する。図中ではλd_A、λd_Bと記載している。上り信号では、OLT-A配下のONUも、OLT-B配下のONUも、全て同波長を用いてOLTへ信号を送信する。図中ではλuと記載している。従って全ONUからの上り信号はOLT-A及びOLT-Bに等しい強度で分配される。WDM120で合波された信号は、光スプリッタ150(上り方向の信号にとっては光カプラとなる)を介し、さらに個々のONUに接続された支線光ファイバ101−A−1〜101−A−NA、101−B−1〜101−B−NBを通過してONUへ送られる。光スプリッタで全方向に分配された光は、それぞれのONUに同様に到達する。そのためONUでは、自身が属するOLTからの信号を識別するため、内部に波長ブロックフィルタ110−A−1〜110−A−NA、110−B−1〜110−B−NBを備える。ここでは自身が受信しない波長の光を遮断し、波長ブロックフィルタ後段にある光受信器(ここでは図示せず)に、不要な光が混在しないように設計される。OLT-Aから外部への通信経路130−A、及びOLT-Bから外部への通信経路130-Bは、例えば光アクセスラインの上位網である地域IP網へ接続するために使用する回線であり、回線種別としてはイーサネット(登録商標)、SONET/SDHなどが使用できる。この回線の種別及びOLTと上位網との通信プロトコルについては本発明では限定する必要はない。ONU下流の回線120−A−1〜120−A−NA、120−B−1〜120−B−NBについては、ビルや宅内LANに接続することが考えられる。この場合の回線は、主にイーサネットや電話回線が使用されることが考えられる。勿論、ここでも回線種別や通信プロトコルについては限定する必要は無い。
さらに複数のOLTが、光ファイバ100を共有する形態が考えられる。実施例ではOLT-AとOLT-Bを用いて説明するが、OLTの接続数、すなわち光ファイバ100を共有するPON数が増えても、本発明の特徴を失うことは無く、同様に適用可能である。このとき、OLT接続光ファイバ112、及び113はさらに別のOLTを接続するために使用する。また、支線光ファイバ102、103は、前記の新しいOLTが管理するONUや、OLT-AもしくはOLT-Bが管理するONUを追加又は移動する場合に使用する。
図2では、図1のシステムを運用するために必要となる、時分割多重方式を用いた上り通信制御方法を示す。図1のシステムでは、ONUからの上り信号には全ONUが同一の波長を使用することから、受信側であるOLTでは、それぞれのOLTが自身の配下にあるONUからの信号を波長によって識別することができない。従来のPONでは波長の同じ信号から送信元ONUを識別するため、配下のONUからの通信帯域要求に応じ、DBA (Dynamic Bandwidth Assignment)機能によって、送受信タイミングを参照する。ここでも、個別のONUからの信号を抽出するために時分割多重方式を使用する。従来はPONがファイバ共有することなく単独に存在するため、OLTが個々のONUへ通信時間を割り当てる際、自身の配下にあるONUとの通信状況のみ管理していた。これに対し、本システムでは、OLTが帯域制御を行う際に、信号の重なりを防ぐため、他のOLTが使用している上り通信時間を避けなければならない。
図2は、ONU2からOLT1への上りフレーム送信時の、ファイバ上へのフレーム多重方式を説明する図である。図の左側から図の右側のOLT1へフレームが送信される状況を示す。尚、図2は、図の右側が最も早く送信されたデータであり、左側に向かってONU2からの送出時間が遅いフレームの配置状況の一例を示す。点線が基本フレーム周期(例えば125マイクロ秒)を示す。
ONU2からそれぞれ発信されたフレームは、スプリッタ3を通過して一本のファイバに多重される。図中、1401−1〜1401−nは、それぞれONU2#1〜ONU2#nより送出された固定帯域通信データの送信位置及びサイズを表す。スプリッタ通過前に複数のファイバに分散していたデータ1401−1〜nが、スプリッタ通過後に多重されている。フレーム1402〜フレーム1407は、各ONU2から送出される可変帯域データを示す。可変帯域データは、DBAメカニズムにより固定帯域データと多重化時に重ならないよう挿入する。
光ファイバ100を共有するためには、以上に示したようにOLT間の連係動作が必要となる。そこで新たに(1)OLT間でのクロックを同期する機能、(2)OLT間での(上り)帯域利用状況を共有する機能、(3)DBA制御を連携する機能が必要である。
(1)を実現するには、OLT外部から全システム共通のリファレンスクロックを供給する方法と、代表的なOLTがリファレンスクロックを供給する方法がある。また、(2)及び(3)については、共通のデータベースを外部に備えて全OLTから参照する方法、各OLTが個別にデータベースを持ち相互に帯域利用状況を通知する方法がある。
まずクロック同期について説明する。図3は、図1のシステムにおいて外部にクロック同期のための同期制御部を備えることでOLTの動作クロックを同期する方法を図示したものである。同期制御部200をOLTの後段に備え、同期制御部200と各OLTとをクロック供給用回線201−A,201−B,202、203、210で接続する。同期制御部200内にはクロック発生器830(図6参照)を備える。OLT内には同期信号処理部670(図5参照)を持つ。同期信号処理部は、クロック発生器からの信号によってクロックを同期し、抽出したクロックに従ってPON区間の信号処理を行う。
同期制御部200からOLTへ供給するクロックについては、求める精度によって複数の供給方法が考えられる。PON区間の通信効率を向上するため、複数のシステム間において1ビット精度で同期しようとする場合には、PON区間クロックのうち最大のクロックを用いる必要がある。実用的には、各PONシステムのクロックの最小公倍数にあたるクロックで運用することが望ましい。あるいは、例えば光ファイバを共有するシステムの中の一つのPONインタフェースが10Gbps、他のシステムが2.5Gbps (GPONの場合に相当)で運用される場合のように、互いにクロック速度が他の整数倍になっているような場合には、併設PONインタフェースのうち、クロック速度が最大のものを使用する。高速側に一致させることによって、低速クロックの立上りと立下りタイミングを、高速クロックのそれに合わせられる。これにより光信号の変化のタイミングを、併設する全てのPONインタフェースに対して制御できる。逆に低速側に合わせる場合は、高速クロックで動作するPONインタフェースでは、一部の光信号の変化タイミングを検出できない。従って、伝送できるデータ密度がその分低下することになる。
また、逆に比較的PON区間の上り帯域利用率に余裕がある場合には、PON毎に、上りフレーム送信開始時にある長さのガードタイムをとることにすれば、PON区間のビットレートよりも少し間引いた(例えば1/nにした)クロックを通知することも実用上可能である。この方法は、高ビットレートのPONインタフェースを併設する場合などに利用できる。伝送速度が高速のため、比較的TDMAのガードタイムを大きくとっても、十分な量のデータを伝送できる。ガードビットを広く設定することのメリットは、次のとおりである。例えば高速データをTDMA信号で送信する場合に、各ONUからはバースト性を伴って送出されるが、これをOLT側の光終端部で確実に光信号同期及びフレーム同期を確立することは困難である。高速になると、受光器が検知するノイズが拡大すること、また高速ビットレートに追随できる速度で信号パターンの検出を行いデータを抽出するには、技術的な課題が残されていると同時に、コスト面の問題があること、による。例えば、併設PONインタフェースの動作クロックの最大公約数となるクロックを選択することにより、既存の受光器を用いて、光信号レートよりも低速度側での並存も可能となる。例えば従来のG-PONではOLT側で上りフレームを受信する際に、比較的短時間(限られたビット数)の信号を捕捉してフレーム同期を行う必要がある。光部品の動作速度を考えた場合、このビット数の制限は厳しく、実現できる技術を持ったベンダが限られており、現在は勧告(非特許文献3)では条件が緩和され、ONU立上げ時のフレーム捕捉時間を長く取っても良いこととされている。このように、光信号取込み部分、すなわち光デバイス及びSERDES(SERializer DESerializer)の性能限界を考慮した場合にガードビットを広げることは、受光器コストの低減と安定動作の実現というメリットを得られる。
上記のように、高速クロックを供給するか低速クロックを提供するかは、システム構築の目的によって選択されるべきである。
また、クロック同期そのものには直接関係しないが、上記のようなフレーム処理を行うためには、上りフレーム及び下りフレームを送受信するための基準クロック(G-PONでは125マイクロ秒周期、すなわち8kHzクロック)は、クロック信号と供に各PONシステムに与えられる必要がある。この点は、後述するDBA制御に関連して説明する。図4に、図3のシステムにおけるOLTA(1−A)のブロック構成を示す。OLTA(1-A)は、PON区間側(NNI側)に光ファイバ111−Aとのインタフェースを持つ。ここでは、WDM660がそれにあたる。WDM660は、上り信号と下り信号の波長を分離するためのものであって、図5においてOLT間を接続するためのWDM120とは別に用意する。OLT-A(1-A)のキャリア網側(SNI側)のインタフェース610には、イーサネット(登録商標)や10Gイーサネット(登録商標)、T1、E1を代表例とするTDMインタフェースなどが使用できる。
OLTA(1−A)の下り信号の処理は、インタフェースにイーサネット(登録商標)を使用する場合を例にとると、次のような流れとなる。まずインタフェース610−1〜610−nに信号が入力されると、その信号はインタフェース610内で同期処理を行い、プロトコルが終端される。受信処理部621では、受信した下りフレームのヘッダ情報に基づき、下りフレームのPON区間での宛先を決定する。すなわち、特定のONU宛か、複数のONU宛か、あるいはOLTで終端して処理するべき(OLT内PON制御部に備えたCPUへ渡すべき)情報か、を決定する。また、受信処理部621では、宛先情報や
受信データの種別に応じて、必要な場合にアドレス情報の変換、付与、削除といったヘッダ処理を実施する。ここで宛先情報とは、MAC,IPはじめ経路情報と共に、VLANタグやMPLSラベルといった論理パス情報も含む。CPUへ送るべき情報はPON制御部600へ、ONUへ送信すべきデータは下りフレーム生成部622へ転送する。下りフレーム生成部622は、受信処理部621から受信したフレームとPON制御部600からの情報に基づいて、下り配信用フレームを作成する。ここでPON制御部600からの情報とは、ONUに通知するDBA情報や、PON区間の制御・管理を行うための制御情報(例えばG.984.3ではPLOAMメッセージなど)を含む。前記制御情報は、通常、下りフレームヘッダに挿入されるが、ベンダ特有のメッセージなど特殊な用途において、ONUが認識できる場合には、フレームのペイロードに格納することもできる(このフレームフォーマットは本発明で限定しない)。送信処理部623は、下りフレーム生成部622で生成されたフレームをバッファリングし、フレーム情報の優先度や受信先ONUの状態、処理能力等に応じて読み出され、E/O変換部631で光信号に変換され、送信クロックに従って配信される。
上り信号については、次のような動作になる。WDM660で分離された上り波長信号をO/E変換部632が受信すると、その信号を元にシリアルデータが再生される。この再生信号に基づいて上り信号の送信クロックが抽出される。再生したクロックに合わせて受信データをシリアル・パラレル変換した後、上りフレームのフレーム同期を行う。この時再生したクロックは、OLTA(1−A)が該上りフレームの受信に先立ち、ONUに対して下りフレーム送出時に指示したタイミングで受信する。この指示タイミングは、上りフレーム受信時までOLTA(1−A)のPON制御部600内のDBA情報Aに保持されており、上りフレーム受信時に正しいタイミングで受信しているかを確認する。これは受信クロック確認部652において、受信クロック情報とDBA情報602とを比較参照することによって実施する。上りフレームの位相監視においては、ONU立上げ時のレンジングにおける、基準距離測定が最も重要である。レンジングはそれぞれ1ビット単位でPON区間距離(PON区間の往復通信時間)を測定するため、異速度PONが併設されている場合には、1ビットの違いが10Gbpsと1Gbpsでは10倍、10Gbpsと2.5Gbpsでは4倍の時間差(受信タイミングのずれ)に換算される。従って異速度併設システムでは、初期の距離測定段階(つまりレンジング)において、基準距離の精度を上げる機構と、運用中の位相変動を抑える機構が必要である。このレンジング基準位置(測定開始位置)は、OLT内において、電気信号の処理において決定される。
複数の光モジュール(つまり複数のOLT)がある場合は、E/O変換時にそれぞれ微妙に処理時間が異なることから、厳密に言えば光モジュールは共通化してしまうことが望ましい。但しOLT併設追加時などにそのような状況は望みにくいため、ここではOLT毎に光モジュールを有するものとして説明する。いずれにしても、光信号のクロックを出来る限り同期するためには、このレンジング基準点の統一が必要である。下り波長が異なる場合であっても、正確にレンジングするために、各OLTにおけるレンジング開始時刻が統一されていることが望ましい。またそれぞれ異速度のPONが併設された場合、さらに厳密な調整が必要となる。この場合の対処については、後述する(図8)。
この時点で、もしタイミングが予測したものからずれている場合には、PON区間制御部600に保持するEqD情報A601を更新し、下りフレームヘッダに当該ONU宛のEqD情報を挿入し、論理距離を修正する。受信処理部641では、下りフレーム処理と同様に、受信フレームのヘッダ情報に基づきSNIへ転送すべきデータか、PON制御部600で愁嘆すべきデータかを識別する。さらに、受信フレームのヘッダ情報に基づき、宛先情報の追加、変換、削除を、経路情報の設定に従い実施する。上りフレーム生成部642では、PON制御部600と受信制御部641の情報から、SNIへ転送するフレームのヘッダ及びペイロードを生成し、送信処理部643へ転送する。送信処理部643では、生成されたフレームをバッファリングし、フレーム情報の優先度や受信先ONUの状態、処理能力等に応じて読み出してSNI側インタフェース610を通じてデータを送出する。
同期処理部200とのインタフェース680は、同期処理部200で生成され供給されるクロックを受信するためのインタフェースである。クロックは同期信号処理部670に送られ、同期信号処理部670にて受信クロックに基づいてタイミングの生成を行う。ここで得られたクロックは、クロック調停部651に送られ、このクロックに従って下り信号の発信が行われる。クロック調停部651は、下り信号と上り信号とのクロック位相ずれを管理する機能をも備える。従来のPON及び電話網を構築する交換機などでは、キャリアの基地局から基準クロックを受信する構成も利用されてきた。このとき、受信したクロックをPLLで自装置内に取り込み、装置クロックとして利用する。また、自装置内の水晶発信器で生成したクロックのみで動作することもできる。併設PONの場合には、装置間連携のため、これら外部クロックの利用、あるいは基準装置からのクロック配信(図10)が必須である。従来の方式では、例えば電話網などミリ秒レベルでの装置クロックの同期ができれば十分であったが、PONの場合は1ビット(サブマイクロ秒)程度の同期が要求される。後出するDBA連携やレンジングには、クロックの位相同期が重要である。そのために必要な機能及び効果は後述する(図8)。
なお、図3における同期制御部の構成は、後出する図8の装置図においてフィードバック機能を省いたものと同等である。以上に説明した図3のシステムは、上り通信と下り通信の少なくとも一方で使用するレーザ波長が共通の、複数のPONシステムが同一の光ファイバを共有する時に必要である。PON区間の信号が重なり合うことを回避するためには、PON区間の上り、下りのデータ送信タイミングを制御する側の装置であるOLTにおいて、併設した全システムに共通するクロックを持たなければならない。同期制御部200を備えることにより、外部より全OLT共通のクロックを供給できる。供給クロックをOLT間の動作タイミングを調停するための基準情報として利用することにより、OLTにおけるDBAの処理周期、及びPON区間上下双方向のフレーム送受信タイミングを制御することが可能である。
