JP5108628B2 - 高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法 - Google Patents

高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法 Download PDF

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本発明は、下地層の銅層に対して、高い密着性を示す金属ナノ粒子焼結体膜を形成する方法に関する。特には、下地層の銅層表面を被覆するポリイミドコート膜を設け、該ポリイミドコート膜に形成された開口部に選択的に金属ナノ粒子焼結体膜を形成する際、下地層の銅層に対して、高い密着性を示す金属ナノ粒子焼結体膜を形成する方法に関する。例えば、SIP(System in Package)用微細配線基板(インターポーザ/Interposer)、あるいは、SIB(System in Board)用微細配線基板(サブストレート/Substrate)の作製に応用可能な、下地層の銅層に対して、高い密着性を示す金属ナノ粒子焼結体膜を形成する方法に関する。
多層配線基板では、下層配線層と上層配線層との間に絶縁層を設けている。上下の配線層間の導通には、両層を隔てる絶縁層を貫通する孔部を形成し、ビアホールを介する層間導通が利用されている。
多層配線基板、例えば、ビルド・アップ基板の作製工程では、下層配線層を被覆するように、絶縁層を形成する。ビアホールを介する層間導通に利用される貫通孔部を、該絶縁層を貫通し、その開口部に下層配線層の表面が露出するように設ける。絶縁層の上面に上層配線層を形成する際、この貫通孔部を埋め込み、開口部に露呈する下層配線層の表面を覆うような導電体層を形成し、ビアホールを介する層間導通を達成している。
無電解メッキ銅層を用いて、上層配線層を形成する場合、ビアホールを介する層間導通用の導電体層にも無電解メッキ銅層を採用している。具体的には、ビアホールを介する層間導通用の導電体層と、該導電体層と電気的に連結される上層配線層は、一体に形成されている。
無電解メッキ金属層に代えて、導電性金属ペーストを利用して形成される導電体層を用いて、上層配線層を形成する、多層配線基板も提案されている。例えば、導電性媒体として、平均粒子径が1〜100nmの金属ナノ粒子を用い、絶縁層表面への樹脂接着に利用される有機バインダー樹脂を添加している導電性金属ペーストを利用して、上層配線層の形成を行っている多層配線基板の製造方法が提案されている(特許文献1を参照)。その際、絶縁層の上面、貫通孔部の側壁面、その開口部に露呈する下層配線層の表面を被覆するように、導電性金属ペーストの塗布膜層を所定のパターン形状で描画する。この導電性金属ペーストの塗布膜層に250℃以下の温度で加熱処理を施し、含有される平均粒子径が1〜100nmの金属ナノ粒子相互が低温焼結した焼結体層を作製する。この金属ナノ粒子焼結体層は、添加されている有機バインダー樹脂を利用して、絶縁層の上面、貫通孔部の側壁面に接着固定される。貫通孔部の開口部に露呈する下層配線層の表面では、金属ナノ粒子焼結体層と密に接触する状態となり、ビアホールを介する層間導通が達成されている。この手法では、利用される導電性金属ペースト中では、金属ナノ粒子の表面に、該金属ナノ粒子に含まれる金属元素に対して配位結合可能な有機化合物による被覆層を設け、該被覆層を保持する状態で金属ナノ粒子が溶媒中に安定に分散されている。さらに、導電性金属ペースト中には、加熱時に、前記被覆層を構成する有機化合物に作用可能な捕捉物質を配合している。
加えて、多層配線基板、例えば、ビルド・アップ基板の作製工程において、下層配線層と上層配線層を、ともに導電性ペーストを利用し、また、層間分離用の絶縁性樹脂層を、絶縁性ペーストを利用して、一括して作製する方法も提案されている(特許文献2を参照)。この作製工程では、描画にインクジェット法を用いて、絶縁基板上に、下層配線用の導電性ペースト塗布膜層を形成し、上層の配線層パターンが重なる積層部位に対して、上下層間の導通を図る積層部位を除き、他の部位上を覆う部分領域のみに、層間分離用に、絶縁性ペースト塗布膜層を形成する。さらに、上層配線用の導電性ペースト塗布膜層を積層形成し、加熱処理して、各導電性ペースト塗布膜層から導電体層、絶縁性ペースト塗布膜層から絶縁体層を作製する。その結果、部分領域の絶縁膜で層間分離され、絶縁膜の形成を省いた積層部位では、上下の配線層間の連結・導電がなされる多層配線層が形成される。すなわち、下層配線用の導電性ペースト塗布膜層と上層配線用の導電性ペースト塗布膜層とが積層される部位では、両層の導電性ペースト塗布膜層は直接接触した状態で加熱処理がなされる結果、該積層部位では、一体化された導電体層が形成されている。絶縁性ペースト塗布膜層が、下層配線用の導電性ペースト塗布膜層と接する部分領域では、同時に加熱処理が施されるため、下層配線層の上面と、上層配線層の下面に、絶縁性樹脂層は緻密に接着した状態となっている。
また、金属ナノ粒子分散液を利用して、メッキ代替導電性金属皮膜を形成する方法が提案されている(特許文献3を参照)。無電解メッキ層の形成が可能なメッキ下地層の表面に、有機ハンダー成分を含有していない金属ナノ粒子分散液を塗布し、加熱処理を施し、該金属ナノ粒子の低温焼結を行うことで、メッキ下地層表面に金属ナノ粒子焼結体層を形成している。その際、メッキ下地層表面と金属ナノ粒子焼結体層との間の接着は、メッキ下地層表面の金属核(メッキ核)と金属ナノ粒子との間の金属間接合形成により達成されている。従って、配線基板の作製時、メッキ下地層表面に無電解メッキ層を形成する部分を代替する目的で、前記方法を適用して形成される該メッキ代替導電性金属皮膜の利用が提案されている。例えば、両面配線基板を貫通するスルーホールの内壁面に形成される、スルーホール用メッキ膜の代替層としての利用が提案されている。
高密度微細配線を多層積層した構造のインターポーザは、複数のLSIを多層に積層接続する、SIP(System in Package)用微細配線基板として利用が進められている。その際、インターポーザを構成する多層の配線層間に設ける層間絶縁層として、ポリイミド層が利用されている。具体的には、感光性ポリイミドを採用し、リソグラフィ法を適用して、該感光性ポリイミドを光露光、現像することで、層間絶縁層にビアホールを作製している。作製されたビアホール中に金属層を埋め込むことで、ビアホールを介する層間導通が達成されている。特には、感光性ポリイミドとして、化学増幅ポジ型感光性ポリイミドを利用し、光露光した部分を可溶化する形態の利用が進められている。
また、層間絶縁層のポリイミド層上面に、上層配線層として、金属ナノ粒子の焼結体層を作製する際には、従来、塗布された金属ナノ粒子分散液の濡れ拡がりを回避するため、目的の塗布領域を除き、ポリイミド層の上面に撥液剤コート層が形成されている。同様に、金属層の表面の所定領域に金属ナノ粒子の焼結体層を作製する際には、従来、塗布された金属ナノ粒子分散液の濡れ拡がりを回避するため、塗布領域を除き、金属層の上面に撥液剤コート層が形成されている。すなわち、前記撥液剤コート層表面に対して、金属ナノ粒子分散液を構成する分散液は濡れ性が乏しいため、塗布領域の周囲に金属ナノ粒子分散液が濡れ拡がる現象は回避される。
実際には、一旦、ポリイミド層上面の全面を被覆するように、撥液剤コート層が形成した後、所定領域のみ撥液剤コート層を選択的に除去することで、目的の塗布領域を除き、上面に撥液剤コート層が形成された状態としている。この撥液剤コート層を選択的に除去する手段として、レーザ・アブレーション法を適用して、目的の塗布領域のみにレーザ光を照射し、撥液剤コート層を選択的に蒸散させる手法がある。
さらには、ポリイミド層上面の目的の塗布領域に、アルカリ水溶液を表面処理剤として選択的に塗布して、部分的にイミド環の開環を行って、かかる領域のポリイミド層表面の改質を行うことで、金属ナノ粒子分散液に対する親和性を増す手法もある(特許文献4を参照)。
特許第3900248号公報 特開2005−93814号公報 特許第3764349号公報 特開2006−287217号公報
例えば、ビルド・アップ基板の作製工程において、上層配線層と下層配線層とを絶縁分離する層間絶縁層として、感光性ポリイミドを採用すると、該層間絶縁層に設けるビアホールの作製が容易となる。具体的には、従来、ビアホールの作製に利用されるレーザ・ビア法に比較して、ポジ型感光性ポリイミドを利用し、光露光した部分を可溶化し、その後、現像により除去する手法を用いると、形成されるビアホールの形状、深さの制御は容易となる。
なお、その全体プロセスは、光露光後、現像処理を行う工程と、該ビアホール内に金属層を埋め込む工程で構成されている。また、該ビアホール内に金属層を埋め込む工程において、金属ナノ粒子分散液を利用して、金属ナノ粒子の焼結体層を作製する手法を適用する際、従来は、加熱炉を利用して、所定温度に加熱する手法が利用されている。すなわち、作製されるビルド・アップ基板全体を、所定温度に加熱する必要があった。
実際に、加熱処理が必要である領域は、金属ナノ粒子分散液が塗布されている部位のみである。その点を考慮し、金属ナノ粒子分散液の塗布液層部分のみを局所的に加熱処理することで、前記ビアホール内に金属ナノ粒子の焼結体層を埋め込み形成することが可能な金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の提案が望まれている。すなわち、目的とするビアホールの開口部に相当する領域のみを局所的に加熱を行って、該ビアホール内に金属ナノ粒子の焼結体層を埋め込み形成することが可能な金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の提案が望まれている。
さらに、撥液剤被覆層でコートされている、ポリイミド層により被覆された基板、ならびに、撥液剤被覆層でコートされている、金属基板、例えば、金属銅で構成される導電体層を有する基板上に、高密着性金属ナノ粒子焼結体膜を選択的に作製する方法の提案が望まれている。特に、高密着性金属ナノ粒子焼結体膜を選択的に作製する際、金属ナノ粒子分散液を加熱し、金属ナノ粒子焼結体膜を形成する手段として、目的とする領域のみにレーザ光照射することで、選択的な加熱を行う方法を応用する方法の提案が望まれている。
本発明は、上記の課題を解決するものである。本発明の目的は、目的とする領域のみを局所的に加熱する手段として、レーザ光を集光し、微小なスポット径で照射する手法を応用し、金属ナノ粒子分散液の塗布層部分のみを局所的に加熱処理することで、下地の基板表面に対して、高い密着性を示す金属ナノ粒子焼結体膜を選択的に作製する方法を提供することにある。
なお、層間絶縁層として、ポジ型感光性ポリイミド膜を利用する際、金属ナノ粒子分散液の塗布液層が、形成されたビアホールの開口部の周囲に濡れ拡がる現象を抑制するため、ポジ型感光性ポリイミド膜の表面には、撥液剤の被覆層が形成されている。ポジ型感光性ポリイミド膜を光露光した後、現像処理を施す際、その開口部の可溶化された感光性ポリイミド膜とともに、当該部分の撥液剤被覆層も除去される。結果的に、ビアホールの開口部の周囲では、感光性ポリイミド膜の表面は、撥液剤被覆層で覆われており、金属ナノ粒子分散液の塗布層の濡れ拡がりを防止している。
この撥液剤被覆層でコートされている、ポリイミド層により被覆された基板、ならびに、撥液剤被覆層でコートされている、金属基板、例えば、金属銅で構成される導電体層を有する基板上に、高密着性金属ナノ粒子焼結体膜を選択的に作製する手法について、本発明者らは、鋭意検討を進めた。
例えば、撥液剤被覆層でコートされている、ポリイミド層により被覆された基板上に、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を形成した後、特定の波長のレーザ光をその表面から照射すると、撥液剤被覆層の除去と、ポリイミド層の表面の改質を行うことが可能であることを見出した。
その後、金属ナノ粒子分散液の塗布液層中に含有される金属ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子を選択的に除去する手段として、該金属ナノ粒子に特異的な吸収を引き起こすことが可能な特定の波長のレーザ光照射が利用可能であることも見出した。その際、金属ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子の選択的な除去を行うと、表面の改質されたポリイミド層に対して、金属ナノ粒子は高い密着性で付着する状態となることも確認した。
表面の被覆剤分子を除去した金属ナノ粒子が二次元的に、表面の改質されたポリイミド層上に付着し、さらに、その上に金属ナノ粒子が積層した層構造を形成した後、該金属ナノ粒子が吸収する波長のレーザ光を照射すると、金属ナノ粒子が積層した層の低温焼結が進み、高密着性金属ナノ粒子焼結体膜が選択的に形成されることを確認した。
上記の三種のレーザ光照射を適用して、金属ナノ粒子焼結体膜が選択的に形成する工程は、撥液剤被覆層でコートされている、金属基板、例えば、金属銅で構成される導電体層を有する基板上に高密着性金属ナノ粒子焼結体膜を選択的に作製する際にも、利用可能であることを検証した。
本発明者らは、上記の一連の知見に基づく、本発明を完成させた。
すなわち、本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法は、
基板上に高密着性金属ナノ粒子焼結体膜を形成する方法であって、
下記の工程1〜工程4:
(工程1)
撥液剤被覆層でコートされた基板上に、所定の平面形状で、金属ナノ粒子分散液を塗布し、塗布液層を作製する工程;
(工程2)
前記塗布液層の表面から、波長λ1のレーザ光を、平均レーザ光強度P1で、垂直方向(入射角0°)から照射する工程;
(工程3)
前記工程2の後、前記塗布液層の表面から、波長λ2のレーザ光を、平均レーザ光強度P2で、垂直方向(入射角0°)から照射する工程;
(工程4)
前記工程3の後、前記塗布液層の表面から、波長λ3のレーザ光を、平均レーザ光強度P3で、垂直方向(入射角0°)から照射する工程
とを具え、
前記金属ナノ粒子分散液は、
平均粒子径を1〜100nmの範囲に選択する、金属ナノ粒子を分散溶媒中に分散してなる金属ナノ粒子分散液であり、
前記分散液中に含有される、金属ナノ粒子は、該金属ナノ粒子表面の金属原子に対して、窒素原子、酸素原子、イオウ原子上の孤立電子対を利用して配位的な結合が可能な沸点150℃以上の有機化合物を、被覆剤分子として、該金属ナノ粒子表面を被覆されており、
前記分散溶媒は、沸点150℃以上の無極性有機溶媒あるいは低極性有機溶媒であり、
該分散液中において、含有される金属ナノ粒子の占める体積比率をVparticle体積%とする際、塗布液層の厚さdは、0.5μm≧d・(Vparticle/100)を満足する範囲に選択され;
波長λ1のレーザ光は、前記金属ナノ粒子に実質的に吸収されず、前記基板の表面を構成する材料に吸収される波長λ1を有しており、
絶縁性樹脂材料で形成される基板を採用する際には、
平均レーザ光強度P1は、50W/mm2〜800W/mm2の範囲に選択され、
金属材料で形成される基板を採用する際には、
平均レーザ光強度P1は、5,000W/mm2〜15,000W/mm2の範囲に選択され;
波長λ2のレーザ光は、前記金属ナノ粒子に吸収される波長λ2を有しており、
絶縁性樹脂材料で形成される基板を採用する際には、
平均レーザ光強度P2は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択され、
金属材料で形成される基板を採用する際には、
平均レーザ光強度P2は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択され;
波長λ3のレーザ光は、前記金属ナノ粒子を構成する金属により吸収される波長λ3を有しており、
絶縁性樹脂材料で形成される基板を採用する際には、
平均レーザ光強度P3は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択され、
金属材料で形成される基板を採用する際には、
平均レーザ光強度P3は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択される
ことを特徴とする高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法である。
その際、(工程1)の塗布液層を作製する工程後、(工程2)に先立って、
該塗布液層の予備乾燥を行う予備乾燥処理工程を設けることが望ましい。
また、本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の第一の形態は、上記の本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法を、
前記基板は、ポリイミド層により被覆された基板であり、
該基板の表面を構成する材料は、前記ポリイミド層である形態に適用したものである。
また、本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の第二の形態は、上記の本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法を、
前記基板は、金属銅、または、銅含有比率97質量%以上の銅合金で構成される導電体層を有する基板であり、
該基板の表面を構成する材料は、前記金属銅で構成される導電体層である形態に適用したものである。
本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の第一の形態では、
