JP5088601B2 - 磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法及び磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法及び磁気記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法及び磁気記録媒体に関する。
固定磁気記録媒体を用いた外部磁気記憶装置は、コンピュータや情報家電のデータ記憶装置として汎用的に利用されている。
この外部記憶装置は、磁気ヘッド駆動機構、磁気ヘッド停止機構、及びデータ転送制御機構とともに、単数もしくは複数の磁気記録媒体を組み込んだ装置である。
近年、固定磁気記録媒体を用いた外部磁気記録装置においては、高記録密度化、データ転送速度高速化、小型化などの進歩が著しい。
固定磁気記録媒体を用いた外部磁気記憶装置は、磁気記録媒体の回転時に磁気ヘッドが浮上し、磁気記録媒体を回転させる回転駆動モーターが停止したときには、磁気ヘッドが磁気記録媒体表面に接触するCSS(コンタクト・スタート・ストップ)方式が採用されている。この方式の場合、磁気記録媒体の回転開始時及び停止時にヘッドが磁気記録媒体表面と摺動しそれらの間に磨耗が生じる。このような磨耗から磁性層を保護するために磁気記録媒体表面に保護層が積層されており、さらに表面潤滑特性を改善するために潤滑層が保護層の上に積層されている。
高記録密度化対応のため、磁気ヘッドの浮上量が数十nm以下になっており、今後もさらに低浮上状態で成立する磁気ヘッド、磁気記録媒体表面の設計が求められている。これを実現する妨げになるもののひとつとして、磁気記録装置内部で発生するガス成分の磁気記録媒体表面への吸着が挙げられる。特に、酸性ガスが磁気記録媒体表面に吸着すると、腐食の基点になり、磁性層からのコバルトなどの溶出をもたらす。その結果、コバルトイオンが磁気記録媒体表面へマイグレーションし、該表面にコバルト化合物による突起が形成され、この突起と磁気ヘッドの接触が生じて磁気ヘッドの浮上状態が乱れる。また、酸性ガス以外でも、例えば、磁気記録媒体表面に有機分子が付着した場合も、磁気ヘッドの浮上量が現在の浮上量より小さくなると、有機分子のサイズそのものが磁気ヘッドと磁気記録媒体表面の間隔に近い大きさになるため、磁気ヘッドの浮上を乱す原因となる。
潤滑層には、従来より、分子内に水酸基やピペロニル基などの官能基を有するパーフルオロポリエーテルが用いられている。パーフルオロポリエーテルの分子内に上述のような官能基を導入すると、パーフルオロポリエーテルを保護層に吸着させることができ、磁気記録装置内部で発生するガス成分の吸着を抑制することができる。使用するパーフルオロポリエーテルの分子量が小さすぎると潤滑特性が低下し、分子量が高すぎると磁気ヘッドと潤滑層との吸着傾向が高くなるため、一般的に潤滑層に使用するパーフルオロポリエーテルの分子量は1500〜5500程度であり、膜厚は2nm以下である。潤滑層を厚くすればそれだけガス吸着量を抑制できるが、潤滑層を厚くすると静止時の磁気ヘッドと磁気記録媒体の吸着のため、静止摩擦係数が上昇する。そのため、一定の潤滑層膜厚においてどれだけガス吸着が抑制できるかが潤滑層の特性向上の指標となる。
潤滑層の特性を改善するために、互いに異なる性質を有する2種類以上の材料を混合して用いるケースが増えてきている。中でも、パーフルオロポリエーテル潤滑剤に環状トリフォスファゼン化合物を添加する特性改善法がある(例えば、特許文献1、2参照。)。
また、パーフルオロエーテル分子中に環状トリフォスファゼン化合物を導入した潤滑剤の提案もある(例えば、特許文献2、3参照。)。
特許文献1では、特定の構造の環状トリフォスファゼン化合物をパーフルオロポリエーテル潤滑剤に添加することで、潤滑特性の向上を図ることができ、パーフルオロポリエーテル分子の分解を抑制できるとしている。特許文献2においては、パーフルオロポリエーテルの両端に環状トリフォスファゼン化合物を導入した潤滑剤とパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の混合潤滑剤を表面粗さの低いダイヤモンドライクカーボンからなる保護層上に塗布することで信頼性と耐磨耗性を向上させる方法を開示している。
特許文献3ではパーフルオロポリエーテル末端に環状トリフォスファゼン化合物を導入することで、パーフルオロポリエーテルを主体とする潤滑層中で環状トリフォスファゼン化合物を混合したとき環状トリフォスファゼン化合物が凝集するという問題を解決する提案をしている。
特開平9−305961号公報 特開2001−331926号公報 特開2000−260017号公報
