JP5002779B2 - 被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
また、本発明は、このような特徴を有する熱可塑性樹脂組成物を被スタンパー部材に用いて、各種パターンの微細構造を転写させてなる各種の産業分野に機能性部品として有用な樹脂成形体に関する。さらに、本発明は、このような特徴を発揮させる熱可塑性樹脂組成物の中で、特に光透明性に優れて、各種の光学部品(又は光学素子)として有用な微細構造転写されてなる透明樹脂成形体にも関する。
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、スタンパー材に施されているパターンに対して、熱流延状態下に一様な熱圧着性を発揮させることができる。さらに、インプリント後にはスタンパー材に施されている微細構造パターンからスムーズに離型又は剥離される良好な「インプリント性」を発揮させることができる。また、本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、転写面の2次元方向の転写偏在及び3次元方向の転写欠陥を発生させることのない優れた「転写性」を発揮させることができる。
前記高分子量熱可塑性樹脂成分(A)及び前記低分子量熱可塑性樹脂成分(B)が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルホンの群から選ばれる何れか単独又は何れか2種類以上の組合せであり、
前記高分子量熱可塑性樹脂(A):前記低分子量熱可塑性樹脂(B)=7〜9:3〜1(質量比)であることを特徴とする。
本発明によれば、厚さが50nm〜500μmの広範囲に及ぶ被スタンパー部材樹脂面に対しても、熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスにおいて、優れた「インプリント性」及び「転写性」を発揮させることができ、2次元方向へのパターンの転写偏在や、3次元方向への転写欠陥等の無い微細構造転写の樹脂成形体を提供する。
また、本発明によれば、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と低分子量熱可塑性樹脂成分(B)とを含有する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物が、光透明性に優れる樹脂組成物(又は可視光線透過率が、少なくとも85%以上の樹脂組成物)である場合、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスで各種パターンの微細構造を転写された透明樹脂成形体を提供する。
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、所定の重量平均分子量及び所定の分子量分布係数(Mw/Mn)を有する「高分子量熱可塑性樹脂成分(A)」及び「低分子量熱可塑性樹脂(B)」を選定して適宜調製できる。
本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、被スタンパー部材として利用できる。被スタンパー部材の厚さは、「インプリント性」及び「転写性」の観点から、50nm〜500μmが好ましい。熱ナノインプリント成形や射出圧縮成形等の熱転写プロセスで、厚さ50nm〜500μmの被スタンパー部材に対して、所定の微細構造パターンを有するスタンパー材をインプリントさせることにより、微細構造パターンが転写された樹脂成形体を得ることができる。この方法により、例えば、直径が50〜1500nmの凸型又は凹型のドットや、ピッチが60nm〜2μmの凸型又は凹型のラインを有する樹脂成形体を作成することができる。この凹部深さ又は凸部の高さは、20nm〜3μm範囲にある超微細構造とすることもできる。
本発明の樹脂成形体及び透明性樹脂成形体は、その樹脂表面に20nm〜3μm程度の凹凸を有している。本発明の樹脂成形体及び透明性樹脂成形体は、回折格子光フィルター、波長光変換素子、偏光フィルム、ホログラフィックディフューザー、光導波路型波長フィルター、携帯パソコン用光配線としての光導波路、透過型ブレーズド回折格子、光ピックアップ部の回折格子、波長分離フィルター、波長分離多重通信方式の増幅器に用いられる利得等化フィルター及び偏光変換素子、フレネルレンズ(太陽光集光レンズ、OHPの拡大投影用レンズ)、マイクロレンズアレイ、各種非球面レンズ、射出成型非球面レンズ(フィールドレンズ、リレーレンズ)、透過型スクリーンに用いられるフルネルシート(垂直拡散用レンチキュラーシート)、CDやDVD等光記録媒体、LED拡散フィルム、LED集光板、燃料電池用セパレータ、外部診断用チップ、細胞培養チップ、臓器代用部材等の各種産業分野で利用できる。
また、本発明による被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物には、その被スタンパー部材としての「インプリント性」及び「転写性」を阻害させない限りにおいて、公知の添加剤、例えば、熱安定剤、分散剤、防腐剤、撥水剤、粘度調節剤、タレ止め防止剤、表面張力調整剤、消泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗菌・防カビ剤、芳香剤、蛍光剤等を適宜配合させることができる。
代表的な熱可塑性樹脂であるPMMA樹脂を用いて、本発明による被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を調製するため、高分子量熱可塑性樹脂成分(A)として(Mw)=80万と113万、低分子量体樹脂成分(B)として(Mw)=5万,10万,14万のPMMAを調製した(参考例1〜5)。また、比較例として(Mw)=14万で且つ分子量分布係数(Mw/Mn)が広い低分子量体と狭い低分子量体を調製した(参考例6)。
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5質量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)0.5質量部を添加した。次いで、メタクリル酸メチル(MMA)100質量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部を30分かけて滴下した。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温しその温度で1.5時間保持した。得られたエマルション(E−1)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は84.4万、分子量分布は3.2であった。
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.25重量部を添加した。次いで、MMA100重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を30分かけて滴下し。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度で1.5時間保持した。得られたエマルション(E−2)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は113万、分子量分布は3.0であった。
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.5重量部を添加した。次いで、MMA100重量部、N−ドデシルメルカプタン(NDM)5重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を30分かけて滴下し、さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−3)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は5.7万、分子量分布は2.31であった。
