以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.集積回路装置のシミュレーション方法、集積回路装置
図1は、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の対象となる集積回路装置の一例について説明するための図である。
集積回路装置1は、デジタル回路ブロック10、アナログ回路ブロック20を含んで構成されている。
デジタル回路ブロック10は、昇圧制御回路12、パラメータ設定回路14を含んで構成されている。
昇圧制御回路12は、N個(Nは2以上の整数)の昇圧回路22−1〜22−Nの各々に対して昇圧動作の開始を指示するN個の制御信号16−1〜16−Nを生成する。制御信号16−1〜16−Nは、昇圧回路22−1〜22−Nに対して昇圧動作の開始タイミングを指示するトリガ信号(パルス信号)であってもよいし、昇圧回路22−1〜22−Nに対して昇圧動作すべき期間を指示するイネーブル信号(レベル信号)であってもよい。また、昇圧制御回路12は、昇圧回路22−1〜22−Nの各々に対して昇圧動作の禁止を指示するN個の制御信号17−1〜17−Nを生成するようにしてもよい。制御信号17−1〜17−Nは、昇圧回路22−1〜22−Nに対して昇圧動作を禁止するディスエーブル信号(レベル信号)であってもよい。なお、制御信号16−1〜16−Nがイネーブル信号(例えば、Hレベル)であり、制御信号17−1〜17−Nがディスエーブル信号(例えば、Lレベル)である場合には、制御信号16−1〜16−Nと制御信号17−1〜17−Nはそれぞれ共通の信号線を介して昇圧回路22−1〜22−Nに供給することができる。
パラメータ設定回路14は、昇圧制御回路12に制御信号16−1〜16−Nを生成するタイミングを指示するパラメータ18−1〜18−Nが設定される。パラメータ18−1〜18−Nは、昇圧制御回路12に制御信号17−1〜17−Nを生成するタイミングを指示するパラメータであってもよい。パラメータ設定回路14は、例えば、パラメータ18−1〜18−Nを設定するためのN個の設定レジスタを含むレジスタファイルとして構成され、集積回路装置1の外部から供給されるコマンドに従ってN個の設定レジスタにパラメータ18−1〜18−Nを設定するようにしてもよい。
アナログ回路ブロック20は、昇圧動作により所定の電圧を生成するN個の昇圧回路22−1〜22−Nを含んで構成されている。昇圧回路22−1〜22−Nは、それぞれ入力電圧Vin1〜VinNを昇圧(G1〜GN倍)し、出力電圧Vout1〜VoutNを生成する。昇圧回路22−1〜22−Nが生成する電圧Vout1〜VoutNは、それぞれ異なる大きさの電圧であってもよく、それぞれ内部回路24−1〜24−2に供給される。入力電圧Vin1〜VinNは、集積回路装置1の外部から供給されてもよいし、昇圧回路22−1〜22−Nのいずれかの出力電圧であってもよい。また、出力電圧Vout1〜VoutNは、必ずしも内部回路24−1〜24−2に供給されなくてもよく、集積回路装置1の外部に出力されるように構成されていてもよい。
図19は、従来の集積回路装置のシミュレーション方法について説明するための図である。図19に、図1の集積回路装置1の全体回路のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおける信号波形の一例である。以下、図1を参照しながら図19について説明する。
時刻T0においてシミュレーションが開始し、時刻T0〜T1において制御信号16−1〜16−N(それぞれ昇圧回路22−1〜22−Nのイネーブル信号)がLレベルなので、昇圧回路22−1〜22−Nの出力電圧Vout1〜VoutNの電圧値は、それぞれ入力電圧Vin1〜VinNに等しい。
時刻T1〜T2において、制御信号16−1がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T1〜T3において昇圧回路22−1〜昇圧回路22−Nが昇圧動作をする。すなわち、時刻T1〜T3が昇圧回路22−1〜22−Nの昇圧動作期間に相当する。そして、時刻T3において、昇圧回路22−1〜22−Nの出力電圧Vout1〜VoutNの電圧値がそれぞれVin1×G1〜VinN×GNに達する。
このように、従来のシミュレーション方法によれば、回路シミュレーションにおいて、複数の昇圧回路が昇圧動作をするタイミングについての配慮がされていないため、複数の昇圧回路が同時に昇圧動作をする可能性がある。しかし、複数の昇圧回路が同時に昇圧動作をすると、同時に動作するトランジスタ等の素子の数が著しく増加することになる。その結果、回路シミュレータの計算負荷が著しく増加し、特に、全体回路のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおいては膨大なシミュレーション時間を要していた。
図2は、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第1の例を示すフローチャートである。以下、図1を参照しながら図2のフローチャートについて説明する。
まず、昇圧回路22−1〜22−N、昇圧制御回路12、パラメータ設定回路14の記述を含むシミュレーション用のネットリストを作成する(シミュレーション用ネットリスト作成ステップ(ステップS10))。ステップS10の処理において、シミュレーション用のネットリストは、昇圧回路22−1〜22−N、昇圧制御回路12、パラメータ設定回路14を含む全体回路の接続情報を記述した論理ミュレーション用のネットリスト(Verilogネットリスト等)であってもよいし、回路ミュレーション用のネットリスト(spiceネットリスト等)であってもよい。また、昇圧回路22−1〜22−Nの内部の接続情報を含む回路シミュレーション用のネットリスト(spiceネットリスト等)及び昇圧制御回路12やパラメータ設定回路14の内部の接続情報を含む論理ミュレーション用のネットリスト(Verilogネットリスト等)をそれぞれ作成してもよい。
次に、少なくとも2つの昇圧回路22−1〜22−Nの各々の昇圧動作期間が重複しないように、当該昇圧回路の各々が昇圧動作をするタイミングを指示する少なくとも2つのパラメータ18−1〜18−Nをパラメータ設定回路14に設定する記述を含むテスト入力情報を作成する(テスト入力情報作成ステップ(ステップS12))。ステップS12の処理において、すべての昇圧回路22−1〜22−Nの昇圧動作期間が重複しないように、昇圧回路22−1〜22−Nの各々が昇圧動作をするタイミングを指示するパラメータ18−1〜18−Nをパラメータ設定回路14に設定する記述を含むテスト入力情報を作成するようにしてもよい。テスト入力情報は、例えば、レジスタ設定コマンドを羅列したコマンドファイルであってもよい。
最後に、ステップS12で作成したテスト入力情報に基づいて、ステップS10で作成したシミュレーション用のネットリストに対してシミュレーションを実行する(シミュレーション実行ステップ(ステップS14))。ステップS14の処理において、集積回路装置1の全体回路に対してデジタル−アナログ混在シミュレーションを実行するようにしてもよい。その場合、昇圧回路22−1〜22−Nを含むアナログ回路ブロックに対しては回路シミュレーションを実行し、昇圧制御回路12及びパラメータ設定回路14を含むデジタル回路ブロックに対しては論理シミュレーションを実行する。
