JP5079631B2 - 廃液の減量方法及び廃液の処理方法 - Google Patents

廃液の減量方法及び廃液の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は廃液の減量方法及び廃液の処理方法に関する。更に詳しくは、本発明は、晶析槽内の温度を溶解度が小さくなるように所定温度に維持しながら、硫酸ナトリウム含有廃液に、好ましくは少量の硫酸ナトリウム含有廃液を添加し、硫酸ナトリウム十水和物を効率よく晶析させる廃液の減量方法、及び晶析槽内の温度を溶解度が小さくなるように所定温度に維持しながら、硫酸ナトリウム無水和物含有液分に、好ましくは少量の硫酸ナトリウム十水和物を添加し、硫酸ナトリウム無水和物を効率よく晶析させる廃液の減量方法、並びにこれらの減量方法における減量工程を備える廃液の処理方法に関する。
工場等で発生する廃液は、処理場まで、車両により運搬するにしても、パイプライン等により搬送するにしてもコストがかかり、更に処理費用も処理量に応じて発生するため可能な限り減量することが好ましい。この処理すべき廃液を減量するため、従来、廃液の濃縮がなされているが(例えば、特許文献1参照。)、高濃度に濃縮した場合、廃液に含有される塩類及び塩素等の不純物などにより、通常の材質の晶析槽等では装置が腐食されることがあり、濃縮濃度には限度がある。
また、硫酸ナトリウム十水和物を効率よく回収するためは、30℃付近で飽和濃度に達しない低濃度溶液の場合、15℃を下回る温度範囲にまで冷却し、晶析させる必要がある。しかし、このような方法では、穏やかな結晶成長を実現することは困難であり、飽和濃度以下の領域で微細結晶が急激に晶析する、所謂、一斉晶析等によるトラブルが避けられず、安定した稼働が望めないという問題がある。更に、従来、硫酸ナトリウムのように、回収し、再利用する価値のある無機塩である場合、この無機塩を効率よく回収するため、回収に適した特定の廃液が用いられるのが一般的であるが、廃液の種類によらず効率よく、高い品質で硫酸ナトリウムを回収し、且つ処理すべき廃液の総量を減量させることができる技術が必要とされている。
特開平9−327688号公報
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、晶析槽内の温度を溶解度が小さくなるように所定温度に維持しながら、好ましくは少量の硫酸ナトリウム含有廃液、又は硫酸ナトリウム十水和物(以下、「十水和物」ということもある。)を添加し、硫酸ナトリウム十水和物又は硫酸ナトリウム無水和物(以下、「無水和物」ということもある。)を効率よく晶析させ、結晶と液分とを固液分離し、これらのうちの多くを製品として回収する廃液の減量方法、及び回収された硫酸ナトリウム十水和物含有液分に含有される十水和物を加工し、製品として再利用する廃液の処理方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.硫酸ナトリウム含有廃液に、該硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下の容量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を、該硫酸ナトリウム含有廃液の温度を0〜32℃に維持しながら添加し、硫酸ナトリウム十水和物を晶析させる晶析工程と、晶析した該硫酸ナトリウム十水和物と硫酸ナトリウム十水和物含有液分とを分離する分離工程と、を備えることを特徴とする廃液の減量方法。
2.上記添加を複数回繰り返す上記1.に記載の廃液の減量方法。
3.硫酸ナトリウム無水和物含有液分に、該硫酸ナトリウム無水和物含有液分に含有される硫酸ナトリウム無水和物の重量以下の無水和物換算重量の硫酸ナトリウム十水和物を添加する添加工程と、該硫酸ナトリウム無水物含有液分の温度を35〜130℃に維持しながら、硫酸ナトリウム無水和物を晶析させる晶析工程と、晶析した該硫酸ナトリウム無水和物と硫酸ナトリウム無水和物含有液分とを分離する分離工程と、を備えることを特徴とする廃液の減量方法。
4.上記添加工程と、上記晶析工程とを複数回繰り返す上記3.に記載の廃液の減量方法。