下り信号の波長が異なる場合であっても、OLT内で設定されるレンジングの基準点を正確に合わせることが必要であり、クロック同期及び前出の8kHzのタイミング同期は、フレーム転送時の光信号の重なり回避だけでなく、レンジング時の通信距離測定において不可欠な機能である。
図5は、図4のOLT1に含まれる同期信号処理部670のブロック構成図である。(A)はOLT内部に基準発信器を備えず、同期制御部200からのクロックをOLTの動作クロックとして利用する場合、(B)は、OLT内部にそれぞれ発信器を備え、同期制御部200からのクロック信号を受信しながら、自装置内クロックとのマッピングによりPON区間制御用クロックを取得する場合、のブロック図である。
図5(A)では、同期制御部200からの信号を、クロック受信インタフェースであるクロック受信部680が受け、受信したクロック信号を、回線701により、そのままOLT1内へ転送する、この場合は、クロック発信器がシステム全体で一つであることから、全システムでの同期が可能となる。そのため、OLT間でのクロック同期がずれることがなく、安定動作が可能である。本ブロック内に、受信クロックをモニタする機能702を備えることも可能である。
図5(B)では、OLTがそれぞれ内部にクロック発信器を備える場合の、同期信号処理部670の構成例を示す。OLT制御クロックを生成するため、発信器717、位相、周波数検出部716、LPF712、VCO711を使用する。発信器717からのクロック信号は、位相、周波数検出部716、LPF712、VCO711を通過した後、OLT内部に送出される。一方、同期制御部200からのクロック信号は、クロック受信部680より位相、周波数検出部714に送られる。この信号は、内部発信器717からの信号と同様に、LFP712、VCO711を通過して、OLT内部へ送出される。これら2系統のクロックを同期するため(同期制御部200からのクロックにOLT内クロックを同期させるため)、クロック検出部715を備える。クロック検出部715は、両者のクロックタイミングを検出し、内部クロックを基準周波数に同期するように調整する機能を持つ。また、これら2系統の個々のクロックについて、VCO711からクロック検出部715へループバックすることにより、OLT内部に提供するクロックを安定する効果がある。クロック検出部715内に分周回路及び比較回路を備えることで、これらの動作を実現できる。また、クロック検出部715にクロック検出回路を備えることにより、VCOの動作周波数を固定でき、スタートアップ時のクロック時間を事前に予測できる他、クロックが長期にわたり失われた場合など、クロックが回復するまである程度の精度内で動作を維持できる効果がある。
図6は、図3の同期制御部200の機能を説明する機能ブロック図である。発信器805で生成されるクロック信号は、クロック発生部830へ出力される。ここではクロック発生部830は、一般的なPLL(Phase Locked Loop; 位相同期ループ)回路の構成を例として説明する。クロック発生部830には、位相、周波数検出部803、LPF802、VCO801、及び分周回路804を含む。クロック発生部830からのクロック信号は、位相、周波数検出部803、LPF802、VCO801を通過した後、クロック送信部810−1〜810−nに送られる。VCO801通過後、クロック送信部810に送られる信号は、同時に、分周回路804にも送られる。分周回路は、入力されたクロックを1/nに変換し、比較用クロックとして位相、周波数検出部803へ送信する。位相、周波数検出部803では、発信器805からのクロックと分周回路804からのクロックを比較することにより、分周回路804で生成した周期1/nの送出用クロックを、安定した発信器805からの安定したクロックに同期させる。こうして得られたクロックをクロック送信部810より外部装置へ供給する。
図7は、図3のシステムをさらに厳密にタイミング調整できるように拡張した場合のシステム構成を示す。光ファイバ100を共有するPONシステムが、従来のGE−PON若しくはG−PONのビットレート1G〜数Gbpsであれば、1ビットの精度でクロックを同期するために約1nano sec、現在標準化が進められているIEEE802.3av(10GE−PON)やITU−Tの10G−PONであれば、ビットレベルでのクロック同期に約100pico sec以上の精度での制御が要求される。このような高精度での制御を行う場合には、同期制御部200から全ONUに対してクロックを発信するだけではなく、発信したクロックの状態を観察しながら、微調整を行なう仕組みが必要となる。図7では、微調整を行なうためのクロックモニタ用回線として、フィードバック用信号線220を追加した様子を示している。この機能は、下り信号だけではなく、上り信号の受信タイミングを厳密に調整したい場合に、図3で説明したシステムを使用するために必要な機能である。例えば、上り帯域を最大に活用したい場合、光ファイバを共有するPON−IFの全てが同一のクロックで動作することが望ましい。OLTから見ると、全ONUに対し、光信号で1ビットの精度で送信タイミングを指示することが要求される。このとき、1nsレベルでのクロック同期が要求されるが、OLTからONUへ従来のレンジング機能に基づくDBA通知を行う場合、PON−IFでの信号処理時間のバラつきや光ファイバの伸縮によってこのような高い精度でのクロック制御は通常、困難である。何より、OLT(PONシステム)間の動作クロックはOLT毎の処理時間の違いによって、高速クロックへの統一は事実上不可能と言える。そこで本実施例のようにフィードバック回路を導入することにより、実際に各PONの通信クロックをモニタしてその誤差を修正していくことにより、高速でのクロック同期を実現する。
これに伴い、同期制御部200の機能も単にクロックを発生、通知するのみでなく、フィードバック機能を備えたものに変わる。図8では同期制御部200の、フィードバック機能を追加した構成を示す。クロック発生部830で生成されたクロック信号は、クロック信号用インタフェース810−1〜810−ncのnc個のインタフェースからnc台のOLTに対して発信される。ここでクロックはそれぞれのOLTと同期制御部200を接続する回線201−1〜201−ncによって伝達される。一方、OLT−A(1−A)、OLT−B(1−B)及びその他のOLTからPON区間に発信されたクロックについては、WDM120を通過した時点でフィードバック用回線220によって、同期制御部200に戻される。図8の回線220から入力されたフィードバック信号は、複数の下り波長を含んでいるためWDM850で波長毎に分岐した後、クロック再生部820−1〜820−nwにおいて、それぞれO/E変換されシリアルデータが取り出される。クロック再生部820におけるクロック安定化の動作に関しては、図5及び図6の説明と同様の説明となるため、ここでは割愛する。同ブロック820にて、このシリアルデータから抽出されたクロック信号は、クロック比較部840に転送される。クロック比較部840では、基準となるクロックとの差異を検出し、クロック補正部842にてクロック回線810−1〜810−nc毎に補正量を決定する。ここで得た補正値は、クロック調整部842より各インタフェース810−1〜810−ncに通知され、各インタフェースでは補正処理を行ったクロックを各クロック回線201へ出力する。高精度での制御を行う場合、同期制御部200からクロックを一方的に発信するだけでは、各OLTからPON区間に発信されるクロックはそれぞれ微妙にタイミングが異なってくる可能性が高い。その理由は、OLT内の各ブロックにおける処理遅延や、異種PON同士を併設した場合などに生じる、OLT内の回路におけるクロック転送時間の差から、各装置からの信号を完全に同期させることが困難なためである。本実施例に示したフィードバック機構を用いることによって、実際にPON区間に送出される信号における、上記のズレの程度を確認でき、その影響を修正した信号を送出できる。従って、発信するクロックの位相を微調整することが可能となる。
このズレ補正は、レンジング処理において重要な役割を果たす。レンジングの基準点は各OLTが決定するが、OLT立ち上げ時点のレンジング基準点が、その後の運用中の基準点として扱われるため、安定運用のためには、ここで各OLTから配下のONUへレンジングリクエストを送出する時刻(タイミング)が出来る限り高精度であることが要求される。尚、光ファイバの伸縮による伝送遅延の変動量は、数nano sec程度は想定しておく必要がある。基準点のズレが1ビットあった場合、同ビットレートのPONが併設されているときに観測される往復時間ズレは、せいぜい数ビット程度である。上りフレーム送信時には、ONUからの応答タイミングのズレ、上り信号を発信用レーザの立上げに必要な時間(現在の値では数〜10数ビット分)を考慮したガードタイムが設けられており、これらの変動を吸収できる。勿論、高ビットレートになった場合は、帯域制御単位(1ビット)当たりの時間間隔が細かいため、同じビット数で制御するには、上記フィードバック線を用いて精密な制御が必要になる。
レンジング開始時のクロック調整は、特に異速度のPON(例えば通信速度10Gbpsと2.5GbpsのPON)が併設されたときに必要となる。10Gbpsでは単位時間に送信できるビット数が2.5Gbpsの4倍である。従って低ビットレート側の精度でクロック同期を行った場合、クロック1ビット分の時間のズレが、高速側クロックに換算すると4ビットの影響を与えることになる。通常、レンジング基準点の変動(すなわち設定されるEqDの誤差)も考慮の上でガードバンドが設定されているが、高ビットレート信号を伝送するためには、必要以上のガードバンドを用意しなければならず、帯域利用効率が低下する可能性がある。
上記の問題を回避するには、異速度PONが接続された場合には、高速側のクロックに同期させることが必要である。以下、G-PONの場合について具体例を示す。異速度PONが並存するときにデータ送受信を行うには、低速クロックがずれた位置に対して高速クロックを合せる、つまり高速クロックを(10Gbpsと2.5Gbpsのとき)4倍のビット数ずつシフトすることでデータを示すビット位置(8kHzフレーム境界など)を合わせなければならない。しかしここで高速クロックを低速動作するPONに送り込んでおき、一旦高速ビットレベルで同期したクロックに対して1/4倍することで2.5Gbpsクロック位相を生成すると、下りフレーム送信時の低速ビットレートの送受信位相ずれが1/4に低減され、レンジング基準位置を精度良く決めることができる。
尚、図6のシステムにおける同期制御部200の構成は、図8の構成ブロックのうちクロック発生部830とインタフェース810−1〜810−nc及びこれらを制御・管理するためのCPU,メモリ、制御インタフェースから構成される。
図8の出力調整部には、クロック位相調整用の情報データベースとして、テーブルを保持しておく方法も考えられる。図9は、図8で示した調整情報データベースに保持されるテーブル構成例である。クロック配信回線810を示す回線ID901毎に計算された、基準クロックからの差異902、その基準クロックに対する発信時の補正値903が対応付けられて保持される。クロックは常時フィードバックされているため、このテーブルは変化が生じた場合には常に書き換えられる。 厳密には、外部クロックに対して各OLTでPLLを使用すると、光信号の送出時点で1〜数クロック程度の誤差が発生する可能性がある。そこで、高ビットレートでのデータ伝送を行うためには、同期制御部から各OLTへ通知するクロックを、PLLを介さずにそのまま使用することが望ましい(図5(A))。特定のOLTがマスタとなってクロックを制御する場合には、マスタOLT内における光信号送出時(光モジュール制御用)クロックを抽出し、それを他の併設されたOLTへ通知すること、さらにはそのクロックを受信したOLTは、PLLを介さずに与えられたクロックをそのまま装置内クロックとして使用することが望ましい。
図10は、図3における同期制御部200が、特定のOLT(ここではOLT−A(1−A))に備えらえた場合のシステム構成を示す。同期制御部200をOLT−A内に備えることにより、外部に装置を置く場合に比べてPONシステム全体をコンパクトにできる。これによって、PONシステムを制御するための回路規模を縮小でき、低コスト化が可能となる。さらには、制御機能を一体型にすることによって、外部装置との通信を行う場合に想定される、伝送処理効率のゆらぎや外部ノイズといった不確定性を回避でき、制御の精度を向上できる。特に併設したPONのうち最速レートで動作するOLTに本機能を実装する場合に、この効果が期待できる。
この場合、同期制御部250の機能は、図3のように外部に具備した場合と同様である。OLTA(1−A)は、自身の周波数発信器によってクロックを生成し、下り信号を通じてONUと相互にクロック情報を伝達する機能に加え、図3の同期制御部200と同様、他のOLTへ自身のクロックを配信する機能を有する。このときのOLTA(1−A)以外のOLTの装置構成は、図4に示したものと同様である。
図10のときのOLTA(1−A)のブロック構成を図11に示す。このとき、図4の同期信号処理部670に変わり、同期制御部1100を持つ。同期制御部1100内部のクロック発生部1101は、図8のものと同様の機能を有する。タイミング生成部1102では、クロック発生部1101から受信したクロックに対し、他のOLTに通知するタイミング情報を決定して、クロック信号インタフェース1110から送出する。クロック信号は、併設したOLT数だけ分岐する。この分岐点は、インタフェース部1110内に存在しても、また外部のコネクタあるいは分岐回路によって実現されても良い(この点は、実装上の些細な違いであり、図8に関しても同様のバリエーションを適用可能である)。
図12は、図10でクロックのフィードバック回線1200を追加した場合のシステム構成図である。OLT−A(1−A)を除く併設OLTの動作は、図10のシステムと同様である。
図13は、図12のシステムにおけるOLT−A(1−A)のブロック構成図である。同期処理部1100の機能は、図8の場合と同様である。すなわち、クロック発生部1101で生成されたクロック信号は、クロック信号用インタフェース1110からnc台のOLTに対して発信される。ここでクロックはそれぞれのOLTと同期制御部1100を接続する回線201−1〜201−ncによって伝達される。一方、OLT−A(1−A)、OLT−B(1−B)及びその他のOLTからPON区間に発信されたクロックについては、WDM120を通過した時点でフィードバック用回線1200によって、同期制御部1100に戻される。図12の回線1200から入力されたフィードバック信号は、複数の下り波長を含んでいるためWDM1350で波長毎に分岐した後、クロック抽出部1320−1〜1320−nwにおいて、それぞれO/E変換されシリアルデータが取り出される。同ブロック1320にて、このシリアルデータから抽出されたクロック信号は、クロック比較部1341に転送される。クロック比較部1341では、基準となるクロックとの差異を検出し、クロック補正部1342にてクロック回線1310−1〜1310−nc毎に補正量を決定する。ここで得た補正値は、クロック調整部1342より各インタフェース1110−1〜1110−ncに通知され、各インタフェースでは補正処理を行ったクロックを各クロック回線201へ出力する。同期制御部200をOLT−A内に備えることにより、外部に装置を置く場合に比べてPONシステム全体をコンパクトにできる。これによって、PONシステムを制御するための回路規模を縮小でき、低コスト化が可能となる。さらには、制御機能を一体型にすることによって、外部装置との通信を行う場合に想定される、伝送処理効率のゆらぎや外部ノイズといった不確定性を回避でき、制御の精度を向上できる。特に併設したPONのうち最速レートで動作するOLTに本機能を実装する場合に、この効果が期待できる。また、クロック補正値データベースの基本構成は、図9と同様である。
OLT間のクロック同期は、OLTからの下り信号送信に使用するためと、個々のOLTにおけるDBA結果を集約する場合、あるいは下り伝送用フレームとして生成した情報を、最終的な送信制御のために集約する場合に必要な処理である。後者のデジタル信号の処理は、OLT内のPON-IFに備えら得たビットバッファ(クロックタイミング調整用の受信データバッファ)にて調整可能であり、光信号を用いることなく、装置間をつなぐバスあるいは通信ケーブル等を介して実現できる。
ここまで説明した下り信号用のクロック同期が重要になるのは、特に下り信号に用いる波長を、併設したPONで共用する場合である。このときは、各OLTからの下りフレームを効率よく多重して下り帯域を有効活用するため、またONU2側でそれぞれのONU2宛ての情報を正確に受信できるように、全OLTからの送信クロックが統一されている必要がある。
