JP5075652B2 - ダイヤモンド被覆切削インサート及び切削工具 - Google Patents

ダイヤモンド被覆切削インサート及び切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、ダイヤモンド被覆切削インサート及び切削工具に関し、詳しく言うと、基材を被覆するダイヤモンド膜の欠損及び剥離が生じ難く、かつ高速切削でも摩耗し難いような、長寿命のダイヤモンド被覆切削インサート及びこのダイヤモンド被覆切削インサートを備えた切削工具に関する。
特許文献1には、「表面粗さ(R)2〜20μmの基凹凸面を有することを特徴とする被覆用セラミック基基材」が記載されている(特許文献1の請求項1参照)。また、この被覆用セラミック基基材において、セラミック基基材本体を被覆する被覆層が「W−Ti−C−N固溶体及びW−Ti−Ta−C−N固溶体の少なくとも1種を主体として成る」と記載されている(特許文献1の請求項8参照)。この被覆用セラミック基基材は、「ダイヤモンド等の硬質被覆層が剥離しにくく耐用期間の長い各種切削工具、耐摩耗部材、電子用部材を製造することができる」旨の効果を奏すると主張されている(特許文献1の段落番号0078参照)。
しかしながら、ダイヤモンド膜等を被覆する従来のセラミック基材は、ダイヤモンド膜と基材との密着性が十分ではないことが多く、更にダイヤモンド膜を被覆して切削に用いると、ダイヤモンド膜の欠損及び剥離を生じることが多かった。また、ダイヤモンド膜を被覆したセラミック基材の耐摩耗性も十分でないこともあった。
よって、ダイヤモンド膜と基材との密着性が高く、容易にダイヤモンド膜の欠損及び剥離を生じることのない耐剥離性、及び切削工具として用いても摩耗し難い耐摩耗性を有している長寿命のダイヤモンド被覆切削インサートが望まれていた。
特開平7−90321号公報
この発明が解決しようとする課題は、基材を被覆するダイヤモンド膜の欠損及び剥離が起り難く、かつ高速切削に用いても摩耗し難いような、長寿命のダイヤモンド被覆切削インサートと、該ダイヤモンド被覆切削インサートを備える切削工具とを提供することである。
前記課題を解決するための手段としては、
請求項1は、母材と、タングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含有し、かつタングステンを30〜50質量%、コバルトを1質量%以下及びチタンを15〜35質量%の範囲内で含有し、かつ厚みが5〜30μmであり、前記母材の表面に形成された固溶体層とを有する基材、
及び前記基材を被覆するダイヤモンド膜を備えたダイヤモンド被覆切削インサートであり、
請求項2は、前記固溶体層の算術平均粗さRが0.4〜5.0μmであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆切削インサートであり、
請求項3は、前記固溶体層の算術平均粗さRが2.0〜5.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤモンド被覆切削インサートであり、
請求項4は、前記固溶体層がタングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含有する粒子で形成され、その粒子の粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサートであり、
請求項5は、前記固溶体層のチタン濃度が前記母材のチタン濃度より平均値で10〜60%大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサートであり、
請求項6は、前記ダイヤモンド膜の膜厚が3〜40μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサートであり、
請求項7は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサートと保持具とを備えることを特徴とする切削工具である。
この発明によると、タングステン、コバルト及びチタンを特定の量だけ含有すると共に残部がタンタル及びニオブを含有している固溶体層を有していると、ダイヤモンド膜と基材とが強固に密着するので、ダイヤモンド膜の欠損及び剥離が生じ難く、かつ高速切削に用いても摩耗し難いような、長寿命のダイヤモンド被覆切削インサートを提供することができる。
