以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成を示す縦断面図である。本実施例の画像形成装置100は、タンデム方式、中間転写方式を採用した、フルカラー画像の形成が可能なレーザビームプリンタである。
画像形成装置100は、該画像形成装置の本体(以下「装置本体」という)Aの内部に、複数の画像形成部としての第1、第2、第3、第4の画像形成部10a、10b、10c、10dを有する。本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部10a、10b、10c、10dは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成する。尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部10a〜10dの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
画像形成部10は、像担持体としてドラム形の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1を備えている。感光ドラム1は図示矢印R1方向に回転する。感光ドラム1の周囲には、帯電手段としての帯電装置2、露光手段(露光系)としての露光装置(レーザスキャナ)3が配設されている。又、感光ドラム1の周囲には、現像手段としての現像装置4、クリーニング手段としてのクリーニング装置(クリーナー)6が配設されている。又、各画像形成部10a〜10dの感光ドラム1a〜1dに対向するように転写装置5が配設されている。又、本実施例では、感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1の表面電位を検出する表面電位検出手段としての電位センサ11、感光ドラム1の表面の近傍の温度を測定する温度測定装置としての温度センサ12が配設されている。詳しくは後述するように、温度センサは、感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って少なくとも2個設けられている。更に、感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1上の電荷を除去する除電手段としての前露光器(前露光光源)13が配設されている。
転写装置5は、中間転写体としての無端ベルト状の中間転写ベルト51を有する。中間転写ベルト51は、支持部材としての複数のローラに掛け回されており、図示矢印R2方向に周回移動(回転)する。中間転写ベルト51の内周面側において、各感光ドラム1a〜1dに対向する位置には、1次転写手段としての1次転写ローラ52a〜52dが配置されている。1次転写ローラ52は、中間転写ベルト51を感光ドラム1に向けて押圧して、感光ドラム1と中間転写ベルト51とが接触する1次転写部N1にニップ部(1次転写ニップ)を形成する。又、中間転写ベルト51の外周面側において、中間転写ベルト51が張架されたローラのうちの1つ(2次転写対向ローラ)55に対向する位置には、2次転写手段を構成する2次転写ローラ53及び搬送ベルト54が配置されている。2次転写ローラ53は、搬送ベルト54の内周面側に配置されており、搬送ベルト54、中間転写ベルト51を介して、2次転写対向ローラ55に当接している。これにより、中間転写ベルト51と搬送ベルト54との接触部である2次転写部N2にニップ部(2次転写ニップ)が形成されている。
感光ドラム1上の、帯電装置2による帯電位置、露光装置3による露光位置、現像装置4による現像位置、1次転写ローラ52による1次転写位置、クリーニング装置6によるクリーニング位置は、感光ドラム1の回転方向に沿ってこの順番で配置されている。又、本実施例では、感光ドラム1上の電位センサ11による電位検出位置は、感光ドラム1の回転方向において上記露光位置よりも下流、且つ、上記現像位置よりも上流に配置されている。又、本実施例では、感光ドラム1の周方向に沿う温度センサ12による温度測定位置は、感光ドラム1の回転方向において、上記現像位置よりも下流、且つ、上記1次転写位置よりも上流に配置されている。更に、本実施例では、感光ドラム1上の前露光器13による除電位置(前露光位置)は、感光ドラム1の回転方向において上記クリーニング位置よりも下流、且つ、上記帯電位置よりも上流に配置されている。
又、装置本体Aの内部には、記録材(例えば、紙)Pの搬送方向に沿って上流側から順に、記録材供給手段としての給搬送装置7、定着手段としての定着装置8、記録材排出部としての記録材排出トレイTが配設されている。更に、装置本体Aの上部には、画像読取手段としての画像読取装置(原稿台スキャナー)9が配設されている。
感光ドラム1は、アルミシリンダの外周面に、a−Si感光体を層状に設けたものであり、駆動手段(図示せず)によって図示矢印R1方向に所定のプロセススピードで回転駆動される。尚、感光ドラム1については後に詳述する。
感光ドラム1は、その表面が帯電装置2によって所定の極性、所定の電位に均一に帯電される。帯電装置2としては、例えば、感光ドラム1に対して非接触のコロナ帯電器を使用することができる。
帯電後の感光ドラム1は、露光装置3によって走査露光されることによって、その表面に静電像(潜像)が形成される。画像読取装置9は、矢印m方向及びその反対方向に移動可能な光源92を有しており、光源92は、原稿台ガラス91上に画像面を下方に向けて載置された原稿の画像面を照射する。画像面からの反射光は、反射ミラー95、レンズ93等を介して撮像素子(光電変換素子)であるCCD(フルカラーセンサ)94によって読み取られ、読み取られた画像情報は、適宜に加工されて露光装置3に入力される。露光装置3は、レーザ発振器31、ポリゴンミラー32、レンズ33、反射ミラー34等を有しており、上述の画像読取装置9から入力された画像情報に応じて感光ドラム1の表面を露光して静電像を形成する。
感光ドラム1の表面に形成された静電像は、現像装置4によってトナーが付着されてトナー像として現像される。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写ローラ52によって中間転写ベルト51に転写(1次転写)される。この時、1次転写ローラ52には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧(1次転写バイアス)が印加される。
例えばフルカラー画像の形成時には、上述の帯電、露光、1次転写の各工程が、第1〜第4の画像形成部10a〜10dにおいて行われ、各1次転写部N1a〜N1dにおいて異なる色のトナー像が順次に重ね合わせて中間転写ベルト51上に1次転写される。これにより、中間転写ベルト51上に多重トナー像が形成される。
一方、給搬送装置7の記録材カセット71に収納されている記録材Pが、記録材供給ローラ72によって給送され、搬送ローラ等によって、複数のローラに掛け渡されている搬送ベルト54の表面に担持される。