本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第1の例によれば、少なくとも2つの昇圧回路の昇圧動作期間が重複しないように回路シミュレーションを実行することができる。従って、回路シミュレーションにおいて同時に動作する素子の数を削減することができるので、シミュレータの計算負荷が低減し、シミュレーションを高速化(すなわち、シミュレーション時間を短縮)することができる。
図3は、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第2の例を示すフローチャートである。第2の例は、図1において昇圧制御回路12又はパラメータ設定回路14の少なくとも一方が存在しない集積回路装置、昇圧制御回路12又はパラメータ設定回路14の少なくとも一方は存在するが昇圧回路22−1〜22−Nが昇圧動作をするタイミングを十分に制御できない集積回路装置等にも適用することができる。以下、図1を参照しながら図3のフローチャートについて説明する。
まず、昇圧制御回路モデル、パラメータ設定回路モデルを作成する(シミュレーションモデル作成ステップ(ステップS20))。ステップS20の処理において、昇圧制御回路モデルは、昇圧回路22−1〜22−Nの各々に対して昇圧動作の開始を指示する制御信号16−1〜16−Nを生成するシミュレーションモデルである。パラメータ設定回路モデルは、昇圧制御回路モデルに制御信号16−1〜16−Nを生成するタイミングを指示するパラメータ18−1〜18−Nが設定されるシミュレーションモデルである。
次に、昇圧回路22−1〜22−Nの記述を含むシミュレーション用のネットリストを作成する(シミュレーション用ネットリスト作成ステップ(ステップS22))。ステップS22の処理において、シミュレーション用のネットリストは、昇圧制御回路12やパラメータ設定回路14の記述を含んでいてもよい。
次に、少なくとも2つの昇圧回路22−1〜22−Nの各々の昇圧動作期間が重複しないように、当該昇圧回路の各々が昇圧動作をするタイミングを指示する少なくとも2つのパラメータ18−1〜18−Nを、ステップS20で作成したパラメータ設定回路モデルに設定する記述を含むテスト入力情報を作成する(テスト入力情報作成ステップ(ステップS24))。
最後に、ステップS24で作成したテスト入力情報に基づいて、ステップS20で作成した昇圧制御回路モデルとパラメータ設定回路モデルを用いて、ステップS22で作成したシミュレーション用のネットリストに対してシミュレーションを実行する(シミュレーション実行ステップ(ステップS26))。ステップS26の処理において、例えば、昇圧制御回路12又はパラメータ設定回路14の少なくとも一方が存在しない集積回路装置に対しては、昇圧制御回路モデル及びパラメータ設定回路モデルをシミュレーション用のネットリストに含まれる昇圧回路22−1〜22−Nに接続して図1の構成と同様の回路に対してシミュレーションを実行すればよい。また、例えば、昇圧制御回路12又はパラメータ設定回路14の少なくとも一方は存在するが昇圧回路22−1〜22−Nが昇圧動作をするタイミングを十分に制御できない集積回路装置に対しては、シミュレーション用のネットリストに含まれる昇圧制御回路12及びパラメータ設定回路14をそれぞれ昇圧制御回路モデル及びパラメータ設定回路モデルに置き換えてシミュレーションを実行すればよい(この場合、昇圧制御回路モデル及びパラメータ設定回路モデルはラッパーと呼ばれる)。
本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第2の例によれば、昇圧回路の昇圧動作期間が重複しないように昇圧回路の各々が昇圧動作をするタイミングを制御できない集積回路装置に対しても、昇圧制御回路モデル及びパラメータ設定回路モデルを用いることにより擬似的に当該昇圧回路の昇圧動作期間を重複させないで回路シミュレーションを実行することができる。従って、回路シミュレーションにおいて同時に動作する素子の数を削減することができるので、シミュレータの計算負荷が低減し、シミュレーションの高速化(すなわち、シミュレーション時間の短縮)を達成することができる。
図4に、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第1の例又は第2の例による図1の集積回路装置1の全体回路のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおける信号波形の一例を示す。以下、図1を参照しながら図4について説明する。
時刻T0においてシミュレーションが開始すると、まず、図2のステップS12又は図3のステップS22において作成したテスト入力情報に基づいて、昇圧回路22−1〜22−Nが昇圧動作をするタイミングを指示するパラメータ18−1〜18−Nがパラメータ設定回路14に設定される。例えば、昇圧回路22−1、昇圧回路22−2、昇圧回路22−Nが昇圧動作をするタイミングがそれぞれ時刻T1、T4、T7になるようなパラメータ18−1、18−2、18−Nがパラメータ設定回路14に設定される。なお、パラメータ設定回路14の動作については、論理シミュレーションが実行される。
時刻T0〜T1において、制御信号16−1〜16−N(それぞれ昇圧回路22−1〜22−Nのイネーブル信号)がLレベルなので、昇圧回路22−1〜22−Nの出力電圧Vout1〜VoutNの電圧値は、それぞれ入力電圧Vin1〜VinNに等しい。なお、昇圧回路22−1〜22−Nの動作については回路シミュレーションが実行される。制御信号16−1〜16−Nが論理シミュレーションと回路シミュレーションの境界部分になるので、回路シミュレーションにおいて制御信号16−1〜16−Nのデジタル信号からアナログ信号への変換処理が行われる。
時刻T1〜T2において、パラメータ18−1に従い制御信号16−1がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T1〜T3において昇圧回路22−1が昇圧動作をする。すなわち、時刻T1〜T3が昇圧回路22−1の昇圧動作期間に相当する。そして、時刻T3において、昇圧回路22−1の出力電圧Vout1の電圧値がVin1×G1に達する。
時刻T4〜T5において、パラメータ18−2に従い制御信号16−2がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T4〜T6において昇圧回路22−2が昇圧動作をする。すなわち、時刻T4〜T6が昇圧回路22−2の昇圧動作期間に相当する。そして、時刻T6において、昇圧回路22−2の出力電圧Vout2の電圧値がVin2×G2に達する。
以降は同様に他の昇圧回路の昇圧動作が行われ、時刻T7〜T8においてパラメータ18−Nに従い制御信号16−NがLレベルからHレベルに遷移し、それに伴い時刻T7〜T9において昇圧回路22−Nが昇圧動作し、時刻T9において昇圧回路22−Nの出力電圧VoutNの電圧値がVinN×GNに達する。時刻T7〜T9が昇圧回路22−Nの昇圧動作期間に相当する。
このように、パラメータ18−1〜18−Nに応じて制御信号16−1〜16−Nのタイミングを調整することにより、昇圧回路22−1〜22−Nの昇圧動作期間がすべて重複しないようにすることができる。昇圧回路22−1〜22−Nの昇圧動作期間がすべて重複しないので、回路シミュレーションにおいて同時に動作する素子の数を大幅に削減することができる。その結果、シミュレータの計算負荷が大幅に低減し、シミュレーションの大幅な高速化(すなわち、シミュレーション時間の短縮)を達成することができる。
