本発明者らは、強誘電性液晶の自発分極の向きについて調べるため、以下に示す実験を行った。
まず、ラビング膜と光二量化型材料を含有する光配向膜との間に強誘電性液晶が挟持された液晶表示素子を作製した。
ITO電極が形成されたガラス基板上に、ポリイミド(日産化学工業社製、商品名:SE-7492)を印刷し、ラビング処理することにより配向膜を形成した。また、ITO電極が形成されたガラス基板上に、光二量化型材料(Rolic technologies 社製、商品名:ROP103)の2質量%シクロペンタノン溶液をスピンコートし、130℃で15分間乾燥させた後、直線偏光紫外線を約100mJ/cm2照射し、配向処理を行った。
一方の基板に1.5μmのビーズスペーサを散布し、他方の基板にシール剤をシールディスペンサーで塗布した。次いで、両基板をそれぞれの配向処理方向が平行になるように対向させ、熱圧着を行い、空の液晶セルを作製した。
次に、強誘電性液晶(商品名:R2301、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用い、注入口上部に強誘電性液晶を付着させ、オーブンを用いて、N相−等方相転移温度より10℃〜20℃高い温度で注入を行い、ゆっくりと常温に戻した。
光二量化型材料を含有する光配向膜側の電極が負極になるように電圧を印加すると、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化した。強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化したものは全体の約85%であった。
また、ポリイミドおよび光二量化型材料の種類や組み合わせを変えて、上記と同様に、ラビング膜と光二量化型材料を含有する光配向膜との間に強誘電性液晶が挟持された液晶表示素子を作製したところ、上記と同様の結果が得られた。
次に、ラビング膜と反応性液晶層との間に強誘電性液晶が挟持された液晶表示素子を作製した。
ITO電極が形成されたガラス基板上に、ポリイミド(日産化学工業社製、商品名:SE-7492)を印刷し、ラビング処理することにより配向膜を形成した。また、ITO電極が形成されたガラス基板上に、光異性化型材料(DIC社製、商品名:LIA01)の溶液をスピンコートし、100℃で1分乾燥させた後、直線偏光紫外線を約1000mJ/cm2照射し、配向処理を行った。そして、光配向膜上に、アクリレートモノマーを含有する反応性液晶(Rolic technologies 社製、商品名:ROF-5101)の2質量%シクロペンタノン溶液をスピンコートし、55℃で3分間乾燥させた後、無偏光紫外線を55℃で1000mJ/cm2露光した。
その後、上記と同様にして液晶表示素子を作製した。
反応性液晶層側の電極が負極になるように電圧を印加すると、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化した。強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化したものは全体の約88%であった。
また、ポリイミドおよび反応性液晶の種類や組み合わせを変えて、上記と同様に、ラビング膜と反応性液晶層との間に強誘電性液晶が挟持された液晶表示素子を作製したところ、上記と同様の結果が得られた。
次に、ラビング膜と光異性化型材料を含有する光配向膜との間に強誘電性液晶が挟持された液晶表示素子を作製した。
ITO電極が形成されたガラス基板上に、ポリイミド(日産化学工業社製、商品名:SE-7492)を印刷し、ラビング処理することにより配向膜を形成した。また、ITO電極が形成されたガラス基板上に、光異性化型材料(大日本インキ社製、商品名:LIA01)をスピンコートし、100℃で3分間乾燥した後、直線偏光紫外線を約1000mJ/cm2照射し、配向処理を行った。
その後、上記と同様にして液晶表示素子を作製した。
ラビング膜側の電極が負極になるように電圧を印加すると、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化した。強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化したものは全体の約70%であった。
また、ポリイミドおよび光異性化型材料の種類や組み合わせを変えて、上記と同様に、ラビング膜と光異性化型材料を含有する光配向膜との間に強誘電性液晶が挟持された液晶表示素子を作製したところ、上記と同様の結果が得られた。
上述の実験の結果から、電圧無印加状態において、ラビング膜と、光二量化型材料を含有する光配向膜または反応性液晶層とでは、ラビング膜側に強誘電性液晶の自発分極の正極が向く傾向があり、またラビング膜と光異性化型材料を含有する光配向膜とでは、光異性化型材料を含有する光配向膜側に強誘電性液晶の自発分極の正極が向く傾向があるとの知見を得た。これは、強誘電性液晶と各層表面との相互作用である、極性表面相互作用が影響しているものと考えられる。
以下、本発明の液晶表示素子について詳細に説明する。
本発明の液晶表示素子は、第1配向処理基板の第1配向層の構成により2つの実施態様に分けることができる。第1実施態様においては、第1配向処理基板の第1配向層は第1基材全面に形成されており、第2実施態様においては、第1配向処理基板の第1配向層は第1基材上にパターン状に形成され、第1配向パターンおよび第2配向パターンから構成されている。以下、各実施態様の液晶表示素子について、詳細に説明する。
I.第1実施態様
まず、本発明の液晶表示素子の第1実施態様について説明する。
本実施態様の液晶表示素子は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、ラビング膜からなる第1配向層とを有する第1配向処理基板、および、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成され、第1配向パターンおよび第2配向パターンからなる第2配向層とを有する第2配向処理基板を、上記第1配向層および上記第2配向層が対向するように配置し、上記第1配向層および上記第2配向層の間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、上記強誘電性液晶が、単安定性を示し、かつハーフV字型スイッチング特性を示すものであり、上記第1配向パターンが、光異性化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであり、上記第2配向パターンが、反応性液晶用配向膜と、上記反応性液晶用配向膜上に形成され、反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層とからなるパターン、あるいは、光二量化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与する光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンのいずれかであることを特徴とするものである。
なお、「単安定性を示す」とは、電圧無印加時の強誘電性液晶の状態がひとつの状態で安定化している状態をいう。強誘電性液晶は、図1に例示するように、液晶分子LCが層法線zから傾いており、層法線zに垂直な底面を有する円錐(コーン)の稜線に沿って回転する。このような円錐(コーン)において、液晶分子LCの層法線zに対する傾き角をチルト角θという。このように、液晶分子LCは層法線zに対しチルト角±θだけ傾く二つの状態間をコーン上に動作することができる。具体的に説明すると、単安定性を示すとは、電圧無印加時に液晶分子LCがコーン上のいずれかひとつの状態で安定化している状態をいう。
また、「ハーフV字型スイッチング特性」とは、印加電圧に対する光透過率が非対称な電気光学特性をいう。具体的には、図2に示すような正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作する特性をいう。
本実施態様の液晶表示素子について図面を参照しながら説明する。
図3および図4は、本実施態様の液晶表示素子の一例を示す断面図である。
図3に例示する液晶表示素子1においては、第1基材2上に第1電極層3およびラビング膜からなる第1配向層4が形成された第1配向処理基板5と、第2基材12上に第2電極層13および第2配向層14が形成された第2配向処理基板15とが対向しており、第1配向処理基板5の第1配向層4と第2配向処理基板15の第2配向層14との間には強誘電性液晶が挟持され、液晶層10が構成されている。第2配向層14は、第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14bからなり、この第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14b間には隔壁16が形成されている。また、第1配向パターン14aは、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであり、第2配向パターン14bは、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである。
また、図4に例示する液晶表示素子1においては、第1配向パターン14aは、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであり、第2配向パターン14bは、反応性液晶用配向膜17と、この反応性液晶用配向膜17上に形成された反応性液晶層18とからなるパターンである。なお、他の構成は、図3に示す液晶表示素子と同様である。
強誘電性液晶は自発分極を有するので、強誘電性液晶と第1配向層表面および第2配向層表面との相互作用としての極性効果によって自発分極の向きが決まる。
本実施態様においては、第1配向層と、第2配向層の第1配向パターンおよび第2配向パターンとの間に、強誘電性液晶が挟持されている。
図3に示す例においては、第1配向層4がラビング膜からなり、第2配向層の第1配向パターン14aが光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであり、第2配向層の第2配向パターン14bが光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであるので、それぞれの構成材料に応じて、第1配向層と第2配向層の第1配向パターンと第2配向層の第2配向パターンとを互いに異なる極性を有するものとすることができる。これにより、強誘電性液晶と第1配向層との極性表面相互作用、強誘電性液晶と第2配向層の第1配向パターンとの極性表面相互作用、および、強誘電性液晶と第2配向層の第2配向パターンとの極性表面相互作用が互いに異なるものとなる。
上述したように、光二量化型材料を含有する光配向膜は、ラビング膜に比べて相対的に正極性が強い傾向にあり、ラビング膜は、光異性化型材料を含有する光配向膜に比べて相対的に正極性が強い傾向にあると考えられる。そのため、電圧無印加状態において、第1配向層(ラビング膜)と第2配向層の第1配向パターン(光異性化型材料を含有する光配向膜)とでは、ラビング膜側が正極性、光異性化型材料を含有する光配向膜側が負極性となると想定される。したがって、自発分極の正極を第2配向層の第1配向パターン(光異性化型材料を含有する光配向膜)側に向かせることができる。一方、電圧無印加状態において、第1配向層(ラビング膜)と第2配向層の第2配向パターン(光二量化型材料を含有する光配向膜)とでは、光二量化型材料を含有する光配向膜側が正極性、ラビング膜側が負極性となると想定される。したがって、自発分極の正極を第1配向層(ラビング膜)側に向かせることができる。
また、図4に示す例においては、第1配向層4がラビング膜からなり、第2配向層の第1配向パターン14aが光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであり、第2配向層の第2配向パターン14bが反応性液晶用配向膜17と反応性液晶層18とからなるパターンであるので、それぞれの構成材料に応じて、第1配向層と第2配向層の第1配向パターンと第2配向層の第2配向パターンとを互いに異なる極性を有するものとすることができる。これにより、強誘電性液晶と第1配向層との極性表面相互作用、強誘電性液晶と第2配向層の第1配向パターンとの極性表面相互作用、および、強誘電性液晶と第2配向層の第2配向パターンとの極性表面相互作用が互いに異なるものとなる。
上述したように、反応性液晶層は、ラビング膜に比べて相対的に正極性が強い傾向にあり、ラビング膜は、光異性化型材料を含有する光配向膜に比べて相対的に正極性が強い傾向にあると考えられる。そのため、電圧無印加状態において、第1配向層(ラビング膜)と第2配向層の第1配向パターン(光異性化型材料を含有する光配向膜)とでは、ラビング膜側が正極性、光異性化型材料を含有する光配向膜側が負極性となると想定される。したがって、自発分極の正極を第2配向層の第1配向パターン(光異性化型材料を含有する光配向膜)側に向かせることができる。一方、電圧無印加状態において、第1配向層(ラビング膜)と第2配向層の第2配向パターン(反応性液晶用配向膜および反応性液晶層)とでは、反応性液晶層側が正極性、ラビング膜側が負極性となると想定される。したがって、自発分極の正極を第1配向層(ラビング膜)側に向かせることができる。
すなわち、図5に例示するように、第2配向層の第1配向パターン14aが設けられている領域21では、液晶分子LCの自発分極Psの正極(+)を第2配向層の第1配向パターン14a側に向かせることができる。一方、第2配向層の第2配向パターン14bが設けられている領域22では、液晶分子LCの自発分極Psの正極(+)を第1配向層4側に向かせることができる。
このように第1配向層、第2配向層の第1配向パターン、および第2配向層の第2配向パターンの表面極性を考慮して、第1配向層、第2配向層の第1配向パターン、および第2配向層の第2配向パターンを所定の組み合わせとすることにより、自発分極の向きを制御することができる。これにより、第2配向層の第1配向パターンまたは第2配向パターンが設けられている領域毎に自発分極の向きを反転させることができ、極性反転駆動が可能となる。
また、強誘電性液晶においては、液晶分子の方向と、自発分極の向きと、層法線の方向とは、所定の関係にあるので、液晶分子の方向および自発分極の向きにより、層法線の方向が決まる。例えば図6(a)および(b)に示すように、自発分極Psの向きによって、層法線zの方向が異なるものとなる。なお、図6(a)においては液晶分子LCの自発分極Psが紙面手前から奥方向に向いており(図6(a)中の×印)、図6(b)においては液晶分子LCの自発分極Psが紙面奥空手前方向に向いている(図6(b)中の●印)。
