JP5098956B2 - 有機光電変換素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機光電変換素子の製造方法に関する。
有機光電変換素子は、透明電極上に有機物からなる発電層と電荷輸送層とを積層し、更に電極で挟みこんだ構造をしており、発生したフリーキャリアを各電極で回収して外部回路を駆動するデバイスである。更に、可撓性の高い透明樹脂基板を用いることで、フレキシブルな有機光電変換素子を実現できるだけでなく、有機層はダイコーターの様な生産設備を用いてロールツーロールで塗布製膜でき、高生産性のプロセスが期待できる。
有機光電変換素子を高効率化させる方法として、タンデム型素子が知られており(例えば、非特許文献1参照)、光エネルギーを効率よく吸収することが可能になるため、エネルギー変換効率の向上が期待できる。この様なタンデム型素子では、第一の発電ブロックAと第二の発電ブロックBを、金属ナノ粒子を含有した再結合層を介して連結させることにより、ホールと電子の再結合サイトが増加し、エネルギー変換効率が向上することが知られている。
タンデム型有機光電変換素子を効率よく作製する方法として、第一の発電ブロックAと第二の発電ブロックBをエポキシ系の樹脂で貼合することで、タンデム型有機光電変換素子を作製する方法が紹介されて(例えば、特許文献1参照)いる。この方法は、第一の発電ブロックAと第二の発電ブロックBのそれぞれに金属層からなる再結合層を蒸着法により形成している。しかし、この方法では、貼合することで再結合層の膜厚が厚くなってしまうだけでなく、金属の均一層であるため光の透過率が低下し、第二の発電ブロックのエネルギー光電変換効率が低くなってしまうことが課題であった。
さらに、上述した何れの例においても、再結合層を真空蒸着法により形成させており、塗布法による製造方法の具体的な例が一切ないので、生産性は低いと考えられ、有機光電変換素子の利点が失われていた。さらに、均一な金属電極同士を貼り合わせる構成では、フレキシブルな基板を用いた有機光電変換素子に適用した場合、折り曲げに対する耐性も低下してしまうという課題も有していた。
Appl.Phys.Lett.,Vol.80(2002),p1667 特開2006−332380号公報
本発明の目的は、生産性が高く、光透過性に優れ、光電変換効率が高く、かつ、折り曲げ耐性も高い有機光電変換素子の製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.少なくとも第一の電極上に第一の光電変換層と第一の結合層を形成する第一の発電ブロック形成工程と、第二の電極上に第二の光電変換層と第二の結合層を形成する第二の発電ブロック形成工程と、前記第一の発電ブロックの第一の結合層と、第二の発電ブロックの第二の結合層とを対向させて貼合することで再結合層を形成する再結合層形成工程を含む有機光電変換素子の製造方法であって、該再結合層が少なくとも導電性繊維と透明導電性材料を含み構成されることを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
2.前記導電性繊維が、金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブであることを特徴とする前記1記載の有機光電変換素子の製造方法。
3.前記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤであることを特徴とする前記2記載の有機光電変換素子の製造方法。
4.前記透明導電性材料が、導電性ポリマーであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の有機光電変換素子の製造方法。
5.前記第一の結合層及び第二の結合層の少なくともいずれかが、導電性繊維を含有した架橋性の導電性材料を塗布することにより形成され、貼合してから硬化させることで前記再結合層を形成することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機光電変換素子の製造方法。
本発明により、生産性が高く、光透過性に優れ、エネルギー変換効率の高く、かつ、折り曲げ耐性も高い有機光電変換素子の製造方法を提供することができた。
本発明を更に詳しく説明する。本発明は、再結合層に導電性繊維と導電性材料を含む塗布液で塗布形成させることにより、生産性が高く、光透過性に優れ光電変換効率の高い有機光電変換素子を得ることができた。
〔有機光電変換素子の製造方法〕
本発明の有機光電変換素子の製造方法を図1を用いて説明する。図1(a)において、第一の基板1上に形成させた第一の電極2の上に、第一の光電変換層3を形成し、導電性繊維及び/又は透明導電性材料を含有する第一の結合層4を形成して、第一の発電ブロック9を作製する。一方、第二の基板7上に形成させた第二の電極6の上に、第二の光電変換層5を形成し、導電性繊維及び/又は透明導電性材料を含有する第二の結合層4′を形成して、第二の発電ブロック10を作製する。
得られた、第一の発電ブロック9の第一の結合層4と、第二の発電ブロック10の第二の結合層4′とを対向させて貼り合わせ(図1(b))、第一の発電ブロック9の第一の結合層4と、第二の発電ブロック10の第二の結合層4′とを一体化し、導電性繊維及び透明導電性材料を含有する再結合層8を形成して有機光電変換素子11(図1(c))とする。
本発明の有機光電変換素子は、図1(c)で表される素子構造からなる。
本発明は、図1(b)において、再結合層8に導電性繊維及び透明導電性材料を含み成ることを特徴とする。この再結合層は、第一の発電ブロックで発生した正孔または電子と、第二の発電ブロックで発生した電子または正孔とが、再結合し、第一の発電ブロックと第二の発電ブロックが実質的に直列接続された二つの素子を繋ぐ役割を担う。また、再結合層8は、第一の発電ブロックを透過してきた光を好ましく透過し、透過した光が第二の発電ブロックの発電に用いられるといった役割も担う。よって、再結合層に用いられる材料としては導電性と透明性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましい。