図5は、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第3の例を示すフローチャートである。以下、図1を参照しながら図5のフローチャートについて説明する。
まず、昇圧回路22−1〜22−N、昇圧制御回路12、パラメータ設定回路14の記述及び少なくとも1つの昇圧回路22−1〜22−Nが生成する電圧を理想電源による電圧に置き換える記述を含むシミュレーション用のネットリストを作成する(シミュレーション用ネットリスト作成ステップ(ステップS30))。ステップS30の処理において、電源記述を含むシミュレーション用のspiceネットリストを作成するようにしてもよい。また、シミュレーションの実行開始直後から理想電源による電圧に置き換えるように記述してもよいし、シミュレーションの実行開始から所定の期間経過後に理想電源による電圧に置き換えるように記述してもよい。例えば、1次昇圧回路の出力電圧を2次昇圧する回路の場合、一度シミュレーションを実行すれば1次昇圧回路の出力電圧が昇圧後の電圧になるタイミングがわかるので、その後のシミュレーション実行時にはそのタイミング以降の期間を理想電源による1次昇圧後の電圧に置き換えるようにしてもよい。
次に、少なくとも2つの昇圧回路22−1〜22−Nの各々の昇圧動作期間が重複しないように、当該昇圧回路の各々が昇圧動作をするタイミングを指示する少なくとも2つのパラメータ18−1〜18−Nをパラメータ設定回路14に設定し、少なくとも1つの昇圧回路(出力電圧を理想電源による電圧に置き換えられる昇圧回路)の昇圧動作を禁止するパラメータ18−1〜18−Nをパラメータ設定回路14に設定する記述を含むテスト入力情報を作成する(テスト入力情報作成ステップ(ステップS32))。
最後に、ステップS32で作成したテスト入力情報に基づいて、ステップS30で作成したシミュレーション用のネットリストに対してシミュレーションを実行する(シミュレーション実行ステップ(ステップS34))。
本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第3の例によれば、少なくとも2つの昇圧回路の昇圧動作期間が重複しないようにしながら、例えば、昇圧動作が確認できた昇圧回路が生成する電圧については、以降のシミュレーションにおいて理想電源による電圧に設定することができる。従って、回路シミュレーションにおいて動作する素子の数を削減することができる。その結果、シミュレータの計算負荷が低減し、シミュレーションを高速化(すなわち、シミュレーション時間を短縮)することができる。
図6は、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第4の例を示すフローチャートである。以下、図1を参照しながら図6のフローチャートについて説明する。
まず、昇圧回路22−1〜22−N、昇圧制御回路12、パラメータ設定回路14の記述及び少なくとも1つの昇圧回路22−1〜22−Nが生成する電圧を理想電源による電圧に置き換える記述を含むシミュレーション用のネットリストを作成する(シミュレーション用ネットリスト作成ステップ(ステップS40))。
次に、少なくとも1つの昇圧回路(出力電圧を理想電源による電圧に置き換えられる昇圧回路)の昇圧動作を禁止するパラメータ18−1〜18−Nをパラメータ設定回路14に設定する記述を含むテスト入力情報を作成する(テスト入力情報作成ステップ(ステップS42))。
最後に、ステップS32で作成したテスト入力情報に基づいて、ステップS30で作成したシミュレーション用のネットリストに対してシミュレーションを実行する(シミュレーション実行ステップ(ステップS44))。
本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第4の例によれば、昇圧回路の昇圧動作期間が重複する場合であっても、昇圧動作が確認できた昇圧回路が生成する電圧については、以降のシミュレーションにおいて理想電源による電圧に設定することができる。従って、回路シミュレーションにおいて動作する素子の数を削減することができるので、シミュレーションを高速化(すなわち、シミュレーション時間を短縮)することができる。
図7に、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第3の例又は第4の例による図1の集積回路装置1の全体回路のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおける信号波形の一例を示す。以下、図1を参照しながら図7について説明する。
時刻T0においてシミュレーションが開始すると、開始直後から昇圧回路22−1の出力電圧Vout1の電圧値はすでにVin1×G1(昇圧後の電圧値)なっている。これは、図5のステップS30又は図6のステップS40において、昇圧回路22−1の出力電圧Vout1を理想電源による電圧(Vin1×G1)に置き換える記述を含む回路シミュレーション用のネットリスト(例えば、電源記述を含むspiceネットリスト)を作成することにより実現できる。
その後、図5のステップS32又は図6のステップS42において作成したテスト入力情報に基づいて、昇圧回路22−2〜22−Nが昇圧動作をするタイミングを指示するパラメータ18−2〜18−Nがパラメータ設定回路14に設定される。例えば、昇圧回路22−2、昇圧回路22−Nが昇圧動作をするタイミングがそれぞれ時刻T1、T4になるようなパラメータ18−2、18−Nがパラメータ設定回路14に設定される。また、テスト入力情報に基づいて、昇圧回路22−1の昇圧動作を禁止するパラメータ18−1がパラメータ設定回路14に設定される。なお、昇圧回路22−1の昇圧動作を禁止するパラメータ18−1がパラメータ設定回路14に初期値として設定されている場合は、テスト入力情報が、昇圧回路22−1の昇圧動作を禁止するパラメータ18−1をパラメータ設定回路14に設定する記述を含む必要はない。図7では、制御信号16−1がLレベルの状態(ディスエーブル状態)を制御信号17−1に対応させており、初期値がディスエーブル状態なので、昇圧回路22−1の昇圧動作を禁止するパラメータ18−1をパラメータ設定回路14に設定する記述は必要ない。
時刻T0〜T1において、制御信号16−2〜16−N(それぞれ昇圧回路22−2〜22−Nのイネーブル信号)がLレベルなので、昇圧回路22−2〜22−Nの出力電圧Vout2〜VoutNの電圧値は、それぞれ入力電圧Vin2〜VinNに等しい。
時刻T1〜T2において、パラメータ18−2に従い制御信号16−2がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T1〜T3において昇圧回路22−2が昇圧動作をし、時刻T3において昇圧回路22−2の出力電圧Vout2の電圧値がVin2×G2に達する。
以降は同様に他の昇圧回路の昇圧動作が行われ、時刻T4〜T5においてパラメータ18−Nに従い制御信号16−NがLレベルからHレベルに遷移し、それに伴い時刻T4〜T6において昇圧回路22−Nが昇圧動作し、時刻T6において昇圧回路22−Nの出力電圧VoutNの電圧値がVinN×GNに達する。
