JP5101194B2 - 極微量給油式金属加工油組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、近年、環境問題により廃油量の低減、消費電力の低減の要求があり、これに対して、油剤をミスト状にして金属加工を行う方法が検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。具体的には、極微量の油剤を圧縮空気と共に加工部位に供給しながら切削・研削を行う方法であり、圧縮空気による冷却効果が得られ、また極微量の油剤を用いるために廃棄物量を非常に低減することができる。従って、廃棄物の大量排出に伴う環境への負荷も低減することができる。
そこで、特許文献1に記載された油剤では、いわゆるべたつきを抑えるために、エステル系基油に特定のヨウ素価のものを用いている。また、基油の粘度を下げることによっても、べたつきを抑えることができる。しかし、べたつきを抑えると一方で、いわゆる浮遊ミストの問題が生じやすくなる。すなわち、油剤のミスト化に伴い、雰囲気中に浮遊して加工部位に到達しないミストや加工部位に到達したが加工部位にとどまることなく飛散してしまうミストが発生することがある。使用された油剤の多くがそのような浮遊ミストになると、加工部位で効果的に機能する油剤の有効量が少なくなり、十分な加工性能を確保することができない。
これに対して特許文献2では、エステル系基油にエステル系ポリマーを配合した油剤組成物を提案しているが、浮遊ミストを抑えることはできても、べたつきを抑えることは必ずしも十分ではない。
さらに、特許文献1、2に記載されているのは、いずれもエステル系基油を用いた油剤であり、いずれの油剤も加水分解を受けやすいという問題がある。加水分解により酸が発生すると、金属材料を腐食するおそれがある。
そこで本発明は、加工性能が高いとともに、べたつきがなく、かつ浮遊ミストの発生も抑制でき、さらに金属材料を腐食するおそれの少ない極微量給油式金属加工油組成物を提供することを目的とする。
(1)炭素数12〜40のビニリデン化合物を基油とすることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。
(2)上記(1)に記載の極微量給油式金属加工油組成物において、前記ビニリデン化合物が、炭素数4〜20のαオレフィンをオリゴマー化して得られたものであることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。
(3)上記(2)に記載の極微量給油式金属加工油組成物において、αオレフィンのオリゴマー化にメタロセン錯体触媒を用いたことを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。
(4)上記(3)に記載の極微量給油式金属加工油組成物において、前記メタロセン触媒が二架橋タイプのメタロセン錯体触媒であることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の極微量給油式金属加工油組成物がアルミニウム加工用であることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。
本組成物は、炭素数12〜40のビニリデン化合物を基油とする。以下に、このビニリデン化合物、および、この化合物を基油とする極微量給油式金属加工油組成物について説明する。
炭素数12〜40のビニリデン化合物としては、例えば、下記式(1)のような構造のビニリデン化合物が挙げられる。
(式中、pは1〜18の整数、qおよびrは、それぞれ独立に0〜18の整数、nは0〜8の整数を示す。nが2以上の場合、qは繰り返し単位毎に同一でも異なっていてもよい。p+n×(2+q)+rの値は8〜36である。)
二量化等のオリゴマー化反応のモノマーとしては、生成オリゴマー中の残存モノマーによる浮遊ミストの発生や高分子量体の生成によるべたつきの発生を低減できること、モノマーが液体で取扱いが容易であることの点で炭素数4〜20のα‐オレフィンが好ましい。特に下記式(2)で示される直鎖状α‐オレフィンをモノマーとすると、粘度指数の高いビニリデン化合物が得られるので好ましい。
H2C=CH−(CH2)n−CH3 (2)
(式中、nは1〜17の整数を示す。)
具体的には、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセンおよび1−エイコセンが挙げられる。これらの中でnが、7、9および11のα‐オレフィンである、1−デセン、1−ドデセンおよび1−テトラデセンを用いると、得られるビニリデン化合物のべたつきと浮遊ミストの発生を同時に抑制できるので好ましい。これらのα‐オレフィンは1種用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。
触媒を構成する(i)成分の共役した炭素五員環を有する配位子をもち、周期律表第4〜6族のメタロセン錯体としては、活性の面より下記式(3)または下記式(4)で示される遷移金属化合物を好適に挙げることができる。
Q1 a(C5H5−a−bR1 b)(C5H5−a−cR2 c)M1XeYf(3)
Q2 a(C5H5−a−dR3 d)ZM1XeYf (4)
