JP5083971B2 - 低温焼成磁器用組成物および低温焼成磁器の製造方法 - Google Patents
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Description
現在製造されている陶磁器の中で、磁器の焼成温度は、美濃焼が約 1350℃、有田焼、九谷焼が約 1300℃、ボーンチャイナが 1200〜1300℃であり、これより低温の 1100℃程度で焼成するものは製造されていない。
組成物全体に対して上記粘土成分を 30 〜 50 重量%含み、上記非粘土成分として、この非粘土成分全体に対して上記C成分を 8.3 〜 75 重量%含むことを特徴とする。
また、本発明の低温焼成磁器用組成物は、上記B成分がカリ長石であることを特徴とする。
特に、粘土成分を一定量含有し、上記A成分をネフェリンサイアナイト、上記B成分をカリ長石、上記C成分をペタライトにすることで、1100℃程度で磁器化し、吸水率 0.5 重量%以下、かさ密度の変化を 25 〜100 ℃の焼成温度範囲で 0.03 g/cm3の範囲に抑えることができる磁器が得られる。
また、使用する原料は、全て天然原料であり、安価なこと、粉砕などの処理が容易で使用しやすいこと、大量に採掘されており入手も比較的容易であることなどの利点がある。
本発明では、水への溶解性の少ないアルカリ金属酸化物含有物質として、長石類は、アルカリ金属としてナトリウムを含有するネフェリンサイアナイト、カリウムを含有するカリ長石、リチウムを含有するペタライトを特定範囲の割合で混合使用する。これらにより、混合アルカリ効果が発揮され、従来の長石−珪石−粘土系磁器では困難であった 1100℃程度の低温での焼結が可能になったと考えられる。
さらに、粘土分を一定量含有し、また可塑性に影響しがたい3種類の長石類を混合使用するので、粘土の可塑性を良好に保持でき、成形が容易である。
Na2Oが 5 重量%未満であるとNa2Oを含む鉱物としての作用を示さず、22 重量%をこえる鉱物は使用困難である。
該鉱物成分としては、ネフェリンサイアナイト、ソーダ長石、ネフェリン、ゼオライト等を用いることができる。これらの中で、入手しやすく、広い焼成温度幅が得られるという理由でネフェリンサイアナイトが好ましい。
K2Oが 4 重量%未満であるとK2Oを含む鉱物としての作用を示さず、17 重量%をこえる鉱物は使用困難である。
該鉱物成分としてはカリ長石、セリサイト、白雲母、リューサイト等を用いることができる。これらの中で、入手しやすく、取り扱いが容易であるという理由でカリ長石が好ましい。
Li2Oが 3 重量%未満であるとLi2Oを含む鉱物としての作用を示さず、12 重量%をこえると使用困難である。
該鉱物成分としてはペタライト、スポジュメン、ユークリプタイト、アンブリゴナイト、レピドライト等を用いることができる。これらの中で、加熱による急激な体積変化がなく、資源も豊富で入手しやすいという理由でペタライトが好ましい。
該粘土成分としては、ニュージランド(NZ)カオリンや河東カオリンなどのカオリン、蛙目粘土、木節粘土、ベントナイト等を用いることができる。これらの中で、不純物が少ないという理由でNZカオリンが好ましい。
例えば、表1に示す各成分を表2に示す配合割合で粘土成分の割合を変化させた場合の焼成温度に対する吸水率およびかさ密度の変化を図1に示す。また、焼成温度幅を表2に示す。なお、表2において、A成分、B成分、C成分はそれぞれ等量混合した。例えば(A+B+C)の配合量が60重量%の場合、A成分、B成分、C成分はそれぞれ20重量%である。また、焼成前の原料は目開き 500 μmのふるい通過分を用い、圧力 50 MPa でプレス成形した試験片を各焼成温度で1時間保持した。
本発明の低温焼成磁器用組成物は、上記粘土成分を 30 〜 50 重量%、好ましくは 35 〜 45 重量%含む。粘土成分が 30 重量%未満であると、焼成温度幅が狭くなり、粘土成分が 50 重量%をこえると、吸水率 0.5 重量%以内となる焼結温度が高くなり低温焼成
が困難になる。またかさ密度の変化が大きくなり均一な焼結体を得ることが困難となる。
好ましくは、上記粘土成分を除いた非粘土成分全体に対してC成分を 8.3 〜 75 重量%、より好ましくは、上記粘土成分を除いた非粘土成分として、A成分、B成分およびC成分の組成範囲が上記三角座標(1)の斜線範囲内である。
例えば、粘土成分を 40 重量%含み、残りの全てが非粘土成分の場合、三角座標の各頂点は 60 重量%となり、A成分は 0 〜 55 重量%、B成分は 0 〜 55 重量%、C成分は 5 〜 45 重量%の範囲で、A成分とB成分とC成分との合計が 60 重量%となる範囲が好ましい。
三角座標(2)に示すように、A成分とB成分とC成分との合計が 60 重量%となる配合において、 1100℃以内で 50 ℃以上の焼成幅を得ようとすれば、A成分は 0 〜 45 重量%、B成分は 0 〜 45 重量%、C成分は 15 〜 45 重量%の範囲で、A成分とB成分とC成分との合計が 60 重量%となる範囲が好ましい。その範囲は、三角座標(2)に示す斜線で示す範囲内である。
また、 1080℃以内で 75 ℃以上の焼成幅を得ようとすれば、A成分とB成分とC成分との範囲は、太線で示す 1080℃で囲まれた範囲内である。
また、上記粘土成分、非粘土成分以外に、その10重量%以下であれば、ガラスフリット、炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコン、酸化ジルコニウム、ムライト、酸化鉄、酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロムなどの成分を含んでもよい。
