JP5105287B2 - 通気性蓄熱板 - Google Patents

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Description

本発明は効率の優れたスターリングサイクル機器を構成する部材に関するもの、詳しくは作動ガスが持つ熱を有効に回収することができる再生熱交換器用蓄熱材として使用する通気性蓄熱板に関するものである。
スターリングエンジン、スターリング冷凍機、スターリングヒートポンプ、ヴィルミエ機関等、スターリングサイクルを利用した装置においては作動ガスを再生熱交換器に通して作動ガスが持つ熱をこれに貯え、次の行程で作動ガスを逆向きに通して貯えた熱を取り出して熱効率の向上が図られている。この再生熱交換器に使用する蓄熱材としては現状では目の細かい金網が最も優れたものとして用いられている。さらに、この性能を改善するものとして金網に使用する針金の断面の形状を楕円形やその他の形にする試みも〔特許文献1〕において公開されている。
しかし蓄熱材として金網を使用した場合には作動ガスの往流と復流で作動ガスの金網に当たる面が異なるという問題が発生する。作動ガスが蓄熱材に熱を貯えるときに当たる面を表面、その流れを往流と考えると、作動ガスが金網に貯えられた熱を取り出すときには復流となり作動ガスが当たる面は裏面である。このため表面の熱が取り残され熱回収能力が低くなることになる。作動ガスが金網を通過する際に乱流が発生し作動ガスが反対面に回り込むことからこの問題はある程度カバーされると思うが、乱流の発生自体、熱伝達率が大きくなるというメリットはあるものの流動抵抗の増大を招き望ましいことではない。さらに、金網を積層する場合は金網同士の接触面が多く、大量の熱が作動ガスを介さず金網の接触面を通って直接低温側に流れるため熱伝導損失が大きくなるという問題も発生する。
金網を使用した場合のさらなる問題として空隙率が大きくなるということがある。金網自体の空隙率は0.7程度あり、これを使用した再生熱交換器の空隙率も同程度になるが、スターリングエンジンでは大きい空隙率は死空間の増加につながり出力の低下をもたらすこととなる。
ここで低温の作動ガスが再生熱交換器に入り高温の作動ガスとなって出て行くときの再生熱交換器内部の温度分布、および、高温の作動ガスが再生熱交換器に入り低温の作動ガスとなって出て行くときの再生熱交換器内部の温度分布について考察する。ただし実際のスターリングエンジンでは圧力変化やパワーピストンの移動による体積変化がありもう少し複雑になるが、その点については無視するものとする。
低温の作動ガスが再生熱交換器に入り高温の作動ガスとなって出て行くときの再生熱交換器内部の温度分布は、理想的な状態では図10のように曲線の傾斜部分が作動ガスの移動によってA〜B〜Cへと移動し、行程の最後となる曲線Cの高温端の最終温度は高温熱源の温度と等しくなるものである。
作動ガスの流れる方向が逆になり高温の作動ガスが再生熱交換器に入り低温の作動ガスとなって出て行くときの再生熱交換器内部の温度分布は図10でC〜B〜Aへと移動し、行程の最後となる曲線Aの低温端の最終温度は低温熱源の温度と等しくなるものである。
しかし実際の温度分布は図11に示したように曲線Cの高温端の最終温度は高温熱源の温度より若干低く、曲線Aの低温端の最終温度は低温熱源の温度より若干高くなり、高温端、低温端とも温度差が発生する。
高温端の最終温度が高温熱源の温度より低くなる原因は、作動ガスの熱がハウジングを通して逃げる熱損失や蓄熱材同士の接触面を通して直接低温側に移動する熱損失のためであり、低温端の最終温度が低温熱源の温度より高くなる原因は、蓄熱材の流動抵抗による発熱や蓄熱材同士の接触面やハウジングの壁面を通して直接低温側に移動してくる熱によるものであると考えられる。