本実施態様においては、上述したように、第1配向層、第2配向層の第1配向パターン、および第2配向層の第2配向パターンを所定の組み合わせとすることにより、自発分極の向きを制御することができる。図5に示す例においては、各領域21および22では、図7に例示するように、自発分極Psの向きを一定の方向に揃えることにより、モノドメイン配向を得ることができる。
図7は、強誘電性液晶の配向状態の一例を示す図であり、図5を上面から見た強誘電性液晶の配向状態を示している。なお、図7における×印および●印については、図6と同様である。
一般に、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子では、対向する2つの配向層は、それぞれの配向処理方向が平行になるように配置される。電圧無印加状態では、強誘電性液晶は、第1配向層および第2配向層の配向処理方向に沿って配向する。
図7に例示するように、無電圧印加状態では、液晶分子LCは第1配向層および第2配向層の配向処理方向dに沿って配向し、一様な配向状態となる。第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域21と、第2配向層の第2配向パターンが設けられている領域22とでは、それぞれ自発分極Psの向きが反転しており、層法線zの方向が異なるが、各領域21および22内では、自発分極Psの向きが一定の方向に揃っているので、モノドメイン配向を得ることができる。領域毎に自発分極の向きを一定の方向に揃えることにより、各領域内にて、配向欠陥の発生を抑制し、強誘電性液晶の配向をモノドメイン化することができるのである。
また、一般にSmA相を経由する相系列を有する強誘電性液晶は、相変化の過程において、スメクチック層の層間隔が縮まり、その体積変化を補償するためにスメクチック層が曲がったシェブロン構造を有し、この曲げの方向によって液晶分子の長軸方向が異なるドメインが形成され、その境界面にジグザグ欠陥やヘアピン欠陥と呼ばれる配向欠陥が発生しやすい。このジグザグ欠陥やヘアピン欠陥の発生を防ぐためには、プレチルト角を大きくすることが有効である。
ラビング膜では比較的高いプレチルト角を実現することができる。したがって、第1配向層にラビング膜を用いることにより、ジグザグ欠陥やヘアピン欠陥の発生を効果的に抑制することが可能である。
以下、本実施態様の液晶表示素子における各構成について説明する。
1.第1配向処理基板
本実施態様における第1配向処理基板は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、ラビング膜からなる第1配向層とを有するものである。
以下、第1配向処理基板における各構成について説明する。
(1)第1配向層
本実施態様における第1配向層は、第1電極層上に形成されるものであり、ラビング膜からなるものである。
ラビング膜に用いられる材料としては、ラビング処理により配向膜に異方性を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ラビング膜が、ポリイミドを含有することが好ましく、特にポリアミック酸を脱水閉環(イミド化)させたポリイミドを含有することが好ましい。
ポリアミック酸は、ジアミン化合物と酸二無水物とを反応させることにより合成することができる。
ポリアミック酸を合成する際に用いられるジアミン化合物としては、脂環式ジアミン、炭素環式芳香族ジアミン類、複素環式ジアミン類、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンが例示される。
脂環式ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
炭素環式芳香族ジアミン類としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノトルエン類(具体的には、2,4−ジアミノトルエン)、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、ジアミノキシレン類(具体的には、1,3−ジアミノ−2,4−ジメチルベンゼン)、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、2,2´−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、2,2´−ジアミノスチルベン、4,4´−ジアミノスチルベン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジフェニルチオエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノ安息香酸フェニルエステル、4,4´−ジアミノベンゾフェノン、4,4´−ジアミノベンジル、ビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(4−アミンフェニル)−N−メチルアミン、4,4´−ジアミノジフェニル尿素、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、ジアミノフルオレン類(具体的には、2,6−ジアミノフルオレン)、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、2,2´−ジメチルベンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
複素環式ジアミン類としては、例えば、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,5−ジアミノジベンゾフラン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,6−ジアミノカルバゾール、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,5−ジアミノ−2,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、下記式の構造で表される長鎖アルキルもしくはパーフルオロ基を有するものなどが挙げられる。
ここで、上記式において、R21は、炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜20の長鎖アルキル基もしくは長鎖アルキル基もしくはパーフルオロアルキル基を含む1価有機基を示す。
また、ポリアミック酸を合成する際に原料として用いられる酸二無水物としては、芳香族酸二無水物、脂環式酸二無水物が例示される。
芳香族酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂環式酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらの酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリマーの透明性の観点から、脂環式酸二無水物を用いることが好ましい。
また、ポリアミック酸は、上述のジアミン化合物と酸二無水物とを有機溶剤の存在下で、−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜80℃において、30分〜24時間、好ましくは1時間〜10時間反応させることによって合成することができる。
ポリアミック酸を用いてポリイミドの膜を得る方法としては、ポリアミック酸を成膜した後に、加熱もしくは触媒によって全部または部分的に脱水閉環(イミド化)させる方法、あるいは、ポリアミック酸を加熱もしくは触媒によって全部または部分的に脱水閉環(イミド化)させ、可溶性ポリイミドとした後に、この可溶性ポリイミドを成膜する方法が挙げられる。中でも、ポリアミック酸をイミド化して得られる可溶性ポリイミドは保存安定性に優れるため、可溶性ポリイミドを成膜する方法が好ましい。
ポリアミック酸を可溶性ポリイミドとするためのイミド化反応を行う方法としては、ポリアミック酸溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミック酸溶液に触媒を添加してイミド化を行う化学的イミド化などが挙げられる。中でも、比較的低温でイミド化反応が進行する化学的イミド化の方が、得られる可溶性ポリイミドの分子量低下が起こりにくく好ましい。
化学的イミド化反応は、ポリアミック酸を有機溶媒中において、アミック酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは1〜20モル倍の塩基触媒と、アミック酸基の0.5〜50モル倍、好ましくは1〜30モル倍の酸無水物の存在下で、−20℃〜250℃、好ましくは0℃〜200℃の温度において、1時間〜100時間反応させると好ましい。塩基触媒や酸無水物の量が少ないと反応が十分に進行せず、また多すぎると反応終了後に完全に除去することが困難となるからである。
化学的イミド化反応の際に用いる塩基触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等が例示できる。中でも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つために好ましい。
また、酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが例示できる。中でも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるために好ましい。
イミド化反応を行う際の有機溶媒としては、ポリアミック酸合成時に用いる溶媒を使用することができる。
化学的イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度を調節することにより制御することができる。中でも、上記イミド化率は、全ポリアミック酸のモル数の0.1%〜99%が好ましく、5%〜90%がより好ましく、30%〜70%がさらに好ましい。イミド化率が低すぎると保存安定性が悪くなり、高すぎると溶解性が悪く析出してしまう場合があるからである。
また、ラビング膜の材料としては、日産化学工業(株)製の「SE-5291」、「SE-7992」、「SE-7492」が好ましく用いられる。
ラビング処理方法としては、第1電極層上に上記の材料を塗布して硬化させ、得られた膜をラビング布で一定方向に擦ることにより配向膜に異方性を付与する方法を用いることができる。
上記材料の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、ロッドバーコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
また、ラビング膜の厚みは、1nm〜1000nm程度で設定され、好ましくは50nm〜100nmの範囲内である。
ラビング布としては、例えば、ナイロン樹脂、ビニル樹脂、レーヨン、綿等の繊維で構成されるものを用いることができる。例えば、このようなラビング布を巻き付けたドラムを回転させながら上記の材料を用いた膜の表面に接触させることにより、膜表面に微細な溝が一方向に形成され、配向膜に異方性が付与される。
(2)第1電極層
本実施態様における第1電極層は、一般に液晶表示素子の電極として用いられているものであれば特に限定されるものではない。第1電極層は、透明であっても不透明であってもよく、画像表示面に応じて適宜選択される。第1配向処理基板側が画像表示面となる場合は、第1電極層は透明であることが好ましく、透明導電体で構成されることが好ましい。透明導電体材料としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)等が好ましく挙げられる。
本発明の液晶表示素子を例えばTFTを用いたアクティブマトリックス方式で駆動する場合に、第1配向処理基板がTFT基板である場合には、第1電極層は画素電極とされる。一方、第1配向処理基板が共通電極基板である場合には、第1電極層は共通電極とされる。
第1電極層の形成方法としては、例えば化学蒸着(CVD)法や、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等の物理蒸着(PVD)法などを挙げることができる。
(3)第1基材
本実施態様における第1基材は、一般に液晶表示素子の基材として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、透明であっても不透明であってもよい。第1基材としては、例えば、ガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。
2.第2配向処理基板
本実施態様における第2配向処理基板は、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成され、第1配向パターンおよび第2配向パターンからなる第2配向層とを有するものである。
なお、第2基材および第2電極層については、上記の第1配向処理基板の第1基材および第1電極層とそれぞれ同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、第2配向処理基板における他の構成について説明する。
(1)第2配向層
本実施態様における第2配向層は、第2電極層上に形成されるものであり、第1配向パターンおよび第2配向パターンからなるものである。この第1配向パターンは、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである。また、第2配向パターンは、反応性液晶用配向膜と、上記反応性液晶用配向膜上に形成された反応性液晶層とからなるパターン、あるいは、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンのいずれかである。
以下、第1配向パターン、第2配向パターン、および第2配向層のその他の構成について説明する。
(i)第1配向パターン
第2配向層を構成する第1配向パターンは、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである。光異性化型材料を含有する光配向膜は、光異性化型材料を塗布した基板に偏光を制御した光を照射し、光異性化反応を生じさせて得られた膜に異方性を付与することによりその膜上の液晶分子を配向させるものである。光配向処理は、非接触配向処理であることから静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用である。
