JP5083971B2 - 低温焼成磁器用組成物および低温焼成磁器の製造方法 - Google Patents

低温焼成磁器用組成物および低温焼成磁器の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、1100℃程度の低温で焼結するとともに、広い焼成温度幅を有する低温焼成磁器用組成物および低温焼成磁器の製造方法に関する。
従来、一般に磁器を製造するための原料組成は、長石−珪石−粘土系、セリサイト−珪石系、長石−リン酸カルシウム−粘土系などであるが、これらは、磁器化するための焼成温度が 1200℃〜1350℃を必要としている。
現在製造されている陶磁器の中で、磁器の焼成温度は、美濃焼が約 1350℃、有田焼、九谷焼が約 1300℃、ボーンチャイナが 1200〜1300℃であり、これより低温の 1100℃程度で焼成するものは製造されていない。
1100℃程度の低温で焼成する磁器の研究は、各所で過去にも行なわれており、ガラス−粘土系、リン酸塩−粘土系、微粒炭酸カルシウム−粘土系などで、低温焼成磁器が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2など)。しかしながら、「土の可塑性が低く成形が困難である」、「焼成温度幅が狭い」、「原料の処理が難しい」などの欠点があるため、食器など一般に用いられている磁器としては、ほとんど実用化されていないのが現状である。
また、電子材料として用いる特殊な磁器には、1100℃以下で焼成して磁器化するガラス−粘土系のものがある(特許文献3参照)。しかしながら、コストが高い、焼成温度幅が狭い、可塑性が低いなどの問題がある。
近年、原油の値上がりに伴う燃料費の高騰が深刻な問題になっている。また、産業界における環境負荷の低減が求められている中、陶磁器製造過程における二酸化炭素排出量の抑制も重要な課題である。これらのことからも、より低温で焼成できる素地の開発が切望されている。
特開2005−162592号公報 特開平10−95657号公報 特開平11−335156号公報
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、1100℃程度の低温で焼結できるとともに、広い焼成温度幅を有する低温焼成磁器用組成物および該組成物を用いた低温焼成磁器の製造方法の提供を目的とする。
本発明の低温焼成磁器用組成物は、Li2Oをアルカリ金属成分の主成分として 3〜12 重量%含むペタライトであるC成分と、Na2Oをアルカリ金属成分の主成分として 5〜22 重量%含むネフェリンサイアナイトであるA成分と、2Oをアルカリ金属成分の主成分として 4〜17 重量%含む鉱物であるB成分とを含む非粘土成分(但し、MgOを主成分として含む鉱物を除く)と、粘土成分とを含み、
組成物全体に対して上記粘土成分を 30 〜 50 重量%含み、上記非粘土成分として、この非粘土成分全体に対して上記C成分を 8.3 〜 75 重量%含むことを特徴とする。
また、本発明の低温焼成磁器用組成物は、上記B成分がカリ長石であることを特徴とする。
本発明の低温焼成磁器の製造方法は、Li2Oをアルカリ金属成分の主成分として 3〜12 重量%含むペタライトであるC成分と、Na2Oをアルカリ金属成分の主成分として 5〜22 重量%含むネフェリンサイアナイトであるA成分と、2Oをアルカリ金属成分の主成分として 4〜17 重量%含む鉱物であるB成分とを含み、非粘土成分全体に対して上記C成分を 8.3 〜 75 重量%含む非粘土成分(但し、MgOを主成分として含む鉱物を除く)と、粘土成分とを混合する工程と、上記混合した各成分を平均粒子径 11 μm以下に粉砕する工程と、上記粉砕した各成分を混練・成形して 1000℃以上 1200℃未満で焼成する工程とを含むことを特徴とする。
本発明の低温焼成磁器用組成物は、鉱物であるC成分と、同A成分および同B成分から選ばれた少なくとも1つの鉱物成分とを含む非粘土成分と、粘土成分とを含み、組成物全体に対して粘土成分を 30 〜 50 重量%含み、該粘土成分を除いた非粘土成分として上記C成分を必須成分として含むので、1100℃程度での焼成による磁器化が可能となる。また、1100℃程度での焼成温度において、その焼成温度幅を 25℃以上とすることができる。
特に、粘土成分を一定量含有し、上記A成分をネフェリンサイアナイト、上記B成分をカリ長石、上記C成分をペタライトにすることで、1100℃程度で磁器化し、吸水率 0.5 重量%以下、かさ密度の変化を 25 〜100 ℃の焼成温度範囲で 0.03 g/cm3の範囲に抑えることができる磁器が得られる。