前記金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子であり、
波長λ1のレーザ光は、波長λ1=1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
平均レーザ光強度P1は、50W/mm2〜800W/mm2の範囲に選択され;
波長λ2のレーザ光は、波長λ2=1064nmのNd/YAGレーザ光、または波長λ2=532nmのNd/YAGレーザ光の高調波であり、
平均レーザ光強度P2は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択され;
波長λ3のレーザ光は、波長λ3=1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
平均レーザ光強度P3は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択される
という条件を採用することができる。
本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の第二の形態では、
前記金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子であり、
波長λ1のレーザ光は、波長λ1=1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
平均レーザ光強度P1は、5,000W/mm2〜15,000W/mm2の範囲に選択され;
波長λ2のレーザ光は、波長λ2=1064nmのNd/YAGレーザ光、または波長λ2=532nmのNd/YAGレーザ光の高調波であり、
平均レーザ光強度P2は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択され;
波長λ3のレーザ光は、波長λ3=1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
平均レーザ光強度P3は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択される
という条件を採用することができる。
なお、本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の第一の形態、ならびに第二の形態では、
波長λ1のレーザ光の照射スポット径D1は、10μm〜500μmの範囲に選択され;
波長λ2のレーザ光の照射スポット径D2は、10μm〜500μmの範囲に選択され;
波長λ3のレーザ光の照射スポット径D3は、10μm〜500μmの範囲に選択されるという態様を選択することができる。その際、
波長λ1のレーザ光の照射スポット径D1、波長λ2のレーザ光の照射スポット径D2、波長λ3のレーザ光の照射スポット径D3は、D1=D2=D3に選択される態様とすることが好ましい。
また、本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法の第一の形態、ならびに第二の形態では、
被覆剤分子として、沸点150℃以上のアルキルアミンを選択することが好ましい。
本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法では、撥液剤被覆層でコートされている基板表面上に、所定の領域に、所定の塗布液厚で金属ナノ粒子分散液を塗布する際、表面に対する濡れ性が制限されており、目的とする領域外への滲み出しが抑制されている。その後、金属ナノ粒子分散液の塗布液層と接する撥液剤被覆層を、レーザ光照射によって、基板表面と塗布液層との界面を選択的に局所加熱することで除去し、露出した基板表面上に選択的に高密着性金属ナノ粒子焼結体膜を形成することが可能である。この基板表面に対する高い密着性は、金属基板、例えば、銅基板表面に対して、金属ナノ粒子を付着させ、レーザ光照射を利用して、局所的に温度を上昇させることで、相互拡散に起因する合金化領域を形成することで達成される。あるいは、例えば、ポリイミド層により被覆されている基板では、該ポリイミド層の表面にレーザ光照射を施すことで、光活性化による表面改質を行う結果、ポリイミド層の該改質された表面に生成する官能基と金属ナノ粒子との相互作用を介して、基板表面に対する高い密着性を付与することができる。
以下に、本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法をさらに説明する。
光照射による加熱では、照射される光のエネルギーを利用して、対象物質の振動励起を引き起こすことで、対象物質の温度の上昇がなされる。例えば、照射される光の波長が対象物質の電子励起を引き起こさない場合でも、対象物質の振動励起を誘起する際には、温度上昇を起すことが可能である。
金属においては、格子振動の励起がなされると、金属自体の温度の上昇がなされる。また、有機化合物においては、該有機化合物の分子振動の励起がなされると、その有機化合物の温度が上昇する。
平均粒子径がナノサイズの金属ナノ粒子においては、局在プラズモンに起因する光吸収によって、その格子振動を励起することが可能である。また、該金属ナノ粒子の表面に、金属元素に対する配位的な結合を介して、分子間結合している有機化合物分子は、金属ナノ粒子の格子振動の励起に伴い、前記分子間結合を解消して、離脱することが可能である。また、金属ナノ粒子の表面に局在している、局在プラズモンによって、ラマン散乱を引き起こすことが可能である。すなわち、ストークス・ラマン散乱を引き起こすと、有機化合物分子自体の振動励起が起こる。
本発明においては、金属ナノ粒子に対して、プラズモン吸収を引き起こすことが可能な波長λ2のレーザ光を照射することで、該金属ナノ粒子自体の選択的加熱を行うとともに、局在プラズモンを利用するラマン励起によって、その表面を被覆している被覆剤分子自体の振動励起を行うことで、被覆剤分子の熱的な離脱を促進している。
一方、被覆剤分子により被覆されている金属ナノ粒子の分散に利用されている、分散溶媒分子自体は、照射される波長λ2のレーザ光を実質的に吸収しない。そのため、分散している、金属ナノ粒子が加熱される結果、その周囲の分散溶媒の温度も、熱伝導過程によって、徐々に上昇する。換言すると、照射される波長λ2のレーザ光によって局所的に加熱される金属ナノ粒子に対して、その周囲の分散溶媒は熱的リザーバとして機能し、金属ナノ粒子の温度上昇を抑制している。また、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面温度が上昇し、分散溶媒の沸点に近づくと、その表面から分散溶媒分子の蒸散が進む。その結果、その蒸発熱として、金属ナノ粒子が吸収した波長λ2のレーザ光から変換される熱エネルギーが消費される。すなわち、分散溶媒分子の蒸散によって、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面温度の急激な上昇は抑制され、少なくとも、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面近傍の温度は、該分散溶媒の沸点を超えない範囲に制御されている。
本発明の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法では、下記の4つの工程からなるプロセスを利用している。
(工程1)金属ナノ粒子分散液の塗布液層の形成工程:
基板の表面に、金属ナノ粒子分散液中に含まれる分散溶媒に対する撥液剤被覆層をコートする。この撥液剤被覆層がコートされている基板表面に、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状で塗布して、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を形成する。金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さdは、該塗布液層中に含有される金属ナノ粒子の体積比率を、Vparticle体積%とする際、d・(V/100)が、0.5μmを超えない範囲に選択する。
その際、撥液剤被覆層がコートされている基板表面においては、分散溶媒の濡れ性は低いため、塗布された金属ナノ粒子分散液は、目的とするパターン形状の外へと濡れ拡がる現象の抑制がなされる。
前記の目的に利用される撥液剤被覆層は、濡れ拡がりを抑制するとともに、金属ナノ粒子分散液が基板表面と直接接触することも阻害している。
従って、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の直下に存在し、この塗布液層と接している撥液剤被覆層のみを、次の工程2の第1のレーザ光照射工程によって選択的に除去する。
(工程2)第1のレーザ光照射工程:
金属ナノ粒子におけるプラズモン吸収を引き起こすことが困難な波長λ1のレーザ光を照射する場合には、金属ナノ粒子に照射された波長λ1のレーザ光は、その一部は、金属ナノ粒子表面で、反射、あるいは散乱を受ける。その際、塗布液層と基板との界面に達する光強度は、金属ナノ粒子による反射と散乱に起因する減衰係数:Ascatter(λ1)に依存する、exp{−(Ascatter(λ1)・Cparticle)・d}に比例して、減少する。従って、照射された波長λ1のレーザ光のうち、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を透過して、塗布液層と基板との界面に達する光の割合(見掛けの光透過率):T1-upper(λ1)は、exp{−(Ascatter(λ1)・Cparticle)・d}に比例する。
金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面では、気相中から、分散溶媒の液相中へと移行する際、照射される波長λ1のレーザ光の一部は、反射される。この表面での反射率R1-upper(λ1)は、照射されるレーザ光に対して、分散溶媒は光吸収を示さないので、レーザ光の波長λ1における、分散溶媒の屈折率nsolvent(λ1)と、気相(例えば、空気)の屈折率nv(λ1)に依存している。
金属ナノ粒子分散液の塗布液層を透過して、塗布液層と基板との界面に達した波長λ1のレーザ光は、塗布液層と基板との界面も、屈折率の不連続な変化があるため、反射を受ける。その際、基板を構成する材料が、この波長λ1のレーザ光に対する吸収を示す際には、この界面での反射率R1-lower(λ1)は、基板を構成する材料の吸収率に大きく依存する。また、基板を構成する材料中に侵入する光の割合(実効的透過率):T1-lower(λ1)も、基板を構成する材料の吸収率に大きく依存する。基板を構成する材料が、波長λ2のレーザ光に対して大きな吸収率を示す場合、基板を構成する材料中に侵入する光は吸収される。その基板を構成する材料により吸収される光の割合(実効的光吸収率):A1-lower(λ1)は、T1-lower(λ1)に相当している。
金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面から、波長λ1のレーザ光を、照射スポット径D1(μm)、平均レーザ光強度P1(W/mm2)で、垂直方向(入射角0°)から照射する。照射された波長λ1のレーザ光のうち、T1-lower(λ1)・P1(W/mm2)に相当する部分が、基板を構成する材料中に侵入し、吸収される。その際、基板を構成する材料により吸収された波長λ1のレーザ光の一部は、熱エネルギーに変換される結果、レーザ光照射されている領域では、塗布液層/基板の界面の温度が上昇する。レーザ光照射開示時から、該界面の温度は上昇し、照射時間が経過するとともに、前記T1-lower(λ1)・P1(W/mm2)に依存する一定の温度:T1-bottom(℃)に達して、平衡状態となる。具体的には、照射時間t1が、t1-minを超えると、該界面の温度は、ほぼT1-bottom(℃)に達し、その後は、熱的平衡状態となる。
撥液剤被覆層を構成している、撥液剤は、温度が上昇するとともに、分散溶媒中での溶解度は上昇するため、前記界面の温度がT1-bottom(℃)に達した状態で、一定時間:Δt1保持すると、撥液剤被覆層の溶解除去がなされる。従って、延べ照射時間t1が、(t1-min+Δt1)を超えると、レーザ光照射されている領域では、塗布液層/基板の界面に存在していた撥液剤被覆層の選択的な除去がなされる。その結果、このレーザ光照射されている領域では、基板の表面に、金属ナノ粒子分散液の塗布液層が直接接触する状態となる。
勿論、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面の温度も、照射時間が経過するとともに、上昇し、該塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度P1(W/mm2)に依存する一定の温度:T1-top(℃)に達して、平衡状態となる。その際、金属ナノ粒子分散液の塗布液層中における、波長λ1のレーザ光の吸収は僅かであるので、塗布液層/基板の界面の温度は、塗布液層の表面より高くなっており、T1-bottom(℃)>T1-top(℃)の状態となっている。
すなわち、延べ照射時間t1が、(t1-min+Δt1)を超えると、塗布液層中には、塗布液層/基板の界面から、塗布液層の表面へ向かって、温度勾配が形成され、その平均温度勾配は、(T1-bottom−T1-top)/d(℃/μm)となる。
撥液剤被覆層を選択的に除去した後、次の工程3:第2のレーザ光照射工程によって、金属ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子の離脱と、被覆剤分子層を除いた金属ナノ粒子を基板表面に付着・積層する処理を行う。
(工程3)第2のレーザ光照射工程:
金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面から、金属ナノ粒子に対して、プラズモン吸収を引き起こすことが可能な波長λ2のレーザ光を照射すると、金属ナノ粒子のプラズモン吸収に伴い、一部は熱エネルギーに変換され、あるいは、金属ナノ粒子の表面の被覆剤分子の熱的離脱に利用される。さらには、一部は、金属ナノ粒子表面で、反射、あるいは散乱を受ける。その結果、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面から、照射された波長λ2のレーザ光のうち、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を透過して、金属ナノ粒子分散液の塗布液層と基板との界面に達する光強度は、分散液中に分散されている金属ナノ粒子の分散濃度Cparticleと、この塗布液層の厚さdに依存して、減少する。具合的には、塗布液層と基板との界面に達する光強度は、金属ナノ粒子によるプラズモン吸収に起因する吸収係数:Aplasmon(λ2)、反射と散乱に起因する減衰係数:Ascatter(λ2)に依存する、exp[−{(Aplasmon(λ2)+Ascatter(λ2))・Cparticle}・d]に比例して、減少する。従って、照射された波長λ2のレーザ光のうち、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を透過して、塗布液層と基板との界面に達する光の割合(見掛けの光透過率):T2-upper(λ2)は、exp[−{(Aplasmon(λ2)+Ascatter(λ2))・Cparticle}・d]に比例する。
金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面では、気相中から、分散溶媒の液相中へと移行する際、照射される波長λ2のレーザ光の一部は、反射される。この表面での反射率R2-upper(λ2)は、照射されるレーザ光に対して、分散溶媒は光吸収を示さないので、レーザ光の波長λ2における、分散溶媒の屈折率nsolvent(λ2)と、気相(例えば、空気)の屈折率nv(λ2)に依存している。
金属ナノ粒子分散液の塗布液層を透過して、塗布液層と基板との界面に達した波長λ2のレーザ光は、塗布液層と基板との界面も、屈折率の不連続な変化があるため、反射を受ける。その際、基板を構成する材料が、この波長λ2のレーザ光に対する吸収を示す際には、この界面での反射率R2-lower(λ2)は、基板を構成する材料の吸収率に大きく依存する。また、基板を構成する材料中に侵入する光の割合(実効的透過率):T2-lower(λ2)も、基板を構成する材料の吸収率に大きく依存する。基板を構成する材料が、波長λ2のレーザ光に対して大きな吸収率を示す場合、基板を構成する材料中に侵入する光は吸収される。その基板を構成する材料により吸収される光の割合(実効的光吸収率):A2-lower(λ2)は、T2-lower(λ2)に相当している。
金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面から、波長λ2のレーザ光を、照射スポット径D2(μm)、平均レーザ光強度P2(W/mm2)で、垂直方向(入射角0°)から照射する。照射された波長λ2のレーザ光のうち、T2-lower(λ2)・P2(W/mm2)に相当する部分が、基板を構成する材料中に侵入し、吸収される。その際、基板を構成する材料により吸収された波長λ2のレーザ光の一部は、熱エネルギーに変換される結果、レーザ光照射されている領域では、塗布液層/基板の界面の温度が上昇する。レーザ光照射開示時から、該界面の温度は上昇し、照射時間が経過するとともに、前記T2-lower(λ2)・P2(W/mm2)に依存する一定の温度:T2-bottom(℃)に達して、平衡状態となる。具体的には、照射時間t2が、t2-minを超えると、該界面の温度は、ほぼT2-bottom(℃)に達し、その後は、熱的平衡状態となる。
