JP5093715B2 - 熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材及びその微細構造転写の機能性樹脂成形体 - Google Patents
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Description
(1)被スタンパー部材が、熱圧着転写プロセス下に十分に熱流延性を発揮させ、しかも、熱ナノインプリント後に、被スタンパー部材が、スタンパー材に施されている微細な凹凸状パターンからスムーズに離型又は剥離されて、微細構造のパターンが明確に、しかも、精度よく安定に形成させる等の本発明に定義するインプリント性を発揮させる。
(2)そのために、被スタンパー部材の主材となる熱可塑性樹脂成分が、スタンパー材に対する熱融着性をより減少させる観点から、少なくともその主材樹脂成分をより高分子量体の樹脂成分にすることに期待した。
(3)また、その被スタンパー部材が、熱ナノインプリント時に十分に熱流延性を発揮させて、スタンパー材の微細パターンに係わって、被スタンパー部材樹脂相の2次元方向又は3次元方向に、転写偏在や転写欠陥を発生させない等の本発明に定義する転写性を発揮させる。
(4)そのために、(2)の課題に係わって、全く低分子量体の樹脂成分を含有させずに、熱ナノプリント下に流延性を低下させない観点から、例えば、熱溶融状態にある油性系樹脂流延媒体中に分散する超微細粒の有機ポリマー粒子を含有させて、恰も低分子量体の樹脂成分によって発揮されるレオロジー挙動に期待した。
(5)すなはち、その超微細粒子に係わるレオロジー特性として、熱ナノインプロント時に熱流延下にある被スタンパー部材中を、自在に流動して被スタンパー部材の熱流延性が高められることに期待するものである。
以上から、本発明によれば、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスにおける熱ナノインプリント下に、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂中に分散する高架橋有機ポリマーの超微細粒子が、恰も低分子量体樹脂の代替成分となって挙動するレオロジー特性によって、優れるインプリント性を発揮させ、且つその被スタンパー部材樹脂面の2次元方向及び3次元方向にそれぞれ転写偏在や転写欠陥発生を皆無にさせ、優れた転写性を発揮させることを特徴とする熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材を提供する。
前記熱可塑性樹脂(A)が、アクリル系樹脂であり、GPC法による重量平均分子量(Mw)が60万〜180万であり、かつ、分子量分布係数(Mw/Mn)が1.1〜5の範囲にあり、
前記有機ポリマー粒子(B)が、親油性の重合性モノマーおよび多官能性モノマー(ただし、親油性の重合性モノマー100質量部に対して多官能性モノマーを0.5〜50質量部の範囲内で使用する)を用いて得られ、かつ、体積基準で表す平均粒子径が5〜80nmの範囲にあり、
前記親油性の重合性モノマーが、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマーであり、
前記有機ポリマー粒子(B)が、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部当たり0.5〜15質量部の範囲で前記熱可塑性樹脂(A)中に分散し、かつ、熱ナノインプリント下に前記熱可塑性樹脂(A)中に不溶融状態にあることを特徴とする。
また、熱ナノインプリント下にスタンパー材面に形成される本発明による被スタンパー部材樹脂相に、各種パターンの微細構造を施されたスタンパー材を熱圧着させると、熱ナノインプリント下に熱流延状態にある被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂成分中に、分散し且つ不溶融状態にあるこの高架橋超微細粒子(B)は、低分子量体樹脂の代替成分として発揮されるレオロジー特性が活かされて、既に上記に詳細に説明する如くの特徴ある「インプリント性」及び「転写性」を発揮させてなる微細構造を転写された厚さ50nm〜500μmの如くの広範囲に及ぶ薄膜構造部材である微細構造転写の機能性樹脂成形体が得られる。
更には、このような高架橋超微細樹脂粒子(B)を含有する被スタンパー部材を用いてなる上記する微細構造転写の機能性樹脂成形体の中でも、特に光透明性に優れる被スタンパー部材(又は可視光線透過率が、少なくとも85%以上である。)も、同様に熱ナノインプリント下に既に上記に詳細に説明する如くの特徴ある「インプリント性」及び「転写性」を発揮させることができる。しかも、熱ナノインプリント時に微細構造が転写されてなる厚さ50nm〜500μm如くの広範囲に及ぶ薄膜構造部材として、微細構造転写された機能性透明樹脂成形体が得られる。
(1)この超微細樹脂粒子を、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂(A)に配合させるに際しては、熱溶融状態下にある主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の混練状態下に混合させて再分散(=配合)させる。
(2)または、この高架橋超微細樹脂粒子(B)を可溶化させない有機溶剤に溶解させた主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の攪拌混合下に混合させて再分散(=配合)させる如く、格別の分散化処理を要せずに用いられることが特徴である。
(3)熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスにおける熱ナノインプリント下に、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂中に分散する高架橋有機ポリマーの超微細粒子が、恰も低分子量体樹脂の代替成分となって挙動するレオロジー特性を発揮させて、優れる「インプリント性」を発揮させ、且つその被スタンパー部材樹脂面の2次元方向及び3次元方向にそれぞれ転写偏在や転写欠陥発生を皆無にさせ、優れる「転写性」を発揮させることを特徴とする。
(1−a);その再分散性とは、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜2.0の範囲にある。
(RDN)=CV(II)/CV(I) ・・・(1)
「式中、CV(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散溶媒中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。」