また、この発明によると、前記ダイヤモンド被覆切削インサートを備えているので、切削時に発生する摩耗及び高温に耐え得る長寿命の切削工具を提供することができる。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、基材とダイヤモンド膜とを備えている。前記ダイヤモンド膜が前記基材の表面を被覆することとなる。
前記基材は、固溶体層及び母材を有している。
前記固溶体層は、タングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含有し、かつタングステンを30〜50質量%、コバルトを1質量%以下及びチタンを15〜35質量%の範囲内で含有し、かつ厚みが5〜30μmである。
前記固溶体層の好ましい態様としては、タングステンを30〜50質量%含有している態様、更に好ましくは35〜45質量%含有している態様を挙げることができる。固溶体層に含まれるタングステンの含有量が30質量%未満であると、硬質でかつ脆い固溶体層となることがあり、50質量%を超えると、後述のダイヤモンド膜の耐剥離性が低下することがある。次に、コバルトを0質量%を越えると共に1質量%以下の割合で含有している態様、更に好ましくは0.2〜0.8質量%含有している態様を挙げることができる。固溶体層のコバルトの含有量が0質量%であると、固溶体層の強度が低下することがあり、1質量%を超えると、ダイヤモンド膜の耐剥離性が低下することがある。なお、タングステン及びコバルト等を含有する基材の表面に熱処理等により固溶体層を形成すると、コバルトは表面に存在し難くなる。固溶体層が薄く、該固溶体層の表面にコバルトが多量に存在すると、Sp結合を多く含むダイヤモンド膜が形成され難くなってしまい、結果として剥離し易くなる。このような知見に基づくと、コバルトは固溶体層の表面に存在せず、固溶体層の内部に存在することが望ましいといえる。続いて、チタンを15〜35質量%含有している態様、更に好ましくは25〜35質量%含有している態様を挙げることができる。固溶体層のチタンの含有量が15質量%未満であると、後述の算術平均粗さRを達成できないことがあり、35質量%を超えると、算術平均粗さRが過大となることがある。更に、固溶体層は、上述したタングステン、コバルト及びチタンを上記含有割合で含有すると共に、残部にタンタル及びニオブを含有している。
したがって、固溶体層がタングステンを30〜50質量%、コバルトを0質量%を越えると共に1質量%以下の範囲及びチタンを15〜35質量%の範囲内で含有すると共に残部にタンタル及びニオブを含有することにより、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、切削途中で固溶体層にクラックの発生及び進展が生じ難くなる。固溶体層におけるタングステン、コバルト及びチタンの含有割合は、固溶体層における炭素及び窒素を除く元素の総質量に対する各元素の質量割合である。固溶体層におけるタングステン、コバルト、チタン、タンタル及びニオブ等の種々の金属の含有量を測定する方法としては、例えばX線マイクロアナライザ等を用いて基材の固溶体層を定量分析する方法を挙げることができる。なお、固溶体層における前記残部には、この発明の目的を阻害しない範囲で、上記以外の他の金属例えばバナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム及びハフニウム等が含有されていても良い。
また、固溶体層の別の好ましい態様としては、固溶体層の厚みが5〜30μmである態様、更に好ましくは厚みが10〜30μmである態様を挙げることができる。固溶体層の厚みが5μm未満であると、固溶体層にクラックが生じると進展し易くなり、30μmを超えると、この発明のダイヤモンド被覆切削インサート全体の強度が低下することがある。
前記母材は、その表面に前記固溶体層が存在する。すなわち、基材における母材は、固溶体層よりも内側部分である。前記母材が、上述の固溶体層を形成する元素、すなわちタングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブを含有して形成されている場合には、前記基材を熱処理すると、基材の外表面から5〜30μmまでの領域を固溶体層に変質させることができる。この場合には、固溶体層より内側が母材となる。このようにして基材を形成する他に、公知のコーティング技術により母材の表面に固溶体層を生成させることにより基材を形成することも可能である。