上述のA成分と、B成分と、C成分と、粘土成分を湿式法または乾式法により混合する。例えば、湿式法では、各成分を所定の大きさのボールミルに入れ、所定量の水を添加した後、10〜 20 時間程度回転させて粉砕混合する。混合物をフィルタープレスなどを用いて脱水し、成形に供する。
成形は、排泥鋳込成形法、圧力鋳込成形法、機械ろくろ成形法、手ろくろ成形法、湿式プレス成形法、乾式プレス成形法などにより、所定の形状に成形する。例えば、排泥鋳込成形法では、上記脱水混合物に所定量の水と分散剤を加え、撹拌機などを用いて 2〜5 時間程度混合撹拌し、スラリーを作製する。このスラリーを所定の形状の石膏型に流し込んで着肉させた後、残留するスラリーを排泥し、脱型して成形体を得る。
焼成は、得られた成形体を乾燥させた後、電気炉、ガス炉などにより 1000 ℃以上 1200 ℃未満で焼成する。
ネフェリンサイアナイト(UNIMIN CANADA社製、ネフェリンサイアナイト)
カリ長石(MAHAVIR MINERALS社製、インド長石)
ペタライト(BIKITA MINERALS社製、#200ペタライト)
粘土(N.Z.CHINA CLAYS社製、ニュージーランドカオリン)
これら原料は上記表1に示す組成を有している。また、粘土を除き、24 時間湿式ボールミル粉砕し(ペタライトのみ 48 時間粉砕)、乾燥して用いた。
表4に示す配合割合でネフェリンサイアナイト、カリ長石、ペタライト、および粘土を2時間湿式ボールミルで混合した後、乾燥した。乾燥した各調合物を粉砕し、目開き 500 μmのふるいを通過させた。試験体は、これを用いて、圧力 50 MPa で直径 25 mm、厚さ約 5 mm の円盤をプレス成形した。また、曲げ強度の試験体は、120×25×約 7 mm の直方体を同様にプレス成形した。各成形体は、電気炉により、昇温速度 200℃/h、所定温度での保持1時間として焼成した。
得られた焼結体の最大かさ密度温度と焼成温度幅を図3に示す。また、特に実施例2における吸水率とかさ密度の変化を図4に、また実施例2素地の物性を測定した結果を表5に示す。
表4に示す配合割合でネフェリンサイアナイト、カリ長石、および粘土を2時間湿式ボールミルで混合した後、乾燥した。乾燥した各調合物を粉砕し、目開き 500 μmのふるいを通過させた。試験体は、これを用いて、圧力 50 MPa で直径 25 mm、厚さ約 5 mm の円盤をプレス成形した。成形体は、電気炉により、昇温速度 200℃/h、所定温度での保持1時間として焼成した。
得られた焼結体の最大かさ密度温度と焼成温度幅を図3に示す。また、特に比較例2における吸水率とかさ密度の変化を図5に示す。
図5に示すように、比較例2のネフェリンサイアナイト−カリ長石−粘土系素地では、吸水率は 1150℃程度で 0%になるが、この温度付近でかさ密度の変化が大きく、焼成温度幅が狭い。一方、図4に示すように、実施例2のネフェリンサイアナイト−カリ長石−ペタライト−粘土系素地にすると、1075℃程度で吸水率が約 0%になり、1075〜1150℃の範囲でかさ密度が安定しているため、この温度範囲( 75 ℃)が焼成温度幅であり、広い温度幅を有していることがわかる。
また、表5より、曲げ強度、線熱膨張係数は、通常の磁器と同等であることがわかった。
さらに、得られる磁器は、低温焼成磁器であるにも拘わらず、緻密で機械的強度が高く、透光性を有する焼結体を得ることができるため、食器や照明器具など日用品として用いられる磁器や観賞用磁器だけでなく、電子材料などとして用いられる特殊な磁器のための組成物としても好適に用いることができる。
Claims (5)
- Li2Oをアルカリ金属成分の主成分として 3〜12 重量%含むペタライトであるC成分と、Na2Oをアルカリ金属成分の主成分として 5〜22 重量%含むネフェリンサイアナイトであるA成分と、K2Oをアルカリ金属成分の主成分として 4〜17 重量%含む鉱物であるB成分とを含む非粘土成分(但し、MgOを主成分として含む鉱物を除く)と、粘土成分とを含み、
組成物全体に対して前記粘土成分を 30 〜 50 重量%含み、前記非粘土成分として、この非粘土成分全体に対して前記C成分を 8.3 〜 75 重量%含むことを特徴とする低温焼成磁器用組成物。 - 前記B成分がカリ長石であることを特徴とする請求項1記載の低温焼成磁器用組成物。
- 前記粘土成分および前記非粘土成分で構成される組成物全体に対して、前記粘土成分が 30 〜 50 重量%、前記非粘土成分が 50 〜 70 重量%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の低温焼成磁器用組成物。
- Li2Oをアルカリ金属成分の主成分として 3〜12 重量%含むペタライトであるC成分と、Na2Oをアルカリ金属成分の主成分として 5〜22 重量%含むネフェリンサイアナイトであるA成分と、K2Oをアルカリ金属成分の主成分として 4〜17 重量%含む鉱物であるB成分とを含み、非粘土成分全体に対して前記C成分を 8.3 〜 75 重量%含む非粘土成分(但し、MgOを主成分として含む鉱物を除く)と、粘土成分とを混合する工程と、
前記混合した各成分を平均粒子径 11 μm以下に粉砕する工程と、
前記粉砕した各成分を混練・成形して 1000℃以上 1200℃未満で焼成する工程とを含むことを特徴とする低温焼成磁器の製造方法。
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