光異性化型材料とは、上述したように光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する材料であり、このような特性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化反応性化合物を含むものであることが好ましい。このような光異性化反応性化合物を含むことにより、光照射により、複数の異性体のうち安定な異性体が増加し、それにより光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
光異性化反応性化合物としては、上記のような特性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、偏光方向により吸収を異にする二色性を有し、かつ、光照射により光異性化反応を生じるものであることが好ましい。このような特性を有する光異性化反応性化合物の偏光方向に配向した反応部位の異性化を生じさせることにより、光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
また、光異性化反応性化合物が生じる光異性化反応としては、シス−トランス異性化反応であることが好ましい。光照射によりシス体またはトランス体のいずれかの異性体が増加し、それにより配向膜に異方性を付与することができるからである。
光異性化反応性化合物としては、単分子化合物、または、光もしくは熱により重合する重合性モノマーを挙げることができる。これらは用いられる強誘電性液晶の種類に応じて適宜選択すればよいが、光照射により光配向膜に異方性を付与した後、ポリマー化することにより、その異方性を安定化することができることから、重合性モノマーを用いることが好ましい。このような重合性モノマーの中でも、光配向膜に異方性を付与した後、その異方性を良好な状態に維持したまま容易にポリマー化できることから、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーであることが好ましい。
上記重合性モノマーは、単官能のモノマーであっても、多官能のモノマーであってもよいが、ポリマー化による光配向膜の異方性がより安定なものとなることから、2官能のモノマーであることが好ましい。
このような光異性化反応性化合物としては、具体的には、アゾベンゼン骨格やスチルベン骨格などのシス−トランス異性化反応性骨格を有する化合物を挙げることができる。
この場合に、分子内に含まれるシス−トランス異性化反応性骨格の数は、1つであっても2つ以上であってもよいが、強誘電性液晶の配向制御が容易となることから、2つであることが好ましい。
上記シス−トランス異性化反応性骨格は、液晶分子との相互作用をより高めるために置換基を有していてもよい。置換基は、液晶分子との相互作用を高めることができ、かつ、シス−トランス異性化反応性骨格の配向を妨げないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基、スルホン酸ナトリウム基、水酸基などが挙げられる。これらの構造は、用いられる強誘電性液晶の種類に応じて、適宜選択することができる。
また、光異性化反応性化合物としては、分子内にシス−トランス異性化反応性骨格以外にも、液晶分子との相互作用をより高められるように、芳香族炭化水素基などのπ電子が多く含まれる基を有していてもよく、シス−トランス異性化反応性骨格と芳香族炭化水素基は、結合基を介して結合していてもよい。結合基は、液晶分子との相互作用を高められるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、−COO−、−OCO−、−O−、−C≡C−、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−などが挙げられる。
なお、光異性化反応性化合物として、重合性モノマーを用いる場合には、上記シス−トランス異性化反応性骨格を、側鎖として有していることが好ましい。上記シス−トランス異性化反応性骨格を側鎖として有していることにより、光配向膜に付与される異方性の効果がより大きなものとなり、強誘電性液晶の配向制御に特に適したものとなるからである。この場合に、前述した分子内に含まれる芳香族炭化水素基や結合基は、液晶分子との相互作用が高められるように、シス−トランス異性化反応性骨格と共に、側鎖に含まれていることが好ましい。
また、上記重合性モノマーの側鎖には、シス−トランス異性化反応性骨格が配向しやすくなるように、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基をスペーサーとして有していてもよい。
上述したような単分子化合物または重合性モノマーの光異性化反応性化合物の中でも、本発明に用いられる光異性化反応性化合物としては、分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物であることが好ましい。アゾベンゼン骨格は、π電子を多く含むため、液晶分子との相互作用が高く、強誘電性液晶の配向制御に特に適しているからである。
以下、アゾベンゼン骨格が光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与できる理由について説明する。まず、アゾベンゼン骨格に、直線偏光紫外光を照射すると、下記式に示されるように、分子長軸が偏光方向に配向しているトランス体のアゾベンゼン骨格が、シス体に変化する。
アゾベンゼン骨格のシス体は、トランス体に比べて化学的に不安定であるため、熱的にまたは可視光を吸収してトランス体に戻るが、このとき、上記式の左のトランス体になるか右のトランス体になるかは同じ確率で起こる。そのため、紫外光を吸収し続けると、右側のトランス体の割合が増加し、アゾベンゼン骨格の平均配向方向は紫外光の偏光方向に対して垂直になる。本発明においては、この現象を利用することにより、アゾベンゼン骨格の配向方向を揃え、光配向膜に異方性を付与し、その膜上の液晶分子の配向を制御することができるのである。
このような分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物のうち、単分子化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、R41は各々独立して、ヒドロキシ基を表す。R42は−(A41−B41−A41)m−(D41)n−で表される連結基を表し、R43は(D41)n−(A41−B41−A41)m−で表される連結基を表す。ここで、A41は二価の炭化水素基を表し、B41は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D41は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R44は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R45は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式で表される化合物の具体例としては、下記式(2)〜(5)に示す化合物を挙げることができる。
また、上記アゾベンゼン骨格を側鎖として有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式(6)で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、R51は各々独立して、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、ビニルイミノカルボニル基、ビニルイミノカルボニルオキシ基、ビニル基、イソプロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニルオキシ基、イソプロペニル基またはエポキシ基を表す。R52は−(A51−B51−A51)m−(D51)n−で表される連結基を表し、R53は(D51)n−(A51−B51−A51)m−で表される連結基を表す。ここで、A51は二価の炭化水素基を表し、B51は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D51は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R54は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R55は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式で表される化合物の具体例としては、下記式(7)〜(10)に示す化合物を挙げることができる。
本発明においては、このような光異性化反応性化合物の中から、要求特性に応じて、シス−トランス異性化反応性骨格や置換基を種々選択することができる。なお、これらの光異性化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明に用いられる光異性化型材料としては、上記光異性化反応性化合物のほか、光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記光異性化反応性化合物として重合性モノマーを用いる場合には、添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光異性化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光異性化反応性化合物に対し、0.001質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量が小さすぎると重合が開始(禁止)されない場合があり、逆に大きすぎると、反応が阻害される場合があるからである。
光異性化型材料が光異性化反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。
光異性化型材料を含有する光配向膜を形成するには、まず光異性化型材料を有機溶剤で希釈した光配向膜形成用塗工液を塗布し、乾燥させる。この場合に、光配向膜形成用塗工液中の光二量化反応性化合物の含有量は、0.05質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2質量%〜2質量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が上記範囲より少ないと、配向膜に適度な異方性を付与することが困難となり、逆に含有量が上記範囲より多いと、光配向膜形成用塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなるからである。
光配向膜形成用塗工液の塗布方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、ロッドバーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
上記光配向膜形成用塗工液を塗布することにより得られる膜の厚みは、1nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。膜の厚みが上記範囲より薄いと十分な光配列性を得ることができない可能性があり、逆に厚みが上記範囲より厚いとコスト的に不利になる場合があるからである。
得られた膜には光配向処理を施すことによって異方性を付与する。具体的には、偏光を制御した光を照射することにより、光励起反応を生じさせて異方性を付与することができる。照射する光の波長領域は、用いられる光異性化型材料に応じて適宜選択すればよいが、紫外光域の範囲内、すなわち100nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは250nm〜380nmの範囲内である。また、偏光方向は、上記光異性化反応を生じさせることができるものであれば特に限定されるものではない。
さらに、光異性化型材料として、光異性化反応性化合物の中でも重合性モノマーを用いた場合には、光配向処理を行った後、加熱することにより、ポリマー化し、光配向膜に付与された異方性を安定化することができる。
(ii)第2配向パターン
第2配向層を構成する第2配向パターンは、反応性液晶用配向膜と、上記反応性液晶用配向膜上に形成された反応性液晶層とからなるパターン、あるいは、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンのいずれかである。以下、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、および、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターンについて説明する。
(光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターン)
光二量化型材料を含有する光配向膜は、光二量化型材料を塗布した基板に偏光を制御した光を照射し、光二量化反応を生じさせて得られた膜に異方性を付与することによりその膜上の液晶分子を配向させるものである。光配向処理は、非接触配向処理であることから静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用である。また、光二量化型材料は、露光感度が高く、材料選択の幅が広いという利点を有する。
光二量化型材料とは、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する材料である。また、光二量化反応とは、光照射により偏光方向に配向した反応部位がラジカル重合して分子2個が重合する反応をいい、この反応により偏光方向の配向を安定化し、光配向膜に異方性を付与することができるものである。
光二量化型材料としては、光二量化反応により光配向膜に異方性を付与することができる材料であれば特に限定されるものではないが、ラジカル重合性の官能基を有し、かつ、偏光方向により吸収を異にする二色性を有する光二量化反応性化合物を含むことが好ましい。偏光方向に配向した反応部位をラジカル重合することにより、光二量化反応性化合物の配向が安定化し、光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
このような特性を有する光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基およびシンナモイル基から選ばれる少なくとも1種の反応部位を有する二量化反応性ポリマーを挙げることができる。
