JP5090898B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

本発明は、スパークプラグに関する。
従来から、内燃機関などに用いられるスパークプラグにおいて、放電により生じた火炎核のエネルギーを接地電極が奪う消炎作用を抑制するため、放電ギャップを形成するスパークプラグの接地電極の先端部に柱状の貴金属チップを溶接し、接地電極を放電ギャップから遠ざける技術が知られている。このようなスパークプラグとして、貴金属チップと中間部材とから構成された複合部材を接地電極に接合したスパークプラグが知られている(特許文献1)。ここで、貴金属チップと中間部材とはレーザ溶接によって形成された溶融部を介して互いに接合されている。
特開2004−134209号公報
しかし、スワールやその他の要因により、放電による火花が複合部材における貴金属チップ上だけではなく、貴金属チップより耐火花消耗性の劣る溶融部にも飛火することがあり、これにより溶融部が消耗し、貴金属チップの脱落などが発生する虞があった。
本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされた発明であり、溶融部へ火花の飛火を抑制し、スパークプラグの耐久性を向上させることを目的とする。
上記課題を解決するために本願発明は以下の態様を採る。
本発明の第1の態様は、スパークプラグを提供する。本発明の第1の態様に係るスパークプラグは、先端に略円形状の端面を有して軸線方向に延びる中心電極と、前記中心電極の先端を露出させつつ前記中心電極の外周に形成された絶縁体と、前記絶縁体の外周に形成された主体金具と、前記主体金具に接合された基端部と前記中心電極の端面と対向するように配置された先端部とを有する接地電極と、略円形状の端面を有し耐火花消耗材からなるチップと、耐蝕材からなる土台部と、前記チップおよび前記土台部を溶接により溶融させて形成された溶融部とを有し、前記接地電極の先端部における前記中心電極の端面と対向する面上に前記土台部が接合されるとともに前記チップの端面が前記中心電極の端面と対向するように配置されている複合部材と、を備え、前記中心電極の端面における端縁と前記チップの端面における端縁とを最短距離で結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度と、前記中心電極の前記端縁と前記溶融部の外面とを結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度のうち最大のものとの差が5°未満である。
本発明の第1の態様に係るスパークプラグによれば、放電により生じた火花が溶融部に飛火するのを抑制できるため、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。
本発明の第1の態様に係るスパークプラグにおいて、前記中心電極の端面の直径は、前記チップの端面の直径より小さくてもよい。この場合、中心電極の端縁と溶融部の外面とを最短距離で結ぶ直線にチップの端縁を近づけることができるので、溶融部よりもチップの端面に火花が飛火しやすくなる。このため、放電により生じた火花が溶融部に飛火するのを抑制でき、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。
本発明の第1の態様に係るスパークプラグにおいて、前記中心電極の端面と前記チップの端面との距離が0.5mm以上であってもよい。中心電極の端面とチップの端面との距離が0.5mm以上のスパークプラグでは、特に溶融部において火花が飛火しやすい。このため、そのようなスパークプラグに本発明を適用することにより、放電により生じた火花が溶融部に飛火するのを抑制でき、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。
本発明は、上記以外の種々の態様で、実現可能であり、例えば、中心電極と、主体金具と、接地電極とを備えるスパークプラグの製造方法であって、 円柱状に形成され、2つの端面を有する耐火花消耗材からなるチップと、円柱状に形成され、端面の直径が前記チップにおける前記端面の直径より大きく、直径の差が0.06mmより小さい範囲内である耐蝕材からなる土台部と、を準備する工程と、前記チップにおける一方の端面と前記土台部における前記端面とを接触させ、溶接により溶融部が形成された複合部材を作製する工程と、前記中心電極の端面における端縁と前記チップの他方の端面における端縁とを最短距離で結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度と、前記中心電極の前記端縁と前記溶融部の外面とを結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度のうち最大のものとの差が5°未満となるように前記複合部材を前記接地電極の先端部における前記中心電極の端面と対向する面上に接合する工程と、を備えるスパークプラグの製造方法などの形態で実現することが可能である。これにより、中心電極の端縁と溶融部の外面とを最短距離で結ぶ直線と、中心電極の端面とチップの端面とを最短距離で結ぶ直線とがなす角度を抑制することができるため、放電により生じた火花が溶融部に飛火するのを抑制でき、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。