一方、併設した複数のPONで使用する上り信号用波長が同じで、下り波長がそれぞれPON毎に異なる場合、光ファイバ上での下り信号の同期に関しては厳密には必要としない。何故ならば、ここで重要なポイントは、上り信号を時間多重したとき、すなわちOLTが上り信号を受信したときに、信号の重なりやクロックずれが発生していないことである。スプリッタからONU2までの支線光ファイバは、それぞれ設置条件が異なり、光ファイバの伸縮やONUの動作温度(これはレーザの波長安定性につながり、波長が変われば光伝送特性が異なるため、クロックにも影響する)などの環境によって、OLTに戻されるクロックは変動することが考えられる。これらをOLT側で完全に管理することは不可能である。したがって、このケースでは、OLT1はONU2からの受信クロックを参照して、ONU2に対する下り信号の送信クロックを変化させなければならない。ここで上り信号のクロック情報を得るには、レンジング処理または運用中の上りフレームの位相確認の結果を参照すればよい。位相情報は、OLTが予期するタイミングに対してビット単位での送信クロックタイミングを抽出しており、その情報を、ONU2に対するEqD補正だけではなく、OLT側からの下りフレーム送信を利用した、上り信号クロックの微細調整に利用することができる。
図56に、上記の動作を図示した。図56はOLT1と、支線ファイバの伸縮によって上り送信タイミングが変更されたONU2の間の、送受信タイミング修正処理のシーケンスを示す。上り信号5601について、受信時の位相確認5602で位相の変動が検出されると、OLT1は、その位相が許容範囲内であるか否かを判別する。ここで、許容範囲内とは、従来のPONにおける規定(1.2Gbpsでは8bitなど)では不十分であって、併設システムを運用する上でのDBA制御周期の設定や、PONインタフェース間での信号重複の回避といった条件に基づいて決定される。必要なら、EqD設定の変更をONU2へ伝える。また、同時に受信した上りフレーム5601からクロック位相を抽出する。この結果、上り信号のクロックが、光ファイバ上の他の上り信号クロックに対してズレている場合には、EqD補正5603に加えて、クロック位相補正5605を行う。
勿論、OLT間ではDBA処理のタイミング等に合わせて上りフレームを受信する必要がある。これらの条件を満たす、ある一定の許容範囲内でクロック位相やフレーム到着タイミングの補正を行いつつ運用することが要求される。ここで説明した微調整は、これらの運用を円滑に行うために必須の機能である。後で説明するように、DBA制御に支障が生じる程に送受信のタイミングが変動した場合には、当該OLT配下の全ONU2についてEqD及びクロック位相の調整を行う必要が生じる場合もあり得る。また、その結果、併設された全システムについてEqDを調整する必要が発生することも考え得る。
また、上り通信、下り通信ともに全PONで同じ波長を共有する場合は、下り信号送信のためのクロック同期は必須である。上り信号に関しては、フレーム毎に同期をとって受信するバースト信号となるため、ガードタイムを設けるのが普通であり、このガードタイムを利用して上りフレーム毎のクロック位相調整を行う。OLT側では、各ONUからのフレームを受信するタイミングを把握できる。同時に、各ONUからの上りフレームを運ぶクロックの位相情報を保持するメモリを備えることによって、対応できる。このケースでは、支線ファイバの異なる個々のONUからの上り信号クロックを統一することは困難であり、出来る限りガードタイムを少なくして帯域を有効活用できるようにする方法が有効である。
図57は、上り、下りとも全PONが共通の波長を使用する場合の、OLTにおける処理のフローチャートである。上りフレーム受信時に、受信タイミングとクロック位相を検出すると(5701)、そのフレームに含まれるONU番号と共に、タイミング及び位相の予定値からの誤差を検出する(5702)。EqD修正に関する処理5703、5704は既存の動作のため割愛する。クロック位相がずれている場合、先に取得したONU番号と照合し、受信クロック位相のデータベースを参照することによって、必要があれば(ズレが許容範囲を超えていれば)当該ONUの受信クロック情報を修正する(5706)。
以上の実施例によりクロック同期を確立した上で、光ファイバ100を信号が通過する際に、個々のONUからの、OLTの指示に対する応答タイミングが重ならないように制御する。その方法は、DBA周期の設定状況により異なるが、先ず最も基本的な実施例として、全OLTのDBA周期を等しく設定する場合について説明する。
複数のPONを併設し、帯域を共有しようとする場合、最も基本的な方式はDBA周期、DBAの帯域割当て量を計算するタイミングを一致させることである。つまり、全ONUからの帯域要求が出揃った状態で、ある特定の時刻からの特定時間幅に共同で使用する帯域について、OLT間での調停を行なう。そのためリファレンスクロックを供給する際に、ビット位相同期用とは別に、DBA周期と等しい周期のタイミングクロックを生成して各OLTへ供給する。これによって、全ONUから送信される上り信号の制御周期に関して、OLTからの帯域指示に応答する周期の周期長と周期境界のタイミングが、共にOLT側(同期制御部200または1100)で管理される共通のDBA周期設定に一致するため、全OLTで帯域情報を共有しやすくなり、DBA制御を行い易くなる。
DBA計算タイミングをシステム全体で統一するためには、基本パラメータとして、全ONUからの応答時間を把握しておく必要がある。従来の単一のPONシステムの場合に、等価遅延(EqD)パラメータを決定する際に用いられてきた。。更に、全ONUに対し送信タイミングを指示するには、全OLTから共通のタイミングで配下のONUにDBA結果を通知し、ONUからの応答信号をOLT側で時分割多重受信を行わなければならない。そのためには、光ファイバ100を共有する全てのPONシステムが共通の論理的距離(時間的表現を用いると、応答時間を指す)を有することが必要である。この論理距離は、PON区間の物理的距離、ONU及びOLTにおける信号処理遅延の全てを合算した時間で測られる。従来のPONでは、ONU毎に異なる支線ファイバ101、102、又は103の距離差及びONU内処理時間の差によって異なるONUからの送信タイミングを一定にするため、OLTに近い位置に置かれるONUではOLTからの信号を受信後の処理(送信待ち)時間を長く取り、逆に遠い距離にあるONUに対しては比較的短い処理時間を設定することで、OLTの指示に対する反応時間を一定に設定している。本発明のシステムでは、視線ファイバ101、102、103の長さのバラつきに加え、OLT接続用ファイバ111、112、113の長さの違いを考慮しなければならない。
これを実現する方法は二つ考えられる。一つは、特に従来のOLTの機能を活用するため、先ずOLT毎に自身の配下にあるONU群について論理距離の調整を行い、ついでOLT毎(PON毎)に異なる論理距離の差異を調整する、という2段階の調整を行なう方法である。また別の方法は、あるOLT若しくは他の装置が集中的に全ONUの論理距離を測定し、一気に全システム共通の論理距離を決定する方法である。前者の方法では、個々のPONシステムのレベルでは従来の距離測定メカニズムを流用できるため、開発コストを低減できる。後者の方法では、新規に距離測定システムを構成しなければならないが、データベースが一箇所に集中しており管理が容易なことが特徴となる。
図14は、PON毎に、それぞれ異なる論理的距離を持つ場合の距離差を説明する概念図である。図ではOLT-A(1−A)に属するONUが、OLT-B(1−B)に属するものよりもOLTに近い位置に集まっている場合を想定している。ONU−A(2−A−min)はOLT−Aの配下にあって、最もOLT-A(1−A)に近いONUであり、ONU-A(2-B-max)は、OLT-Aから最も遠いONUである。同様に、ONU-B(2−B-min)はOLT-B(1-B)から最も近く、ONU-B(2-B-max)はOLT-Bから最も遠く設置された、OLT−B管理下のONUである。図14では、OLT-A(1−A)及びOLT-B(1-B)からのONU−A及びONU-Bに対する応答要求(たとえばレンジングやSerial Numberリクエストなど)を発信した場合の信号の流れを示している。想出時刻が同時刻であった場合、図13に見られるように、OLT-A(1−A)から時刻1330に発信された下り信号は時刻1361に、OLT-A(1-A)に最も近いONU(2−A-min)に到着する。ここでOLT-A(1-A)から通知されたEqDに従い、ONU-A(2−A-min)はOLT-A(1-A)への応答までに一定時間待機する。このONU-A(2−A−min)内の処理時間1311は、該ONUに通知されたEqDと、該ONU内での信号処理時間の全てを含む時間である。時刻1371にONU-A(2−A−min)はOLT−A(1−A)に指示されたタイミングに従って上り信号を発信すると、OLT-A(1-A)は時刻1340に上り信号を受信する。上り信号のタイミングに関する、EqDを含むパラメータ定義の詳細な記述については、本発明の実施例では勧告G.984.3(非特許文献)の記載に従うものとする。ONU−A(2−A-min)が待機している間に、OLT-A(1−A)からの信号はONU-A(2−A-max)に到達し、ONU-A(2−A-max)は、OLT-A(1−A)より通知されたEqDを含む処理時間1312の後、時刻1372にOLT-A(1-A)に対して上り信号を発信する。OLT-A(1−A)がONU-A全てに同時に送信指示を行った場合、OLT-A(1-A)が信号を受信する時刻1340は、ONU-A同士では同時である。
OLT-B(1-B)についても同様である。OLT-B(1-B)から送出時刻1330に送信された信号は、ONU-B(2−B-min)、ONU-B(2−B-max)それぞれにおいて、時刻1381、1382に受信される。ONU−B(2−B-min)は待機時間(ONU内処理時間)1321、ONU-B(2−B-max)は待機時間1322の後、それぞれ時刻1391、1392にOLT−B宛てに返信メッセージを送出する。OLT-Bでは時刻1350にこれらの信号を同時に受信することとなる。
従来のPONシステムでは、これらONU内処理時間設定はEqDとして与えられ、ONU-A(2−A-min)の場合は、ONU-A(2−A-max)の場合よりも、ONU内処理時間1311と1312の差分だけ大きい値が設定される。ONU-Bの場合も、OLT-BからONU-B(2−B-min)に通知されるEqDは、ONU-B(2−B-max)のEqDよりもONU内処理時間1321と1322の差に相当する分、大きな値を用いる。
図14の状態では、複数のOLTがそれぞれ配下のONUからの上り信号を受信した場合に、ONUまでの論理距離によっては信号が重なる場合がある。そこでOLT間(併設PONシステム間)で、これらの論理距離を調停する必要がある。
図15は、図14の状態に対し、論理距離の調整を行った場合のPON上り信号の送信タイミングを示す。ここでは、OLTからONUまでの距離が最も遠いものを基準として、全PONの論理距離を設定する。図15の場合はONU-B(2−B-max)の方がONU-A(2-A-max)よりも遠いため、OLT-Bが設定する論理的距離に、OLT-Aの設定値を統一する。
OLT-Bからの、ONU-Bに対するEqD設定は図14の場合、即ち従来のONUへのEqD設定手順と同様である。ONU−Aについては、OLT-Aが設定する論理距離とOLT-Bが設定する論理距離との差、即ち、通信時間A1301と通信時間B1302との差分を考慮し、各ONU−Aに設定されたEqDの値を補正する。OLT-AによってONU-A間の相対的な距離差は図14で与えられているため、全ONU-AにΔD1303相当分の一定値を加えればよい。これによって、ONU-A(2-A-min)内処理時間は、ONU内処理時間1311にΔD1303を加えた、処理時間1411となる。同様に、ONU-A(2-A-max)では処理時間1412となる。その結果、本システムにおいて送出時刻1330に、全OLT同時に全ONUへ送信指示を出した場合、全ONUからの返信は、時刻1350に全OLTに同時に到着することになる。
図16は、図1のシステムにおいて外部に距離制御部1500を備えることでOLT同士の帯域割り付け状況を管理する方法を図示したものである。距離制御ブロック1500をOLTの後段に備え、距離制御ブロック1500と各OLTとをクロック供給用回線1501−A,1501−B,1502、1503、1510で接続する。距離制御部1500内には論理距離管理テーブル1800(図19)を備える。一方、OLT内には距離情報の補正値を保持するためのEqD補正情報DB1601(図17参照)を持つ。距離制御ブロック1500内の距離情報処理部670(図18参照)は、論理距離管理テーブル(遅延DB)を参照し、OLT間の遅延量差を算出する。得られた遅延量の差に基づいて、各OLTへPONシステム間での論理距離調整のための補正量を通知する。
図17に、図15のシステムにおけるOLTA(1−A)のブロック構成を示す。OLTA(1-A)は、PON区間側(NNI側)に光ファイバ111−Aとのインタフェースを持つ。ここでは、WDM660がそれにあたる。WDM660は、上り信号と下り信号の波長を分離するためのものであって、図16においてOLT間を接続するためのWDM120とは別に用意する。OLT-A(1-A)のキャリア網側(SNI側)のインタフェース610には、イーサネット(登録商標)や10Gイーサネット(登録商標)、T1、E1を代表例とするTDMインタフェースなどが使用できる。
OLTA(1−A)の下り信号の処理は、インタフェースにイーサネット(登録商標)を使用する場合を例にとると、次のような流れとなる。まずインタフェース610−1〜610−nに信号が入力されると、その信号はインタフェース610内で同期処理を行い、プロトコルが終端される。受信処理部621では、受信した下りフレームのヘッダ情報に基づき、下りフレームのPON区間での宛先を決定する。すなわち、特定のONU宛か、複数のONU宛か、あるいはOLTで終端して処理するべき(OLT内PON制御部に備えたCPUへ渡すべき)情報か、を決定する。また、受信処理部621では、宛先情報や
受信データの種別に応じて、必要な場合にアドレス情報の変換、付与、削除といったヘッダ処理を実施する。ここで宛先情報とは、MAC,IPはじめ経路情報と共に、VLANタグやMPLSラベルといった論理パス情報も含む。CPUへ送るべき情報はPON制御部600へ、ONUへ送信すべきデータは下りフレーム生成部622へ転送する。下りフレーム生成部622は、受信処理部621から受信したフレームとPON制御部600からの情報に基づいて、下り配信用フレームを作成する。ここでPON制御部600からの情報とは、ONUに通知するDBA情報や、PON区間の制御・管理を行うための制御情報(例えばG.984.3ではPLOAMメッセージなど)を含む。前記制御情報は、通常、下りフレームヘッダに挿入されるが、ベンダ特有のメッセージなど特殊な用途において、ONUが認識できる場合には、フレームのペイロードに格納することもできる(このフレームフォーマットは本発明で限定しない)。送信処理部623は、下りフレーム生成部622で生成されたフレームをバッファリングし、フレーム情報の優先度や受信先ONUの状態、処理能力等に応じて読み出され、E/O変換部631で光信号に変換され、送信クロックに従って配信される。
上り信号については、次のような動作になる。WDM660で分離された上り波長信号をO/E変換部632が受信すると、その信号を元にシリアルデータが再生される。この再生信号に基づいて上り信号の送信クロックが抽出される。再生したクロックに合わせて受信データをシリアル・パラレル変換した後、上りフレームのフレーム同期を行う。この時再生したクロックは、OLTA(1−A)が該上りフレームの受信に先立ち、ONUに対して下りフレーム送出時に指示したタイミングで受信する。この指示タイミングは、上りフレーム受信時までOLTA(1−A)のPON制御部600内のDBA情報Aに保持されており、上りフレーム受信時に正しいタイミングで受信しているかを確認する。これは受信クロック確認部652において、受信クロック情報とDBA情報602とを比較参照することによって実施する。この時点で、もしタイミングが予測したものからずれている場合には、PON区間制御部600に保持するEqD情報A601を更新し、下りフレームヘッダに当該ONU宛のEqD情報を挿入し、論理距離を修正する。受信処理部641では、下りフレーム処理と同様に、受信フレームのヘッダ情報に基づきSNIへ転送すべきデータか、PON制御部600で終端すべきデータかを識別する。さらに、受信フレームのヘッダ情報に基づき、宛先情報の追加、変換、削除を、経路情報の設定に従い実施する。上りフレーム生成部642では、PON制御部600と受信制御部641の情報から、SNIへ転送するフレームのヘッダ及びペイロードを生成し、送信処理部643へ転送する。送信処理部643では、生成されたフレームをバッファリングし、フレーム情報の優先度や受信先ONUの状態、処理能力等に応じて読み出してSNI側インタフェース610を通じてデータを送出する。