これらの中でも光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリンまたはキノリンのいずれかを含む二量化反応性ポリマーであることが好ましい。偏光方向に配向したα、β不飽和ケトンの二重結合が反応部位となってラジカル重合することにより、光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
上記二量化反応性ポリマーの主鎖としては、ポリマー主鎖として一般に知られているものであれば特に限定されるものではないが、芳香族炭化水素基などの、上記側鎖の反応部位同士の相互作用を妨げるようなπ電子を多く含む置換基を有していないものであることが好ましい。
上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜20,000の範囲内であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量が小さすぎると、光配向膜に適度な異方性を付与することができない場合がある。逆に、大きすぎると、光配向膜形成時の塗工液の粘度が高くなり、均一な塗膜を形成しにくい場合がある。
二量化反応性ポリマーとしては、下記式(11)で表される化合物を例示することができる。
上記式において、M11およびM12は、それぞれ独立して、単重合体または共重合体の単量体単位を表す。例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロアクリルアミド、スチレン誘導体、マレイン酸誘導体、シロキサンなどが挙げられる。M12としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであってもよい。xおよびyは、共重合体とした場合の各単量体単位のモル比を表すものであり、それぞれ、0<x≦1、0≦y<1であり、かつ、x+y=1を満たす数である。nは4〜30,000の整数を表す。D1およびD2は、スペーサー単位を表す。
R1は−A1−(Z1−B1)z−Z2−で表される基であり、R2は−A1−(Z1−B1)z−Z3−で表される基である。ここで、A1およびB1は、それぞれ独立して、共有単結合、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレンを表す。また、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、共有単結合、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CONR−、−RNCO−、−COO−または−OOC−を表す。Rは、水素原子または低級アルキル基であり、Z3は、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキルまたはアルコキシ、シアノ、ニトロ、ハロゲンである。zは、0〜4の整数である。E1は、光二量化反応部位を表し、例えば、ケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基、シンナモイル基などが挙げられる。jおよびkは、それぞれ独立して、0または1である。
このような二量化反応性ポリマーとしては、具体的に下記式(12)〜(15)で表される化合物を挙げることができる。
また、上記二量化反応性ポリマーとして、より具体的には下記式で表される化合物(16)〜(19)を挙げることができる。
本発明においては、光二量化反応性化合物として、上述した化合物の中から、要求特性に応じて光二量化反応部位や置換基を種々選択することができる。また、光二量化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、光二量化型材料としては、上記光二量化反応性化合物のほか、光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光二量化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光二量化反応性化合物に対し、0.001質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量が小さすぎると重合が開始(禁止)されない場合があり、逆に大きすぎると、反応が阻害される場合があるからである。
光二量化型材料としては、例えばRolic technologies社製の「ROP102」、「ROP103」などを挙げることができる。
光二量化型材料が光二量化反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、光二量化型材料を含有する光配向膜の形成方法としては、上記の光異性化型材料を含有する光配向膜の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターン)
第2配向パターンは、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とにより構成されるものであってもよい。反応性液晶は反応性液晶用配向膜により配向しており、例えば紫外線を照射して反応性液晶を重合させ、その配向状態を固定化することにより反応性液晶層を形成することができる。反応性液晶層は、このように反応性液晶の配向状態を固定化してなるものであるので、強誘電性液晶を配向させる配向膜として機能する。また、反応性液晶は固定化されているため、温度等の影響を受けないという利点を有する。さらに、反応性液晶は強誘電性液晶と構造が比較的類似しており、強誘電性液晶との相互作用が強いので、配向膜のみを用いた場合よりも効果的に強誘電性液晶の配向を制御することができる。
反応性液晶としては、ネマチック相を発現するものであることが好ましい。ネマチック相は、液晶相の中でも配向制御が比較的容易であるからである。
また、反応性液晶は、重合性液晶材料を含有することが好ましい。これにより、反応性液晶の配向状態を固定化することが可能になるからである。重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができるが、中でも、重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、他の重合性液晶材料、すなわち重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーと比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高く、容易に配向させることができるからである。
上記重合性液晶モノマーとしては、重合性官能基を有する液晶モノマーであれば特に限定されるものではなく、例えばモノアクリレートモノマー、ジアクリレートモノマー等が挙げられる。また、これらの重合性液晶モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(20)および(21)で表される化合物を例示することができる。
上記式において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等のスペーサーを介して結合していてもよい。
ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(22)および(23)に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、XおよびYは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。また、mは2〜20の範囲内の整数を表す。上記式(22)において、Xとしては、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、メチルまたは塩素であることが好ましく、中でも炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、特にCH3(CH2)4OCOであることが好ましい。
また、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式(24)に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、Z31およびZ32は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表し、R31、R32およびR33は、各々独立して水素または炭素数1〜5のアルキルを表す。また、kおよびmは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。R31、R32およびR33は、k=1の場合、各々独立して炭素数1〜5のアルキルであり、k=0の場合、各々独立して水素または炭素数1〜5のアルキルであることが好ましい。このR31、R32およびR33は、互いに同じであってもよい。
上記式(24)で表される化合物の具体例としては、下記式(25)に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、Z21およびZ22は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表す。また、mは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。
上記の中でも、上記式(22)および(24)で表される化合物が好適に用いられる。上記式(24)で表される化合物として、具体的には旭電化工業株式会社製の「アデカキラコール PLC-7183」、「アデカキラコール PLC-7209」などを挙げることができる。また、アクリレートモノマーとしては、例えばRolic technologies 社製の「ROF-5101」、「ROF-5102」なども挙げられる。
また、重合性液晶モノマーの中でも、ジアクリレートモノマーが好適である。ジアクリレートモノマーは、配向状態を良好に維持したまま容易に重合させることができるからである。
上述した重合性液晶モノマーは、それ自体がネマチック相を発現するものでなくてもよい。これらの重合性液晶モノマーは、上述したように2種以上を混合して用いてもよいものであり、これらを混合した組成物すなわち反応性液晶が、ネマチック相を発現するものであればよいからである。
さらに、必要に応じて、上記反応性液晶に光重合開始剤や重合禁止剤等を添加してもよい。例えば、電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合はあるが、一般的に用いられている例えば紫外線照射による重合の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。光重合開始剤としては、例えば、特開2005−258428号広報に記載されているような光重合開始剤を用いることができる。また、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲で上記反応性液晶に添加することができる。
反応性液晶層の厚みは、目的とする異方性に応じて適宜調整されるものであり、例えば1nm〜1000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。反応性液晶層の厚みが厚すぎると必要以上の異方性が生じてしまい、また反応性液晶層の厚みが薄すぎると所定の異方性が得られない場合があるからである。
反応性液晶層は、反応性液晶用配向膜上に反応性液晶を含む反応性液晶層形成用塗工液を塗布し、配向処理を行い、上記反応性液晶の配向状態を固定化することにより形成することができる。また、反応性液晶層形成用塗工液を塗布するのではなく、ドライフィルム等を予め形成し、これを反応性液晶用配向膜上に積層することにより、反応性液晶層を形成してもよい。製造工程の簡便さの観点からは、反応性液晶を溶媒に溶解させて反応性液晶層形成用塗工液を調製し、これを反応性液晶用配向膜上に塗布し、溶媒を除去する方法を用いることが好ましい。
上記反応性液晶層形成用塗工液に用いる溶媒としては、上記反応性液晶等を溶解することができ、かつ反応性液晶用配向膜の配向能を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。このような溶媒としては、例えば、特開2005−258428号広報に記載されているような溶媒を用いることができる。溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、単一種の溶媒を使用しただけでは、上記反応性液晶等の溶解性が不十分であったり、反応性液晶用配向膜が侵食されたりする場合がある。この場合には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記の溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素類およびグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類またはケトン類と、グリコール系溶媒との混合系である。
反応性液晶層形成用塗工液の濃度は、反応性液晶の溶解性や、反応性液晶層の厚みに依存するため一概には規定できないが、通常は0.1〜40質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲で調整される。反応性液晶層形成用塗工液の濃度が上記範囲より低いと、反応性液晶が配向しにくくなる場合があり、逆に反応性液晶層形成用塗工液の濃度が上記範囲より高いと、反応性液晶層形成用塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなる場合があるからである。
さらに、上記反応性液晶層形成用塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、例えば、特開2005−258428号広報に記載されているような化合物を添加することができる。上記反応性液晶に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択される。これらの化合物の添加により、反応性液晶の硬化性が向上し、得られる反応性液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