潤滑層用として2種類の材料を混合するに当たり、その比率を制御することは特性の安定にとって重要である。しかし、混合潤滑層のそれぞれの成分の絶対膜厚測定は破壊検査によるものがほとんどで、それぞれの膜厚を非破壊で、しかも同時に一度の測定で定量する方法は知られていない。絶対膜厚の測定と、潤滑剤混合溶液作成時の混合比率から塗布された潤滑層における成分の比率を得る方法では、混合比率において一方の成分が増加すると膜厚比率においてその成分の比率が増加するという点では一応の関係は存在するが、絶対膜厚と混合比率から算出される各成分の膜厚換算比率と実際の膜厚は必ずしも一致するものではない。また、混合潤滑層形成時の引き上げ速度によっても膜厚換算比率は変化する。
このため、混合比率だけでは膜厚換算比率を制御できず、各成分の膜厚に換算した比率を実際に測定し、その膜厚から所望の比率、即ち所望の膜厚に調整制御する必要がある。この膜厚換算比率はオングストロームオーダーでの厚さの制御が必要であり、そのためには高精度の膜厚測定が必要とされている。
パーフルオロポリエーテル潤滑剤からなる潤滑層の膜厚は、X線光電子分光分析法(XPS法)により絶対膜厚を測定することができ、この膜厚は赤外分光の吸収波形における1280nm−1の吸光度と比例することが知られている。このピークは他のピークに比べて十分強く、この吸光度で膜厚を定量するのに充分な強度を有している。
一方、分子内にCF構造を有する環状フォスファゼン化合物は、1333cm−1に大きな吸光度のピークを有するが、パーフルオロポリエーテル潤滑剤からなる潤滑層が有する赤外分光の吸収波形と重なってしまうため、分子内にCF構造を有する環状フォスファゼン化合物の定量には、従来、磁気記録媒体から潤滑剤を抽出し、得られた溶液の濃度をHPLCやGC−MSで定量することによる絶対膜厚の測定や赤外分光の吸収波形における1450cm−1もしくは1550cm−1のピーク面積を定量することで実施されてきた。
しかし、この2つのピークは非常に弱く、また、この波数領域は水蒸気のピークのそれと重なるため、水蒸気を取り除く必要が生じ、水蒸気を取り除くためのパージ時間の増加とシグナルノイズ比を改善するための積算回数の増加が必要となる。それら対策を実施しても、潤滑層の膜厚が薄くなるにつれて膜厚の定量がそれだけ困難となり、実際膜厚を定量することができなくなる場合も多々生じた。
本発明は、このような状況に鑑み、潤滑層が複数の潤滑剤の混合潤滑膜からなる磁気記録媒体の潤滑膜に対して、混合されている複数の潤滑剤が有する赤外分光の吸収波形のピークが部分的に重なる場合でも、これら赤外分光の吸収波形のピーク面積を用いて非破壊で、かつ、高い測定精度でそれぞれの膜厚換算の比率を測定できる方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法は、非磁性基体上に下地層、磁性層、保護層及び潤滑層を有し、前記潤滑層が分子内にCF構造を有する化合物と分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の混合物からなるものである磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法であって、潤滑層をフーリエ変換赤外分光法で測定し、得られた赤外吸収スペクトルの1333cm−1と1280cm−1のピークを波形分離することなく各ピークのベースラインと吸収波形で囲まれる領域の面積を定量化することによって、前記潤滑層の各成分の量を膜厚換算で算出することを特徴とする。
また、本発明の磁気記録媒体は、前記磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法により、潤滑層における環状フォスファゼン化合物の量が膜厚換算で±0.05nm内の範囲で管理されてなることを特徴とする。
本発明によれば、潤滑層が複数の潤滑剤の混合潤滑膜からなる磁気記録媒体の潤滑膜に対して、混合されている複数の潤滑剤が有する赤外分光の吸収波形のピークが部分的に重なる場合でも、これら赤外分光の吸収波形のピーク面積を用いて非破壊で、かつ、高い測定精度でそれぞれの膜厚換算の比率を測定できる。また、潤滑層が非常に薄く、例えば分子内にCF構造を有する化合物の膜厚換算の比率を測定起因の膜厚誤差±0.02nmとすることができ、そのため±0.05nmで管理することができる。
分子内にCF構造を有するフォスファゼン化合物からなる潤滑剤はその膜厚が0.05nm変わるだけで磁気記録媒体の特性が変化する。本発明の磁気記録媒体は膜厚を±0.05nmで管理することができるので、品質の信頼性に優れる。