5.硫酸ナトリウム含有廃液に、該硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下の容量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を、該硫酸ナトリウム含有廃液の温度を0〜32℃に維持しながら添加し、硫酸ナトリウム十水和物を晶析させる晶析工程、及び晶析した該硫酸ナトリウム十水和物と硫酸ナトリウム十水和物含有液分とを分離する分離工程、を備える第1工程と、硫酸ナトリウム無水和物含有液分に、該硫酸ナトリウム無水和物含有液分に含有される硫酸ナトリウム無水和物の重量以下の無水和物換算重量の硫酸ナトリウム十水和物を添加する添加工程と、該硫酸ナトリウム無水物含有液分の温度を35〜130℃に維持しながら、硫酸ナトリウム無水和物を晶析させる晶析工程、及び晶析した該硫酸ナトリウム無水和物と硫酸ナトリウム無水和物含有液分とを分離する分離工程、を備える第2工程と、上記硫酸ナトリウム含有廃液に、該硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下の容量の上記硫酸ナトリウム無水和物含有液分を添加する添加工程、及び該硫酸ナトリウム含有廃液の温度を0〜32℃に維持しながら、硫酸ナトリウム十水和物を晶析させる晶析工程、を備える第3工程と、を具備することを特徴とする廃液の減量方法。
6.上記第1工程における上記添加、上記第2工程における上記添加と上記晶析工程、及び上記第3工程における上記添加と上記晶析工程、をそれぞれ複数回繰り返す上記5.に記載の廃液の減量方法。
7.上記硫酸ナトリウム含有廃液が、硫酸を含有する廃液を水酸化ナトリウムにより中和した廃液、又は水酸化ナトリウムを含有する廃液を硫酸により中和した廃液である上記1.乃至6.うちのいずれか1項に記載の廃液の減量方法。
8.硫酸ナトリウムを含有する廃液の処理方法であって、上記1.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の廃液の減量方法における減量工程を備えることを特徴とする廃液の処理方法。
9.上記硫酸ナトリウム十水和物含有液分が硫酸イオンを含有し、該硫酸ナトリウム十水和物含有液分にカルシウム化合物を添加して汚泥を生成させ、その後、該汚泥を脱水して脱水物とし、該脱水物をセメント原料として用いる上記8.に記載の廃液の処理方法。
十水和物を晶析させる工程を備える本発明の廃液の減量方法によれば、十水和物の晶析による温度の上昇を抑え、所定温度で十水和物の結晶成長、晶析及び回収をすることにより、十水和物の回収が安定、且つ効率よくなされる。また、原廃液には界面活性剤他の有機物が含有されていることがあるが、それら有機物の影響により結晶形態が片鱗状になることがあり、十水和物回収のための固液分離時に、原廃液が結晶に付着し、回収された結晶の不純物濃度が高くなる傾向にあるが、本発明の方法によれば、安定した結晶成長がなされ、結晶形態が片鱗状になり難く、その結果、十水和物結晶の不純物を低減させることができる。更に、この純度の高い十水和物結晶を用いることによって、より純度の高い無水和物結晶を回収することもできる。
また、添加を複数回繰り返す場合は、結晶を十分に成長させることができるため、粒径が大きく、より純度が高い十水和物をより容易に回収することができ、添加量、添加回数等により、十水和物結晶の粒径を調整することもできる。
無水和物を晶析させる工程を備える他の本発明の廃液の減量方法によれば、十水和物を予め水に溶解させることなく、十水和物をそのまま晶析槽中の硫酸ナトリウム無水和物含有液分に直接投入し、十水和物の溶解による温度の降下を抑え、所定温度で無水和物を晶析させることにより、結晶成長が促進され、粒径の大きい無水和物結晶を生成させることができる。また、十水和物結晶を無水和物含有液分に直接投入するため、溶解用の水分、即ち、処理すべき廃液が増加することがなく、且つ溶解用の水分の蒸発、除去に要する熱エネルギーも不要になり、純度の高い無水和物を低コストで容易に回収することができる。更に、十水和物から無水和物を回収する場合、これまでの直接加熱し、乾燥して粉末状の無水和物を回収する方法では、十水和物を再度水に溶解させる必要があった。