そして、中間転写ベルト51上に形成されたトナー像は、搬送ベルト54上の記録材Pの表面に一括して転写(2次転写)される。この時、2次転写ローラ53には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧(2次転写バイアス)が印加される。
トナー像が転写された記録材Pは、搬送ベルト54によって定着装置8に搬送され、ここで、定着ローラ81と加圧ローラ82とによって加熱・加圧されて表面にトナー像が定着される。その後、記録材Pは、記録材排出トレイT上に排出される。
1次転写工程後に感光ドラム1上に残留したトナーはクリーニング装置6によって除去、回収される。又、2次転写工程後に中間転写ベルト51上に残留したトナーは図示しない中間転写体クリーナーによって除去、回収される。
尚、本実施例の画像形成装置100は、例えば、第4の画像形成部10dのみを用いてブラック単色の画像を形成することもできる。この場合、画像形成を行わない画像形成部があることを除いて画像形成動作は上述したものと同じである。
ここで、図2(a)〜(f)を参照して、a−Si感光体によって構成された感光ドラム1について詳述する。尚、図2(a)〜(f)のいずれも、感光ドラム1の軸心を含む縦断面図のうちの、軸心よりも上方に位置する部分の一部を模式的に示す。
表面に光導電層を有する像担持体としてのa−Si感光体は、光導電層が、シリコン原子を母体とする、水素原子とハロゲン原子とのうちの少なくとも一方を含有する非単結晶材料によって形成されているものである。
図2(a)に示す感光ドラム1は、感光体用としてのアルミニウムなどからなる導電性の円筒状のドラム(支持体)21の表面に、感光層22を設けたものである。感光層22はa−Si:H、X(Hは水素原子、Xはハロゲン原子)からなり光導電性を有する光導電層23で構成されている。
図2(b)に示す感光ドラム1は、感光体用としてのアルミニウムなどからなる導電性のドラム21の表面に、感光層22が設けられている。この感光層22はa−Si:H、Xからなり光導電性を有する光導電層23と、アモルファスシリコン系表面層24とから構成されている。
更に、図2(c)〜(f)に示すように、アモルファスシリコン系の電荷注入阻止層25を設けたり、光導電層23がa−Si:H、Xからなる電荷発生層27及び電荷輸送層28と、アモルファスシリコン系表面層24とから構成されたりしてもよい。
上述の電荷注入阻止層25は導電性のドラム21から光導電層23へ電荷が注入することを阻止するために、必要に応じて設けられるものである。又、ドラム21としては、それ自体が導電性であっても、又、導電処理を施した電気絶縁性のものであってもよい。
感光層22の一部を構成する光導電層23は、ドラム21上、必要に応じて下引き層(図示せず)上に形成される。この光導電層23は、プラズマCVD法(p−CVD法)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの周知の薄膜堆積法によって形成することができる。p−CVD法としては、RF帯、VHF帯、μW帯の周波数帯を利用したものが利用されており、上述の各層は、周知の装置及び膜形成方法にて製造される。本実施例において、光導電層23の層厚は、所望の電子写真特性が得られる点、使用状態における電気容量が所望の範囲に収まる点、経済的効果がある点などを考慮して適宜に所望に従って決定され、好ましくは20〜50μmである。
尚、図2(a)〜(f)中の符号26は、自由表面を示している。
[画像濃度ムラの抑制]
次に、本実施例における画像濃度ムラの抑制方法について説明する。
画像形成装置の動作時等には、定着装置8、モーター等の発熱源の偏り、また、エアフローの関係から、機械内に不均一な温度分布が生じる場合があった。
本実施例の目的の1つは、画像形成装置の内部に温度ムラがある場合においても、画像濃度ムラが抑制された良好な画像を形成することである。又、本実施例の別の目的の1つは、感光体の温度を一定に保つためのヒーター等の温度制御装置を省く又は簡略化することを可能とすることである。
本実施例では、感光ドラム(a−Si感光体)1の表面全域にわたる電位減衰特性の違いによって発生する帯電ムラ、ひいては画像濃度ムラをなくすために、図10に示すように、画像処理回路200により露光装置3の露光条件を変化させる。本実施例では、露光条件を、露光装置に入力される信号のパルス幅を変調して変化させている。典型的には、パルス幅が広いことは単位面積あたりの露光光量が大きいことに相当し、パルス幅が狭いことは単位面積辺りの露光光量が小さいことに相当する。なお、露光条件を変更させる方法として、露光の強度変調によりレーザーパワーを大きくして単位面積辺りの露光光量を変化させてもよい。本実施例では、装置本体Aの内部に2つ以上の温度測定装置を設け、装置本体Aの内部の温度分布に基づいて露光条件を補正する。
本実施例では、画像形成装置100は、表面が移動可能であり表面に光導電層を有する像担持体である感光ドラム1と、感光ドラム1の表面を帯電させる帯電装置2と、を有する。本実施例では、帯電装置としてコロナ帯電器を用いている。又、画像形成装置100は、上記帯電の後の感光ドラム1の表面を露光して静電像を形成する露光手段としての露光装置3と、画像情報に応じて露光装置3による上記露光を制御する制御手段としての画像処理回路200と、を有している。制御装置としての画像処理回路200は、画像情報に応じて露光データを形成する。又、画像形成装置100は、静電像にトナーを付着させてトナー像として現像する現像手段としての現像装置4と、トナー像を感光ドラム1から他の部材に転写させる転写手段と、を有している。
画像形成装置100は、感光ドラム1の表面電位の温度特性を記憶した記憶部としてのメモリチップ300(図4)を備える。表面電位の温度特性とは、典型的には、単位温度当たりの表面電位の変化量である。感光ドラム1の長手方向は、典型的には、感光ドラム1の表面の移動方向(回転方向)に交差(略直交)する方向であり、露光装置3の光走査方向についての主走査方向である。
そして、露光装置3による露光時の露光条件は、メモリチップ300に記憶された温度特性に応じて変化させられるようになっている。a−Si系の感光体では、同じ露光条件(単位面積あたりの露光光量)であっても、感光体温度が1度上がると露光電位(露光後の現像位置における感光ドラム電位)は2〜3V落ちるようになる。そこで、メモリチップ300には、感光体の温度が1度上がるごとに露光電位が2〜3V高くなるように露光条件を制御する制御テーブルを持っている。
画像形成装置100は、感光ドラム1の表面温度と相関する装置本体Aの内部の温度を測定するように感光ドラム1の長手方向において異なる2つの位置の温度を測定できる温度測定装置としての温度センサ12を有する。本実施例としては2つの温度センサ12(12A、12B)を備えている(図3)。画像処理回路200は、上記2つの温度センサ12により得られた測定値と、電位減衰特性テーブルに基づいて露光装置3の露光条件を変化させる。以下、更に詳しく説明する。
本実施例では、感光ドラム1の電位減衰特性の温度依存性に起因する画像濃度ムラを抑制するために、装置本体Aの内部(機内)の温度分布に基づく露光条件の補正を行なう。