一方、波長λ2のレーザ光は、塗布液層中に分散されている金属ナノ粒子により吸収され、その表面には局在プラズモンが生成される。波長λ2のレーザ光吸収に伴って、金属ナノ粒子の格子振動の励起がなされ、金属ナノ粒子の局所的加熱がなされる。この金属ナノ粒子による吸収によって、波長λ2のレーザ光は熱エネルギーに変換され、さらに、該金属ナノ粒子の周囲の分散溶媒への熱伝導を介して、熱エネルギーが供与される。その結果、塗布液層の温度も上昇するが、照射時間t2が、t2-minを超えると、その後は、熱的擬平衡状態となる。例えば、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面の温度は、照射時間が経過するとともに、上昇し、該塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度P2(W/mm2)に依存する一定の温度:T2-top(℃)に達して、擬平衡状態となる。
その際、塗布液層の厚さdを、d・(V/100)が、0.5μmを超えない範囲に選択すると、通常、T2-bottom(℃)>T2-top(℃)となる。
金属ナノ粒子の表面に局在プラズモンが生成されると、該局在プラズモンによって、金属ナノ粒子の表面の被覆剤分子の振動励起が引き起こされる。その状態では、金属ナノ粒子の表面から、被覆剤分子の熱的離脱の促進が図られる。従って、塗布液層/基板の界面の近傍においても、金属ナノ粒子の表面から、被覆剤分子の熱的離脱が進行し、被覆剤分子が除去された金属ナノ粒子が、基板表面に付着し、付着した金属ナノ粒子は、二次元的な層構造を形成する。この二次元的な金属ナノ粒子の付着層を、核生成層として、その上面に、被覆剤分子が除去された金属ナノ粒子が積層される。この金属ナノ粒子の積層中では、温度T2-bottom(℃)程度に加熱されており、金属ナノ粒子相互が、融着した状態となる。
前記界面の温度がT2-bottom(℃)に達した状態で、レーザ光照射を一定時間:Δt2継続すると、塗布液層中に含有されていた金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子の積層へと取り込まれる。その結果、塗布液層中に、被覆剤分子により表面が被覆され、分散されている金属ナノ粒子は、実質的に残余していない状態となる。従って、延べ照射時間t2が、(t2-min+Δt2)を超えると、レーザ光照射されている領域では、基板の表面に、金属ナノ粒子の積層が付着された状態となる。
その過程で、塗布液層の表面から、分散溶媒分子、被覆剤分子の蒸散が徐々に進行するが、金属ナノ粒子の積層構造全体を浸漬するに十分な量の分散溶媒が残余している状態となっている。
基板表面に付着されている、金属ナノ粒子が密に積層された層に対して、次の工程4:第3のレーザ光照射工程によって、低温焼結を施し、金属ナノ粒子焼結体膜とする。
(工程4)第3のレーザ光照射工程:
金属ナノ粒子の表面を被覆する被覆剤分子の離脱がなされ、基板表面を覆うように、金属ナノ粒子が沈積して、金属ナノ粒子が密に積層された層が形成されると、照射されるレーザ光は、この金属ナノ粒子が密に積層された層により遮蔽される。
この状態で、塗布液層の表面から波長λ3のレーザ光を照射すると、塗布液層中に侵入した波長λ3のレーザ光は、分散溶媒分子、この分散溶媒中に溶解している被覆剤分子により吸収されない場合、塗布液層を透過して、金属ナノ粒子が密に積層された層に入射される。
塗布液層の表面では、気相中から、分散溶媒の液相中へと移行する際、照射される波長λ3のレーザ光の一部は、反射される。この表面での反射率R3-upper(λ3)は、照射されるレーザ光に対して、分散剤分子、分散溶媒は光吸収を示さないので、レーザ光の波長λ3における、分散溶媒の屈折率nsolvent(λ3)と、気相(例えば、空気)の屈折率nv(λ3)に依存している。
実際には、塗布液層中に分散している金属ナノ粒子は残留していないが、例えば、分散溶媒中に溶解している分散剤分子による散乱、ラマン散乱が存在するため、塗布液層中を通過する際、波長λ3のレーザ光の強度が僅かに減衰される。そのため、塗布液層を透過して、金属ナノ粒子が密に積層された層表面に達する光の割合、すなわち、塗布液層の見掛けの透過率:T3-upper(λ3)は、該塗布液層内での光吸収、反射と散乱に起因する減衰係数:Ascatter(λ3)に依存する、exp{−(Ascatter(λ3)・d}に比例して、減少する。
金属ナノ粒子を構成する金属が、その表面プラズモン吸収によって、波長λ3のレーザ光を吸収することが可能である場合、金属ナノ粒子が密に積層された層に入射される波長λ3のレーザ光の一部は、吸収される。勿論、金属ナノ粒子が密に積層された層の表面において、波長λ3のレーザ光の反射、あるいは、散乱も生じる。この金属ナノ粒子が密に積層された層の表面における見掛けの反射率:R3-metal-layer(λ3)は、金属ナノ粒子が密に積層された層の吸収率に依存している。また、金属ナノ粒子が密に積層された層中に侵入する光の割合(実効的透過率):T3-metal-layer(λ3)も、この層の吸収率に依存している。
金属ナノ粒子が密に積層された層が波長λ3のレーザ光に対して大きな吸収率を示す場合、金属ナノ粒子が密に積層された層中に侵入する光は吸収される。この金属ナノ粒子が密に積層された層により吸収される光の割合(実効的光吸収率):A3-metal-layer(λ3)は、T3-metal-layer(λ3)に相当している。
その際、金属ナノ粒子が密に積層された層により吸収される、波長λ3のレーザ光は、例えば、表面プラズモンを生成し、さらに、格子振動の励起を引き起こすことで、各金属ナノ粒子を局所的に加熱する。その際、金属ナノ粒子が密に積層された層の層内では、各金属ナノ粒子において、波長λ3のレーザ光から変換された熱的エネルギーは、熱伝導を介して、層全体で均一化される。勿論、金属ナノ粒子が密に積層された層の周囲に存在する分散溶媒に対しても、熱伝導を介して、熱的エネルギーが供給され、加熱がなされる。
換言すると、照射される波長λ3のレーザ光によって局所的に加熱される、金属ナノ粒子が密に積層された層に対して、その周囲の分散溶媒は熱的リザーバとして機能し、急激な温度上昇を抑制している。また、塗布液層の表面温度が上昇し、分散溶媒の沸点に近づくと、その表面から分散溶媒分子の蒸散が進む。その結果、その蒸発熱として、金属ナノ粒子が密に積層された層が吸収した波長λ3のレーザ光から変換される熱エネルギーが消費される。すなわち、分散溶媒分子の蒸散によって、塗布液層の表面温度の急激な上昇は抑制され、少なくとも、塗布液層の表面近傍の温度は、該分散溶媒の沸点を超えない範囲に制御されている。
塗布液層の表面から、波長λ3のレーザ光を、照射スポット径D3(μm)、平均レーザ光強度P3(W/mm2)で、垂直方向(入射角0°)から照射する。照射された波長λ3のレーザ光のうち、T3-metal-layer(λ3)・P3(W/mm2)に相当する部分が、金属ナノ粒子が密に積層された層中に侵入し、吸収される。その際、金属ナノ粒子が密に積層された層により吸収された波長λ3のレーザ光は、熱エネルギーに変換される結果、レーザ光照射されている領域では、金属ナノ粒子が密に積層された層の温度が上昇する。レーザ光照射開示時から、該界面の温度は上昇し、照射時間が経過するとともに、前記T3-metal-layer(λ3)・P3(W/mm2)に依存する一定の温度:T3-bottom(℃)に達して、擬平衡状態となる。具体的には、照射時間t3が、t3-minを超えると、該金属ナノ粒子が密に積層された層の温度は、ほぼT3-bottom(℃)に達し、その後は、熱的擬平衡状態となる。
また、塗布液層の表面の温度は、照射時間が経過するとともに、上昇し、該塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度P3(W/mm2)に依存する一定の温度:T3-top(℃)に達して、擬平衡状態となる。この段階では、塗布液層中における光吸収は実質的に無い状態となっており、金属ナノ粒子が密に積層された層から熱伝導によって供給される熱エネルギーにより加熱されている。従って、T3-bottom(℃)>T3-top(℃)となる。
上記の温度に保持される結果、金属ナノ粒子が密に積層された層内において、低温焼結が進行する。温度がT3-bottom(℃)に達した状態で、レーザ光照射を一定時間:Δt3継続すると、金属ナノ粒子焼結体膜に変換される。従って、延べ照射時間t3が、(t3-min+Δt3)を超えると、レーザ光照射されている領域では、基板の表面に、高い密着性の金属ナノ粒子焼結体膜が形成された状態となる。
その過程で、塗布液層の表面から、分散溶媒分子、被覆剤分子、撥液剤分子の蒸散が進行し、最終的に、分散溶媒分子、被覆剤分子、撥液剤分子が残余しない状態となる。
本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法では、工程2、工程3において、塗布液層中に含まれる分散溶媒中に、撥液剤分子、被覆剤分子を溶出させる。そのため、工程1において、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を形成した後、該塗布液層中に含まれる分散溶媒の大半を除去するための乾燥処理を行わない形態が好ましい。
(予備乾燥処理工程)
一方、金属ナノ粒子分散液の塗布液層に含まれる分散溶媒の含有比率が、撥液剤分子、被覆剤分子の溶出に支障を及ぼさない範囲で、工程1の後、工程2に先立って、該塗布液層中に含まれる分散溶媒を部分的に蒸散除去する予備乾燥処理工程を設けることもできる。この予備乾燥処理工程では、塗布液層全体を、温度Tprebaking(℃)に加熱することで、塗布液層中に含まれる分散溶媒を部分的に蒸散除去する。その際、予備乾燥処理の温度Tprebaking(℃)は、上記工程2の第1のレーザ光照射工程により達成される温度、T1-bottom(℃)>T1-top(℃)と比較して、少なくとも、T1-bottom(℃)>Tprebaking(℃)の範囲、好ましくは、1/2{T1-bottom(℃)+T1-top(℃)}≧Tprebaking(℃)となる範囲に選択する。
具体的には、予備乾燥処理の温度Tprebaking(℃)は、一般に、120℃>Tprebaking(℃)の範囲、好ましくは、110℃≧Tprebaking(℃)≧50℃の範囲、望ましくは、100℃≧Tprebaking(℃)≧60℃の範囲に選択する。予備乾燥処理の加熱時間tprebakingは、部分的に蒸散させる分散溶媒の沸点、その含有比率と、温度Tprebaking(℃)に応じて、適宜選択される。例えば、温度Tprebaking(℃)を、100℃≧Tprebaking(℃)≧60℃の範囲に選択する際には、加熱時間tprebakingは、30秒〜600秒間の範囲、通常、60秒〜300秒の範囲に選択することが望ましい。
予備乾燥処理を施す結果、塗布液層中に含有される分散溶媒の体積比率が減少する。結果的に、その後、レーザ光照射による加熱に伴って、蒸散する分散溶媒量は相対的に減少する。発火点が比較的に低い分散溶媒を使用する場合、分散溶媒の蒸散量を低減すると、大気中において、レーザ光照射による局所加熱された状態となり、発火条件を満足する状態に至ることを防止する効果もある。
本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法において、その第一の形態では、基板として、ポリイミド層により被覆された基板を採用する。
その際、前記ポリイミド層の表面をコートする撥液剤被覆層を除去する、工程2の「第1のレーザ光照射工程」において、波長λ1のレーザ光を照射し、該ポリイミド層により吸収させる過程を利用して、該ポリイミド層表面の改質がなされる。
例えば、工程2において、ポリイミド層自体は、波長λ1=532nm,355nm,266nmのNd/YAGレーザ光の高調波に対する光吸収を示し、この光吸収に起因する光活性化を受ける。また、ポリイミド層は、波長λ1=1064nmのNd/YAGレーザ光の照射によって、局所的に振動励起を受け、活性化がなさる。具体的には、ポリイミド層中における光活性化に伴って、改質がなされる。例えば、レーザ露光領域では、部分的なイミド環の開環反応が進行する。この部分的なイミド環開環によって、例えば、イミド環に由来する、−COOH型の官能基と、−CO−NH−結合部が生成される。前記ポリイミド層の改質によって、その表面に生成される、例えば、−COOH型の官能基や、−CO−NH−結合部は、金属ナノ粒子、例えば、銀ナノ粒子の表面の銀原子との結合を形成する機能を具えている。従って、前記ポリイミド層の改質によって、その表面に生成される、例えば、−COOH型の官能基や、−CO−NH−結合部などの構造は、金属ナノ粒子、例えば、銀ナノ粒子との相互作用することで、密着性を向上させる機能を発揮する。
この第一の形態では、上記工程1〜工程4において、下記する条件を選択することが好ましい。
工程1において、前記ポリイミド層の表面をコートする撥液剤は、金属ナノ粒子分散液に用いる分散溶媒に対して、撥液性を示す有機化合物が利用される。例えば、撥液剤として、フッ素系表面処理剤、例えば、EGC-1720、3M Novec(住友スリーエム株式会社)など、シリコン系表面処理剤などが利用できる。また、撥液剤被覆層の膜厚は、一般に、5nm〜100nmの範囲、好ましくは、5nm〜20nmの範囲に選択する。なお、撥液剤被覆層は、ポリイミド層の表面全体を覆うように、均一に塗布されている状態とすることが望ましい。
また、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さdは、該塗布液層中に含有される金属ナノ粒子の体積比率を、Vparticle体積%とする際、d・(V/100)が、0.5μmを超えない範囲に選択する。その場合、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さdは、1μm〜5μmの範囲、好ましくは、2μm〜4μmの範囲に選択する。一方、金属ナノ粒子分散液中に含有される金属ナノ粒子の体積比率:Vparticle体積%を、10体積%〜50体積%、好ましくは、10体積%〜25体積%の範囲に選択する。
工程2で利用される、波長λ1のレーザ光としては、例えば、金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子を用いる場合、波長1064nmのNd/YAGレーザ光を採用することが好ましい。また、塗布液層の表面に、垂直方向(入射角0°)から照射する場合、波長λ1のレーザ光は、光ファイバを介して、微小なスポット径で照射する形態とすることが好ましい。照射スポット径D1(μm)は、10μm〜500μmの範囲、好ましくは、100μm〜500μmの範囲に選択する。また、照射される波長λ1のレーザ光の平均レーザ光強度P1(W/mm2)は、50〜800W/mm2の範囲、好ましくは、100〜500W/mm2の範囲に選択する。
照射スポット点に波長λ1のレーザ光を連続光照射する際、照射時間t1は、少なくとも、1ms以上、通常、1ms〜100msの範囲、好ましくは、20ms〜50msの範囲に選択する。従って、延べ照射量:P1・t1は、800〜20,000W・ms/mm2の範囲、好ましくは、2,000〜15,000W・ms/mm2の範囲に選択する。
工程3で利用される、波長λ2のレーザ光としては、例えば、金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子を用いる場合、波長1064nmのNd/YAGレーザ光、波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波を採用することが好ましい。なお、波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波を採用すると、銀ナノ粒子の局在プラズモンに起因する吸収の寄与が増す。前記波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波に代えて、例えば、波長488nm、514.5nmのアルゴンイオンレーザ光を利用することも可能である。
また、塗布液層の表面に、垂直方向(入射角0°)から照射する場合、波長λ2のレーザ光は、光ファイバを介して、微小なスポット径で照射する形態とすることが好ましい。照射スポット径D2(μm)は、10μm〜500μmの範囲、好ましくは、100μm〜500μmの範囲に選択する。また、照射される波長λ2のレーザ光の平均レーザ光強度P2(W/mm2)は、5〜200W/mm2の範囲、好ましくは、10〜100W/mm2の範囲に選択する。
照射スポット点に波長λ2のレーザ光を連続光照射する際、照射時間t1は、少なくとも、1ms以上、通常、1ms〜100msの範囲、好ましくは、20ms〜50msの範囲に選択する。従って、延べ照射量:P2・t2は、200〜5,000W・ms/mm2の範囲、好ましくは、500〜3,000W・ms/mm2の範囲に選択する。
工程4で利用される、波長λ3のレーザ光としては、例えば、金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子を用いる場合、波長1064nmのNd/YAGレーザ光を採用することが好ましい。工程3と同様に、工程4で利用する、波長λ3のレーザ光として、波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波を採用することもできる。前記波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波に代えて、例えば、波長488nm、514.5nmのアルゴンイオンレーザ光を利用することも可能である。