距離制御部1500とのインタフェース1610は、距離制御部1500で生成され供給されるEqD補正情報を受信するためのインタフェースである。インタフェースには、例えばイーサネット(登録商標)や、その他通信インタフェースが使用できる。勿論、装置間連携のための独自インタフェースを使用してもよい。EqD補正量情報は送受信処理部1620を経てPON制御部600に送られ、EqD補正情報データベース1601に格納される。ここで各ONUに対して、EqD情報A601とEqD補正情報A1601とから、システム全体に対するEqD値を生成する。ここで生成されたEqDは、下り伝送フレームのヘッダに格納され、各ONUへ通知される。また、本EqD値はクロック調停部651からも参照される。クロック調停部651は、下り信号と上り信号とのクロック位相ずれを管理する機能をも備える。以降、ここで設定されたEqDを基準として、上り信号の受信タイミングの取得や、クロックずれの場合のEqD再調整を行う。
図18に、図16のシステムにおける距離制御部1500のブロック構成を示す。距離制御部1500は、OLT側(NNI側)にイーサネット(登録商標)や10Gイーサネット(登録商標)、T1、E1を代表例とするTDMインタフェースなどの通信インタフェース若しくは独自インタフェースを備える。
距離制御部1500の信号処理手順は、インタフェースにイーサネット(登録商標)を使用する場合を例にとると、次のような流れとなる。まずインタフェース1501−1〜1501−ncに信号が入力されると、その信号はインタフェース1710内で同期処理を行い、プロトコルが終端される。受信処理部1721では、受信したフレームのヘッダ情報に基づき、フレームに格納された応答時間情報の対象となるOLTを識別する。受信処理部1721では、OLT識別情報や受信データ(遅延時間)の抽出を行う。ここでOLT識別情報には、MAC,IPはじめ経路情報と共に、VLANタグやMPLSラベルといった論理パス情報も利用可能である。PON同士の論理距離を計算するため、抽出した情報は、遅延管理部1750内に送られる。下りフレーム生成部622は、PON制御部1750のEqD補正DB1752に格納された情報に基づき、ヘッダ情報に配信先OLT識別子を含むEqD補正値通知フレームを作成する。前記補正情報は、通常、フレームペイロードに挿入されるが、ベンダ特有のメッセージなど特殊な用途において、ONUが認識できる場合には、フレームのペイロードに格納してもよい。
各OLTにおいて、上りフレーム受信タイミングが予測した(予め設定した)値からずれている場合には、各OLTにおいてEqDを補正すると共に、補正した結果の論理距離(最も遠いONUまでの論理距離)を距離制御部に通知する。距離制御部は、受信したEqD情報を遅延DB1751に格納し、その値に基づいて各OLTにおけるEqD補正値を再計算する。EqDパラメータを補正するメカニズムには、従来のPONのものを適用できる。ONUからの送信タイミングが設定値と大きくずれる場合には、距離制御部1500を含めて論理距離の再設定を行う必要がある。予測値の補正量が小さい場合には、OLT内部のみの処理で調整可能であり、このときに上記の通り、従来機能のみで対処できることは、開発コストの低減につながるメリットである。なお、EqD補正値の再計算は、個々のOLTにおいてEqD補正が行なわれるタイミングだけでなく、定期的に距離制御部から各OLTに対しEqD情報を通知させ、その結果を用いてEqD補正値を再計算することもできる。このポーリング処理を道いると、DBAの周期毎に各OLTから距離測定情報を入手できるため、その都度微調整を行う形になり、距離の変化を常に監視できる。例えばOLT内部で補正が効かなくなった場合の急な距離情報の変更などが発生しにくくなり、結果としてデータが失われにくくなる。
図19は、図16〜図18に説明したようにPONシステム間で論理距離を調整するために保持すべき情報を含む、データベース構成の一例である。図19(A)(B)は、それぞれPONシステム毎、即ちOLT毎に保持されるテーブル構成を示す。テーブル1800は、OLT毎に配下のONU識別子1801と、ONU間の相対的距離差を補正するために、各ONUに設定したEqD1802、およびその他フラグ等の情報1803を含む。その他フラグには、例えば当該ONUが有効か否かを示すフラグなどの実装が考えられる。
図19(B)は、基準となるPONと比較した場合の、EqD補正値1811を保持するためのテーブルである。テーブル1810のEqD補正値とテーブル1800のEqD設定値を用いて、PON併設システム全体の基準に対する論理的距離を知ることができる。この論理的距離は、システム全体の基準値に対する相対値である。この値は個々のONUに対するEqDとして設定される。
図20は、全OLTにおける応答時間を集中的に管理して、OLT間の到着時刻を調整するためのテーブル構成例である。このEqD補正値管理テーブル1900は、図18の距離制御部1500内に備えた遅延管理部1750に保持される。ここでは各OLTの識別子1901、それぞれのOLTから通知された応答遅延時間、即ち各OLTから最も距離の遠いONUまでの論理距離1902、それぞれに対する遅延補正値1903を含む。本テーブルを備えることにより、OLT毎に個別に行ってきた距離測定情報に基づき、光ファイバを共有するシステム全体で統一した等価遅延パラメータを設定することが可能となる。なお、遅延補正値の計算方法の一例として、OLTからの応答時間報告の中から、最も遅延の大きいものを選択して基準値とする方法が挙げられる。また、別の方法として、実際に測定される遅延量よりも大きな、ある一定の値を基準して、各OLTにおける補正値を算出してもよい。
図21は、図16における距離制御部1500を、特定のOLT(ここではOLT−A(1−A))の内部に備える場合のシステム構成を示す。距離制御部2000をOLT−A内に備えることにより、外部に装置を置く場合に比べてPONシステム全体をコンパクトにできる。これによって、PONシステムを制御するための回路規模を縮小でき、低コスト化が可能となる。さらには、制御機能を一体型にすることによって、外部装置との通信を行う場合に想定される、伝送処理効率のゆらぎや外部ノイズといった不確定性を回避でき、制御の精度を向上できる。特に併設したPONのうち最速レートで動作するOLTに本機能を実装する場合に、この効果が期待できる。この場合、距離制御部2000の基本機能は、図16のように外部に具備した場合と同様である。OLTA(1−A)は、自身の周波数発信器によってクロックを生成し、下り信号を通じてONUと相互にクロック情報を伝達する機能に加え、図16の距離制御部1500と同様、他のOLTへ自身のクロックを配信する機能を有する。このときのOLTA(1−A)以外のOLTの装置構成は、図17に示したものと同様である。
図21のときのOLTA(1−A)のブロック構成を図22に示す。このとき、図17のPON制御部600内に、遅延DB2101、EqD補正DB2102を持つ。PON制御部600では、個々のOLTから収集した遅延情報を遅延DB2101に保持し、その情報に基づいて各OLTに対して通知すべきEqD補正量を計算する。計算結果は、遅延情報通信インタフェース2110を介して送出する。遅延情報通知は、併設したOLT数だけ分岐する。この分岐点は、インタフェース部2110内に存在しても、また外部のコネクタあるいは分岐回路によって実現されても良い。
この構成の場合、図19及び図20に示すテーブルを、それぞれ遅延DB2101、EqD補正DB2102に保持しておくことにより、図16の実施例と同等の動作が可能である。
以上では、遅延情報をOLTの内部若しくは外部に備えた距離制御部1500により集中管理する方法を説明した。距離制御の方法としては、他に各OLTがそれぞれ相互に遅延情報を通知し合う方法も考えられる。そこで、次にこの場合を考える。このとき、システム及び装置構成は図21及び図22で説明したものと同様である。各OLTのPON制御部に含まれるデータベースについて、以下に説明する。
図23は、図21〜図22に説明した通り、PONシステム間で論理距離を調整するために保持すべき情報を含む、データベース構成の一例である。図23(A)(B)は、それぞれPONシステム毎、即ちOLT毎に保持されるテーブル構成を示す。テーブル2200は、OLT毎に配下のONU識別子2201と、ONU間の相対的距離差を補正するために、各ONUに設定したEqD2202、およびその他フラグ等の情報2203を含む。その他フラグには、例えば当該ONUが有効か否かを示すフラグなどの実装が考えられる。
図23(B)は、基準となるPONと比較した場合の、EqD補正値2211を保持するためのテーブルである。テーブル2210のEqD補正値とテーブル2200のEqD設定値を用いて、PON併設システム全体の基準に対する論理的距離を知ることができる。この論理的距離は、システム全体の基準値に対する相対値である。この値は個々のONUに対するEqDとして設定される。以上、EqD補正情報1601には、図19と同様のテーブルを保持する。
図24は、遅延DB2101の構成例である。テーブル2310には、基準OLTを識別するためのOLT識別子2311を保持する。これによって、各OLTは、ONUとの論理距離を測定する場合に、到着時刻を比較する対象となるOLTを知ることができる。この比較には、システムで唯一に設定されたOLT-IDが必要である。各OLTは、自身に設定されたOLT-IDを自装置内に保持する。図24では、テーブル2210の中のフィールド2312として自装置の識別子を登録した例を示す。EqD補正値管理テーブル2300は、図20の距離制御部1500内に備えた遅延管理部1750に保持されるテーブルと同様である。ここでは各OLTの識別子2301、それぞれのOLTのから通知された応答遅延時間、即ち各OLTから最も距離の遠いONUまでの論理距離2302、それぞれに対する遅延補正値2303を含む。なお、遅延補正値の計算においては、OLTからの応答時間報告の中から、最も遅延の大きいものを選択して使用する。若しくは、実際に測定される遅延量よりも大きな、ある一定の値を基準と設定して、各OLTにおける補正値を算出してもよい。本実施例では、OLTがそれぞれ自身の配下にあるONUへの距離測定と、相互に接続された他のOLTを含む併設グループ内の最大距離とを把握する。自律的にこれらの情報を学習するため、OLTの増設が容易である。また、個々のOLTに保持されるデータベースが、集中管理に比較して小さくなるため、メモリ使用量や回路などハードウエア設計規模を抑えることができる。
上り信号波長が共通の場合、全ONUからの上り信号が光ファイバ100上で重ならないように、ONUに対する送信許可タイミングを制御する必要がある。以上に述べたPON間のクロック同期及びEqD調整によって、システムを構成する全てのPON区間の応答時間を把握できる。システム全体で統合したDBA制御を行うためには、加えてPONシステム間におけるDBA周期境界の制御、DBA周期長の制御が必要である。システム全体の動作は図2で説明した通りである。ここでは、PONシステム同士の上り信号を時間多重するための帯域制御方法を説明する。
図25は、図1のPON併設システムにおいて、共有ファイバ上の上り通信帯域をPON同士で時間分割した様子を示す。ここでは、説明を分かりやすくするため、OLT−A(1−A)とOLT−B(1−B)の2システムの場合を例に説明する。実際には任意の数のPONを併設可能であり、その場合に対しても、容易に本説明を適用できる。
個々のPON区間には、それぞれのOLTが、配下の各ONUからOLTまでの距離と、各ONUにおけるOLTからのメッセージに対する応答処理時間から計算した、システムとしての応答時間が設定される。このシステム応答時間は、OLTからONUまでの距離(光ファイバ長)に伴う信号到達時間と、ONU内における下り信号受信からその応答としての上り信号発信までの、電気信号処理に要する情報処理時間で決定される。OLTから個々のONUまでの距離は大抵の場合に一定ではなく、ある分散を持って運用される。そのためOLTが配下のONUからの信号を正しく受信するように、ONU同士の距離差を調整するために、ONU毎に異なる遅延時間(等価遅延;EqD)を設定し、OLTからの応答指示に対して全ONUからの最速応答タイミングが一致するように調整する。この過程をレンジング過程と呼んでいる。
OLTは、あるタイミングで配下のONUからの上りデータ送信要求を受信すると、その要求帯域に基づいてONU毎の上り信号の送出量を決定する。ONU毎の送出量が決定されると、下り信号に当該情報を載せて全ONUへ通知し、ONUは許可された送出量を上り信号として送信する。この一連の処理はDBAと呼ばれるPON特有の制御方法である。
図25の上半分は、OLT−A(1−A)及びOLT−B(1−B)から各OLTに属するONUへの下りフレームを送信するタイミングを示している。図面右から左に時間軸を示し、右の方がより早く処理されることを意味する。ここでは右側に記載されたフレームが、より早く送出される。時間軸と平行に示した目盛りは、周期的なフレーム送信を行うタイミング制御のための周期境界であって、例えばGPONの場合の125マイクロ秒周期を示す。通常、125マイクロ秒単位(以下、基本周期フレーム単位)でのDBA制御を行うことは、CPUの性能上困難であり、複数の基本周期フレームを束ねた単位でのDBA制御を行う。図25では時刻360−Aから時刻361−Aまでの時間330−A及び時刻360−Bから361−Bまでの時間330−Bが、それぞれOLT−A(1−A)及びOLT−B(1−B)におけるDBA制御周期を示している。ここでは、クロック同期及びEqD調停に加え、125マイクロ秒周期タイミングとDBA周期タイミングが双方のOLTに供給され、DBA周期が同期した状態を想定している。従って、時刻360−Aと360−Bは同一タイミング、DBA周期330−A及び330−Bは同一周期となる。
システム全体でONUの応答時間が統一されている状況では、OLT側からのDBA指示タイミングの調整によって、ONUからの上り信号を時間多重することができる。OLT−A(1−A)及びOLT−B(1−B)からは、それぞれ異なる波長での下りフレームを送信している。それぞれ、ヘッダ310h−1とペイロード310p−1から成るフレーム310−1からフレーム310−Nda、フレーム320−1からフレーム320−Ndbが1つのDBA周期(OLTからONUへの帯域通知周期)に含まれる。
それぞれのOLTが管理するONUに対しての帯域通知は、これら下りフレームのヘッダ情報として送信される。図25では、OLT−Aからの帯域通知300−AはDBA周期330−A(即ち330−B)の前半、OLT−BからONUへの帯域通知300−Bは、DBA周期330−Bの後半に割り当てている。
図25の下半分には、OLT−A(1−A)及びOLT−B(1−B)における時間軸で見た場合の、ONUへの帯域指示到着時及び各OLTにおける上り信号受信時刻を示す。OLT−A(1−A)からの帯域通知300−Aをヘッダ情報として持つフレームは、ONU−Aに時刻370−Aから時刻371−Aにかけて到着する。ONU−Aは、OLT−Aより通知された論理的距離に従って、一定の待機時間の後に、OLT−Aに対し上りフレームを送出する。処理時間350−Aには、ONU内処理時間と上り信号の伝送遅延時間を含む。OLT−Aから見た応答時間は、時刻360−Aから390−A(図面を390-Bから390-Aに修正。)までの時間となる。OLT−Bについても同様である。
これらの処理により、DBA周期330−A(330−B)で指示されたDBA周期401における上り信号は、それぞれ重複することなく正常に受信できる。OLT−A(1−A)が使用する通信時間340−Aには、OLT−B(1−B)には待機時間410−Bが、またOLT−B(1−B)の通信時間340−Bの間は、OLT−A(1−A)には待機時間410−Aが割り当てられる。
