JP5097905B2 - 同位体を分離・濃縮するための方法及び該方法に使用するロータ - Google Patents

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Description

本発明は、二つ以上の異なる同位体により構成される凝縮物質を超高速回転による加速度場(重力場、遠心力場)による原子の沈降を利用して同位体を拡散処理して分離・濃縮する方法及び該方法を実施するのに使用可能なロータに関する。
ここで加速度場は重力場と物理的に同じであり、また、本発明では実際には遠心力によって発生するので、遠心力場、遠心加速度場と呼んでも良い。また、強い(高い)加速度場を高加速度場、高重力場、超重力場、超遠心力場などとも呼ぶ。
近年のエネルギー事情や情報産業の高度化により、核分裂のためのU,Prや核融合のためのトリチウム、トリチウム用Liなどのエネルギー同位体物質、Be,C,B,Na,K,Cs,Mg,B,Al,Si,Ge,Co,Fe,Ga,As,P,Sb,Zn,In,Bi,Sn,S,Se,F,CL,I,O,Nなどを成分とする高性能半導体、Be,C,B,Na,K,Cs,Mg,B,Al,Si,Ge,Co,Fe,Ga,As,P,Sb,Zn,In,Bi,Sn,S,Se,F,CL,I,O,Nなどを成分とする量子半導体、また、C,N,O,F,Cr,Ga,Br,Tc,I,Au,Tl,Br,In,La,Eu,Gd,Dy,Ho,Yb,Lu,Reなどの医療用同位体など同位体の重要性はますます高まっている。同位体の濃縮法には電磁法、ガス拡散法、ガス遠心力法、ノズル分離法、熱拡散法、レーザ法、深冷法、プラズマ法、化学交換法があり、工業的生産には主にガス拡散法、ガス遠心力法が用いられている。
核燃料事業は核燃料物質の採鉱・精錬・濃縮および核燃料サイクルの中で同位体濃縮は最も重要な部分である。従って、原子力開発・利用はウラン濃縮に始まるが、ウラン濃縮技術は、低コストと操業安全性が重要である。
ガス拡散法は、米、仏などが採用しており、腐食性ガスの六フッ化ウラン(UF)が原料である。分離係数は一段で約1.003であり3〜4%濃縮ウランを得るために大規模なカスケードを組む。この方法は、腐食性ガス、低分離係数、大規模施設によるコスト高が課題である。
ガス遠心分離法は、日本、英、オランダなどが採用する方法で、UFが原料である。分離係数は1.4が期待でき、カスケードを組んで濃縮ウランを得る。この方法も、腐食性ガス、大型施設によるコスト高が依然として課題である。レーザ法は、原子法および分子法ともに将来の技術と位置づけられて、各国で開発が続いている。
先行技術文献として特許文献1には、高速回転試験装置を開示しているものの、高速回転時のロータの温度制御に主眼があるので、本発明とは無縁のものである。同特許文献2は本願発明者の内の一人の発明に係る先願発明であるが、凝縮系物質の遠心力場を利用して拡散処理する装置、方法を開示しているものの、複数の同位体により構成される凝縮系物質を分離・濃縮する発明を開示ないし、示唆していない。同特許文献3は、遠心ロータによる多段式装置を開示しているものの単なる液分配器を開示するに留まり、本発明の複数同位体を分離・濃縮することを開示ないし示唆するものではない。
特開2003−103199号公報 特開平9−290178号公報 特開2004−130182号公報
ウラン濃縮技術は低コストと操業安全性が眼目であるが、主に、ガス拡散法、ガス遠心分離法に分かれる。他に、電磁法、レーザ法、ノズル分離法、熱拡散法、深冷法、プラズマ法、化学交換法があるが、効率が悪く、少量の特殊な同位体の濃縮を除いて、工業生産にはほとんど用いられていない。ガス拡散法は、米、仏などが採用しており、腐食性ガスの六フッ化ウラン(UF)が原料である。分離係数は約1.003であり3〜4%濃縮ウランを得るためには大規模なカスケードを組む。この方法は、腐食性ガス、低分離係数、大規模施設によるコスト高が問題である。
遠心分離法は、日本、英、オランダなどが採用する方法で、UFが原料である。分離係数は1.4が期待でき、カスケードを組んで濃縮ウランを得る。この方法も、腐食性ガス、大型施設によるコスト高が依然として課題である。特に、近年我が国でガス遠心力法の改良が試みられたが、目標値に達せず、プロジェクトは中止になった。レーザー法やイオン交換法に将来の技術と位置づけられて、各国で開発が続いているが、ガス拡散法、ガス遠心分離法に代わる方法は出現していない。
従って、これまで提案されている遠心分離による同位体分離技術に、凝縮相(固相、液相)での遠心分離を可能にした技術はない。気相と凝縮相の単位体積あたりの原子数をおおよそ比較すると、凝縮相では同じ体積に気相の10以上の原子が存在していることになる。単純に考えて遠心分離による同位体濃縮が凝縮相で可能になれば、原理的にこれまで気相で行われてきた遠心分離の1万分の1以下の規模の施設で同等の濃縮が可能になる。また、凝縮相では、気体と異なり原子間の相互作用が強く、理想系からはずれ、原子の沈降により達成される同位体存在比の変化が大きくなるので、濃縮の効率を上げることができる。
原理的にこれまで様々な同位体濃縮法が提案され実用化されており濃縮効率も上がっている。ウラン濃縮等は既存の濃縮技術で既に十分なローコスト化がはかられているため問題ないが、半導体、量子半導体や医療用同位体などはまだまだ高価である。設備投資の大幅削減により濃縮のローコスト化も期待できると考えられる。これらを実現する性能を有した高温の超遠心機は最近開発されたばかりである。
(本発明の基本原理)
加速度場下では、凝縮状態の材料の構成原子一つ一つに力がかかるので原子自体に駆動力が生じる(ボディーフォース)。構成原子の原子量・原子容が異なる場合ボディーフォースの大きさに差が生じる。このボディーフォースの差によって生じるポテンシャルエネルギーの差が、化学ポテンシャルに打ち勝つと原子の沈降現象が起こる。以上の原理は本発明の発明者の一人である真下茂によって提案された凝縮状態にある物質(固体又は/及び液体)中における原子の沈降理論によって説明される。これは同位体同士にも当てはまる現象で発明の重要な要素である。
凝縮系物質(固体又は/及び液体)は気体に比べ密度が10以上なので単位体積あたりで処理できる原子数も多く、この点から濃縮の効率が高くすることが可能になる。これは発明の重要な要素である。
次に、上記のように高い高加速度場(高重力場、遠心力場)下において同位体原子の沈降が起こる理由について説明する。例えば、図1のC)の加速度場下の凝縮物質中の結晶状態と原子にかかる力の図に示したように、原子量の大きな原子X(同位体X)と原子量の小さな原子Y(同位体Y)とにより構成される材料Mに対して、矢印で示した方向G1(加速方向)の遠心力処理を施すと、この加速度場下では、圧力場下において元素の種類に関係なく均等に圧力を受ける場合とは異なり、原子量の違いによって、元素には選択的かつ直接的に、異なるボディフォース(体積力)が印加される。
従って、原子量の大きな同位体Xは原子量の小さな同位体Yよりもより強い力を受けて、元素Xが一軸方向に変位する。長時間の処理を行った際、この重力場による式(5)に示したエネルギーE(無次元化した同位体Xと同位体Yとのポテンシャルエネルギーの差)により、原子量の大きな同位体Xが加速方向に移動する。(図1C)参照)
凝縮物質中の同位体を含む原子の沈降は以下の拡散方程式に従う、セルフコンシステントな拡散理論では、フィックの第一法則に対応する2、3成分またはそれ以上の多成分(s)系の拡散方程式は、格子に沿った原子のフラックスをJ′、原子量、濃度、加速度、気体定数、絶対温度をM、C、g、R、Tとすると、化学ポテンシャルの項に重力による外力の項を加えて、
で与えられる。ここで、M*は原子jのモル体積当たりの溶媒の有効質量で、化学ポテンシャルによる拡散係数と沈降の拡散係数、D′ii1、D′ii2は以下の式(2)のように表される。
ここで、L′ij、m、kは格子に沿った拡散の現象論的係数、化学ポテンシャル、ボルツマン定数である。さらに、円柱座標系の遠心力場におけるフィックの第二法則に対応する拡散方程式は次の式(3)で与えられる。
式(1)を解くことにより、多成分系の定常状態の濃度分布を計算することができる。また、式(3)を解くことにより、濃度の時間変化を計算することができる。原子間に相互作用のない理想系では活動度係数:γを1とすればよい。化学結合がある場合や分離系である場合、理想系とは異なってくる。もし化学ポテンシャルが濃度の関数(すなわち拡散係数行列)としてわかっている場合、いかなる系においても濃度分布を厳密に計算することができるが、拡散係数の非対角線要素はよくわかっていない場合、対角線要素(Dii1)の効果のみを考え、対角線要素を沈降の拡散係数(Dii2)で割った値、Qii(Dii1/Dii2=1+∂lnγ/∂lnc)を変えて計算を行う。濃度と密度の変化は活動度係数の減少と共に顕著になり、より低いエネルギーで達成されるようになる。活動度係数が大きい場合、原子間に引力が働き拡散は起こりにくくなる。
二成分系で、原子容が同じ(a=1)、Qil=D′il2/D′ii=0の場合、定常状態の解(時間が十分たったときの濃度分布)は
式(4)で表される。ここで、Eは半径rでの原子aと原子bの位置エネルギーの差で示す式(5)で表わされる。
bは回転中心での原子aと原子bの原子の濃度の比(β=Ca0/Cb0)である。
遠心力が大きいほど達成される同位体存在比の傾斜が大きくなる。具体的には遠心力はロータを回転させることで発生するが、低温時のほうがロータに用いている材料の強度が高くなるので、より高い回転数で回転させより高い遠心力を得ることができる。したがって、対象とする材料の融点は低い方が望ましい。また、上記より、用いる凝縮状態の物質は濃縮が現実に起き、その時間をなるべく小さくするために、濃縮処理する条件下で、できるだけ拡散係数が大きい方が望ましい。これらの条件を達成するためには、単体ではなく、合金や金属間化合物、ハロゲン化合物、カルコゲン化合物、超イオン伝導体、不定比化合物を用いると有利に行えるので、これらも発明の条件となりうる。
ガスでは状態方程式に基づいた理論で解析され、原子同士の衝突は極めて少ないので相互作用は無視でき、ほぼ理想状態になる。これに対して、凝縮状態の物質(液体や固体)では原子同士が隣り合っているので、高加速度場下では理想系からはずれ、化学活動度(γ)が理想状態(γ=1)からはずれ、生じる同位体の存在比の傾斜は大きくなる。高加速度場下では活動度係数は実施例にもあるように1以下になり、濃縮率も理想系よりも大きくなる。同位体同士では化学的結合は生じないのでこれによっても濃縮率は高くなる。
具体的には式(4)より、Qが小さい方が、すなわち、沈降の拡散係数が化学ポテンシャルの拡散係数(普通の拡散係数)より大きい方が、あるいは活動度係数が小さい方が、濃縮率が高くなる。従って、気体より凝縮体の方が同位体の濃縮には有利になる。また凝縮体の中で、Qの小さな系の物質を用いることも有利にするために重要である。
(物質に関して)
また、高加速度場下で活動度係数が小さくなる物質が同位体濃縮にとって有利である。従って、本発明では濃縮処理するにあたって、処理する物質がその条件下で凝縮体であって、濃縮したい元素に対して、高い濃縮率を達成できる、組成、構造、熱力学的条件を満たす物質を特定することが重要な要件となり、発明の条件となりうる。