本発明の潤滑層の膜厚測定方法における測定対象の磁気記録媒体は、非磁性基体上に下地層、磁性層、保護層及び潤滑層を有する。非磁性基体としては、Al−Mg合金の非磁性体にNi−Pめっき層の非磁性金属層を設けたもの、アルマイト基板、磁気ディスク用として市販されているガラス基板、セラミック基板等が好適に使用される。下地層としては、たとえばCrからなる非磁性金属の合金などを挙げることができる。保護膜としては、従来からカーボン系のものが知られており、水素を添加したカーボン保護膜や窒素ガスを添加したカーボン膜、硬度の高いダイヤモンドライクカーボン膜が知られている。
潤滑層は、分子内にCF構造を有する化合物と分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の混合物からなる。分子内にCF構造を有する化合物としては、分子内にCF構造を有する環状トリフォスファゼン化合物をあげることができ、このような化合物の一例として、CF構造を有する環状トリフォスファゼン末端基を有するパーフルオロポリエーテルを挙げることができる。このCF構造を有する環状トリフォスファゼン末端基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の製造方法は特許文献3に記載されている。また、分子内にCF構造を有する環状トリフォスファゼン化合物で市販されている潤滑剤、添加剤としてはダウケミカル社のX−1P、株式会社松村石油研究所のA20Hがある。
一方、分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤としては、ソルベイソレクシス社のFomblin Z−dol4000、Fomblin AM3001、Fomblin Z−tetraolなどが市販されている。
これらの潤滑剤を磁気記録媒体上の潤滑層形成のため塗布するに際して、潤滑剤を任意の溶剤で希釈してもよい。この希釈に当たって、CF構造を有する環状トリフォスファゼン末端基を有する潤滑剤と分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を一緒に混合溶解あるいは溶剤に混合溶解して、公知の塗布法であるディップコート法やスピンコート法などで塗布してもよく、それぞれの潤滑剤あるいはその希釈液を別々に塗布してもよい。
この潤滑層を有する磁気記録媒体の1実施態様としては、図1に示すように、例えばAl−Mgのような非磁性基体11および例えば合金基板上に無電解メッキしたNi−Pのような非磁性金属層12とからなる非磁性の基体1、該基体1の上に積層した非磁性の金属下地層2、該金属下地層2の上に薄膜状に積層した、例えばCo−Cr−Ta、Co−Cr−Ptなどの強磁性合金からなる磁性層3、さらに該磁性層3の上に積層した例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの保護層4とを備え、その上に潤滑層5を設けたものを挙げることができる。
本発明の膜厚測定方法は、このような磁気記録媒体上に設けられた潤滑層の各成分の比率を正確に求めるための膜厚測定法である。本発明においては、潤滑層をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、好ましくはFT−IRの高感度反射測定法(RAS)で測定し、得られた赤外吸収スペクトルの1333cm−1と1280cm−1のピークを波形分離することなく各ピークのベースラインと吸収波形で囲まれる領域の面積を定量化することによって、前記潤滑層の各成分の量を膜厚換算で算出する。1333cm−1のピークを用いることにより、1450cm−1もしくは1550cm−1のピークを用いた場合のような水蒸気の影響を受けることがない。
また、1333cm-1のピークを用いても、1333cm−1のピークのベースラインとして1347cm−1±4cm−1の範囲内の1波長と1321cm−1±4cm−1の範囲内の1波長を選択することにより、この領域で定量された数値が、分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤で任意に膜厚を振った場合に1280cm−1のピークと比例関係にあるようになる。
さらに具体的にいえば、1333cm−1のピークのベースラインとして1347cm−1と1321cm−1の範囲とするとこの領域で上述の比例関係が生じるが、使用する測定装置の誤差や測定精度により最適範囲がずれることがあり、ベースラインの両端をそれぞれ±4cm−1の範囲で調整可能としたものであり、この範囲内で、最も影響の少なくなるベースラインの範囲を選択するのが好適である。
1280cm−1のピークのベースラインとしては、1425cm−1〜970cm−1とするのが好ましい。この1425cm−1と970cm−1は、この波長では潤滑剤の吸収が見られないためである。もちろん、使用する測定装置の誤差や測定精度により最適範囲がずれることがあり、ベースラインの両端をそれぞれ±4cm−1の範囲で調整してもよい。