このように、シミュレーション開始直後から昇圧回路22−1の出力電圧Vout1の電圧値を昇圧後の理想電源による電圧(Vin1×G1)に設定することにより、Vout1を電源電圧として動作する回路(例えば、昇圧回路22−2)のシミュレーション速度を高速化することができる。また、パラメータ18−1に応じて昇圧回路22−1の昇圧動作を禁止する制御信号17−1(制御信号16−1がLレベルの状態)を生成し昇圧回路22−1が昇圧動作をしないようにすることにより、さらにシミュレーション速度を高速化することができる。また、昇圧回路22−1〜22−Nの昇圧動作期間をすべて重複させないようにすることにより、さらにシミュレーション速度を高速化することができる。
2.設計環境
図8は、本実施形態の集積回路装置のシミュレーション方法を適用するための設計環境の一例について説明するための図である。以下、図1を参照しながら図8について説明する。
デジタルブロックネットリスト50は、集積回路装置1に含まれるデジタル回路ブロック10の接続情報が記述されたファイルである。デジタルブロックネットリスト50は、例えばVerilogで記述されたファイルである。
配置配線&RC抽出ツール60は、デジタルブロックネットリスト50を入力として、各セル(昇圧制御回路12やパラメータ設定回路14の内部のセル等)の自動配置及び各ネットの自動配線(パラメータ18−1〜18−Nの配線等)を行い、デジタル回路ブロック10のレイアウト情報(デジタルブロックレイアウト情報70)を出力する。また、配置配線&RC抽出ツール60は、配置配線を実行した結果、タイミング違反が存在する場合には回路接続を修正して配置配線を再度実行し、修正後のレイアウト情報(デジタルブロックレイアウト情報70)及び修正後のネットリスト(デジタルブロックネットリスト80)を出力する。デジタルブロックネットリスト80は、例えばVerilogで記述されたファイルである。さらに、配置配線&RC抽出ツール60は、配置配線後のレイアウト情報(デジタルブロックレイアウト情報70)に基づいて、各配線の寄生抵抗及び寄生容量を抽出してデジタルブロックRC情報90を出力する。デジタルブロックRC情報90は、例えばdspfフォーマットで記述されたファイルである。
TOP回路ネットリスト100は、デジタル回路ブロック10、アナログ回路ブロック20及びその他のセルやブロックを含んで構成されるTOP回路(全体回路)の接続情報が記述されたファイルである。TOP回路ネットリスト100は、例えばVerilogで記述されたファイルである。TOP回路ネットリスト100において、デジタル回路ブロック10とアナログ回路ブロック20に制御信号16−1〜16−N等の配線が接続されるように回路記述がされている。
フロアプランツール110は、TOP回路ネットリスト100を入力として、デジタル回路ブロック10、アナログ回路ブロック20及びその他のセルやブロックの配置を行う。また、フロアプランツール110は、デジタル回路ブロック10、アナログ回路ブロック20及びその他のセルやブロックを接続する各ネットの配線を行い、TOP回路のレイアウト情報(TOP回路レイアウト情報120)を出力する。
RC抽出ツール130は、TOP回路レイアウト情報120を入力として、TOP回路の各配線の寄生抵抗及び寄生容量を抽出し、TOP回路RC情報140を出力する。TOP回路RC情報140は、例えばdspfフォーマットで記述されたファイルである。
遅延時間計算ツール150は、デジタルブロックRC情報90、TOP回路RC情報140及びデジタルライブラリ情報160を入力として、デジタル回路ブロック10の各セルのセル遅延や各ネットの配線遅延及びTOP回路の各セルのセル遅延や各ネットの配線遅延を計算し、遅延時間情報170を出力する。遅延時間情報170は、例えばSDFで記述されたファイルである。
デジタル−アナログ混在シミュレータ200は、TOP回路ネットリスト(Verilogネットリスト)100、TOP回路ネットリスト(spiceネットリスト)102、デジタルブロックネットリスト80、アナログブロックネットリスト180、パーティショニング情報190、TOP回路RC情報140、遅延時間情報170、デジタルライブラリ情報160、アナログライブラリ情報162、シミュレーションモデル情報300及びテスト入力情報350を入力として、デジタル−アナログ混在シミュレーションを実行し、実行結果(シミュレーション結果情報250)を出力する。デジタル−アナログ混在シミュレータ200は、例えば、シミュレーション用ネットリスト生成処理部210、論理シミュレーション実行処理部220及び回路シミュレーション実行処理部230を含んで構成されている。
シミュレーション用ネットリスト生成処理部210は、パーティショニング情報190に基づいて、論理シミュレーションの対象となるセル及びブロックを選択して論理シミュレーション用ネットリスト212を生成し、回路シミュレーションの対象となるセル及びブロックを選択して回路シミュレーション用ネットリスト214を生成する。パーティショニング情報190は、TOP回路に含まれる各セルやブロックが論理シミュレーションの対象となるのか回路シミュレーションの対象となるかを選択する情報が記述されたファイルである。ここで、パーティショニング情報190において、デジタル回路ブロック10は論理シミュレーションの対象となり、アナログ回路ブロック10は回路シミュレーションの対象となることが記述されている。デジタル回路ブロック10の接続情報はデジタルブロックネットリスト80に記述(Verilog記述)されているので、シミュレーション用ネットリスト生成処理部210はデジタルブロックネットリスト80からデジタル回路ブロック10の接続情報を抽出して論理シミュレーション用ネットリスト212(Verilogネットリスト)を生成する。一方、アナログ回路ブロック20の接続情報はアナログブロックネットリスト180に記述(spice記述)されているので、シミュレーション用ネットリスト生成処理部210はアナログブロックネットリスト180からアナログ回路ブロック20の接続情報を抽出して回路シミュレーション用ネットリスト214(spiceネットリスト)を生成する。また、TOP回路RC情報140に記述された寄生容量及び寄生抵抗の情報が回路シミュレーション用ネットリスト214(spiceネットリスト)の記述に付加される。
論理シミュレーション実行処理部220は、セルの論理情報等が記述されたデジタルライブラリ情報160及びテスト入力情報(テストベンチ)350(コマンドファイル352、データファイル354等)に基づいて、論理シミュレーション用ネットリスト212と、シミュレーションモデル情報300(外部ホスト(MPU)モデル310、メモリモデル320、内部モジュールモデル330等)を接続して構成したシミュレーション環境に対して論理シミュレーションを実行する。ここで、論理シミュレーション実行処理部220は、遅延時間情報170(SDFファイル)を読み込み、論理シミュレーション用ネットリスト212に記述された各セルのセル遅延び各ネットの配線遅延を考慮して論理シミュレーションを実行する。
回路シミュレーション実行処理部230は、トランジスタの特性等が記述されたアナログライブラリ情報162を読み込んで回路シミュレーション用ネットリスト214に対して回路シミュレーションを実行する。
論理シミュレーション実行処理部220と回路シミュレーション実行処理部230は、互いに同期をとりながらシミュレーションを実行する。すなわち、論理シミュレーション用ネットリスト212と回路シミュレーション用ネットリスト214の境界部分のネット(制御信号16−1〜16−N等)について、論理シミュレーション実行処理部220は回路シミュレーション実行処理部230が生成したアナログ信号をデジタル信号に変換して論理シミュレーションを実行し、回路シミュレーション実行処理部230は論理シミュレーション実行処理部220が生成したデジタル信号をアナログ信号に変換して回路シミュレーションを実行する。