実施例で明らかにしたように、Se,Se−Te合金、AgIなどではQが1以下で、気体より定常状態で濃縮率が上回っている実験結果を見出しており、同位体同士でも、非理想系の拡散系になることが明らかとなったが、この効果は本発明の固体や液体の凝縮状態の物質を用いた濃縮方法の発明を支える重要な要素である。
本明細書では遠心力処理の対象とする物質は凝縮状態の物質(固体又は/及び液体)であるが、場合によって材料または試料と呼ぶ。
(ロータに関して)
凝縮状態の物質を対象とする場合、原子の沈降によって濃縮を起こさせる沈降槽を密閉する必要がなく、一つのロータ内に2つ以上の沈降槽を設けることができる。また、材料は流動によって移動させることができる。これは発明の重要な要素である。
また、材料を流動させて移動させることにより、複数のロータ、超遠心機を結合させ多段化したり、カスケード化して濃縮率を上げることが可能である。これは発明の重要な要素である。
(本発明の着眼点及び特徴)
本発明は凝縮状態の物質(固体や液体)中の同位体原子の沈降現象に着目して、同位体の濃縮を実現したことそのものが世界的に初めての成果であり、この現象を用いた同位体の濃縮は世界でも全く例のないものである。本研究開発では、これまでとは異なった原理による同位体濃縮技術を開発・提供する。すなわち、高加速度場、高温における凝縮状態の物質系の沈降原理を利用した、より効率の高い、経済的な同位体濃縮技術を開発・提供しようとするものである。液体や固体は物質密度が気体の10倍以上で、装置、システムの規模を小さくすることができる。
基本原理で述べたように固体、液体では原子同士の相互作用によって定常状態の濃縮率が高くなる。実際にこれまでの研究によって気体の遠心力分離に比べて大きい濃縮を、物質によっては2倍程度の濃縮を見出している。同位体の沈降に関する研究はまだ始まったばかりで、適当な処理条件を見つけることによりさらに高い濃縮率が達成できる見込みである。
従って、本発明を利用すると、気体の状態で処理するガス遠心力法にくらべて濃縮率を上げることができ、システムを大幅に小型化できるので原理的に考えると大幅なコストダウンが期待される。この成果を利用するウラン濃縮技術は、例えば高い濃縮率の期待、腐食性ガスを利用しない高安全性、コンパクトな設備で経済的、独自の技術などが特徴であり、上記の技術的課題を解決できる。
既に述べたように、凝縮相では、気体と異なり原子間同士の相互作用が強く、高いか速度場下では理想系からはずれ、原子の沈降によって達成される同位体存在比の変化が大きくなるので、物質の状態によっては濃縮の効率を上げることができる。従って、凝縮状態の物質を用いた同位体の濃縮法では、活動度係数が小さくなるような物質の形態、結合状態、結晶状態などの選択が発明上重要となる。
同位体の濃縮においては大きな拡散係数と高い濃縮率を達成するために用いる物質の状態と処理する温度を特定することが重要である。このためには扱う物質の拡散係数や活動度係数などが重要になる。物質の拡散係数は固体より液体の方が一般に大きい。活動度係数は物質によって異なるが、これが小さくなると原子の沈降によって達成される同位体存在比の変化が大きくなり濃縮の効率は上がる。ここで、固体では例外を除いて、先に述べたように再結晶温度以上でないと実用上十分な拡散係数は得られない。また、凝縮状態の物質中の原子の沈降には少なくとも10万G以上の高い加速度場が必要であるが、しかしながら、温度が高くなればなるほどロータ材料の強度は小さくなるため、高い加速度場を得るにはできるだけ低い温度で遠心処理するのが望ましい。また、式(5)に示すように、温度が低くければ低いほど重力による同位体原子間のポテンシャルエネルギーの差が大きくなるので定常状態の濃縮率は高くなる。従って、濃縮したい同位体元素単体の融点が高い場合、出発状態で同位体元素を含む固溶体や化合物などを材料に用いると濃縮は有利になる。
固相の場合、一般的に拡散係数は液体状態よりも小さくなる。濃縮は工業的に採算のとれる時間内で行う必要があるので、拡散係数が10−12cm/s以上であることが望ましい。この拡散係数は物質にもよるが、拡散係数が10−12cm/s以上になる温度は、単体物質で、BCC(体心立方)構造系の物質系では融点の0.55〜0.65倍程度以上、FCC(面心立方)構造系やHCP(六方細密)構造系の物質では融点(絶対温度で)の0.65〜0.75倍程度以上、ダイヤモンド構造系では0.75〜0.9倍程度以上である。拡散現象は一般的に再結晶温度以上で顕著となる。原子の沈降も拡散現象の一つであるので少なくともこの温度以上で処理することが望ましい。従って、固相の場合、濃縮したい元素を含有する材料の再結晶温度以上の温度で処理することが必要である。実際に実施例のSe,Se−Te.In−Pb,In−Biの場合で、同位体原子の沈降は再結晶温度以上で、融点の0.75以上の温度で顕著に観察することができた。ただし、超イオン伝導体や不定比化合物の拡散係数は温度よりも構造に依存し、再結晶温度以下でも顕著な拡散が起こるので、再結晶温度以下でもよい場合もある。これは、AgIでSe,Se−Te.In−Pb,In−Biの場合より低い温度(融点の0.65以下)下で著しい同位体の沈降が観察できたことから明らかである。再結晶温度以上であれば融点以上でも構わない。例外を除いて、固体状態よりも液体状態の方が拡散係数は大きい。
ここで、再結晶温度を説明しよう。冷間加工によって加工硬化した材料をある温度まで加熱すると急に軟化するが、これは、加工によって変形した結晶が、多角形の細粒に分割結晶するためで、増加していた転移も消滅し、結晶粒は内部ひずみを持たない安定したものとなる。これを再結晶といい、この再結晶の始まる温度を[再結晶温度]という。再結晶温度は融点の1/2程度以上の温度(絶対温度)の物質が多く、合金や化合物ではそれより大きいものが多い。再結晶は拡散現象と大きく関係しているので、本濃縮法の最低温度に再結晶温度を使うことは妥当である。
再結晶温度や拡散係数は融点と密接な関係にあり、再結晶温度はおよそ融点に比例し、物質の拡散係数は融点に近くなると対数比例で上昇し、単体の場合、実用的な10−12cm/s以上になる。合金や化合物ではさらに大きくなる。
物質の融点は、固溶体では組成に応じて構成元素単体の融点の間にあるか低くなる。化合物を作る系では化合物は組成に応じて構成元素単体の融点より高くなったり、その間になるが、液相固相混合相や固溶相は間にあるか低くなる。従って、濃縮したい同位体で構成される元素の融点が高い場合、低い融点の元素との固溶体や化合物を用いて融点を下げたり、拡散係数を上げることができる。しかしながら、Si−Au系のようにSi,Auとも融点が高いが固溶体では格段に下がるものがあるので、この限りではなく、固溶体や化合物の融点が低いものが望ましい。
合金や化合物では、異種元素の拡散係数は原子半径が異なるので、単体の自己拡散より拡散係数が大きくなる。実験時間で達成される原子の沈降によって達成される濃度分布は拡散係数の大きさと理想系(活動度係数が1)からのズレによって決まるが、このことは実施例のSe−Te合金中のSe同位体存在比の変化がSe単体中よりも2倍程度大きかったことから伺える。化合物の場合、格子間距離が一般に大きくなるので拡散係数は大きくなる場合が多い。特に、ハロゲン化合物、カルコゲナイド化合物は融点も低く、ハロゲン元素、カルコゲン元素の原子容が大きいので、低密度な構造になり拡散係数も大きいものが多い。特に超イオン伝導体の拡散係数は格段に大きい。このことは多くの物質では定常状態の濃度分布を達成するのに100時間程度の時間が必要だったのに対し、実施例のAgIでは24時間で100時間と同程度の濃度分布が得られたことから明らかである。金属間化合物ではイオン結合性や共有結合性が低いので、活動度係数も小さく、また、拡散係数も比較的大きい。InBiの実施例にあるように実際に同位体の沈降を確認している。また、遷移元素や希土類元素など構成元素の原子価数が変化する不定比化合物では、原子が動き易く、また、空孔など欠陥もできやすいので拡散係数が大きくなる。
ここで超イオン伝導体について説明しておこう。超イオン伝導体とは、見かけは固体なのに、その中をイオンが高速で移動し、溶融塩や電解質溶液と同程度のイオン伝導度を示す物質の総称である。例えば、α−ヨウ化銀(α−AgI)は、代表的な超イオン伝導体である。146℃以上では、結晶でありながら、1.3S/cmの銀イオン伝導度を示し、555℃で融解するとかえってイオン伝導度は低下する。銀イオンは、12dサイトのうち4ヶ所にランダムに存在し、残りは空孔になっている。銀イオンは絶えずその位置を変え、電場をかけるとその方向に移動してイオン伝導を示す。これは、ヨウ素イオンは結晶格子を作り、銀イオンはその隙間で液体のように振る舞うというということで、副格子融解(sublattice melting)と呼ばれている。
超イオン伝導体は、液晶や柔粘性結晶と同じように、固体と液体の中間(メソフェーズ)と言える。超イオン導電体には、この他に、蛍石(CaF)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、Na−βアルミナ、ホランダイト、BaCeO等が良く知られている。また、ガラスや高分子でも超イオン伝導性を示す物質が見いだされ、超イオン伝導ガラス、高分子固体電解質などと呼ばれている。超イオン伝導体がなぜ高いイオン伝導性を示すのかは、(1)イオンが動きやすい特殊な構造を持つこと、(2)イオンは個別ではなく集団で動くこと、(3)イオンが動くとき電子軌道の再編を伴うこと等が分かってきている。従って、先に述べたように超イオン伝導体の拡散係数は温度より構造に大きく依存するので、再結晶温度以下でも十分な沈降が可能である。
ここで不定化合物について説明しておこう。不定比化合物は非化学量論的化合物ともいう。不定比性を持つ化合物。ドルトンの倍数比例の法則、プルーストの定比例の法則などがあるが、ベルトレ(C.L.Berthollet)は組成の連続変化の可能性を主張したが、8年間による論争の末、プルーストに軍配が上がった。しかし、1950年頃から不定比化合物の存在が次第に明らかになり、ベルトレの名を冠して、不定比化合物をベルトライド化合物と呼ぶ。この不定比性は構成元素が原子価数を変えられる場合、化合物を構成する元素の数の比が整数比にならなくてもよいために生じる。不定比化合物の結晶の不完全性になる場合が多い。この場合、1)侵入型、2)格子欠陥型、3)固溶体型などがある。従って、不定比化合物の拡散係数は空孔などの欠陥が入りやすく、また、結合力が弱く、化学的性質や構造に大きく依存するので、再結晶温度以下でも沈降が可能である。
本発明の方法で濃縮を行おうとするとき、濃縮したい同位体元素が標準状態で気体である場合は、冷却して液体や固体にする必要がある。この物質系は単原子または分子のファンデアワールス結合による凝縮体であるので、結合が弱く、原子・分子間距離が大きいので、基本的に拡散係数は大きい。しかし、温度を低くすればするほど重力による同位体原子間のポテンシャルエネルギーの差が大きくなるので定常状態の濃縮率は高くなる。
