JP5090062B2 - 建物屋根の劣化判定方法 - Google Patents

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本発明は、工場、倉庫等の大規模の建物の屋根の劣化を判定する方法に関する。
工場、倉庫等の大面積の屋根を有する建物では、鋼板やめっき鋼板を屋根材として用いることが多い。これら屋根材は塗装され、これにより錆の発生を抑制可能である。しかし、太陽光線や雨・風などに晒され、塗装も劣化し、それと共に急速に錆が発生し得る。これを放置すると腐食が進行し、その後、大規模な修繕工事が必要となり、費用は塗装作業の何倍もかかってしまう。このようなことが起こる前に、屋根の劣化部分を発見し、塗替え等の適切な処置を行なうことが重要である。
従来、劣化状況の把握は、建物屋根に作業者が上がって目視観察することにより行われている。しかし、当該作業には、高所作業に伴う安全性の確保が必要であり、また専門の技術を要すると共に大面積の検査には人手や時間がかかるという問題点が存在する。そのため、下記特許文献1に示されるように、屋根を撮影した画像を処理して、劣化度を評価することが考えられている。
特開平7−318510号公報
錆が発生している部分等の劣化部分をより精度良く把握し、定量的、効率的に評価することが望まれている。本発明は、屋根を上方より撮影した画像を用いて、上述の要求に応える、建物屋根の劣化判定方法を提供することを目的とする。
本発明に係る建物屋根の劣化判定方法は、判定対象の建物屋根を撮影した異なる時期の複数の屋根画像間での画素値の変化に基づいて、当該建物屋根の劣化部分を判定する方法である。
本発明の好適な態様は、前記画素値の変化量が所定の劣化判定閾値を超えたことに基づいて前記劣化部分を判定する方法である。
本発明の他の好適な態様は、前記画素値の変化量に応じた複数の劣化等級を設定し、前記劣化部分を前記劣化等級に応じて区分する方法である。
また、本発明に係る建物屋根の劣化判定方法は、前記画素値の変化量が前記劣化判定閾値以下であるが所定の予備閾値を超えている劣化部分候補画素について、撮影時期が異なる3つ以上の前記屋根画像間にて、前記画素値が前記建物屋根の劣化進行に応じた変化傾向を有することに基づき、前記劣化部分を構成する劣化部分画素と判定する方法とすることもできる。
また、本発明に係る建物屋根の劣化判定方法は、前記画素値の変化量が前記劣化判定閾値以下であるが所定の予備閾値を超えている劣化部分候補画素について、撮影時期が異なる3つ以上の前記屋根画像間にて、当該劣化部分候補画素の所定周辺領域内に存在し前記劣化部分を構成する劣化部分画素の数が前記建物屋根の劣化進行に応じた変化傾向を有することに基づき、前記劣化部分画素と判定する方法とすることもできる。
本発明に係る建物屋根の劣化判定方法は、例えば、錆の発生部分を前記劣化部分として判定する。
塗装のはがれや錆の発生等による劣化は時間と共に進行し、また基本的に不可逆であるという特性を有する。本発明はこの性質を利用することで、劣化部分を自動的に精度よく判定し、定量的な評価を効率的に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態である建物屋根の劣化判定方法を説明する概略の処理フロー図である。
判定対象の建物の屋根の画像を、例えば、数ヶ月、数年といった時間間隔をおいた複数の時期にて撮影する(S10)。撮影は、航空機等の飛行体から行うことができる。航空機からマルチスペクトルで撮影された地上の高分解能画像は、屋根の形状や色等の情報を与え、屋根の錆びた部分の抽出に適している。ただし、撮影された航空画像は、航空機に搭載したカメラのレンズ中心から平面に投影した画像であり、建物等が倒れるといった歪みが生じる。そこで、各時期の航空画像の当該歪みを補正して、地表面を真上から見た正射影画像であるトゥルーオルソ画像に変換する(S15)。
次に、2つの時期のトゥルーオルソ画像の差分画像を生成し、変化強度を求める(S20)。例えば、直近に撮影された航空画像に基づく画像Pと、画像Pより期間T1だけ前に撮影された航空画像に基づく画像Pとから、差分画像Pを生成する。画像P,P,Pそれぞれの互いに対応する任意の画素をA,B,Gと表す。画像P,Pはマルチスペクトル画像であり、A,Bの画素値は、各スペクトル毎の成分からなるベクトルで表すことができる。これを次のように表す。ここで、nはマルチスペクトル画像のバンド数であり、Tは転置行列を表す。
A≡(a,a,…,a ………(1)
B≡(b,b,…,b ………(2)
例えば、A,Bとして、R(赤色光),G(緑色光),B(青色光)の各成分で構成されるマルチスペクトル画像や、さらにIR(赤外光)成分を含んだマルチスペクトル画像を用いることができる。