図11は丁度図10の両端を切った形をしているため、再生熱交換器の長さを長くすれば図10のようになるのではないかと考えることができる。しかし、温度差が発生する原因が熱の移動速度が遅いことによるものであれば再生熱交換器の長さを長くすることで解決できるが、上記のようにその原因が熱の散逸や熱の直接移動等の熱損失あるいは流動抵抗等によるものである場合には、単に再生熱交換器の長さを長くしたからといって解決できるものではない。再生熱交換器の長さを長くしても曲線の傾きがゆるくなるだけで温度差は解消されずにそのまま残るか、場合によっては長さが長くなった分、流動抵抗が増大し温度差が拡大することになる。
〔非特許文献1〕にも再生熱交換器の長さを長くすると逆に熱効率が低下するというデータが報告されている。この理由については〔非特許文献1〕ではコメントされていないが、再生熱交換器が長くなることによって流動抵抗による損失が増大し熱効率の低下を招いたものと考えられる。
温度差をなくすためには流動抵抗や熱損失等、温度差発生の原因自体を除去することが必要である。
特開2004−276113 山下巌 他著 スターリングエンジンの理論と設計 (株)山海堂1999年 p136 一色尚次著 スターリングエンジンの開発 (株)工業調査会 1995年 p182
上記のように現在の金網を使用した再生熱交換器は、作動ガスの往流と復流で作動ガスが金網に当たる面が異なり熱回収能力が低いという問題や、積層された金網同士の接触面を通って大量の熱が作動ガスを介さず直接低温側に流れ熱伝導損失が大きくなるという問題、流動抵抗が大きく再生熱交換器を長くすると逆に効率が低下するという問題、あるいは空隙率が大きく出力が低下するという問題等、スターリングエンジンの熱効率や出力に影響を及ぼす多くの問題を抱えている。スターリングサイクルを利用した冷凍機やヒートポンプ等、金網の再生熱交換器を使用している機器にあっては同様に効率の低下を招くことになる。
本発明は再生熱交換器が持つこれらの問題を解決することができる蓄熱材を開発することをその課題とした。
本発明になる通気性蓄熱板は再生熱交換器の蓄熱材として使用されている金網に代えて使用するものであり、複数本数の素線をそれぞれの素線の断面が同じ方向になるように揃え、さらに、素線間に作動ガスが通過できる間隙を持たせて布置した板状体である。この板状体は隣り合う素線によって形成される谷間部に、別の同様に布置した板状体をはめ込んで積層したとき上層の素線と下層の素線間にも作動ガスが通過できる間隙ができるような構造になっている。この通気性蓄熱板を蓄熱材として再生熱交換器を構成することによって課題を解決した。
この通気性蓄熱板は素線を一本一本溶接やロウ付けで接合して作ってもよいが、そのような方法では極めて高価なものになる。通常は素線を接合して作ったもの又はこれと同じ形状をしたものを加工しやすい材料を使って作りこれを原型とし、これをもとにして精密鋳造法によって同じ形状をもった通気性蓄熱板を製造することになる。
精密鋳造法で製造したものは全体が一体化されるため厳密に言えば素線は存在せず、素線を接合して作ったものとは別のものになり、素線に相当するものは素線状部分と呼ぶべきである。しかし形状や材質が同じであれば機能は同じである。このため以後の説明では特に断らない限り、素線を接合して作製された通気性蓄熱板と、一体化して作製された通気性蓄熱板は同等のものとして扱い、一体化して作製された通気性蓄熱板の素線状部分のことも単に素線と呼ぶものとする。
本発明によって得られる主たる効果として下記のものが挙げられる。
(1)作動ガスは積層された素線によって形成される間隙からなる同一の経路を往復するため、熱交換が完全に行われ再生熱交換器としての能力が高くなる。
(2)金網に比べて乱流の発生が少なくなり流動抵抗が小さくなる。
(3)通気性蓄熱板を積層した場合、層間の接触がごく限られた狭い部分でしか起こらないため熱伝導損失を小さくすることができる。
(4)連接節あるいはスペーサランドの大きさを変えることによって空隙率を任意の値に設定することが可能になる。
ここで連接節とは素線と素線とを接続する小さな橋のようなもので、上に積層する通気性蓄熱板の素線の先端がこれに当たることで作動ガスが通過する間隙を作るためのもの、スペーサランドとは素線の表面に設けられた幅の狭い帯状の盛り上がりで、連接節と同様に素線同士の接続と作動ガスが通過する間隙を作るためのものである。