このような反応性液晶層形成用塗工液の塗布方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、プリント法、ディップコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、押し出しコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
また、上記反応性液晶層形成用塗工液を塗布した後は、溶媒を除去するのであるが、この溶媒の除去は、例えば、減圧除去もしくは加熱除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。
本発明においては、上述したように塗布された反応性液晶を、反応性液晶用配向膜により配向させて液晶規則性を有する状態とする。すなわち、反応性液晶にネマチック相を発現させる。これは、通常はN−I転移点以下で熱処理する方法等の方法により行われる。ここで、N−I転移点とは、液晶相から等方相へ転移する温度を示すものである。
反応性液晶は重合性液晶材料を有するものであり、このような重合性液晶材料の配向状態を固定化するには、重合を活性化する活性放射線を照射する方法が用いられる。ここでいう活性放射線とは、重合性液晶材料に対して重合を起こさせる能力がある放射線をいう。
このような活性放射線としては、重合性液晶材料を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
本発明においては、光重合開始剤が紫外線でラジカルを発生し、重合性液晶材料がラジカル重合するような重合性液晶材料に対して、紫外線を活性放射線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線として紫外線を用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる光重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ等の使用が推奨される。また、照射強度は、反応性液晶の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
このような活性放射線の照射は、上記重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはないからである。
また、重合性液晶材料の配向状態を固定化する方法としては、上記の活性放射線を照射する方法以外にも、加熱して重合性液晶材料を重合させる方法も用いることができる。この場合に用いられる反応性液晶としては、反応性液晶のN−I転移点以下で、反応性液晶に含有される重合性液晶モノマーが熱重合するものであることが好ましい。
反応性液晶用配向膜としては、特に限定されるものではなく、例えば、ラビング膜、光異性化型材料を含有する光配向膜、光二量化型材料を含有する光配向膜などを用いることができる。
また、反応性液晶用配向膜は、第1配向パターンを構成する光異性化型材料を含有する光配向膜と同じであってもよく異なっていてもよい。反応性液晶用配向膜が、第1配向パターンを構成する光異性化型材料を含有する光配向膜と同じである場合、図8に例示するように、反応性液晶用配向膜17と第1配向パターン14aとが連続して形成されていてもよく、図4に例示するように、反応性液晶用配向膜17と第1配向パターン14aとが離れて形成されていてもよい。一方、反応性液晶用配向膜が、第1配向パターンを構成する光異性化型材料を含有する光配向膜と異なる場合、通常、反応性液晶用配向膜と第1配向パターンとは離れて形成される。
(iii)第1配向パターンおよび第2配向パターン
本発明における第1配向パターンおよび第2配向パターンの形状としては、一般的に極性反転駆動に適用されるパターン形状であればよく、例えば、ライン状、ドット状等が挙げられる。
第1配向パターンおよび第2配向パターンの形成方法としては、所望のパターンが得られる方法であれば特に限定されるものではない。中でも、後述するような、撥液性領域および親液性領域からなる濡れ性変化パターン、あるいは、絶縁部表面の撥液性領域と、絶縁部の開口部内の層表面の親液性領域との濡れ性の違い、あるいは、隔壁を利用することにより、第1配向パターンおよび第2配向パターンを形成する方法が好ましく用いられる。
第2配向パターンが、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とにより構成される場合であって、反応性液晶用配向膜が、第1配向パターンを構成する光異性化型材料を含有する光配向膜と同じである場合には、第2基材全面に光異性化型材料を含有する光配向膜を形成し、その光配向膜全面に反応性液晶層形成用塗工液を塗布し、得られた膜にパターン露光して反応性液晶を部分的に硬化させ、その後、有機溶剤で現像することによって、第1配向パターンおよび第2配向パターンを形成することができる。この場合、図8に例示するように、第1配向パターン14aが光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであり、第2配向パターン14bが光異性化型材料を含有する光配向膜(反応性液晶用配向膜17)と反応性液晶層18とからなるパターンであり、第1配向パターンと反応性液晶用配向膜とが連続して形成されている第2配向処理基板15を得ることができる。
パターン露光により反応性液晶を部分的に硬化させるには、上記反応性液晶層の項に記載した活性放射線を照射する方法を用いればよい。重合性液晶材料の配向状態の固定化と、パターン露光とを同時に行うことができる。また、現像方法としては、例えば、パターン露光後の膜をMEK等に浸漬する方法などを用いることができる。現像後は、IPA、水等を用いて洗浄することが好ましい。
(2)濡れ性変化層
本実施態様の第2配向処理基板においては、図9に例示するように、第2電極層13と第2配向層14との間に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層25が形成され、この濡れ性変化層25表面に、親液性領域26aおよび撥液性領域26bからなる濡れ性変化パターンが形成されていてもよい。この場合、親液性領域26a上にのみ第2配向層14(第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14b)が形成される。濡れ性変化層が形成されていることにより、濡れ性変化層表面に形成された濡れ性変化パターンを利用して、第1配向パターンおよび第2配向パターンを精度良く容易に形成することができる。
濡れ性変化層は、光触媒を含有しないものであってもよく、光触媒を含有するものであってもよい。以下、濡れ性変化層が光触媒を含有しない場合(第1の態様)、および、濡れ性変化層が光触媒を含有する場合(第2の態様)に分けて説明する。
(i)第1の態様
本態様における濡れ性変化層は、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層基板を、濡れ性変化層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギー照射することにより、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層である。濡れ性変化層自体は、光触媒を含有していない。本態様においては、濡れ性変化層が光触媒を含有しないため、第2配向処理基板が経時的に光触媒の影響を受けることがないという利点を有する。
本態様においては、図10に例示するように、第2電極層13上に形成された濡れ性変化層25と、基体52と光触媒処理層53とを有する光触媒含有層基板51とを所定の間隙をおいて配置し、フォトマスク55を介してエネルギー56を照射し(図10(a))、濡れ性変化層25表面のエネルギー照射部分の濡れ性を変化させて親液性領域26aを形成することにより、親液性領域26aおよび撥液性領域26bからなる濡れ性変化パターンを形成することができる(図10(b))。そして、親液性領域26aの所定の部分に第1配向パターン形成用塗工液をインクジェット法等により塗布して第1配向パターン14aを形成し、次いで、親液性領域26aの他の部分に第2配向パターン形成用塗工液をインクジェット法等により塗布して第2配向パターン14bを形成する(図10(c))。
以下、濡れ性変化層、光触媒処理層基板、濡れ性変化パターンの形成方法、および濡れ性変化パターンについて説明する。
(濡れ性変化層)
本態様における濡れ性変化層に用いられる材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料であれば特に限定されるものではないが、光触媒の作用により劣化、分解されにくい主鎖を有し、光触媒の作用により分解される有機置換基を有するバインダが好ましい。このバインダとしては、例えば、オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。中でも、オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができ、特開2000−249821号公報や特開2003−195029号公報に記載されているもの等を用いることができる。
また、濡れ性変化層は、エネルギー照射部分の濡れ性の変化を起こさせる、あるいは、濡れ性の変化を補助する、界面活性剤、分解物質、その他添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤としては、例えば特開2000−249821号公報や特開2003−195029号公報に記載されているもの等を用いることができる。
濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μm〜1μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.1μmの範囲内である。
(光触媒処理層基板)
本態様における光触媒処理層基板は、基体と、この基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層とを有するものである。
光触媒処理層は、光触媒を含有するものである。光触媒処理層としては、光触媒処理層中の光触媒が濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させるような構成であれば特に限定されるものではない。光触媒処理層は、例えば、光触媒とバインダとから構成されるものであってもよく、光触媒単体で構成されるものであってもよい。光触媒のみからなる光触媒処理層の場合は、濡れ性変化層表面の濡れ性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。また、光触媒とバインダとからなる光触媒処理層の場合は、光触媒処理層の形成が容易であるという利点を有する。
本発明に用いられる光触媒としては、光半導体として知られる、例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができる。これらの光触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり、いずれも使用することができる。中でも、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
アナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製 STS−02(平均粒径:7nm)、石原産業(株)製 ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製 TA−15(平均粒径:12nm))等を挙げることができる。
粒径が小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので、光触媒の粒径は小さい方が好ましい。具体的には、光触媒の平均粒径は50nm以下であることが好ましく、20nm以下が特に好ましい。
光触媒処理層における、上記二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、エネルギーの照射によって光触媒が酸化還元反応を引き起こし、スーパーオキサイドラジカル(・O2 −)やヒドロキシラジカル(・OH)などの活性酸素種を発生し、この発生した活性酸素種が有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、この活性酸素種が、光触媒処理層近傍に配置される濡れ性変化層中の有機物に作用を及ぼしていると思料される。
また、光触媒処理層が光触媒とバインダとからなるものである場合、用いられるバインダとしては、主骨格が光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましい。このようなバインダとしては、例えば、オルガノポリシロキサン、無定形シリカ前駆体を用いることができ、特開2000−249821号公報や特開2003−195029号公報に記載されているもの等を用いることができる。
光触媒処理層が光触媒とバインダとからなるものである場合、光触媒処理層中の光触媒の含有量は、5〜60質量%の範囲内で設定することができ、好ましくは20〜50質量%の範囲内である。
また、光触媒処理層は、界面活性剤、その他添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤としては、例えば特開2000−249821号公報や特開2003−195029号公報に記載されているもの等を用いることができる。
光触媒処理層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内であることが好ましい。
また、光触媒処理層表面の濡れ性は、親液性であっても撥液性であってもよい。
光触媒処理層の形成位置としては、例えば、基体上の全面に光触媒処理層が形成されていてもよく、基体上に光触媒処理層がパターン状に形成されていてもよい。光触媒処理層がパターン状に形成されている場合には、光触媒処理層を濡れ性変化層に対して所定の間隙をおいて配置し、エネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いてパターン照射する必要がなく、全面に照射することにより、濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることができる。また、実際に光触媒処理層に面する濡れ性変化層表面のみ、濡れ性が変化するので、エネルギーの照射方向としては、光触媒処理層と濡れ性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、いかなる方向であってもよい。さらには、照射されるエネルギーも、平行光等の平行なものに限定されない。