なお、固溶体層の厚みの測定方法としては、例えば走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と称することがある。)で基材の断面を観察し、固溶体層の表面に存在する凹凸における凹部分の最下点から固溶体層と母材との界面までの長さを固溶体層の厚みとして測定し、10視野観察して平均値を算出する方法等を挙げることができる。
前記基材の更に好ましい態様として、固溶体層の算術平均粗さR(JIS B0601−2001に規定)が0.4〜5.0μmである態様、更に好ましくは算術平均粗さRが2.0〜5.0μmである態様を挙げることができる。固溶体層の算術平均粗さRが0.4〜5.0μmであると、ダイヤモンド膜と固溶体層とが噛み合い易くなるので密着性がより一層向上することとなり、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、ダイヤモンド膜の高い耐剥離性を得ることができる。固溶体層の算術平均粗さRの測定方法としては、JIS B0601−2001に準拠した試験法を用いればよく、例えば非接触式のレーザー顕微鏡を使用して基材の固溶体層表面を観察し、算術平均粗さRを算出する方法等を挙げることができる。
また、基材における前記固溶体層がタングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含有する粒子で形成され、その粒子の粒径は、小径であるほど良いが、0.1〜20μmであれば良い。この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、固溶体層の粒径が0.1〜20μmであると、ダイヤモンド膜と固溶体層との密着性が向上し、かつ固溶体層にクラックが発生し難く、クラックの進展も発生し難くなる。固溶体層の粒径の測定方法としては、例えば10体積%の水酸化カリウムとヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムと体積80%の水とを含有する水溶液で基材の断面をエッチングした後に、金属顕微鏡により倍率1000倍で固溶体層を観察し、固溶体層中の任意の粒子における最大長さを10視野測定し、その10視野中で最大の粒径を固溶体層の粒径とする方法等を挙げることができる。
更に言うと、固溶体層のチタン濃度が母材のチタン濃度より平均値で10〜60%大きいことが好ましい。この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、固溶体層のチタン濃度が母材のチタン濃度より平均値で10〜60%大きいと、固溶体層にクラックが発生し難く、かつクラックの進展もし難くなる。固溶体層のチタン濃度及び母材のチタン濃度を測定する方法としては、例えばエネルギー分散型X線検出器(以下、「EDS」と称することがある。)で基材の断面を固溶体層から母材に向う方向に分析することにより、基材に含まれるチタンの含有量変化を測定する方法等を挙げることができる。
次に、ダイヤモンド膜について説明する。この発明のダイヤモンド被覆切削インサートにおけるダイヤモンド膜は、前記基材を被覆している。
ダイヤモンド膜の好ましい態様としては、ダイヤモンド膜の膜厚が3〜40μmである態様を挙げることができる。ダイヤモンド膜の膜厚が3〜40μmであると、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、強度の向上を図ることができ、ダイヤモンド膜の欠損及び剥離が生じ難くなる。ダイヤモンド膜の測定方法としては、例えばこの発明のダイヤモンド被覆切削インサートをダイヤモンド膜から母材に向う方向に切断した断面をSEMで観察する方法等を挙げることができる。
以下に、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートの形成方法を説明する。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、基材を形成した後に、基材の表面にダイヤモンド膜を被覆することにより得られる。
基材の形成は、先ずタングステン、コバルト、チタン、タンタル及びニオブと炭素粉末とを混合した混合物又はタングステン、コバルト、チタン、タンタル及びニオブの炭化物を混合した混合物等をアルゴンガス雰囲気下で焼結する際に、飽和磁化9.0×10−9T・m/g〜11.5×10−9T・m/gとなるように焼結する。飽和磁化は基材中の炭素含有量によって変動するので、飽和磁化を所望の範囲内にすることで基材中の炭素含有量を推測することができる。次に、焼結体の表面を研磨し、1〜5体積%の窒素ガスを含むアルゴンガス雰囲気下で熱処理を行うと、窒素ガス、アルゴン及び熱に曝される表面部分がタングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含む固溶体層となり、基材を得ることができる。