そのため、上記のように廃液減量の目的に反し、また、例えば、浴用剤助剤向け等の粒度が大きい高付加価値品を回収するときは、従来、専用の高価な晶析装置が必要となり、製造コストが割高となっていたが、他の本発明の方法によれば、溶解用の水を必要とせず、専用晶析缶のような複雑な機構を有する専用の高価な晶析装置も必要としないため、製造コストを大きく抑えることができる。更に、十水和物の添加量、晶析時の温度等の条件設定のみで晶析する無水和物の粒度等を容易に調整することができるため、専用晶析缶のような複雑な機構を有する装置を必要とせず、浴用剤助剤向け等の高付加価値品を安価な装置で容易に回収することができる。また、無水和物結晶回収後の無水和物含有液分は30質量%程度の濃度となり、染色助剤等として製品化することができ、廃液の削減効果が大きい。
また、添加工程と、晶析工程とを複数回繰り返す場合は、結晶を十分に成長させることができるため、粒径が大きく、より純度が高い無水和物をより容易に回収することができ、添加量、添加回数等により、無水和物結晶の粒径をより容易に調整することもできる。
十水和物を晶析させる工程、無水和物を晶析させる工程、及び硫酸ナトリウム含有廃液に無水和物含有液分をリサイクルさせて添加する更に他の本発明の廃液の減量方法によれば、本発明の廃液の減量方法が有する上記の作用効果、及び他の本発明の廃液の減量方法が有する上記の作用効果を併せて有するとともに、本来、不純物濃度が高く硫酸ナトリウムの回収には不適であった廃液からも、純度の高い十水和物及び無水和物を容易に回収することができ、より多くの廃液をより容易に減量させることができるとともに、より多くの十水和物及び無水和物をより効率よく回収することができる。
また、硫酸ナトリウム含有廃液が、硫酸を含有する廃液を水酸化ナトリウムにより中和した廃液、又は水酸化ナトリウムを含有する廃液を硫酸により中和した廃液である場合は、酸洗、脱硫等により多量に発生するこれらの廃液を効率よく減量させることができる。
本発明の廃液の処理方法によれば、本発明の廃液の減量方法における減量工程を備えるため、廃液を効率よく処理することができ、特に有害物及び不純物等の混入が少ない品質の高い十水和物及び無水和物を効率よく回収することができる。
また、硫酸ナトリウム十水和物含有液分が硫酸イオンを含有し、この液分にカルシウム化合物を添加して汚泥を生成させ、その後、汚泥を脱水して脱水物とし、脱水物をセメント原料として用いる場合は、廃液に含有される硫酸ナトリウムを容易に減量させることができるとともに、回収したものをセメント原料として有効に活用することができる。このように、本発明の廃液の処理方法によれば、廃液に含有される成分のうちの無用な不純物等を除くほとんど全ての成分を回収し、有効に再利用することができる。
尚、企業の生産活動にともなう廃液の発生量は変動するものであり、硫酸ナトリウム製品を必要とする産業の需要量とのバランスをとることは、廃棄物リサイクルにおける重要なポイントであるが、本発明、他の本発明、及び更に他の本発明の廃液の減量方法、並びに本発明の廃液の処理方法によれば、季節的な回収製品の需要動向等も含め、柔軟に対応することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]十水和物を晶析させる工程を備える本発明の廃液の減量方法
本発明の廃液の減量方法は、硫酸ナトリウム含有廃液に、該硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下の容量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を、該硫酸ナトリウム含有廃液の温度を0〜32℃に維持しながら添加し、硫酸ナトリウム十水和物を晶析させる晶析工程と、晶析した該硫酸ナトリウム十水和物と硫酸ナトリウム十水和物含有液分とを分離する分離工程と、を備える。