以下、本発明に係るスパークプラグについて、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
A.スパークプラグの構造:
図1は、スパークプラグ100の部分断面図であり、図1において、スパークプラグ100の軸線O方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。
図1に示すように、スパークプラグ100は、絶縁碍子10と、主体金具50と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40とを備えている。
絶縁碍子10はアルミナ等を焼成して形成され、軸中心に軸線O方向へ延びる軸孔12が形成された筒形状を有する。絶縁碍子10は中心電極20と主体金具50とを絶縁する絶縁体として用いられている。軸線O方向の略中央には外径が最も大きな鍔部19が形成されており、それより後端側(図1における上側)には後端側胴部18が形成されている。鍔部19より先端側(図1における下側)には、後端側胴部18よりも外径の小さな先端側胴部17が形成され、さらにその先端側胴部17よりも先端側に、先端側胴部17よりも外径の小さな脚長部13が形成されている。脚長部13は先端側ほど縮径され、スパークプラグ100が内燃機関のエンジンヘッド200に取り付けられた際には、その燃焼室に曝される。脚長部13と先端側胴部17との間には段部15が形成されている。
中心電極20は、絶縁碍子10内に軸線O方向に保持された棒状の電極である。中心電極20は、インコネル(商標名)600または601等のニッケルまたはニッケルを主成分とする合金から形成された電極母材21の内部に、電極母材21よりも熱伝導性に優れる銅または銅を主成分とする合金からなる芯材25を埋設した構造を有する。通常、中心電極20は、有底筒状に形成された電極母材21の内部に芯材25を詰め、底側から押出成形を行って引き延ばすことで作製される。芯材25は、胴部分においては略一定の外径をなすものの、先端側においては先細り形状に形成される。
中心電極20の先端部22は絶縁碍子10の先端よりも突出されており、先端側に向かって径小となるように形成されている。中心電極20の先端部22の先端面には、耐火花消耗性を向上するため、高融点の貴金属からなる略円柱状の中心電極チップ90が溶接されている。中心電極チップ90は、例えば、イリジウム(Ir)や、Irを主成分として、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)等を、1種類あるいは2種類以上を添加したIr合金によって形成することができる。
中心電極20と中心電極チップ90の接合は、中心電極チップ90と中心電極20の先端部22との合わせ面を狙って外周を一周するレーザ溶接によって行われている。レーザ溶接では、レーザの照射により両材料が溶けて混ざり合うため、中心電極チップ90と中心電極20とは強固に接合される。中心電極20は軸孔12内を後端側に向けて延設され、シール体4およびセラミック抵抗3(図1参照)を経由して、後方(図1における上方)の端子金具40に電気的に接続されている。絶縁碍子10の後端部に設けられた端子金具40には、高圧ケーブル(図示しない)がプラグキャップ(図示しない)を介して接続され、高電圧が印加される。
接地電極30は主体金具50の先端面57に基部32を溶接され、先端部31の一側面が中心電極20の先端部22に対向するように配置されている。接地電極30は耐腐食性の高い金属から構成され、例えば、インコネル(商標名)600または601等のニッケル合金が用いられる。接地電極30は長手方向の横断面が略長方形を有している。接地電極30の先端部31は、先端部31の一側面が中心電極20に溶接された中心電極チップ90と、軸線O上で対向するように屈曲されている。