(2−b);また、その一次分散性は、下記関係式(2)に定義する再分散平均粒子径指数(RAv)で表して、(RAv)=1〜3の範囲にある。
(RAv)=Av(II)/Av(I) ・・・(2)
「式中、Av(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における平均粒子径値を表し、Av(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の平均粒子径値を表す。」
(RDN)=CV(II)/CV(I) ・・・(1)
「式中、CV(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性溶媒中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。」
<本発明による熱圧着転写プレセス用被スタンパー部材の調製>
既に説明する如く、本発明によって調製される水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体の乾燥物凝集体を、油性系分散媒体に再分散させると、従来の乾燥物凝集体とは著しく相違して、従来の如く格別の強制的な分散化処理及び/又は格別の分散剤介在等を施すことなく、容易に再分散性を発揮させる。その分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜3.0の範囲にある如く、油性系分散媒体に、著しく優れた再分散性を発揮させる乾燥物有機ナノ粒子凝集体である。
(RDN)=CV(II)/CV(I) ・・・(1)
「式中、CV(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。」
この乾燥物凝集体の前駆体である本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中には、体積基準で表す平均粒子径が、80nm以下にあって、特に40nm以下で、5nm以上にある超微細粒の有機ナノ粒子を、体積基準で表して5〜40%分散濃度に亘って、一次分散状態で含有させることができる。
すなわち、
(1−a):100〜1000質量部の水相系に、上記有機ポリマー質に相当する10〜100質量部の親油性の重合性モノマーを添加させる。
(2−b):次いで、その重合性モノマー100質量部当たり、0.5〜50質量部で、好ましくは10〜30質量部の範囲で、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋剤成分を適宜添加させる。
(3−c):次いで、攪拌下の70〜80℃の温度範囲で乳化重合させて、体積基準で表す平均粒子径が80nm以下で、特に40nm以下で、5nm以上で、しかも、充分に架橋された超微細有機ナノ粒子が、体積基準で表して5〜40%分散濃度範囲に亘って、好ましくは、粒子の重合安定性、分散安定性等の観点から、10〜30%分散濃度に亘って、一次分散状態に含有する前駆体としての水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体が調製される。
このような本発明による特徴ある高分子量体樹脂成分を組合せ配合させてなる被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物は、「高分子量熱可塑性樹脂成分(A)」として、所定の分子量分布及び所定の分子量分布係数の(Mw/Mn)値を有する組合せを選んで、本発明による被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物を調製するものである。
以上から、本発明が提供した既に説明済みの如くの特徴ある熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材は、熱圧着転写プロセスの熱圧着下に、各種の微細構造パターンを施すスタンパー材に接触するに際して、本発明においては、被スタンパー部材としての厚さが、極薄の50nmから、肉厚の500μmなる広汎な範囲の厚さを有する部材として、既に詳細に説明する如く、優れた「インプリント性」(=偏在なく明確に押印されて、インプリント後、被スタンパー部材が、スタンパー材からスムーズに離型又は剥離させる。)及び優れた「転写性」(=転写面の2次元方向に転写偏在がなく、しかも、その3次元方向に転写欠陥を発生させない。)を発揮させながら被スタンパー部材として用いることができる。
以上から、本発明による各種の熱可塑性樹脂組成物を被スタンパー部材に用いて、熱インプリント下にその樹脂表面に転写させてなる構造部材には、上記する如くナノレベルから、数μm以下、特に数100nmレベル以下の超微細パターン・サイズの、ドット、ライン及びスペース等の各種パターンの微細構造が、形成(又は賦形)されている。
代表的な熱可塑性樹脂であるPMMA樹脂を用いて、本発明による被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂(A)として、重量平均分子量(Mw)=113万のPMMA樹脂を調製し、次いで、高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)[以後、単に超微細粒子(B)と略称する]として、平均粒子径が20nm、油性分散媒体への再分散化特性としての(RDN)=1.3で、(RAv)=1.5の超微細有機ポリマー粒子(B)をそれぞれ調製した。更に本発明を明確にさせるため、比較例として超微細粒子(B)の添加量の異なる被スタンパー部材を調製し、次いで、これら比較例を含めて本発明による熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材を調製し、熱インプリント性、転写性を評価した。
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5質量部、85℃まで昇温させ、ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)を0.25重量部添加した。次いで、温度を76〜78℃に保ちながらMMA100質量部、乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部を、30分かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温し1.5時間保持した。得られた水性エマルション(E−2)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)=113万、分子量分布(Mw/(Mn)=3.0であった。