また、使用する原料は、全て天然原料であり、安価なこと、粉砕などの処理が容易で使用しやすいこと、大量に採掘されており入手も比較的容易であることなどの利点がある。
従来、長石−珪石−粘土系の磁器は、1350℃程度の高温で焼成するものが多く製造されているが、これは長石として、カリ長石を主に用いるものである。
本発明では、水への溶解性の少ないアルカリ金属酸化物含有物質として、長石類は、アルカリ金属としてナトリウムを含有するネフェリンサイアナイト、カリウムを含有するカリ長石、リチウムを含有するペタライトを特定範囲の割合で混合使用する。これらにより、混合アルカリ効果が発揮され、従来の長石−珪石−粘土系磁器では困難であった 1100℃程度の低温での焼結が可能になったと考えられる。
本発明の低温焼成磁器の製造方法は、鉱物であるC成分、同A成分および同B成分から選ばれた少なくとも1つの鉱物成分と、粘土成分とを混合する工程と、上記混合した成分を平均粒子径 11 μm以下に粉砕する工程と、上記粉砕した成分を混練・成形して 1000℃以上 1200℃未満で焼成する工程とを含むので、緻密で機械的強度が高く、透光性を有する焼結体を得ることができる。また、1075℃〜1150℃程度の広い焼成温度幅を有するので、焼結温度にむらのある通常の陶磁器焼成炉でも使用可能である。
さらに、粘土分を一定量含有し、また可塑性に影響しがたい3種類の長石類を混合使用するので、粘土の可塑性を良好に保持でき、成形が容易である。
本発明の低温焼成磁器用組成物は、Li2Oをアルカリ金属成分の主成分として含む鉱物であるC成分と、Na2Oをアルカリ金属成分の主成分として含む鉱物であるA成分およびK2Oをアルカリ金属成分の主成分として含む鉱物であるB成分から選ばれた少なくとも1つの鉱物成分と、粘土成分とを含む。
上記A成分としては、SiO2、Al23を主成分として、Na2Oを 5〜22 重量%含み、灼熱残分 5 重量%以下の鉱物成分が好ましく使用できる。
Na2Oが 5 重量%未満であるとNa2Oを含む鉱物としての作用を示さず、22 重量%をこえる鉱物は使用困難である。
該鉱物成分としては、ネフェリンサイアナイト、ソーダ長石、ネフェリン、ゼオライト等を用いることができる。これらの中で、入手しやすく、広い焼成温度幅が得られるという理由でネフェリンサイアナイトが好ましい。
上記B成分としては、SiO2、Al23を主成分として、K2Oを 4〜17 重量%含み、灼熱残分 5 重量%以下の鉱物成分が好ましく使用できる。
2Oが 4 重量%未満であるとK2Oを含む鉱物としての作用を示さず、17 重量%をこえる鉱物は使用困難である。
該鉱物成分としてはカリ長石、セリサイト、白雲母、リューサイト等を用いることができる。これらの中で、入手しやすく、取り扱いが容易であるという理由でカリ長石が好ましい。
上記C成分としては、SiO2、Al23を主成分として、Li2Oを 3〜12 重量%含み、灼熱残分 5 重量%以下の鉱物成分が好ましく使用できる。
Li2Oが 3 重量%未満であるとLi2Oを含む鉱物としての作用を示さず、12 重量%をこえると使用困難である。
該鉱物成分としてはペタライト、スポジュメン、ユークリプタイト、アンブリゴナイト、レピドライト等を用いることができる。これらの中で、加熱による急激な体積変化がなく、資源も豊富で入手しやすいという理由でペタライトが好ましい。
上記粘土成分としては、SiO2およびAl23を合計で 80 重量%以上含み、灼熱残分 8 重量%以上、好ましくは 10 重量%以上の粘土成分を使用することができる。
該粘土成分としては、ニュージランド(NZ)カオリンや河東カオリンなどのカオリン、蛙目粘土、木節粘土、ベントナイト等を用いることができる。これらの中で、不純物が少ないという理由でNZカオリンが好ましい。
本発明において、各成分の配合割合を変えた場合の焼成温度幅は、各成分を粉砕混合した後、混練・成形して焼成することで得られる焼結体の吸水率、かさ密度を測定することで判定できる。吸水率 0.5 重量%以内となる焼成温度範囲で、かさ密度の最大値からの変動幅が小さな値を示すほど焼成温度幅が広いといえる。
例えば、表1に示す各成分を表2に示す配合割合で粘土成分の割合を変化させた場合の焼成温度に対する吸水率およびかさ密度の変化を図1に示す。また、焼成温度幅を表2に示す。なお、表2において、A成分、B成分、C成分はそれぞれ等量混合した。例えば(A+B+C)の配合量が60重量%の場合、A成分、B成分、C成分はそれぞれ20重量%である。また、焼成前の原料は目開き 500 μmのふるい通過分を用い、圧力 50 MPa でプレス成形した試験片を各焼成温度で1時間保持した。