図1(b)において、少なくとも第一の光電変換層3か第二の光電変換層5のいずれかは、p型半導体層およびn型半導体の混合体である、バルクヘテロジャンクション構造の層(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)であることが好ましい。太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、第二の光電変換層は、第一の光電変換層の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。
本発明の好ましい態様として、図2に示す。第一の基板21上に積層された第一の電極22と第一の光電変換層24の間、及び/又は第一の光電変換層24と再結合層26の間、再結合層26と第二の光電変換層28の間、及び/又は第二の光電変換層28と第二の電極30の間にそれぞれ中間層を有しても良い。好ましい中間層の形態としては、第一の電極22と第一の光電変換層24の間には第一の正孔輸送層23、再結合層26と第二の光電変換層28の間には正孔輸送層27が積層されており、また、第一の光電変換層24と再結合層26の間には、第一の電子輸送層25、第二の光電変換層28と第二の電極30の間には、第二の電子輸送層29がそれぞれ中間層として積層されていることが好ましい。
以下、本発明において好ましく用いることができる構成について、詳細に説明する。
〔導電性繊維〕
本発明に係る導電性繊維とは、導電性を有し、かつその長さが直径(太さ)に比べて十分に長い形状を持つものである。本発明に係る導電性繊維は、再結合層内において導電性繊維が互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成することで機能すると考えられる。従って、導電性繊維が長い方が導電ネットワーク形成に有利であるため好ましい。一方で、導電性繊維が長くなると導電性繊維が絡み合って凝集体を生じ、光学特性を劣化させる場合がある。導電ネットワーク形成や凝集体生成には、導電性繊維の剛性や直径等も影響するため、使用する導電性繊維に応じて最適な平均アスペクト比(アスペクト=長さ/直径)のものを使用することが好ましい。大凡の目安として、平均アスペクト比は、10〜10,000であるものが好ましい。
形状としては中空チューブ状、ワイヤ状、ファイバー状のもの等があり、例えば、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等がある。本発明においては、透明性の観点から太さが300nm以下の導電性繊維であることが好ましく、併せて導電性も満足するために、導電性繊維は金属ナノワイヤ及びカーボンナノチューブの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらには、コスト(原材料費、製造費)と性能(導電性、透明性、可撓性)の観点から、銀ナノワイヤが特に好ましい。
〔金属ナノワイヤ〕
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmスケールの直径を有する線状構造体を意味する。
本発明に係る導電性繊維に適用される金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むこともできる。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよく、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。特に、Adv.Mater.,2002,14,833〜837及びChem.Mater.,2002,14,4736〜4745で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができる。銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤとして好ましく適用することができる。
〔カーボンナノチューブ〕
カーボンナノチューブは、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が筒形に巻かれた形状からなる炭素系繊維材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWCNT)と多層ナノチューブ(MWCNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、アームチェア型に分けられ、各種のものが知られている。
本発明に係る導電性繊維に適用されるカーボンナノチューブとしては、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができ、また、これらの種々のカーボンナノチューブを複数混合して用いてもよいが、導電性に優れた単層カーボンナノチューブであることが好ましく、さらには金属性のアームチェア型単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。
本発明に係るカーボンナノチューブの形状としては、1つのカーボンナノチューブで長い導電パスを形成するために、アスペクト比(=長さ/直径)が大きい、すなわち細くて長い単層カーボンナノチューブであることが好ましい。例えば、アスペクト比が102以上、好ましくは103以上のカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブの平均長さは、3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は100nmより小さいことが好ましく、1〜50nmが好ましく、1〜30nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
本発明で使用されるカーボンナノチューブの製造方法は特に限定されるものではなく、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現できることから好ましい。