図9は、デジタル−アナログ混在シミュレータのシミュレーション環境の一例を示す図である。図9において、図8と同じ構成には同じ符号を付している。
外部ホスト(MPU)モデル310は、図1で説明した集積回路装置1の実チップの外部に接続され、デジタル回路ブロック10のパラメータ設定回路14(レジスタファイル)に含まれる内部レジスタにパラメータ18−1〜18−N等を設定するためのデータや制御信号を送受信するMPU(Micro Processor Unit)のシミュレーションモデルである。外部ホスト(MPU)モデル310は、レジスタ設定等のコマンドが羅列されたコマンドファイル352を読み込んで各コマンドを解析し、論理シミュレーション用ネットリスト212(デジタル回路ブロック10)の入力にレジスタ設定データ等のインターフェース信号を供給する。また、外部ホスト(MPU)モデル310は、論理シミュレーション用ネットリスト212の出力を介してレジスタの設定データを読み出す処理を行う。
メモリモデル320は、集積回路装置1の実チップの外部に接続されるRAMやROM等の記憶装置のシミュレーションモデルである。メモリモデル320は、各メモリセルの初期データが羅列されたデータファイル354を読み込み、論理シミュレーション用ネットリスト212(デジタル回路ブロック10)に対してデータのリードライトを行う。シミュレーションの終了時にデータファイル354を上書きしてメモリのデータを更新するようにしてもよい。
内部モジュールモデル330は、集積回路装置1の内部のモジュールのシミュレーションモデルである。例えば、集積回路装置1のアナログ回路ブロック20(例えば、昇圧回路22−1〜22−N)の回路シミュレーションを高速化するために、デジタル回路ブロック10に含まれるアナログ回路ブロック20のタイミング制御回路(例えば、昇圧制御回路12及びパラメータ設定回路14)をシミュレーションモデル(内部モジュールモデル330)(例えば、昇圧制御回路モデル及びパラメータ設定回路モデル)に置き換えてもよい。
このように、図8で説明したデジタル−アナログ混在シミュレータ200は、論理シミュレーション用ネットリスト212、回路シミュレーション用ネットリスト214、種々のシミュレーションモデル情報300及びテスト入力情報350を組み合わせたシミュレーション環境を用いることにより、実デバイスの環境に極めて近い状況の下にシミュレーションを実行することができる。
図10は、コマンドファイル352の一例を示す図であり、図11は、外部ホスト(MPU)モデル310の構成例を説明するための図である。
図10のC0に示すMODEは、インターフェースモードを指定するコマンドである。図11に示す外部ホスト(MPU)モデル310のコマンド解析部312は、コマンドファイル352のMODEで指定されるインターフェースモードを解析してモードコード317を生成する。外部ホスト(MPU)モデル310の出力信号生成部314は、モードコード317をデコードしてモード選択信号366を生成し、論理シミュレーション用ネットリスト212に記述されたホスト(MPU)インターフェース回路370に供給する。
図10のC1に示すCmd1は、論理シミュレーション用ネットリスト212に記述されたレジスタファイルに含まれる所定のレジスタ(例えば、レジスタ1)に対するデータ設定用のコマンドである。図11に示すコマンド解析部312は、コマンドファイル352のCmd1で指定されるコマンド及びパラメータを解析してコマンドコード313及びパラメータ315を生成する。出力信号生成部314は、コマンドコード313で指定されたレジスタ1にパラメータ315を設定するためのインターフェース信号を生成する。ここで、出力信号生成部314は、例えば、モードコード317がパラレルインターフェースモードの指定であればパラレルインターフェース信号362を生成し、シリアルインターフェースモードの指定であればシリアルインターフェース信号364を生成し、ホスト(MPU)インターフェース回路370に供給する。
図10のC2に示すCmd2は、論理シミュレーション用ネットリスト212に記述されたレジスタファイルに含まれる所定のレジスタ(例えば、レジスタ2)に対するデータ設定用のコマンドである。このように、外部ホスト(MPU)モデル310は、コマンドファイル352に羅列されたコマンドを順次解析してインターフェース信号を生成し、ホスト(MPU)インターフェース回路370に供給する処理を繰り返す。
本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法の第1〜第4の例において、例えば、昇圧回路22−1〜22−Nの昇圧動作の開始タイミングを指定したり昇圧動作を禁止するパラメータ18−1〜18−Nをパラメータ設定回路14(又はパラメータ設定回路モデル)に設定するコマンド(CmdSetPwrCtl1)を記述したコマンドファイル(テスト入力情報)を入力してデジタル−アナログ混在シミュレーションを実行することができる。
3.適用例
図12に、本実施形態のシミュレーション方法を適用した集積回路装置の一例である表示ドライバの構成例を示す。なお、設計対象の集積回路装置は表示ドライバには限定されず、昇圧回路を含む種々の集積回路装置に対して本実施形態のシミュレーション方法を適用することができる。
表示ドライバ400の外部に接続される表示パネル500は、複数のデータ線(ソース線)と、複数の走査線(ゲート線)と、データ線及び走査線により特定される複数の画素を有する。そして各画素領域における電気光学素子(狭義には、液晶素子)の光学特性を変化させることで、表示動作を実現する。
表示ドライバ400は、デジタル回路ブロック410とアナログ回路ブロック450を含む。デジタル回路ブロック410は、表示メモリ420、内部インターフェース回路ブロック430及び制御回路ブロック440を含んで構成されている。アナログ回路ブロック450は、ソースドライバ460、ゲートドライバ470、階調電圧生成回路480及び電源回路490を含んで構成されている。
表示メモリ420(RAM)は画像データを記憶する。メモリセルアレイ422は複数のメモリセルを含み、少なくとも1フレーム(1画面)分の画像データ(表示データ)を記憶する。ローアドレスデコーダ424(MPU/LCDローアドレスデコーダ)はローアドレスについてのデコード処理を行い、メモリセルアレイ422のワード線の選択処理を行う。カラムアドレスデコーダ426(MPUカラムアドレスデコーダ)はカラムアドレスについてのデコード処理を行い、メモリセルアレイ422のビット線の選択処理を行う。ライト/リード回路428(MPUライト/リード回路)はメモリセルアレイ422への画像データのライト処理や、メモリセルアレイ422からの画像データのリード処理を行う。
制御回路ブロック440は、全体制御回路442と表示タイミング制御回路444を含んで構成されている。全体制御回路442は各種制御信号を生成し、装置全体の制御を行う。表示タイミング制御回路444は表示タイミングの制御信号を生成し、表示メモリ420から表示パネル500側への画像データの読み出しを制御する。