以下、本発明になる再生熱交換器用蓄熱材の詳細な実施形態を、図面およびこれらに付した符号を引用して具体的に説明する。
本発明になる再生熱交換器用蓄熱材は、複数本数の素線をそれぞれの素線の断面が同じ方向に揃うように、且つ、作動ガスが流れることができる間隙を持たせて並べ、これらを接合して板状体となしたもので通気性蓄熱板と呼ぶものである。素線の並べ方には直線状の素線を平行に簀の子状に並べる方法と、円環状の素線を同心円状に並べる方法とがあるが、最初に簀の子状に並べる方法について説明し、その後、同心円状に並べる方法について説明する。
通気性蓄熱板を積層した場合に上層の素線が下層の素線でできている谷間部にはまり込むようにするが、作動ガスが流れるためには上層の素線と下層の素線との間に作動ガスが通過できる間隙が必要である。この間隙を作り且つ素線を接合する方法として、連接節による方法とスペーサランドによる方法がある。
初めに断面が菱形をした素線を連接節によって接合し間隙を持たせる方法について説明する。
図1は連接節によって接合した簀の子状の通気性蓄熱板の一部を切り出し拡大して示した斜視図、図2は図1のA−A断面の接合部分を中心としてさらに拡大した拡大断面図である。
図1および図2より明らかなように、通気性蓄熱板10は基本的には断面が菱形をした素線11を一定の素線間間隙15を置いて並べ、連接節12によって夫々の素線11を接合して板状体となしたものである。
素線11は、その断面の対角線に長短がある場合には、通常、対角線の長い方が作動ガスの巨視的な流れの方向を向くようにする。連接節12は一定のスパンでもって設けられている。この連接節12は素線11を接合するとともに積層した場合に層間に間隙を持たせる役割を果たすものである。
上記のようにそれぞれの素線11の接合は連接節12によって行われ、実際の簀の子板のように底に横桟を付けて接合しているものではない。その理由は通気性蓄熱板10を積層したときに隣り合う素線11で形成されるV字型の谷間部に上層の素線11がはまり込むようにするためである。連接節12のスパンは作動ガスの流動によって発生する圧力で素線11が実質的な撓みを起こさない程度の長さにする必要がある。この長さは当然素線11の太さによって変わってくる。このスパンが長すぎると積層して作動ガスを流したとき素線11が撓んできて下の素線11に接触して素線間の間隙を塞ぎ作動ガスが流れなくなり、短すぎると連接節12の数が多くなり作動ガスを介さず直接層間を流れる熱が増え熱伝導損失が大きくなる。
図3はこの通気性蓄熱板10を積層した積層体を連接節12のところで切断した断面図である。この図より明らかなように連接節12の厚みによって上層と下層との間に層間間隙16を持たせ、連接節12の中央に設けられたノッチ13に素線11の先端をはめ込んで間隙を安定化させようとするものである。
作動ガスは図の上から下にあるいは下から上に流れることになる。図3の層間間隙16は素線11と連接節12に囲まれて閉塞しており作動ガスが流れることができないように見えるが、層間間隙16は素線11の長さ方向(紙面の前後方向)に伸びておりその部分は連接節12がなく素線間間隙になっているため、作動ガスはそこを通って素線に熱を与え、或いは素線から熱を受け取りながら行き来できるようになっている。
スペーサランドによる方法は、図4のように素線11の一部の片側(図では上側)に頂部の稜線部分が切り取られた帯状に盛り上がったスペーサランド14を設け、このスペーサランド14の厚さによって浮き上がる分で層間間隙をつくる方法である。この場合スペーサランド14は隣のスペーサランド14とつながっており素線11同士を接合する役割も果たすことになる。
スペーサランド方式の通気性蓄熱板を積層した積層体のスペーサランド部分の断面図を図5に示す。