差分画像の各画素Gは、次式で与えられる。
G≡A−B=(a−b,a−b,…,a−b ………(3)
このようにして得られた差分画像Pを用いて、錆が生じている部分に対応する画素(錆ピクセル)を抽出する。錆ピクセルは、画像P,Pが得られた2時期の間での画素値A,Bの変化量に基づいて判定され、具体的には、差分画像Pの画素値ベクトルGから次式、
|G|≡{(a−b)+(a−b)+…+(a−b)1/2 ………(4)
で算出される変化強度|G|に基づいて判定される(S25)。このとき、予め得られている家屋ポリゴン情報30を参照して、建物に対応する画素だけを抽出し、判定処理S25を行う。これにより、建物以外の地物に対応する画素が錆ピクセルとして抽出されることを防止できる。例えば、2時期の間にて成長した樹木等は大きな変化強度|G|を有し得るが、家屋ポリゴン情報を参照することで、そのようなものを錆ピクセルとして誤検出することが防止される。
なお、|G|は、各成分に重み付けをして算出してもよい。例えば、劣化が進むと当初の塗装の色が失われ、錆の色が強まると考えられることから、塗装や錆の色に対応する成分の重みを大きくし、それ以外の成分の重みを小さくすることにより、劣化による変化とそうでない変化との弁別度を向上できる。
錆ピクセルの判定は、各画素毎に|G|と劣化判定閾値α及び予備閾値α(α<α)を比較することにより行われる。例えば、劣化判定閾値及び予備閾値は以下のように設定することができる。劣化の有無を判定する閾値αは、例えば錆画像の分析結果より経験的に求めるが、一般に変化強度から錆であるか否かの判定を高精度に行うことは困難である。そこで、閾値αに±Δαの幅の許容範囲を設定する。α+Δαを顕著な劣化と判断できる下限値とし、この値を超える|G|を生じる画素を錆ピクセルと断定する。またα−Δαを劣化の進行が無視できる上限値とし、この値以下である|G|を生じる画素を錆ピクセルでないと断定する。これら下限値・上限値をそれぞれ劣化判定閾値α及び予備閾値αとして設定する。なお、この比較に際して、|G|を画像の撮影時期の間隔T1で規格化したり、T1に応じてα,αを変化させてもよい。
建物を構成する各画素は、2つの閾値α,αとの比較結果に応じてインデックスFを付与され、当該インデックスに応じて後続の処理が選択される(S35)。具体的には、|G|がαより大きい場合には、F=1を付与する。一方、|G|がα以下の場合には、F=2を付与する。それらの中間の状態、すなわち、α<|G|≦αの場合は、F=0を付与する。
F=1を付与された画素は上述のように錆ピクセルと断定され、錆領域(劣化部分)を構成する画素として抽出される(S40)。
F=0を付与された画素は、|G|に基づいては錆ピクセルか否かを判定せずに錆ピクセルの候補である錆候補ピクセルとし、さらに3つ以上の時期に亘る画像が利用できる場合には、これらの画素値を利用して、その変化傾向についての分析を行う。例えば、画像P,Pを含め、n時期(n≧3)に撮影された画像PCi(iは0〜n−1なる自然数)の互いに対応する画素Cの画素値の間の変化傾向を調べる(S45)。例えば、各PCiの撮影時期tをt<t<…<tn−1とし、最初の画像PC0を基準として、後続の画像PC1〜PC(n−1)それぞれと画像PC0との差分画像PG1〜PG(n−1)を求める。そして各PGj(jは1〜n−1なる自然数)における互いに対応する画素Gの変化強度|G|の時期を追った変化を分析する。錆による劣化は不可逆に進行するので、基本的に、|G|<|G|<…<|Gn−1|なる変化傾向が存在する場合には、錆による変化であると判断して、当該画素のインデックスFをF=1に変更する。一方、|G|<|G|<…<|Gn−1|なる|G|の単調増加傾向が認められない場合には、F=0を維持する。
ちなみに、|G|の単調増加傾向が存在することは、1≦k≦n−2である任意の自然数kについて|G|<|Gk+1|が成立することに基づいて判定することができる。ここで、塗装が維持され劣化が抑制されている場合には、|G|は基本的には単調には増加せず、撮影条件等に応じて増減して|G|≧|Gk+1|となる場合が起こる。よって、この場合はF=0を維持することとする。
また、錆が進行していても、撮影条件の相違等の影響が勝って、|G|≧|Gk+1|となることも考えられる。そのような影響を除去するために、例えば、回帰分析等を行い、その結果、変化強度の単調増加が認められる場合にはF=1とし、有意な増加傾向が認められない場合にはF=0を維持する処理とすることもできる。