内部インターフェース回路ブロック430は、外部デバイス(ホストデバイス等)とのインターフェース処理を行う、ホストインターフェース回路432、RGBインターフェース回路434を含んで構成されている。ホスト(MPU)インターフェース回路432は、ホストからのアクセス毎に内部パルスを発生して表示メモリ420にアクセスするホストインターフェースを実現する。RGBインターフェース回路434は、ドットクロックにより動画のRGBデータを表示メモリ420に書き込むRGBインターフェースを実現する。
ソースドライバ460は、表示パネル500のデータ線を駆動するためのデータ信号を生成する回路である。具体的にはソースドライバ460は、表示メモリ420から画像データである階調データを受け、階調電圧生成回路480から複数(例えば64段階)の階調電圧(基準電圧)を受ける。そして、これらの複数の階調電圧の中から、階調データに対応する電圧を選択して、データ信号(データ電圧)として表示パネル500の各データ線に出力する。
ゲートドライバ470は、表示パネル500の走査線を駆動するための走査信号を生成する回路である。具体的には、内蔵するシフトレジスタにおいて信号(イネーブル入出力信号)を順次シフトし、このシフトされた信号をレベル変換した信号を、走査信号(走査電圧)として表示パネル500の各走査線に出力する。
階調電圧生成回路480(γ補正回路)は、階調電圧を生成する回路である。具体的には、内蔵する電圧分割回路(選択用電圧生成回路)が分割電圧を生成し、内蔵する階調電圧生成回路が、生成された分割電圧の中から例えば64個(64階調)の階調電圧を選択して、ソースドライバ460に出力する。
電源回路490は、各種の電源電圧を生成する回路である。具体的には、入力電源電圧(電源入力402)や内部電源電圧を、内蔵する昇圧回路が含む昇圧用キャパシタや昇圧用トランジスタを用いてチャージポンプ方式で昇圧する。そして昇圧により得られた電圧を電源電圧として、ソースドライバ460、ゲートドライバ470、階調電圧生成回路480に供給する。
内部インターフェース回路ブロック430及び制御回路ブロック440は、例えば、ゲートアレイ(G/A)などの自動配置配線により形成できる。従って、内部インターフェース回路ブロック430及び制御回路ブロック440は、図8で説明したデジタルブロックネットリスト50(Verilogファイル)に記述され、配置配線&寄生容量抽出ツール60によりデジタルブロックRC情報90(dspfファイル)が生成された後、遅延時間計算ツール150により遅延時間情報170(SDFファイル)が生成される。
表示メモリ420(少なくともメモリセルアレイ422)は、実際の回路構成はトランジスタレベルで記述されるため、論理シミュレーションの対象とすることができない。そこで、表示メモリ420はVerilog記述のシミュレーションモデル(内部モジュールモデル330)に置き換えることにより論理シミュレーションの対象とすることができる。このシミュレーションモデルには、各メモリセルに対する書き込みや読み出しについて、メモリセルアレイ422をキャラクタライズして得られる正確な遅延情報も記述される。
デジタル回路ブロック410(表示メモリ420、内部インターフェース回路430及び制御回路440)は、集積回路装置1のTOP回路(全体回路)のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおいて論理シミュレーションの対象となるように、図8のパーティショニング情報190に記述される。
アナログ回路ブロック450(ソースドライバ460、ゲートドライバ470、階調電圧生成回路480及び電源回路490)は、集積回路装置1のTOP回路(全体回路)のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおいて回路シミュレーションの対象となるように、図8のパーティショニング情報190に記述される。
図13は、図12の電源回路490の構成の一例を示す図である。
電源回路490は、1次昇圧回路510、2次昇圧回路520、3次昇圧回路530、4次昇圧回路540の4つの昇圧回路、VCOM発生回路550、5つの分圧回路560〜590を含んで構成されている。
1次昇圧回路510は、入力電圧402(V0)を昇圧して出力電圧512(V1)を生成する。1次昇圧回路510の出力電圧512は入力電圧402の2倍の電圧値を有する(V1=2V0)。
2次昇圧回路520は、入力電圧402(V0)を昇圧して出力電圧522(V2)を生成する。2次昇圧回路520の出力電圧522は入力電圧402の−1倍の電圧値を有する(V2=−V0)。
3次昇圧回路530は、1次昇圧回路510の出力電圧512(V1)を昇圧して出力電圧532(V3)を生成する。3次昇圧回路530の出力電圧532は1次昇圧回路510の出力電圧512の−1倍の電圧値を有する(V3=−V1)。3次昇圧回路530の出力電圧532は、ゲートオン電圧としてゲートドライバ470に供給される。
4次昇圧回路540は、3次昇圧回路530の出力電圧532(V3)を昇圧して出力電圧542(V4)を生成する。4次昇圧回路540の出力電圧542は3次昇圧回路530の出力電圧532の−2倍の電圧値を有する(V4=−2V3)。4次昇圧回路540の出力電圧542は、ゲートオフ電圧としてゲートドライバ470に供給される。
VCOM発生回路550は、1次昇圧回路510の出力電圧512及び2次昇圧回路520の出力電圧522からVCOM信号生成用のVCOMH信号552及びVCOML信号554を生成する。VCOMH信号552及びVCOML信号554から生成されたVCOM信号が表示パネル500に供給される。
レギュレータ560は、入力電圧402から最小階調電圧562を生成し、階調電圧生成回路480に供給する。
レギュレータ570は、入力電圧402から電源電圧572を生成し、デジタル回路ブロック410に供給する。
レギュレータ580は、1次昇圧回路510の出力電圧512から電源電圧582を生成し、ソースドライバ460に供給する。
レギュレータ590は、1次昇圧回路510の出力電圧512から最大階調電圧592を生成し、階調電圧生成回路480に供給する。
図14に、従来手法による表示ドライバ400の全体回路のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおける信号波形の一例を示す。
時刻T0においてシミュレーションが開始し、時刻T0〜T1において1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540のイネーブル信号1〜4がLレベルなので、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540の出力電圧V1〜V4の電圧値はそれぞれV0、V0、V1、V3に等しい。
時刻T1〜T2において、パラメータ設定に従いイネーブル信号1〜4がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T1おいて1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540が昇圧動作を開始する。入力電圧V0が外部から供給されているので、1次昇圧回路510及び2次昇圧回路520は時刻T1〜T3において昇圧動作をする。すなわち、1次昇圧回路510及び2次昇圧回路520の昇圧動作期間はともに時刻T1〜T3である。3次昇圧回路530は時刻T1から昇圧動作をするが、時刻T3において1次昇圧回路510が昇圧動作を終了するので、その後の時刻T4まで昇圧動作をする。すなわち、3次昇圧回路530の昇圧動作期間は時刻T1〜T4である。同様に、4次昇圧回路540は時刻T1から昇圧動作をするが、時刻T4において3次昇圧回路530が昇圧動作を終了するので、その後の時刻T5まで昇圧動作をする。すなわち、4次昇圧回路540の昇圧動作期間は時刻T1〜T5である。