前述のように、本実施例では、感光ドラム1の長手方向において異なる位置に、複数個の温度測定装置としての温度センサ12を配置して、感光ドラム1の表面の近傍の温度測定を行う。本実施例では、図3に示すように、感光ドラム1の装置本体Aの奥側(感光ドラム1を装置本体Aに装着する際の先端側)の第1の温度センサ12Aと、手前側の第2の温度センサ12Bとの2つを配置した。
より具体的には、本実施例では、第1、第2の温度センサ12A、12Bとしては、感光ドラム1の表面の近傍の雰囲気の温度を測定できる熱電対(もしくはサーミスタ等)を用いた。感光ドラム1の長手方向の長さが380mmであるのに対して、第1の温度センサ12Aは感光ドラム1の奥側端部から30mmの位置、第2の温度センサ12Bは感光ドラム1の手前側端部から30mmの位置に配置した。又、第1、第2の温度センサ12A、12Bは、感光ドラム1から5mmだけ離れた位置に配置した。
この温度センサ12は、上記配置に限られない。感光ドラム1の電位減衰特性に影響する、画像形成装置本体の温度ムラを、所望の精度で測定できるように構成及び配置すればよい。即ち、感光ドラム1の電位減衰特性に影響する感光ドラム1の表面温度に相関する、装置本体Aの内部の温度を測定する様な構成及び配置してもよい。例えば、感光ドラム1の真上ではなく、感光ドラム1から少しずれたような位置に配置するようにしてもよい。
例えば、感光ドラム1の表面の近傍の温度として、感光ドラム1の表面から5〜20mmの領域の温度を、好ましくは10mm以下の範囲の温度を測定する。又、赤外線温度測定装置等を用いて非接触で感光ドラム1の表面の温度を測定することも可能である。感光ドラム1にダメージを与えないように感光ドラム1の表面温度が測れるならば、表面温度を直接測定した方がより正確な制御が可能となる。この場合、上述のような非接触の温度測定を使用することが可能である。
感光体の電位減衰特性と温度の関係は、感光体の特性として実測により得ている。本実施例で用いた感光体では、感光体温度が1度上がると露光電位は3V落ちるようになる。図16に第1、第2の温度センサ12A、12Bの配置位置と、感光ドラム1の表面近傍の温度分布の一例を示した。図16では、第1の温度センサ12A側で温度が高く、第2の温度センサ12B側で温度が低い状態になっている。このような温度分布が生じた場合、同じ露光条件で露光を行なった場合であっても、第1の温度センサ12A側では電位が落ちやすく、第2の温度センサ12B側では電位が落ちにくくなっている。そこで、基準となる温度よりも感光体温度が1度高い場合は露光光量を小さくして、基準の温度の時に露光したならば感光ドラム1の露光電位が3V電位が高くなるような露光光量とする。
温度ムラによる露光条件の制御のフローチャートを図17に示す。
画像処理回路200は、第1、第2の温度センサ12A、12Bによる測定結果を読み込む(S301)。次いで、画像処理回路200は、第1、第2の温度センサ12A、12Bで測定された温度が同じか否かを判断する(S302)。
画像処理回路200は、第1、第2の温度センサ12A、12Bで測定された温度が違うと判断した場合は、装置本体Aの内部の温度分布、より詳細には、感光ドラム1の表面の近傍の温度の感光ドラム1の長手方向における温度分布を算出する(S303)。
そして、画像処理回路200は、感光ドラム1の表面電位の温度特性と、上記装置本体Aの内部の温度分布と、に基づいて、感光ドラム1の長手方向の露光条件の補正を行なう(S304)。そして、露光を、画像情報及び上記温度センサによる露光条件の補正に基づいて行なう(S305)。
一方、画像処理回路200は、S302の判断で第1、第2の温度センサ12A、12Bで測定された温度が同じであると判断した場合は、次のような処理を行う。即ち、この場合、装置本体Aの内部、より詳細には、感光ドラム1の表面の近傍の感光ドラム1の長手方向における温度分布は実質的に均一であると判断する。
そこで、感光ドラム1の表面電位の温度特性、に基づいて、感光ドラム1の長手方向の露光条件の補正を行なう(S306)。そして、露光を、画像情報及び上記温度センサによる露光条件の補正に基づいて行なう(S305)。
本実施例は、感光ドラム1の内部に温度調整を行なうためのヒーター(温度制御装置)などが設けられていない画像形成装置で特に有効である。即ち、本実施例によれば、感光ドラム1の温度を一定に保つためのヒーター等の温度制御手段を省く又は簡略化することが可能であり、コスト削減できる。また、ヒーターに電力を供給する必要がないので、省エネルギーの装置となる。
ただし、感光ドラム1の温度をヒーターで一定温度に保つように温度制御されていたとしても、熱源の位置等により感光ドラム1の長手方向において不均一な温度分布ができてしまう場合は本実施例の効果は得られる。ヒーターを使い感光ドラム1の温度を一定に保つと、温度による感度変化を安定化させることができ、帯電時に生成される放電生成物による画像不良の防止をするというメリットがある。具体的な、温度制御装置の構成としては、面上発熱体を感光ドラム1の内部に配置し、この面上発熱体により感光ドラム1の内部からシリンダーを通して暖め、温度制御を行うことが考えられる。また、温度制御装置として、外部熱源より感光ドラム1を固定している軸等を加熱し、感光ドラム1の温度制御を行うことも可能である。
実施例2
1.本実施例の概要
実施例1では、感光ドラム1の長手方向で同一の温度であるならば、長手方向における電位減衰特性はほぼ同じとなるような感光ドラム1を用いた装置で説明した。実施例2では、感光ドラム1の長手方向で同一の温度であったとしても、感光ドラム1の長手方向の電位減衰特性が異なるような感光ドラム1に好適に用いられる。実施例2は、少なくとも感光ドラム1の表面を感光ドラム1の長手方向に複数に分割した領域ごとの電位減衰特性を示す電位減衰特性テーブルを記憶した記憶部としてのメモリチップ300(図4)を備えることを特徴とする。電位減衰特性テーブルは、感光ドラム1の表面電位の減衰特性に関する情報が記憶されている。画像形成装置のその他の構成は基本的に実施例1の画像形成装置と同じである。
a−Si感光体は、ガスを高周波やマイクロ波でプラズマ化して固体化し、アルミシリンダ上に堆積させて成膜するという方法で製造される。そのため、プラズマを均一にすることや、プラズマの中心にアルミシリンダを置くことが難しく、成膜条件を感光体表面全域で精度よく均一なものとすることが困難なことがある。このため、現像位置において、感光体の表面全域内で20V程度の電位ムラが発生し、この電位ムラにより画像濃度ムラが発生するという問題が発生することがある。
上述の電位ムラは、(1)成膜時の膜厚ムラより静電容量の違いができて帯電能に差が生じること、(2)成膜状態の不均一等に起因する局所的な膜質の違いにより電位減衰特性に差が生じること、などによって発生するものである。
上述の帯電後の電位減衰は、a−Si感光体を用いた場合、OPC感光体に比べ暗状態でも非常に大きく、更に像露光の光メモリにより電位減衰が増大される。そのため、前回の像露光による光メモリを消すために、帯電前に前露光を行うことが必要となることがある。