接地電極30の先端部31を構成する一側面であって、中心電極20の先端部22と軸線O上で対向する面上には、耐蝕性を有する中間部材60が溶接されている。中間部材60は、例えば、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)アルミニウム(Ai)等を含んだNi合金によって形成することができる。中間部材60上であって、中心電極20の先端部22と対向する側(図面上側)には、接地電極チップ70が溶接されている。中間部材60と接地電極チップ70との溶接はレーザ溶接によりおこなわれ、接地電極チップ70と中間部材60の溶融により溶融部80が形成されている。
接地電極チップ70は、例えば、Ptを主成分として、Rh、Ni等を1種類あるいは2種類以上を添加したPt合金によって形成することができる。接地電極チップ70、溶融部80および中間部材60の形状、寸法については後に詳述する。接地電極チップ70は特許請求の範囲におけるチップに該当する。中間部材60は特許請求の範囲における土台部に該当する。
主体金具50は、内燃機関のエンジンヘッド200にスパークプラグ100を固定するための円筒状の金具である。主体金具50は、絶縁碍子10を内部に保持している。主体金具50は低炭素鋼材より形成され、図示外のスパークプラグレンチが嵌合する工具係合部51と、内燃機関の上部に設けられたエンジンヘッド200の取付ねじ孔201に螺合するねじ山が形成された取付ねじ部52とを備えている。
主体金具50の工具係合部51と取付ねじ部52との間には、鍔状のシール部54が形成されている。取付ねじ部52とシール部54との間のねじ首59には、板体を折り曲げて形成した環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、スパークプラグ100をエンジンヘッド200に取り付けた際に、シール部54の座面55と、取付ねじ孔201の開口周縁部205との間で押し潰されて変形する。このガスケット5の変形により、スパークプラグ100とエンジンヘッド200間が封止され、取付ねじ孔201を介したエンジン内の気密漏れが防止される。
主体金具50の工具係合部51より後端側には薄肉の加締部53が設けられている。また、シール部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に薄肉の座屈部58が設けられている。工具係合部51から加締部53にかけての主体金具50の内周面と絶縁碍子10との間には、円環状のリング部材6,7が介在され、さらにタルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53を内側に折り曲げるようにして加締めることにより、リング部材6,7およびタルク9を介し、絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。これにより、主体金具50の内周で取付ねじ部52の位置に形成された段部56に、環状の板パッキン8を介し、絶縁碍子10の段部15が支持されて、主体金具50と絶縁碍子10とが一体にされる。このとき、主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性は、板パッキン8によって保持され、燃焼ガスの流出が防止される。座屈部58は、加締めの際に、圧縮力の付加に伴い外向きに撓み変形するように構成されており、タルク9の軸線O方向の圧縮長を長くして主体金具50内の気密性を高めている。なお、先端側における主体金具50と絶縁碍子10との間には、所定寸法のクリアランスが設けられている。
B.各部寸法:
図2は溶接前の接地電極チップ70と中間部材60の例示図である。図3は溶接後の接地電極チップ70と中間部材60の例示図である。図4は中心電極20の先端部付近の拡大図である。
図2を参照して、接地電極チップ70と中間部材60の各部の寸法について説明する。接地電極チップ70は図示のように略円柱形状を有しており、軸線に垂直な方向に接地電極対向面SFを有している。接地電極対向面SFはスパークプラグ100において中心電極20の先端部22と対向するように配置される。接地電極対向面SFは外縁部71を外周とした略円形状を有している。接地電極チップ70の直径を接地電極チップ径D1(mm)とする。中間部材60は、略円形状の柱部61と柱部61よりも径方向に拡径された鍔状をなす鍔部62とを有し、柱部61における軸線に垂直な方向の端面には接地電極チップ70を設置する設置面DFを有している。設置面DFは略円形状を有している。中間部材60における柱部61の直径を中間部材径D2(mm)とする。接地電極チップ70は、中間部材60の設置面DF上に接地電極チップ70の軸線と中間部材60の軸線を合わせた状態で配置されている。ここで、本実施形態では接地電極チップ径D1と中間部材径D2は
D2−D1<0.06 ・・・(1)
