JP5088572B2 - 転がり軸受の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、加熱による前記種々の問題を生じることなく、一対の軌道部材間に区画される領域が固形潤滑剤によって充填された転がり軸受を製造するための製造方法を提供することにある。
前記両開口(18)(19)に、その少なくとも一方の少なくとも一部が特定のエネルギー線を透過しうる材料によって形成され、固形潤滑剤の、両開口に臨む面の形状を規定するための治具(20)(21)をそれぞれ嵌め合わせると共に、両治具で区画される領域に、前記エネルギー線の照射によって硬化反応して固形潤滑剤となる前駆体(22)として、潤滑剤と、エネルギー線の照射によって硬化反応する硬化性樹脂とを、前記前駆体の総量に対する硬化性樹脂の割合が10質量%以上、80質量%以下となるように混合した混合物を充填する工程と、
前記治具のうちエネルギー線を透過しうる材料からなる部分を通してエネルギー線を照射して前駆体を硬化反応させることにより固形潤滑剤を形成する工程とを含むことを特徴とするものである(請求項1)。なおカッコ内の英数字は、後述の実施の形態における対応構成要素等を表す。
前記治具を使用しない場合には、例えば一対の軌道部材間に区画される領域の一方の開口をあらかじめシール部材を組み込んで閉じた状態で、他方の開口を通して前記領域内に前駆体を流し込み、次いで前記他方の開口を通して前駆体にエネルギー線を照射して硬化反応させることが考えられる。
なお一対の治具のうち少なくとも一方の少なくとも一部は、エネルギー線を透過しない材料によって形成してもよいが、その場合には、前記部分の前記領域に臨む面をエネルギー線を反射しうる鏡面とするのが好ましい(請求項2)。これにより前記鏡面でエネルギー線を反射させることで陰になる部分をなくして、前記領域内の全ての前駆体を良好に硬化反応させることができる。
図1は、本発明の製造方法によって製造される一実施形態に係る転がり軸受1の断面図である。転がり軸受1は、互いの間に環状の領域2を区画する一対の軌道部材としての内輪3および外輪4と、前記領域2に配置され内輪3および外輪4に対して転動する複数の転動体としてのボール5と、領域2に配置され、各ボール5を保持するためのポケット6を有する保持器7と、領域2に充填された連続状の固形潤滑剤8と、固形潤滑剤8を挟んだ両側に配置され、外輪4に固定されて内輪3と摺接する一対の環状のシール部材9、10とを備えている。
図1を参照して、この例では内輪3、外輪4、ボール5および保持器7の、それぞれ固形潤滑剤8と接する表面に潤滑剤の膜11が形成されている。また図示していないが、内輪3の軌道面12と外輪4の軌道面13にも潤滑剤の膜11が形成されている。またポケット6とボール5との間には固形潤滑剤8の介在を回避した状態で潤滑剤の膜11が形成されている。
潤滑剤の膜11を形成するには、例えば領域2に固形潤滑剤8のもとになる前駆体を充填する前の転がり軸受1を潤滑剤に浸漬する等して、前記各部の表面に潤滑剤の膜11を形成した状態で、前記前駆体を領域2に充填して硬化反応させればよい。
図3は、本発明の製造方法の一工程を示す概略断面図である。図1ないし図3を参照して、この例の製造方法では前記内輪3、外輪4、ボール5、および保持器7を組み立てて転がり軸受1を構成し、前記転がり軸受1の内輪3および外輪4によって区画された環状の領域2の、ボール5を挟んで背向する2方向の開口18、19にぞれぞれ治具20、21を嵌め合わせて前記領域2を区画する。
そのため、例えば図において下側の治具21を開口19に嵌め合わせて前記開口19を閉じた状態で、領域2内に所定量の前躯体22を注入後、減圧下で上側の治具20を開口18に嵌め合わせたり、常圧下でも、気泡が残らないように治具20を開口18に対して最初は傾斜させながら嵌め合わせたりする。
治具20、21は、前記領域2に臨む面が、固形潤滑剤8の両開口18、19に臨む面の形状を、例えば図1に示す形状に規定するための賦形面とされると共に、少なくとも一方の少なくとも一部が特定のエネルギー線を透過しうる材料によって形成される。また図2を参照して治具20、21は、両開口18、19に対応して環状に形成される。
図3を参照して、例えば図において上側の治具20の少なくとも一部(好ましくは全体)を前記ガラス、プラスチック等によって形成し、先に説明したように開口18、19に治具20、21を嵌め合わせると共に領域2内に前駆体22を充填した状態で、前記治具20の外部(図では上方)に配置した紫外線ランプ23を点灯させると、それによって発生した紫外線が治具20を通して領域2内の主にボール5より上側の前駆体22に照射される。
また紫外線ランプ23は上側にのみ配置し、先ず開口18側のみ紫外線を照射した後、転がり軸受1を上下反転させて開口19側に紫外線を照射するようにしてもよい。