Figure 0005083971
Figure 0005083971
図1および表2に示すように、粘土成分が少ないと焼成温度幅が狭くなり、また粘土成分が多くなると焼成温度が高くなるとともに焼成温度幅が狭くなる。
本発明の低温焼成磁器用組成物は、上記粘土成分を 30 〜 50 重量%、好ましくは 35 〜 45 重量%含む。粘土成分が 30 重量%未満であると、焼成温度幅が狭くなり、粘土成分が 50 重量%をこえると、吸水率 0.5 重量%以内となる焼結温度が高くなり低温焼成
が困難になる。またかさ密度の変化が大きくなり均一な焼結体を得ることが困難となる。
本発明の低温焼成磁器用組成物は、上記粘土成分 30 〜 50 重量%に対して、上記C成分を必須成分として含む。
好ましくは、上記粘土成分を除いた非粘土成分全体に対してC成分を 8.3 〜 75 重量%、より好ましくは、上記粘土成分を除いた非粘土成分として、A成分、B成分およびC成分の組成範囲が上記三角座標(1)の斜線範囲内である。
例えば、粘土成分を 40 重量%含み、残りの全てが非粘土成分の場合、三角座標の各頂点は 60 重量%となり、A成分は 0 〜 55 重量%、B成分は 0 〜 55 重量%、C成分は 5 〜 45 重量%の範囲で、A成分とB成分とC成分との合計が 60 重量%となる範囲が好ましい。
A成分とB成分とC成分との合計が 60 重量%となる配合において、各成分の割合を変化させて焼成温度に対する吸水率およびかさ密度の変化を測定し、かさ密度が最大値を示す温度と焼成温度幅を求めた結果を以下に三角座標(2)で示す。
Figure 0005083971
三角座標(2)において、例えば黒点とこの黒点付近に記載された 1100/75 の数値は、黒点が三角座標上でのA成分とB成分とC成分との配合割合を示し、吸水率が 0.5 %以下となる最低焼成温度と、かさ密度の変動幅が最大値−0.03 g/cm3の範囲に収まる焼成温度幅を示す。なお、粘土成分 40 %、C成分 60 %の場合、1250 ℃以下の焼成温度では焼結体が得られなかった。
三角座標(2)に示すように、A成分とB成分とC成分との合計が 60 重量%となる配合において、 1100℃以内で 50 ℃以上の焼成幅を得ようとすれば、A成分は 0 〜 45 重量%、B成分は 0 〜 45 重量%、C成分は 15 〜 45 重量%の範囲で、A成分とB成分とC成分との合計が 60 重量%となる範囲が好ましい。その範囲は、三角座標(2)に示す斜線で示す範囲内である。
また、 1080℃以内で 75 ℃以上の焼成幅を得ようとすれば、A成分とB成分とC成分との範囲は、太線で示す 1080℃で囲まれた範囲内である。
本発明の低温焼成磁器組成物は、上記粘土成分および上記非粘土成分で構成することが好ましい。
また、上記粘土成分、非粘土成分以外に、その10重量%以下であれば、ガラスフリット、炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコン、酸化ジルコニウム、ムライト、酸化鉄、酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロムなどの成分を含んでもよい。
本発明の低温焼成磁器の製造方法について説明する。
上述のA成分と、B成分と、C成分と、粘土成分を湿式法または乾式法により混合する。例えば、湿式法では、各成分を所定の大きさのボールミルに入れ、所定量の水を添加した後、10〜 20 時間程度回転させて粉砕混合する。混合物をフィルタープレスなどを用いて脱水し、成形に供する。
成形は、排泥鋳込成形法、圧力鋳込成形法、機械ろくろ成形法、手ろくろ成形法、湿式プレス成形法、乾式プレス成形法などにより、所定の形状に成形する。例えば、排泥鋳込成形法では、上記脱水混合物に所定量の水と分散剤を加え、撹拌機などを用いて 2〜5 時間程度混合撹拌し、スラリーを作製する。このスラリーを所定の形状の石膏型に流し込んで着肉させた後、残留するスラリーを排泥し、脱型して成形体を得る。
焼成は、得られた成形体を乾燥させた後、電気炉、ガス炉などにより 1000 ℃以上 1200 ℃未満で焼成する。