硫酸ナトリウム含有廃液の温度は、硫酸ナトリウム十水和物が安定に存在する温度範囲、即ち、32.4℃以下の温度範囲にある。この温度範囲にある硫酸ナトリウム含有廃液に、追加用硫酸ナトリウム含有廃液を添加した場合、十水和物の晶析により廃液の温度が上昇し、十水和物の溶解度が高くなるため、廃液の温度の上昇を抑え、廃液の温度を所定温度に維持することにより、十水和物を容易に晶析させることができる。所定温度は、追加用硫酸ナトリウム含有廃液添加前の初期の硫酸ナトリウム含有廃液温度から、この廃液温度を15℃上回る温度までの温度範囲、好ましくは初期の廃液温度から、この廃液温度を12℃上回る温度までの温度範囲、より好ましくは初期の廃液温度から、この廃液温度を8℃上回る温度までの温度範囲である。具体的な温度範囲としては、0〜32℃であり、好ましくは3〜20℃、より好ましくは5〜15℃である。
硫酸ナトリウム含有廃液に添加される追加用硫酸ナトリウム含有廃液の容量は、硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下であればよい。この追加用硫酸ナトリウム含有廃液の容量は、硫酸ナトリウム含有廃液の容量(L)と、追加用硫酸ナトリウム含有廃液の容量(L)との比(L/L)が、L/L=1〜1000/0.5〜1であることが好ましく、L/L=1〜400/0.5〜1であることがより好ましく、L/L=1〜50/0.5〜1であることが特に好ましい。
また、追加用硫酸ナトリウム含有廃液は、大量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を少ない回数添加してもよく、少量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を多数回添加してもよいが、少量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を多数回添加することが好ましい。更に、追加用硫酸ナトリウム含有廃液を添加し、十水和物を晶析させる工程は、この添加を複数回繰り返す回分式であってもよく、連続的に添加しながら晶析させる連続法であってもよい。また、この連続法の場合、晶析槽内の廃液量が順次増加するため、晶析槽から廃液を間欠的又は連続的に抜き出すことが好ましい。例えば、連続的に添加される追加用硫酸ナトリウム含有廃液と同量の廃液を、連続的に晶析槽から抜き出す方法とすることができる。
十水和物と十水和物含有液分との分離も、回分式でもよく、連続的であってもよい。即ち、添加及び晶析と分離とを複数回繰り返す回分式であってもよく、連続的に添加しながら晶析させ、且つ連続的に分離する方法であってもよい。また、連続的に添加しながら晶析させる場合、分離は必ずしも連続的にする必要はなく、連続的に抜き出される廃液を貯留しておき、所定量貯留される毎に回分式に分離してもよい。
分離により得られた硫酸ナトリウム十水和物は、そのまま製品としてもよく、無水和物を晶析させる工程を備える他の本発明における硫酸ナトリウム無水和物含有液分に添加して使用してもよい。この場合、十水和物は、純度が高く、粒径が大きい結晶粒であることが好ましく、このような十水和物であれば、より純度が高く、より粒径の大きい無水和物を得ることができる。一方、十水和物含有液分は、水分を蒸発、除去して濃縮、減量させ、その後、カルシウム化合物と反応させ、石膏としてセメント原料等の用途で有効利用することができる。このように、本発明、他の本発明、及び更に他の本発明では、水分の蒸発、除去を必要とする場合、この蒸発、除去は、この工程のみで実施することもでき、他の工程で実施することもできるが、この工程で実施した場合は、水分の蒸発、除去に必要とされる熱エネルギーを十分に低減させることができる。
また、回収される十水和物及び無水和物の品質を向上させるため、除去することが望ましい成分、例えば、フッ素分、鉄分等が原廃液に含有される場合、及び原廃液に沈殿物が含有される場合は、追加用硫酸ナトリウム含有廃液の添加前に、除去すべき成分及び沈殿物を予め除去しておくことが望ましい。この除去すべき成分及び沈殿物の除去方法は特に限定されず、除去すべき成分等によって、凝集、沈殿、脱水ろ過等の各種の除去手法を採用することができる。
[2]無水和物を晶析させる工程を備える他の本発明の廃液の減量方法