また、塗布液層の表面に、垂直方向(入射角0°)から照射する場合、波長λ3のレーザ光は、光ファイバを介して、微小なスポット径で照射する形態とすることが好ましい。照射スポット径D3(μm)は、10μm〜500μmの範囲、好ましくは、100μm〜500μmの範囲に選択する。また、照射される波長λ3のレーザ光の平均レーザ光強度P2(W/mm2)は、5〜200W/mm2の範囲、好ましくは、10〜100W/mm2の範囲に選択する。
照射スポット点に波長λ3のレーザ光を連続光照射する際、照射時間t1は、少なくとも、1ms以上、通常、1ms〜100msの範囲、好ましくは、20ms〜50msの範囲に選択する。従って、延べ照射量:P3・t3は、200〜5,000W・ms/mm2の範囲、好ましくは、500〜3,000W・ms/mm2の範囲に選択する。
本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法において、その第二の形態では、基板として、金属基板、例えば、金属箔を導電体層とする基板を採用する。
その際、金属箔の導電体層、例えば、電解銅の導電体層の表面をコートする撥液剤被覆層を除去する、工程1の「第1のレーザ光照射工程」において、波長λ1のレーザ光を照射し、該金属箔の導電体層、例えば、電解銅の導電体層により吸収させる。
撥液剤被覆層を除去する工程後、工程3において、この該金属箔の導電体層、例えば、電解銅の導電体層の表面に、金属ナノ粒子、例えば、銀ナノ粒子が付着した状態とされる。さらに、工程4において、低温焼結処理を実施することで、該金属箔の導電体層、例えば、電解銅の導電体層と、金属ナノ粒子、例えば、銀ナノ粒子との間で相互拡散が進行する。この相互拡散により形成される合金化領域の存在によって、金属箔の導電体層、例えば、電解銅の導電体層の表面に、高い密着性の金属ナノ粒子焼結体膜が形成された状態となる。
この第二の形態では、上記工程1〜工程4において、下記する条件を選択することが好ましい。
工程1において、金属基板、例えば、電解銅の導電体層の表面をコートする撥液剤は、金属ナノ粒子分散液に用いる分散溶媒に対して、撥液性を示す有機化合物が利用される。例えば、撥液剤として、フッ素系表面処理剤、例えば、EGC-1720、3M Novec(住友スリーエム株式会社)など、シリコン系表面処理剤などが利用できる。また、撥液剤被覆層の膜厚は、一般に、5nm〜100nmの範囲、好ましくは、5nm〜20nmの範囲に選択する。なお、撥液剤被覆層は、金属基板、例えば、電解銅の導電体層の表面全体を覆うように、均一に塗布されている状態とすることが望ましい。
また、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さdは、該塗布液層中に含有される金属ナノ粒子の体積比率を、Vparticle体積%とする際、d・(V/100)が、0.5μmを超えない範囲に選択する。その場合、金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さdは、1μm〜5μmの範囲、好ましくは、2μm〜4μmの範囲に選択する。一方、金属ナノ粒子分散液中に含有される金属ナノ粒子の体積比率:Vparticle体積%を、10体積%〜50体積%、好ましくは、10体積%〜25体積%の範囲に選択する。
工程2で利用される、波長λ1のレーザ光としては、例えば、金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子を用いる場合、波長1064nmのNd/YAGレーザ光を採用することが好ましい。また、塗布液層の表面に、垂直方向(入射角0°)から照射する場合、波長λ1のレーザ光は、光ファイバを介して、微小なスポット径で照射する形態とすることが好ましい。照射スポット径D1(μm)は、10μm〜500μmの範囲、好ましくは、100μm〜500μmの範囲に選択する。また、照射される波長λ1のレーザ光の平均レーザ光強度P1(W/mm2)は、5,000〜15,000W/mm2の範囲、好ましくは、10,000〜15,000W/mm2の範囲に選択する。
照射スポット点に波長λ1のレーザ光を連続光照射する際、照射時間t1は、少なくとも、0.5ms以上、通常、0.5ms〜10msの範囲、好ましくは、2ms〜5msの範囲に選択する。従って、延べ照射量:P1・t1は、7,500〜75,000W・ms/mm2の範囲、好ましくは、20,000〜50,000W・ms/mm2の範囲に選択する。
工程3で利用される、波長λ2のレーザ光としては、例えば、金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子を用いる場合、波長1064nmのNd/YAGレーザ光波長、波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波を採用することが好ましい。なお、波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波を採用すると、銀ナノ粒子の局在プラズモンに起因する吸収の寄与が増す。前記波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波に代えて、例えば、波長488nm、514.5nmのアルゴンイオンレーザ光を利用することも可能である。
また、塗布液層の表面に、垂直方向(入射角0°)から照射する場合、波長λ2のレーザ光は、光ファイバを介して、微小なスポット径で照射する形態とすることが好ましい。照射スポット径D2(μm)は、10μm〜500μmの範囲、好ましくは、100μm〜500μmの範囲に選択する。また、照射される波長λ2のレーザ光の平均レーザ光強度P2(W/mm2)は、500〜3,000W/mm2の範囲、好ましくは、1,00〜2,000W/mm2の範囲に選択する。
照射スポット点に波長λ2のレーザ光を連続光照射する際、照射時間t2は、少なくとも、0.5ms以上、通常、0.5ms〜10msの範囲、好ましくは、2ms〜5msの範囲に選択する。従って、延べ照射量:P2・t2は、1,500〜7,500W・ms/mm2の範囲、好ましくは、2,000〜5,000W・ms/mm2の範囲に選択する。
工程4で利用される、波長λ3のレーザ光としては、例えば、金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子を用いる場合、波長1064nmのNd/YAGレーザ光を採用することが好ましい。工程3と同様に、工程4で利用する、波長λ3のレーザ光として、波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波を採用することもできる。前記波長532nm、355nmのNd/YAGレーザ光の高調波に代えて、例えば、波長488nm、514.5nmのアルゴンイオンレーザ光を利用することも可能である。
また、塗布液層の表面に、垂直方向(入射角0°)から照射する場合、波長λ3のレーザ光は、光ファイバを介して、微小なスポット径で照射する形態とすることが好ましい。照射スポット径D3(μm)は、10μm〜500μmの範囲、好ましくは、100μm〜500μmの範囲に選択する。また、照射される波長λ3のレーザ光の平均レーザ光強度P3(W/mm2)は、500〜3,000W/mm2の範囲、好ましくは、1,00〜2,000W/mm2の範囲に選択する。
照射スポット点に波長λ3のレーザ光を連続光照射する際、照射時間t3は、少なくとも、0.5ms以上、通常、0.5ms〜10msの範囲、好ましくは、2ms〜5msの範囲に選択する。従って、延べ照射量:P3・t3は、1,500〜7,500W・ms/mm2の範囲、好ましくは、2,000〜5,000W・ms/mm2の範囲に選択する。
または、銅含有比率97質量%以上の銅合金からなる導電体層を採用する基板においても、同様の条件が利用できる。
本発明にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法では、まず、上記工程1〜工程4を実施することで、基板表面に高い密着性を示す、膜厚が約0.5μm程度の金属ナノ粒子焼結体膜を形成する。その後、この金属ナノ粒子焼結体膜上に、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を形成し、上記工程3、工程4と同様の操作を行うことで、順次、金属ナノ粒子焼結体膜を積層することで、全体膜厚が厚い金属ナノ粒子焼結体層を作製することが可能である。
すなわち、上記の工程1〜工程4に加えて、下記する工程1’、工程3’、工程4’を繰り返し、膜厚が約0.5μm程度の金属ナノ粒子焼結体膜を積層することで、全体膜厚が厚い金属ナノ粒子焼結体層を作製することが可能である。
(工程1’)金属ナノ粒子分散液の塗布液層の形成工程:
作製された金属ナノ粒子焼結体膜の表面に、金属ナノ粒子分散液を所定のパターン形状で塗布して、金属ナノ粒子分散液の塗布液層を形成する。金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さdは、該塗布液層中に含有される金属ナノ粒子の体積比率を、Vparticle体積%とする際、d・(V/100)が、0.5μmを超えない範囲に選択する。
その際、撥液剤被覆層がコートされている基板表面においては、分散溶媒の濡れ性は低いため、塗布された金属ナノ粒子分散液は、目的とするパターン形状の外へと濡れ拡がる現象の抑制がなされる。
一方、作製された金属ナノ粒子焼結体膜の表面に対して、金属ナノ粒子分散液は良好な濡れ性を示すため、同じパターン形状の塗布液層が得られる。
次の工程3’の第2のレーザ光照射工程を実施する。
(工程3’)第2のレーザ光照射工程:
金属ナノ粒子分散液の塗布液層の表面から、波長λ2のレーザ光を、照射スポット径D2(μm)、平均レーザ光強度P2(W/mm2)で、垂直方向(入射角0°)から照射する。
金属ナノ粒子の表面に局在プラズモンが生成されると、該局在プラズモンによって、金属ナノ粒子の表面の被覆剤分子の振動励起が引き起こされる。その状態では、金属ナノ粒子の表面から、被覆剤分子の熱的離脱の促進が図られる。従って、塗布液層/金属ナノ粒子焼結体膜の界面の近傍においても、金属ナノ粒子の表面から、被覆剤分子の熱的離脱が進行し、被覆剤分子が除去された金属ナノ粒子が、金属ナノ粒子焼結体膜表面に付着し、付着した金属ナノ粒子は、二次元的な層構造を形成する。この二次元的な金属ナノ粒子の付着層を、核生成層として、その上面に、被覆剤分子が除去された金属ナノ粒子が積層される。
この金属ナノ粒子の積層中でも、温度T2-bottom(℃)程度に加熱されており、金属ナノ粒子相互が、融着した状態となる。
金属ナノ粒子焼結体膜表面に付着されている、金属ナノ粒子が密に積層された層に対して、次の工程4’:第3のレーザ光照射工程によって、低温焼結を施し、金属ナノ粒子焼結体膜とする。
(工程4’)第3のレーザ光照射工程:
塗布液層の表面から、波長λ3のレーザ光を、照射スポット径D3(μm)、平均レーザ光強度P3(W/mm2)で、垂直方向(入射角0°)から照射する。その際、金属ナノ粒子が密に積層された層により吸収された波長λ3のレーザ光は、熱エネルギーに変換される結果、レーザ光照射されている領域では、金属ナノ粒子が密に積層された層の温度が上昇する。具体的には、照射時間t3が、t3-minを超えると、該金属ナノ粒子が密に積層された層の温度は、ほぼT3-bottom(℃)に達し、その後は、熱的擬平衡状態となる。
また、塗布液層の表面の温度は、照射時間が経過するとともに、上昇し、該塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度P3(W/mm2)に依存する一定の温度:T3-top(℃)に達して、擬平衡状態となる。この段階では、塗布液層中における光吸収は実質的に無い状態となっており、金属ナノ粒子が密に積層された層から熱伝導によって供給される熱エネルギーにより加熱されている。従って、T3-bottom(℃)≧T3-top(℃)となる。
上記の温度に保持される結果、金属ナノ粒子が密に積層された層内において、低温焼結が進行する。温度がT3-bottom(℃)に達した状態で、レーザ光照射を一定時間:Δt3継続すると、金属ナノ粒子焼結体膜に変換される。従って、延べ照射時間t3が、(t3-min+Δt3)を超えると、レーザ光照射されている領域では、基板の表面に、高い密着性の金属ナノ粒子焼結体膜が形成された状態となる。
その過程で、塗布液層の表面から、分散溶媒分子、被覆剤分子の蒸散が進行し、最終的に、分散溶媒分子、被覆剤分子、撥液剤分子が残余しない状態となる。
以下に、本発明で好適に利用される、金属ナノ粒子分散液の構成を更に詳しく説明する。
該金属ナノ粒子分散液は、配線層の微細な平面パターンを高い精度で描画するため、目標とする最小線幅、平面形状サイズに応じて、金属ナノ粒子の平均粒子径は1〜100nmの範囲に選択する。好ましくは、平均粒子径を1〜20nmの範囲に選択する。含有される金属ナノ粒子自体の平均粒子径を前記の範囲に選択することで、インクジェット印刷装置により、微細な線幅のパターンへの塗布を可能としている。
分散液中における、金属ナノ粒子同士の凝集を防ぐために、金属ナノ粒子の表面に低分子による被覆層を設け、液体中に分散された状態となっているものを利用する。すなわち、該金属ナノ粒子分散液を積層塗布した塗布層を加熱処理して、含有されている金属ナノ粒子同士、その接触界面における融着を起こすように、金属ナノ粒子の表面には、酸化膜が実質的に存在しない状態となっているものを利用する。
具体的には、金属ナノ粒子の表面は、かかる金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆された状態とする。すなわち、かかる金属ナノ粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により、金属ナノ粒子の金属表面を均一に被覆した状態とする、例えば、末端アミノ基を1以上有するアミン化合物などにより被覆された状態を保持しつつ、一種以上の有機溶剤中に分散されてなる金属ナノ粒子の分散液を用いる。
この被覆層の役割は、加熱処理を施すまでは、金属ナノ粒子が互いにその金属表面が直接接触しない状態とすることによって、分散液中に含有される金属ナノ粒子の凝集を抑制し、保管時の耐凝集性を高く維持することである。また、仮に塗布を行う際など、水分や大気中の酸素分子と接しても、金属ナノ粒子の表面は、既に被覆層で覆われており、水分子や酸素分子との直接的な接触に至らないので、水分や大気中の酸素分子による金属超微粒子表面の自然酸化膜の形成も抑制する機能をも有する。
この金属ナノ粒子表面の均一な被覆に利用される化合物は、金属元素と配位的な結合を形成する際、窒素、酸素、またはイオウ原子上の孤立電子対を有する基を利用するものである。例えば、窒素原子を含む基として、アミノ基が挙げられる。また、イオウ原子を含む基としては、スルファニル基(−SH)、スルフィド型のスルファンジイル基(−S−)が挙げられる。また、酸素原子を含む基としては、ヒドロキシ基(−OH)、エーテル型のオキシ基(−O−)が挙げられる。
利用可能なアミノ基を有する化合物の代表として、アルキルアミンを挙げることができる。なお、かかるアルキルアミンは、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上、より好ましくは、150℃以上の範囲となるものが好ましい。一方、導電性ナノ粒子ペーストの加熱処理を行う際には、金属ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、分散溶媒とともに、蒸散することが可能であることが必要である。少なくとも、その沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるアルキルアミンが好ましい。例えば、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、C8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、室温付近での蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。
一般に、かかる配位的な結合を形成する上では、第一級アミン型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級アミン型、ならびに、第三級アミン型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジアミン型、1,3−ジアミン型など、近接する二以上のアミノ基が結合に関与する化合物も利用可能である。また、分散溶媒に溶解可能な程度の比較的分子量が小さいポリアミン型化合物を利用することもできる。場合によっては、ポリオキシアルキレンアミン型のエーテル型のオキシ基(−O−)を鎖中に含む、鎖状のアミン化合物を用いることもできる。その他、末端のアミノ基以外に、親水性の末端基、例えば、水酸基を有するヒドロキシアミン、例えば、エタノールアミンなどを利用することもできる。