光触媒処理層基板に用いられる基体は、後述するエネルギーの照射方向により透明性が適宜選択される。例えば、電極層が不透明である場合は、エネルギー照射方向は必然的に光触媒処理層基板側からとなる。また例えば、光触媒処理層基板に遮光部がパターン状に形成されており、この遮光部を用いてパターン状にエネルギー照射する場合も、光触媒処理層基板側からエネルギーを照射する必要がある。そのため、これらの場合には、基体は透明性を有する必要がある。
また、基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
基体としては、特に限定されるものではないが、光触媒処理層基板は繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒処理層との密着性が良好であるものが好適に用いられる。具体的には、基体を構成する材料としては、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
光触媒処理層基板には、遮光部がパターン状に形成されていてもよい。パターン状の遮光部を有する光触媒処理層基板を用いた場合には、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行ったりする必要がない。したがって、この場合には、光触媒処理層基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることができ、また描画照射に必要な高価な装置も不要であることから、コスト的に有利となる。
遮光部の形成位置としては、例えば、基体上に遮光部がパターン状に形成され、この遮光部を覆うように光触媒処理層が形成されていてもよく、基体上に光触媒処理層が形成され、この光触媒処理層上に遮光部がパターン状に形成されていてもよく、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に遮光部がパターン状に形成されていてもよい。
上記の基体上に遮光部が形成されている場合、および、光触媒処理層上に遮光部が形成されている場合は、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒処理層と濡れ性変化層とが間隙をおいて配置される部分の近傍に、遮光部が配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができる。このため、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
さらに、光触媒処理層上に遮光部が形成されている場合は、光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隙をおいて配置する際に、この遮光部の膜厚をこの間隙の距離と一致させておくことにより、間隙を一定のものとするためのスペーサとして、遮光部を用いることができる。すなわち、光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隙をおいて配置する際に、遮光部と濡れ性変化層とを密着させた状態で配置することにより、所定の間隙を保つことができる。そして、この状態で光触媒処理層基板からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを精度良く形成することができる。
また、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に遮光部が形成されている場合は、例えばフォトマスクを遮光部の表面に着脱可能な程度に密着させることができるので、液晶表示素子の製造を小ロットで変更するような場合に好適である。
(濡れ性変化パターンの形成方法)
本態様においては、光触媒処理層基板を、濡れ性変化層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置する。通常は、光触媒処理層基板の光触媒処理層と、濡れ性変化層とを、濡れ性変化層にエネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置する。なお、間隙とは、光触媒処理層および濡れ性変化層が接触している状態も含むものとする。
光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔は、具体的には、200μm以下であることが好ましい。光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隔をおいて配置することにより、酸素、水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔が上記範囲より広い場合には、光触媒作用により生じた活性酸素種が濡れ性変化層に届き難くなり、濡れ性の変化速度を遅くしてしまう可能性がある。逆に、光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔を狭くしすぎると、酸素、水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しにくくなり、結果的に濡れ性の変化速度を遅くしてしまう可能性がある。
上記間隔は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、濡れ性変化の効率が良好である点を考慮すると、0.2μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは1μm〜10μmの範囲内である。
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の液晶表示素子を製造する場合には、上述したような微細な間隙を光触媒処理層基板と濡れ性変化層との間に設けることは極めて困難である。したがって、比較的大面積の液晶表示素子を製造する場合は、上記間隙は、5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10μm〜75μmの範囲内である。上記間隙を上記範囲とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下を抑制することができ、また光触媒の感度が悪化して濡れ性変化の効率が悪化するのを抑制することができるからである。
また、上記のような比較的大面積に対してエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層基板と濡れ性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。上記間隙の設定値を上記範囲とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層基板と濡れ性変化層とを接触させずに配置することができるからである。
本発明においては、このような間隙をおいた配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
このような極めて狭い間隙を均一に設けて光触媒処理層と濡れ性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。スペーサを用いる方法では、均一な間隙を設けることができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が濡れ性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した濡れ性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、濡れ性変化層表面に所定の濡れ性変化パターンを形成することが可能となる。
本発明においては、スペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、光触媒処理層基板の光触媒処理層上にスペーサが形成されていることが好ましい。この場合、上記遮光部の項に記載したような利点を有する。
スペーサは、濡れ性変化層表面に光触媒の作用が及ばないように、濡れ性変化層表面を保護する作用を有していればよい。このため、スペーサは、照射されるエネルギーに対して遮蔽性を有していなくてもよい。
また、光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隙をおいて配置した後は、所定の方向からエネルギーをパターン照射することにより、濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを形成する。
エネルギー照射に用いる光の波長は、通常、450nm以下の範囲で設定され、好ましくは380nm以下の範囲で設定される。これは、上述したように、光触媒処理層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上記の波長の光が好ましいからである。
エネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
また、パターン状にエネルギーを照射する方法としては、これらの光源を用い、フォトマスクを介してパターン照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることもできる。
エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、光触媒処理層中の光触媒の作用により濡れ性変化層表面の濡れ性が変化するのに必要な照射量とする。
この際、光触媒処理層を加熱しながらエネルギー照射することが好ましい。感度を上昇させことができ、効率的に濡れ性を変化させることができるからである。具体的には、30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
エネルギー照射方向は、光触媒処理層基板に遮光部が形成されているか否か等により決定される。例えば、光触媒処理層基板に遮光部が形成されており、光触媒処理層基板の基体が透明である場合は、光触媒処理層基板側からエネルギー照射が行なわれる。また、この場合、光触媒処理層上に遮光部が形成されており、この遮光部がスペーサとして機能する場合には、エネルギー照射方向は光触媒処理層基板側からであってもよく基板側からであってもよい。また例えば、光触媒処理層がパターン状に形成されている場合には、エネルギー照射方向は、上述したように、光触媒処理層と濡れ性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、いかなる方向であってもよい。同様に、上述したスペーサを用いる場合も、光触媒処理層と濡れ性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、エネルギー照射方向はいかなる方向であっってもよい。さらに例えば、フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合、フォトマスクが配置された側が透明である必要がある。
エネルギー照射後は、光触媒処理層基板は、濡れ性変化層から取り外される。
(濡れ性変化パターン)
本態様における濡れ性変化パターンは、濡れ性変化層表面に形成されるものであり、エネルギー照射部分である親液性領域と、エネルギー未照射部分である撥液性領域とからなるものである。
本態様において、親液性領域とは、エネルギー照射部分であり、エネルギー照射により液体との接触角が低下する方向に変化した領域である。また、撥液性領域とは、エネルギー未照射部分であり、親液性領域よりも、液体に対する接触角が大きい領域をいう。
撥液性領域においては、配向層形成用塗工液が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角が60°以上であることが好ましく、より好ましくは80°以上である。撥液性領域における液体との接触角が低すぎると、撥液性領域にも配向層形成用塗工液が付着する可能性があるからである。
また、親液性領域においては、配向層形成用塗工液が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角が30°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下、さらに好ましくは5°以下である。親液性領域における液体との接触角が高すぎると、配向層形成用塗工液が濡れ広がりにくくなり、第2配向層(第1配向パターンおよび第2配向パターン)が欠ける等の可能性があるからである。
なお、液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製 CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして求めることができる。この測定に際しては、種々の表面張力を有する液体として、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いることとする。
(ii)第2の態様
本態様における濡れ性変化層は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層である。本態様においては、濡れ性変化層が光触媒を含有するので、効率的に濡れ性を変化させることができるという利点を有する。
本態様においては、図11に例示するように、第2電極層13上に形成された濡れ性変化層25に、フォトマスク55を介してエネルギー56を照射し(図11(a))、濡れ性変化層25表面のエネルギー照射部分の濡れ性を変化させて親液性領域26aを形成することにより、親液性領域26aおよび撥液性領域26bからなる濡れ性変化パターンを形成することができる(図11(b))。そして、親液性領域26aの所定の部分に第1配向パターン形成用塗工液をインクジェット法等により塗布して第1配向パターン14aを形成し、次いで、親液性領域26aの他の部分に第2配向パターン形成用塗工液をインクジェット法等により塗布して第2配向パターン14bを形成する(図11(c))。