他の本発明の廃液の減量方法は、硫酸ナトリウム無水和物含有液分に、該硫酸ナトリウム無水和物含有液分に含有される硫酸ナトリウム無水和物の重量以下の無水和物換算重量の硫酸ナトリウム十水和物を添加する添加工程と、該硫酸ナトリウム無水物含有液分の温度を35〜130℃に維持しながら、硫酸ナトリウム無水和物を晶析させる晶析工程と、晶析した該硫酸ナトリウム無水和物と硫酸ナトリウム無水和物含有液分とを分離する分離工程と、を備える。
硫酸ナトリウム無水和物含有液分の温度は、硫酸ナトリウム無水和物が安定に存在する温度範囲、即ち、32.4℃を越える温度範囲にある。この温度範囲にある硫酸ナトリウム無水和物含有液分に、硫酸ナトリウム十水和物を添加した場合、十水和物の溶解により廃液の温度が下降し、無水和物の溶解度が高くなるため、廃液の温度の下降を抑え、無水和物含有液分の温度を所定温度に維持することにより、無水和物を容易に晶析させることができる。所定温度は、十水和物添加前の初期の無水和物含有液分温度から、この液分温度を15℃下回る温度までの温度範囲、好ましくは初期の液分温度から、この液分温度を12℃下回る温度までの温度範囲、より好ましくは初期の液分温度から、この液分温度を8℃下回る温度までの温度範囲である。具体的な温度範囲としては、35〜130℃であり、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜100℃、更に好ましくは60〜100℃である。
硫酸ナトリウム無水和物含有液分に添加される硫酸ナトリウム十水和物の無水和物に換算した重量は、硫酸ナトリウム無水和物含有液分に含有される硫酸ナトリウム無水和物の重量以下であればよい。この硫酸ナトリウム十水和物の無水和物換算重量は、硫酸ナトリウム無水和物含有液分に含有される硫酸ナトリウム無水和物の重量(G)と、硫酸ナトリウム十水和物の無水和物換算重量(G)との比(G/G)が、G/G=1〜100/0.5〜1であることが好ましく、G/G=1〜50/0.5〜1であることがより好ましく、G/G=1〜5/0.5〜1であることが特に好ましい。
また、添加される硫酸ナトリウム十水和物は、大量の硫酸ナトリウム十水和物を少ない回数添加してもよく、少量の硫酸ナトリウム十水和物を多数回添加してもよいが、少量の硫酸ナトリウム十水和物を多数回添加することが好ましい。更に、硫酸ナトリウム十水和物を添加し、無水和物を晶析させる工程は、この添加と晶析とを複数回繰り返す回分式であってもよく、連続的に添加しながら晶析させる連続法であってもよい。また、この連続法の場合、晶析槽内の硫酸ナトリウム無水和物含有液分量が順次増加するため、晶析槽から硫酸ナトリウム無水和物含有液分を間欠的又は連続的に抜き出すことが好ましい。例えば、連続的に添加される硫酸ナトリウム十水和物と同量の硫酸ナトリウム無水和物含有液分を、連続的に晶析槽から抜き出す方法とすることができる。
晶析した無水和物と無水和物含有液分との分離も、回分式でもよく、連続的であってもよい。即ち、添加と晶析と分離とを複数回繰り返す回分式であってもよく、連続的に添加しながら晶析させ、且つ連続的に分離する方法であってもよい。また、連続的に添加しながら晶析させる場合、分離は必ずしも連続的にする必要はなく、連続的に抜き出される硫酸ナトリウム無水和物含有液分を貯留しておき、所定量貯留される毎に回分式に分離してもよい。
分離により得られた硫酸ナトリウム無水和物は、そのまま製品として用いることができる。特に、他の本発明では、純度が高く、粒径の大きい無水和物結晶とすることができるため、高品質を必要とされる浴用剤助剤等の用途に好適である。一方、無水和物含有液分は、無水和物を30質量%程度含有する液状のまま染色用助剤等の用途において使用することができ、更に他の本発明のように、硫酸ナトリウム含有廃液に添加し、リサイクルさせて十水和物及び無水和物生成のための原料として使用することもできる。このように、無水和物含有液分から水を蒸発、除去する必要がないため、熱エネルギーを低減させることができ、製品コストを抑えることもできる。
また、この他の本発明の廃液の減量方法では、無水和物を多量に回収したい場合等、状況に応じて、所定温度を高温に設定することにより、晶析時に水分を蒸発させ、全量を無水和物として回収することもできる。