また治具21は紫外線を透過しない材料、例えば金属によって形成しても良い。その場合、前記治具21の領域2に望む面を紫外線を反射しうる鏡面とすると、上側の紫外線ランプ23から治具20を通して照射した紫外線を、同様に鏡面とされた内輪3の軌道面12、外輪4の軌道面13、およびボール5の表面と共に領域2内で反射させて、前記ボール5の下の陰になる部分にまで行き渡らせることができる。そのため、領域2内の前駆体22の全体をほぼ同時に硬化反応させて固形潤滑剤8を形成できる。
固形潤滑剤8のもとになる前駆体22は、潤滑剤と、エネルギー線の照射によって硬化反応する硬化性樹脂との混合物である。このうち潤滑剤としては潤滑油およびグリースがいずれも使用できる。潤滑油としては鉱油、合成炭化水素油〔例えばポリαオレフィン油(PAO)〕、シリコーン油、フッ素油、エステル油(ジエステル油、ポリオールエステル油等)、エーテル油(アルキルジフェニルエーテル油等)、パラフィン油、鉱油等が挙げられる。潤滑基油は、それぞれ単独で使用できる他、2種以上を併用しても良い。
このうち、石けん系増ちょう剤としては、アルミニウム石けん、カルシウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん等の金属石けん型増ちょう剤、リチウム−カルシウム石けん、ナトリウム−カルシウム石けん等の混合石けん型増ちょう剤、アルミニウムコンプレックス、カルシウムコンプレックス、リチウムコンプレックスナトリウムコンプレックス等のコンプレックス型増ちょう剤等が挙げられ、特にリチウムステアレート等のリチウム石けんが好ましい。
前記潤滑油またはグリースには、必要に応じて、フッ素樹脂(PTFE等)、二硫化モリブデン、グラファイト、ポリオレフィン系ワックス(アマイド等を含む)等の固体潤滑剤、リン系や硫黄系の極圧添加剤、トリブチルフェノール、メチルフェノール等の酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤、油性剤等を添加してもよい。
このうちラジカル重合性のオリゴマーとしては、例えばエポキシアクリレート、カルボキシル基変性エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、共重合系アクリレート等が挙げられる。また前記オリゴマーと併用されるラジカル重合性のモノマーとしては、例えば単官能ないし6官能性のアクリレート等が挙げられる。
前記カチオン重合性のオリゴマー、モノマーを紫外線の照射によって重合反応させるカチオン重合性の光重合開始剤としては、例えばスルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。また前記重合反応を促進するためのカチオン重合性の光重合促進剤としては、例えばアントラセン系、チオキサントン系の光重合促進剤が挙げられる。
このうちラジカル硬化型のシリコーン系樹脂変性品としては、例えばアクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン等が挙げられる。前記ラジカル硬化型のシリコーン系樹脂変性品を硬化反応させるための、ラジカル硬化型の光硬化剤としては、先に例示したラジカル重合性の光重合開始剤等が挙げられる。
また複合型のシリコーン系樹脂変性品としては、例えばメルカプト/脱アセトン硬化性シリコーン、アクリル/脱アルコール硬化性シリコーン等が挙げられる。
Claims (2)
- 互いの間に環状の領域を区画する一対の軌道部材と、前記領域に配置され両軌道部材に対して転動する複数の転動体とを含み、前記領域が転動体を挟んで背向する2方向において一対の軌道部材間で開口されていると共に、前記領域に固形潤滑剤が充填された転がり軸受の製造方法であって、
前記両開口に、固形潤滑剤の、両開口に臨む面の形状を規定するための、少なくとも一方の少なくとも一部が特定のエネルギー線を透過しうる材料によって形成された治具をそれぞれ嵌め合わせる工程と、
両治具で区画される領域に、前記エネルギー線の照射によって硬化反応して固形潤滑剤となる前駆体として、潤滑剤と、エネルギー線の照射によって硬化反応する硬化性樹脂とを、前記前駆体の総量に対する硬化性樹脂の割合が10質量%以上、80質量%以下となるように混合した混合物を充填した状態で、前記治具のうちエネルギー線を透過しうる材料からなる部分を通してエネルギー線を照射して前駆体を硬化反応させることにより固形潤滑剤を形成する工程とを含むことを特徴とする転がり軸受の製造方法。 - 両治具のうち少なくとも一方の少なくとも一部をエネルギー線を透過しない材料によって形成すると共に、前記部分の前記領域に臨む面を、前記エネルギー線を反射しうる鏡面とする請求項1に記載の転がり軸受の製造方法。
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