導電性繊維と透明導電性材料を含む再結合層の好ましい形成方法として、素子上に導電性繊維の分散液を塗布または印刷し、乾燥して導電性繊維からなる導電ネットワーク構造を形成する。次に、該導電性繊維のネットワーク構造上の隙間に透明導電性材料を含浸させ、導電性繊維と透明導電性材料を含む再結合層を形成する方法を挙げることができる。
〔透明導電性材料〕
本発明に係る透明導電性材料とは、製膜した状態において透明性を有し、かつ均一な導電性を有する膜を形成できる材料である。このような透明導電性材料として、例えば、導電性高分子や導電性金属酸化物微粒子、金属微粒子、金属でコーティングした有機微粒子や無機微粒子等がある。本発明においては、透明性と導電性の観点から、導電性材料は導電性高分子や導電性金属酸化物ナノ粒子の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
〔導電性高分子〕
本発明に係る透明導電性材料に適用される導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる化合物等を挙ることができる。
本発明に係る透明導電性材料は、1種類の導電性高分子を単独に含有してもよいし、2種類以上の導電性高分子を組み合わせて含有してもよいが、導電性及び透明性の観点から、下記一般式(I)または一般式(II)で示される繰り返し単位を有するポリアニリンまたはその誘導体や、下記一般式(III)で示される繰り返し単位を有するポリピロール誘導体、または下記一般式(IV)で示される繰り返し単位を有するポリチオフェン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。
Figure 0005098956
なお、上記一般式(III)及び一般式(IV)において、Rは主として線状有機置換基であり、アルキル基、アルコキシ基、アリル基又はこれらの基の組み合わせが好ましいが、可溶性導電性高分子としての性質を失わなければよく、さらにこれらにスルホネート基、エステル基、アミド基などが結合しても、組み合わされてもよい。なお、nは整数である。
本発明に係る透明導電性高分子には、導電性をより高めるためにドーピング処理を施すことができる。導電性高分子に対するドーパントとしては、例えば、炭素数が6〜30の炭化水素基を有するスルホン酸(以下、長鎖スルホン酸ともいう。)あるいはその重合体(例えば、ポリスチレンスルホン酸)、ハロゲン原子、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、MClO(M=Li、Na)、R(R=CH、C、C)、またはR(R=CH、C、C)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なかでも、上記長鎖スルホン酸が好ましい。
また、導電性高分子に対するドーパントは、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレンなどのフラーレン類に導入されていてもよい。透明導電膜において、上記ドーパントは、導電性高分子100質量部に対して、0.001質量部以上含まれていることが好ましい。さらには、0.5質量部以上含まれていることがより好ましい。
尚、本発明の透明導電性材料は、長鎖スルホン酸、長鎖スルホン酸の重合体(例えば、ポリスチレンスルホン酸)、ハロゲン、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、MClO、R、およびRからなる群から選ばれる少なくとも1種のドーパントと、フラーレン類との双方を含んでいてもよい。
本発明に係る導電性高分子として、特表2001−511581号公報や特開2004−99640号公報、特開2007−165199号公報などに開示される金属によって改質された導電性高分子を用いることもできる。
本発明に係る導電性高分子を含む透明導電性材料には、水溶性有機化合物を含有してもよい。水溶性有機化合物の中で、導電性高分子材料に添加することによって導電性を向上させる効果を有する化合物が知られており、2nd.ドーパント(或いは増感剤)と称される場合がある。本発明の透明導電性材料で用いることができる2nd.ドーパントには特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)やジエチレングリコール、その他酸素含有化合物が好適に挙げられる。
本発明に係る導電性高分子を含む透明導電性材料においては、導電性高分子100質量部に対する上記2nd.ドーパントの含有量は、0.001質量部以上が好ましく、0.01〜50質量部がより好ましく、0.01〜10質量部が特に好ましい。
本発明に係る導電性高分子を含む透明導電性材料は、成膜性や膜強度を確保するために、導電性高分子の他に透明な樹脂成分や添加剤を含んでいてもよい。透明な樹脂成分としては、導電性高分子と相溶又は混合分散可能であれば特に制限されず、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
本発明に係る導電性高分子を含む透明導電性材料には、水溶性有機化合物を含有してもよい。水溶性有機化合物の中で、導電性高分子材料に添加することによって導電性を向上させる効果を有する化合物が知られており、2nd.ドーパント(或いは増感剤)と称される場合がある。本発明の透明導電性材料で用いることができる2nd.ドーパントには特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)やジエチレングリコール、その他酸素含有化合物が好適に挙げられる。
〔導電性金属酸化物〕
本発明に係る透明導電性材料に適用される導電性金属酸化物としては、公知の透明金属酸化物導電材料を用いることができる。例えば、ドーパントとして錫、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム、アンチモン等を添加した酸化インジウムや酸化スズ及び酸化カドミウム、ドーパントとしてアルミニウムやゲルマニウム等を添加した酸化亜鉛や酸化チタン等の金属酸化物が挙げられる。