時刻T5以降において、昇圧された電源電圧によりソースドライバ460、ゲートドライバ470、階調電圧回路480が動作する。そして、ソースドライバ460は、デジタル回路ブロック410が所定の処理を行って出力する階調データに対応する階調電圧を選択し、表示パネル500に出力する。
このように、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540を同じタイミングで昇圧動作を開始させると時刻T1〜T3において1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540が同時に昇圧動作をする。また、時刻T3〜T4において3次昇圧回路530と4次昇圧回路540が同時に昇圧動作をする。従って、時刻T1〜T5において(特に時刻T1〜T3において)同時に動作する素子の数が大幅に増加するため回路シミュレーションの速度が著しく低下する。
ここで、昇圧回路の昇圧動作の検証は、電源回路の回路シミュレーションで行うことができる。従って、全体回路のシミュレーションによる全体検証では、デジタル回路ブロックが供給する階調データに基づいて、ソースドライバ460が適切な信号を出力することを確認するのが主な目的になる。しかし、昇圧回路の昇圧動作が重複することによりシミュレーション速度が著しく劣化すると全体検証の工数が著しく増大し、十分な検証を行わないまま試作品の製造段階に移行してしまうことになる。その結果、試作品の評価においてはじめて不具合が発見される場合もあり、開発コストが増大する原因となっていた。
図15に、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法による表示ドライバ400の全体回路のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおける信号波形の一例を示す。図15は、4つの昇圧回路(1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540)の昇圧動作期間が重複しないように、各昇圧回路の昇圧動作の開始タイミングが時刻T1、T4、T7、T10になるようにパラメータを設定するコマンドが記述されたコマンドファイル352(テスト入力情報)を入力した場合の例である。
時刻T0においてシミュレーションが開始すると、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540がそれぞれ時刻T1、T4、T7、T10から昇圧動作を開始するように指示するパラメータが設定される。
時刻T0〜T1において、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540のイネーブル信号1〜4がLレベルなので、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540の出力電圧V1〜V4の電圧値はそれぞれV0、V0、V1、V3に等しい。
時刻T1〜T2において、パラメータ設定に従いイネーブル信号1がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T1おいて1次昇圧回路510が昇圧動作を開始する。そして、1次昇圧回路510は時刻T1〜T3において昇圧動作をする。すなわち、1次昇圧回路510の昇圧動作期間は時刻T1〜T3である。
時刻T4〜T5において、パラメータ設定に従いイネーブル信号2がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T4おいて2次昇圧回路520が昇圧動作を開始する。そして、2次昇圧回路520は時刻T4〜T6において昇圧動作をする。すなわち、2次昇圧回路520の昇圧動作期間は時刻T4〜T6である。
時刻T7〜T9において、パラメータ設定に従いイネーブル信号3がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T7おいて3次昇圧回路530が昇圧動作を開始する。そして、3次昇圧回路530は時刻T7〜T9において昇圧動作をする。すなわち、3次昇圧回路530の昇圧動作期間は時刻T7〜T9である。
時刻T10〜T12において、パラメータ設定に従いイネーブル信号4がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T4おいて4次昇圧回路540が昇圧動作を開始する。そして、4次昇圧回路540は時刻T10〜T12において昇圧動作をする。すなわち、4次昇圧回路540の昇圧動作期間は時刻T10〜T12である。
このように、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法によれば、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540の昇圧開始タイミングをパラメータ設定することにより、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540の昇圧動作期間が重複しないようにして回路シミュレーションを実行することができる。従って、1次昇圧回路510〜4次昇圧回路540の昇圧動作期間において同時に動作する素子の数を少なくすることができるため回路シミュレーションを高速化することができる。
図16に、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法による表示ドライバ400の全体回路のデジタル−アナログ混在シミュレーションにおける信号波形の他の一例を示す。図16は、4次昇圧回路540の昇圧動作の開始タイミングが時刻T1になるようにパラメータを設定し、3つの昇圧回路(1次昇圧回路510〜3次昇圧回路530)の昇圧動作を禁止するパラメータを設定するコマンドが記述されたコマンドファイル352(テスト入力情報)を入力した場合の例である。
時刻T0においてシミュレーションが開始すると、開始直後から1次昇圧回路510〜3次昇圧回路530の出力電圧がそれぞれ昇圧後の電圧値である2V0、−V0、−V1(=−2V0)になっている。これは、1次昇圧回路510〜3次昇圧回路530の出力電圧をそれぞれ2V0、−V0、−2V0に置き換える記述を含む回路シミュレーション用のネットリスト214(例えば、電源記述を含むspiceネットリスト)を作成することにより実現できる。
その後、3次昇圧回路540が時刻T1から昇圧動作を開始するように指示するパラメータと、1次昇圧回路510〜3次昇圧回路540の昇圧動作を禁止するパラメータが設定される。
時刻T1〜T2において、パラメータ設定に従いイネーブル信号4がLレベルからHレベルに遷移すると、それに伴い時刻T1おいて4次昇圧回路540が昇圧動作を開始する。そして、4次昇圧回路540は時刻T1〜T3において昇圧動作をする。すなわち、4次昇圧回路510の昇圧動作期間は時刻T1〜T3である。ここで、3次昇圧回路530の出力電圧は理想電源による電圧値(−2V0)なので、4次昇圧回路540の昇圧動作においても動作する素子の数を削減することができる。