濡れ性変化層としては、光触媒を含有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光触媒と光触媒の作用により濡れ性が変化する材料とを含有する単一の層であってもよく、光触媒により濡れ性が変化する材料を含有する層と光触媒を含有する層とが積層されたものであってもよい。濡れ性変化層が、光触媒と光触媒の作用により濡れ性が変化する材料とを含有する単一の層である場合は、層自体に含有される光触媒の作用により濡れ性が変化することから、より効率的に濡れ性を変化させることができる。また、濡れ性変化層が、光触媒により濡れ性が変化する材料を含有する層と光触媒を含有する層とが積層されたものである場合は、光触媒を含有する層と第2配向層とを直接接触させないようにすることができるため、第2配向層が経時的に光触媒の影響を受けるのを抑制することができる。
濡れ性変化層が、光触媒と光触媒の作用により濡れ性が変化する材料とを含有する単一の層である場合、この濡れ性変化層に用いられる濡れ性が変化する材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料であれば特に限定されるものではないが、光触媒の作用により劣化、分解されにくい主鎖を有し、光触媒の作用により分解される有機置換基を有するバインダが好ましい。このバインダとしては、上記第1の態様の濡れ性変化層の項に記載したバインダを用いることができる。
なお、光触媒については、上記第1の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記濡れ性変化層中の光触媒の含有量は、5〜60質量%の範囲内で設定することができ、好ましくは20〜40質量%の範囲内である。
また、上記濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μm〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.1μmの範囲内である。
一方、濡れ性変化層が、光触媒により濡れ性が変化する材料を含有する層と光触媒を含有する層とが積層されたものである場合、光触媒により濡れ性が変化する材料を含有する層に用いられる材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料であれば特に限定されるものではないが、光触媒の作用により劣化、分解されにくい主鎖を有し、光触媒の作用により分解される有機置換基を有するバインダが好ましい。なお、光触媒により濡れ性が変化する材料を含有する層については、上記第1の態様の濡れ性変化層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、光触媒を含有する層は、光触媒を含有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光触媒とバインダとから構成されるものであってもよく、光触媒単体で構成されるものであってもよい。なお、光触媒を含有する層については、上記第1の態様の光触媒処理層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様においては、濡れ性変化層に、所定の方向からエネルギーをパターン照射することにより、濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを形成する。なお、エネルギー照射等については、上記第1の態様に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、濡れ性変化パターンについても、上記第1の態様に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(iii)遮光部
本実施態様において、濡れ性変化層が形成されている場合には、図12に例示するように、第2基材12上に遮光部27がパターン状に形成され、濡れ性変化層25の撥液性領域26bが遮光部27上に配置されていることが好ましい。撥液性領域には第2配向層が形成されないために強誘電性液晶が配向しにくいので、光漏れが生じるおそれがあるが、遮光部上に撥液性領域を配置することにより、この光漏れを防ぐことができるからである。
また、図示しないが、上記第1配向処理基板において、第1基材上に遮光部がパターン状に形成され、濡れ性変化層の撥液性領域がその遮光部上に配置されていてもよい。
上記遮光部は、通常、濡れ性変化パターンに対応したパターン状に形成される。
また、上記遮光部の形成材料としては、例えばカーボンブラック等の黒色着色剤を含有する樹脂組成物、あるいは、クロム等の金属または金属酸化物などが挙げられる。
遮光部の形成方法としては、樹脂組成物を用いる場合は例えばフォトリソグラフィー法、印刷法等が挙げられ、金属または金属酸化物を用いる場合は例えば蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、無電界メッキ法等が挙げられる。
(3)絶縁部
本実施態様の第2配向処理基板においては、図13に例示するように、第1配向パターン14aと第2配向パターン14bとの間に絶縁部28が形成されており、絶縁部28表面が撥液性領域26b、絶縁部28の開口部内の層表面(第2電極層13表面)が親液性領域26aとなっていてもよい。この場合、親液性領域26a上にのみ第2配向層14(第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14b)が形成される。絶縁部が形成され、絶縁部表面が撥液性領域になっていることにより、第1配向パターンおよび第2配向パターンを精度良く容易に形成することができる。
絶縁部表面に撥液処理を施すことにより、絶縁部表面を撥液性領域、絶縁部の開口部内の層表面を親液性領域とすることができる。
撥液処理方法としては、絶縁部表面における液体との接触角を、絶縁部の開口部内の層表面における液体との接触角よりも相対的に高くすることができる方法であれば特に限定されるものではない。一般的に、基材にはガラス等が用いられ、電極層には金属や金属酸化物等が用いられることから、絶縁部に有機材料を用いて、絶縁部にフッ素化合物を導入ガスとしたプラズマを照射する方法が好ましく用いられる。フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ照射では、有機物にのみフッ素化合物を導入することができるため、有機材料を含有する絶縁部に選択的にフッ素を導入することができ、絶縁部表面を撥液性とすることができるからである。
例えば図14に示すように、第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14bの間に形成された絶縁部28に、フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ57を照射し(図14(a))、絶縁部28表面のプラズマ照射部分を撥液性とすることにより、絶縁部28表面を撥液性領域26b、絶縁部28の開口部内の層表面(第2電極層13表面)を親液性領域26aとすることができる(図14(b))。そして、親液性領域26aの所定の部分に第1配向パターン形成用塗工液をインクジェット法等により塗布して第1配向パターン14aを形成し、次いで、親液性領域26aの他の部分に第2配向パターン形成用塗工液をインクジェット法等により塗布して第2配向パターン14bを形成する(図14(c))。
導入ガスとして用いられるフッ素化合物としては、例えば、フッ化炭素(CF4)、窒化フッ素(NF3)、フッ化硫黄(SF6)、CHF3、C2F6、C3F8、C5F8等が挙げられる。
また、導入ガスとして、フッ素化合物と他のガスとを混合して用いてもよい。他のガスとしては、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。中でも、窒素を用いることが好ましい。窒素を用いる場合、窒素の混合比率は60%以上であることが好ましい。
プラズマの照射方法としては、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、絶縁部表面を撥液性とすることができる方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば、減圧下でプラズマ照射してもよく、大気圧下でプラズマ照射してもよい。中でも、大気圧下でプラズマ照射を行うことが好ましい。この場合、減圧用の装置等を要することなく、コストや製造効率等の面で有利だからである。
また、プラズマの照射条件としては、照射装置等により適宜選択される。大気圧プラズマの照射条件としては、下記のものが例示される。例えば、電源出力としては、一般的なプラズマの照射装置を用いることができる。この際、照射されるプラズマの電極と、絶縁部との距離は、0.2mm〜20mm程度、中でも1mm〜5mm程度であることが好ましい。また、導入ガスとして用いられるフッ素化合物の流量は、1L/min〜20L/min程度であることが好ましく、フッ素化合物と同時に流す窒素の流量は、1L/min〜50L/min程度であることが好ましい。この際の基板搬送速度としては、0.5m/min〜2m/min程度とすることが好ましい。
絶縁部に導入されたフッ素の存在は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)に用いられるX線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)による分析において、絶縁部の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。この際、絶縁部に導入されるフッ素の割合としては、絶縁部の表面より検出される全元素のうち10%以上であることが好ましい。
また、絶縁部は、配向層形成用塗工液が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角が、撥液処理前の絶縁部の上記液体との接触角より1°以上高くなるようにプラズマ照射されることが好ましい。特に、絶縁部は、上記液体との接触角が5°以上、中でも10°以上、さらには30°以上となるようにプラズマ照射されることが好ましい。撥液処理後の絶縁部の上記液体との接触角が小さい場合は、配向層形成用塗工液が撥液性領域にも付着する可能性があるからである。
なお、液体との接触角の測定方法については、上記濡れ性変化層の項に記載したものと同様である。
絶縁部のパターン形状としては、第1配向パターンおよび第2配向パターンの形状に応じて適宜選択され、例えばライン状、マトリクス状等が挙げられる。また、絶縁部のピッチや幅等は、第1配向パターンおよび第2配向パターンのピッチや幅等に応じて適宜調整される。
絶縁部の形成材料は、絶縁性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、上記フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマを照射する場合には、絶縁性を有する有機材料であることが好ましい。この絶縁性を有する有機材料としては、例えば、樹脂を挙げることができ、中でも感光性樹脂が好ましく用いられる。感光性樹脂はパターニングが容易だからである。感光性樹脂としては、一般に液晶表示素子の部材に用いられるものであれば特に限定されるものではない。
また、絶縁部は遮光部であることが好ましい。撥液性領域には第2配向層が形成されないため、強誘電性液晶の配向が乱れてしまうおそれがあるが、遮光部である絶縁部表面が撥液性領域であることにより、強誘電性液晶の配向乱れによる光漏れを防ぐことができるからである。
絶縁部が遮光部である場合、絶縁部の形成材料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色着色剤を含有する感光性樹脂組成物を用いることができる。
絶縁部の厚みは、特に限定されるものではないが、絶縁部が遮光部である場合には、遮光機能の観点から、1.5μm〜2.0μm程度であることが好ましい。
また、絶縁部の形成方法としては、所定の位置に絶縁部を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なパターニング方法を適用することができる。例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
(4)隔壁
本実施態様の第2配向処理基板においては、図15に例示するように、第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14bを区画するように隔壁16が形成されていてもよい。隔壁が形成されていることにより、第1配向パターンおよび第2配向パターンを精度良く容易に形成することができるからである。
隔壁のパターン形状としては、第1配向パターンおよび第2配向パターンの形状に応じて適宜選択され、例えばライン状、マトリクス状等が挙げられる。また、隔壁のピッチや幅等は、第1配向パターンおよび第2配向パターンのピッチや幅等に応じて適宜調整される。さらに、隔壁の高さは、通常、液晶層の厚みと同程度とされる。
隔壁の形成材料は、一般に液晶表示素子の隔壁として用いられている材料であれば特に限定されるものではない。具体的には樹脂を挙げることができ、中でも感光性樹脂が好ましく用いられる。感光性樹脂はパターニングが容易だからである。感光性樹脂としては、一般に液晶表示素子の隔壁に用いられるものであれば特に限定されるものではない。
また、隔壁の形成方法としては、所定の位置に隔壁を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なパターニング方法を適用することができる。例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
(5)着色層
本実施態様においては、第2基材と第2電極層との間に着色層が形成されていてもよい。また、上記第1配向処理基板において、第1基材と第1電極層との間に着色層が形成されてもよい。すなわち、第1配向処理基板および第2配向処理基板のいずれか一方に着色層が形成されていてもよい。着色層が形成されている場合、着色層によりカラー表示を実現することができる。
着色層としては、一般にカラーフィルタの着色層として用いられるものであれば特に限定されるものではない。着色層には、例えば、通常の顔料分散法等に用いられる赤、青、または緑の顔料を含有する感光性樹脂組成物を用いることができる。
3.液晶層
本実施態様における液晶層は、第1配向処理基板の第1配向層および第2配向処理基板の第2配向層の間に強誘電性液晶を挟持させることにより構成されている。本発明に用いられる強誘電性液晶としては、単安定性を示すものであり、かつハーフV字型スイッチング特性を示すものであれば、特に限定されるものでない。ハーフV字型スイッチング特性を示す強誘電性液晶を用いると、白黒シャッターとしての開口時間を十分に長くとることができ、これにより時間的に切り替えられる各色をより明るく表示することができ、明るいカラー表示の液晶表示素子を実現することができる。