1280cm−1のピーク値は、1284cm−1から1276cm−1の範囲の面積とすることが好ましい。これは、分子内にCF構造を有する環状トリフォスファゼン末端基を有する潤滑剤の吸収波形が1266cm−1近辺にピークを有するものが含まれており、これを含ませないためである。この場合も使用する測定装置の誤差や測定精度により最適範囲がずれることがあり、ベースラインの両端をそれぞれ±4cm−1の範囲で調整してもよい。
潤滑層の膜厚測定に当たっては、あらかじめ潤滑層なしの磁気記録媒体を対象としてFT−IRのRAS測定を行い、次いで潤滑層を有する磁気記録媒体のFT−IRのRAS測定を行い、その差分として潤滑層の赤外吸収波形を得ることができる。
分子内にCF構造を有する化合物と分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の混合物からなる潤滑層のそれぞれの膜厚換算比率の測定は以下のようにして行うことができる。
分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤のみを含む潤滑層を用いてXPS法で測定した絶対膜厚と1280cm−1のピーク強度の検量線を作製する。
CF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤のみを含み、その潤滑剤の量を変えた複数種の潤滑層と、分子内にCF構造を有する化合物のみを含み、その潤滑剤の量を変えた複数種の潤滑層のFT−IRのRAS測定を行い、1280cm−1と1333cm−1のピーク値で分子内にCF構造を有する化合物の膜厚の回帰分析を行い、これらの結果から、混合物からなる潤滑層の中の分子内にCF構造を有する化合物の膜厚を求めるための1280cm−1のピーク値にかかる係数及び1333cm−1のピーク値にかかる係数を求める。この係数を用いて、任意の混合比率の潤滑層のFT−IRのRAS測定で得られた1280cm−1と1333cm−1のピーク値から分子内にCF構造を有する化合物の膜厚を求めることができる。
フーリエ変換赤外分光法におけるアポダイゼーション関数としてBlackman−Harris関数を使用することが好ましい。スムージングなし、アポダイゼーション関数としてごく一般的なHapp−Ganzel関数を使うこともできるが、繰り返し測定精度が下がるため、同じレベルの測定精度を維持するためには積算回数を増やしたり、アパーチャサイズを大きくしたりするなどしてノイズの抑制を行うことが必要となる。
この膜厚測定法によれば、分子内にCF構造を有する化合物の膜厚を±0.02nm以下の膜厚誤差で測定でき、膜厚を±0.05nmで高い信頼性を持って管理することができる。
本発明の磁気記録媒体は混合潤滑剤の各成分の膜厚換算比率を高い精度で管理されているので膜厚変動に基づく特性の変動が少なく、磁気記録媒体の特性の信頼性が高いものとなる。
<実施例1>
Al−Mg合金基板上に無電解メッキによりNi−Pメッキを施した非磁性金属層を形成し、その表面をポリッシュにより研磨した後、ダイヤモンドスラリーを使用して、表面粗さRaが0.5nmになるようにテクスチャー加工により同心円状の溝を形成した。得られた基体を洗浄した後、DCスパッタ法によりCrからなる非磁性金属下地層、次いでCo−Cr−Taからなる磁性層を積層させた後、CVD法により10atom%の窒素添加されたカーボン保護層を4nm積層させた。こうして形成された積層体の保護層の上に潤滑層を形成した。
分子内にCF構造を有する環状トリフォスファゼン末端基を有するパーフルオロポリエーテルの潤滑剤として、(株)松村石油研究所のMORESCO PHOSFAROL A20H−2000(以下、A20Hという)、分子内にCF構造を有していないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤としてソルベイソレクシス社のFomblin Z−tetraol潤滑剤(以下、Ztetraolという)を用意した。塗布液の溶媒として三井デュポンフロロケミカル社のVertrel XFを用いた。潤滑剤の濃度と引き上げ速度をそれぞれ制御することにより、各種膜厚の振れたサンプルを作製した。作製されたサンプル作成時の潤滑剤濃度と引き上げ速度を表1に示す。
潤滑層の膜厚測定にはサーモエレクトロン社のフーリエ変換赤外分光装置Magna560に高感度反射測定法(RAS)ができるアクセサリを搭載したものを使用した。FT−IRの設定としてはアパーチャサイズを64、分解能4cm−1、窒素パージ時間5秒、検出器としてMCT−A(11,700〜600cm−1)、積算回数64回、スムージングポイントを9ポイント、アポダイゼーション関数としてBlackman−Harris関数を使用した。
この測定条件で測定すると1ポイントあたりの測定時間は約1分であった。