ここで、光メモリについて説明する。a−Si感光体を帯電し、像露光を行うと、光キャリアを生成し、電位を減衰させる。しかしこのとき、a−Si感光体は、多くのタングリングボンド(未結合手)を有しており、これが局在準位となって光キャリアの一部を捕捉してその走行性を低下させ、或いは光生成キャリアの再結合確率を低下させる。従って、画像形成プロセスにおいて、露光によって生成された光キャリアの一部は、次工程の帯電時にa−Si感光体に電界がかかると同時に局在準位から開放される。そして、露光部と非露光部とでa−Si感光体の表面電位に差が生じて、これが最終的に光メモリとなる。
そこで、帯電前に露光器によって均一露光を行うことにより、a−Si感光体内部に潜在する光キャリアを過多にして、全面で均一になるようにして、光メモリを消去することが一般的である。このとき、前露光器から発する前露光の光量を増やしたり、前露光の波長をa−Si感光体の分光感度ピーク(約680〜700nm)に近づけたりすることにより、より効果的に光メモリ(ゴースト)を消去することが可能である。
しかしながら、上述のようにa−Si感光体に膜厚ムラや、膜質の違いによる電位減衰特性の差が存在すると、光導電層間にかかる電界が異なるため、上記局在準位からの光キャリアの解放に差が生じる。そのため、帯電位置においてたとえ均一に帯電できたとしても、現像位置においては電位ムラが生じてしまう。又、帯電能についても膜厚が薄い部分ほど静電容量が大きくなるため不利となり、帯電能が低下してくると上記の現像部での帯電ムラはより顕著となってしまう。
以上のような理由で、帯電−現像間での電位減衰は非常に大きくなり、100〜200V程度の電位減衰が生じることがある。このとき前述の膜厚ムラや、電位減衰特性の違いにより感光体表面全域内で10〜20V程度の電位ムラが発生することがある。
このような電位ムラが生じると、静電容量の大きなa−Si感光体は有機感光体に比べて現像コントラスト(露光部電位と現像バイアス電位との電位差)も小さいため影響をより受けてしまい、画像濃度ムラも顕著になってしまうことがある。
上記問題を解決するため、本出願人は、特開2002−67387号公報において、感光体の表面の電位減衰特性に合わせて露光条件を変える構成の画像形成装置を提案した。実施例2は、この従来技術に対して、さらに感光体の長手方向の温度分布による影響を考慮して露光条件変化させている。
構成を具体的に説明していく。画像形成装置100は、少なくとも感光ドラム1の表面を感光ドラム1の長手方向に複数に分割した領域ごとの電位減衰特性を示す電位減衰特性テーブルを記憶した記憶部としてのメモリチップ300(図4)を有する。感光ドラム1の長手方向は、典型的には、感光ドラム1の表面の移動方向(回転方向)に交差(略直交)する方向であり、露光装置3の光走査方向についての主走査方向である。本実施例では、メモリチップ300は、電位減衰特性テーブルとして、感光ドラム1の表面を感光ドラム1の長手方向及び該長手方向に交差(略直交)する方向に複数に分割した領域ごとの電位減衰特性を示すテーブルを記憶する。感光ドラム1の長手方向に交差する方向は、典型的には、感光ドラム1の表面の移動方向(回転方向)であり、露光装置3の光走査方向についての副走査方向である。即ち、本実施例では、画像形成装置100は、感光ドラム1の表面全域の電位減衰特性を2次元化して表した電位減衰特性テーブルを記憶した記憶部を有する。
そして、露光装置3による露光時の露光条件は、メモリチップ300に記憶された電位減衰特性テーブルと、温度センサにより測定された温度に応じて変化させられるようになっている。より詳細には、画像形成装置100は、感光ドラム1の表面温度と相関する装置本体Aの内部の温度を測定するように感光ドラム1の長手方向において異なる位置に少なくとも2つ設けられた温度測定装置としての温度センサ12を有する。本実施例では、温度測定装置として感光ドラム1の表面近傍の温度を測定する温度センサ12を感光ドラム1の長手方向に2つ以上有する。画像処理回路200は、上記少なくとも2つの温度センサ12により得られた測定値に基づいて電位減衰特性テーブルを補正し、この補正後の電位減衰特性テーブルに基づいて露光装置3の露光条件を変化させる。以下、更に詳しく説明する。
2.画像濃度ムラの抑制方法の基本的な作用
本実施例で用いたa−Si感光体である感光ドラム1は、製造時における各感光ドラム1ごとにその電位減衰特性が求められて、特性テーブル、即ち、電位減衰特性テーブルとして持つようにされている。電位減衰特性テーブルは、各感光ドラム1の表面を帯電した後、露光位置において露光装置3により所定の光量で露光し、その後、現像位置での各感光ドラム1の表面電位の測定から求めることができる。
より具体的には、上述の電位減衰特性テーブルは、次のようなものである。即ち、感光ドラム1の表面全域を、露光装置3の光走査方向についての主走査方向(感光体長手方向)及び副走査方向(感光体回転方向)に、記録解像度に合わせた適当な領域に区画する。そして、各領域ごとの電位減衰、つまり、帯電後に所定の光量で露光した後に現像位置で表面電位を測定したデータに基づいて、全体として電位減衰特性マップを作成する。
上述の適当な領域の区画として、例えば、感光ドラム1の表面全体を最大サイズで約10mm×10mmの領域に区画する。本実施例では、画像形成装置100の記録解像度は600dpiとして、主走査方向は8000pixelに分割されている。この画素数を32分割した領域に分けているので、250pixelが1つの領域となる。副走査方向も同pixelで分割されている。従って、250pixel×250pixel(=10.575mm×10.575mm)を1つの領域とした。
このような感光ドラム1の表面における電位減衰特性マップを構成する電位減衰特性テーブルの作成は、その感光ドラム1を、これが実際に装着される装置本体Aに装着して行う必要はない。例えば、装置本体Aに感光ドラム1を組み込む前に、電位センサを備えた適当な治具によって感光ドラム1の電位減衰特性を測定して、感光ドラム1のメモリチップ300に記憶させるようにしてもよい。
メモリチップ300に記憶された電位減衰特性テーブルのデータは、その感光ドラム1を装置本体Aにセットした際に装置本体A側の制御装置(制御手段)としての画像処理回路200によって読み取る。画像処理回路200は、演算部、制御部、記憶部を備えるCPUなどを備える制御装置(制御手段)である。そして、画像処理回路200は、読み取った電位減衰特性テーブルの各領域ごとのデータに基づいて、現像位置において均一な表面電位となるように、露光装置3の露光条件を、電位減衰特性テーブルに記録された領域ごとに変更する。上述のように、本実施例では、露光装置3はレーザを使用している。
感光ドラム1の表面についての電位減衰特性テーブルと実際の感光ドラム1の表面との対応は、本実施例では、次のようにして取る。即ち、データを記録したメモリチップ300から装置本体Aにデータを転送するための接点(後述)を基準とし、感光ドラム1の停止時に常にその場所が所定の位置に来るように設定した。