本発明に係る導電性金属酸化物としては、インジウム、亜鉛、錫から選ばれる金属の酸化物を含有することが好ましく、具体的には酸化インジウムにスズをドープしたITOや、酸化亜鉛にアルミニウムやガリウムをドープしたAZOやGZO、酸化錫にアンチモンやフッ素をドープしたATOやFTOから選ばれる金属酸化物を含有することが好ましい。
また、本発明に係る導電性金属酸化物の形状としては、平均粒径が1〜100nmのナノ粒子であることが好ましく、3〜50nmのナノ粒子であることが特に好ましい。
本発明に係る導電性金属酸化物を含む透明導電性材料は、導電性金属酸化物ナノ粒子以外に、透明なバインダー材料や添加剤を含んでいてもよい。透明なバインダー材料としては、天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができる。例えば、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコーン樹脂)を使用することができる。添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤などの安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料などの着色剤などが挙げられる。更に、塗布性などの作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
本発明では、透明導電性材料は導電性高分子であることが望ましい。
〔基板〕
基板は、本発明の有機光電変換素子の構造体を保持する部材である。本実施形態では、少なくとも第一の電極又は第二の電極、更には両方の電極から光電変換される光が入射することが可能なように、光電変換すべき光の波長に対して透明な基板であることが望ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については耕地のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。また、透明基材にはバリアコート層が予め形成されていてもよい。
〔第一の電極〕
第一の電極22は、本発明のいずれの光電変換層においても光電変換される光を透過させることが可能な電極であり、好ましくは300〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、導電性高分子を用いることができる。
〔光電変換層〕
本発明の光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成されることが好ましい。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
本発明に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換−無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,Vol.127.No.14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,Vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,Vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
本発明の有機光電変換素子のp型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。この中で、特に塗布法が好ましい。
そして、光電変換部のバルクヘテロジャンクション層は、光電変換率を向上すべく、製造工程中において所定の温度でアニール処理され、微視的に一部結晶化されている。
光電変換素子では、基板を介して透明電極から入射された光は、光電変換部のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極と対電極の仕事関数が異なる場合では透明電極と対電極との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極の仕事関数が対電極の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極へ、正孔は、対電極へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極と対電極との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
光電変換部は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び前述のような半導体材料の化学反応を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。
〔中間層〕
また、上述のバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子は、順次に基板上に積層された透明電極、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部及び対電極で構成されたが、これに限られず、例えば透明電極や対電極と光電変換部との間に正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、あるいは平滑化層等の他の層を有してバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子が構成されてもよい。これらの中でも、バルクヘテロジャンクション層と陽極(通常、透明電極側)との中間には正孔輸送層または電子ブロック層を、陰極(通常、対電極側)との中間には電子輸送層または正孔ブロック層を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
〔正孔輸送層〕