続いて、基材の表面、すなわち固溶体層を被覆するようにダイヤモンド膜を設ける。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートにおけるダイヤモンド膜の形成方法としては、気相合成法である限り特に限定されず、好ましくはマイクロ波プラズマ化学蒸着法(以下、「化学蒸着」を「CVD」と称することがある。)、熱フィラメントCVD法、高周波プラズマCVD法などの各種化学蒸着法等を挙げることができる。また、場合によってはアークイオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法などの各種物理蒸着法も、ダイヤモンド膜の形成方法として利用可能である。ダイヤモンド膜の形成に用いる原料ガスとしては、炭素原子を含む化合物のガスであればよく、メタン、エタン、プロパン等の炭化水素系ガスの他、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス、或は一酸化炭素等の酸化炭素系ガスを用いることもできる。一般的には、メタンガスを用いるのが好ましく、メタン等の炭素含有ガスを水素で希釈した混合ガスを用いることができる。
なお、ダイヤモンド膜を基材表面に形成するに当たり、前処理として、ダイヤモンド粒子を分散させたアルコールに基材を浸漬しつつ、アルコールに超音波を照射する処理により、基材の表面を活性化しておくのが、好ましい。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、ダイヤモンド膜と固溶体層とが高い密着性を有しているので、このダイヤモンド被覆切削インサートを切削に用いた場合にも、ダイヤモンド膜の欠損及び剥離が生じることがなく、かつ高温が生じ易い高速切削にも耐えることができ、長寿命である。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、例えば図1に示される形状のみならず、円形、三角形、六角形等の多角形、ひし形、長方形等の切削インサートとして使用されることができる。
また、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、この発明の切削工具の一実施態様として図2に示すように、旋削加工用ホルダに装着することにより、例えば旋削加工用工具として使用される。また、図2には図示していないが、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、切削工具におけるホルダの一種である回転工具ホルダ、例えばフライスカッターに装着することにより、面加工用工具等として使用されることもできる。
なお、図1及び2において1はダイヤモンド被覆切削インサートを示し、2は旋削加工用のホルダを示し、3は押さえ金を示す。
なお、この発明の切削工具の種類としては限定されず、例えば溝入れ工具、ねじ切り工具、外径加工用工具、内径加工用工具、面取り工具、エンドミル及びミニチュアドリル等が挙げられる。上述の工具は、通常はスローアウェイチップと称するチップを備えた、チップ交換式の工具である。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートにおけるダイヤモンド膜の形成においては、熱フィラメント法が好適に利用できる。図3は、ダイヤモンド膜形成に使用する熱フィラメント法化学蒸着装置4の説明図である。5はこの装置のチャンバ、6はその排気管、7はチャンバ5内にメタンガスと水素ガス等を導入する混合ガス導入管である。8はチャンバ5内における台座、9は台座8上に載置された基材である。10は基材9の上方に配置される熱フィラメント、11は熱フィラメント10の支持柱も兼ねた電極である。12は熱フィラメント用電源であり、13は電極用電源である。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートの実施例及び比較例を示す。
(1)ダイヤモンド被覆切削インサートの作製
(実施例1〜7)
先ず、基材として図1に示すような超硬合金製のスローアウェイチップを作製した後に、図3に示すような熱フィラメントCVD法装置によりダイヤモンド膜で基材を被覆した。