また、利用可能なスルファニル基(−SH)を有する化合物の代表として、アルカンチオールを挙げることができる。なお、かかるアルカンチオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上、より好ましくは、150℃以上の範囲となるものが好ましい。一方、金属ナノ粒子分散液の塗布膜の加熱処理を行う際には、金属ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、分散溶媒とともに、蒸散することが可能であることが必要である。少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるアルカンチオールが好ましい。例えば、アルカンチオールとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、さらに好ましくはC8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にスルファニル基(−SH)を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルカンチオールは、熱的な安定性もあり、また、室温付近の蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。一般に、第一級チオール型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級チオール型、ならびに、第三級チオール型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジチオール型などの、二以上のスルファニル基(−SH)が結合に関与するものも、利用可能である。また、分散溶媒に溶解可能な程度の比較的分子量が小さなポリチオエーテル型化合物を利用することもできる。
また、利用可能なヒドロキシ基を有する化合物の代表として、アルカンジオールを挙げることができる。一例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。また、分散溶媒に溶解可能な程度の比較的分子量が小さいなポリエーテル型化合物を利用することもできる。なお、かかるアルカンジオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、通常、100℃以上の範囲、より好ましくは、150℃以上の範囲となるものが好ましい。一方、金属ナノ粒子を含む積層塗布層の加熱処理を行う際には、金属ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、分散溶媒とともに、蒸散することが可能であることが必要である。少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるアルカンジオールが好ましい。例えば、1,2−ジオール型などの、二以上のヒドロキシ基が結合に関与するものなどが、より好適に利用可能である。
金属ナノ粒子分散液中に含有される金属ナノ粒子は、前述の窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上を、表面被覆層として有する状態で、分散溶媒中に分散されている。かかる表面被覆層は、保管している際、金属ナノ粒子相互の表面が直接接触することを回避する機能を果せる範囲で、不必要に過剰な被覆分子が存在しないように、適正な被覆比率を選択する。すなわち、レーザ光照射による加熱によって、低温焼成する際、共存している分散溶媒中に、これら被覆層分子を溶出、離脱することが可能である、適正な含有量であって、被覆保護機能を達成できる範囲に被覆比率を選択する。例えば、金属ナノ粒子100質量部に対して、前述の窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上が総和として、一般に、10〜50質量部を、より好ましくは、20〜50質量部を含有するように、被覆比率を選択することが好ましい。なお、かかる金属ナノ粒子100質量部に対して、その表面を被覆している、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を有する化合物1種以上の総和は、金属ナノ粒子の平均粒子径にも依存する。すなわち、金属ナノ粒子の平均粒子径がより小さくなると、金属ナノ粒子100質量部当たりの、ナノ粒子表面の表面積総和は、平均粒子径に反比例して増加するため、被覆分子の総和は、それに従って、より高い比率を必要とする。その点を考慮に入れ、金属ナノ粒子の平均粒子径を1〜20nmの範囲に選択する際には、金属ナノ粒子100質量部に対して、その表面を被覆している被覆分子の総和は、20〜50質量部の範囲に選択することが好ましい。
金属ナノ粒子分散液に含有される分散溶媒として利用される有機溶剤は、室温においては、上述の表面被覆層を設けた金属ナノ粒子を分散させる役割を有するが、加熱した際には、金属ナノ粒子表面の被覆層分子を溶出、離脱することが可能である溶媒としての機能を発揮する。その際、レーザ光照射による加熱状態における被覆層分子の溶出段階において、蒸散が顕著に進行しない高沸点の液体状有機物を利用する。従って、100℃以上に加熱した際、好ましくは、該分散溶媒100質量部当たり、金属ナノ粒子表面を被覆する前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物を50質量部以上溶解可能な、高溶解性を有する有機溶剤一種、あるいは二種以上の液体状有機物からなる混合溶媒を利用する。また、100℃以上に加熱した際、金属ナノ粒子表面を被覆する前記窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物に対して、任意な組成の相溶物を形成できる有機溶剤一種、あるいは二種以上の液体状有機物からなる混合溶媒、特には、高い相溶性を示すものを利用すると一層好ましい。
具体的には、被覆層分子が、窒素、酸素、またはイオウ原子を含み、これら原子の有する孤立電子対による配位的な結合が可能な基を利用して、金属ナノ粒子表面上に配位している。その際、残る炭化水素鎖、骨格部分に対する親和性を利用して、分散溶媒に含まれる有機溶剤は、被覆層分子で覆われた金属ナノ粒子の分散状態の維持、あるいは互いの相溶性を達成させる機能を発揮する。金属ナノ粒子表面への配位的な結合に起因する、被覆層分子の親和力は、物理的吸着よりも強固ではあるものの、加熱に伴って、急速に低下する。一方、温度上昇に付随して、有機溶剤の示す溶解特性が増す結果、両者の均衡する温度以上に加熱すると、温度上昇に従って、加速度的に被覆層分子の脱離、溶出が促進される。最終的には、加熱中に存在する分散溶媒の中に、金属ナノ粒子表面の被覆層分子の殆ど全てが溶解され、金属ナノ粒子表面には、実質的に被覆層分子が残留していない状態が達成される。
勿論、この被覆層分子の金属ナノ粒子表面からの溶出過程と再付着過程とは、熱的平衡関係にあるため、加熱時における、該分散溶媒に対する被覆層分子の溶解度は十分に高いことがより望ましい。積層されている金属ナノ粒子相互の隙間に浸潤している分散溶媒へ、被覆層分子の溶出が一旦なされても、かかる狭い隙間を介して、塗布層内部から外縁部へと、被覆層分子が拡散・流出するには、更なる時間を要する。金属ナノ粒子相互の焼結が進行する間における、被覆層分子の再付着を効果的に抑制する上では、上記する高い溶解性を示す有機溶剤の利用が望ましい。
すなわち、分散溶媒として利用される有機溶剤は、金属ナノ粒子表面の被覆層分子に対する親和性を示すものの、室温付近では、かかる有機溶剤中へ金属ナノ粒子表面の被覆層分子は、容易には溶出することはないが、加熱に付随して、溶解度が上昇し、100℃以上に加熱した際には、かかる有機溶剤中へ被覆層分子が溶出可能となるものが利用される。例えば、金属ナノ粒子の表面に被覆層を形成している化合物、例えば、アルキルアミンなどアミン化合物に対しては、そのアルキル基部分と親和性を示す、鎖状の炭化水素基を含有するが、かかるアミン化合物の溶解性が高すぎ、室温付近でも、金属ナノ粒子表面の被覆層が消失するような高い極性を示す溶剤ではなく、非極性溶剤あるいは低極性溶剤を選択することが好ましい。加えて、レーザ光照射による低温焼成処理を行う温度においても、熱分解などを起こすことがない程度には熱的な安定性を有し、また、沸点は、少なくとも、80℃以上で、好ましくは、150℃以上、300℃を超えない範囲であることが好ましい。また、微細なラインを形成する際、そのインクジェット法による塗布の工程において、金属ナノ粒子分散液を所望の液粘度範囲に維持することが必要である。そのハンドリング性の面を考慮すると、室温付近では容易に蒸散することのない、前記の高沸点を示す、無極性溶媒あるいは低極性溶媒、例えば、炭素数10〜18のアルカン類、例えば、テトラデカンなど、炭素数8〜12の第一級アルコール類、例えば、1−デカノールなどが好適に用いられる。但し、利用される分散溶媒自体の液粘度は、少なくとも、10 mPa・s(20℃)以下、好ましくは、0.2〜3 mPa・s(20℃)の範囲である溶媒を選択することが望ましい。
一方、金属ナノ粒子分散液は、微細な液滴として噴射して塗布する方法であるインクジェット法を適用して、微細なパターンの描画に利用される。従って、金属ナノ粒子分散液は、採用する描画手法に応じて、適合する液粘度を有するものに、調製することが必要である。具体的には、微細配線パターンの描画にインクジェット法を利用するため、該金属ナノ粒子分散液は、その液粘度を、2〜30 mPa・s(20℃)の範囲に選択することが望ましい。その際、該分散液中における分散溶媒の容積比率は、55〜80体積%の範囲に選択されていることがより好ましい。なお、該金属ナノ粒子分散液の液粘度は、用いる金属ナノ粒子の平均粒子径、分散濃度、用いている分散溶媒の種類に依存して決まり、前記の三種の因子を適宜選択して、目的とする液粘度に調節することができる。
具体的には、金属ナノ粒子分散液の組成は、該分散液中における分散溶媒の容積比率は、55〜80体積%の範囲に選択されている際、その液粘度を、2〜30 mPa・s(20℃)の範囲となることが好ましい。
例えば、分散溶媒として、上述する高沸点を示す、無極性溶媒あるいは低極性溶媒に加えて、液粘度を調整するとともに、レーザ光照射による加熱を行う際、被覆層分子の溶出に利し、一方、室温付近では、被覆層分子の離脱を抑制する機能、さらには、離脱に対する補償機能を示すような、比較的に低極性の液状有機物を添加、配合することができる。かかる補足的に添加、配合される低極性の液状有機物は、主な溶媒成分に対して、均一な混合を達成でき、また、その沸点は、主な溶媒成分と同様に高沸点であることが望ましい。例えば、主な溶媒成分が、炭素数8〜12の第一級アルコール類、例えば、1−デカノールなどである際には、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの分岐のジオール類、また、主な溶媒成分が、炭素数10〜18のアルカン類、例えば、テトラデカンなどである際には、ビス2−エチルヘキシルアミンなどの分岐を有するジアルキルアミン類などを、補足的に添加、配合される低極性の液状有機物として利用することができる。
加熱処理に際して、金属ナノ粒子の表面を被覆しているアルキルアミンなどの被覆層分子は上述の分散溶媒中に溶出、離脱され、金属ナノ粒子相互の凝集を抑制していた被覆層が消失する。その結果、徐々に金属ナノ粒子の融着、融合による凝集が進行し、最終的にランダムチェーンが形成される。その際、金属ナノ粒子相互の低温焼結が進行するとともに、金属ナノ粒子間の隙間空間が減少し、全体の体積収縮が起こり、ランダムチェーンが相互に緻密な接触を達成する。その金属ナノ粒子間の隙間空間が減少する際、この隙間空間を占めている分散溶媒は、流動性を保持するので、金属ナノ粒子間の隙間が隘路となったとしても、外部へと押し出され、全体の体積収縮が進行する。この低温焼成過程における、レーザ光照射による加熱処理温度は、基板自体に損傷を与えない温度範囲に選択する。具体的には、低温焼成過程における、レーザ光照射による加熱処理温度は、通常、250℃以下、好ましくは、100℃〜230℃の範囲、より好ましくは、130℃〜200℃の範囲に選択する。その際、被覆層分子は上述の分散溶媒中に溶出、離脱がなされ、得られる金属ナノ粒子の焼結体は、不均一な金属ナノ粒子の凝集を反映する表面の凹凸の無い、平滑な面形状を示す。加えて、より緻密で、極めて低抵抗、例えば、体積固有抵抗率は10×10-6Ω・cm以下の導電体層となる。一方、全体の体積収縮に伴い、外部への押し出される分散溶媒と、それに溶解する被覆層分子は、レーザ光照射によって加熱を継続する間に、徐々に蒸散して、最終的に得られる金属ナノ粒子の焼結体内に、残余する有機物量は、極限られたものとなる。
具体的には、導電体層中における金属ナノ粒子の焼結体自体の体積占有率が高いものとなる。その結果、金属ナノ粒子の焼結体自体の低い体積抵抗率に加えて、かかる導電体層全体の熱伝導率も、その金属体の体積占有率の高さによって、格段に優れたものとなる。
本発明にかかる方法では、前記の低温焼成処理により形成される、金属ナノ粒子の焼結体からなる導電体層を、基板上配線層の形成に利用している。従って、利用する金属ナノ粒子を構成する金属種は、配線層に適する金属種を選択する。例えば、前記金属ナノ粒子分散液中に分散されている、金属ナノ粒子は、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、チタンからなる金属の群より選択される、一種類の金属からなるナノ粒子、二種類以上の金属からなるナノ粒子の混合物、あるいは、該金属の群より選択される、二種類以上の金属の合金からなるナノ粒子であることが好ましい。
特に、基板として、電解銅で形成される銅板、銅箔を導電層とする基板を採用する際には、金属ナノ粒子には、銀ナノ粒子を選択することが好ましい。
また、基板として、ポリイミド層を被覆する基板を採用する際には、金属ナノ粒子には、銀ナノ粒子を選択することが好ましい。
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、かかる具体例により限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、本発明の第一の形態にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法を適用して、ポリイミド層により被覆された基板上に金属ナノ粒子焼結体膜からなる配線層を作製する事例である。
基板として、ポリイミド層により被覆された基板を採用し、該ポリイミド層の表面には、撥液剤被覆層が全面にコートされている。この撥液剤被覆層は、撥液剤:フッ素系表面処理剤EGC-1720、3M Novec(住友スリーエム株式会社)を、膜厚約10nm均一に塗布されている状態である。
金属ナノ粒子分散液として、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散した銀ナノ粒子分散液を利用している。該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10mPa・s(20℃)である。
前記銀ナノ粒子分散液を、前記撥液剤被覆層でコートされた、ポリイミド層により被覆された基板上に、塗布液厚3μmで塗布し、銀ナノ粒子分散液の塗布液層を作製する。
この銀ナノ粒子分散液の塗布液層に、100℃、60秒間の予備乾燥処理を行う。
この銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ1=1064nmのNd/YAGレーザ光を、照射スポット径D1=100μm、平均レーザ光強度P1=250W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。前記照射条件において、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R1-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T1-upper=74%、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R1-lower=1%である。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層中における見掛けの光吸収率A1-upper=23%、ポリイミド層中に侵入する光の割合(実効的透過率)T1-lower=73%となっている。
その結果、照射時間t1=25msが経過した時点(P1・t1≧6250ms・W/mm2)で、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T1-bottom=120℃、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度T1-top=90℃の状態となる。
該ポリイミド層表面をコートする撥液剤被覆層に用いる、撥液剤:フッ素系表面処理剤EGC-1720(沸点:61℃)自体は、前記波長λ1=1064nmのレーザ光を吸収しない。一方、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T1-bottom=110℃では、該撥液剤:フッ素系表面処理剤EGC-1720は、銀ナノ粒子分散液の分散溶媒:N14に溶解する。その結果、銀ナノ粒子分散液塗布液層に接し、レーザ光照射がなされた部分においては、銀ナノ粒子分散液塗布液層とポリイミド層の界面に存在していた撥液剤被覆層の選択的な除去がなされる。
その際、ポリイミド層自体は、波長λ1=1064nmのレーザ光を対する光吸収を示し、この光吸収に起因する光活性化を受ける。具体的には、ポリイミド層中における光活性化に伴って、改質がなされる。例えば、レーザ露光領域では、部分的なイミド環の開環反応が進行する。この部分的なイミド環開環によって、例えば、イミド環に由来する、−COOH型の官能基と、−CO−NH−結合部が生成される。前記ポリイミド層の改質によって、その表面に生成される、例えば、−COOH型の官能基や、−CO−NH−結合部は、銀ナノ粒子の表面の銀原子との結合を形成する機能を具えている。従って、前記ポリイミド層の改質によって、その表面に生成される、例えば、−COOH型の官能基や、−CO−NH−結合部などの構造は、銀ナノ粒子との相互作用することで、密着性を向上させる機能を発揮する。