R1、R2およびR3がそれぞれ複数ある場合には、複数のR1,複数のR2および複数のR3は、それぞれにおいて同一であっても異なっていてもよい。また、上記式(3)において、共役五員環配位子(C5H5−a−bR1 b)および(C5H5−a−cR2 c)は同一であっても異なっていてもよい。
これらの中では、配位子同士が二重架橋された共役配位子(共役五員環配位子等)を有する遷移金属化合物が好ましい。このような遷移金属化合物を用いた、いわゆる二架橋タイプのメタロセン錯体触媒によれば、生成物するビニリデン化合物の分子量分布がより狭くなり、べたつきと浮遊ミスト発生をより抑制できるので好ましい。
または(6)で表される化合物を好適に使用することができる。
([L2]k+)p[M3Z1Z2…Zn](n−m))q (6)
ここで、上記式中、L2はM4、R10R11M5、R12 3C、R13R14R15R16NまたはR17R18R19Sである。L1はルイス塩基、M2およびM3はそれぞれ周期律表の第13族、第14族、第15族、第16族および第17族から選ばれる元素、M4は周期律表の第1族および第11族から選ばれる元素、M5は周期律表の第8族,第9族および第10族から選ばれる元素、Z1〜Znはそれぞれ水素原子、ジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、有機メタロイド基またはハロゲン原子を示し、Z1〜Znはその2以上が互いに結合して環を形成していてもよい。R9は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基を示し、R10およびR11はそれぞれシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基またはフルオレニル基、R12は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基を示す。R13〜R19はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、置換アルキル基または有機メタロイド基を示す。mはM2,M3の原子価で1〜7の整数、nは2〜8の整数、kは[L1−R9]、[L2]のイオン価数で1〜7の整数、pは1以上の整数、q=(p×k)/(n−m)である。
R20 rAlQ3 3−r (7)
ここで、R20は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基等の炭化水素基、Q3は水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基またはハロゲン原子を表わす。rは1〜3の整数である。
上記式(7)で示される有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムハイドライド,ジエチルアルミニウムハイドライド,エチルアルミニウムセスキクロリド等である。
ここで、ビニリデン化合物の炭素数が11以下では、後述する極微量給油式金属加工油組成物としたときに加工性が不足する。また、炭素数が40を超えるとべとつきが激しくなる。ビニリデン化合物の炭素数は、好ましくは12〜36であり、より好ましくは16〜32である。
本発明の極微量給油式金属加工油組成物は、前記の方法で得られた炭素数12〜40のビニリデン化合物を基油として、本発明の目的を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することで好適に得ることができる。
これらの添加剤としては、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、防錆剤、金属不活性化剤、および消泡剤などを挙げることができる.これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、組成物全量基準で、0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.03〜5質量%である。
ンなどのアミン化合物などを挙げることができる。ただし、エステル化合物が存在すると加水分解により酸を生じて金属腐食の原因となるので、本発明においてはあまり好ましくない。また、脂肪酸の使用も同様である。
油性剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.1〜30質量%程度であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
これら極圧剤の配合量は、配合効果および経済性の点から、組成物全量基準で、0.01〜30質量%程度であり、より好ましくは0.01〜10質量%である。
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.01〜1質量%である。
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリアクリレートなどを挙げることができる。これらの消泡剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.0005〜0.01質量%程度である。