となるように接地電極チップ70および中間部材60が形成されている。この寸法の根拠は、後述する実施例2において説明する。
図3を参照して、溶融部80における各寸法について説明する。中間部材60の設置面DFの一部と接地電極チップ70の側面の一部には溶融により溶融部80が形成されている。ここで、接地電極チップ70の軸線から溶融部80の外表面までの距離が最大である部分を最外部81とする。なお、中間部材60と接地電極チップ70とがレーザ溶接により接合されてチップ付き中間部材CPが作製される。チップ付き中間部材CPは特許請求の範囲における複合部材に該当する。このチップ付き中間部材CPは、接地電極30の先端部31を構成する一側面であって中心電極20の先端部22と軸線O上で対向する面上に、中間部材60における鍔部62が接地電極30側となるように抵抗溶接される。
図4を用いて、スパークプラグ100の中心電極20の先端部22付近における各部の寸法を説明する。チップ付き中間部材CPは軸線を中心電極20の軸線に合わせて配置されている。中心電極チップ90の接地電極チップ70と対向する面を中心電極対向面CFとし、中心電極チップ90の直径を中心電極チップ径D4(mm)とする。中心電極対向面CFと接地電極対向面SFとの距離を火花ギャップG(mm)とする。中心電極対向面CFの外縁部91から接地電極対向面SFへの垂線(軸線Oと平行)と、中心電極対向面CFの外縁部91から接地電極対向面SFの外縁部71とを結ぶ線と、がなす角度をA(°)、中心電極対向面CFの外縁部91から接地電極対向面SFへの垂線(軸線Oと平行)と、中心電極対向面CFの外縁部91から溶融部80の最外部81とを結ぶ線と、がなす角度のうち最大のものをB(°)とすると、本実施形態のスパークプラグ100は、
B−A<5° ・・・(2)
となるように形成されている。この寸法の根拠は、後述する実施例1において説明する。火花ギャップGについては、
G≧0.5 ・・・(3)
となるように形成されている。火花ギャップGが0.5mmより小さい場合、溶融部80に飛火する頻度が少ないため、溶融部80の消耗がそれ程問題になることは少ないが、火花ギャップGが0.5mm以上になると、溶融部80に飛火する頻度が多くなり、溶融部80の消耗の問題が顕著になるため、火花ギャップGが0.5mm以上のスパークプラグに本発明を適用することで、溶融部80の消耗を抑制したスパークプラグ100とすることができる。また、接地電極チップ径D1と中心電極チップ径D4とは、
D1>D4 ・・・(4)
となるように形成されている。このようにすることで角度Aと角度Bとの差B−Aの値を小さくすることができる。
なお、スパークプラグ100は、例えば、以下のような製造方法によって製造することが可能である。すなわち、上述した構造および寸法をそれぞれ採る中心電極20と、絶縁碍子10と、主体金具50と、接地電極30とを用意し、接地電極チップ径D1と中間部材径D2が式(1)および式(2)を満たすようにチップ付き中間部材CPを接地電極30に溶接する製造方法である。
C.実施例:
以下、上述した各部の寸法の根拠を種々の実施例に基づき説明する。
(実施例1)
実施例1では、角度Aと角度Bとの差を変化させた複数のスパークプラグについて火花を発生させ、溶融部の消耗の有無についての確認をおこなった。実施例1では、火花ギャップGおよび溶融部80の最外部81の異なるスパークプラグ100のサンプルを複数用意した。具体的には、中心電極チップ径D4を0.6mmとし、火花ギャップGがそれぞれ0.8mm,1.1mmであるサンプルを用意し、それぞれの溶融部80の最外部81を調整することにより全12種類のサンプルを用意した。
そして、圧力0.4MPaの外部空気雰囲気下で、250時間にわたり100Hzの頻度で火花を発生させ、溶融部80の消耗の有無について確認した。
図5は、実施例1における評価実験の結果を示す表である。No.1〜No.6は火花ギャップGが0.8mmであり、No.7〜No.12は1.1mmである。また、No.1〜No.6およびNo.7〜No.12は順に溶融部80の最外部81を大きくすることで角度Bと角度Aとの差を変化させている。
本実施例によれば、No.1〜No.6のうち、No.1〜No.3について溶融部80の消耗が確認されず、それ以外については消耗が確認された。また、No.7〜No.12のうち、No.7〜No.9について溶融部80の消耗が確認されず、それ以外については消耗が確認された。このことから、火花ギャップGがそれぞれ0.8mm,1.1mmのいずれにおいても、B−Aの値が5°未満の場合に溶融部80の消耗が抑制されることが確認できた。よって、上記実施形態のスパークプラグ100のB−Aの値は5°未満と規定した。このように規定すれば、火花が溶融部80に飛火することを抑制でき、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。本実施例によれば、B−Aの値は4.7°以下とすることがさらに好ましい。