表2における実験番号NP204素地における粘土以外の原料のボールミル粉砕時間を変え、粒度による焼結性の影響を調べた。表3にこれらの素地の平均粒子径を測定した結果を、また、図2にボールミル粉砕時間と焼結性の関係を示す。
Figure 0005083971
図2および表3より、粉砕時間が長くなると、若干低温での焼結が進むが、あまり大きな違いはなく、粒度による影響は少ない。しかし、焼成温度幅の広い安定した焼結性の示す素地にするためには、12 時間以上粉砕し、平均粒子径で 11 μm以下、好ましくは 10 μm以下に粉砕する。
実際の焼結では、炉内の温度は均一ではないため、焼成温度幅が狭いと製品の歩留まりが悪くなることから、ある程度焼成温度幅が広いことが重要である。本発明の低温焼成磁器用組成物は上記配合であるので、1100℃付近で 25 ℃以上の十分な焼成温度幅を有している。
以下の実施例および比較例において、以下の原料を使用した。
ネフェリンサイアナイト(UNIMIN CANADA社製、ネフェリンサイアナイト)
カリ長石(MAHAVIR MINERALS社製、インド長石)
ペタライト(BIKITA MINERALS社製、#200ペタライト)
粘土(N.Z.CHINA CLAYS社製、ニュージーランドカオリン)
これら原料は上記表1に示す組成を有している。また、粘土を除き、24 時間湿式ボールミル粉砕し(ペタライトのみ 48 時間粉砕)、乾燥して用いた。
実施例1〜実施例3
表4に示す配合割合でネフェリンサイアナイト、カリ長石、ペタライト、および粘土を2時間湿式ボールミルで混合した後、乾燥した。乾燥した各調合物を粉砕し、目開き 500 μmのふるいを通過させた。試験体は、これを用いて、圧力 50 MPa で直径 25 mm、厚さ約 5 mm の円盤をプレス成形した。また、曲げ強度の試験体は、120×25×約 7 mm の直方体を同様にプレス成形した。各成形体は、電気炉により、昇温速度 200℃/h、所定温度での保持1時間として焼成した。
得られた焼結体の焼結性を評価するため、焼結体の吸水率、かさ密度をアルキメデス法により測定し、Norris らによる方法( A.W.Norris, et al. "Range Curves : An Experimental Method for the Study of Vitreous Pottery Bodies". Trans. J. Brit. Ceram. Soc., 78, P102-108(1979) )により焼成温度幅を求めた。また、曲げ強度は、焼成3点曲げ法により、支点間距離 10 cm、クロスヘッドスピード 5 m/min として測定した。熱膨張は、昇温速度 5℃/min で測定した。結晶組成は、X線回折により調べた。
得られた焼結体の最大かさ密度温度と焼成温度幅を図3に示す。また、特に実施例2における吸水率とかさ密度の変化を図4に、また実施例2素地の物性を測定した結果を表5に示す。
比較例1〜比較例3
表4に示す配合割合でネフェリンサイアナイト、カリ長石、および粘土を2時間湿式ボールミルで混合した後、乾燥した。乾燥した各調合物を粉砕し、目開き 500 μmのふるいを通過させた。試験体は、これを用いて、圧力 50 MPa で直径 25 mm、厚さ約 5 mm の円盤をプレス成形した。成形体は、電気炉により、昇温速度 200℃/h、所定温度での保持1時間として焼成した。
得られた焼結体の焼結性を評価するため、実施例1と同様に焼結体の吸水率、かさ密度を測定し、焼成温度幅を求めた。
得られた焼結体の最大かさ密度温度と焼成温度幅を図3に示す。また、特に比較例2における吸水率とかさ密度の変化を図5に示す。
Figure 0005083971
Figure 0005083971
図3に示すように、ネフェリンサイアナイト−カリ長石−粘土系の比較例1〜3は、いずれも最大かさ密度温度を得るための焼成温度が 1150℃であるが、焼成温度幅が狭い。一方、ペタライトを含有する実施例1〜3は、最大かさ密度が 1100℃であり、比較例1〜3に比べて低温で焼結する。これは、ネフェリンサイアナイトのナトリウム、カリ長石のカリウム、ペタライトのリチウムの3種類のアルカリ金属が混合されたことによる混合アルカリ効果が現れ、生成したガラスの溶融粘性が低下したためと考えられる。
また、吸水率が 0%になる温度が低いと低温で焼結しやすく、吸水率 0%になる温度付近でのかさ密度が安定していると焼成温度幅が広いといえる。