図5の場合には図3と異なり空隙がなく作動ガスは通過できないように見えるが、スペーサランド14は局部的なものであり、図面上には出ていないがスペーサランド14の前後は層間間隙になっており作動ガスはそこを通過することになる。
間隙を設ける方法としては上記の方法の何れを使用しても良く両者を混在させることもできる。ただ連接節による方法はノッチに応力が集中しやすく通気性蓄熱板が折れやすいという欠点がある。これに対しスペーサランドと素線とを面接触させる方法は、連接節にノッチを設ける方法に比べ機械的強度と安定性に勝るが、接触面積が大きくなり蓄熱材を通して逃げる熱が若干多くなる。何れの場合でも、通気性蓄熱板は作動ガスの流動の妨げとなるものを極力排除することが望ましく、連接節やスペーサランドは前述したように素線が実質的な撓みを起こさない範囲で少なくするほうがよい。大きい効果は期待できないが連接節の角を丸くすることも流動抵抗を小さくするのに有効である。尚、図3及び図5では連接節又はスペーサランドは各層とも同じ位置に重なっているが必ずしも重ねる必要はない。
通気性蓄熱板を再生熱交換器のハウジング内で積層する場合、隣り合う2本の素線によって形成されるV字型の谷間部に上の層の素線が作動ガスが通過できる間隙を残してはまり込むこととなり、素線の上の層と下の層とは素線ピッチの半分だけずれることになる。このため設計する際には偶数層の端面と奇数層の端面は素線ピッチの半分だけずらせておく必要があることを考慮しておかなければならない。
図6は積層した簀の子状通気性蓄熱板の間を通過する作動ガスの流路を示す図で、作動ガスは素線間間隙15のところで分岐と合流を繰り返しながら層間間隙16を通って左右に方向を変え、素線11に熱を与えあるいは素線11から熱を受け取って流れてゆくが、巨視的には図の上下方向に往復移動することになる。この経路は間隙の設定方法には関係せず、連接節によって間隙を設けた場合でもスペーサランドによって間隙を設けた場合でも素線11の形状と間隙の設定値が同じであればほぼ同じである。
最初の1枚と最後の1枚の通気性蓄熱板を除いて作動ガスは往きも帰りも間隙によって形成された同じ経路を辿るため、往路で貯えた熱は復路で取り出すことができ本蓄熱材を使用した再生熱交換器はその性能が向上する。
次に空隙率について説明する。
金網を使用した再生熱交換器では、金網自体、空隙率が70%程度ありこれを小さくすることは困難であるが、本発明ではこれを任意の値に小さくすることが可能である。連接節あるいはスペーサランドはかなり大きいスパンで部分的に設けられているものであるためその体積は小さくその影響を無視できるものとすると、空隙率は図6の積層した簀の子状通気性蓄熱板の全体の断面積に対する流路の断面積の比になり、この値は連接節あるいはスペーサランドの大きさを変えることによって変更できる。図6のような形に積層された通気性蓄熱板の空隙率は約42%である。
空隙率を小さくするにはスペーサランド方式の場合はスペーサランドを薄くすればよく、連接節方式の場合は素線間の間隙を狭くするか、連接節を薄くするか、あるいは連接節のノッチを深くすればよい。しかし空隙率をある程度以上に小さくしたいときこれらの方法では強度面で問題が発生する。このような場合には連接節は強度的に問題のない大きさとし、ノッチにはまり込む素線の稜線部分を削って低くすると共に、ノッチの形をこれに対応させてV字型から台形にすればよい。この方法で隣り合う素線間の間隙を狭くして行くと空隙率を0%にすることも可能である。空隙率0%の場合は上層の素線が下層の素線でできているV字型の谷間部にはまり込んで安定するためノッチはなくてもよいことになる。ただし、空隙率を0%とすると作動ガスが流れる流路がなくなり再生熱交換器としての機能を果たすことができなくなる。空隙率は流動抵抗や運転条件を考慮に入れて実用的な値に設計することが必要である。