引き続き、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ2=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D2=100μm、平均レーザ光強度P2=50W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この照射条件では、照射開始時、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R2-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T2-upper=74%、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R2-lower=1%である。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層中における見掛けの光吸収率A2-upper=23%、ポリイミド層中に侵入する光の割合(実効的透過率)T2-lower=73%となっている。
平均粒子径3nmの銀ナノ粒子の表面では、波長λ2=1064nmのレーザ光の照射によって、局在プラズモン吸収が生じる。その際、該銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンは、該局在プラズモンによる励起を受け、振動励起された状態となる。その結果、銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される。
その際、照射時間t2=10msが経過した時点(P2・t2≧500ms・W/mm2)で、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T2-bottom=130℃、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度T2-top=110℃の状態となる。
従って、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T2-bottom=130℃では、振動励起された状態の被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される結果、表面被覆層が除去された銀ナノ粒子が、改質されたポリイミド層の表面に付着する。さらに、その表面に生成される、例えば、−COOH型の官能基や、−CO−NH−結合部などの構造と銀ナノ粒子との相互作用を介して、化学吸着することで、銀ナノ粒子は高い密着性を示す。改質されたポリイミド層の表面には、高い密着性で固定された銀ナノ粒子の二次元的な層が形成される。この固定された銀ナノ粒子の二次元的な層を核生成層として、その上面に、表面被覆層が除去された銀ナノ粒子が積層していく。
改質されたポリイミド層の表面に付着した銀ナノ粒子の二次元的な層が形成されると、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率は、当初のR2-lower=1%から、R2-metal-layer=95%へと増加する。その結果、ポリイミド層中に侵入する光の割合(実効的透過率)は、当初のT2-lower=73%から、T2-metal-layer=4%へと減少する。
照射時間t’2=30msが経過し、改質されたポリイミド層の表面上に、銀ナノ粒子の積層がなされた段階では、この銀ナノ粒子の積層部分の温度は、T’2-bottom=160℃となり、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度は、T’2-top=150℃となる。そのため、改質されたポリイミド層の表面上において、積層された銀ナノ粒子相互の融着が一部進行する。また、塗布液層の表面では、沸点248℃℃の被覆剤分子ドデシルアミン、沸点253.57℃の分散溶媒N14の蒸散が急速に進行する。
その後、塗布液層の表面から、波長λ3=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D3=100μm、平均レーザ光強度P3=50W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この照射条件では、照射開始時、塗布液層の表面での見掛けの反射率R3-upper=3%、塗布液層(分散液層)の見掛けの透過率T3-upper=90%、銀ナノ粒子の積層/塗布液層の界面における見掛けの反射率R3-metal-layer=95%である。従って、塗布液層中における見掛けの光吸収率A3-upper=7%、銀ナノ粒子の積層中に侵入する光の割合(実効的光吸収率)A3-metal-layer=10%となっている。
その際、照射時間t3=5秒が経過した時点(P3・t3≧250ms・W/mm2)で、銀ナノ粒子の積層/塗布液層の界面における温度T3-bottom=180℃、塗布液層の表面の温度T3-top=170℃の状態となる。そのため、改質されたポリイミド層の表面上において、積層された銀ナノ粒子相互の融着、低温焼結が急速に進行する。また、塗布液層の表面では、残余している、沸点248℃℃の被覆剤分子ドデシルアミン、沸点253.57℃の分散溶媒N14の蒸散が加速される。最終的に、照射時間t’3=30秒に達した時点(P3・t’3≧1500ms・W/mm2)で、レーザ露光領域には、低温焼結された、銀ナノ粒子焼結体の薄膜層が形成される。形成される銀ナノ粒子焼結体の薄膜層の平均膜厚は、約0.5μmとなっている。
当初の塗布液厚3μmに対して、銀ナノ粒子焼結体の薄膜層の平均膜厚約0.5μmは、約1/6に相当している。銀ナノ粒子分散液中の、銀ナノ粒子の体積比率は、約12体積%であり、塗布液厚3μm中の銀ナノ粒子をバルク状銀に変換すると、膜厚は、0.35μmに相当する。従って、作製された銀ナノ粒子焼結体の薄膜層では、緻密な焼結が達成されている。
すなわち、上記の銀ナノ粒子焼結体の薄膜層を形成するプロセスは、下記の5つの工程で構成されている。
(工程A−1)銀ナノ粒子分散液塗布液層の作製工程:
撥液剤:EGC-1720からなる、平均膜厚10nmの撥液剤被覆層でコートされた、ポリイミド層により被覆された基板上に、所定の平面形状で、銀ナノ粒子分散液を塗布液厚3μmで塗布し、塗布液層を作製する。
(工程A−1’)塗布液層の予備乾燥処理工程:
銀ナノ粒子分散液塗布液層に、100℃、60秒間の予備乾燥処理を行う。
(工程A−2)第1のレーザ光照射工程:
銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ1=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D1=100μm、平均レーザ光強度P1=250W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この条件で、照射時間t1=20秒のレーザ光照射を行うことで、レーザ光照射された塗布液層と接する領域において、撥液剤:EGC-1720からなる撥液剤被覆層が選択的に除去される。また、塗布液層と接する領域において、レーザ露光されたポリイミド層の表面の改質がなされる。
(工程A−3)第2のレーザ光照射工程:
続いて、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ2=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D2=100μm、平均レーザ光強度P2=50W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この条件で、延べ照射時間t’2=30秒のレーザ光照射を行うことで、改質されたポリイミド層の表面上に、被覆剤分子ドデシルアミンからなる被覆剤分子層が除去された、銀ナノ粒子の積層が形成される。この段階では、ポリイミド層の改質表面に付着する銀ナノ粒子は、改質により生成される、例えば、−COOH型の官能基や、−CO−NH−結合部などの構造との相互作用を介して、化学吸着することで、改質されたポリイミド層の表面に高い密着性を示す。この改質されたポリイミド層表面に付着する銀ナノ粒子を核として、被覆剤分子層が除去された、銀ナノ粒子の積層が進行する。その際、積層された銀ナノ粒子相互の融着が一部進行する。並行して、塗布液層の表面では、除去され、分散溶媒中に溶解している被覆剤分子ドデシルアミン、ならびに分散溶媒N14の蒸散が進行する。
(工程A−4)第3のレーザ光照射工程:
最終的に、塗布液層の表面から、波長λ3=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D3=100μm、平均レーザ光強度P3=50W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この条件で、延べ照射時間t’3=30秒のレーザ光照射を行うことで、改質されたポリイミド層の表面上において、積層された銀ナノ粒子相互の融着、低温焼結が完了される。また、並行して、塗布液層の表面では、分散溶媒N14と、該分散溶媒中に溶存する被覆剤分子ドデシルアミンの蒸散が加速され、形成される銀ナノ粒子焼結体の薄膜層の形成が完了する。
(比較例1)
比較例1は、ポリイミド層により被覆された基板上に塗布される金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さを、実施例1の3倍とし、レーザ光照射時、ポリイミド層表面に達するレーザ光強度を、実施例1と等しくなる条件を選択し、金属ナノ粒子焼結体膜の形成を行う事例である。
基板として、ポリイミド層により被覆された基板を採用し、該ポリイミド層の表面には、撥液剤被覆層が全面にコートされている。この撥液剤被覆層は、撥液剤:フッ素系表面処理剤EGC-1720を、膜厚約10nm均一に塗布されている状態である。
金属ナノ粒子分散液として、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散した銀ナノ粒子分散液を利用している。該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10mPa・s(20℃)である。
前記銀ナノ粒子分散液を、前記撥液剤被覆層でコートされた、ポリイミド層により被覆された基板上に、塗布液厚9μmで塗布し、銀ナノ粒子分散液の塗布液層を作製する。
この銀ナノ粒子分散液の塗布液層に、100℃、60秒間の予備乾燥処理を行う。
この銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ1=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D1=100μmで、垂直方向(入射角0°)から照射する。その際、銀ナノ粒子分散液塗布液層の光透過率は、塗布液層の厚さdに対して、近似的に、exp(−A・d)に比例して減少する。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率は、実施例1の値、T1-upper=74%に対して、比較例1の条件では、T1-upper=40%に減少する。そのため、塗布液厚9μmの条件では、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R1-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T1-upper=40%、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R1-lower=1%となっている。
ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面に照射されるレーザ光強度を、実施例1におけるレーザ光強度と実質的に等しくする。そのため、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度は、実施例1の値P1=250W/mm2に対して、この比較例1の条件では、P1=500W/mm2へと大幅に増加させている。
ポリイミド層表面の加熱は、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面に照射されるレーザ光強度に依存する。前記の照射条件では、該界面に照射されるレーザ光強度は等しいので、ポリイミド層表面の温度もほぼ等しくなる。一方、塗布液層表面の加熱は、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度に依存する。前記の照射条件では、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度が、約2倍に増加されているため、塗布液層表面の温度は大幅に高くなる。
その結果、照射時間t1=25秒が経過した時点(P1・t1≧12,500ms・W/mm2)で、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度は、T1-bottom=150℃に、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度は、T1-top=140℃にまで達する。
該ポリイミド層表面をコートする撥液剤被覆層に用いる、撥液剤:EGC-1720自体は、前記波長λ1=1064nmのレーザ光を吸収しない。一方、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T1-bottom=150℃では、該撥液剤:EGC-1720は、銀ナノ粒子分散液の分散溶媒:N14に溶解する。その結果、銀ナノ粒子分散液塗布液層に接し、レーザ光照射がなされた部分においては、銀ナノ粒子分散液塗布液層とポリイミド層の界面に存在していた撥液剤被覆層の選択的な除去がなされる。
その際、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面に照射されるレーザ光強度を、実施例1におけるレーザ光強度と実質的に等しくしている。ポリイミド層自体は、波長λ1=1064nmのレーザ光を対する光吸収を示し、この光吸収に起因する光活性化を受ける。具体的には、比較例1でも、実施例1と同様に、ポリイミド層中における光活性化に伴って、改質がなされる。
引き続き、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ2=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D2=100μmで、垂直方向(入射角0°)から照射する。この照射条件でも、銀ナノ粒子分散液塗布液層の光透過率は、塗布液層の厚さdに対して、近似的に、exp(−A・d)に比例して減少する。従って、照射開始時、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率は、実施例1の値、T2-upper=74%に対して、比較例1の条件では、T2-upper=40%に減少する。そのため、塗布液厚9μmの条件では、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R2-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T2-upper=40%、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R2-lower=1%となっている。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層中における見掛けの光吸収率A2-upper=57%、ポリイミド層中に侵入する光の割合(実効的透過率)T2-lower=39%となっている。
ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面に照射されるレーザ光強度を、実施例1におけるレーザ光強度と実質的に等しくする。そのため、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度は、実施例1の値P2=50W/mm2に対して、この比較例1の条件では、P2=100W/mm2へと大幅に増加させている。
平均粒子径3nmの銀ナノ粒子の表面では、波長λ2=1064nmのレーザ光の照射によって、局在プラズモン吸収が生じる。その際、該銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンは、該局在プラズモンによる励起を受け、振動励起された状態となる。その結果、銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される。
その際、比較例1の照射条件では、照射時間t2=5秒が経過した時点(P2・t2≧500ms・W/mm2)で、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度は、T2-bottom=160℃、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度は、T2-top=160℃に達する。