正孔輸送層として好ましく用いられる材料としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、WO2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、溶液塗布法で形成することが好ましい。
〔電子輸送層〕
電子輸送層としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
〔第二の電極〕
第二の電極30は導電材単独層で合っても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。第二電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
第二の電極の導電材として金属材料を用いれば第二の電極側に来た光は反射されて第一の電極側にもどる。第一の電極の金属ナノワイヤは光の一部を後方に散乱、あるいは反射するが第二の電極の導電材として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となり、より光電変換効率が向上する。
〔封止〕
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)を直接堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
実施例1
〔有機光電変換素子SC−101の作製〕
(第一の発電ブロック形成工程)
1.5cm×11cmバリア層付きPENフィルム基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を110nm堆積したもの(シート抵抗13Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて1cm幅にパターニングして、フレキシブル透明電極を形成した。
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素による乾燥を行い、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron PH4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が50nmになるように塗布した後、140℃で10分間乾燥させ、正孔輸送層を成膜した。
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクストロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000、高分子p型半導体材料)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)(Mw=911、低分子n型半導体材料)を3.0質量%になるように1:1で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して光電変換層を成膜した。
次に、エタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/Lになるように溶解した液を調製し、マスキングした後、膜厚が20nmになるようにスピンコートを行い、水蒸気量を調節した窒素中放置して電子輸送層を成膜した。
続けて、分散液として調製した銀ナノワイヤを目付け量40mg/mとなるように塗布し、乾燥させることで銀ナノワイヤ層を形成した。
銀ナノワイヤはAdv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、平均直径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作成し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ分散液(銀ナノワイヤ含有量5質量%)を調整した。
さらに、導電性紫外線硬化型樹脂(信越ポリマー:OC−X109)を塗布し、所定のサイズにパターニングし、溶媒成分を気化させることで第一の結合層を形成し、第一の発電ブロックAを得た。
(第二の発電ブロック形成工程)
第一の発電ブロックの場合と同様に洗浄処理を行ったPENフィルム基板を、真空蒸着装置内に設置し、1cm幅のシャドウマスクをセットし、1×10−3Pa以下にまで真空蒸着機内を減圧した後、Alを膜厚が80nmになるように積層した電極を形成した。
真空蒸着機から基板をグローブボックス中に移動し、これ以降は、窒素雰囲気下で作業した。
この電極上に、第一の発電ブロックと同様にして電子輸送層を形成した後、TBP前駆体とPCBNBをクロロホルム/クロロベンゼンの1:1混合溶媒に1.2:0.8の質量比になるように溶解した溶液を70nmになるように塗布し、150℃20分間加熱処理を行うことにより、光電変換層を成膜した。さらに、TBP前駆体をクロロホルム/クロロベンゼンの1:1混合溶媒0.25質量%になるように溶解した溶液を乾燥膜厚25nmになるように塗布し、150℃20分間加熱処理を行って正孔輸送層を形成した。
続いて、第一の発電ブロックの形成と同様にして、銀ナノワイヤ、導電性紫外線硬化型樹脂を含む第二の結合層を成膜し、第二の発電ブロックBを得た。
(再結合層形成工程)
上述の通り作製した、第一の発電ブロックAの第一の結合層と、第二の発電ブロックBの第二の結合層とを対向させて張り合わせ、紫外線を照射させることにより、第一の発電ブロックAと第二の発電ブロックBを貼合し、有機光電変換素子SC−101を得た。
得られた有機光電変換素子SC−101は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
Figure 0005098956
〔有機光電変換素子SC−102の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、第一の発電ブロックAの第一の結合層、及び、第二の発電ブロックBの第二の結合層にそれぞれ用いた導電性繊維を、SWCNT(Unidym社製、HiPcoR単層カーボンナノチューブ)の分散液に変更し、SWCNTの目付け量がそれぞれ5mg/mになるように塗布した後、導電性紫外線硬化型樹脂(信越ポリマー:OC−X109)を塗布した以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして、有機光電変換素子SC−102を得た。得られた有機光電変換素子SC−102はSC−101と同様に、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