つまり、図3に示すように、a−Si感光体である感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)の両端部のそれぞれに、第1、第2のフランジ15A、15Bが取り付けられている。第1、第2のフランジ15A、15Bのうちの、感光ドラム1を装置本体Aに装着する際の先端側のフランジ15Aに、感光ドラム1の内部のメモリチップ300への接点16が設けられている。装置本体A、より詳細には画像処理回路200は、この接点16を通じて、メモリチップ300から、装置本体Aに装着された感光ドラム1の帯電特性(電位減衰特性)についてのデータを読み取る。この接点16が位置情報を検知する手段を兼ねる。
この位置情報を検知する方法としては、本実施例では、次のような方法を採用する。即ち、図4(a)は感光ドラム1の停止時の状態を示しており、この状態では、装置本体A側に配設された読み取り手段としてのメモリデータ読み取り用のピン17が、図示しない付勢手段によって接点16に加圧(付勢)されて、固定されている。一方、図4(b)は感光ドラム1の駆動時の状態を示しており、この状態では、ピン17は接点16に向けた加圧が解除されて接点16から離れ、これにより感光ドラム1はフリーで回転可能となっている。回転していた感光ドラム1が停止されるときには、感光ドラム1の停止直前に、ピン17が加圧されて接点16に固定され、感光ドラム1が停止するようになっている。このように、接点16は、感光ドラム1の基準位置を検知する基準位置検知部として機能する。特に、本実施例では、該基準位置検知手段としての接点16によって、感光ドラム1の回転方向についての位置情報を検知することができる。
本実施例では、感光ドラム1の基準位置検知、及びメモリチップ300からの情報の読み出しの方法として、ピン17を接点16に接触する方法を採っているが、アンテナ基板を用いて無線通信にして制御することも可能である(実施例4参照)。
次に、図5を参照して、感光ドラム1の表面に設定した領域と、領域化した画像データとの対応関係を説明する。
尚、図5では、横軸に露光光量(Laser Power)を取り、縦軸に感光ドラム1の表面電位を取っている。図5中の実線の曲線は、使用する感光ドラム1の露光光量と電位との関係を示すグラフ(EVカーブ)を示す。又、図5の破線は、y=Vlの位置で実線のグラフを折り返している図になっている。
図5では、EVカーブに基づいて、A〜Gに電位を分割している。図5において、所望の露光電位の値はVlとしている。そして基準となる露光条件をLPとして、感光ドラム1の各領域ごとに露光条件LPで露光した時の露光電位を測定し、当該領域の露光電位がA〜Gのどの範囲になるかを調べる。例えば、ある領域の露光電位がD(Vl±3V)の範囲に該当すれば、露光条件LPで露光すると露光電位がほぼVlになる。しかし、ある領域の露光電位がBの範囲に該当する場合(露光により電位が落ちにくい場合)、露光条件LPで露光するとその領域は先に説明したDの範囲の領域に対して電位が落ちないということになる。そのため、Dに該当する領域と、Bに該当する領域とで露光電位に電位差ができて、最終的に画像の濃度が変化してしまう。
そこで、A,B,Cの領域のように露光により電位が落ちにくい領域では、露光条件を基準となる露光条件LPよりも大きい、LPA、LPB,LPCにする。
逆に、E,F,Gの領域のように露光により電位が落ち易い領域では、露光条件を基準となる露光条件LPよりも小さい、LPE、LPF,LPGにする。
このように、感光ドラム1の各領域ごとに露光量を変えて、感光ドラム1の各領域で電位減衰特性が異なったとしても露光電位が同じようになるようにしている。
また、感光ドラム1の各領域ごとの露光条件の電位減衰特性は、電位減衰特性テーブルとしてメモリチップ300に記録しておく。
図6は、本実施例での画像出力の流れを示す。
先ず、メモリチップ300に記録された電位減衰特性テーブルを参照し、感光ドラム1の表面の各領域が、A〜Gのどれに相当するかをみる(ステップS101)。本実施例では、所定の電位Vlを−80Vとし、基準となる露光条件LPで露光した際に、感光ドラム1の各領域ごとVlに対してどれだけずれているかをみることで、各領域をA〜Gに分けている。即ち、本実施例では、感光ドラム1の表面電位を上記設定の電位Vlを中心として6V刻みでA〜Gの8段階に分割する。例えば、基準となる露光条件LPで露光した際に、図7に示すような、露光電位となったとする。そして、感光ドラム1の表面の各領域が、上述のA〜Gのどれに相当するかをみる。尚、図7中の曲線は、感光ドラム1の表面における、露光装置3の例えば主走査方向の露光後の表面電位の分布である。副走査方向の露光後の表面電位の分布についても同様に表すことができ、上述のA〜Gのいずれのどれに相当するかをみることができる。
なお、A〜Gは下記のようになっている。
A:(Vl+15V)以上の範囲
B:(Vl+9V)≦B<(Vl+15V)の範囲
C:(Vl+3V)≦C<(Vl+9V)の範囲
D:(Vl−3V)≦D<(Vl+3V)の範囲
E:(Vl−9V)≦E<(Vl−3V)の範囲
F:(Vl−15V)≦F<(Vl−9V)の範囲
G:(Vl−15V)未満の範囲
この分類に対応し、装置本体Aの画像処理回路200により処理し(ステップS102)、感光ドラム1の表面全領域の各領域を、図8に示すようにA〜Gに分類する。そして、画像処理回路200は、感光ドラム1の表面の各領域の露光電位が上記D(Vl±3V)の範囲に入るように、露光装置3の露光条件を8段階に設定する(ステップS103)。A〜Gのいずれに分類されているかにより露光装置3の露光条件は前述したように変化させられる。
一方、入力画像は、画像全域にわたり感光ドラム1の表面に対応した領域に区切られて画像処理される(ステップS104、S105)。
次に、感光ドラム1の表面の領域と、処理された入力画像の領域とを対応させ(S106)、それぞれの領域内での像露光の際の露光条件(露光条件はパルス幅変調,強度変調を問わない)を決定する(ステップS107)。そして、その決定されたレーザ光量に基づいて像露光を行う(ステップS108)。従来はこのように、感光ドラム1の電位減衰特性テーブルに基づいて露光を行なっていた。本実施例では、さらに後述する『3.電位減衰特性テーブルの補正』に記載されたような、温度分布による電位減衰テーブルの補正を行なう。
図9に画像処理の一例のブロック図を示す。フルカラーセンサ(CCD)94から出力された画像信号は、アナログ信号処理部201に入力されてゲインやオフセットが調整される。その後、画像信号は、A/D変換部202で各色成分毎に、例えば、8ビット(0〜255レベル:256階調)のRGBデジタル信号に変換される。その後、画像信号は、シェーディング補正部203において、公知のシェーディング補正が施される。シェーディング補正は、色毎に基準白色板を読み取った信号を用いて、一列に並んだCCDのセンサセル群1つ1つの感度バラツキを無くすために、1つ1つのCCDセンサセルに対応させてゲインを最適化してかける。
ラインディレイ部204は、シェーディング補正部203から出力された画像信号に含まれている空間的ずれを補正する。この空間的ずれは、フルカラーセンサ94の各ラインセンサが、副走査方向に、互いに所定の距離を隔てて配置されていることにより生じたものである。具体的には、B色成分信号を基準として、R及びGの各色成分信号を副走査方向にライン遅延し、3つの色成分信号の位相を同期させる。