IRスペクトルは縦軸を吸光度、横軸を波数として出力した。そのIRスペクトルの1例を図2に示す。ピークの定量法として、ベースラインを1425cm−1〜970cm−1とし、1284cm−1から1276cm−1の範囲の面積を1280cm−1のピーク値とした。
一方、1333cm−1のピークとして、ベースラインを1347cm−1から1321cm−1とし、1347cm−1から1321cm−1の範囲の面積を1333cm−1のピーク値とした。
先に作製したサンプルについて、それぞれ半径25mmの1点について5回測定を行い、それぞれピーク値を求めた。それぞれの5回の平均を計算した結果を表1に示す。
また、PFPEの膜厚を1280cm−1のピークで計算した。なお、あらかじめ、1280cm−1のピーク強度とXPS法でのPFPEの絶対膜厚との検量線を作成しておいて、この検量線を用いてPFPE膜厚を算出した。その結果を表1に示す。
A20Hの膜厚については、A20H分子内にあるPFPE部分に着目し、膜厚算出を試みた。表1に示すDisk1、2、3はA20Hを塗布液中に含まないため、A20H膜厚は0であり、Disk11、12、13はA20Hのみからなる膜であるため潤滑層膜厚とA20H膜厚が等しくなる。
A20Hは分子内にCF構造を有しているため1333cm−1にピークが存在する。
次に、これらDisk1、2、3、11、12、13の1280cm−1、1333cm−1のピーク値からA20H膜厚を求めるため、回帰分析を行い、A20Hの膜厚を
[A20H]=a×[1280cm−1]+b×[1333cm−1](a,bは定数)
として係数a,bを求めた。その結果、aの値として29.33、bの値として212.24が得られた。この値を用いてDisk4−10のA20H膜厚を算出した。以上の結果を表1に示す。
ちなみに、平均化する前の各回ごとの測定結果に対してA20H膜厚を求め、その膜厚の平均値からの誤差を標準偏差として求めたところ、0.0057nmであった。
参考例2>
実施例1で用いたと同様の積層体の保護層の上にZtetraolとA20Hの混合潤滑層をディップコート法で形成した。潤滑層の膜厚は実施例1で用いたと同様の方法で測定した。得られたサンプル1〜5の膜厚を以下に示す。
膜厚 Ztetraol A20H
サンプル1 1.0nm 0nm
サンプル2 0.95nm 0.05nm
サンプル3 0.90nm 0.10nm
サンプル4 0.85nm 0.15nm
サンプル5 0.80nm 0.20nm
それぞれのサンプルは潤滑層形成後、100℃35分の加熱処理を行い、その後、ラッピングテープを用いてサンプル表面に付着したパーティクルを取り除いた。
磁気記録媒体の耐久性評価手法として、磁気ヘッドのスライダの代わりに直径2mmのガラス製ボールを取り付けたものを用いて半径位置30mm、押し付け力1.2g、回転速度3600rpmでディスク表面の摺動を行い表面に傷が付くまでのパス回数を測定した。パス回数が6000回でも表面に傷が付かないものを合格とし、パス回数6000回未満で傷が付いたものを不合格とした。サンプル1はパス回数6000回未満で傷が付き不合格であったが、サンプル2、3、4、5についてはパス回数6000回を超えても表面に傷が見られなかった。
磁気記録媒体上での磁気ヘッドの浮上性の評価方法として、実際にハードディスクドライブに搭載されている磁気ヘッドを用いて、減圧環境下での磁気ヘッドの浮上試験を行った。測定環境を400hPaとし、ディスク上でシーク動作を1時間行い、ヘッドが正常に浮上しているかどうかをアコースティックエミッションセンサー(AE)を用いて観察した。その結果、サンプル1、2、3、4ではAEに終始変化が見られなかったが、サンプル5では測定開始後30分以降においてAE出力に変動が見られた。
参考例3>
実施例1で用いたと同様の積層体の保護層の上にZtetraolとA20Hの混合潤滑層をディップコート法で形成した。潤滑層の膜厚は実施例1で用いたと同様の方法で測定した。得られたサンプル6〜10の膜厚を以下に示す。
膜厚 Ztetraol A20H
サンプル6 1.2nm 0nm
サンプル7 1.15nm 0.05nm
サンプル8 1.10nm 0.10nm
サンプル9 1.05nm 0.15nm
サンプル10 1.00nm 0.20nm
それぞれのサンプルは潤滑層形成後、100℃35分の加熱処理を行い、その後、ラッピングテープを用いてサンプル表面に付着したパーティクルを取り除いた。
磁気記録媒体の耐久性評価手法として、参考例2で用いたと同様の手法により摺動試験を行った結果、サンプル6〜10についてはパス回数6000回を超えても表面に傷が見られなかった。
磁気記録媒体の耐久性の評価手法として参考例2で用いたと同様の浮上試験を行った結果、サンプル6〜8ではAEに終始変化が見られなかったが、サンプル9、10では測定開始から30分以降AE出力に変動が見られた。