なお、中心電極チップ径D4を接地電極チップ径D1より小さくすることで、火花が溶融部80に飛火することを抑制できることから、中心電極チップ径D4および接地電極チップ径D1を規定した。
(実施例2)
実施例2では、中間部材径D2と接地電極チップ径D1との差を変化させた複数のスパークプラグについて中間部材60と接地電極チップ70の溶接をおこない、実施例1で得られたB−Aの値が5°未満となるのに適した寸法についての確認をおこなった。実施例2では、接地電極チップ径D1は同一で、中間部材径D2の異なるスパークプラグ100のサンプルを複数用意した。なお、中間部材60と接地電極チップ70との溶接の際に中間部材60と接地電極チップ70との軸線がずれ、接地電極チップ70の外縁部71が中間部材60の設置面DF上に収まらなかったものについては除外した。
そして、中間部材60と接地電極チップ70との溶接後、中心電極チップ90の直径D4が0.6mm、火花ギャップGが0.8mmの場合におけるB−Aの値を測定した。
図6は、実施例2における評価実験の結果を示す表である。図6の表は下段ほど中間部材径D2が大きくなるように構成されている。図6より、D2−D1の値が大きくなるほどB−Aの値が大きくなることがわかる。
本実施例によれば、No.21、22ではB−Aの値が5°より小さくなり、それ以外ではB−Aの値が5°より大きくなった。このことから、中間部材径D2と接地電極チップ径D1との差が少なくとも0.06mmより小さい場合において、B−Aの値が5°未満となることが確認できた。よって、上記実施形態のスパークプラグ100のD2−D1の値は0.06mmより小さいものであると規定した。このように規定すれば、B−Aの値が5°より小さくなり、火花が溶融部80に飛火することを抑制することができる。本実施例によれば、D2−D1の値は0.05mm以下とすることがさらに好ましい。
以上のように、本実施形態のスパークプラグ100の各部の寸法を規定することによって、放電により生じた火花が溶融部80に飛火するのを抑制できるため、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。
本実施形態のスパークプラグ100によれば、中間部材径D2は接地電極チップ径D1より大きく、接地電極チップ径D1と中間部材径D2との差は0.06mmより小さい。そのため、中心電極対向面CFの外縁部91から接地電極対向面SFへの垂線と、中心電極対向面CFの外縁部91から溶融部80の最外部81とを結ぶ線と、がなす角度Bを小さくすることができ、放電により生じた火花が溶融部80に飛火するのを抑制してスパークプラグの耐久性を向上させることができる。
本実施形態のスパークプラグ100によれば、中心電極チップ径D4は接地電極チップ径D1より小さいため、中心電極対向面CFの外縁部91から溶融部80の最外部81とを最短距離で結ぶ直線に接地電極対向面SFの外縁部71を近づけることができるので、溶融部80よりも接地電極対向面SFに火花が飛火しやすくなる。このため、放電により生じた火花が溶融部80に飛火するのを抑制でき、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。
本実施形態のスパークプラグ100によれば、火花ギャップGが0.5mm以上であるにも関わらず、放電により生じた火花が溶融部80に飛火するのを抑制でき、スパークプラグの耐久性を向上させることができる。
D.変形例:
以上、本発明の実施形態および種々の実施例について説明したが、本発明は上述した実施形態や実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以下のような変形が可能である。
(変形例1)
上記実施形態では、図4に示すように、中心電極20の先端部22に、中心電極チップ90が溶接されている例を示した。しかし、中心電極20の先端部22において中心電極対向面CFが形成されていれば、中心電極チップ90がない態様であっても実施可能である。
(変形例2)
上記実施形態では、接地電極チップ70は、軸線を中間部材60の軸線と合わせるようにして中間部材60の設置面DF上に配置されているが、接地電極チップ70の軸線と中間部材60の軸線がずれていても、中心電極対向面CFの外縁部91から接地電極対向面SFへの垂線と、中心電極対向面CFの外縁部91から溶融部80の外表面とを結ぶ線と、がなす角のうち最大となるものを角Bとして実施可能である。
(変形例3)