基材の作成手順及び条件は、以下の通りである。
先ず、固溶体層を有する基材を形成する前段階として、一旦焼結体を作製した。
原料:平均粒径1〜2μmのコバルト粉末、平均粒径1〜2μmのチタン、ニオブ及びタンタルの炭化物粉末並びに平均粒径1〜2μmの炭化タングステン粉末
焼結温度:1400〜1500℃
雰囲気:アルゴンガス
圧力:1KPa
性状:ISOに規定のK種超硬合金
形状:ISOに規定のSPGN120308
焼結時間:1時間
上述の原料を、後述の表1の組成となるように使用量を決定し、かつ飽和磁化が飽和磁化9.0×10−9T・m/g〜11.5×10−9T・m/gとなるように焼結した。所望の飽和磁化を有する焼結体を得る方法としては、原料を焼結しつつ飽和磁化を磁気飽和誘導測定装置(株式会社堀場製作所製)にて測定し、所望の飽和磁化を得ることができるように、焼結条件を調整した。ここで得られた焼結体を、固溶体層を形成するための心材とした。
続いて、固溶体層を形成した熱処理の条件は、以下の通りである。
焼結温度:1400℃
雰囲気:1〜5体積%の窒素ガスを含むアルゴンガス
圧力:常圧
所望の飽和磁化を有する焼結体の表面を研磨した後に、上述の条件で熱処理を行うことで、母材の表面が固溶体層となった基材を得ることができた。得られた基材において、組成、固溶体層の厚み、固溶体層の算術平均粗さ、固溶体層の粒径及び固溶体層のチタン濃度と母材のチタン濃度との差を測定した。
固溶体層の組成は、X線マイクロアナライザ(日本電子株式会社製)で測定した。
固溶体層の厚みは、基材を切断して固溶体層の断面をSEMで観察し、固溶体層における凹凸の凹部分の最下点と固溶体層の最下点との距離を固溶体層の厚みとして測定した。基材中の10視野を観察及び測定し、測定結果の平均値を採用することとした。ここで、観察したSEMの画像の一例を図4に示す。図4の14は基材表面を示し、15は固溶体層を示し、16は母材を示している。また、図4中の実線で挟まれる領域Aの幅が、固溶体層の厚みである。
固溶体層の算術平均粗さRは、JIS B0601−2001に準拠した試験法により、非接触式のレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製)を使用して算出した。なお、後述の表1に示されるように、固溶体層の算術平均粗さRは様々な値に調整している。固溶体層の算術平均粗さRの調整方法としては、熱処理条件を調整する方法を採用することとした。
固溶体層の粒径は、10体積%の水酸化カリウムとヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムと体積80%の水とを含有する水溶液で基材の断面をエッチングした後に、金属顕微鏡(オリンパス株式会社製)により倍率1000倍で固溶体層を観察し、固溶体層中の任意の粒子における最大軸長を10視野測定し、その10視野中で最大の長さを固溶体層の粒径とした。
固溶体層のチタン濃度と母材のチタン濃度との差は、SEMのEDSで、基材の断面を基材の表面から母材に向う方向に、金属の組成変化を測定した。
続いて、ダイヤモンド膜を基材の表面に形成した。ダイヤモンド膜の形成方法及び条件は、以下の通りである。
装置:熱フィラメントCVD装置
チャンバ内圧:3.99966Pa(30mmTorr)
基材温度:800℃
混合ガス供給速度:500ml/分、
混合ガス組成比率(体積比):水素/メタン=960/40
バイアス電圧:300V
フィラメント印加電圧/電流:20V/100A
フィラメント温度:1800℃
ダイヤモンド膜形成時間:3〜35時間
上述の条件で基材の表面をダイヤモンド膜が被覆しているダイヤモンド被覆切削インサートを作製した。ダイヤモンド膜の膜厚は、ダイヤモンド被覆切削インサートを切断して得られた断面を、SEMで観察して測定した。
以上の条件で7種類のダイヤモンド被覆切削インサートを作製し、これらを実施例1〜7とした。
続いて、実施例1〜7の比較対象として比較例のダイヤモンド被覆切削インサートを作製した。
(比較例1)
比較例1では、固溶体層を設けることなく、所望の飽和磁化を有している焼結体に直接ダイヤモンド膜を被覆した点以外は、実施例1〜7におけるダイヤモンド被覆切削インサートを形成する条件と同様に形成及び測定を行った。すなわち、比較例1は、母材に直接ダイヤモンド膜を設けた状態である。
(比較例2)