参考例4>
実施例1で用いたと同様の積層体の保護層の上にFomblin ZdolとX−1Pの混合潤滑層をディップコート法で形成した。潤滑層の膜厚は実施例1で用いたと同様の方法で測定した。得られたサンプル11〜15の膜厚を以下に示す。
膜厚 Zdol X−1P
サンプル11 0.80nm 0nm
サンプル12 0.75nm 0.05nm
サンプル13 0.70nm 0.10nm
サンプル14 0.65nm 0.15nm
サンプル15 0.60nm 0.20nm
それぞれのサンプルは潤滑層形成後、100℃35分の加熱処理を行い、その後、ラッピングテープを用いてサンプル表面に付着したパーティクルを取り除いた。
サンプル11はパス回数6000回未満で傷が付き不合格であったが、サンプル12〜15についてはパス回数6000回を超えても表面に傷が見られなかった。
磁気記録媒体の耐久性の評価手法として参考例2で用いたと同様の浮上試験を行った結果、サンプル11〜14ではAEに終始変化が見られなかったが、サンプル15では測定開始から30分以降AE出力に変動が見られた。
参考例2〜4の結果を表1、2、3に示す。
Figure 0005088601
Figure 0005088601
Figure 0005088601
<比較例1>
実施例1と同様にして得られたIRスペクトルに対して、1450cm−1,1550cm−1のピークを定量に使用することを試みたところ、水蒸気のピークの影響でA20Hの膜厚を算出することはできなかった。
窒素パージ時間を1分間に変えた以外は実施例1と同様にして得られたIRスペクトルでは、1450cm−1、1550cm−1のピークは、Disk9,10,11,12については確認できたが、Disk1〜8については互いに全く差が見られなかったためA20Hの膜厚が薄い場合には膜厚への換算ができないことがわかった。
本発明によれば、分子内にCF構造を有する環状フォスファゼン化合物と分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の混合物からなる潤滑層に対して、短時間に高い測定精度でそれぞれの膜厚を測定できる。本発明の測定方法によれば測定誤差0.0066nm以下の測定が可能であり、3σ<0.02nmを成立させることができ、このため測定起因の膜厚誤差を±0.02nm以内に収めることができるので、潤滑剤の膜厚を±0.05nmで管理することが可能となる。
本発明の測定対象である磁気記録媒体の1実施態様の層構成を示す図である。 潤滑層のIRスペクトルの一例を示す図である。
1 基体
11 非磁性基体
12 非磁性金属層
2 非磁性の金属下地層
3 磁性層
4 保護層
5 潤滑層

Claims (3)

  1. 非磁性基体上に下地層、磁性層、保護層及び潤滑層を有し、前記潤滑層が分子内にCF構造を有する化合物と分子内にCF構造を有さないパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の混合物からなるものである磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法であって、潤滑層をフーリエ変換赤外分光法で測定し、得られた赤外吸収スペクトルの各ピークのベースラインと吸収波形で囲まれる領域の面積を定量化することによって、前記混合物の成分量を膜厚換算で算出し、
    1333cm −1 のピークの定量法として、ベースラインを1347cm −1 ±4cm −1 の範囲内の1波長を選択したもの〜1321cm −1 ±4cm −1 の範囲内の1波長を選択したものとし、1347cm −1 ±4cm −1 の範囲内の1波長を選択したもの〜1321cm −1 ±4cm −1 の範囲内の1波長を選択したものの範囲の面積を、1333cm −1 のピーク値とし、
    1280cm −1 のピークの定量法として、ベースラインを1425cm −1 〜970cm −1 とし、1284cm −1 〜1276cm −1 の範囲の面積を、1280cm −1 のピーク値とすることを特徴とする磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法。
  2. 分子内にCF構造を有する化合物が分子内にCF構造を有する環状フォスファゼン化合物であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法。
  3. 測定誤差が±0.006nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気記録媒体の潤滑層の膜厚測定方法。
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