図26は、OLTが保持する帯域割り当てテーブルの構成例である。自装置配下のONUからの帯域要求と、他のPONとの登り帯域割り当て状況に基づいてPON制御部600内で計算された帯域割付情報は、図26のテーブルに格納される。OLTは、自装置に割り当てられた上り帯域指示タイミングにおいて、本テーブルのエントリを読出し、下りフレームのヘッダ情報に載せて配下のONUに向け送信する。図26(A)は、OLTが、自身に割当てられた上り通信時間内で、当該OLTが管理する帯域制御ID2501(通常、ONU設定/立ち上げ時にONU IDとの対応付けが行われる)に対して、既存の勧告に従う形で帯域を割り当てる場合のテーブル構成例である。割当て帯域2502は、(1)配下のONUからの通信要求と、(2)DBA制御部2600(図27参照)もしくはOLT間の相互通信に基づいて得られる、OLT毎の上り送信時間割当て量に基づいて算出される。その他情報2503は、例えばDBA周期内における割当状況(完了か未割当か)や、サービス利用状況に応じた帯域制御ID2501のエントリ管理(有効か無効か)等を示すために使用することが考えられる。本発明ではフラグに関して特に利用方法を限定しない。図26(B)は、OLTが自身に割当てられた上り通信帯域(タイムスロット)を把握しておき、その範囲内のみで、自身の配下にあるONUに対して有効な帯域を割り当てる場合のテーブル構成を示す。帯域制御ID2501に対し、通信時間2504内の指示では、割当て帯域2502に有効な値を設定して、対応するONUに送信許可を与える。他のOLTが通信すべき時間、すなわち待機時間2505内では、配下のONUに対し、ゼロ帯域を割当てることによって、通信を停止させる。ONUにおいては、本テーブルに基づくOLTからの指示に従い、帯域割付位置2504から帯域割当量2502のデータを送信する。なお、ここでは図示していないが、上り通信のタイミング指示に関しては、割付開始位置2504と割付帯域2502の組み合わせ以外に、割付開始位置2504と割付終了位置を指定することも可能である。後者の場合は、割付帯域2502のフィールドに代えて、割付終了位置を格納すれば良い。
帯域割付テーブルの構成そのものは、従来のPONシステムと同様である。但し、従来はDBA計算において想定する利用可能な上り帯域が、常にDBA周期分の帯域全体であったのに対し、本発明の場合では、その利用可能枠がDBA周期毎に変動することが特徴となる。実装の方法は複数考えられ、例えば、テーブル読出しタイミングを制御して必要な時間だけテーブルアクセスを行う方法、また帯域割付けタイミング以外にアクセスされるエントリに対してはゼロ帯域を指定しておくことで、DBA周期におけるテーブルアクセス自体は従来と同様に行うなどの方法が考えられる。例えば、前者に図26(A)、後者に図26(B)のテーブルを適用できる。前者は自身が帯域を制御する対象となる帯域制御ID2501のエントリ数のみメモリ空間を準備すればよいため、比較的ハードウエア規模を低く抑えられる。また、DBA自体の動作メカニズムは従来のシステムと同等でよく、その部分に関しては開発コストを低減できる効果がある。後者では、テーブル読出しの周期を一定に保ち、従来のメカニズムに従うDBA制御を行えば求める動作を実現できる。OLT毎に割当られる上り通信時間が変更されることがあっても、該当する帯域制御ID2501を選択して、必要なエントリに許可できる通信データ量を設定すればよく、エントリそのものの登録順などを書き換える必要が無い。従って、システム設計が比較的容易である。
図27は、図1のシステムにおいて外部にDBA制御部を備えることでOLT同士の帯域割り付け状況を管理する方法を図示したものである。DBA制御部2600をOLTの後段に備え、DBA制御部2600と各OLTとをDBA制御用回線2601−A,2601−B,2602、2603、2610で接続する。DBA制御部2600内には帯域割付管理DB2752(図28)を備える。OLT内には帯域情報DB602(図26参照)を備える。DBA制御部2600は、帯域割付管理テーブル2752を参照し、各OLTへ帯域割付情報を通知する。なお、DBA制御用回線は、論理距離制御情報を通知するための回線1501、1502、1503、1510と共有しても良い。
図28に、図27のシステムにおけるDBA制御部2600のブロック構成を示す。DBA制御部2600は、OLT側(NNI側)にイーサネット(登録商標)や10Gイーサネット(登録商標)、T1、E1を代表例とするTDMインタフェースなどの通信インタフェース若しくは独自インタフェースを備える。
DBA制御部2600の信号処理手順は、インタフェースにイーサネット(登録商標)を使用する場合を例にとると、次のような流れとなる。まずインタフェース2601−1〜2601−ncに信号が入力されると、その信号はインタフェース2710内で同期処理を行い、プロトコルが終端される。受信処理部2721では、受信したフレームのヘッダ情報に基づき、フレームに格納された帯域要求情報の対象となるOLTを識別する。受信処理部2721では、OLT識別情報や受信データ(帯域要求)の抽出を行う。ここでOLT識別情報には、MAC,IPはじめ経路情報と共に、VLANタグやMPLSラベルといった論理パス情報も利用可能である。個々のPONで利用可能な上り帯域を調整するため、抽出した情報は、帯域管理部2750内に送られる。下りフレーム生成部622は、帯域管理部2750の帯域割付管理DB2752に格納された情報に基づき、ヘッダ情報に配信先OLT識別子を含む使用可能帯域通知フレームを作成する。前記帯域情報は、通常、フレームペイロードに挿入されるが、ベンダ特有のメッセージなど特殊な用途において、ONUが認識できる場合には、フレームのペイロードに格納してもよい。ここで、帯域情報には、送信開始タイミングと送信量、若しくは送信開始タイミングと送信終了タイミングの組み合わせを含む。
本実施例におけるOLTの機能ブロック構成は図17に示すものと同様である。図17において、論理距離情報通知インタフェース及び送受信処理部を、帯域情報通知用インタフェース及び送受信処理部に置き換えればよい。これらのインタフェースは、双方の機能のために兼用しても良いし、別々に用意してもよい。これらの実装上の差異は本発明のポイントに影響を及ぼさない。
図29は、DBA制御部2600にて各OLTの利用帯域を計算するためのテーブル構成例である。この帯域要求管理テーブル2800は、図28のDBA制御部2600内に備えた帯域管理部2750に保持される。ここでは各OLTの識別子2801、それぞれのOLTから通知された要求帯域2802、それぞれに対する優先度2803及びその他フラグ2804を含む。優先度2803及びフラグ2804はオプションである。優先度2803は、全OLTからの要求帯域2802の合計が回線の許容帯域を越えるような場合などに利用できる。OLT毎に設定した優先度に基づいて、優先度の高いOLTから順に上り帯域の使用を許可する、または、優先度に応じた割合で許可する帯域を傾斜配分する、といったことが可能となる。フラグ2804は、OLT毎に、割り当てを行うか否か、あるいは、いくつかの周期に分けてOLTへの帯域を割り当てる場合に、あるOLTに帯域割当て済みか否か、など各エントリの状態を識別するために使用すると、上り帯域より効率的に割り当てられる。また、帯域を効果的に利用するため、各OLTから優先度の高い固定レート通信と優先度の低いベストエフォート通信とに種別を分類して待機要求を受信しても良い。その場合のテーブル構成例を図29(B)に示す。種別情報2805を含み、DBA制御部での帯域計算において固定レート通信用帯域を優先的に確保するなどの処理が可能である。
図30は、DBA制御部にて各OLTの利用帯域を管理するための帯域割付テーブル構成例である。この帯域割付管理テーブル2900は、図28のDBA制御部2600内に備えた帯域管理部2750に保持される。ここでは各OLTの識別子2901、それぞれのOLTから通知された要求帯域2902を含む。また、帯域利用を効果的に実施するため、各OLTから優先度の高い固定レート通信と優先度の低いベストエフォート通信とに種別を分類して待機要求を受信しても良い。その場合のテーブル構成例を図30(B)に示す。種別情報2903を含み、各OLTにおいて固定レート通信用帯域を優先的に割り当てるなどの処理が可能である。図29は、OLTから通知された情報を格納するためのテーブル構成であり、図30は、図29の情報に基づき、DBA制御部2600で算出された割当て帯域を保持するためのテーブルである。帯域要求のあるOLTについて、その優先度2803や種別2805を考慮した上で、割当て帯域を決定する。割当て帯域はそれぞれのOLTに対して図30(A)のように設定される。種別2805が与えられた場合は、種別毎に割り当てた帯域を図30(B)のように保持する。図30のテーブルの情報は、算出された条件と共に各OLTへ通知される。種別毎に算出した場合は、その種別毎に許可する帯域を通知する。このように情報を保持しておくことは、DBA制御を実現する上で不可欠である。実際には、これらのテーブルを2枚ずつ準備しておき、一方のテーブル(図29)に格納された帯域要求に基づくDBA計算を行う間、他方の帯域要求格納テーブル(図29)に、OLTからの次周期に対する帯域要求を書き込んでいく。また、帯域通知に関しては、DBA機能により許可する帯域を算出し、2枚用意された帯域割当情報テーブル(図30)の一方に書き込んでいる間に、他方の(その前の周期に算出された)帯域割当情報テーブルに記入済みの割当て情報を読み出し、各OLTへ通知する。
なお、OLTへ通知する情報には、各OLTが利用できる帯域、すなわち通信時間枠を明示的に与えることが望ましい。図30では、割付開始位置2904と割当帯域2902とで、各OLTが使用可能なタイムスロットが決定される。図示していない、前記の組み合わせの他、割当開始位置2904と割当終了位置を与えることによって、タイムスロットを決定することもできる。DBA制御部2600から明示的にタイムスロットを指定しない場合、すなわち割当開始位置2904を含まないテーブルを使用することも可能である。このときは、OLTの優先度若しくはOLTからの帯域要求到着順位など、何らかの順序付けに基づいて、利用可能な帯域の先頭から順に、上り帯域を割り当てていけばよい。
以上、OLTが配下のONUからの情報を収集した後にDBA制御部へ要求を通知するという2段階の処理を想定した説明を行ってきたが、ONUからの帯域要求を直接、DBA制御部へ通知し、DBA制御部にて全ONUへの帯域割り当てを決定することも可能である。この場合のDBA制御部2600内帯域割付管理テーブルの構成例を図31に示す。このテーブルは基本構成が図26(A)と同様であり、個々のONUへの帯域割付情報を通知する宛先として、対応するOLT識別子3001をテーブルに保持する点が異なる。このテーブルを構成するには、各OLTが配下のONUからの帯域要求を収集し、その情報をDBA制御部2600へ転送する。DBA制御部2600は、ODNの幹線光ファイバを共有する全ONUからの帯域要求を収集した後、各ONUに対して許可する帯域を算出し、その結果を帯域テーブルに格納する。前者は各OLTにおいてDBA処理を分散することになるため、個々の装置(OLT)に必要なメモリ(テーブルサイズ)が少なくなり、装置規模及び必要コストの観点で効果が期待できる。また、分散処理においては、各装置に必要な機能は、殆どの部分が既存の仕様に基づくものであり、既存装置へのインパクトが少ないことも利点となる。後者は、DBA情報を一括管理することになり、システム内でのPONIF間の動作の食い違いが起こりにくい。DBA制御部2600にて全情報を把握できるため、分散管理の場合に比較すると、個々のOLTにおける動作精度を考慮した上で設定されるべき、動作の不安定性を吸収するためのガード時間が少なくて済む。従って、より効率的に上り帯域を利用できる。
図32は、図27のシステムにおけるDBA制御方法の処理手順を示すシーケンス図である。ここでは、DBA制御部2600を用いた、DBA処理の基本的な流れを説明する。図を分かり易くするため、OLT1及びONU2をそれぞれ複数の装置を代表するものとして説明する。OLT1からONU2へのフレーム#i(3201)は、その以前にONU2から受信した上りフレームに含まれる帯域要求に基づいて算出された帯域許可情報を含む。上りフレーム#i(3202)によって、ONUは、自身の上り送信キューに蓄積された送信待ち情報量を基に、OLT1に対して次の周期での上り送信帯域を要求する。OLTは、配下のONUからの要求を集約し、自装置の管理するPONで要求する帯域総計をDBA制御部2600へ通知する(3207)。DBA制御部2600は、全OLTからの帯域要求を図29のテーブルにまとめ、その情報に基づいて帯域割付け量を算出し、結果を図30のテーブルに格納する。DBA制御部2600で算出された帯域は、フレーム3208にて各OLTへ通知される。OLTは、DBA制御部2600より与えられる情報に基づいて、自装置の配下にはるONUへの帯域割付け量を算出し、自装置内の帯域割付情報テーブルに格納する。その後、前記テーブルに基づいてONUへ許可帯域を送信する。
図32において、帯域情報の制御タイミングは、システム内に含まれる各ONUまでの距離のバラつきや、PON毎のDBA周期の設定にもよって異なる。例えば、基本的な場合として、DBA周期が全OLTで等しく設定され、全ONUまでの距離がほぼ等しい条件を想定すると、あるDBA周期内で個々のOLTがそれぞれ配下のONUからの要求を収集すると、次のDBA周期で、それらをDBA制御部2600へ集約する。その次の周期で、DBA制御部2600において各OLTへの帯域許可量を算出し、さらに次の周期で各OLTへ算出結果を通知する。各OLTでは、そこで初めて与えられた帯域内で配下のONUへの割当量を算出し、さらに次の周期でONU宛の帯域指示を含む下りフレームを送出する。
DBA制御部2600において、帯域割付を集中的に行う場合は、ONUが帯域要求を送出してから帯域割付が決定されるまでの時間を、更に短縮できる。OLT1はONU2からの要求を受信すると、直ちにDBA制御部2600へ通知する。DBA制御部2600では、ONUからの要求が一通り揃った段階(次の周期で)で全ONUへの帯域割付を算出する。更に次の周期で、ONUに対して算出結果を通知する。
図33は、図27におけるDBA制御部2600が、特定のOLT(ここではOLT−A(1−A))に備えらえた場合のシステム構成を示す。この場合、DBA制御部2600の基本機能は、図27のように外部に具備した場合と同様である。OLTA(1−A)は、自身の周波数発信器によってクロックを生成し、下り信号を通じてONUと相互にクロック情報を伝達する機能に加え、図27のDBA制御部2600と同様、他のOLTへ自身のクロックを配信する機能を有する。このときのOLTA(1−A)以外のOLTの装置構成は、図17に示したものと同様である。
図33のときのOLTA(1−A)のブロック構成を図34に示す。このとき、図17のPON制御部600内に、帯域要求DB2101、帯域割当DB2102を持つ。PON制御部600では、個々のOLTから収集した帯域要求情報を帯域要求DB2101に保持し、その情報に基づいて各OLTに対して通知すべき帯域割付量を計算する。計算結果は、帯域情報通信インタフェース3310を介して送出する。遅延情報通知は、併設したOLT数だけ分岐する。この分岐点は、インタフェース部3310内に存在しても、また外部のコネクタあるいは分岐回路によって実現されても良い。
この構成の場合、帯域要求DB及び帯域割付DBに格納されるテーブルは、それぞれ図27のシステムにおいてDBA制御部内に保持されるテーブルと同様である。また、帯域制御のシーケンスについても、図32のシーケンスにおいてDBA制御部がOLT-A(1-A)に置き換わるだけで処理手順は同様である。同期制御部200をOLT−A内に備えることにより、外部に装置を置く場合に比べてPONシステム全体をコンパクトにできる。これによって、PONシステムを制御するための回路規模を縮小でき、低コスト化が可能となる。さらには、制御機能を一体型にすることによって、外部装置との通信を行う場合に想定される、伝送処理効率のゆらぎや外部ノイズといった不確定性を回避でき、制御の精度を向上できる。特に併設したPONのうち最速レートで動作するOLTに本機能を実装する場合に、この効果が期待できる。
DBA制御についても、各OLTがそれぞれ相互に帯域割付情報を通知する場合を考える。このとき、システム及び装置構成は図21及び図22で説明したものと同様である。各OLTのPON制御部に保持されるデータベースについて、以下に説明する。