〔有機光電変換素子SC−103の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、第一の発電ブロックAの第一の結合層、及び、第二の発電ブロックBの第二の結合層にそれぞれ用いた導電性繊維を、5質量%の酸化チタンナノワイヤ(チタン工業:ST−485SA15)のエタノール分散液に変更し、酸化チタンナノワイヤの目付け量がそれぞれ40mg/mになるように塗布した後、UV硬化樹脂を塗布した以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして、有機光電変換素子SC−103を得た。得られた有機光電変換素子SC−103はSC−101と同様に、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
〔有機光電変換素子SC−104の作製〕
SC−101の作製と同様にして、第一の発電層上に電子輸送層までを同様に形成し、続けて、真空蒸着機を用いてAgからなる第一の結合層を5nm厚になるよう製膜し、第一の発電ブロックAを得た。更に、SC−101の作製と同様にして、第二の発電層上に正孔輸送層までを同様に形成し、続けて、真空蒸着機を用いてAgからなる第二の結合層を5nm厚になるよう製膜し、第二の発電ブロックBを得た。
第一の発電ブロックAと第二の発電ブロックBをエポキシ系の接着剤(ノガワケミカル:No.2410)を用いて貼合し、有機光電変換素子SC−104を得た。得られた有機光電変換素子SC−104はSC−101と同様に、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
〔光電変換素子のエネルギー変換特性評価〕
上記方法で作製した有機光電変換素子について、ソーラーシミュレーターを用いたAM1.5Gフィルタ、100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を10mm×100mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、フィルファクターffから式1を用いてエネルギー変換効率η(%)を得て、SC−104のエネルギー変換効率を100としたとき相対値を表1に示した。
(式1) Jsc(mA/cm)×Voc(V)×ff=η(%)
〔巻きつけ耐性評価〕
上記方法で作製した有機光電変換素子について、1インチφのプラスチック製の円柱棒を用意し、表裏を1セットとして、50セット巻きつけた前後のエネルギー変換効率ηの保持率を式2に従って求め、表1に示した。
(式2) 保持率(%)=巻きつけ後のη/巻きつけ前のη×100
Figure 0005098956
表1から明らかなように、本発明の有機光電変換素子は、タンデム構造の再結合層に導電性繊維と透明導電性材料を含み構成されることで、エネルギー変換効率が向上することが分かった。また、本発明の有機光電変換素子は巻きつけ耐性評価の前後で、エネルギー変換効率の保持率が高く、フレキシブルな有機光電変換素子において優れていることが判る。更には、タンデム型の有機光電変換素子の製造を本発明の貼合方法によると、従来の方式に較べ、第一の電極から第二の電極までを一貫した工程塗布で行うことができ、生産性が高いことがわかった。
本発明の有機光電変換素子の製造方法の概略図である。 本発明のバルクヘテロジャンクション型有機光電変換素子の基本構造を示す概略断面図である。
符号の説明
1 第一の基板
2 第一の電極
3 第一の光電変換層
4 第一の結合層
4′ 第二の結合層
5 第二の光電変換層
6 第二の電極
7 第二の基板
8 再結合層
9 第一の発電ブロック
10 第二の発電ブロック
11 有機光電変換素子
21 第一の基板
22 第一の電極
23 第一の正孔輸送層
24 第一の光電変換層
25 第一の電子輸送層
26 再結合層
27 第二の正孔輸送層
28 第二の光電変換層
29 第二の電子輸送層
30 第二の電極
31 第二の基板

Claims (5)

  1. 少なくとも第一の電極上に第一の光電変換層と第一の結合層を形成する第一の発電ブロック形成工程と、第二の電極上に第二の光電変換層と第二の結合層を形成する第二の発電ブロック形成工程と、前記第一の発電ブロックの第一の結合層と、第二の発電ブロックの第二の結合層とを対向させて貼合することで再結合層を形成する再結合層形成工程を含む有機光電変換素子の製造方法であって、該再結合層が少なくとも導電性繊維と透明導電性材料を含み構成されることを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
  2. 前記導電性繊維が、金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1記載の有機光電変換素子の製造方法。
  3. 前記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤであることを特徴とする請求項2記載の有機光電変換素子の製造方法。
  4. 前記透明導電性材料が、導電性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の有機光電変換素子の製造方法。
  5. 前記第一の結合層及び第二の結合層の少なくともいずれかが、導電性繊維を含有した架橋性の導電性材料を塗布することにより形成され、貼合してから硬化させることで前記再結合層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機光電変換素子の製造方法。
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