以上、変化強度|G|の変化傾向の分析について説明したが、さらに他の変化傾向分析を併用することができる。例えば、注目する画素の周辺領域の変化傾向を考慮することができる(S50)。例えば、各画像PCiにおいて注目画素Dの所定周辺領域内に存在する|G|>αとなる画素、すなわち錆ピクセルまたは錆候補ピクセルに相当する画素の数Mを求める。そしてMの変化を分析する。処理S25での|G|に基づく判定では錆ピクセルとは断定されなかった画素に関して、M<M<…<Mなる変化傾向が存在する場合には、当該画素の周辺領域での劣化の進行により、当該画素も錆により|G|が変化していると判断して、当該画素のインデックスFをF=1に変更する。一方、M<M<…<Mなる変化傾向が認められない場合には、F=0を維持する。
例えば、処理S25にてF=0とされた各画素について、上述の処理S45の判定及び処理S50の判定を行い、両方判定にて錆の進行に対応した変化傾向が認められた場合に、当該画素を錆ピクセルと判断することができる。また、いずれか一方の判定で錆の進行に対応した変化傾向が認められた場合に、当該画素を錆ピクセルと判断してもよい。なお、処理S45と処理S50は順序を入れ替えても構わない。
時系列の画像に基づく分析処理S45,S50にてF=1を付与された画素は(S55)、錆領域(劣化部分)を構成する画素として抽出される(S40)。
錆ピクセルは、例えば|G|に応じてランク分けされる。例えば、閾値β,β,…,βm−1(β>β>…>βm−1)を用いて、|G|≧β,β>|G|≧β,…βm−1>|G|のmランクを設定する。そして、例えば、|G|が大きなランクから順に、ランク値R=1〜mを定義し、各ランクに属する錆ピクセルに当該ランクのランク値Rを付与する(S60)。なお、2時期の画像しか利用できない場合には、S45、S50の各処理は行わず、F=0とする。あるいは、S35にてαまたはαの一方を用いてF=1またはF=2と判断してもよい。
以上の処理により画素に対応して求められたF値やR値はファイルに出力され(S65)、当該画素についての処理を完了する。一方、F=2を付与された画素や、処理S45,S50にてF=0を維持された画素は、錆ピクセルとは判定されずに処理を終了する。
各画素について上述の処理が繰り返され(S70)、画像を構成する全ての画素について当該処理が完了すると、建物屋根の劣化判定処理を終了する。
例えば、上述の劣化判定処理でファイルに出力された結果を用いて、建物屋根に生じた錆(又は劣化部分)の面積や程度(ランク)を定量的に把握でき、効率的に屋根の点検や補修の計画や作業実行のための資料を作成することができる。本方法によれば、劣化部分が自動的に判定され、熟練者の経験を要せずに客観的な判定が可能となる。例えば、建物屋根の劣化判定結果は、アセットマネジメントに利用するといった用途も考えられる。
上述の実施形態の劣化判定では航空機画像を用いる例を示したが、これに限られるものではなく、高分解能衛星画像を用いて同様の処理を行うこともできる。
本発明の実施形態である建物屋根の劣化判定方法を説明する概略の処理フロー図である。

Claims (4)

  1. 判定対象の建物屋根を撮影した異なる時期の複数の屋根画像間での画素値の変化量が所定の劣化判定閾値を超えたことに基づいて、当該建物屋根の劣化部分を判定する建物屋根の劣化判定方法であって、
    前記画素値の変化量が前記劣化判定閾値以下であるが所定の予備閾値を超えている劣化部分候補画素について、撮影時期が異なる3つ以上の前記屋根画像間にて、前記画素値が前記建物屋根の劣化進行に応じた変化傾向を有することに基づき、前記劣化部分を構成する劣化部分画素と判定すること、を特徴とする建物屋根の劣化判定方法。
  2. 判定対象の建物屋根を撮影した異なる時期の複数の屋根画像間での画素値の変化量が所定の劣化判定閾値を超えたことに基づいて、当該建物屋根の劣化部分を判定する建物屋根の劣化判定方法であって、
    前記画素値の変化量が前記劣化判定閾値以下であるが所定の予備閾値を超えている劣化部分候補画素について、撮影時期が異なる3つ以上の前記屋根画像間にて、当該劣化部分候補画素の所定周辺領域内に存在し前記劣化部分を構成する劣化部分画素の数が前記建物屋根の劣化進行に応じた変化傾向を有することに基づき、前記劣化部分画素と判定すること、を特徴とする建物屋根の劣化判定方法。
  3. 前記画素値の変化量に応じた複数の劣化等級を設定し、
    前記劣化部分を前記劣化等級に応じて区分すること、
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物屋根の劣化判定方法。
  4. 錆の発生部分を前記劣化部分として判定することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1つに記載の建物屋根の劣化判定方法。
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