図35は、PONシステム間で自律的に帯域割付状況を共有するためのデータベース構成の一例である。図35(A)(B)は、それぞれPONシステム毎、即ちOLT毎に保持されるテーブル構成を示す。テーブル3400は、基本構成は図30(A)と同等であり、OLT毎に配下のONUに割り当てた帯域合計値3402と、その帯域の開始位置3403、帯域割付処理のOLT間優先度3404、及び各OLTで割り当てられる最大値3405を含む。優先度3404は、自律処理を行うために必要であって、システム設定時に割り当てられるか、以前の帯域使用状況に応じて随時更新することができる。それぞれ光ファイバを共有するOLTが配下のONUに対して独立に帯域割付を行うと、上り信号が重なり通信できない可能性がある。そこで、DBA処理にあたって、本テーブルに設定されたOLT毎の優先度を参照する。もし、自装置うよりも優先度が高いOLTの帯域割り付け処理が終わっていない場合、帯域割付を行わずに、待機する。もし、帯域割付を行っていないOLTが、自装置より優先度の低い装置のみであった場合、自装置の配下にあるONUが使用する帯域を算出して、算出結果を図35のテーブルに登録すると共に、他のOLTに対して通知する。また最大利用可能帯域は、特定のOLTのみが帯域を独占しないように設定することができるオプションである。
図35(B)は、DBA周期毎に、各OLTが自身の帯域割付順と、その時点での残り割当可能帯域を把握するためテーブルである。上記の自律的な帯域割当を行う場合、自装置の優先度を装置内に保持しておく必要がある。この優先度は、システム立ち上げ時に管理者によって登録されても良いし、帯域割付け処理の経過(累積利用帯域や、直前の帯域利用状況)に応じて、動的に相互の優先度が変更されるようにしても良い。残り帯域量3411は、ONUへの帯域割付量の計算に必要である。ONUからの要求帯域の総計が、この残り帯域3411を超えている場合は、ONUに対して、要求に相応した割合で、可能な量の帯域を割り当てることになる。なお、最大帯域3405が設定された場合も、これと同様の処理になる。残り帯域が、最大利用可能大域3405よりも小さい場合は、残り帯域を優先させて帯域割付処理を行う。帯域割付処理そのものは、従来のPON及び本発明でこれまでに述べてきた方法のいずれを用いることも可能である。
本実施例では、OLTがそれぞれ自身の配下にあるONUへの帯域割付と、相互に接続された他のOLTを含む併設グループ内の帯域利用状況とを管理する。自律的にこれらの情報を学習するため、OLTの増設が容易である。また、個々のOLTに保持されるデータベースが、集中管理に比較して小さくなるため、メモリ使用量や回路などハードウエア設計規模を抑えることができる。
図36は、図1のシステムにおいて、OLT-A(1−A)の配下にONUが追加された状態を示す。ONU-A-N+1(2−A-N+1)は、スプリッタ150から光ファイバ101−A-N+1で分岐している。OLT-A(1−A)の配下であるため、フィルタ110−A-N+1はONU-A-1〜ONU-A-Nのものと同等である。ONU−A-N+1の接続を検知すると、OLT-A(1−A)はONU-A_N+1の立上げ処理を開始する。ここでは特にレンジング処理の部分を代表して説明する。立上げ制御の際に特定のONUに対して、他のシステムが共存する環境で制御メッセージを送付する場合は、全て同様の方法を適用できるため、ここでの説明は、その利用ケースを限定しない。
図37は、OLT-A(1−A)におけるレンジング処理部分のフローチャートである。新規にONUが接続されたことを検知すると、ONUの登録と接続環境設定が開始される。あるいは管理ソフトウエアを通じて設定開始が指示された場合も同様である(3601)。新規ONUについては、ONU側での下り信号の同期及びフレームヘッダ情報の取得、OLTに対するONU識別番号の送信・登録が行われる。
ONU識別子が登録されると、OLTとONUとの通信時間から光回線区間の論理的距離を測定する処理(レンジング)が行なわれる。ここにおいて、新規ONUに対して返答を要請するためのレンジングリクエストをOLT−A(1−A)から送信するが、他のONUからの信号が別のOLTに送られていると、立ち上げ中のONUからの信号を見失う可能性がある。新規接続されたONUは、未だ距離が不明であって、OLT-A(1−A)としては、自身からのレンジングリクエスト送信後、どのタイミングでONUからの返信を受け取るかを予測できないためである。
そこで、レンジングのタイミングを決定した後(3602)、レンジングリクエスト送信に先立ち、光ファイバ100を共有する全OLTに対し、通信停止を通知する(3603)。続いてレンジングリクエストを通知し(3604)、レンジングリクエストに対する返答を正常受信できたか否かを確認して(3605)、論理距離を決定する(3606)。ここで決定されたEqDは、但し当該OLT-Aに属するONUのみを考慮したものであって、実際には、光ファイバを共有する全てのONUの論理距離を考慮しなければならない。そこで、EqD決定後、他のOLTに保持されるEqD情報を参照し、パラメータの調整を行なう(3607)。本発明では、レンジングタイミングを他のOLTに対して通知する処理3603、及びシステム全体でのEqD調整プロセス3607が特徴となる。3607については、次に説明する。
図38は、レンジング応答受信からEqD決定までのフローチャートである。プロセス3701においてレンジング応答から計算されるEqDは、OLT-A配下のONUを対象とした相対値である。これをシステム全体で調整するため、システムに登録されているEqDデータベースを参照する(3702)。EqDデータベースは。OLTのPON制御部に保持されている。これを参照した結果、もし新規に登録されたONUまでの距離が、システムに設定されている値よりも短い場合は、システム設定値を参考にして、新規ONUに設定するEqDを補正すればよい。一方、例えば新規ONUがシステム全体の中で最も遠い位置にある場合などは、システム全体の論理距離設定を、新規登録のONUに合わせて変更する必要が生じる。これらの一連の処理が、プロセス3703、3704となる。
システム上の論理距離、ONUに設定すべきEqD共に決定された後、当該ONUに対してEqD設定値が通知される(3705)。また、新規ONUに通知したEqDを、OLT内PON制御部600にあるEqD情報DB601に登録する。
EqD情報DB601を参照するプロセス3702、EqD調停プロセス3704、新規ONUへの設定EqD値をシステム全体のデータベースへ反映するプロセスが、本フローチャートの特徴である。併設システム全体で統合された労利距離を設定するには、このプロセスが必要である。システム内で、最も長く設定されているONUまでの距離にあわせてEqDを設定することにより、単独のPONインタフェースでは得られない、併設された他のPONインタフェースとの論理距離の統一が可能となる。これによって、DBA制御の周期及び周期の境界(開始、終了)タイミングを統一でき、システム全体で連動するDBA制御が可能となる。
図39は、OLT帯域制御における、他のOLTからのレンジング開始通知に対応する処理のフローチャートである。他のPON(OLT)からのレンジング情報を受信すると(3801)、そのレンジングタイミングに合わせて、自装置から配下の全てのONUに割当てる帯域をゼロとする(3802)次いで、レンジングを避けて利用可能なタイミングの中で、自装置配下のONUに対して帯域割り付けを行う(3803)。その計算結果は、DBA制御部内の帯域割付管理テーブルに登録し、当該テーブルは下りフレーム生成時に参照されてONUに通知される。OLTが相互にレンジングタイミングを通知することにより、レンジング時の上り信号の重なりを回避することが出来る。レンジングにかかる時間は、例えば光ファイバ20kmのGPONの場合は2フレームを割り当てることとされている(非特許文献3)。そこで、レンジング処理の通知を他OLTから受信した後、当該OLTが発出するレンジングフレームの通知タイミングに応じて自装置の配下にあるONUに対する、上り通信帯域の割付を停止する。あらかじめレンジングタイミングを相互通知することにより、PONインタフェース間相互の干渉を避け、効果的な上り帯域の制御が可能となる。
本フローチャートは、OLTが自律的に連携して帯域共有を行う場合の手順を示す。また、DBA制御部から各OLTに通知される利用可能帯域内にレンジングタイミングが含まれる場合にも同様の手順を利用できる。レンジングタイミングから上り通信停止フレームを決定するプロセス3802、使用可能な(残りの)帯域を使用して帯域割付を行なうプロセス3803が本発明の特徴となる。
以上は、併設したPONシステムでDBA周期を等しくとった場合の上り帯域制御方法である。次に、それぞれDBA周期の異なるPONが光ファイバを共有する場合について述べる。
PON毎にDBA周期が異なる場合、各システムが任意のタイミングでONUに対し帯域許可を与える。但し、ONUからの上り信号に関して、システム間で互いに信号送信時間が重ならないことが必要である。各システムがそれぞれ一定のDBA周期で帯域制御を継続しながら、上り帯域割付において、常にシステム間の信号配置を制御することは、DBA周期が統一されている場合に比べ、極めて困難である。これを実現するために、以下の方法が考えられる。
第1の方法は、DBA周期の設定を、併設するシステム間で互いに定数倍になるように設定するものである。帯域要求を収集する期間と、DBAによる帯域割付結果を通知する期間とを合わせた処理時間を複数の装置間で一定に保つことで、上り帯域の管理を行い易くなる。また、一定のタイミングで帯域割付処理を行うため、例えばTDM信号のような、通信タイミングと通信データサイズが毎周期で固定的に決まっているような情報が通信データに含まれる場合に、上り通信のための帯域予約を行い易い、という利点がある。
図40に、第1の方法における上り通信時の帯域割当て方法を示す。複数のOLT(ここではn台)が存在し、それぞれのOLTにおけるDBA制御周期が異なる場合の上り帯域の利用スケジューリング方法の一例を図示している。OLT1では、スロット4211で受信した上り信号の帯域要求を集計し、スロット4212にて帯域を計算し、帯域割付情報データベースに格納する。次の時間枠4213で前記テーブルを読み出してONUへの帯域通知を行い、その情報は更に次の周期4214で反映され、ONUからの上り信号として発信される。同様のサイクルを、他のDBA周期を持つPONにおいても実行する。ここで、光ファイバの通信距離に応じて、OLTからの帯域指示が反映される時間が異なることを考慮した上で、EqDは調整されている。例えばOLT2において、タイムスロット4213で送信された帯域支持がスロット4214で反映され、スロット4223で通知された指示がスロット4224で反映されることにすると、システム間で一定の動作手順を保った状態で運用を継続できる。
図40の場合に、OLTからONUへ割り付けられる帯域指示の形態は、複数考えられる。一つはDBA周期が共通の場合と同様、ONUにおける下りフレーム(帯域指示)受信タイミングを基準とした送出時刻及び送信データ量の指示である(図26参照)。この場合は、例えば帯域制御の周期境界4202を基準として、4203までの相対時刻を指定する。GPONの場合で説明すると、125マイクロ秒フレームを超えて帯域を指示する。すなわち、周期境界4202から580マイクロ秒後に送信開始して、500バイトを送信せよ、という指定を行う。図41はその様子を示しており、OLTnが上り帯域に指示する送信タイミング4301は、複数の125マイクロ秒基本フレームにまたがる形で割当てられる。もう一つの方法は、毎回、125マイクロ秒の下りフレーム到着を基準として帯域を指示する方法である。このときは、DBA周期を識別するため、DBA周期内での基本フレームのカウンタを備え、フレームカウンタ(即ちフレーム識別子)とフレーム内での帯域割付位置とを通知する。図42は、このときの帯域指示方法を示している。上り帯域で送信すべきデータ4301を、4301−1〜4301−6に分割し、それぞれを送出するための指示を6つに分割してONUへ通知する。具体的には、最大のDBA周期である、4202から4203の間に含まれるフレームに識別子(ここでは順序番号とした)を指定し、それぞれのフレーム内での送信位置を指定する。分割フレーム4301−1の送信開始位置は、基準フレーム#2の、時刻4402であって、そこから基準フレーム#2で送信できるだけのデータを送信する。分割フレーム4302−2〜4302−6は、送信開始位置は各分割フレームの先頭である。最後の分割フレーム4301−6は、終了位置が分割フレームの途中であり、例えばこの後に別のデータを送信するように指示しても良い。
図41及び42の場合の帯域割付情報テーブルの構成例を図43に示す。図26の基本的な帯域割付情報に、フレーム識別子4501を付加したものである。フレーム識別子4501は、帯域割付開始位置と帯域割当量(若しくは、帯域割付開始位置と帯域割付終了位置)と共に、ONUへ通知される。ONUでは、上りフレームカウンタを備える共に、これらの情報から次に送信すべきタイミングを認識する。また、帯域割付開始位置は、図41の場合には、OLT毎のフレームカウンタの開始時点(すなわちDBA周期境界4201,4202,4203)を基準とした相対時刻を格納し、図42の場合には、125マイクロ秒の基本フレームの開始時点からの相対位置を格納する。なお、図41の場合には、フレーム識別子4501は必要としない。
図44は、図41及び42の場合に、OLTからONUへ通知される帯域情報を図示したものである。
下りフレームはヘッダ部PDBd(4410)とペイロード4420とから構成される。このうち、ヘッダ部には、光信号を同期するための信号パターンであるPsync(4411)、個々のONU2に対して次の送信周期(DBA周期)での帯域割当てを指示するためのUS BWmap (UpStream Bandwidth Map)フィールド4413を含む。その他フィールド4412には、ONU起動、障害検出、及びその他制御を行うためのメッセージフィールドPLOAMd (Physical Layer OAM for Downstream)、暗号化処理などで使用するための、複数の基本フレームに跨るスーパーフレームカウンタ(図示せず)を提供するIdent (Identification)フィールドを含む。また、ヘッダ4410には、US BWmapで帯域を指示するAlloc-IDの個数(すなわち、ヘッダのサイズを与えることを意味する)を示すPlend (Payload Length Downstream)フィールドを含む。
US BWmap(4413-1〜4413-n)には、Alloc-ID毎に、Alloc-ID(4413-1a)、Flags(4413-1b)、Sstart(4413-1c)、Sstop(4413-1d)、CRC(4413-1e)を含む。Sstart(4413-1c)は、帯域割当て開始位置、すなわち当該Alloc-IDで送信制御されるデータの送信開始タイミングを示す。また、Sstop(4413-1d)は帯域割付終了、すなわち送信終了タイミングを指示するためのフィールドである。
図41の場合に下りフレームで帯域を指定するには、基本フレーム長(GPONでは125マイクロ秒)に束縛されずに、Sstart(4413-1c)、Sstop(4413-1d)で送信タイミングを指定する。Sstart(4413-1c)及びSstop(4413-1d)の上限値は、DBA周期境界4202〜4203に含まれる長さであって、それは時間もしくはバイト数換算で表される。
図42のように帯域を指示する場合、Sstart(4413-1c)、Sstop(4413-1d)の上限は、一つの基本フレームに含まれる時間(125マイクロ秒)あるいはそれをバイト数換算した値となる(GPON 2.4Gbpsの場合は、38880 bytes)。その代わりに、図44(b)に示すようにDBA周期4202〜4203に含まれるフレーム数カウンタ(4413-1f)を帯域指示と同時に通知し、システム全体で見た場合の、上りフレームの時分割多重制御を行う。
図45は、図41及び42の帯域制御を行うためのONU機能ブロック図である。従来の基本的な構成に対し、上りフレームカウンタ4720を備えた点が異なる。
ONU2は、光ファイバを終端する光モジュール340、PON終端部330、メモリ350、Ethernet回線301を収容するEthernet回線終端部310、TDM回線302を収容するTDM回線終端部320により構成する。