超遠心機には試料にたとえば10〜150万Gレベル、周速にすると100から800m/s程度のエネルギーの加速度場を高温で長時間発生可能な遠心機を用いる。
本発明では、凝縮状態の物質を用いるので、各沈降槽を密閉する必要がないため、一つのロータ内に2つ以上の沈降槽を設ける多段ロータを提案する。
本発明では複数のロータ、超遠心機を結合させ多段化したり、カスケード化して濃縮率を上げる。
ロータは、ロータ内壁に複数の沈降槽を有した多段式濃縮ロータである。ロータ外部から濃縮したい凝縮状態の材料を一つ目の沈降槽に供給する。一つのロータ内に多段の処理槽を設け、処理する物質の軽い同位体を多く含む部分が流動して処理槽を次々と溢れ出て、2つ以上の処理槽を通過し、重い同位体を多く含む部分がより前の段のロータ内に残留して濃縮率が上がる。
各同位体の濃度分布は同位体では原子容が同じなので定常状態では傾きが一定の直線上になるので、濃縮率を上げるためには沈降槽の深さをなるべく大きくする。
濃縮したい材料が液体の場合、各沈降槽では、回転中心方向に温度が高くなるように温度勾配をつけると、マクロな対流を防ぎ、沈降による濃縮を効率的に行うことができる。
また、特に液体の場合、各沈降槽の出口の回転中軸からの高さが同じであると逆流する可能性があるので、高さを段々低くすると逆流を防ぐことができる。
各沈降槽への材料の移動は、固体の場合は強い遠心力によって引き起こされる塑性流動現象を利用して実する。
最終的に、試料は供給した量だけロータ外に排出される。流動により材料が次々とロータ内の沈降槽を移動している間に、重い同位体は沈降槽に沈降し、軽い同位体はロータ外に排出される傾向が高くなる。このプロセスを長時間繰り返すことで、重い同位体を沈降槽に軽い同位体をロータ外に濃縮することが可能である。
また、ロータ外に排出された材料を再び同一のロータに循環させ濃縮効率を上げることができる。
前記ロータの沈降槽の底部から取り出した材料を別のロータに次々と供給し、さらにそのロータの沈降槽の底部から取り出した材料を別のロータに供給するというように、次々と超遠心機を結合させることにより濃縮率を上げることが可能である。
本発明に従って、凝縮状態の物質を超遠心力処理することによって同位体を濃縮・分離する方法を利用すれば、二つ以上の異なる同位体により構成された液相状態、固相状態又は液相・固相混合状態の物質を用いるので、気相そのままの状態で処理するガス遠心力拡散処理する方法に比べ、その密度が1万倍以上高いため効率よく同位体を濃縮することができる。
原子の沈降によって濃縮を効率的に行うには、扱う物質の拡散係数や活動度係数などが重要になる。気体のままでは原子同士の相互作用が極めて弱いので、理想系の拡散になるのに対して、固体や液体など凝縮状態の物質では、原子同士の相互作用により、非理想系になり、活動度係数が小さくなり、沈降の拡散係数が化学ポテンシャルによる拡散係数より大きくなり、理想系より濃縮率が増大する。
物質の拡散係数は固体より液体の方が一般的に大きいので、この点だけからすれば液体の方が濃縮は有利である。しかしながら、液体の方が化学ポテンシャルが大きくなり、達成される濃縮率が小さくなる場合があるのに対し、固体であっても拡散係数の大きな物質や活動度係数が下がる物質もあり、固体の方が有利な場合がある。また、固体を用いる方が対流を防げるので固体を用いた方が有利な場合がある。
固体では例外を除いて再結晶温度以上でないと工業的な時間内に原子は移動しない。さらに云うと、濃縮は工業的に採算のとれる時間内で行う必要があるので、拡散係数が10−12cm/s以上であることが望ましい。この拡散係数は物質にもよるが、単体物質で、BCC(体心立方)構造系の物質系では融点の0.55〜0.65程度以上、FCC(面心立方)構造系やHCP(六方細密)構造系の物質では融点の0.65〜0.75程度以上、ダイヤモンド構造系では0.75〜0.9程度以上である。拡散現象は一般的に再結晶温度以上で顕著となるといえる。原子の沈降も拡散現象の一つであるので少なくともこの温度以上で処理することが望ましい。一方、原子の沈降にはたとえば10万G以上の高い加速度場が必要である。
しかしながら、温度が高くなればなるほどロータの強度は小さくなるため、高い加速度場を得るにはできるだけ低い温度で処理するのが望ましい。従って、濃縮したい同位体元素単体の融点が高い場合、同位体元素を含む固溶体や化合物を材料に用いると濃縮は有利になる。物質の融点は、固溶体では組成に応じて構成元素単体の融点の間にあるか低くなる。Kunakov型合金では低くなる。
化合物を作る系では化合物は組成に応じて構成元素単体の融点より高くなるものが多いが、液相固相混合相や固溶相は間にあるか低くなる。従って、濃縮したい元素の同位体の融点が高い場合、低い融点の元素との固溶体や化合物などからなる物質を用いると、濃縮が可能になる。しかしながら、Si−Au系のようにSi,Auとも融点が高いが固溶体では格段に下がるものがあるので、この限りではなく、固溶体や化合物の融点が低いもの望ましい。
また、合金や化合物の拡散係数は異なる元素原子の原子半径が異なるので、単体の自己拡散より拡散係数が大きくなる。また、化合物の場合、格子間距離が一般に大きくなるので拡散係数は大きくなる場合が多い。特に、ハロゲン化合物、カルコゲナイド化合物は融点も低く、ハロゲン元素、カルコゲン元素の原子容が大きいので、低密度な構造になり拡散係数も大きいものが多い。特に超イオン伝導体の拡散係数は固体であっても液体と同等かそれ以上であるほど格段に大きい。
また、遷移元素や希土類元素など構成元素の原子価数が変化する不定比化合物では、原子が動き易く、また、空孔など欠陥もでき安いので拡散係数が大きくなる。不定比化合物にはBerthollide型合金や価数の代わりやすい遷移元素や希土類元素など構成元素の酸化物、窒化物、カルコゲナイドなどに多く存在する。後者では酸素、窒素、カルコゲン元素の拡散係数は大きい。従って、本発明の凝縮状態の物質を用いて同位体の濃縮法では、有利な物質の形態、結合状態、結晶状態などを選択する。
上記より、同位体の濃縮にも合金や化合物を用いれば、単体を用いる場合よりも低い温度で超遠心処理を行うことができ、強度の大きなロータの材料を使うことができるので発生する重力、ロータの寸法、処理する物質の量も多くでき、結果的に、濃縮の効率が上がり、コストも低くできる。
本発明で濃縮したい同位体元素を含む物質が標準状態で気体である場合は、冷却して液体や固体にする必要がある。この物質系は単原子または分子のファンデアワールス結合による凝縮体であるので、結合が弱く、原子・分子間距離が大きい。このため、基本的に拡散係数は高い。ここで、液体状態では拡散係数はあまり変化しないためなるべく低い温度で濃縮を行った方が重力による同位体原子間のポテンシャルエネルギーの差が大きくなるので定常状態の濃縮率は高くなる。また、温度が低い方がロータの強度を確保できるためより高い加速度場を稼ぐことが可能となり、この観点からも、液体状態では処理温度は低い方が有利である。
本発明では一つのロータを多段型にすることによって一つのロータの濃縮率を格段に上げることができる。さらに、これらを多段化やカスケード化することもできる。また、取り扱う物質の状態が凝縮状態であるため、極めて小さな設備で大きな濃縮率で同位体濃縮を実現することができる。
多段式濃縮ロータでは、ロータ外部から濃縮したい凝縮物質(材料)を一つ目の沈降槽に供給すると、一つのロータ内に多段の処理槽を設けるが、軽い同位体を多く含む部分が流動して処理槽を次々と溢れ出て、2つ以上の処理槽を通過し、重い同位体を多く含む部分がより前のロータ内に残留して濃縮率を上がる。最終的に、材料は供給した量だけロータ外に排出される。流動により材料が次々とロータ内の沈降槽を移動している間に、重い同位体は沈降槽に沈降し、軽い同位体はロータ外に排出される。
各同位体の濃度分布は同位体では原子容が同じなので定常状態では傾きが一定の直線上になる。このため、沈降槽の深さをなるべく深くすると濃縮率が上がる。
ロータ外に排出された材料を再び同一のロータに循環させると濃縮効率を上げることができる。
前記ロータの最前段の沈降槽の底部から取り出した材料を別のロータに次々と結合させると濃縮率を上げることができる。
材料が液体の場合、各沈降槽では、ロータ外周側より回転中心の方が温度を高くすると、マクロな対流防ぐことができ、沈降による濃縮を効率的に行うことができる。
各沈降槽の出口の回転中心軸からの高さが同じであると逆流する可能性があるので、高さを段々低くすると逆流を防ぐことができる。
ロータ内の各沈降槽への材料の移動は、試料が固体の場合は強い遠心力によって引き起こされる塑性流動現象を利用できる。
また、腐食性ガスを利用する必要がないので、高い安全性、コンパクトな設備で経済的であり、独自の技術への更なる発展が期待される。従って、この方法を用いるとシステムを大幅に小型化できるので原理的に考えると大幅なコストダウンが期待される。
(分離・濃縮する方法)
超遠心機には材料に10〜150万Gレベル、周速にすると100から800m/s程度のエネルギーの遠心加速度場を高温で長時間発生可能な遠心機を用いる必要がある。例えば、熊本大学、日本原子力研究開発機構(旧日本原子力研究所)で開発された超重力場発生装置などはこの性能を満たしている。さらに、ロータの大きさ、運転時間の長い装置が望まれる場合が多い。このような状態は単体物質よりも複数の元素からなる合金や化合物などで実現できる可能性が高い。
超遠心機を用いて例えば10万Gレベル以上の加速度場を発生する。試料の温度を融点以上もしくは再結晶温度以上、融点直下に保ち、拡散現象を促す。遠心力を加えることで、原子にボディーフォースを発生させ、この拡散現象に方向性を持たせる。これにより、原子容が小さく、原子量が大きい、すなわち原子の密度に相応する値が大きな同位元素が重力方向に、軽い同位元素が重力と反対方向に拡散する確率が高くなる。拡散は時間依存性が大きいため、試料を長時間遠心力場下に置くと大きな同位体の存在比の変化が生じることになる。原子容が同じ場合、実施例にあるように定常状態の濃度分布は一定の傾きを持つ直線的な濃度分布になるので、沈降槽の深さは大きいほど濃縮率は上がることになる。
既に述べたように、凝縮相では、気体と異なり原子間同士の相互作用が強く、超重力場下では理想状態からはずれるが、その外れ方が顕著な、すなわち、高加速度場下で活動度係数が1以下のなるべく小さくなる物質を選択することも重要である。
物質の拡散係数は固体より液体の方が一般に大きいので、活動度係数が大きくならない場合や、対流の問題が生じない場合は液体状態の方が濃縮は有利である。(液体の拡散係数は10−7cm/s程度)。固体では例外を除いて再結晶温度以上でないと工業的な時間内に原子は移動しない。原子の沈降には10万G以上の高い加速度場が必要で、加速度場はより高い方が有利である。従って、それに耐えるロータの材料の強度を考えた場合、極低温は除いて、温度は低い方が重力場を大きくすることができ有利である。
濃縮したい同位体元素単体の融点が工業的に拡散が実現しないほど高い場合、同位体元素を含む固溶体や化合物を材料に用いるとよい。物質の融点は、固溶体では組成に応じて構成元素単体の融点の間にあるか低くなる。化合物を作る系では化合物は組成に応じて構成元素単体の融点より高くなるものが多いが、液相固相混合相や固溶相は間にあるか低くなる。従って、濃縮したい元素の同位体の融点が高い場合、低い融点の元素との固溶体や化合物などからなる材料を用いる。