従って、ポリイミド層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T2-bottom=160℃では、振動励起された状態の被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される結果、表面被覆層が除去された銀ナノ粒子が、改質されたポリイミド層の表面に付着する。
また、塗布液層の表面における温度T2-top=160℃では、振動励起された状態の被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される結果、銀ナノ粒子の表面被覆層の除去が引き起こされる。表面被覆層が除去された銀ナノ粒子は、相互に融着して、凝集体を構成する。すなわち、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面近傍に、銀ナノ粒子が相互に融着して、凝集体を形成している層が生成される。この銀ナノ粒子の凝集体層を核として、銀ナノ粒子分散液塗布液層中で生成した、銀ナノ粒子の凝集体が、疎な密度で連結した状態となる。
その際、銀ナノ粒子の凝集体層は、波長λ2=1064nmのレーザ光を遮蔽し、銀ナノ粒子分散液塗布液層内部へのレーザ光の侵入を阻害する。結果的に、銀ナノ粒子分散液塗布液層内部では、波長λ2=1064nmのレーザ光照射に起因する、被覆剤分子ドデシルアミンの振動励起により促進される、被覆剤分子ドデシルアミンの離脱過程は阻害される。すなわち、銀ナノ粒子分散液塗布液層内部には、被覆剤分子ドデシルアミンからなる被覆剤分子層を保持している銀ナノ粒子が相当の比率で残っている状態となる。
一方、塗布液層の表面では、分散溶媒N14と、該分散溶媒中に溶解している被覆剤分子ドデシルアミンの蒸散が急速に進行する。
結果的に、分散溶媒の蒸散が進むと、塗布液層の表面には、銀ナノ粒子の凝集体が疎な密度で連結した層構造が形成され、それより下層部分には、被覆剤分子層を保持している銀ナノ粒子が相当の比率で含有されている領域が存在する状態となる。
最終的に、塗布液層の表面から、波長λ3=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D3=100μm、平均レーザ光強度P3=100W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。比較例1では、この照射条件では、照射開始時、塗布液層の表面での見掛けの反射率R3-upper=3%、塗布液層の見掛けの透過率T3-upper=10%、銀ナノ粒子の積層/塗布液層の界面における見掛けの反射率R3-metal-layer=95%である。従って、塗布液層中における見掛けの光吸収率A3-upper=85%、銀ナノ粒子の凝集体層中に侵入する光の割合(実効的光吸収率)A3-metal-layer=85%となっている。
この条件では、塗布液層の表面に形成された、銀ナノ粒子の凝集体が疎な密度で連結した層構造部分では、低温焼結は進行する。しかし、それより下層部分は、被覆剤分子層を保持している銀ナノ粒子が相当の比率で含有されている領域となっており、かかる下層部分では、低温焼結は進行しない。勿論、改質を施したポリイミド層の表面に対する密着性は乏しい状態となっている。
(実施例2)
実施例2は、本発明の第二の形態にかかる高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法を適用して、銅基板上に金属ナノ粒子焼結体膜からなる配線層を作製する事例である。
基板として、電解銅の導電体層を有する基板を採用し、該電解銅の導電体層の表面には、撥液剤被覆層が全面にコートされている。この撥液剤被覆層は、撥液剤:フッ素系表面処理剤EGC-1720を、膜厚約10nm均一に塗布されている状態である。
金属ナノ粒子分散液として、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散した銀ナノ粒子分散液を利用している。該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10mPa・s(20℃)である。
前記銀ナノ粒子分散液を、前記撥液剤被覆層でコートされた、電解銅の導電体層の表面上に、塗布液厚3μmで塗布し、銀ナノ粒子分散液の塗布液層を作製する。
この銀ナノ粒子分散液の塗布液層に、100℃、60秒間の予備乾燥処理を行う。
この銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ1=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D1=100μm、平均レーザ光強度P1=13,000W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。前記照射条件において、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R1-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T1-upper=74%、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R1-lower=60%である。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層中における見掛けの光吸収率A1-upper=23%、電解銅の導電体層中に侵入する光の割合(実効的吸収率)A1-lower=29%となっている。
その結果、照射時間t1=3秒が経過した時点(P1・t1≧39,000ms・W/mm2)で、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T1-bottom=140℃、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度T1-top=120℃の状態となる。
該電解銅の導電体層表面をコートする撥液剤被覆層に用いる、撥液剤:EGC-172自体は、前記波長λ1=1064nmのレーザ光を吸収しない。一方、電解銅の導電体層/塗布液層の界面における温度T1-bottom=140℃では、該撥液剤:EGC-1720は、銀ナノ粒子分散液の分散溶媒:N14に溶解する。その結果、銀ナノ粒子分散液塗布液層に接し、レーザ光照射がなされた部分においては、銀ナノ粒子分散液塗布液層と電解銅の導電体層の界面に存在していた撥液剤被覆層の選択的な除去がなされる。
引き続き、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ2=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D2=100μm、平均レーザ光強度P2=1,500W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この照射条件では、照射開始時、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R2-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T2-upper=74%、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R2-lower=60%である。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層中における見掛けの光吸収率A2-upper=23%、電解銅の導電体層中に侵入する光の割合(実効的光吸収率)A2-lower=29%となっている。
平均粒子径3nmの銀ナノ粒子の表面では、波長λ2=1064nmのレーザ光の照射によって、局在プラズモン吸収が生じる。その際、該銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンは、該局在プラズモンによる励起を受け、振動励起された状態となる。その結果、銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される。
その際、照射時間t2=1秒が経過した時点(P2・t2≧1,500ms・W/mm2)で、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T2-bottom=160℃、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度T2-top=140℃の状態となる。
従って、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T2-bottom=160℃では、振動励起された状態の被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される結果、表面被覆層が除去された銀ナノ粒子が、電解銅の導電体層の表面に付着する。さらに、電解銅と、銀ナノ粒子との間で相互拡散が進むと合金化領域が形成され、高い密着性を示す。電解銅の導電体層の表面には、付着した銀ナノ粒子の二次元的な層が形成される。この付着した銀ナノ粒子の二次元的な層を核生成層として、その上面に、表面被覆層が除去された銀ナノ粒子が積層していく。
電解銅の導電体層の表面に付着した銀ナノ粒子の二次元的な層が形成されると、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率は、当初のR2-lower=60%から、R2-metal-layer=95%へと増加する。その結果、電解銅の導電体層中に侵入する光の割合(実効的光吸収率)は、当初のA2-lower=29%から、A2-metal-layer=5%へと減少する。
照射時間t’2=3秒が経過し(P2・t’2≧4,500ms・W/mm2)、電解銅の導電体層の表面上に、銀ナノ粒子の積層がなされた段階では、この銀ナノ粒子の積層部分の温度は、T’2-bottom=180℃となり、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度は、T’2-top=170℃となる。そのため、電解銅の導電体層の表面上において、積層された銀ナノ粒子相互の融着が一部進行する。また、塗布液層の表面では、沸点248℃℃の被覆剤分子ドデシルアミン、沸点253.57℃の分散溶媒N14の蒸散が急速に進行する。
その後、塗布液層の表面から、波長λ3=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D3=100μm、平均レーザ光強度P3=1,500W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この照射条件では、照射開始時、塗布液層の表面での見掛けの反射率R3-upper=3%、塗布液層(分散液層)の見掛けの透過率T3-upper=90%、銀ナノ粒子の積層/塗布液層の界面における見掛けの反射率R3-metal-layer=95%である。従って、塗布液層中における見掛けの光吸収率A3-upper=7%、銀ナノ粒子の積層中に侵入する光の割合(実効的光吸収率)A3-metal-layer=4%となっている。
その際、照射時間t3=1秒が経過した時点(P3・t3≧1,500ms・W/mm2)で、銀ナノ粒子の積層/塗布液層の界面における温度T3-bottom=190℃、塗布液層の表面の温度T3-top=180℃の状態となる。そのため、電解銅の導電体層の表面上において、積層された銀ナノ粒子相互の融着、低温焼結が急速に進行する。また、塗布液層の表面では、残余している、沸点248℃℃の被覆剤分子ドデシルアミン、沸点253.57℃の分散溶媒N14の蒸散が加速される。最終的に、照射時間t’3=3秒に達した時点(P3・t’3≧4,500ms・W/mm2)で、レーザ露光領域には、低温焼結された、銀ナノ粒子焼結体の薄膜層が形成される。形成される銀ナノ粒子焼結体の薄膜層の平均膜厚は、約0.5μmとなっている。
当初の塗布液厚3μmに対して、銀ナノ粒子焼結体の薄膜層の平均膜厚約0.5μmは、約1/6に相当している。銀ナノ粒子分散液中の、銀ナノ粒子の体積比率は、約12体積%であり、塗布液厚3μm中の銀ナノ粒子をバルク状銀に変換すると、膜厚は、0.35μmに相当する。従って、作製された銀ナノ粒子焼結体の薄膜層では、緻密な焼結が達成されている。
また、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子の積層の界面における温度も、実質的に、T3-bottom=190℃となるので、電解銅と、銀ナノ粒子との間で相互拡散がさらに進み、界面全体に合金化領域が形成され、高い密着性を示す。
すなわち、上記の銀ナノ粒子焼結体の薄膜層を形成するプロセスは、下記の5つの工程で構成されている。
(工程B−1)銀ナノ粒子分散液塗布液層の作製工程:
撥液剤:EGC-1720からなる、平均膜厚10nmの撥液剤被覆層でコートされた、電解銅の導電体層を有する基板上に、所定の平面形状で、銀ナノ粒子分散液を塗布液厚3μmで塗布し、塗布液層を作製する。
(工程B−1’)塗布液層の予備乾燥処理工程:
銀ナノ粒子分散液塗布液層に、100℃、60秒間の予備乾燥処理を行う。 (工程B−2)第1のレーザ光照射工程:
銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ1=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D1=100μm、平均レーザ光強度P1=13,000W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この条件で、照射時間t1=3秒のレーザ光照射を行うことで、レーザ光照射された塗布液層と接する領域において、撥液剤:EGC-1720からなる撥液剤被覆層が選択的に除去される。
(工程B−3)第2のレーザ光照射工程:
続いて、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ2=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D2=100μm、平均レーザ光強度P2=1,500W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この条件で、延べ照射時間t’2=3秒のレーザ光照射を行うことで、電解銅の導電体層の表面上に、被覆剤分子ドデシルアミンからなる被覆剤分子層が除去された、銀ナノ粒子の積層が形成される。この段階では、電解銅の導電体層表面に付着する銀ナノ粒子は、該銀ナノ粒子と接する電解銅と局所的に相互拡散を起し、電解銅の導電体層の表面に高い密着性を示す。この電解銅の導電体層表面に付着する銀ナノ粒子を核として、被覆剤分子層が除去された、銀ナノ粒子の積層が進行する。その際、積層された銀ナノ粒子相互の融着が一部進行する。並行して、塗布液層の表面では、除去され、分散溶媒中に溶解している被覆剤分子ドデシルアミン、ならびに分散溶媒N14の蒸散が進行する。
(工程B−4)第3のレーザ光照射工程:
最終的に、塗布液層の表面から、波長λ3=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D3=100μm、平均レーザ光強度P3=1,500W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。この条件で、延べ照射時間t’3=3秒のレーザ光照射を行うことで、電解銅の導電体層の表面上において、相互拡散による合金化、積層された銀ナノ粒子相互の融着、低温焼結が完了される。また、並行して、塗布液層の表面では、分散溶媒N14と、該分散溶媒中に溶存する被覆剤分子ドデシルアミンの蒸散が加速され、形成される銀ナノ粒子焼結体の薄膜層の形成が完了する。
(比較例2)
比較例2は、銅基板上に塗布される金属ナノ粒子分散液の塗布液層の厚さを、実施例2の3倍とし、レーザ光照射時、電解銅の導電体層表面に達するレーザ光強度を、実施例2と等しくなる条件を選択し、金属ナノ粒子焼結体膜の形成を行う事例である。
基板として、電解銅の導電体層を有する基板を採用し、該電解銅の導電体層の表面には、撥液剤被覆層が全面にコートされている。この撥液剤被覆層は、撥液剤:フッ素系表面処理剤EGC-1720を、膜厚約10nm均一に塗布されている状態である。
金属ナノ粒子分散液として、平均粒子径D:3nmの銀ナノ粒子の表面に、ドデシルアミン(融点28.3℃、沸点248℃)による被覆剤分子層を形成したものを、分散溶媒N14(テトラデカン、粘度 2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、日鉱石油化学製)中に分散した銀ナノ粒子分散液を利用している。該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、被覆剤分子のドデシルアミンが20質量部、分散溶媒のN14が52質量部含まれている。該銀ナノ粒子分散液の液粘度は、10mPa・s(20℃)である。
前記銀ナノ粒子分散液を、前記撥液剤被覆層でコートされた、電解銅の導電体層の表面上に、塗布液厚9μmで塗布し、銀ナノ粒子分散液の塗布液層を作製する。
この銀ナノ粒子分散液の塗布液層に、100℃、60秒間の予備乾燥処理を行う。
この銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ1=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D1=100μmで、垂直方向(入射角0°)から照射する。その際、銀ナノ粒子分散液塗布液層の光透過率は、塗布液層の厚さdに対して、近似的に、exp(−A・d)に比例して減少する。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率は、実施例1の値、T1-upper=74%に対して、比較例2の条件では、T1-upper=40%に減少する。そのため、塗布液厚9μmの条件では、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R1-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T1-upper=40%、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R1-lower=60%となっている。
電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面に照射されるレーザ光強度を、実施例2におけるレーザ光強度と実質的に等しくする。そのため、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度は、実施例2の値P1=13,000W/mm2に対して、この比較例2の条件では、P1=19,000W/mm2へと大幅に増加させている。
電解銅の導電体層表面の加熱は、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面に照射されるレーザ光強度に依存する。前記の照射条件では、該界面に照射されるレーザ光強度は実質的に等しいので、電解銅の導電体層表面の温度もほぼ等しくなる。一方、塗布液層表面の加熱は、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度に依存する。前記の照射条件では、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度が、約1.5倍に増加されているため、塗布液層表面の温度は大幅に高くなる。
その結果、照射時間t1=3秒が経過した時点(P1・t1≧57,000ms・W/mm2)で、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度は、T1-bottom=120℃に、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度は、T1-top=110℃にまで達する。
該電解銅の導電体層表面をコートする撥液剤被覆層に用いる、撥液剤:EGC-1720自体は、前記波長λ1=1064nmのレーザ光を吸収しない。一方、電解銅の導電体層/塗布液層の界面における温度T1-bottom=120℃では、該撥液剤:EGC-1720は、銀ナノ粒子分散液の分散溶媒:N14に溶解する。その結果、銀ナノ粒子分散液塗布液層に接し、レーザ光照射がなされた部分においては、銀ナノ粒子分散液塗布液層と電解銅の導電体層の界面に存在していた撥液剤被覆層の選択的な除去がなされる。
引き続き、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面から、波長λ2=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D2=100μmで、垂直方向(入射角0°)から照射する。この照射条件でも、銀ナノ粒子分散液塗布液層の光透過率は、塗布液層の厚さdに対して、近似的に、exp(−A・d)に比例して減少する。従って、照射開始時、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率は、実施例2の値、T2-upper=74%に対して、比較例2の条件では、T2-upper=40%に減少する。そのため、塗布液厚9μmの条件では、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面での見掛けの反射率R2-upper=3%、銀ナノ粒子分散液塗布液層の見掛けの透過率T2-upper=40%、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における見掛けの反射率R2-lower=60%となっている。従って、銀ナノ粒子分散液塗布液層中における見掛けの光吸収率A2-upper=57%、電解銅の導電体層中に侵入する光の割合(実効的光吸収率)A2-lower=16%となっている。
電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面に照射されるレーザ光強度を、実施例2におけるレーザ光強度と実質的に等しくする。そのため、塗布液層の表面に照射される平均レーザ光強度は、実施例2の値P2=1,500W/mm2に対して、この比較例2の条件では、P2=3,000W/mm2へと大幅に増加させている。
平均粒子径3nmの銀ナノ粒子の表面では、波長λ2=1064nmのレーザ光の照射によって、局在プラズモン吸収が生じる。その際、該銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンは、該局在プラズモンによる励起を受け、振動励起された状態となる。その結果、銀ナノ粒子の表面を被覆している被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される。
その際、比較例1の照射条件では、照射時間t2=1秒が経過した時点(P2・t2≧3,000ms・W/mm2)で、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度は、T2-bottom=160℃、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面の温度は、T2-top=160℃に達する。
従って、電解銅の導電体層/銀ナノ粒子分散液塗布液層の界面における温度T2-bottom=160℃では、振動励起された状態の被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される結果、表面被覆層が除去された銀ナノ粒子が、電解銅の導電体層の表面に付着する。
また、塗布液層の表面における温度T2-top=160℃では、振動励起された状態の被覆剤分子ドデシルアミンの離脱が促進される結果、銀ナノ粒子の表面被覆層の除去が引き起こされる。表面被覆層が除去された銀ナノ粒子は、相互に融着して、凝集体を構成する。すなわち、銀ナノ粒子分散液塗布液層の表面近傍に、銀ナノ粒子が相互に融着して、凝集体を形成している層が生成される。この銀ナノ粒子の凝集体層を核として、銀ナノ粒子分散液塗布液層中で生成した、銀ナノ粒子の凝集体が、疎な密度で連結した状態となる。
その際、銀ナノ粒子の凝集体層は、波長λ2=1064nmのレーザ光を遮蔽し、銀ナノ粒子分散液塗布液層内部へのレーザ光の侵入を阻害する。結果的に、銀ナノ粒子分散液塗布液層内部では、波長λ2=1064nmのレーザ光照射に起因する、被覆剤分子ドデシルアミンの振動励起により促進される、被覆剤分子ドデシルアミンの離脱過程は阻害される。すなわち、銀ナノ粒子分散液塗布液層内部には、被覆剤分子ドデシルアミンからなる被覆剤分子層を保持している銀ナノ粒子が相当の比率で残っている状態となる。
一方、塗布液層の表面では、分散溶媒N14と、該分散溶媒中に溶解している被覆剤分子ドデシルアミンの蒸散が急速に進行する。
結果的に、分散溶媒の蒸散が進むと、塗布液層の表面には、銀ナノ粒子の凝集体が疎な密度で連結した層構造が形成され、それより下層部分には、被覆剤分子層を保持している銀ナノ粒子が相当の比率で含有されている領域が存在する状態となる。
最終的に、塗布液層の表面から、波長λ3=1064nmのレーザ光を、照射スポット径D3=100μm、平均レーザ光強度P3=3,000W/mm2で、垂直方向(入射角0°)から照射する。比較例2では、この照射条件では、照射開始時、塗布液層の表面での見掛けの反射率R3-upper=3%、塗布液層(銀ナノ粒子の凝集体層)の見掛けの透過率T3-upper=15%、銀ナノ粒子の積層/塗布液層の界面における見掛けの反射率R3-metal-layer=95%である。従って、塗布液層(銀ナノ粒子の凝集体層)中における見掛けの光吸収率A3-upper=82%、すなわち、銀ナノ粒子の凝集体層中に侵入する光の割合(実効的光吸収率)A3-metal-layer=82%となっている。
この条件では、塗布液層の表面に形成された、銀ナノ粒子の凝集体が疎な密度で連結した層構造部分では、低温焼結は進行する。しかし、それより下層部分は、被覆剤分子層を保持している銀ナノ粒子が相当の比率で含有されている領域となっており、かかる下層部分では、低温焼結は進行しない。勿論、電解銅の導電体層の表面に対する密着性は乏しい状態となっている。
本発明の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法は、SIP(System in Package)用微細配線基板(インターポーザ/Interposer)、あるいは、SIB(System in Board)用微細配線基板(サブストレート/Substrate)の作製に応用できる。
撥液剤被覆層により表面をコートした基板上に金属ナノ粒子焼結体膜を形成するプロセスを模式的に示す図である。 金属基板(Cu基板)表面に塗布される金属ナノ粒子分散液(銀ナノ粒子分散液)の塗布液厚を薄く選択した条件において、レーザ光照射によって、低温焼結を実施する工程の利用し、金属ナノ粒子(銀ナノ粒子)焼結体膜を形成するプロセスを模式的に示す図である。 金属基板(Cu基板)表面に塗布される金属ナノ粒子分散液(銀ナノ粒子分散液)の塗布液厚を薄く選択した条件において、レーザ光照射によって、低温焼結を実施する際、塗布液層の下部領域に、未焼結状態の銀ナノ粒子が残留するメカニズムを模式的に示す図である。
符号の説明
1 基板
2 撥液剤被覆層
5 金属ナノ粒子分散液塗布液層
6 金属ナノ粒子焼結体膜

Claims (9)

  1. 基板上に高密着性金属ナノ粒子焼結体膜を形成する方法であって、
    下記の工程1〜工程4:
    (工程1)
    撥液剤被覆層でコートされた基板上に、所定の平面形状で、金属ナノ粒子分散液を塗布し、塗布液層を作製する工程;
    (工程2)
    前記塗布液層の表面から、波長λ1のレーザ光を、平均レーザ光強度P1で、垂直方向(入射角0°)から照射する工程;
    (工程3)
    前記工程2の後、前記塗布液層の表面から、波長λ2のレーザ光を、平均レーザ光強度P2で、垂直方向(入射角0°)から照射する工程;
    (工程4)
    前記工程3の後、前記塗布液層の表面から、波長λ3のレーザ光を、平均レーザ光強度P3で、垂直方向(入射角0°)から照射する工程
    とを具え、
    前記金属ナノ粒子分散液は、
    平均粒子径を1〜100nmの範囲に選択する、金属ナノ粒子を分散溶媒中に分散してなる金属ナノ粒子分散液であり、
    前記分散液中に含有される、金属ナノ粒子は、該金属ナノ粒子表面の金属原子に対して、窒素原子、酸素原子、イオウ原子上の孤立電子対を利用して配位的な結合が可能な沸点150℃以上の有機化合物を、被覆剤分子として、該金属ナノ粒子表面を被覆されており、
    前記分散溶媒は、沸点150℃以上の無極性有機溶媒あるいは低極性有機溶媒であり、
    該分散液中において、含有される金属ナノ粒子の占める体積比率をVparticle体積%とする際、塗布液層の厚さdは、0.5μm≧d・(Vparticle/100)を満足する範囲に選択され;
    波長λ1のレーザ光は、前記金属ナノ粒子に実質的に吸収されず、前記基板の表面を構成する材料に吸収される波長λ1を有しており、
    絶縁性樹脂材料で形成される基板を採用する際には、
    平均レーザ光強度P1は、50W/mm2〜800W/mm2の範囲に選択され、
    金属材料で形成される基板を採用する際には、
    平均レーザ光強度P1は、5,000W/mm2〜15,000W/mm2の範囲に選択され;
    波長λ2のレーザ光は、前記金属ナノ粒子に吸収される波長λ2を有しており、
    絶縁性樹脂材料で形成される基板を採用する際には、
    平均レーザ光強度P2は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択され、
    金属材料で形成される基板を採用する際には、
    平均レーザ光強度P2は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択され;
    波長λ3のレーザ光は、前記金属ナノ粒子を構成する金属により吸収される波長λ3を有しており、
    絶縁性樹脂材料で形成される基板を採用する際には、
    平均レーザ光強度P3は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択され、
    金属材料で形成される基板を採用する際には、
    平均レーザ光強度P3は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択される
    ことを特徴とする高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  2. 前記基板は、ポリイミド層により被覆された基板であり、
    該基板の表面を構成する材料は、前記ポリイミド層である
    ことを特徴とする請求項1に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  3. 前記基板は、金属銅、または、銅含有比率97質量%以上の銅合金で構成される導電体層を有する基板であり、
    該基板の表面を構成する材料は、前記金属銅で構成される導電体層である
    ことを特徴とする請求項1に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  4. 前記金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子であり、
    波長λ1のレーザ光は、波長λ1=1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
    平均レーザ光強度P1は、50W/mm2〜800W/mm2の範囲に選択され;
    波長λ2のレーザ光は、波長λ2=1064nmのNd/YAGレーザ光、または波長λ2=532nmのNd/YAGレーザ光の高調波であり、
    平均レーザ光強度P2は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択され;
    波長λ3のレーザ光は、波長λ 3 =1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
    平均レーザ光強度P3は、5W/mm2〜200W/mm2の範囲に選択される
    ことを特徴とする請求項2に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  5. 前記金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子であり、
    波長λ1のレーザ光は、波長λ1=1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
    平均レーザ光強度P1は、5,000W/mm2〜15,000W/mm2の範囲に選択され;
    波長λ2のレーザ光は、波長λ2=1064nmのNd/YAGレーザ光であり、
    平均レーザ光強度P2は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択され;
    波長λ3のレーザ光は、波長λ 3 =1064nmのNd/YAGレーザ光、または波長λ 3 =532nmのNd/YAGレーザ光の高調波であり、
    平均レーザ光強度P3は、500W/mm2〜3,000W/mm2の範囲に選択される
    ことを特徴とする請求項3に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  6. 波長λ1のレーザ光の照射スポット径D1は、10μm〜500μmの範囲に選択され;
    波長λ2のレーザ光の照射スポット径D2は、10μm〜500μmの範囲に選択され;
    波長λ3のレーザ光の照射スポット径D3は、10μm〜500μmの範囲に選択される
    ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  7. 波長λ1のレーザ光の照射スポット径D1、波長λ2のレーザ光の照射スポット径D2、波長λ3のレーザ光の照射スポット径D3は、D1=D2=D3に選択される
    ことを特徴とする請求項6に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  8. 被覆剤分子として、沸点150℃以上のアルキルアミンを選択する
    ことを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
  9. (工程1)の塗布液層を作製する工程後、(工程2)に先立って、
    該塗布液層の予備乾燥を行う予備乾燥処理工程を設ける
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の高密着性金属ナノ粒子焼結体膜の形成方法。
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