Ethernet回線終端部310は、Ethernet回線301を介して入力される信号からEthernetフレームを抽出し、PON終端部330に通知する。Ethernet回線終端部310で抽出されたEthernetフレームは、メモリ350のデータキュー352に格納される。データキュー352は、キュー制御部351で管理し、PON終端部330の上りフレーム生成部332からメモリ350に通知される指示に従い読み出される。また光モジュール340で受信した下りフレームから再構成されるEthernetフレームを、メモリ350のデータキュー352内に備える下りEthernetフレーム用のデータキュー(送信キュー)に格納する。キュー制御部351内の下りキュー制御部は、Ethernet回線終端部310からの読み出し指示に従い、データキューから順次フレームをEthernet回線終端部310に転送する。
データキュー352は回線終端部310、320にも備えてあってもよく、回線終端部310、320と主信号転送路が確保できていれば、PON-IF300の機能に影響ない。PON-IFはASIC上に構成される一連の機能ブロックの集合であり、上述する処理を行える構成であれば、どの構成を採用しても構わない。
PON終端部330の下りフレーム解析部331は、下りフレームバッファ333に蓄積された下りPON区間通信フレームからEthernet(及びTDMデータ)を抽出し、回線終端部310、320より送出できるフォーマットにデータを再構成する。下りフレーム解析部331はまた、OLT1から通知される装置制御情報及び帯域割当情報を抽出する。装置制御情報は装置外部もしくは内部に接続されるCPUで処理される。上りフレームへの帯域割当(個々のONU2に対する送信許可)情報は、PON終端部330に備えた帯域割当情報データベース334に保持される。このデータベースは、上りフレーム生成部332より参照され、上りフレームでの送信データ量(帯域割当サイズ)はキュー制御部351と連動しデータキュー352の読み出し量の制御に使用する。
帯域割当て情報334に基づいて上りフレームを送出するために、送信制御部4710を備える。送信制御部4710は、帯域制御境界が来るタイミングと、その中でのフレームカウンタを備えており、これと帯域制御部334の情報を照合して上りフレームを送信する。図42のケースは、図41のケースに加えて、帯域割当て情報として図44(b)に示したフレームカウンタを含む。よって、帯域割当て情報334に含まれる情報が図41と図42では多少異なる。図41では、複数のフレームに跨ってデータを送信するため、データ量が多い場合にも当該データに付与されるヘッダは一つでよい。これに対し、図42の方法では、フレームを分割する度に当該データの分割片に対してヘッダを挿入する必要があり、伝送帯域の利用効率に関しては図41の方が有利である。一方で図41のケースでは物理層フレーム(基本フレーム、つまりG-PONではGEMフレーム)よりもデータフレームが長く、当該データの送信時の分割、及び受信時の再生に関して分割数とフレーム長を、基本フレームを跨って管理する仕組みが必要である。図42では基本フレーム内で全データフレームが完結するため、フレーム生成及び終端に関しては既存の勧告の枠組みで容易に実現できる。
図41の実施例において、ONU内の上りフレームカウンタは、併設システム全体に共有される基準周期、すなわちDBA周期境界4201と4202の時点でリセットされる。このDBA周期境界4201、4202からの相対的なフレーム数をカウントするために使用する。このフレームカウンタを用いることで、125マイクロ秒フレームの枠を超えてOLTからONUへ送信タイムスロットを指定する際に、既存の125マイクロ秒分のデータ送信量(バイト若しくはビット数)とフレームカウンタ値だけを通知すればよいため、下りフレームで送信する際の情報量を抑えることができる。送信タイミング指示を行う上で、ことが可能になる。図42の場合のフレームカウンタに関しても、効果は同様である。 逆に、フレームカウンタを使用せずに、基準周期境界(ここではDBA周期境界4201、4202)からの相対位置を直接指定する方法では、125マイクロ秒フレーム1つに比べて送信できるデータ量が多いため、送信位置を指定するために多くのビット数が必要となる。その半面、送信開始及び終了位置を指定するビット数を拡張することにより、従来の技術の枠組みで実現可能である。
第2の方法は、併設された各システムがそれぞれ独自のタイミングで上り帯域を制御する方法である。この場合は、他の上り帯域の状況を、毎周期確認しながら上り帯域の予約を行う必要がある。ここで必要となる機能は、他システムとの上り帯域予約順位を決定するための優先度設定(図35にて説明)、他システムが使用する帯域を識別するための、基準タイミング及び基準フレームの設定である。後者は、システム別のDBA周期とは別に、システム内全OLTにて共通に把握するべきパラメータであって、これを用いることで、基準周期に対して、個々のPONが自身のDBA制御タイミング及び周期をマッピングできる。
図46に、第2の方法における上り通信時の帯域割当て方法を示す。複数のOLT(ここではn台)が存在し、それぞれのOLTにおけるDBA制御周期が異なる場合の上り帯域の利用スケジューリング方法の一例を図示している。OLT1及びOLT2の動作は、図40と同様である。ここではOLT1とOLT2が管理するそれぞれのONUからの上り通信タイミングが異なる様子を示している。前述した通り、光ファイバの通信距離の差を考慮したOLT間のEqD調整は第2の方法については必ずしも必要ではない。
図46の場合にも、OLTからONUへ割り付けられる帯域指示の形態は、複数考えられる。一つはDBA周期が共通の場合と同様、ONUにおける下りフレーム(帯域指示)受信タイミングを基準とした送出時刻及び送信データ量の指示である(図26参照)。この場合は、図40と異なり、共通の周期境界が存在しない。従って、例えば共通のフレームカウンタとして使用する基準タイミングの境界を全OLTで共有し、その時刻に対する相対的な時刻を指定する。GPONの場合で説明すると、125マイクロ秒フレームを超えて帯域を指示する。すなわち、共通カウンタ境界4801や4802をゼロ点として、580マイクロ秒後に送信開始し、500バイトを送信せよ、という指定を行う。図47はその様子を示しており、OLTnが上り帯域に指示する送信タイミング4301は、複数の125マイクロ秒基本フレームにまたがる形で割当てられる。もう一つの方法は、毎回、125マイクロ秒の下りフレーム到着を基準として帯域を指示する方法である。このときは、DBA周期を識別するため、DBA周期内での基本フレームのカウンタを備え、フレームカウンタ(即ちフレーム識別子)とフレーム内での帯域割付位置とを通知する。図48は、このときの帯域指示方法を示している。上り帯域で送信すべきデータ4901を、4901−1〜4901−6に分割し、それぞれを送出するための指示を6つに分割してONUへ通知する。具体的には、共通フレームカウンタ周期である、4802から4803の間に含まれるフレームに識別子(ここでは共通フレームカウンタ)を指定し、それぞれのフレーム内での送信位置を指定する。分割フレーム4301−1の送信開始位置は、基準フレーム#2の、時刻5002であって、そこから基準フレーム#2で送信できるだけのデータを送信する。分割フレーム4902−2〜4902−6は、送信開始位置は各分割フレームの先頭である。最後の分割フレーム4901−6は、終了位置が分割フレームの途中であり、例えばこの後に別のデータを送信するように指示しても良い。
図47及び48の場合の帯域割付情報テーブルの構成例を図49に示す。テーブル構成は図43と同様である。図45の場合、帯域割付位置5101は、共通フレームカウンタの開始時点からの相対時刻を示し、フレーム識別子5102は必要無い。図48の場合、帯域割付位置5101は125マイクロ秒の基本フレームの開始時点からの時刻であって、基本フレーム毎に更新される。また、フレーム識別子5102は、基準フレームのカウンタであって、帯域割付開始位置と帯域割当量(若しくは、帯域割付開始位置と帯域割付終了位置)と共に、ONUへ通知される。ONUでは、上りフレームカウンタを備えておき、これらの情報から次に送信すべきタイミングを認識する。
OLTからONUへ通知される帯域情報は、図44と同様である。図49の説明のように、各フィールドの示す内容は異なる。
ONU機能ブロックについても、図45と同様の構成が適用できる。図49の場合は、フレームカウンタは、共通フレームのカウンタとなる。
図47では、複数のフレームに跨ってデータを送信するため、データ量が多い場合にも当該データに付与されるヘッダは一つでよい。これに対し、図48の方法では、フレームを分割する度に当該データの分割片に対してヘッダを挿入する必要があり、伝送帯域の利用効率に関しては図41の方が有利である。一方で図47のケースでは物理層フレーム(基本フレーム、つまりG-PONではGEMフレーム)よりもデータフレームが長く、当該データの送信時の分割、及び受信時の再生に関して分割数とフレーム長を、基本フレームを跨って管理する仕組みが必要である。図48では基本フレーム内で全データフレームが完結するため、フレーム生成及び終端に関しては既存の勧告の枠組みで容易に実現できる。
図47の実施例において、ONU内の上りフレームカウンタは、併設システム全体に共有される基準周期、すなわちDBA周期境界4801と4802の時点でリセットされる。このDBA周期境界4801、4802からの相対的なフレーム数をカウントするために使用する。このフレームカウンタを用いることで、125マイクロ秒フレームの枠を超えてOLTからONUへ送信タイムスロットを指定する際に、既存の125マイクロ秒分のデータ送信量(バイト若しくはビット数)とフレームカウンタ値だけを通知すればよいため、下りフレームで送信する際の情報量を抑えることができる。送信タイミング指示を行う上で、ことが可能になる。図48の場合のフレームカウンタに関しても、効果は同様である。 逆に、フレームカウンタを使用せずに、基準周期境界(ここではDBA周期境界4801、4802)からの相対位置を直接指定する方法では、125マイクロ秒フレーム1つに比べて送信できるデータ量が多いため、送信位置を指定するために多くのビット数が必要となる。その半面、送信開始及び終了位置を指定するビット数を拡張することにより、従来の技術の枠組みで実現可能である。
上記第1の方法においては、DBA制御部にて帯域割付を行う集中制御、OLT毎のDBA処理とDBA制御部におけるOLT間の調停を組み合わせる2段階制御、及びOLT間で自律的に帯域予約情報を伝達し、OLT優先度に応じて帯域予約を行う分散制御のいずれの方法も適用できる。
集中制御におけるシステム構成は、DBA周期を統一した場合と同様である。DBA制御部内にて、上り帯域の利用(予約)状況を管理しつつ、OLT毎に設定されたDBA周期で帯域割付を計算する。2段階制御におけるシステム構成も、DBA周期を統一した場合と同様である。OLT毎に利用可能な通信データ量と通信タイミング(上り帯域割付位置)をDBA制御部にまとめて管理し、各OLTにおいて、配下のONUに割り付ける帯域を管理する。分散制御の場合にも、単一DBA周期の場合と同様のシステムとなる。
以上の動作を実現するための鍵は、帯域割付位置の管理方法である。DBA周期が単一の場合は、全OLTが同じ周期、同じタイミングでDBA制御を行っていたため、上り送信タイミングを決定する基準となる下りフレームの到着時刻、またその時刻を基準として帯域割付の対象となる上り帯域の送信可能期間など、共通の基準を持つことが出来た。第1の方法を効果的に適用するには、DBA周期の境界をシステム内で統一することが望ましい。このとき、各OLTは、自身のDBA周期内におけるフレーム数を管理するカウンタを備える。同時に、システム同期の確認に利用するため、最長のDBA周期で動作するフレームカウンタを備えることが有効である。これらの情報を備えることにより、他のOLTが予約する上り帯域の割付位置を把握しつつ、自身の配下のONUへの帯域割付を行える。
第2の方法についても、同様に全ての形態で実現できるが、分散制御の形態がもっとも適切と考えられる。このとき各OLTの持つDBA周期と独立に、システム全体での基準となるタイミング制御を行う。そのため、システム内で重複しない十分に長いカウンタを基準カウンタとして全OLTへ配布する方法が利用できる。各OLTは、併設OLTのうちの一つ、あるいはDBA制御部から送信される基準カウンタを受信すると、そのカウンタと自身のDBA周期及びタイミングをマッピングして、システム内の他のOLTが使用する上り帯域との整合性をとる。
図50は、第1及び第2の方法において、DBA周期がそれぞれのOLTで異なる場合に、DBA制御部で保持する帯域利用状況管理テーブルの構成例である。基本構成は図30と同様である。ここで、OLT間で互いの上り帯域利用タイミングを把握するため、共通のカウンタ5101を、帯域割付位置情報として追加する。第1の方法において、フレームカウンタが必要な場合(図44)は、ここにDBA周期境界4201、4202、4203時点から数えたフレーム番号(帯域割付位置を含む上りフレーム番号)が格納される。第2の方法では、図47、図48共に共通カウンタが必要である。この場合は、フレームカウンタ5101に、システム共通のカウンタ値を格納し、各OLTへ帯域割付情報として通知する。
第1の方法ではDBA周期がそれぞれ整数倍になっているため、DBAによる帯域割付量の計算及び通知の周期が、全システムで同期する。そのため、上り帯域の利用状況を把握しやすいこと、またシステム動作のパターン(帯域割付け計算の重なり方)が限定されることから、システム設計が比較的容易であることが挙げられる。
第2の方法は、DBA周期若しくは其のタイミングがOLT毎に異なる。そのためリファレンスクロック及びリファレンス周期を各OLTに供給し、それぞれのOLTがリファレンスクロックにマッピングされた上り帯域情報から、上り帯域割付状況を把握する。比較的帯域情報の共有のアルゴリズムが複雑になるが、その反面で個々のOLTでは自由なタイミング(自由なDBA計算周期)で動作することが可能である。
第1の方法では、ONU側の上り送信開始タイミングを統一するため、DBA周期を統一した場合と同様、システム間でEqDを調整する必要がある。すなわち、全システム(OLT)が同時にONUに同じ送出指示を送信した場合、幹線光ファイバ上で観測される上り通信データは、同一タイミングで重なるように、EqDが調整されなければならない。EqDの調整方法及び効果は、DBA周期を等しくとった場合と同様である。
第2の方法では、他のシステムのEqDを考慮する必要は無い。但し、基準カウンタにDBA動作をマッピングする際に、マッピングに応じたタイミングでONUからの上り信号が光ファイバ上で観測できるよう、EqDを設定する。
従って、第1の方法において、ONU新規追加時のレンジング方法は、DBA周期を等しくした場合と同様の方法が適用できる。第2の方法については、通常のレンジング結果であるEqD初期値と、マッピング情報から要求される受信タイミングとを比較した上でEqDの修正値を決定する。
図51は、この場合のレンジング処理のフローチャートを示す。OLTが配下のONUのレンジングを行い、その中で最も長いもの、即ち従来のレンジング過程において、EqD計算の基準とすべき距離を取得する(5301)。次に、自身のDBA周期設定と、自装置内のフレームカウンタ、及び必要な場合には更にシステム共通カウンタとのマッピング情報を確認し(5302)、自装置からの帯域割付に応じるONUからの返答時間(フレーム数)を決定する。比較の結果、EqDの調整が必要と判断されると(5303)、その補正値を算出し(5304)、各ONUへEqD補正を通知する(5305)。その他の動作は、図38と同様である。
下り波長が共通で、上り波長が異なる併設システムの場合、併設したシステム間で、PON下りフレームを共有する。本システムの基本構成は図1と同様であり、波長の割当てのみが異なる(図52)。
本システムにおいて、OLT-Aからその配下のONUへの下り信号は、全PONインタフェースで同一の波長を使用する。図中ではλdと記載している。上り信号では、OLT-A配下のONUはλu(A)、OLT−B配下のONUはλu(B)など、それぞれPONインタフェース(OLT)毎に異なる波長を用いてOLTへ信号を送信する。全ONUからの上り信号はOLT-A及びOLT-Bに等しい強度で分配される。OLT側には、PON毎に使用する上り波長以外の波長をカットするためのフィルタを備えるか、図52のWDMの位置に、波長毎に送出先を振り分ける分光器を備えることにより、各PONの信号を分離できる。一方、WDM120で合波された下り信号は、光スプリッタ150(上り方向の信号にとっては光カプラとなる)を介し、さらに個々のONUに接続された支線光ファイバ101−A−1〜101−A−NA、101−B−1〜101−B−NBを通過してONUへ送られる。光スプリッタで全方向に分配された光は、それぞれのONUに同様に到達する。そのためONUでは全OLTからの信号を受信する。ONUは自身に必要な情報か否かを、例えばPort-IDやVLANタグ、あるいはMACアドレス等、PON区間用ヘッダ、L2ヘッダ、もしくはL3などその他上位ヘッダに含まれる識別子を利用して判定する。