[3]十水和物を晶析させる工程、無水和物を晶析させる工程、及び硫酸ナトリウム含有廃液に無水和物含有液分をリサイクルさせる更に他の本発明の廃液の減量方法
更に他の本発明の廃液の減量方法は、他の本発明の廃液の減量方法において発生する硫酸ナトリウム無水和物含有液分を、本発明の廃液の減量方法における硫酸ナトリウム含有廃液に添加する、即ち、無水和物含有液分をリサイクルさせ、より効率よく廃液を減量させる方法である。
尚、この更に他に本発明において、第3工程は、第1工程及び第2工程とは別の工程として設けてもよく、第2工程で分離された無水和物含有液分を第1工程における硫酸ナトリウム含有廃液に添加して用いてもよい。
この更に他の本発明において、硫酸ナトリウム含有廃液に硫酸ナトリウム無水和物含有液分添加するときに維持される所定温度、硫酸ナトリウム含有廃液の容量と、硫酸ナトリウム無水和物含有液分の容量との比、及び添加、晶析、分離を回分式にするか、連続的にするか、については、前記の本発明の廃液の減量方法の場合の記載を、そのまま適用することができる。
本発明、他の本発明、及び更に他の本発明の廃液の減量方法における上記「分離」の方法は特に限定されず、例えば、遠心分離及び沈降分離等の各種の方法が挙げられる。この分離によって十水和物と十水和物含有液分、又は無水和物と無水和物含有液分とに分離される。分離後の十水和物及び無水和物には水分が付着、含有されているが、これらに洗浄、精製及び乾燥等の処理を施して回収することができる。例えば、十水和物と十水和物含有液分との固液分離の際、洗浄機能付き遠心分離機を使用すれば、固液分離と同時に、十水和物に付着した廃液を洗浄、除去することができ、より効果的である。また、この方法では、有害物等が十水和物に混入し難いため、回収される十水和物及び無水和物の品質を高めることができる。
廃液からの硫酸ナトリウムの回収は、これまで十水和物及び無水和物の各々の回収に適した廃液を用いてなされており、それぞれ特定の廃液が用いられてきたが、本発明、他の本発明、及び更に他の本発明の廃液の減量方法では、廃液の種類は特定されず、且つ硫酸ナトリウムが含有される同一の廃液から十水和物及び無水和物を回収することができる。即ち、廃液から硫酸ナトリウム十水和物を晶析させ、その後、この十水和物を用いて無水和物を生成させることができる。
硫酸ナトリウムは32.4℃以下の温度では十水和物が安定であり、32.4℃を越えると無水和物が安定である。従って、本発明、及び更に他の本発明のように、32.4℃以下の温度範囲で廃液から硫酸ナトリウムを晶析させると十水和物として回収することができ、他の本発明、及び更に他の本発明のように、32.4℃を越える温度範囲で硫酸ナトリウムを晶析させると無水和物として回収することができる。
更に、十水和物は晶析の際に多量の水をともなうため(NaSOの分子量は134であり、水和する水の式量は180である。)、廃液から十水和物を晶析させるときに、多量の水が十水和物に移行する。これによって、処理すべき廃液を極めて効率よく減量させることもできる。また、本発明、及び更に他の本発明では、冷却により溶解度の差を利用して回収するため、硫酸ナトリウム十水和物含有液分に含有される有害物等の不純物の濃縮が少なく、十水和物に付着して持ち出される不純物も少なくなる。このようにして回収された十水和物であるため、この十水和物を用いて、他の本発明、及び更に他の本発明のように、無水和物を生成させることにより、廃液の種類によらず、より高純度の無水和物を得ることができる。
[4]廃液の処理方法
本発明の廃液の処理方法は、硫酸ナトリウムを含有する廃液の処理方法であって、本発明、他の本発明、及び更に他の本発明の廃液の減量方法における減量工程を備えることを特徴とする。
この廃液の処理方法では、廃液から十水和物又は無水和物を晶析させ、その後、分離し、得られる十水和物又は無水和物ばかりでなく、十水和物含有液分及び無水和物含有液分からも、精製及び/又は加工等により有用な十水和物及び無水和物を回収することができる。