このように、本実施の形態の集積回路装置のシミュレーション方法によれば、例えば、全体回路のシミュレーションにおいて、昇圧動作の確認ができた昇圧回路(例えば、1次昇圧回路510〜3次昇圧回路530)については、以降のシミュレーションの実行において、その出力電圧を理想電源による電圧に設定することができる。その結果、これらの出力電圧を電源電圧として動作する回路(例えば、4次昇圧回路540)のシミュレーション速度を高速化することができる。また、昇圧回路の昇圧動作を禁止するパラメータを設定することにより、さらにシミュレーション速度を高速化することができる。
4.電子機器
図17に、本実施の形態の電子機器のブロック図の一例を示す。本電子機器800は、マイクロコンピュータ(集積回路装置)810、入力部820、メモリ830、電源生成部840、LCD850、音出力部860、LCDドライバ(集積回路装置)870を含む。
ここで、入力部820は、種々のデータを入力するためのものである。マイクロコンピュータ810は、この入力部820により入力されたデータに基づいて種々の処理を行うことになる。メモリ830は、マイクロコンピュータ810などの作業領域となるものである。電源生成部840は、電子機器800で使用される各種電源を生成するためのものである。LCD850は、電子機器が表示する各種の画像(文字、アイコン、グラフィック等)を出力するためのものである。LCDドライバ870は、LCD850を駆動して画像を表示させるためのものであり、例えば、図12で説明した表示ドライバ400であってもよい。
音出力部860は、電子機器800が出力する各種の音(音声、ゲーム音等)を出力するためのものであり、その機能は、スピーカなどのハードウェアにより実現できる。
LCDドライバ870は、複数の昇圧回路を含んで構成されており、本実施形態の集積回路装置のシミュレーション方法によりシミュレーションされる集積回路装置である。
図18(A)に、電子機器の1つである携帯電話950の外観図の例を示す。この携帯電話950は、入力部として機能するダイヤルボタン952や、電話番号や名前やアイコンなどを表示するLCD954や、音出力部として機能し音声を出力するスピーカ956を備える。
図18(B)に、電子機器の1つである携帯型ゲーム装置960の外観図の例を示す。この携帯型ゲーム装置960は、入力部として機能する操作ボタン962、十字キー964や、ゲーム画像を表示するLCD966や、音出力部として機能しゲーム音を出力するスピーカ968を備える。
図18(C)に、電子機器の1つであるパーソナルコンピュータ970の外観図の例を示す。このパーソナルコンピュータ970は、入力部として機能するキーボード972や、文字、数字、グラフィックなどを表示するLCD974、音出力部976を備える。
本実施の形態の集積回路装置を図18(A)〜図18(C)の電子機器に組み込むことにより、信頼性の高い電子機器を短期間で提供することができる。
なお、本実施形態を利用できる電子機器としては、図18(A)〜図18(C)に示すもの以外にも、携帯型情報端末、ページャー、電子卓上計算機、タッチパネルを備えた装置、プロジェクタ、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置等の種々の電子機器を考えることができる
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、図2のフローチャート(第1の例)の処理の後に図5のフローチャート(第3の例)又は図6のフローチャート(第4の例)の処理を続けるようにしてもよい。こうすることにより、図2のフローチャートに従ってシミュレーションで昇圧動作を確認できた昇圧回路の出力電圧を、図5のフローチャート(第3の例)又は図6のフローチャート(第4の例)に従って、理想電源による電圧に置き換えてシミュレーションを実行することができる。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1 集積回路装置、10 デジタル回路ブロック、12 昇圧制御回路、14 パラメータ設定回路、16−1〜16−N 制御信号、17−1〜17−N 制御信号、18−1〜18−N パラメータ、20 アナログ回路ブロック、22−1〜22−N 昇圧回路、24−1〜24−N 内部回路、50 デジタルブロックネットリスト、60 配置配線&RC抽出ツール、70 デジタルブロックレイアウト情報、80 デジタルブロックネットリスト、90 デジタルブロックRC情報、100 TOP回路ネットリスト(Verilog)、102 TOP回路ネットリスト(spice)、110 フロアプランツール、120 TOP回路レイアウト情報、130 RC抽出ツール、140 TOP回路RC情報、150 遅延時間計算ツール、160 デジタルライブラリ情報、162 アナログライブラリ情報、170 遅延時間情報、180 アナログブロックネットリスト、190 パーティショニング情報、200 デジタル−アナログ混在シミュレータ、210 シミュレーション用ネットリスト生成処理部、212 論理シミュレーション用ネットリスト、214 回路シミュレーション用ネットリスト、220 論理シミュレーション実行処理部、230 回路シミュレーション実行処理部、250 シミュレーション結果情報、300 シミュレーションモデル情報、310 外部ホスト(MPU)モデル、312 コマンド解析部、313 コマンドコード、314 出力信号生成部、315 パラメータ、317 モードコード、320 メモリモデル、330 内部モジュールモデル、350 テスト入力情報(テストベンチ)、352 コマンドファイル、354 データファイル、362 パラレルI/F信号、364 シリアルI/F信号、366モード選択信号、370 ホスト(MPU)インターフェース回路、400 表示ドライバ、402 電源入力、410 デジタル回路ブロック、420 表示メモリ、422 メモリセルアレイ、424 ローアドレスデコーダ、426 カラムアドレスデコーダ、428 ライト/リード回路、430 内部インターフェース回路ブロック、432 ホストインターフェース回路、434 RGBインターフェース回路、440 制御回路ブロック、442 全体制御回路、444 表示タイミング制御回路、450 アナログ回路ブロック、460 ソースドライバ、462−1〜462−176 ドライバセル、464−1〜464−176 データラッチ回路、470 ゲートドライバ、480階調電圧生成回路、490 電源回路、500 表示パネル、510 1次昇圧回路、512 出力電圧、520 2次昇圧回路、522 出力電圧、530 3次昇圧回路、532 出力電圧、540 4次昇圧回路、542 出力電圧、550 VCOM発生回路、552 出力電圧、554 出力電圧、560 レギュレータ、562 出力電圧、570 レギュレータ、572 出力電圧、580 レギュレータ、582 出力電圧、590 レギュレータ、582 出力電圧、800 電子機器、810 マイクロコンピュータ(集積回路装置)、820 入力部、830 メモリ、840 電源生成部、850 LCD、860 音出力部、870 LCDドライバ(集積回路装置)、950 携帯電話、952 ダイヤルボタン、954 LCD、956 スピーカ、960 携帯型ゲーム装置、962 操作ボタン、964 十字キー、966 LCD、968 スピーカ、970 パーソナルコンピュータ、972 キーボード、974 LCD、976 音出力部