この観点から、Li,K,Ca,Ga,In,Sn,Pb,P,As,Sb,S,Se,Te,Zn,Cd,Hgなど融点の低い元素を含む合金や金属間化合物を含む化合物は融点の観点から濃縮が有利になる。ハロゲン化物やカルコゲン化合物もこの点から有利である。しかしながら、Si−Au系のようにSi,Auとも融点が高いが固溶体では格段に下がるものがあるので、この限りではなく、固溶体や化合物の融点が低いもの望ましい。
また、合金や化合物の拡散係数では単体の自己拡散より拡散係数が大きくなる。実際、実施例示したようにSe−Te系の固相状態では、Se単体の固相状態よりも2倍程度高い濃縮率が確認されている。化合物の場合、格子間距離が一般に大きくなるので拡散係数は大きくなる場合が多い。特に、ハロゲン化化合物、カルコゲナイド化合物は融点も低く、ハロゲン元素、カルコゲン元素の原子容が大きいので、低密度な構造になり拡散係数も大きいものが多い。
濃縮は工業的に採算のとれる時間内で行う必要があるので、拡散係数が10-12cm/s以上であることが望ましい。この拡散係数は物質にもよるが、単体物質で、BCC(体心立方)構造系の物質系では融点の0.55−0.65程度以上、FCC(面心立方)構造系やHCP(六方細密)構造系の物質では融点の0.65−0.75程度以上、ダイヤモンド構造系では0.75−0.9程度以上である。合金や化合物ではそれ以上のものが多い。これらの温度は拡散現象と関連の深い再結晶温度以上なので、これらの物質の場合、処理温度は再結晶温度にする必要がある。
特に超イオン伝導体の拡散係数は固体であっても液体と同等かそれ以上であるほど格段に大きい。また、遷移元素や希土類元素など構成元素の原子価数が変化する不定比化合物では、原子が動き易く、また、空孔など欠陥もでき安いので拡散係数が大きくなる。遷移元素や希土類元素など構成元素の酸化物、窒化物、カルコゲナイドなどでは酸素、窒素、カルコゲン元素の拡散係数は大きい。
超イオン伝導体や不定比化合物では拡散係数は温度より、結晶構造や欠陥構造などに依存するので、処理温度は再結晶温度より低くても十分な拡散係数が得られる。このような場合、処理時間も短くできる。実際、実施例で示したようにAgIでは上記の温度以下で十分な沈降が確認され、また、他の合金系に比べて短い処理時間で定常状態に近づいており、極めて速いしょりが可能であることがわかる。従って、本発明の凝縮状態の物質を用いて同位体の濃縮法では、上記の材料を目的に応じて用いる。
濃縮したい同位体元素が標準状態で気体である場合は、冷却して液体や固体にする必要がある。この物質系は単原子または分子のファンデアワールス結合による凝縮体であるので、結合が弱く、原子・分子間距離が大きいので、基本的に拡散係数は高い。しかし、式(4)および(5)から、温度が低い方が分母が小さくなり、重力による同位体原子間のポテンシャルエネルギーの差が大きくなるので定常状態の濃縮率は高くなる。また、液体状態では拡散係数はあまり変化しないので、液体状態では処理温度は低い方が有利である。
濃縮したい同位体元素を含む物質が標準状態で気体である場合は、その設定温度は圧力の効果を考える必要がある。例えば対象となるそのような物質の中で昇華点が高い二酸化炭素の場合、昇華点が−78.9℃であるが、圧力が上がると沸点が上がるので、昇華点が一番高いと考えられる二酸化炭素ではたとえば72.9気圧での超臨界点が31℃であり、高重力場下では圧力も上がるので具体的には、100℃程度以下での処理が望ましい。
超遠心機には材料に10−150万Gレベル、周速にすると100から800m/s程度のエネルギーの遠心加速度場を高温で長時間発生可能な遠心機を用いる。加速度場、エネルギーは大きい程よいが、ロータの強度、運転時間などによって制限される。拡散係数が小さい場合は運転時間を長くすることが必要になる。
本発明では凝縮状態の物質の特徴を利用して、2つ以上の沈降槽を一つのロータ内に設け、液体または固体の流動を用いて、一つロータで多段濃縮を行うことが特徴である。凝縮物質の特徴を利用して、2つ以上の沈降槽を一つのロータ内に設け、液体又は固体の流動を用いて、一つのロータで多段濃縮を行う。図3Aは、ロータ内のみでの濃縮の進行状態を示す図解である。図中、参照番号21は凝縮物質(固体又は液体)を供給する状態を示し、同22は凝縮物質(固体又は液体)を示し、同23は流動による移動(固体又は塑性流動)を示し、同24は強い遠心力を示し、同25は凝縮状態の物質を示す。図3Bは、複数のロータをカスケードに組んだ場合の凝縮物質の移動状況を示す図である。図中、参照番号26は排出を示し、同27は次の遠心機への移送を示す。図3Cは、同再循環させる場合の凝縮物質の移動状況を示す図である。
さらに、濃縮率を上げる場合はこれらを多段化したり、カスケード化する。その結果、ガス拡散法やガス遠心法に比べて、極めて小さな設備で大きな濃縮率での同位体濃縮を実現することができる。
重い同位体を多く含む試料をロータから排出し、図3Cのように一つ以上の沈降槽が設けてあるロータから外に排出された軽い同位体を多く含む材料を再び同一ロータに循環させることにより濃縮効率を上げることができる。
前記ロータの最前段の沈降槽の底部から取り出した材料を別のロータに次々と供給し、さらにそのロータの沈降槽の底部から取り出した材料を別のロータに供給するという風に、次々と超遠心機を結合させることにより濃縮率を上げることが可能である。これらのロータまたは遠心機を複数結合させて用いてカスケード化が可能である。
固体の場合、材料の強度を超える応力が発生するような十分に強い加速度場下では、塑性変形に伴う塑性流動が顕著に起こる。0.5mm程度のピンホールでも固体状の試料は塑性流動により流れることをこれまでに確認している。この濃縮用ロータはこの塑性流動現象を各沈降槽間、試料滴下部での材料の移動手段として積極的に利用したものである。強い遠心加速度場下で生じる塑性流動現象を物質移動に利用する方法の前例はなく、これは本発明を支える重要な要素の一つである。
同位体では原子容が同じなので遠心処理を十分に施した状態(定常状態)では同位体の存在比は傾きが一定の直線状になるので、濃縮率を上げるために沈降槽の深さをなるべく大きくする。
材料が液体の場合、各沈降槽では、外側よりか移転中心の方が温度を高くすると、マクロな対流を防ぐことができ、沈降による濃縮を効率的に行うことができる。特に液体の場合、各沈降槽の出口の回転中心軸からの高さが同じであると逆流する可能性があるので、逆流を防ぐために高さを段々低くする。
ロータ内の各沈降槽への材料の移動は、材料が固体の場合は強い遠心力によって引き起こされる塑性流動現象を利用する。
(ロータについて)
原子の沈降には10万G以上の強い加速度場が必要である。しかしながら、温度が高くなればなるほどロータの強度は小さくなるため、高い重力場を得るにはできるだけ低い温度で処理するのが望ましいことになる。従って、濃縮したい同位体元素単体の融点が高い場合、同位体元素を含む固溶体や化合物を材料に用いると濃縮は有利になる。ロータ材料は現在チタン合金で400℃までで、周速500m/s程度までの回転に耐える。インコネル合金で600℃までで、周速400m/s程度まで耐える。MA合金で1000℃までで、周速200m/s程度まで耐える。
処理する温度は具体的には、ロータ材料の強度の観点から800℃以下が望ましい。好ましくは600℃以下が望ましい。従って、温度が低いほど高い加速度場の発生が可能で、濃縮率も高くなる。将来、たとえば高温で強度の大きな材料のロータが開発されたり、ロータの製造技術、冷却方法の開発が進むにつれて処理温度を上げていくことが可能である。ロータの材料ではたとえばセラミックスや金属とセラミックスなどの複合材料など高温高強度材料などの開発があげられる。
高加速度場を発生させる装置としては、例えば、高温かつ、最大、加速度最大100万Gレベル以上の高加速度場を長時間安定的に発生させることができる超重力場発生装置(特開2003−103199号公報、特開平9−290178号公報参照)を用いることができる。この超重力場発生装置は、例えば試料を充填するためのカプセルを格納可能なロータ、およびロータ駆動用のエアタービンなどを備える。
ロータとしては、例えば、外径80mmまたは46mmのTi(チタン)−6Al(アルミニウム)−4V(バナジウム)合金製のもの、カプセルとしては、例えば内径5mmまたは3mmのTi−6Al−4V合金製またはSUS304製のものをそれぞれ用いることができる。(図4参照)この超重力場発生装置では、エアタービンで加熱されたカプセルを、例えば十数万rpm以上22万rpm以下で高速回転して高加速度場を発生させることができる。
本発明の多段式濃縮ロータの概念図を図2Aに示す。ロータ内壁に複数の沈降槽を有した多段式濃縮ロータである。ロータ外部から濃縮したい凝縮物質を一つ目の沈降槽に供給する。この沈降槽が飽和すると、次の沈降槽へ試料の移動が始まる。各沈降槽への材料の運搬は、液体流動や強い遠心力によって引き起こされる塑性流動を利用する。最終的に、最後の沈降槽が満杯となる。それまでの行程で液体流動や塑性流動により材料が次々とロータ内の沈降槽を移動している間に、重い同位体はより前の沈降槽に多く沈降し、軽い同位体はより遠くの沈降槽へ移動する傾向が高くなる。このプロセスによって、初段に近い沈降槽ほど重い同位体の濃度が高く、後ろの段に行くにつれ軽い同位体の濃度が高くなる(図3A参照)。
また、最後の段が飽和した後も材料の供給を続けると、供給した分だけ材料が排出されるが、この排出された材料を次の遠心分離機に供給して、いわゆるカスケード化させて濃縮率を上げることができる(図3B参照)。
次段の沈降槽3への材料の移動は、沈降槽の容積を超えて供給された材料が流動して移動することで行われ、特に固体状態での濃縮の場合は、材料の運搬に世界でも前例のない運搬方法として強い遠心力によって引き起こされる塑性流動現象を利用する。
図2Bに示す斜視図を使って詳述すると、ロータ1の各沈降槽間の壁には例えば180度対称となる位置に連絡溝6a,6b,6cを設け、そこから次段の沈降槽へ材料を流動させるようにしむけると、各沈降槽への流入から排出までの経路を最長にとる事ができ濃縮効率を上げる事ができる。最終的に、すべての沈降槽が満杯になった後は材料は供給した量だけ、連絡溝6cを介してロータ1外に排出される。これまでの行程の流動現象により材料が沈降槽2から沈降槽3、沈降槽3から沈降槽4へと移動してゆく間に、強い遠心力による原子の沈降現象によって重い同位体は沈降槽に沈降し留まり、軽い同位体はロータ1外に排出される傾向が高くなる。このプロセスを長時間行うことで、重い同位体を各沈降槽に残留させ、軽い同位体が多くなった材料をロータ外に排出する事により、同位体の濃縮が可能である。
また、重い同位体を多く含む材料をロータから排出し、一つ以上の沈降槽が設けてあるロータから外に排出された軽い同位体を多く含む材料を再び同一ロータに循環させ濃縮効率を上げることが可能である。この場合は、排出した重い同位体を含む材料分だけ、新しい材料を供給し、排出した重い同位体を含む材料を別のロータに供給すれば効率が上がる。