上記実施形態では、接地電極チップ70の軸線と中心電極チップ90の軸線を合わせるようにチップ付き中間部材CPを接地電極30上に配置しているが、接地電極チップ70の軸線と中心電極チップ90の軸線がずれていても、中心電極対向面CFの外縁部91から接地電極対向面SFへの垂線と、中心電極対向面CFの外縁部91から溶融部80の外表面とを結ぶ線と、がなす角のうち最大となるものを角Bとして実施可能である。
(変形例4)
上記実施形態では、接地電極対向面SF、設置面DF、中心電極対向面CFは略円形状であるとしているが、円形以外の形状であっても実施可能である。
(変形例5)
上記実施形態における中心電極チップ90、接地電極チップ70および中間部材60と異なる材料により構成された中心電極チップ90、接地電極チップ70および中間部材60であっても実施可能である。また、上記実施形態における絶縁碍子10および主体金具50と異なる形態、構成および材料の絶縁碍子10および主体金具50であっても実施可能である。
スパークプラグ100の部分断面図である。 接合前の接地電極チップ70と中間部材60の例示図である。 接合後の接地電極チップ70と中間部材60の例示図である。 中心電極20の先端部付近の拡大図である。 実施例1における評価実験の結果を示す表である。 実施例2における評価実験の結果を示す表である。
符号の説明
10…絶縁碍子
20…中心電極
30…接地電極
40…端子金具
50…主体金具
60…中間部材
70…接地電極チップ
80…溶融部
90…中心電極チップ
100…スパークプラグ
200…エンジンヘッド

Claims (2)

  1. スパークプラグであって、
    先端に略円形状の端面を有して軸線方向に延びる中心電極と、
    前記中心電極の先端を露出させつつ前記中心電極の外周に形成された絶縁体と、
    前記絶縁体の外周に形成された主体金具と、
    前記主体金具に接合された基端部と前記中心電極の端面と対向するように配置された先端部とを有する接地電極と、
    略円形状の端面を有し耐火花消耗材からなる略円柱形状のチップと、前記チップを設置するための略円形状の設置面を有し耐蝕材からなる土台部と、前記チップおよび前記土台部を溶接により溶融させて形成された溶融部とを有し、前記接地電極の先端部における前記中心電極の端面と対向する面上に前記土台部が接合されるとともに前記チップの端面が前記中心電極の端面と対向するように配置されている複合部材と、を備え、
    前記土台部の設置面の直径は、前記チップの端面の直径より大きく、
    前記中心電極の端面の直径は、前記チップの端面の直径より小さく、
    前記中心電極の端面における端縁と前記チップの端面における端縁とを最短距離で結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度を角度Aとし、前記中心電極の前記端縁と前記溶融部の外面とを結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度のうち最大のものを角度Bとすると、
    0≦B−A≦4.7°であり
    前記中心電極の端面と前記チップの端面との距離が0.5mm以上であるスパークプラグ。
  2. スパークプラグであって、
    先端に略円形状の端面を有して軸線方向に延びる中心電極と、
    前記中心電極の先端を露出させつつ前記中心電極の外周に形成された絶縁体と、
    前記絶縁体の外周に形成された主体金具と、
    前記主体金具に接合された基端部と前記中心電極の端面と対向するように配置された先端部とを有する接地電極と、
    略円形状の端面を有し耐火花消耗材からなる略円柱形状のチップと、前記チップを設置するための略円形状の設置面を有し耐蝕材からなる土台部と、前記チップおよび前記土台部を溶接により溶融させて形成された溶融部とを有し、前記接地電極の先端部における前記中心電極の端面と対向する面上に前記土台部が接合されるとともに前記チップの端面が前記中心電極の端面と対向するように配置されている複合部材と、を備え、
    前記土台部の設置面の直径は、前記チップの端面の直径より大きく、
    前記中心電極の端面の直径は、前記チップの端面の直径より小さく、
    前記中心電極の端面における端縁と前記チップの端面における端縁とを最短距離で結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度を角度Aとし、前記中心電極の前記端縁と前記溶融部の外面とを結ぶ直線と、前記軸線と、がなす角度のうち最大のものを角度Bとすると、
    0≦B−A≦4.7°であスパークプラグ。
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