これまでは素線の断面が菱形であるものとして考えてきた。しかし隣接する素線表面が一定の間隔を持って積層可能な通気性蓄熱板を形成できる素線の断面の形はこれだけではなく六角形でも実現可能である。ただしこの場合条件があり、断面が、2本の互いに直交する対称軸を少なくとも1組持つ六角形であることが必要である。この条件に適合した素線であれば菱形の場合と同様にして通気性蓄熱板を構成することができる。直交する対称軸が1組の場合には縦に長いか或いは縦に短い亀の甲形であり直交する対称軸が3組ある場合は正六角形である。これらの場合にも断面が菱形である場合と同様に隣り合う素線によってV字型の谷間部ができる。素線の断面において少なくとも2本ある対称軸の中で頂点が対称軸上にある方の対称軸が作動ガスの巨視的な流れの方向を向くようにすると、この上に別の通気性蓄熱板をはめ込んで積層する際流動抵抗の小さい流路を形成することができる。
図7はこの六角形をした素線11を用いて通気性蓄熱板10を連接節12によって構成したものの一部を素線方向に見た拡大正面図、図8は通気性蓄熱板12をスペーサランド14によって構成したものの一部を素線方向に見た拡大正面図である。
スペーサランド14によって構成する場合には菱形の場合と違って稜線部分は必ずしも切り取らなくてもよい。図7のように素線11を六角形にすると連接節12を大きくすることができるためノッチ13があっても強度的にしっかりしたものになる。
流動抵抗をさらに小さくするために、素線11の断面における作動ガスの巨視的な流れの方向と直交する対角線の両端に位置する稜線に丸みを持たせ、断面の形状を丸みを持った菱形、もしくは丸みを持った六角形にしてもよい。
素線の断面が菱形もしくは一定の条件を満たした六角形であれば空隙率を0にできるが、空隙率を0にすることは無意味なことであり、空隙率が0にならなくても良いことを許容すると、断面が円形、楕円形、フラットオーバル形或いは凸レンズ形をしたもの等、ほとんどの線材を通気性蓄熱板の素線として使用することが可能である。これらの線材では空隙率の設定値にもよるが、その形状から連接節によって層間間隙を設けるのは難しくスペーサランドによって層間間隙を設けることになる。空隙率はスペーサランドの厚さによって設定し、空隙率を大きくするときはスペーサランドを厚く、空隙率を小さくするときはスペーサランドを薄くすればよい。ただし素線が丸みを持っているため前述したように空隙率を0にすることはできない。
スペーサランドは図4に示した断面が菱形をした素線と同じように素線の上半分だけに設けてもよいが全周に設けることも可能である。全周に設けた場合スペーサランド同士を接触させて積層する方法と偶数層のスペーサランドと奇数層のスペーサランドをずらせておきスペーサランドと素線とを接触させて積層する方法とがあるが、スペーサランドと素線とを接触させて積層する方が安定性は高くなる。
図11はこれらの線材を素線として使用した通気性蓄熱板の拡大前面図である。(A)は円形線材、(B)は楕円形線材、(C)はフラットオーバル形線材、(D)は凸レンズ形線材を使用したものであり、いずれもスペーサランド14を全周に設けたものである。この図より明らかなように、これらの素線11を使用すると谷間部は丸みを持ちV字型とはいえず、積層した時にできる層間間隙は菱形の素線や六角形の素線のときのように表面が平面でないため一定した間隔にならず、熱回収能力が少し劣るという難点がある。しかしながら構造が簡単で製造しやすくそれなりの性能を持つものである。
これまでの説明では通気性蓄熱板は素線を簀の子状に並べたものとしてきたが、通気性蓄熱板は必ずしも簀の子状である必要はない。菱形、六角形或いはその他の形の断面を持った素線で作ったリングを同心円状に並べても同様の機能を持った通気性蓄熱板を作ることができる。この場合も作動ガスが通る間隙を持たせる方法としては、簀の子状通気性蓄熱板と同様に菱形及び六角形の断面をした素線であれば連接節による方法とスペーサランドによる方法のいずれもが使用可能であり、その他の形をした素線では原則としてスペーサランドによる方法を用いることになる。
ただし簀の子状通気性蓄熱板は少しずらせば下の層の素線の谷間部に上の層の素線がはまり込むが、同心円状通気性蓄熱板の場合にはこうは行かなくなる。下の層の素線の谷間部に上の層の素線がはまり込むようにするためには、偶数層と奇数層とで素線ピッチの半分の長さだけ夫々の同心円の半径を変えておく必要がある。