重い同位体を取り出す方法として、最後の沈降槽が飽和した段階で、たとえば運転中に各沈降槽に設けたバルブなどを開閉して取り出すか回転を下げるか、運転を止めてバルブを開いたり、中心方向から取り出す方法などが考えられる。液体状態ならば、たとえば、ロータの回転速度を一旦下げて、各沈降槽に溜まっている液体を別々にすくいだすことで初段に近いほど重い同位体が多く、最後の沈降槽に近いほど軽い同位体が多く含まれる濃縮率の異なった材料を回収することができる。
固体状態の場合や温度を下げることで固体にできる材料の場合は、たとえば、ロータの回転速度を一旦下げて、内面研削ができる装置を用いて、各沈降槽に溜まっている材料を削りだすことで、初段に近いほど重い同位体が多く、最後の沈降槽に近いほど軽い同位体が多く含まれる濃縮率の異なった材料を回収することができる。また、回転を止めて固化している材料を各沈降槽ごとに溶かして取り出すということもできる。
後の沈降槽が飽和したのちも遠心処理を続ける場合は、材料を供給すれば軽い同位体成分が最も多く含まれる材料が排出されるので、それを回収すれば良い。重い同位体成分は、先に述べた方法と同様な方法で取り出せば良い。また、比較的低い加速度場で濃縮ができる材料については、たとえば、沈降槽の底面に、回転中に開閉可能なバルブのようなものを設けて、各沈降槽ごとに取り出せば良い。
また、複数の遠心機を用いてカスケード化が可能である。
同位体では原子容が同じなので遠心処理を十分に施した状態(定常状態)では同位体存在比の傾きが一定の直線上になるので、濃縮率を上げるためには沈降槽の深さをなるべく大きくする必要がある。
また、特に処理する材料に液体を扱う場合、多段型ロータで各沈降槽の出口(連絡溝6a,6b,6cの底)の回転軸からの距離が同じであると濃縮した部分が逆流する可能性があるので、距離を段々大きくすると逆流を防ぐことができる。
また、各沈降槽では、ロータ外周側より回転中心の方が温度が高い場合、マクロな対流が生じて沈降による濃縮が妨げられる恐れがあるので、ロータ外周側より回転中心の温度を高くするなど、ロータの温度制御を行う必要がある。
原子の沈降理論とこれまでの実験結果から、強い加速度場下での原子の拡散係数は一般的な拡散係数よりも速いことが分かっている。このことから、遠心処理後に温度を下げ、遠心力を取り除いても、同位体の存在比の傾斜が保たれたまま濃縮体を回収することが出来る。この技術では、十分な遠心加速度場と温度条件の得られる超遠心機を用いることが前提であるが、今のところ、熊本大学と日本原子力開発研究機構・先端基礎研究センターでのみこの条件を満たす性能を有した超遠心機が開発されている。
遠心機のロータ取り付け軸の向きによってロータへの材料供給方法を変える必要があり、ロータに設計上の工夫を加える必要がある。具体的には遠心機がロータを吊るして利用するものか、ロータを乗せる形で利用するものか、ロータを鉛直から傾けた状態(−90°<回転軸<90°)で利用するタイプかで工夫をする必要がある。自然界の重力を下向きと考えて図2Aの向きでロータをのせる形で利用する遠心機の場合は、ロータ1内に溶液や粒状の材料を滴下や落下などの方法を用いて供給すれば、遠心力にて沈降槽A(1段目)に材料が移動する。滴下面となるロータ底面7は外周方向である沈降槽A(1段目)への滴下後の材料の移動を助ける目的でスロープを設けるために錐形状とする。
同じく、自然界の重力を下向きと考えて図5A)(断面図)の向きでロータを遠心機に吊るした状態で利用する場合は、ロータ上部に材料供給用の滴下受け入れ部15を設け、溶液や粒状の試料を滴下または落下させ、遠心力で壁面に押さえつけた材料を流動現象、特に固体では塑性流動現象を利用して細孔16を通してロータ内の沈降槽A(1段目)に供給する。ここで、遠心力による応力によって引き起こされる塑性流動現象を物質移動に用いる方法は前例のない運搬方法である。滴下面は外周方向の滴下受け入れ部15への滴下後の材料の移動を助けるため、7と同様の働きをするスロープを付けた錐形状とする。滴下受け入れ部15を設けない場合は、たとえば溶融材料をポンプ等を用いて沈降槽Aに注入、吹き付け等を行えば良い。
同じく、自然界の重力の向きを下向きと考えてロータを鉛直から傾けた状態(−90°<回転軸<90°)で利用するタイプの遠心機の場合は、図2Aと同様の形状のロータを傾けて利用し、溶液や粒状の試料を滴下や落下などの方法を用いて沈降槽Aに供給すればよい。
固体状態での濃縮プロセスにおけるロータ内での材料の移動は、強い遠心加速度場下で見られる特異な現象の一つである組成変形や塑性流動を類のない物質移動の方法として積極的に利用する事により解決される(図3A,3B,3c参照)。液体の流動と同じく滴下により材料が追加供給されることで、余剰の材料が次の沈降槽へあふれ出て移動するイメージでよい。ロータ外での物質移動は固体の場合たとえば粒状にした試料を供給するなどの方法をとる事で解決できるが、液体として流動させる方法をとるのが良い。
液体での濃縮プロセスにおけるロータ内での材料の移動は、全て液体流動により行われるが、液体流動の場合は温度差により対流が生じ、材料が撹拌されるため、同位体の沈降に悪影響を及ぼすことが分かっている。これは遠心処理中にロータの温度を均一に保つことで解決できるが非常に難しい。この場合、ロータ外周の温度をロータ内壁側よりも低く保ち、外周にいくほど液体の密度が大きくなるようにしむける事で解決できる。ロータ1のお椀型の形状の特徴を生かして、ロータ1の加熱装置をロータ内側の空間に設け冷却装置をロータ外側に設ける事で解決できる。
以下、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。超遠心機には試料面に最大100万Gレベルの加速度場を高温で長時間発生可能な遠心機を用いる。現在、熊本大学と日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターにて開発された超重力場発生装置が同等性能を発揮できる世界で唯一の公開された実働の超遠心機である。
実施例1
単体:Se単体:固体と液体
処理する物質が単体金属の実施例として、単体セレニウム(Se)を用いた場合について紹介する。自然なSeでは、Se(0.9%)、Se(9.0%)、Se(7.6%)、Se(23.5%)、Se(49.7%)、Se(9.2%)などの同位体からなっている。
出発試料は4N−Se(純度99.99%のSeの意味)の粒状試料をアルゴン雰囲気下の内径5mmのガラスチューブで溶融固化し、直径5mm、長さ5mmの円筒状試料として切り出した。これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填し、これを直径80mmのTi合金製ロータに装填した(図4参照)。
実験は日本原子力研究開発機構にある100万G(1G=9.8m/s)以上の重力場を高温で長時間発生させることができるエアタービン型の超遠心機を使用した。実験は実験温度を190℃(固体)とした場合と300℃(液体)とした場合の2通りについてそれぞれ100時間行った。同位体の分析は鳥取県三朝にある岡山大学地球物質科学研究センター(旧固体地球研究センター)にてCamecaのims−5fの二次イオン質量分析計(SIMS)を用いて行った。背面電子散乱パターン(EBSP)は日立のショットキータイプFE−SEM(S−43000Se)を使って結晶の状態を分析した。
実験温度を常圧における融点(222℃)より低い190℃(固体状態)として100時間の遠心処理を行った場合について、回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡写真6Aと組成の同位体の存在比82Se/76Seb)を図6Bに示す。超遠心機の回転数は一分間に15万2000回転であった。このときの試料の左右の縁(半径35.4mmと31.4mm)の重力場はそれぞれ91万6000G、81万3000Gである。試料は3つの領域A,B,Cに大別されるが、図6Aの拡張顕微鏡写真に示されるように強い重力領域Aでは10数μmの完全に微細な粒状の結晶、中間の重力領域Bでは数百μmの粒径が長い大きい結晶、弱い重力領域Cでは重力場方向に沿って成長する羽模様の表面が観察された。
同位体存在比について調べたところ、図6Bで示されるように、領域BとCにおいて82Se/76Se比で0.8%以上傾斜したことがわかった。これらの結果は同位体の沈降が起こったことを表している。ここで、領域Aでは同位体存在比の変化はほとんどみられなかったが、これは領域Aと領域B,Cでの拡散係数の違いが生じているためである。この拡散係数の違いは遠心力場下で生じた同一試料内での圧力差によってもたらされたものである。遠心処理中の試料にかかる圧力は図面では右側へいくほど高くなり、右端では163MPaとなる(例えば、地上の重力場下での例をとればプールに深く潜れば潜るほど水圧が高くなるのと同じである)。
Seも他の金属と同様に圧力が上昇すればサイモン方程式に従って融点が上昇するため、この圧力下のSeでは常圧で220℃の融点がおよそ257℃まで上昇する。これに伴い、試料内でも重力方向にいくにつれて拡散係数が小さくなるため、沈降は弱い重力領域で始まって、沈降する領域がより強い重力領域に向かって広がっていき、実験時間の100時間では反応はB,Cの領域でのみ観察される。さらに、遠心処理を続けると試料全体で沈降が起こり、同位体の濃度変化が全体に観察されることになる。
EBSP(Electron Back Scattering Pattern method)の結果によると、強い重力領域(A)では微細な粒状の結晶が、結晶方位がランダムであったのを示して観測された。中間の重力領域(B)では、結晶がc−軸に垂直方向に成長したと結論づけられた。
EBSPの結果による、c−軸の低重力領域で羽根状の形をしている細粒の結晶方位が領域Bとほとんど同じである。Seに関しては、c−軸に垂直方向に沿った自己拡散係数はc−軸に平行方向に沿ったそれよりおよそ5.2倍大きい。これによりc−軸の方向に沿って優先的に結晶の成長を引き起こし、その結果、とても微小な粒状の結晶が最初に始めのアモルファスのサンプルに現れて、より重い同位元素の沈降を通して成長したと考えられる。
実験温度を常圧における融点(222℃)より高い300℃(液体状態)として100時間の遠心処理を行った場合について、回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡の写真a)と同位体の存在比率82Se/76eをおよび理想系(ガス)の組成計算結果を図7に示す。超遠心機の回転数は一分間に14万5000回転であった。このときの試料の左右の縁(半径35.2mmとそこから4.5mm)の重力場はそれぞれ82万7000gと73万3000Gである。
この実施例では同位体存在比82Se/76Seで3.5%以上の傾斜、つまり、固体状態での遠心処理と比較して4倍位以上の変化が確認された(図7B参照)。同位体存在比の変化は固体状態での遠心処理の場合より、より高い重力領域での変化が見られた。これは拡散係数が単体より合金の方が大きいか、活動度係数が小さくなるからであろう。
セルフコンシステントな沈降の拡散方程式を用いた理想系(ガス)の系の沈降の過程のシミュレーションによる同位体存在比の変化を図7cに示す。実験結果の同位体存在比の傾斜はシミュレーションにより求められた定常状態(最終的)の傾斜とくらべおよそ2倍大きかった。