比較例2では、基材のタングステンの含有量を30〜50質量%の範囲外にし、かつチタンの含有量を15〜35質量%の範囲外にした点以外は、実施例1〜7におけるダイヤモンド被覆切削インサートを形成する条件と同様に形成及び測定を行った。
(比較例3)
比較例3では、基材のタングステンの含有量を30〜50質量%の範囲外にし、かつコバルトの含有量を0〜1質量%の範囲外にした点以外は、実施例1〜7におけるダイヤモンド被覆切削インサートを形成する条件と同様に形成及び測定を行った。
(比較例4)
比較例4では、基材のチタンの含有量を15〜35質量%の範囲外にした点以外は、実施例1〜7におけるダイヤモンド被覆切削インサートを形成する条件と同様に形成及び測定を行った。
(比較例5)
比較例5では、基材の原料としてチタンの炭化物粉末のみを用いた点以外は、実施例1〜7におけるダイヤモンド被覆切削インサートを形成する条件と同様に形成及び測定を行った。
以上の条件で5種類の切削インサートを作製し、これらを比較例1〜5とした。
実施例1〜7及び比較例1〜5の各組成、固溶体の厚み、算術平均粗さ、固溶体層粒径、固溶体層のチタン濃度と母材のチタン濃度との差及びダイヤモンド膜の膜厚を表1に示す。なお、表1中では、固溶体層の組成は金属を元素記号で上段に示しかつ示した金属の順にそれらの含有量を下段に記載しており、「固溶体層のチタン濃度と母材のチタン濃度との差」を単に「チタン濃度差」と記載し、「ダイヤモンド膜の膜厚」を単に「ダイヤ膜厚」と記載している。
Figure 0005075652
(2)ダイヤモンド被覆切削インサートの耐剥離性評価及び耐摩耗性評価
実施例1〜7及び比較例1〜5で作製したダイヤモンド被覆切削インサートを旋削の切削加工試験行い、ダイヤモンド膜の耐剥離性及び耐摩耗性を評価することとした。
耐剥離性評価の方法としては、切削速度及び切り込みを一定にして切削を開始し、ダイヤモンド膜の剥離が生じるまで、一定加工長毎に切削送りを増加させていき、ダイヤモンド膜の剥離が生じたときの切削送り量により評価する方法を採用した。条件は以下の通りである。
被削材:アルミニウム合金Al−8〜10%Si合金
チップ形状:SPGN120308(ISO規格)
刃先処理:0.1mm×25°
切削速度:471m/min
初期切削送り:f=0.1mm/rev
切り込み:d=0.5mm
切削油:あり
また、耐摩耗性評価の方法としては、切削速度、切り込み及び切削送りを一定にして切削を開始し、一定加工長毎にチップの摩耗度を確認していき、逃げ面摩耗量が0.2mmを超えたときに摩耗度の確認数により評価する方法を採用した。条件は以下の通りである。
被削材:アルミニウム合金Al−18%Si合金
チップ形状:SPGN120308(ISO規格)
刃先処理:0.1mm×25°
切削速度:471m/min
切削送り:f=0.1mm/rev
切り込み:d=0.5mm
切削油:あり
実施例1〜7及び比較例1〜5の評価を表2に示す。
Figure 0005075652
表2中、「コーティング後自己破壊」は、基材をダイヤモンド膜で被覆した後に、自発的なダイヤモンド膜の欠損及び剥離の有無を示している。また、「チップ切断時剥離」は、ダイヤモンド膜を測定する際にダイヤモンド被覆切削インサートの切断によってダイヤモンド膜の剥離の有無を示しており、「○」は剥離が生じなかったことを示し、「△」は実用上問題の無い程度の剥離が生じたことを示し、「×」は大部分の剥離が生じたことを示している。
比較例1、3及び5は、ダイヤモンド膜を被覆したが、耐剥離性及び耐摩耗性の評価を行う前にダイヤモンド膜が基材から剥離してしまった。比較例1及び3では、ダイヤモンド膜が被覆している基材表面にコバルトが多量に含まれており、ダイヤモンド粒子が希薄なダイヤモンド膜が形成されていたので、自発的に剥離していた。比較例5では、チタン及び炭素の固溶体が固溶体層となってダイヤモンド膜と密着していたが、ダイヤモンド膜と固溶体層とが一挙に剥離していた。比較例2は、固溶体層のタングステンの含有量が少ないので、ダイヤモンド膜と固溶体層との密着性が低下することとなり、耐剥離性が低下していた。また、比較例4では、固溶体層の厚み及び算術平均粗さが小さいので、ダイヤモンド膜と固溶体層との噛み合いが悪くなって耐剥離性が低下していた。
比較例に対して、実施例1〜7では、タングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含有し、かつタングステンを30〜50質量%、コバルトを0〜1質量%及びチタンを15〜35質量%の範囲内で含有すると共に残部にタンタル及びニオブを含有しているので、ダイヤモンド膜の自発的な剥離、及びスローアウェイチップを切断した際の衝撃によるダイヤモンド膜の剥離を生じることはなかった。