鉱油としては、例えば、パラフィン系基系原油、中間基系原油またはナフテン系原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、これらの留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油などが挙げられる。
合成油としては、例えば、低分子量ポリブテン、低分子量ポリプロピレン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどのアルキルアロマ系化合物、シリコーン油、フッ素系オイル(例えば、フルオロカーボン、パーフルオロポリエーテルなど)などが挙げられる。ただし、加水分解性の観点より、エステル系化合物は好ましくない。
これらの基油は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
〔製造例1〕
メタロセン錯体触媒を用いて、1−デセンの二量化を行い、この未水添の二量体を基油とした。具体的には、以下のようにして1−デセンの二量化を行った。
窒素置換した内容積5リットルの三つ口フラスコに、1−デセン3.0kg、メタロセン錯体であるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(ジルコノセンジクロライドともいう)0.9g(3ミリモル)及びメチルアルミノキサン(アルベマール社製,Al換算8ミリモル)を順次添加し、室温(20℃以下)にて攪拌を行った。反応液は、黄色から赤褐色に変化した。反応を開始してから48時間経過後、メタノールを加えて反応を停止させ、続いて塩酸水溶液を反応液に添加して有機層を洗浄した。次に、有機層を真空蒸留し、沸点120〜125℃/26.6Pa(0.2Torr)の留分(デセン二量体)2.5kgを得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、デセン二量体の濃度は99質量%であり、デセン二量体中のビニリデン化合物の比率は97モル%であった。
用いた基油は以下の通りである。
(実施例1:ビニリデン化合物)
製造例1により得られたデセン二量体(炭素数:20)を用いた。(40℃粘度:4.5mm2/s)
(比較例1:市販PAO)
三フッ化ホウ素触媒によるオリゴマー化反応により得られた市販PAOを用いた。具体的には、1−デセン二量体の水添物である。(40℃粘度:5.1mm2/s)
(比較例2:αオレフィン)
1−ヘキサデセンを用いた。(40℃粘度:2.6mm2/s)
(比較例3:鉱油)
パラフィン系鉱油を用いた。(40℃粘度:5.0mm2/s)
これら各試料油につき、下記の条件でミスト切削(丸棒の外周旋削加工)を行い、加工後の旋削面の表面粗さ(Ra)を測定した。さらに、下記の方法で、浮遊ミスト発生量の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
切削速度:40m/分
送り速度:0.05mm/rev
切り込み量:0.50mm
被削材:A5052
切削工具:SKH51(横すくい角15°、横逃げ角1°)
給油量:10ミリリットル/hr(ミスト給油)
圧縮空気と各試料油とを混合して霧化し、浮遊ミスト化した油量(霧化質量)を測定し、試験油の質量量で割り返すことで霧化率を測定した。この霧化率が低いほど浮遊ミストが少ないことを意味する。
霧化率(%)=(霧化質量/試験油の質量)×100
試験装置:TACOミスト測定装置(型式番号:C3-0807)
空気圧力:0.2MPa
試料油量:40g
実施例1からわかるように、本発明の極微量給油式金属加工用組成物は、加工性と浮遊ミストの低減に関してもっともバランスに優れている。
これに対して、比較例1の基油(市販PAO)は、ビニリデン化合物ではなく、その水添物であり、さらに、三フッ化ホウ素触媒を用いた炭素数が20のPAOであるので、分子量分布が広く、骨格の異性化が生じるため、表面粗さ、霧化率ともに悪い。比較例2の基油は、1−ヘキサデセンであるので、霧化率が悪い。比較例3の基油は、鉱油であるので、表面粗さ、霧化率ともに悪い。
Claims (5)
- 炭素数12〜40のビニリデン化合物を基油とすることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。
- 請求項1に記載の極微量給油式金属加工油組成物において、
前記ビニリデン化合物が、炭素数4〜20のαオレフィンをオリゴマー化して得られたものであることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。 - 請求項2に記載の極微量給油式金属加工油組成物において、
αオレフィンのオリゴマー化にメタロセン錯体触媒を用いたことを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。 - 請求項3に記載の極微量給油式金属加工油組成物において、
前記メタロセン触媒が二架橋タイプのメタロセン錯体触媒であることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の極微量給油式金属加工油組成物がアルミニウム加工用であることを特徴とする極微量給油式金属加工油組成物。
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