これは、凝縮状態(固体や液体)のSeにおける同位体の沈降が、隣接している原子の間の相互作用をほとんど無視できるガスの環境(理想状態)とは異なり、隣接している原子の間の相互作用によって非理想系的なシステムとして起こることを示している。活動度係数が下がっていると考えられる。また、100時間程度の遠心処理では同位体の存在比の変化は中途であることは明らかであり、処理時間を延長すれば、さらに大きな同位体比の傾斜を達成できると考えられる。この実験結果は、Seのみに留まらず、凝縮状態(元素単体、多成分の合金、化合物など)の物質を超遠心処理することが同位元素の分離に非常に有効であり、この手法を新しい同位体濃縮方法として提案できることを示す有力な根拠である。
上記SeについてSeの同位体成分のうち74Se、76Se、82Se3成分の同位体存在比の分析結果を図8Aに示す。74Se/82Seの比は82Se/76Seに比べて大きく変化しており、原子量の差に比例して4.5%以上の同位体存在比の傾斜が実現されている。これによって、3成分以上の同位体が存在する場合でも濃縮が可能であることがわかる。
実施例2
固溶体:Se−Te合金
処理する物質が固溶体の実施例として、セレニウム(Se)−テルル(Te)合金を用いた場合について紹介する。出発試料は4N−Se,4N−Te(99.99%)の粒状試料をアルゴン雰囲気下の内径4mmのガラスチューブで溶融固化し、直径4mm、長さ5mmの円筒状試料を切り出した。これを内径4mmのSUS304製カプセルに充填した。
実験は日本原子力研究開発機構(旧日本原子力研究所)にある100万G(1G=9.8m/s)以上の重力場を高温で長時間発生させることができるエアタービン型の超遠心機を使用した。実験温度は260℃、実験時間は100時間であった。同位体の分析は鳥取県三朝にある岡山大学地球物質科学研究センター(旧固体地球研究センター)にてCamecaのims−5fの二次イオン質量分析計(SIMS)を用いて行った。
実験温度を常圧における融点(300℃)より低い260℃として100時間の遠心処理を行った場合について、回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡写真を図9Aに示し、同位体の存在比率82Se/76Seを図9Bに示す。超遠心機の回転数は一分間に16万回転であった。このときの試料の左右の縁(半径35.8mmと31.3mm)の重力場はそれぞれ102万6000Gと89万7000Gである。試料は2つの領域に大別されるが、図9Aの拡張顕微鏡写真に示されるように、強い重力領域Aでは10数μmの完全に微細な粒状の結晶、弱い重力領域Bでは重力場方向に沿って成長する結晶粒が観察された。Seの同位体存在比について調べたところ、図9Bで示されるように、82Se/76Se比で1.5%以上増加していることがわかった。
この実験によって達成された同位体存在比の変化は実施例1にて紹介した固体状態の単体金属Seについて行った実験の場合の2倍程度の変化であった。これまでの研究で非常に強い遠心加速度場下での固溶体の拡散係数は大きくなることが分かっており、これに伴って同位体存在比の変化も大きくなったことが原因であると考えられる。この結果は、金属単体よりも合金を用いた方が効率の良い濃縮ができることを示す結果である。
実施例3
ハロゲン化物・超イオン伝導体:ヨウ化銀(AgI)
処理する物質がハロゲン化物・超イオン伝導体の実施例として、ヨウ化銀(AgI)を用いた場合について3点(実験1、2、3)紹介する。ヨウ化銀(AgI)は148℃にβ−AgIからα−AgIへの相転移点を持つ。α−AgIはAgイオンの拡散係数が非常に大きな(10−3cm/s台)超イオン伝導体である。実験温度を148℃以上とし、α−AgIを強い遠心加速度場下におくことでα−AgI中のAg原子の高速な沈降現象が期待できる。また、重力を取り除く前に148℃以下とすることで同位体存在比を固定した状態で試料を回収できると考え実験を行った。融点は555℃である。実験には日本原子力研究所にある100時間以上において高温で100万G(1G=9.8m/s)以上の重力場を発生させることができるエアタービン型の超遠心機を使用した。同位体の分析は鳥取県三朝にある岡山大学地球物質科学研究センター(旧固体地球研究センター)にてCamecaのims−5fの二次イオン質量分析計(SIMS)を用いて行った。
(実験1)
実験条件は、試料最大半径における重力場102万G(1G=9.8m/s)、実験温度260℃、実験時間100時間であった。AgIの場合、α相であれば(148℃以上)固相であるが拡散係数は液体よりも高く、さらに融点まで拡散係数はあまり変わらない。このため、他の物質系よりも非常に低い実験温度でも原子の沈降が生じ、同位体の存在比が変化する。出発試料は内径5mmのガラスチューブでヨウ化銀粉末試料を溶融固化し、直径5mm、長さ5mmの円筒状試料を切り出し、これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填したものを用いた。図10Aに回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡の写真を示し、図10Bに同位体存在比107Ag/109Agを示し、図10Cに理想系(ガス)の組成計算結果を示す。実験後の試料断面の光学顕微鏡写真では、析出物等確認されず、EPMAによる組成分析でも特にAgやI(ヨウ素)の濃度変化等は見られなかった。
Agは2つの同位体107Agと109Agにより成り立っているが SIMSを用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べた結果、重い109Agが重力の強い方向へ増加する同位体存在比の傾斜が見られた。セルフコンシステントな沈降の拡散方程式を用いた理想系(ガス)の系の沈降の過程のシミュレーションによる同位体存在比の変化を図11Cに示す。実験結果の同位体存在比の傾斜はシミュレーションにより求められた定常状態(最終的)の傾斜とくらべおよそ1.5倍大きかった。この結果は固体状態でも十分な濃縮が可能な例の一つである。
(実験2)
実験条件は、試料最大半径における重力場62万G(1G=9.8m/s)、実験温度350℃、実験時間100時間であった。出発試料は内径5mmのガラスチューブでヨウ化銀粉末試料を溶融固化し、直径5mm、長さ10mmの円筒状試料を切り出し、これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填したものを用いた。図11に回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡の写真a)と同位体存在比107Ag/109Agb)、理想系(ガス)の組成計算結果をc)を示す。実験後の試料断面の光学顕微鏡写真では、重力方向に析出物が見られたが、これはAgが析出したものであることがEPMAによる組成分析で確かめられた。SIMSを用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べた結果、重い109Agが重力の強い方向へ増加する同位体存在比の傾斜が見られた。注目すべき事は汎用の超遠心機でも実現可能な重力場で同位体比の傾斜を達成したことであり、産業利用も視野に入れることが可能であることを示す結果である。
(実験3)
実験2の場合よりも処理時間を短くし、時間依存性を調べることを目的として実験を行った。試料最大半径における重力場62万G(1G=9.8m/s)、実験温度350℃、実験時間24時間であった。出発試料は内径5mmのガラスチューブでヨウ化銀粉末試料を溶融固化し、直径5mm、長さ10mmの円筒状試料を切り出し、これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填したものを用いた。図12Aに回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡写真を示し、同位体存在比107Ag/109Agb)を図12Bに示す。実験2では実験後の試料断面の光学顕微鏡写真では、重力方向にAgの析出が見られたが、この実験では見られなかった。SIMSを用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べた結果、実験2とほぼ同程度の同位体存在比の傾斜が見られた。この結果は、超イオン伝導体AgIの同位体の沈降が速いことを示した結果であり、超イオン伝導体を用いると、短時間で効率の良い濃縮が可能であることを示している。
実施例4
ハロゲン化物・超イオン伝導体:ヨウ化銅(CuI):固体
処理する物質がハロゲン化物・超イオン伝導体の実施例として、ヨウ化銅(CuI)を用いた場合について紹介する。融点は605℃である。先に述べたヨウ化銀(AgI)の実験では高速な拡散が期待できるα−AgI中で実験を行い、重力を取り除く前にβ−AgIに戻すことで同位体存在比を固定した状態で試料を回収できると考え実験を行ったが、CuIは相転移が無い条件下での場合として実験を行った。実験には日本原子力研究所にある100時間以上において高温で100万G(1G=9.8m/s)以上の重力場を発生させることができるエアタービン型の超遠心機を使用した。同位体の分析は鳥取県三朝にある岡山大学地球物質科学研究センター(旧固体地球研究センター)にてCamecaのims−5fの二次イオン質量分析計(SIMS)を用いて行った。
(実験1)
実験条件は、試料最大半径における重力場62万G(1G=9.8m/s)、実験温度350℃、実験時間100時間であった。出発試料は内径5mmのガラスチューブで粉末試料を溶融固化し、長さ11mm直径5mmの円筒状に切り出し、これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填したものを用いた。図13に回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡の写真(図13A)と、同位体存在比63Cu/65Cu(図13B)を示す。実験後の試料断面の光学顕微鏡写真では、重力方向に析出物が見られたが、これはCuが原子の沈降により析出したものであることがEPMAによる組成分析で確かめられた。Cuは2つの同位体63Cuと65Cuにより成り立っているが、SIMSを用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べた結果、重い65Cuが重力の強い方向へ増加する同位体存在比の傾斜が見られた。注目すべき事は汎用の超遠心機でも実現可能な65万G程度の重力場で同位体比の傾斜を達成したことであり、また、重力の弱い部分は50万G以下で、産業利用を視野に入れることが可能であることを示す結果である。
(実験2)