実施例5及び6は、固溶体層の算術平均粗さRが0.4〜5.0μmの範囲外であるので、実施例1〜4に比べて耐剥離性が劣ることが分かる。実施例5では、算術平均粗さが他の実施例に比べて大きく、一般的に算術平均粗さが大きくなると表面の凹凸の密度が小さくなるので、ダイヤモンド膜と固溶体層との噛み合いが緩く、耐剥離性が実施例1〜4より低下したと考えられる。また、実施例6では、固溶体層の算術平均粗さが小さいので、ダイヤモンド膜の剥離を生じるまでの送り量が0.4mmと、他の実施例に比べて小さかった。しかしながら、実施例6は、金属の断続加工ではなく、木材の連続加工であれば実用に耐え得ると考えられる。
実施例7では、実施例1〜4に比べて、固溶体層の粒径が大きく、固溶体の粒子同士の界面である粒界から切削時の衝撃等によりクラックが発生し易くなっており、実施例1〜4に比べてダイヤモンド膜が早く剥離してしまったと推測される。
また、実施例1及び2では、耐剥離性が高いだけでなく、更に高い耐摩耗性も有していることが分かる。
この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、優れた耐剥離性及び耐摩耗性を有しており、高速切削にも耐え得るような長寿命の切削インサートである。したがって、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートは、高温になり得る高速切削等の厳しい条件下で切削を行う状況に適用することができる。
図1は、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートの一実施例を示す斜視図である。 図2は、この発明の切削工具の一実施例を示す。 図3は、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートの一実施例を作製する熱フィラメント法化学蒸着装置の説明図である。 図4は、この発明のダイヤモンド被覆切削インサートの一実施例における基材を切断した断面のSEM画像である。
符号の説明
1 ダイヤモンド被覆切削インサート
1A ダイヤモンド膜
2 旋削加工用ホルダ
3 押さえ金
4 熱フィラメント法化学蒸着装置
5 チャンバ
6 排気管
7 混合ガス導入管
8 台座
9 基材
10 熱フィラメント
11 電極
12 熱フィラメント用電源
13 電極用電源
14 基材表面
15 固溶体層
16 母材
A 固溶体層の厚み

Claims (7)

  1. 母材と、タングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含有し、かつタングステンを30〜50質量%、コバルトを1質量%以下及びチタンを15〜35質量%の範囲内で含有し、かつ厚みが5〜30μmであり、前記母材の表面に形成された固溶体層とを有する基材、
    及び前記基材を被覆するダイヤモンド膜を備えたダイヤモンド被覆切削インサート。
  2. 前記固溶体層の算術平均粗さRが0.4〜5.0μmであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆切削インサート。
  3. 前記固溶体層の算術平均粗さRが2.0〜5.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤモンド被覆切削インサート。
  4. 前記固溶体層がタングステン、コバルト、チタン、タンタル、ニオブ、炭素及び窒素を含有する粒子で形成され、その粒子の粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサート。
  5. 前記固溶体層のチタン濃度が前記母材のチタン濃度より平均値で10〜60%大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサート。
  6. 前記ダイヤモンド膜の膜厚が3〜40μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサート。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆切削インサートと保持具とを備えることを特徴とする切削工具。
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