入力マスキング部205は、ラインディレイ部204から出力された画像信号の色空間を、下記式(1)のマトリクス演算により、NTSCの標準色空間に変換する。つまり、フルカラーセンサ94から出力された各色成分信号の色空間は、各色成分のフィルタの分光特性で決まっているが、これをNTSCの標準色空間に変換する。
LOG変換部206は、例えばROMやRAMなどからなるルックアップテーブル(LUT)で構成され、入力マスキング部205から出力されたRGB輝度信号をCMY濃度信号に変換する。ライン遅延メモリ207は、黒文字判定部(図示せず)が入力マスキング部205の出力から制御信号UCR、FILTER、SENなどを生成する期間(ライン遅延)分、LOG変換部206から出力された画像信号を遅延する。
ダイレクトマッピング部208は、ライン遅延メモリ207から出力された画像信号からプリンタ部へ例えば8bitの色成分画像信号として、3次元LUTを参照しダイレクトに出力する。ダイレクトマッピング部208には、外部入力機器から出力された画像信号を入力することもできる。ダイレクトマッピングは例えば、色空間内のL*a*b*やRGBなどの3つの入力信号を与えることにより、その色を再現するために必要な出力色空間内の信号値を、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の信号として出力する。この色変換法は、マトリクス演算を必要とせず、非線形な変換が可能となることから、UCR(下色除去)の設定など色変換の自由度が大幅に向上し、載り量をコントロールしながら、所望の色再現を可能にすることができる。
γ補正部209は、画像信号をプリンタ部の理想的な階調特性に合わせるために、ダイレクトマッピング部208から出力された画像信号に濃度補正を施す。出力フィルタ(空間フィルタ処理部)210は、CPU(図示せず)からの制御信号に従って、γ補正部209から出力された画像信号にエッジ強調又はスムージング処理を施す。
LUT211は、原画像の濃度と出力画像の濃度とを一致させるためのもので、例えばRAMなどで構成され、その変換テーブルは、CPU(図示せず)によって設定されるものである。
パルス幅変調器(PWM)213は、入力された画像信号のレベルに対応するパルス幅のパルス信号を出力し、そのパルス信号は半導体レーザ素子(レーザ発振器)31を駆動するレーザドライバ35へ入力される。典型的には、パルス幅が広いことは露光光量が大きいことに相当し、パルス幅が狭いことは露光光量が小さいことに相当する。
本実施例では、画像処理回路200が、次のものを有しているものとする。即ち、上述のアナログ信号処理部201、A/D変換部202、シェーディング補正部203、ラインディレイ部204、入力マスキング部205、LOG変換部206、ライン遅延メモリ207、及びダイレクトマッピング部208である。更に、γ補正部209、出力フィルタ210、LUT(LUT記憶部)211、及びパルス幅変調器213である。
上述のものを含み画像処理方法自体は種々の態様が公知であり、又本発明においては画像処理方法自体については利用可能なものを任意に選択して適用することができる。
そして、本実施例では、各感光ドラム1の電位減衰特性に応じた露光条件の補正は、パルス幅変調器(PWM)213による出力パルス幅を、メモリチップ300に記憶された情報に基づく電位減衰特性テーブルにより補正することで実施する。
尚、本実施例では、感光体の電位減衰特性に基づいた露光条件の調整を、前述のアルゴリズムにより行ったが、露光条件の補正方法はこれに限定されるものではない。例えば、画像データ自体を電位減衰特性テーブルに基づいて補正すること、或いはレーザのルックアップテーブルを補正すること等の他の補正方法によっても同様な処理が可能であり、同様の効果を得ることができる。
3.電位減衰特性テーブルの補正
本実施例では、更に、感光ドラム1の電位減衰特性の温度依存性に起因する画像濃度ムラを抑制するために、上述の電位減衰特性テーブルに対して、装置本体Aの内部(機内)の温度分布に基づく補正(温度補正)を加える。具体的な、温度測定装置等の構成は実施例1と同様であるので説明は割愛する。
電位減衰特性テーブルの補正処理のフローチャートを図11に示す。
画像処理回路200は、第1、第2の温度センサ12A、12Bによる測定結果を読み込む(S201)。次いで、画像処理回路200は、第1、第2の温度センサ12A、12Bで測定された温度が同じか否かを判断する(S202)。
画像処理回路200は、第1、第2の温度センサ12A、12Bで測定された温度が違うと判断した場合は、装置本体Aの内部の温度分布、より詳細には、感光ドラム1の表面の近傍の温度の感光ドラム1の長手方向における分布を算出する(S203)。
そして、画像処理回路200は、次のようにして、感光ドラム1の表面電位に対する装置本体Aの内部の温度ムラの影響の補正を行う。
先ず、画像処理回路200は、メモリチップ300に記録された電位減衰特性テーブルと、感光ドラム1の表面電位の温度特性と、上記装置本体Aの内部の温度分布と、に基づいて、新たな温度補正済み電位減衰特性テーブルを算出する(S204)。
そして、得られた新たな補正済み電位減衰特性テーブルを、前述のS101の工程(図6)における電位減衰特性とし、露光補正処理を行い、補正した露光条件により露光を行う(S205)。
図12中の実線で示す曲線は、感光ドラム1の長手方向における温度分布が均一な状態において、感光ドラム1の表面における長手方向の露光後の表面電位の分布の一例を示す。又、図12中の破線で示す曲線は、感光ドラム1の長手方向における不均一な温度分布がある状態における感光ドラム1の露光電位を表しており、実線で示した表面電位から、温度によって感光ドラム1の表面電位がずれていることを示す一例である。又、図13の上図は、基準温度において予め設定された所定の電位減衰特性テーブルを参照して感光ドラム1の表面の各領域を前述のA〜Gに分類した結果を示す。図13の下図は、図13の上図の各領域ごとのA〜Gの分類を温度特性による補正した後の電位減衰特性テーブルを示す。
温度特性による補正は、以下のように行なわれる。例えば、感光体の温度が1度上がるごとに露光電位が3V低くなる感光体を用いた例で説明する。Vl=−80Vとして、ある領域の基準温度(本実施例では42℃)における露光電位が−80Vとなったとする。この場合、基準温度では当該領域はDとなる。当該領域の温度が46℃になった場合、基準温度との温度差4℃のため、露光電位は12V低くなり−92Vとなる。したがって、この領域は46℃の場合Fとなる。このように、各領域ごとに温度特性による補正を行なう。そして、前述のように、露光装置3による露光条件は、A〜Gのいずれかに分類された各領域について、いずれも露光後の現像位置での表面電位(露光電位)がD(Vl±3V)の範囲に入るように補正される。感光ドラム1の長手方向において不均一な温度分布がある場合は、感光ドラム1の長手方向において温度特性による補正を電位減衰特性テーブルに適用する。このように図13の下図の電位減衰特性テーブルに基づき露光条件を制御することで、図12の破線のように感光ドラム1の長手方向で不均一な温度分布があるような場合であっても、長手方向において露光電位をDの範囲にすることができる。