図5に示すように、比較例2のネフェリンサイアナイト−カリ長石−粘土系素地では、吸水率は 1150℃程度で 0%になるが、この温度付近でかさ密度の変化が大きく、焼成温度幅が狭い。一方、図4に示すように、実施例2のネフェリンサイアナイト−カリ長石−ペタライト−粘土系素地にすると、1075℃程度で吸水率が約 0%になり、1075〜1150℃の範囲でかさ密度が安定しているため、この温度範囲( 75 ℃)が焼成温度幅であり、広い温度幅を有していることがわかる。
したがって、ネフェリンサイアナイト−カリ長石−ペタライト−粘土系素地にすることで、これまでの陶磁器素地では困難であった低温での焼結と、広い焼成温度幅を得ることができることになる。これまでの陶磁器素地に比べて 100〜200℃程度は低温で焼成できるとともに、焼成温度幅が 75℃程度あり、かなり広い温度幅で焼成が可能であることから、通常の陶磁器焼成炉を用いて焼成することも容易である。
また、表5より、曲げ強度、線熱膨張係数は、通常の磁器と同等であることがわかった。
本発明の低温焼成磁器用組成物は、ガラスフリットなどの高価なガラス成分を配合することなく、安価な天然原料を用いて、1100℃程度の焼成で焼結できるので、原油の値上がりに伴う燃料費の高騰に対処することができ、また、陶磁器製造過程における二酸化炭素排出量の抑制に寄与できる。
さらに、得られる磁器は、低温焼成磁器であるにも拘わらず、緻密で機械的強度が高く、透光性を有する焼結体を得ることができるため、食器や照明器具など日用品として用いられる磁器や観賞用磁器だけでなく、電子材料などとして用いられる特殊な磁器のための組成物としても好適に用いることができる。
粘土成分の割合に対する吸水率およびかさ密度の変化を示す図である。 ボールミル粉砕時間と焼結性の関係を示す図である。 焼結体における最大かさ密度温度および焼成温度幅を示す図である。 本発明の焼成体の吸水率とかさ密度の変化を示すグラフである。 従来品における焼成体の吸水率とかさ密度の変化を示すグラフである。

Claims (5)

  1. Li2Oをアルカリ金属成分の主成分として 3〜12 重量%含むペタライトであるC成分と、Na2Oをアルカリ金属成分の主成分として 5〜22 重量%含むネフェリンサイアナイトであるA成分と、2Oをアルカリ金属成分の主成分として 4〜17 重量%含む鉱物であるB成分とを含む非粘土成分(但し、MgOを主成分として含む鉱物を除く)と、粘土成分とを含み、
    組成物全体に対して前記粘土成分を 30 〜 50 重量%含み、前記非粘土成分として、この非粘土成分全体に対して前記C成分を 8.3 〜 75 重量%含むことを特徴とする低温焼成磁器用組成物。
  2. 前記B成分がカリ長石であることを特徴とする請求項1記載の低温焼成磁器用組成物。
  3. 前記粘土成分および前記非粘土成分で構成される組成物全体に対して、前記粘土成分が 30 〜 50 重量%、前記非粘土成分が 50 〜 70 重量%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の低温焼成磁器用組成物。
  4. 前記非粘土成分が 60 重量%の場合、前記A成分、前記B成分および前記C成分の組成範囲が下記三角座標(2)の斜線範囲で表されることを特徴とする請求項3記載の低温焼成磁器用組成物。
    Figure 0005083971
    (上記三角座標(2)において、A、B、およびC各成分の頂点の値は、60 重量%を、各頂点の対辺は 0 重量%をそれぞれ表す。)
  5. Li2Oをアルカリ金属成分の主成分として 3〜12 重量%含むペタライトであるC成分と、Na2Oをアルカリ金属成分の主成分として 5〜22 重量%含むネフェリンサイアナイトであるA成分と、2Oをアルカリ金属成分の主成分として 4〜17 重量%含む鉱物であるB成分とを含み、非粘土成分全体に対して前記C成分を 8.3 〜 75 重量%含む非粘土成分(但し、MgOを主成分として含む鉱物を除く)と、粘土成分とを混合する工程と、
    前記混合した各成分を平均粒子径 11 μm以下に粉砕する工程と、
    前記粉砕した各成分を混練・成形して 1000℃以上 1200℃未満で焼成する工程とを含むことを特徴とする低温焼成磁器の製造方法。
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CN107805047A (zh) * 2017-11-01 2018-03-16 福建德化五洲陶瓷股份有限公司 高长石质陶瓷坯体料及其制备方法、用其制备陶瓷制品的方法

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