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水400質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩20質量部を添加して、85℃に昇温後、ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)0.5質量部を添加した。次いで、76〜78℃に保ちながら、メタクリル酸メチル(MMA)975質量部、エチレングリコールジメタクリレート25質量部、モノオキシエチレンノニルフェニルエーテル5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部、イオン交換水40質量部とからなる水性エマルション溶液を注加させて重合させた。
次いで、30分保持した後、85℃に昇温させて1.5時間保持した。得られたエマルションの重合率は約100%で、固形分は24%で、動的光散乱法で求めた平均粒径は20nmで、この水性分散体を試料−Iとした。
なお、本発明における平均粒子径測定法;シスメックス製[ゼータサイザー3000HS]を用いた動的光散乱法によった。また、CV値測定;CV値=標準偏差/平均粒子径×100として測定した。
上記で得られたエマルション型PMMA樹脂分を、スプレードライ法で乾燥・粉粒化させた後、それぞれメチルエチルケトンに溶解させた樹脂溶液を調製した。次いで、上記の高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)を0〜50wt%の範囲(比較例1〜3含む)で添加した。なお、試料Iを用いた樹脂の可視光線透過率は、いずれも85%以上であった。
次いで、これらの樹脂溶液を、ミカサ工業製スピンコーター1H−DX2を用いて樹脂シートすなわち「被スタンパー部材」を作製した。シート膜厚は樹脂溶解溶液粘度とコーターの回転数にて調整した(例えば、粘度が30P、回転数1200rpmの条件で成膜し10μmの樹脂シートを得た)。
シリカ基盤へのレジスト塗布、EB照射、現像、エッチングといった一通りの手順を通してモールドを作製した。作製したモールドは、ドッド型(丸形)で直径、10、5、2、1ミクロンのパターンがそれぞれ規則配列されたもの、及び、ラインスペースが0.15〜1.5μmの凹凸型のパターン、深度300nmものを使用した。
条件:
レジスト:NEB−22(住友化学製)
モールド:Si基盤上に約300ナノのSiO2処理、2inch、直径約5cm
EB :ELIONIX ELS7500M使用
エッチング:CHF3ガス(50 SCCM,2.0Pas,100W,15min)
エッチング(残レジストの除去):O2ガス(5Pas,100W)
モールド表面処理:ダイキン工業 オプツールDSX1%溶液(Perfluorohexane Solv.)
調製した高分子量熱可塑性樹脂成分(A)である(Mw)=113万のPMMAの樹脂に高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)を分散させた被スタンパー部材樹脂Iに用いて、上記に作製した微細構造を設けるスタンパー材を、熱転写装置である明昌機工(株)製NM0401および東芝機械(株)製ST50を使用して、この樹脂Iの転写性及びその転写条件を検討・評価し、その結果を[表1]に示した。[表1]の結果から明らかなように、用いる成型機の性能(温度精度、面精度、ショット精度等)によって逐次改良する必要はあるが、その中で本件樹脂Iに適した転写条件として、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒で、熱インプリントさせて、転写可能である温度、熱圧着(プレス圧×時間)等の条件を評価することができた。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂(A)中に分散する有機ポリマー粒子(B)のレオロジー挙動によって、スタンパー材に対して優れたインプリント性および転写性を発揮させる熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材であって、
前記熱可塑性樹脂(A)が、アクリル系樹脂であり、GPC法による重量平均分子量(Mw)が60万〜180万であり、かつ、分子量分布係数(Mw/Mn)が1.1〜5の範囲にあり、
前記有機ポリマー粒子(B)が、親油性の重合性モノマーおよび多官能性モノマー(ただし、親油性の重合性モノマー100質量部に対して多官能性モノマーを0.5〜50質量部の範囲内で使用する)を用いて得られ、かつ、体積基準で表す平均粒子径が5〜80nmの範囲にあり、
前記親油性の重合性モノマーが、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマーであり、
前記有機ポリマー粒子(B)が、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部当たり0.5〜15質量部の範囲で前記熱可塑性樹脂(A)中に分散し、かつ、熱ナノインプリント下に前記熱可塑性樹脂(A)中に不溶融状態にあることを特徴とする熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材。 - 前記熱可塑性樹脂(A)および前記有機ポリマー粒子(B)が、可視光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材。
- 請求項1〜請求項3の何れかに記載の熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材を用いて厚さ50nm〜500μmの範囲に及ぶ被スタンパー部材樹脂相を形成し、熱圧着転写プロセスの熱ナノインプリント下に、前記被スタンパー部材樹脂相に各種パターンの微細構造が転写されていることを特徴とする微細構造転写の機能性樹脂成形体。
- 転写された前記各種パターンの微細構造が、直径が50nm〜1500nmの凸型または凹型のドット、ピッチが60nm〜2μmの凸型または凹型ライン、およびスペース群から選ばれる何れかの単独パターンまたは何れか2種以上の組合せパターンで、かつ、これら何れのパターンの深さまたは高さが20nm〜3μmの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の微細構造転写の機能性樹脂成形体。
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