実験1の場合よりも処理時間を短くし、時間依存性を調べることを目的として実験を行った。試料最大半径における重力場62万G(1G=9.8m/s)、実験温度350℃、実験時間24時間であった。出発試料は内径5mmのガラスチューブで粉末試料を溶融固化し、長さ11mm直径5mmの円筒状に切り出し、これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填したものを用いた。図14Aに回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡写真を示し、同位体存在比63Cu/65Cuを図14Bに示す。実験1の試料断面の光学顕微鏡写真では、重力方向にCu析出物が見られたが、この実験では見られなかった。SIMSを用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べた結果、実験1には及ばないが、同程度の同位体存在比の傾斜が見られた。この結果は、超イオン伝導体CuIの同位体の沈降が速いことを示した結果であり、超イオン伝導体を用いると、短時間で効率の良い濃縮が可能であることを示している。
以上のようにハロゲン化物・超イオン伝導体の実施例についてAgIとCuIの実験結果を述べてきたが、簡単にまとめると、同位体の沈降を50万G程度の重力場下で実現でき、しかも短時間の処理が可能であるという知見が得られたということである。これらの結果は汎用の遠心機を改良することでも本発明を産業利用することが可能であることを示す結果である。
実施例5
InPb系:固溶体、固体液体混相
処理する物質が固溶体または溶体の実施例として、In−Pb系固溶体を用いた場合について2点(実験1、2)紹介する。実験には日本原子力研究所にある100時間以上において高温で100万G(1G=9.8m/s)以上の重力場を発生させることができるエアタービン型の超遠心機を使用した。同位体の分析は鳥取県三朝にある岡山大学地球物質科学研究センター(旧固体地球研究センター)にてCamecaのims−5fの二次イオン質量分析計(SIMS)を用いて行った。
(実験1:固体状態)
実験条件は、試料最大半径における重力場82万G(1G=9.8m/s)、常圧での融点(156℃)以下の実験温度150℃(固体状態)、実験時間100時間であった。出発試料は試験管で粒状試料を溶融固化し、長さ5mm直径5mmの円筒状に切り出し、これを内径5mmのTi合金製カプセルに充填したものを用いた。図15Aに回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡写真を示し、同位体存在比113In/115Inを図15Bに示す。
実験後の組成分析と構造解析結果から、重いPb原子が重力方向へ傾斜する原子スケールの傾斜構造を形成していることが確かめられた。Inは2つの同位体113Inと115Inにより成り立っているが、SIMSを用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べたところ、重い115Inが重力の強い方向へ増加する同位体存在比の傾斜が確認された。
(実験2:固体状態と液体状態の混相)
実験条件は、試料最大半径における重力場81万G(1G=9.8m/s)、実験温度は常圧での融点(156℃)以上の255℃から190℃まで(出発状態は液体状態)1時間に6℃ずつ冷却し、この間合計約13時間の実験時間であった。出発試料は試験管で粒状試料を溶融固化し、長さ7mm直径5mmの円筒状に切り出し、これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填したものを用いた。図16Aに回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡の写真を示し、図16Bに同位体存在比113In/115Inを示す。実験後の組成分析と構造解析結果から、重いPb原子が重力方向へ傾斜する原子スケールの傾斜構造を形成していることが確かめられた。SIMSを用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べたところ、重い115Inが重力の強い方向へ増加する同位体存在比の傾斜が確認された。また、この実験2では実験1のおよそ1/8の処理時間で約2倍の同位体存在比の傾斜が実現されており、最適な実験条件を見つけることで効率の良い同位体濃縮が期待できることを示唆している。
実施例6
金属間化合物(InBi):液体状態
処理する物質が金属間化合物の実施例として、金属間化合物(InBi)を用いた場合について紹介する。融点は110℃である。実験には日本原子力研究所にある100時間以上において高温で100万G(1G=9.8m/s)以上の重力場を発生させることができるエアタービン型の超遠心機を使用した。同位体の分析は鳥取県三朝にある岡山大学地球物質科学研究センター(旧固体地球研究センター)にてCamecaのims−5fの二次イオン質量分析計(SIMS)を用いて行った。実験条件は、試料最大半径における重力場81万G(1G=9.8m/s)、実験温度350℃に到達後18時間かけて90℃まで冷却し実験終了とした。従って、主に液体状態の実験である。出発試料は試験管で粒状試料を溶融固化し、再度砕いたものを内径5mmのガラスチューブで溶融固化し、長さ5mm直径5mmの円筒状に切り出し、これを内径5mmのSUS304製カプセルに充填したものを用いた。
図15Aに回転軸を含んだ面を切断して表面研磨した試料の偏光顕微鏡の写真を示し、図15Bに同位体存在比113In/115Inを示す。Inは2つの同位体113Inと115Inにより成り立っているが、SIMS(2次イオン質量分析機)を用いて重力に水平な方向の同位体存在比を調べたところ、重い115Inが重力の強い方向へ増加する同位体存在比の傾斜が確認された。ここで、注目すべき点は、実験後のBiとInの濃度プロファイルは遠心処理をしても変わらず金属間化合物の比Bi:In=1:1を保っていたのに対し、Inの同位体存在比の変化が確認されたという事実である。この実験結果から、化合物でも拡散現象が期待できる系であれば同位体の沈降は起こることが分かった。この実験結果から、少なくとも拡散に必要な格子欠陥(特に点欠陥)を特に多く含む不定比化合物やカルコゲナイド化合物でも同位体の沈降が起こることが明白である。
実施例の重要なポイントをまとめる。液体状態のSe、固体状態のSe−Te合金、固体状態のAgIでは、気体のシミュレーションより定常状態で濃縮率が上回っている。これは原子間同士の相互作用によって理想状態からはずれ、原子の沈降による濃度変化が大きくなっていることを表しており、凝縮状態での濃縮が非常に有効であることを示している。同じ処理時間で同じSeでは液体状態の方が固体状態より大きな濃縮率が得られている。これは、拡散速度が異なるからであろう。また、同じ処理時間、固体状態で単体のSeより合金のSe−Teの方が大きな濃縮率が得られた。これは、単体と合金の拡散速度や活動度係数の違いによるものである。また、超イオン伝導体であるAgIとCuIでは、24時間で100時間と同等の濃縮が得られたが、これは非常に短い磁化んで濃縮できたこと、つまり、極めて拡散速度が速いことを表しており、凝縮状態での濃縮が非常に有効であることを表している、などである。
同位体物質の産業上の利用形態は、原子力発電用に核分裂のためのU,Prや核融合のためのトリチウム、トリチウム用Liなどのエネルギー同位体物質が第一の利用分野である。特にウランの濃縮では主にガス拡散法、ガス遠心力法が用いられている。原子力開発・利用はウラン濃縮に始まるが、ウラン濃縮技術は、低コストと操業安全性が重量である。世界のウラン濃縮技術に三方法:ガス拡散法、ガス遠心分離法、レーザ法がある。
ガス拡散法は、腐食性ガスの六フッ化ウラン(UF)が原料である。分離係数は約1.003であり3〜4%濃縮ウランを得るために大規模なカスケードを組む。このようなガス拡散法は、腐食性ガス、低分離係数、大規模施設によるコスト高のため、産業上の利用可能性に問題がある。
ガス遠心分離法は、UFが原料である。分離係数は1.4が期待できて、カスケードを組んで濃縮ウランを得る。この方法も、腐食性ガス、大型施設によるコスト高のため産業上の利用可能性に問題がある。
これらに対して、本発明に従う加速度場による原子の沈降を利用した同位体の分離・濃縮方法は、高い効率とシステムの小型化が期待され、分離・濃縮されたH,Li,U,Pr等が核エネルギー物質として利用される。
分離・濃縮されたC,N,O,F,Cr,Ga,Tc,I,Au,Tl,Br,In,La,Eu,Gd,Dy,Ho,Yb,Lu,Re等が安定化同位体として、又は医療用同位体として利用される。
分離・濃縮されたC,Rb,Sr,La,Sm,Ln,Pb等が古代史上の年代測定に利用される。
分離・濃縮されたBは、中性子吸収材として利用される。
分離・濃縮されたBe,C,B,Na,K,Cs,Mg,B,Al,Si,Ge,Co,Fe,Ga,As,P,Sb,Zn,In,Bi,Sn,S,Se,F,CL,I,O,N等が半導体物質として利用される。半導体では同位体の存在が熱伝導率を下げる効果があり、又、放射性元素の混入が問題になっているので、本発明の分離・濃縮技術は利用価値が高い。また、同じ材料が量子半導体物質としても利用される。たとえば28Siは量子コンピュータ用の半導体と注目されている。純粋な同位体半導体や放射性元素のない半導体を製造するために本発明の方法が有用である。
標準状態で気体物質であるH,He,N,O,F,Ne,CI,Ar,Kr,Xe,Rn等は低温、高圧下で液体化され凝縮状態化された態下で利用可能となる。
さらに、Cr,Br,In,La,Eu,Gd,Dy,Ho,Yb,Lu,Re,Au等の安定化同位体は医療用として重要な同位体物質であるが、高価であるので、本方法によってガスを用いた方法に比べて高効率で、腐食性ガスを利用しない高安全性、コンパクトな設備で経済的、独自の技術などが期待される。