具体的には、硫酸ナトリウム十水和物含有液分が硫酸イオンを含有する場合、この液分にカルシウム化合物を添加して汚泥を生成させ、その後、この汚泥を脱水して脱水物とし、この脱水物、即ち、硫酸カルシウムを回収し、セメント原料として再利用することができる。カルシウム化合物としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、石灰乳等を用いることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記のように、硫酸ナトリウム等の硫酸イオンが含有される廃液は多量に発生しており、従って、多くの廃液から分離された十水和物含有液分に硫酸イオンが含有されている。本発明、他の本発明、及び更に他の本発明の廃液の処理方法では、この液分から硫酸カルシウムを回収することにより、硫酸ナトリウム等が回収された後の液分に残存する硫酸イオンも有効に活用することができ、廃液に含有される硫酸ナトリウムのほとんど全てを回収し、有効に再利用することができる。尚、カルシウム化合物として石灰乳等の水溶液を用いたときは、必ずしも廃液の減量につながらないこともあるが、用いるカルシウム化合物の種類によっては、液分から硫酸カルシウムを回収し、セメント原料として再利用することにより、処理すべき廃液の減量とともに、処理すべき固形分を減量することもでき、処理量の総量を減量することもできる。
上記の硫酸カルシウムの回収は、特定の設備、操作等を必要とするため、酸洗、脱硫等をする工場内等では実施されず、通常、廃液処理を専業とする事業所等で実施される。そのため、廃液の減量工程を実施した場所、即ち、廃液が発生した事業所等から廃液処理を専業とする事業所等の他場所に専用の車両等により運搬し、その後、カルシウム化合物の添加、汚泥の脱水、及び硫酸カルシウムの回収がなされることが多く、この硫酸カルシウムがセメント原料として再利用される。また、廃液の減量を実施する場所と硫酸カルシウムの回収を実施する場所との間が近距離であるときは、配管等により移送することもできる。このように、廃液(液分)を運搬し、又は移送する必要があるため、処理すべき廃液を減量することは、回収し、再利用される硫酸カルシウムのコストの観点でも極めて有利である。
以上、詳述したように、本発明の廃液の処理方法では、処理すべき廃液が十分に減量され、専用の車両等により運送するにしても、配管等により移送するにしても、搬送費用を大きく低減させることができ、且つ廃液に含有される成分のうちの多くを効率よく回収し、高品質の商品価値の高い再利用品とすることができ、総体的にみて極めて有用なリサイクルシステムであるといえる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1(十水和物を晶析させる工程を備える廃液の減量方法)
容量3リットルのビーカーに10質量%濃度の硫酸ナトリウム溶液2000ミリリットルを投入し、その後、ビーカーを10℃に調温された恒温槽に収容し、ビーカー内の容液を撹拌機で攪拌混合しながら液温を10℃以下になるように維持した(実際は6〜10℃であった。)。次いで、表1に記載の所定濃度の供給液(硫酸ナトリウム水溶液)を表1に記載の所定量添加し、その後、表1に記載の所定時間撹拌した。この供給液の添加と攪拌とを表1に記載のように所定回数繰り返した。次いで、ビーカーの内容物をろ過分離した。
Figure 0005079631
表1の結果によれば、供給液(追加用硫酸ナトリウム含有廃液)の1回の添加量、反応時間(攪拌時間)、及び繰り返し回数により変動はあるものの、硫酸ナトリウム十水和物が効率よく回収されていることが分かる。また、液比重からみて実験例4〜7では、結晶の成長が促進され、粒径の大きい十水和物結晶が生成していることが推察される。
実施例2
容量2リットルのビーカーに30質量%濃度の硫酸ナトリウム溶液1000ミリリットルを投入し、その後、ビーカーを60℃に調温された加熱水浴に浸漬し、ビーカー内の容液を撹拌機の攪拌翼を180rpmで回転させて攪拌混合しながら液温が60℃付近になるようにした。次いで、20gの硫酸ナトリウム無水和物を添加し、5分間攪拌する操作を36回繰り返した。その後、ビーカーの内容物をろ過分離した。その結果、粒径が150〜200μmに成長した硫酸ナトリウム無水和物を170g回収することができた。尚、硫酸ナトリウム無水和物含有液分は1850gであった。