ここで、感光ドラム1の表面電位の温度特性とは、典型的には、単位温度当たりの表面電位の変化量である。例えば、本実施例では、感光体の温度が1度上がるごとに露光電位が3V低くなる。この温度特性は、画像処理回路200に内蔵されるか接続されたROM等の記憶部に記憶させるか、或いは、メモリチップ300に記憶させておくことができる。又、算出された温度補正済みの電位減衰特性テーブルは、画像処理回路200に内蔵されるか接続されたRAM等の記憶部に記憶させることができる。所望により、この温度補正済みの電位減衰特性テーブルを、メモリチップ300に記憶させることもできる。
より具体的には、温度補正済みの電位減衰特性テーブルは、次のようにして算出することができる。即ち、画像処理回路200は、メモリチップ300に記憶された電位減衰特性テーブルの作成時の基準温度(本実施例では42℃)に対する感光ドラム1の長手方向の各領域の位置における温度のずれ(差分温度)を、求められた温度分布から求める。そして、感光ドラム1の長手方向の各領域の位置における上記差分温度と感光ドラム1の表面電位の温度特性とを掛け合わせることで、メモリチップ300に記憶された電位減衰テーブルが示す各領域の現像位置での表面電位値を補正する。これをメモリチップ300に記憶された電位減衰テーブルの、長手方向(主走査方向)、回転方向(副走査方向)の全領域について行うことで、新たな温度補正済みの電位減衰特性テーブルを求めることができる。
一方、画像処理回路200は、S202の判断で第1、第2の温度センサ12A、12Bで測定された温度が同じであると判断した場合は、次のような処理を行う。即ち、この場合、装置本体Aの内部、より詳細には、感光ドラム1の表面の近傍の温度の感光ドラム1の長手方向における分布は実質的に無いものと判断して、メモリチップ300に記憶された電位減衰特性テーブルを次のようにして補正する。つまり、メモリチップ300に記憶された電位減衰特性テーブルの作成時の基準温度に対して、第1、第2の温度センサ12A、12Bで測定された温度のずれ(差分温度)を求める。そして、この差分温度と、感光ドラム1の表面電位の温度特性とを掛け合わせることで、メモリチップ300に記憶された電位減衰テーブルの全領域における現像位置での表面電位値を一様に補正する(S206)。
そして、上記同様、得られた新たな電位減衰特性テーブルを用いて、前述と同様にして露光補正処理を行い、補正した露光条件により露光を行う(S205)。
感光ドラム1の温度特性は、概略、次のような傾向を有する。即ち、温度が高いほど感度、暗減衰特性ともに高く(大きく)なる。そのため、電位減衰特性テーブルの設定時の基準温度よりも温度が高い部分では、電位減衰特性テーブルの示す現像位置での表面電位値(絶対値)よりも実際は低くなる。そこで、温度が高い部分では、基準温度の時の露光量よりも露光量は少なくなるように設定される。一方、電位減衰特性テーブルの設定時の基準温度よりも温度が低い部分では、電位減衰特性テーブルの示す現像位置での表面電位値(絶対値)よりも実際は高くなる。そこで、そこで、温度が低い部分では、基準温度の時の露光量よりも露光量は多くなるように設定される。
尚、本実施例では、装置本体Aの内部での温度勾配は感光ドラム1の長手方向で一様であるものとして扱い、第1、第2の温度センサ12A、12Bの測定値を1次直線で補間し、その傾き(勾配)に基づいて電位減衰特性テーブルの温度補正を行う。
又、画像形成装置100の構成によっては、感光ドラム1の長手方向の中央付近の温度が高いなど、装置本体Aの内部で1次直線で補間できないことが考えられる。この場合には、第1、第2の温度センサ12A、12Bの測定結果より、中央部の温度を予測して、曲線で補完するなどの処理を行うことも有効である。より具体的には、装置内の温度分布の測定を行い、その分布の特性が装置構成特有のものとして取り扱い、中央部の温度差を固定値として取り扱う(例えば第1の温度センサ12Aの測定結果との差)。第1、第2の温度センサ12A、12Bの測定温度に、第1の温度センサ12Aの測定値より推測される感光ドラム1の中央部の温度の3点で直線補間を行うことも可能である。
本実施例に従う処理を行うことによって、a−Si感光体である感光ドラム1の電位減衰特性の温度依存性に起因して、装置本体Aの内部の温度分布の影響により発生する電位ムラを補正することが可能である。これにより、画像形成装置100の内部に温度ムラがある場合においても、画像濃度ムラが抑制された良好な画像を形成することが可能である。
以上説明したように、本実施例によれば、感光ドラム1の長手方向に感光ドラム1の表面近傍の温度を測定する温度センサ12を2つ以上有する。そして、温度センサ12(12A、12B)による測定データに基づいて、電位減衰特性テーブルを感光ドラム1の表面電位の温度特性により補正する。このように、感光ドラム1の表面の近傍の温度分布に基づいて補正された電位減衰特性テーブルに合わせて露光条件(パルス幅変調,強度変調を問わない)を変える。これにより、画像形成装置の稼働状態、設置環境等によって画像形成装置内に温度変化が発生し、感光ドラム1の表面に温度ムラが発生した場合においても、現像部における感光ドラム1の感光層の膜厚や膜質の違いによる電位ムラを解消することができる。従って、本実施例によれば、画像形成装置の内部に温度ムラがある場合においても、画像濃度ムラが抑制された良好な画像を得ることが可能になる。
又、本実施例は、感光ドラム1の内部に温度調整を行なうためのヒーターなどが設けられていない画像形成装置で特に有効である。即ち、本実施例によれば、感光ドラム1の温度を一定に保つためのヒーター等の温度制御装置を省く又は簡略化することが可能である。
尚、本実施例では、装置本体Aの内部での温度分布は感光ドラム1の長手方向で一様であるものとして扱い、第1、第2の温度センサ12A、12Bの測定値を補間して、電位減衰特性テーブルの温度補正を行う。このようにすることで、感光ドラム1の長手方向の電位減衰特性の分割数よりも少ない温度センサ12の数により、感光ドラム1の表面に温度ムラが発生した場合においても、電位ムラの影響を解消することが可能となった。
なお、本実施例では、電位減衰特性テーブルを、露光装置3の光走査方向についての主走査方向(感光体長手方向)及び副走査方向(感光体回転方向)に区画していた。しかし、電位減衰特性テーブルを主走査方向だけに区画をもつようにしてもよい。このようにすることで、少なくとも感光体長手方向の電位減衰特性と長手方向の温度特性に基づいた露光制御を行なうことができる。
実施例3
実施例1、2では、温度による感光ドラム1の感度特性の変化量が、感光ドラム1の長手方向で均一であるとして、露光条件の補正をおこなった。したがって、温度が1度上がった時、感光ドラム1の長手方向の一端側で露光電位が3V下がる感度特性であれば、感光ドラム1の長手方向の他端でも露光電位が3V下がる感度特性を備えるものとしている。