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.5重量部を添加した。次いで、MMA100重量部、NDM0.5重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を30分かけて滴下した。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−4)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は10万、分子量分布は2.7であった。
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部、85℃まで昇温し、ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)を0. 5重量部添加した。
次いで、温度を76〜78℃に保ちながらメタクリル酸メチル(MMA)100重量部、N−ドデシルメルカプタン(NDM)0.2重量部、乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を、30分かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−5)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は13.9万、分子量分布は4.1であった。
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900重量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5重量部を投入し、温度を76〜78℃に保ちながらAPS0.5重量部を添加した。次いで、MMA100重量部、NDM1重量部及び乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を、30分かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持したあと、85℃まで昇温しその温度を1.5時間保持した。得られたエマルション(E−6)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量は14万、分子量分布は10.7であった。
なお、参考例1〜6で調製したPMMA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、いずれも約110℃(示差走査熱量計:Differential Scanning Calorimeter)であった。
参考例1〜6で得られたE−1〜6を、それぞれ、スプレードライで乾燥して粒子状の樹脂S−1〜6を得た。さらに、S−1〜6をメチルエチルケトンに溶解して、それぞれ樹脂分10重量%の樹脂溶液SS−1〜6を得た。なお、樹脂S−1及びS−3の可視光線透過率は、何れも90%であった。
樹脂溶液SS−1〜6をミカサ工業製スピンコーター1H−DX2を用いて樹脂シートすなわち「被スタンパー部材」を作製した。シート膜厚は樹脂溶解溶液粘度とコーターの回転数にて調整した(例えば、溶液の粘度が30P、回転数1200rpmの条件では、厚さ10μmの樹脂シートを得た)。
シリカ基盤へのレジスト塗布、EB照射、現像、エッチングを行いモールドを作製した。作製したモールドは、円形ドッド型で直径、10、5、2、1ミクロンのパターンがそれぞれ規則配列されたパターン、及び、ライン幅が0.15〜1.5μmで深さ300nmの凹凸型のパターンを使用した。
条件:レジスト:NEB−22(住友化学製)
モールド:Si基盤上に約300ナノのSiO2処理 2inch 直径約5cm
EB: ELIONIX ELS7500M使用
エッチング:CHF3ガス(50SCCM,2.0Pas,100W,15min)
エッチング(残レジストの除去):O2ガス(5Pas,100W)
モールド表面処理:ダイキン工業 オプツールDSX1%溶液(Perfluorohexane Solv.)
前記の樹脂S−1を被スタンパー部材に用いて、上記で作製した微細構造を有するスタンパー材を、熱転写装置である明昌機工(株)製NM0401および東芝機械(株)製ST50を使用して転写した。転写条件と転写結果を[表1]に示す。[表1]の結果から、好適な転写条件として、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒を選択することとした。
前記の装置で、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒の条件で、樹脂の種類及び厚みを変えて、転写テストを行った。熱インプリント後のスタンパー材からの剥離性、被スタンパー材の転写偏在や転写欠陥を、SEM写真像及びAFM写真像から評価した。結果を表2に示す。[表2]から明らかなように、S−1〜6の樹脂は、剥離性不良又は樹脂変形を起こして、良好なインプリント性及び転写性を有していない。
[本発明による被スタンパー部材のインプリント性及び転写性の評価]
S−1(高分子量熱可塑性樹脂成分(A))とS−3(低分子量熱可塑性樹脂成分(B))の配合比を変えた樹脂組成物E−1〜E−3及びH1〜H7を調製し、いずれも厚み10μmのシート状の被スタンパー部材を作成し、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒の条件で熱インプリントを行った。転写は、前記の明昌機工(株)製NM0401および東芝機械(株)製ST50を使用した。「インプリント性」及び「転写性」は、SEM写真像及びAFM写真像で評価した。結果を[表3]に示す。
また、使用した被スタンパー部材の熱インプリント時の転写精度について、添付図[図6]に図示するAFM写真像から評価した結果を[表4]に示す。表3及び表4から、熱インプリント時に、本発明の被スタンパー部材用樹脂組成物は、優れた「インプリント性」と「転写性」を有することが明確である。
図2〜6から、本発明の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物は、剥離性に優れすため樹脂の変形が無く、樹脂の流動性に優れるため転写偏在や転写欠陥が無いことが明らかである。
Claims (4)
- GPC法による重量平均分子量(Mw)が60万〜180万の範囲にあり且つ分子量分布係数(Mw/Mn)=1.5〜5の範囲にある高分子量熱可塑性樹脂成分(A)と、GPC法による重量平均分子量(Mw)が1万〜20万の範囲にあり且つ分子量分布係数(Mw/Mn)=1.1〜5の範囲にある低分子量熱可塑性樹脂成分(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記高分子量熱可塑性樹脂成分(A)及び前記低分子量熱可塑性樹脂成分(B)が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルサルホンの群から選ばれる何れか単独又は何れか2種類以上の組合せであり、
前記高分子量熱可塑性樹脂(A):前記低分子量熱可塑性樹脂(B)=7〜9:3〜1(質量比)であることを特徴とする被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物。 - 前記高分子量熱可塑性樹脂(A)及び前記低分子量熱可塑性樹脂(B)が、可視光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1に記載の被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または請求項2に記載する被スタンパー部材用熱可塑性樹脂組成物を用いて熱インプリント時に形成される厚さ50nm〜500μmの範囲にある被スタンパー部材樹脂に、スタンパー材の微細構造が転写されていることを特徴とする樹脂成形体。
- 前記スタンパー材の微細構造が、直径50nm〜1500nmの凸型又は凹型のドット、ピッチが60nm〜2μmの凸型又は凹型のライン及びスペースであるパターン群から選ばれる何れか単独パターン又は何れか2種以上の組合せパターンであり、パターンの深さ又は高さが20nm〜3μmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載する樹脂成形体。
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