さらに複数のOLTが光ファイバ100を共有する形態が考えられる。以降の実施例ではOLT-AとOLT-Bを用いて説明するが、OLTの接続数、すなわち光ファイバ100を共有するPON数が増えても本発明の特徴を失うことは無く、同様に適用可能である。このとき、OLT接続光ファイバ112、及び113はさらに別のOLTを接続するために使用する。また、支線光ファイバ102、103は、前記の新しいOLTが管理するONUや、OLT-AもしくはOLT-Bが管理するONUを追加又は移動する場合に使用する。
図53では、図52のシステムを運用するために必要となる、時分割多重方式を用いた下り通信方法を示す。図52のシステムでは、OLTからの下り信号には全OLTが同一の波長を使用する。受信側であるONUでは、各OLTからの信号を波長によって識別することができないため、フレームに含まれる各種ヘッダ情報(図52の説明参照)に基づいて識別する。OLTは複数のONUとの通信を行うため、下りフレームに宛先ごとの識別子(GPONの場合はGEMヘッダのPort−ID)を含むフレーム(GPONではGEMフレーム)を用い、時間多重して通信を行う。ここでは、単一の光ファイバを共有する全てのONUとの通信において、時間多重による通信を行う。OLTが複数存在し、個々のONUがそれぞれ収容されるOLTが異なる場合も含む。
従来のシステムでは、上り波長が異なるOLTが個々のONUへ通信時間を割り当てる際、自身の配下にあるONUとの通信状況のみ管理していた。これに対し、本システムでは、OLTが帯域制御を行う際に、信号の重なりを防ぐため、他のOLTが使用している上り通信時間を避けなければならない。
図53は、OLT1からONU2への下りフレーム送信時の、ファイバ上へのフレーム多重方式を説明する図である。図の右側から図の左側へフレームが送信される様子を示す。尚、図53は、図の左側が最も早く送信されたデータであり、右側に向かってOLT1からの送出時間が遅いフレームの配置状況の一例を示す。点線が基本フレーム周期(例えば125マイクロ秒)を示す。
OLT1からそれぞれ発信されたフレームは、WDMを通過して一本のファイバに多重される。図中、4101−1〜4101−nは、それぞれONU2#1〜ONU2#nに向かい送出された固定帯域通信データの送信位置及びサイズを表す。フレーム4102〜フレーム4107は、各ONU2へ送信される可変帯域データを示す。可変帯域データは、OLTにおいて固定帯域データと多重化時に重ならないよう挿入する。図53のように時分割多重方式で下りフレームを送信することによって、下りに同一波長を用いる場合でも複数のシステムを同一ファイバ上で併用できる。この方法は、新旧双方のシステムで光モジュールを共用でき、さらにこの機能を備えておけば、同一システムのアップグレード時などに利用できる。
併設PONシステムにおけるクロック同期方法については、光信号及び回路の制御クロックに関するものであって、通信用の波長の割当て方とは関係ない。従って、図3〜図13の説明と同様の方法で実現できる。
図58に、下り波長共有の場合のクロック同期方法を示す。OLTからの下り信号をフィードバックするシステムにおいてクロックをモニタする際、図8で波長毎に信号を分けていたWDM850に代え、強度に基づいて発振元のOLTを識別する強度識別器5850を備える。◎→図58は省略可能ですね・・。
OLT毎に、クロック同期の段階ではそれぞれ強度の異なる信号を送出し、信号をフィードバックする際に、強度に基づきクロックの位相を抽出できるようにしておく。送信される信号の例を図59に示す。ここで、5910はOLT-A,5920はOLT-Bからの送信信号を示す。OLT-Aの信号強度5931とOLT-Bの信号強度5932には強度差があるため、光信号を受信した際の強度合計値から、クロックの位相を割り出すことができる。
下り波長が同一の場合に、OLTから送出するクロックを同期することに加え、ONU側で取込むクロック信号を高速側の信号とすることによって、精度を向上することができる。
波長が異なる場合の説明では、例えば10Gbps用OLTのクロック信号を用いて10Gbps伝送用のONUを動作させ、1Gbps用OLTのクロック信号を用いて1Gbps用ONUのクロックを制御していた。前述のように、PON併設システムでは、レンジング基準点の位置を正確に調整することが重要である。そこで、10Gbpsクロックを1Gbps用ONUの同期に使用することで、1Gbps用ONUのクロックズレを少なくする。1Gbpsクロックが1クロック変動することによって、10Gbpsクロック換算で10クロックの変動が発生する。従って、低速クロックの同期、監視についても高速クロックを使用することで、低速信号のクロック変動を考慮したガードビットの設定を小さくでき、全体として帯域利用効率の向上につながる
このとき、ONUには、高速クロックに低速クロックを載せるための、低速クロック用周期信号を内部生成し、10Gbpsクロックに対して1Gbps信号をマッピングしておく。10Gbpsクロックに1Gbpsデータ信号を載せる際にはONU内部で10Gbps信号を基に生成する1Gbpsに対して信号を載せて発振する。そして、生成した1Gbps信号の区切りを、10Gbpsと供に通知される前出の1Gbps周期信号のタイミングに一致するよう調整する。
上記のONU構成を図60に示す。ONUの同期制御部は、光モジュール及びCDR部に含まれる(図45の340)。同期制御部6000は、クロック受信部6010(これは光モジュールとのインタフェースと考えても良いし、光モジュールそのものの機能を服喪と考えても良い)光デバイスを介してクロック信号を受信すると、クロック再生のため信号同期と位相抽出処理を行う。ここで得られたクロックは、その後分周されて装置内クロックとして活用される。本実施例では、次に低速クロック生成部6030にて低速クロックを発生させ、クロック比較部6040にて、高速クロックとの位相比較を行う。ここで得た位相情報は、ビットバッファ6050に送られる。ビットバッファでは、位相情報から低速クロックと高速クロックのタイミング調整を行う。その結果得られた低速クロックを、クロック送出インタフェースより装置内に送り出す。送出インタフェースの機能は、ビットバッファに含まれても良く、必ずしも別デバイスである必要は無い。これは本発明のどの図においても同様である。また、装置内用クロックについては、低速クロックから生成する例を述べたが、高速クロックから生成しても構わない。
下り波長のみが同一の場合、OLT側ではPONインタフェース毎に波長が異なるため、それぞれOLTが任意の周期及びタイミングでDBA制御を行えばよく、併設されたPONの全てについて論理距離を統一する必要性は無い。但し、上りフレーム伝送自体がそれぞれ異なる波長であっても、上り帯域割り付けを通知する下りフレームの送信タイミングを、併設されたOLT相互の連携で決定する(時間多重送信するタイミングを調停する)必要があるため、通常のPONよりも余裕を持った論理距離設定にしておくことが望ましい。
下りフレームの送信方法には二通り考えられる。一つには、下り周期フレーム全体のヘッダを共有し、ペイロード部分へのデータの時間多重によって情報を送信する場合である。GPONでは、PCBdヘッダを共有(代表OLTが発信)し、ペイロード部分へのGEMフレームを挿入するタイミングを時間多重する。たとえばGPONの場合に、下り周期フレームヘッダPCBdの到着時間を基準として、ONUからの上り通信(応答)タイミングが決定される。従って、全OLTから同じヘッダを送信する必要が無く、下り帯域を有効に利用できる。このときは、全OLTでヘッダを共有することになるため、ヘッダに含まれる、ONU2向けの指示である上り帯域制御情報を、ヘッダを送出する代表OLTへ通知する。
図54は、下り周期フレーム全体のヘッダを共有するときの下りフレーム送信方法を示す。この図では、GPONのフレームを例として、下りフレームの構成方法を説明する。図54に示したのは、GPONの下りフレーム構成そのものである。従って、本実施例に関連する部分以外は、説明を割愛する。
光ファイバを共有するPONシステムの全てが、下りフレーム5400のヘッダ部分5410−1、5410−2(以下、5410とする)を利用する。この中でもPLOAMd5413、US BWmap5460は、従来のように単一のOLTからのメッセージ及び帯域指示ではなく、複数のOLTからのメッセージ及び帯域指示を含む。なお、PLOAMd5413は、ONUの立上げやONU-ID、Alloc-IDの割付け、及び運用中の距離や障害監視などの制御に使用するフィールドである。US BWmap5460は、個々のONUに対して、上りフレームを送信するタイミングを通知するためのものであって、このフィールドには、54611〜54615で示したフィールド群を一セットとして、通常は複数のセットが挿入される。ここで使用するAlloc-ID54611は、帯域制御の単位を規定するパラメータであって、ONU2毎に一つ以上割り当てる。各OLT1は、自装置の配下にあるONU2に対する帯域指示(すなわち、US BWmapフィールド5460に挿入すべき情報)を、ヘッダを送出する代表OLTへ通知する。OLT間の通信に関しては、内部フレームのように装置内のみに有効なフレーム形式を規定しても良いし、Ethernetなど既存のプロトコルを用いて伝達しても良い。実装に関しては多くの方法があり、いずれの方法を用いても、本発明の本質には影響しない。
下りフレーム5400のペイロード部分5420には、一つ又は複数のフレーム(GPONではGEMフレーム)が挿入される。このフレームは、各OLTが、自身の配下にあるONUに向けて送出する。従って、一つのOLTが下りフレームを送信する場合に、他のOLTが送信した下りフレームと重ならないように、OLT間で送信タイミングを分割して送出する。その具体的な方法は、これまでに記載しているため、ここでは再掲しない。個々のONU2向けフレームには、フレーム長を示すPLI (Payload Loength Indicator)、宛先ONU2を識別するためのPort-ID、フレーム内の情報種別(保守管理用か、ユーザデータか、など)を識別するためのPTI (Payload Type Indicator)、ヘッダ部分5421hの誤り訂正符号に使用するHECフィールド54214を含む。Port-IDを、光ファイバを共有する全システム間で重複しないように個々のONU2に割当てることによって、個々のONU2が下りフレームの中から自身宛ての情報を抽出できる。
図54のフレーム送信時には、(GPONの場合を例とすると)送信元OLTがGEMフレームの境界でそれぞれ異なる。下り信号送出時には先に述べたクロック同期方法によってクロックが統一されているため、ONU2での受信時にはクロックはある程度は同期されていると期待できる。これに対し、GEMフレーム毎に位相確認を行うことで更に安定した動作が期待できる。位相確認のため、以下の機能を備える。
GPONではGEMフレームのヘッダに含まれるHECを取込めるか否かでフレーム同期を確認していたが、それに加えてONU側に、OLT番号毎にクロック位相情報を保持しておく。これはOLT側でONUからの信号を同期する際に、クロック位相(アイパターン受信タイミング)を記憶しておくための機能を、ONU側に持たせたものである。具体的には、1クロックの信号を取り出す際、クロック位相のズレを吸収するため、位相ズレ量を受信部に保持しておく。方法は問わないが、一つの方法としては信号同期をとる際に、データ信号位相に比べて微少量の位相をずらした複数の受信位置で信号を受信し、最も受信感度の良い位置を当該データの位相として取り込むものである。GPONの場合では、1.2Gの上り信号を受信する際に利用していた方法である。このとき得られた最適位置を保持しておくことで、複数の受信パターンを、データフレーム受信毎に比較し選択する必要が無くなり、同期を見失う確率を低減できる。
もう一つの方法は、各OLTが下りフレームをそれぞれ完全な形で送信し、その際に信号が重ならないようにOLT間で送信タイミングを制御する方法である。この場合には、OLT間での動作周期を統一する必要性は無い。OLTの動作クロックが異なる場合や、OLT内部での情報処理効率が互いに異なるOLTが併設される場合に利用できる。また、時間多重を行うタイミングはOLT間の通信によって動的に変更することができるため、例えば、GPONとGEPONのように、フレームフォーマットの異なる複数のPONを併設する場合にも有効である。規定されていないため、このケースでも、OLTが互いに下り情報を送出するタイミングを通知し、相互に信号重複を避ける仕組みが要求される。
図55は、各OLTが下りフレームをそれぞれ完全な形で送信するときの、下りフレーム送信方法を示す。
この時は、下り通信制御の基本周期(GPONでは125マイクロ秒周期)5500に、複数のPCBdヘッダ5510付きフレームが挿入される。図54との違いは、このヘッダ5510が全OLTで共有されているか、別々に送信されているか、の違いである。図55の場合には、フレーム同期パターンをヘッダ5410−2の前に挿入すると、ONU2における個々のフレームを同期する処理は従来の技術を流用できる。また別の方法として、クロック同期精度が十分に高い場合には、フレーム同期パターンを挿入せずに、ヘッダ5510に含まれるフレーム長情報5515a、5515b、及び55211を参照して、次のフレームのヘッダ5510−2の開始位置を決定しても良い。後者の場合には、図54のときと同様に下りフレームの位相確認機能を設けておくことで、下りフレームの位相ズレを抑制でき、OLT数が増加した場合でも安定した運用ができる。
ヘッダ5510の基本構成は図54の場合と同様である。但し、ここではUS BWmap5560に、個々のOLTが管理するONUの情報のみを挿入する。従って、下りフレームのヘッダ構成及びその内容は、GPONはじめ既存PONで使用されてきたヘッダ構成と同様である。ONU2は、下りフレームのUS BWmap5560、データフレームのヘッダ5521hに含まれるPort-ID55212を参照して、自身が当該データ(帯域指示、及びユーザデータ)を取込むべきか否かを判断できる。
下りフレームが共通の場合、複数のPONシステムが併設する中で、特定のONUを識別するための帯域割付用IDを有する必要がある。実現方法には複数考えられる。一つは、光ファイバを共有する全ONUにおいて、独立した識別子(GPONの場合にはAlloc-ID)を用いる方法である。この方法では、従来のフレームフォーマットを変更せずに使用することができるメリットがある。帯域割付ID数が比較的少ない場合には、開発コストの低減と動作効率の維持という要求を満たす有効な解と言える。もう一つの方法は、PONシステムを識別するための識別子を、従来の帯域割付IDとは別に設け、個々のPONシステムの中では従来と同様の帯域割付処理を行う。この場合には、独立した帯域制御IDの数が少なくて良いため、個々の装置のメモリ、論理回路の規模を低減でき、ひいてはコストの削減につながる。帯域制御IDの数が少なければ検索などの動作が早くなるため、性能向上も期待できる。
上り波長がONUごとに異なる場合、上り通信における信号重なりを意識する必要が無い。時分割多重の制御が無ければ、上り波長が同じ場合に行った、システム間でのONUの応答遅延時間の調整は不要である。
EqDの設定は、PONシステム毎に、それぞれ独立に行えば良い。ONU立ち上げ時の処理は、下りフレームの送信タイミングにより、OLT側より必要な論理距離を設定する。OLTにおいて、(OLTの立ち上げ時には)DBA制御周期の境界を一致させるとき、及び下り通信を制御するための共通フレームカウンタを参照して下りフレームの送信タイミングを調整する必要がある。但し、OLT側での調停が完了すると、その後のONU立ち上げ処理は従来の方法を用いれば良く、レンジング処理及びその結果であるEqDの決定に関して、他のシステムに影響されることはない。
上り、下りとも波長を共通にする場合には、OLT間のクロック同期方法は、波長の設定によらず図1〜図13で説明した方法と同様の方法で実現できる。
上り通信タイミングの制御に必要な、DBA制御及び論理距離の設定に関しては図14〜図51の説明と同様の処理が必要である。また、下り通信タイミングに関しては、OLT間での送信タイミングの調停が必要であり、図52〜56と同様の処理を行う。