凝縮物質の標準状態下の原子スケールの状態を模式的に示す図である。 同凝縮物質の高圧下での原子スケールの状態を模式的に示す図である。 同凝縮物質の高重力場下での原子スケールの状態と原子に掛かる力を模式的に示す図である。 同凝縮物質の重力によるポテンシャルエネルギーが化学ポテンシャルに打ち勝って原子の沈降が起きたとき(この場合、活性化過程となる)の、原子の沈降過程を模式的に示す図である。 動力軸が下方にあるロータにおいて、内壁に複数の沈降槽を設けたロータの構造を示す縦断面図である。 同動力軸が下方にあるロータにおいて、特に連絡溝を明示するための斜視図である。 ロータ内のみでの濃縮の進行状態を示す図解である。 複数のロータをカスケードに組んだ場合の凝縮物質の移動状況を示す図である。 同再循環させる場合の凝縮物質の移動状況を示す図である。 既存のロータによる濃縮を示す図である。 動力軸が上方にあるロータにおいて、滴下受け入れと最初の沈降槽への案内用の細孔を示す縦断面図である。 同動力軸が上方にあるロータにおいて、最初の沈降槽と細孔との連絡関係を示す斜視図である。 固相でのSe単体試料の実験結果に関するものであり、出発試料は同位体存在比74Se(0.87%,76Se9.02%),77Se(7.58%),78Se(23.52%),80Se(49.82%),82Se(9.19%)からなる単体であり、実験条件は:82万G,190℃,100hの場合における、同試料の偏光顕微鏡写真を示す。 同試料の同位体存在比測定結果(比率82Se/76Se)を示す図である。 液相でのSe単体試料の実験結果に関するものであり、出発試料は図6Aに示したものと同じであるが、実験条件が:82万G,300℃,100hの場合における、同試料(結晶方向:a軸//重力方向)の偏光顕微鏡写真を示す。 同試料の同位体存在比測定結果(比率82Se/76Se)を示す図である。 同試料の同位体存在比の解析結果を示す図である。 2種類以上の同位体存在比の測定に関するものであって、出発試料:Se単体(図6Aに示したものと同様に6種類以上の同位体から成る)、実験条件:82万G,300℃,100h,測定した同位体:82Se,76Se,の同位体の組成分析結果を示す図である。 2種類以上の同位体存在比の測定に関するものであって、出発試料:Se単体、実験条件:82万G,300℃,100h、測定した同位体:74Se,82Se,の同位体の組成分析結果を示す図である。 Se−Te合金試料の同位体存在比に関するものであって、出発試料は、Se−Te(70:30mol%)、実験条件:1.02x10G,260℃,100h,の場合における偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率82Se/76Se)を示す図である。 AgI固体試料(260℃,100h)の同位体存在比測定後の偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率107Ag/109Agを示す図である。 同試料の同位体存在比の解析結果を示す図である。 AgI固体試料(350℃,100h)の同位体存在比測定後の偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率107Ag/109Ag)を示す図である。 同試料の同位体存在比の解析結果を示す図である。 AgI固体試料(350℃,24h)の同位体存在比測定後の偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率107Ag/109Ag)を示す図である。 CuIの固体試料(350℃,100h)の同位体存在比測定後の偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率63Cu/65Cu)を示す図である。 CuI固体試料(350℃,24h)の同位体存在比測定後の偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率63Cu/65Cu)を示す図である。 InPbの固体試料(150℃,100h)の同位体存在比測定後の偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率113In/115In)を示す図である。 InPb試料(250℃から190℃まで1時間に6℃ずつ冷却して試料回収)の同位体存在比測定後の偏光顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率113In/115In)を示す図である。 金属間化合物InBi試料(350℃から90℃まで18時間かけて冷却して回収した試料)の同位体存在比測定後の偏向顕微鏡写真である。 同試料の同位体存在比測定結果(比率113In/115In)を示す図である。
符号の説明
1 ロータ(3段式の多段式ロータの場合)
2 沈降槽A
3 沈降槽B
4 沈降槽C
5 滴下される凝縮材料
6 凝縮材料移動経路となる溝
7 滴下面となる錐形状のロータ底面
8 重い同位体の存在量が濃縮前より増加した凝縮材料
9 軽い同位体の存在量が濃縮前より増加した凝縮材料
10 加熱装置付凝縮材料供給装置
11 加熱装置付凝縮材料槽
12 凝縮材料を充填するためのカプセルを格納可能なロータ
13 凝縮材料を充填するためのカプセル
14 充填された凝縮材料
15 滴下受け入れ部
16 細孔
17 ロータ底面7と同様の働きをする錐形状のスロープ
21 凝縮材料(固体又は液体)を供給
22 凝縮材料(固体又は液体)
23 流動により移動(固体又は塑性流動)
24 強い遠心力
25 凝縮状態の材料
26 排出
27 次の遠心機へ

Claims (28)

  1. 2種類以上の同位体からなる元素を含む、液体、固体、又は液体と固体との混合物である凝縮状態の材料をロータに収容し、凝縮状態の材料に対して、濃縮したい同位体材料の拡散係数が10−12cm/s以上であることによって特定される温度の下で加速度場を与え、重力誘起の拡散である該加速度場による原子の沈降によって前記同位体材料を分離・濃縮する方法であって、
    前記凝縮状態の材料が、少なくともハロゲン化合物又は超イオン伝導体を主成分とする、方法。
  2. 前記ロータが複数の沈降槽を備えた多段ロータであり、複数の沈降槽が、濃縮したい同位体材料を供給するための最前段の沈降槽及び分離・濃縮後の同位体材料をロータ外に排出するための最後段の沈降槽を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記ロータの最後段の沈降槽から溢れ出た材料を再び最前段の沈降槽に戻すことにより濃縮率を上げることを特徴とする請求項2項記載の方法。
  4. 前記ロータの最前段の沈降槽の上部又は底部から取り出した材料を別のロータに次々と結合させることにより濃縮率を上げることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
  5. 前記ロータが一つの沈降槽を備えたロータであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記ロータを、複数結合して配置したこと又はカスケード状に複数配置したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の方法。
  7. 前記凝縮状態の材料が、少なくとも固体状態では固溶体を主成分とすることと、特定される温度を再結晶温度以上とすることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の方法。
  8. 前記凝縮状態の材料が、少なくとも融点が800℃以下で固体状態では固溶体を主成分とすることと、特定される温度を再結晶温度以上とすることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の方法。
  9. 特定される温度を再結晶温度以上とすることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の方法。
  10. 前記凝縮状態の材料が、少なくとも標準状態では凝縮状態にない材料を主成分とすることと、特定される処理温度を加速度場下での沸点以下で絶対0度以上とすることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の方法。
  11. 前記凝縮状態の材料に対して、最大10万G乃至150万Gの加速度場を与えることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の方法。
  12. 前記ロータで周速が100m/s乃至800m/sで加速度場を与えることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の方法。
  13. 前記ロータの回転中心部の温度を回転外周部の温度よりも高くして対流による材料の撹拌が起こらないようにしたことを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項記載の方法。
  14. 前記ロータ内で材料の移動を液体流動または塑性流動によって行うことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載の方法。
  15. 請求項1乃至14の何れか1項記載の方法によって、前記同位体材料を分離・濃縮することを特徴とする、同位体材料の製造方法。
  16. 少なくともハロゲン化合物又は超イオン伝導体を主成分とする2種類以上の同位体からなる元素を含む、液体、固体、又は液体と固体との混合物である凝縮状態の材料をロータに収容し、凝縮状態の材料に対して、濃縮したい同位体材料の拡散係数が10−12cm/s以上であることによって特定される温度の下で加速度場を与え、重力誘起の拡散である該加速度場による原子の沈降によって前記同位体材料を分離・濃縮するためのロータであって、複数の沈降槽を備えた単一構造体であることを特徴とする多段ロータ。
  17. 多段ロータが、多段ロータ外部から凝縮状態の材料を供給するための最前段の沈降槽を有し、
    沈降槽が、回転中心である回転軸を有し、
    該加速度場が、回転により発生し、
    沈降槽が、多段ロータの内壁に配置され、
    沈降槽が、次段の沈降槽へ凝縮状態の材料を流動させるための連絡溝を有し、
    最前段の沈降槽に供給された凝縮状態の材料が、連絡溝を介して、順次、複数の沈降槽に移動するように、連絡溝が配置され、
    凝縮状態の材料に含まれる同位体が、各沈降槽において濃縮可能である、請求項16記載の多段ロータ。
  18. 複数の沈降槽が、最前段の沈降槽より上方にある、請求項17記載の多段ロータ。
  19. 最前段の沈降槽が、複数の沈降槽のうちの一つとして機能する、請求項17又は18記載の多段ロータ。
  20. 最前段の沈降槽が、複数の沈降槽の方向へ向かったスピンドル形状の底を有し、スピンドル形状の中心が、回転軸に対応する、請求項18又は19記載の多段ロータ。
  21. 複数の沈降槽が、最前段の沈降槽より下方にあり、最前段の沈降槽と、複数の沈降槽のうちの一つが、細孔で接続されている、請求項17記載の多段ロータ。
  22. 複数の沈降槽の連絡溝のそれぞれが、回転軸からの方向においてお互いに異なった方向に配置される、請求項17乃至21の何れか1項記載の多段ロータ。
  23. 複数の沈降槽の連絡溝のそれぞれが、回転軸からの方向において、互いに180度対称となるような方向に配置される、請求項22記載の多段ロータ。
  24. 複数の沈降槽の最後段の沈降槽から溢れ出た材料を再び最前段の沈降槽に戻しうる構成にしたことを特徴とする請求項17乃至23の何れか1項記載の多段ロータ。
  25. 濃縮したい同位体材料を供給するための最前段の沈降槽から、分離・濃縮後の同位体材料をロータ外に排出するための最後段の沈降槽に向う各沈降槽間の、次段の沈降槽へ凝縮状態の材料を流動させるための連絡溝の回転軸からの距離を段々大きくして、材料の逆流が起こらないようにしたことを特徴とする請求項16乃至24の何れか1項記載の多段ロータ。
  26. 請求項16乃至25の何れか1項記載の多段ロータを備えた、同位体を分離・濃縮するための装置。
  27. 前記多段ロータの最前段の沈降槽の底部から取り出した材料を別の多段ロータに次々と結合させることにより濃縮率を上げるように構成された、請求項26記載の装置。
  28. 前記ロータを、複数結合して配置したこと又はカスケード状に複数配置したことを特徴とする請求項26又は27記載の装置。
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