本発明、他の本発明、及び更に他の本発明の廃液の減量方法、並びに本発明の廃液の処理方法は、産業界で大量に発生する硫酸ナトリウム含有廃液を、効率よく処理することができ、且つ品質の高い十水和物及び無水和物を回収することができるため、廃棄物の処理の分野のみでなく、浴用剤助剤及び染色助剤等の高品質の硫酸ナトリウムが必要とされる各種の用途において利用することができる。

Claims (9)

  1. 硫酸ナトリウム含有廃液に、該硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下の容量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を、該硫酸ナトリウム含有廃液の温度を0〜32℃に維持しながら添加し、硫酸ナトリウム十水和物を晶析させる晶析工程と、晶析した該硫酸ナトリウム十水和物と硫酸ナトリウム十水和物含有液分とを分離する分離工程と、を備えることを特徴とする廃液の減量方法。
  2. 上記添加を複数回繰り返す請求項1に記載の廃液の減量方法。
  3. 硫酸ナトリウム無水和物含有液分に、該硫酸ナトリウム無水和物含有液分に含有される硫酸ナトリウム無水和物の重量以下の無水和物換算重量の硫酸ナトリウム十水和物を添加する添加工程と、該硫酸ナトリウム無水物含有液分の温度を35〜130℃に維持しながら、硫酸ナトリウム無水和物を晶析させる晶析工程と、晶析した該硫酸ナトリウム無水和物と硫酸ナトリウム無水和物含有液分とを分離する分離工程と、を備えることを特徴とする廃液の減量方法。
  4. 上記添加工程と、上記晶析工程とを複数回繰り返す請求項3に記載の廃液の減量方法。
  5. 硫酸ナトリウム含有廃液に、該硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下の容量の追加用硫酸ナトリウム含有廃液を、該硫酸ナトリウム含有廃液の温度を0〜32℃に維持しながら添加し、硫酸ナトリウム十水和物を晶析させる晶析工程、及び晶析した該硫酸ナトリウム十水和物と硫酸ナトリウム十水和物含有液分とを分離する分離工程、を備える第1工程と、
    硫酸ナトリウム無水和物含有液分に、該硫酸ナトリウム無水和物含有液分に含有される硫酸ナトリウム無水和物の重量以下の無水和物換算重量の硫酸ナトリウム十水和物を添加する添加工程と、該硫酸ナトリウム無水物含有液分の温度を35〜130℃に維持しながら、硫酸ナトリウム無水和物を晶析させる晶析工程、及び晶析した該硫酸ナトリウム無水和物と硫酸ナトリウム無水和物含有液分とを分離する分離工程、を備える第2工程と、
    上記硫酸ナトリウム含有廃液に、該硫酸ナトリウム含有廃液の容量以下の容量の上記硫酸ナトリウム無水和物含有液分を添加する添加工程、及び該硫酸ナトリウム含有廃液の温度を0〜32℃に維持しながら、硫酸ナトリウム十水和物を晶析させる晶析工程、を備える第3工程と、を具備することを特徴とする廃液の減量方法。
  6. 上記第1工程における上記添加、上記第2工程における上記添加工程と上記晶析工程、及び上記第3工程における上記添加工程と上記晶析工程、をそれぞれ複数回繰り返す請求項5に記載の廃液の減量方法。
  7. 上記硫酸ナトリウム含有廃液が、硫酸を含有する廃液を水酸化ナトリウムにより中和した廃液、又は水酸化ナトリウムを含有する廃液を硫酸により中和した廃液である請求項1乃至6うちのいずれか1項に記載の廃液の減量方法。
  8. 硫酸ナトリウムを含有する廃液の処理方法であって、
    請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の廃液の減量方法における減量工程を備えることを特徴とする廃液の処理方法。
  9. 上記硫酸ナトリウム十水和物含有液分が硫酸イオンを含有し、該硫酸ナトリウム十水和物含有液分にカルシウム化合物を添加して汚泥を生成させ、その後、該汚泥を脱水して脱水物とし、該脱水物をセメント原料として用いる請求項8に記載の廃液の処理方法。
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