素線の材質については、金網を使用した従来の再生熱交換器の場合、〔非特許文献2〕には「金網自体を通って熱が伝わっていくとき、ばかにできない熱伝導損失があるので、蓄熱材そのものは熱伝導率の低いものがよく」と記されているが、本発明になる通気性蓄熱板は層間の接触面積が小さくこの問題は大幅に改善されており、文献の説明とは逆に熱伝導率が高いほうが素線の中まで熱が伝わり性能のよいものができることになる。こういう意味では使用温度に耐えうる融点をもった金属が望ましいが、耐熱性や強度に問題がなければセラミックやプラスチック等を使用することも可能である。
素線の断面積は再生熱交換器用金網として一般的に使用される50〜200メッシュの金網の素線の断面積と同程度のものとする。ただ金網の場合は素線が太くなると目開きも大きくなり再生熱交換器としての性能が低下するが、本発明の場合には目開きに相当する素線間の間隙と層間の間隙は素線の太さに関係なく独自に設定できるため、素線間の間隙と層間の間隙を変えなければ性能の低下はそれほど大きくない。このため上記の金網の素線よりかなり太い素線を使用することも可能である。
素線の断面積と素線間の間隙あるいは層間の間隙は、作動ガスの種類や流動速度等の条件によって変わるため一概に言うことはできないが、一般的に素線の断面積があまり大きいと単位体積当たりの表面積が小さくなり必要な伝熱面積が得られず、素線の断面積があまり小さいと流動抵抗の増加やコストアップを招くことになる。層間間隙と素線間間隙は何れも空隙率に大きな影響を与えるものである。どちらの間隙も流動抵抗に悪影響を及ぼさない範囲で小さいほうがよいが製造技術面の制約も考慮する必要がある。
素線の断面積と素線間間隙、層間間隙及び空隙率は、設計回転速度、作動ガスの流速、素線の熱伝導率、製造コスト、製造技術面の制約等を総合的に判断して決定しなければならない。
以上のようにして作った通気性蓄熱板を金網に代わる蓄熱材として再生熱交換器のハウジングに応じた形に切断してハウジング内に積層して再生熱交換器を作製する。勿論、最初からハウジングの形に作っておくと切断する必要はない。このようにして作られた再生熱交換器は、熱交換能力が高く、流動抵抗及び死空間が小さく、熱伝導損失が少ないきわめて優れた性能を有するものとなる。
連接節方式の簀の子状通気性蓄熱板の拡大斜視図である。 図1のA−Aの断面の一部をさらに拡大した拡大断面図である。 積層した簀の子状通気性蓄熱板の連接節部分の拡大断面図である。 スペーサランド方式の簀の子状通気性蓄熱板の拡大斜視図である。 積層した通気性蓄熱板のスペーサランド部分の拡大断面図である。 積層した簀の子状通気性蓄熱板の作動ガスの流路を示す図である。 6角形をした素線による連接節方式の簀の子状通気性蓄熱板の一部の拡大前面図である。 6角形をした素線によるスペーサランド方式の簀の子状通気性蓄熱板の一部の拡大前面図である。 その他の形をした素線によるスペーサランド方式の簀の子状通気性蓄熱板の一部の拡大前面図である。 再生熱交換器内における理想的な温度分布を示す図である。 再生熱交換器内における実際の温度分布を示す図である。
符号の説明
10 通気性蓄熱板
11 素線
12 連接節
13 ノッチ
14 スペーサランド
15 素線間間隙
16 層間間隙

Claims (1)

  1. 複数本数の素線をそれぞれの素線の断面が同じ方向に揃うように、且つ、素線間に作動ガスが通過できる間隙を持つように布置した板状体であって、この板状体の隣り合う素線によって形成される谷間部に、別の同様に布置した板状体の素線を上層と下層の素線間にも作動ガスが通過できる間隙ができるようにしてはめ込んで積層することを可能とする構造とした通気性蓄熱板、又はこれと同じ形状と機能を持った通気性蓄熱板。

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