しかしながら、温度による感度特性の変化量が長手方向で均一でない場合もある。例えば、温度が1度上がった時、感光ドラム1の長手方向の一端では露光電位が3V下がる感度特性を備え、感光ドラム1の長手方向の他端では露光電位が2Vしか下がらない感度特性を備える場合もある。特に、a−Si感光体は、製膜状態が長手方向で均一でない場合があり、長手方向で温度による感度特性の変化量が異なることがある。
このような場合に、感光ドラム1の長手方向で均一に温度補正を行なうと、所望の露光電位が得られない可能性がある。
そこで、本実施例では、実施例2のような電位減衰特性テーブルに加え、感光ドラム1の表面を感光ドラム1の長手方向に複数に分割した領域ごとの温度特性を記憶した記憶部としてのメモリチップ300(図4)を有する。なお、感光ドラム1の長手方向は、典型的には、感光ドラム1の表面の移動方向(回転方向)に交差(略直交)する方向であり、露光装置3の光走査方向についての主走査方向である。また、温度特性とは、典型的には、単位温度当たりの表面電位の変化量である。
領域ごとの温度特性は図18に示すように、a〜cの三段階で設定されている。aの部分では温度が1度上がると露光電位が1V下がる。bの部分では、温度が1度上がると露光電位が2V下がる。cの部分では、温度が1度上がると露光電位は3V下がる。即ち、aの領域では温度による電位の変化が小さく、cの部分では温度による電位の変化が大きい。
露光装置3による露光時の露光条件は、温度測定装置によって測定された温度と、メモリチップ300に記憶された各領域ごとの電位減衰特性テーブル及び各領域ごとの温度特性、に応じて変化させられるようになっている。
具体的には、各領域ごとの電位減衰特性テーブルは、測定された温度と、各領域ごとの温度特性に応じて補正され、温度補正済みの電位減衰テーブルを作成して、これに基づいて露光条件を制御する。
温度補正済みの電位減衰特性テーブルは、次のようにして算出することができる。即ち、温度測定装置である温度センサが感光ドラム1の異なる二つ以上の位置の温度を測定し、感光ドラム1の長手方向における温度分布を求める。画像処理回路200は、メモリチップ300に記憶された電位減衰特性テーブルの作成時の基準温度(本実施例では42℃)に対する感光ドラム1の長手方向の各領域位置における温度のずれ(差分温度)を、求められた温度分布から求める。そして、感光ドラム1の長手方向の各領域の位置における上記差分温度と感光ドラム1の表面電位の温度特性とを掛け合わせることで、メモリチップ300に記憶された電位減衰テーブルが示す各領域の現像位置での表面電位値を補正する。なお、本実施例では、実施例2と異なり、各領域ごとに感光ドラム1の表面電位の温度特性が異なるため、各領域ごとに温度による補正量が異なる。
このようにして、温度補正済みの電位減衰特性テーブルを算出し、これに基づいて露光条件を制御する。
なお、電位減衰特性テーブルの算出以外の具体的な構成は、実施例2と同様であるので説明を割愛する。
実施例4
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は実施例2のものと同じである。従って、実施例2のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施例では、図14に示すように、感光ドラム1の電位減衰特性テーブルは、感光ドラム1に設けられた記憶部としての非接触型メモリであるタグメモリ301に記憶させる。
一方、本実施例では、図15に示すように、例えば感光ドラム1を装置本体Aに装着する際の先端側である装置本体Aの内部の奥側に、読み取り手段としてのアンテナ基板18が配置されている。このアンテナ基板18は、感光ドラム1のタグメモリ301と無線通信可能となっている。
又、図14に示すように、本実施例では、感光ドラム1の表面の近傍の温度を測定する温度測定装置としての温度センサ12を、装置本体Aの奥側(第1の温度センサ12R)、中央(第2の温度センサ12C)、手前側(第3の温度センサ12F)の3カ所に配置した。
より具体的には、本実施例では、第1、第2、第3の温度センサ12R、12C、12Fとしては、実施例1と同じのものを用いた。又、感光ドラム1の長手方向の長さが380mmであるのに対して、第1、第2、第3の温度センサ12R、12C、12Fは次のような位置に配置した。即ち、第1の温度センサ12Rは感光ドラムの奥側端部から20mmの位置、第2の温度センサ12Cは感光ドラムの中央の位置、第3の温度センサ12Fは感光ドラムの手前側端部から20mmの位置に配置した。又、第1、第2、第3の温度センサ12R、12C、12Fは、感光ドラム1から5mmだけ離れた位置に配置した。
本実施例では、装置本体Aの内部の温度分布は、次のようにして算出した。即ち、第1、第2、第3の温度センサ12R、12C、12Fの3つの測定値より、各センサ位置をスプライン補間することにより、感光ドラム1の表面の近傍の長手方向の温度分布とした。
上記スプライン補間の他、最小二乗法、ラグランジュ補間、エルミート補間等の数値解析で一般的に用いられる補間方法により、装置本体Aの内部の温度分布を求めることも可能である。これらの各補間方法自体は斯界にて周知であり、又本発明においては利用可能なものを任意に選択して適用することができる。
上述のようにして得られた温度分布を用いて、実施例2と同様な処理を行い、感光ドラム1の温度特性により補正済みの電位減衰特性テーブルを算出する。
そして、得られた新たな電位減衰特性テーブルを用いて、実施例1にて説明したのと同様にして露光補正処理を行い、画像出力を行う。
本実施例に従う処理を行うことによって、装置本体Aの内部の温度分布をより正確に求めることが可能となり、感光ドラム1の表面の近傍の温度分布が長手方向で一様でない場合でも画像濃度ムラの補正を行うことが可能である。
本実施例では、第1、第2、第3の温度センサ12R、12C、12Fの測定値をスプライン補間して、電位減衰特性テーブルの温度補正を行う。このようにすることで、感光ドラム1の長手方向の電位減衰特性の分割数よりも少ない温度センサ12の数により、感光ドラム1の表面に温度ムラが発生した場合においても、電位ムラの影響を解消することが可能となった。
又、上記各実施例と同様に、本実施例は、感光ドラム1の内部に温度調整を行なうためのヒーターが設けられていない画像形成装置で特に有効である。
尚、上記各本実施例では、特に本発明の効果の大きい、a−Si感光体を像担持体として使用した場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、a−Si感光体以外の他の像担持体、例えばOPC感光体を使用する場合にも適用することができる。
又、上記各実施例では、電位減衰特性テーブルを記憶する記憶部は像担持体と一体的に構成され、典型的には装置本体に対して着脱可能とされるものとして説明した。これにより、消耗部品として交換される各像担持体に即した電位減衰特性テーブルに基づく制御を行い易いため非常に有効である。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、像担持体を除く装置本体側に該記憶部を装着するようにしてもよい。