本実施態様においては、強誘電性液晶は、第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域では、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して平行に強誘電性液晶のチルト角の約2倍変化し、第2配向層の第2配向パターンが設けられている領域では、第1電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して平行に強誘電性液晶のチルト角の約2倍変化するものであることが好ましい。
図16に、第1配向層と、第2配向層の第1配向パターンとの間に挟持された強誘電性液晶の配向状態の一例を示す。
上述したように、電圧無印加状態では、図16(a)に例示するように、極性表面相互作用によって、液晶分子LCの自発分極Psの正極(+)が第2配向層の第1配向パターン14a側(光異性化型材料を含有する光配向膜側)を向く傾向にある。そして、図16(b)に例示するように、第1電極層3が正極(+)、第2電極層13が負極(−)となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響により、液晶分子LCの自発分極Psは第1配向層4側を向くようになる。次いで、第1電極層3が負極(−)、第2電極層13が正極(+)となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響によって、図16(a)に例示するように、液晶分子LCの自発分極Psは第2配向層の第1配向パターン14a側を向くようになる。この場合、自発分極の向きは、電圧無印加状態と同様になる。
一方、第1配向層と、第2配向層の第2配向パターンとの間に挟持された強誘電性液晶の配向状態については図示しないが、上述したように、電圧無印加状態では、極性表面相互作用によって、液晶分子の自発分極の正極が第1配向層側(ラビング膜側)を向く傾向にある。そして、第1電極層が正極、第2電極層が負極となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響により、液晶分子の自発分極は第2配向層の第2配向パターン側を向くようになる。次いで、第1電極層が負極、第2電極層が正極となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子の自発分極は第1配向層側を向くようになる。この場合、自発分極の向きは、電圧無印加状態と同様になる。
自発分極の向きがこのような方向になるのは、自発分極の向きが、強誘電性液晶の分極と配向膜の分極または電圧の極性とが電気的につり合う方向になるため、液晶分子が電気的に安定な状態になるからである。
第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域では、電圧無印加状態あるいは第2電極層への正極性の電圧印加状態(図16(a))から、第2電極層への負極性の電圧印加状態(図16(b))としたとき、この印加電圧の負極性と、液晶分子の自発分極の負極性との反発によって、図17に例示するように、液晶分子LCが角度約2θ回転する。すなわち、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が、第1配向処理基板面に対して平行に、強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する。
一方、第2配向層の第2配向パターンが設けられている領域では、図示しないが、電圧無印加状態あるいは第1電極層への正極性の電圧印加状態から、第1電極層への負極性の電圧印加状態としたとき、この印加電圧の負極性と、液晶分子の自発分極の負極性との反発によって、図17に例示するように、液晶分子LCが角度約2θ回転する。すなわち、第1電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が、第1配向処理基板面に対して平行に、強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する。
第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域では、第2電極層が負極となるように電圧を印加したとき、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化するものは70%以上存在することが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。また、第2配向層の第2配向パターンが設けられている領域では、第1電極層が負極となるように電圧を印加したとき、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化するものは70%以上存在することが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。上述の範囲であれば、良好なコントラスト比を得ることができるからである。
なお、上記の比率は、次のようにして測定することができる。
まず、第1配向処理基板および第2配向処理基板の外側に、それぞれ偏光板をクロスニコルに、かつ、一方の偏光板の偏光軸と液晶層の液晶分子の配向方向とが平行になるように配置する。電圧無印加状態では、一方の偏光板を透過した直線偏光と液晶分子の配向方向とが一致するため、液晶分子の屈折率異方性が発現されず、他方の偏光板を透過した直線偏光はそのまま液晶分子を通過し、他方の偏光板により遮断され、暗状態となる。一方、電圧印加状態では、液晶分子がコーン上を移動し、一方の偏光板を透過した直線偏光と液晶分子の配向方向とが所定の角度を持つようになるため、一方の偏光板を透過した直線偏光は液晶分子の複屈折により楕円偏光となる。この楕円偏光のうち、他方の偏光板の偏光軸と一致する直線偏光のみが他方の偏光板を透過し、明状態となる。
このため、第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域では、第2電極層が負極となるように電圧を印加したとき、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化すると明状態が得られる。一方、第2電極層が負極となるように電圧を印加したとき、例えば強誘電性液晶の分子方向が変化しないものが部分的に存在する場合には、部分的に暗状態が得られる。したがって、電圧印加時に得られる白黒(明暗)表示の白・黒の面積比から、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化するものの比率を算出することができる。
同様に、第2配向層の第2配向パターンが設けられている領域では、第1電極層が負極となるように電圧を印加したとき、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化すると明状態が得られる。一方、第1電極層が負極となるように電圧を印加したとき、例えば強誘電性液晶の分子方向が変化しないものが部分的に存在する場合には、部分的に暗状態が得られる。したがって、電圧印加時に得られる白黒(明暗)表示の白・黒の面積比から、第1電極層が負極となるように電圧を印加したときに強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化するものの比率を算出することができる。
なお、第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域において、「第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する」とは、電圧無印加時に液晶分子がコーン上のひとつの状態で安定化しており、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、液晶分子が単安定化状態からコーン上の一方の側に傾き、第2電極層が正極となるように電圧を印加したときに、液晶分子が、単安定化状態を維持するか、または単安定化状態から第2電極層が負極となるように電圧を印加したときとは逆側に傾き、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときの、液晶分子の単安定化状態からの傾斜角が、第2電極層が正極となるように電圧を印加したときの、液晶分子の単安定化状態からの傾斜角よりも大きいことをいう。
図18は、単安定性を示す強誘電性液晶の配向状態の一例を示す模式図である。図18(a)は電圧無印加の場合、図18(b)は第2電極層が負極となるように電圧を印加した場合、図18(c)は第2電極層が正極となるように電圧を印加した場合をそれぞれ示す。電圧無印加の場合、液晶分子LCは、コーン上のひとつの状態で安定化している(図18(a))。第2電極層が負極となるように電圧を印加した場合、液晶分子LCは、安定化している状態(破線)から一方の側に傾く(図18(b))。また、第2電極層が正極となるように電圧を印加したときに、液晶分子LCは、安定化している状態(破線)から第2電極層が負極となるように電圧を印加したときとは逆側に傾く(図18(c))。このとき、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときの傾斜角δは、第2電極層が正極となるように電圧を印加したときの傾斜角ωよりも大きい。なお、図18において、dは配向処理方向、zは層法線を示す。
第2電極層が負極となるように電圧を印加したとき、液晶分子は、印加電圧の大きさに応じた角度で、単安定化状態からコーン上の一方の側に傾く。また、強誘電性液晶では、図18(a)に例示するように、位置A(液晶分子LCの方向)と、位置B(配向処理方向d)と、位置Cとが、必ずしも一致するわけではない。そのため、図18(b)に例示するように、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときの最大の傾斜角δは、チルト角θの約2倍(角度2θ)となる。
例えば図17に示すように、液晶分子LCの方向は、第1配向処理基板面に対して平行に、チルト角θの約2倍(角度2θ)変化するのであるが、ここでチルト角θの約2倍変化するとは、2θ〜2θ−5°変化する場合をいう。
なお、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して平行に変化した角度は、次のようにして測定することができる。まず、偏光板をクロスニコルに配置した偏光顕微鏡および液晶表示素子を、一方の偏光板の偏光軸と液晶層の液晶分子の配向方向とが平行になるように配置し、この位置を基準とする。電圧を印加すると液晶分子が偏光軸と所定の角度を持つようになるため、一方の偏光板を透過した偏光が他方の偏光板を透過して明状態となる。この電圧を印加した状態で液晶表示素子を回転させ暗状態にする。そして、このときの液晶表示素子を回転させた角度を測定する。液晶表示素子を回転させた角度が、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して平行に変化した角度である。
上述したように、第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域において、第2電極層が負極となるように電圧を印加したとき、液晶分子は、印加電圧の大きさに応じた角度で、単安定化状態からコーン上の一方の側に傾くので、実際に液晶表示素子を駆動している際、第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、液晶分子の方向がチルト角の約2倍変化するわけではない。
なお、第2配向層の第2配向パターンが設けられている領域において、「第1電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する」については、上記の第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域において、「第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する」ことと同様に考えればよいので、ここでの説明は省略する。
強誘電性液晶の相系列は、カイラルスメクチックC(SmC*)相を発現するものであれば特に限定されるものではない。例えば、相系列が、ネマチック(N)相−コレステリック(Ch)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、ネマチック(N)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、ネマチック(N)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、ネマチック(N)相−コレステリック(Ch)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化するもの、などを挙げることができる。特に、Ch相からSmA相を経由しないでSmC*相に相変化するものは、ハーフV字型スイッチング特性を示すものとして好適である。
一般に、図19下段に例示するようなSmA相を経由する相系列を有する強誘電性液晶は、相変化の過程において、スメクチック層の層間隔が縮まり、その体積変化を補償するためにスメクチック層が曲がったシェブロン構造を有し、この曲げの方向によって液晶分子の長軸方向が異なるドメインが形成され、その境界面にジグザグ欠陥やヘアピン欠陥と呼ばれる配向欠陥が発生しやすい。また一般に、図19上段に例示するようなSmA相を経由しない相系列を有する強誘電性液晶は、層法線方向の異なる二つの領域(ダブルドメイン)が発生しやすい。本実施態様においては、第1配向層と、第2配向層の第1配向パターンと、第2配向層の第2配向パターンとを所定の組み合わせとすることにより、このような配向欠陥を生じさせることなく、強誘電性液晶の配向を単安定化することができるのである。
このような強誘電性液晶としては、一般に知られる液晶材料の中から要求特性に応じて種々選択することができる。上述したように、Ch相からSmA相を経由しないでSmC*相を発現する液晶材料は、ハーフV字型スイッチング特性を示すものとして特に好適である。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製「R2301」が挙げられる。
また、SmA相を経由する液晶材料としては、材料選択の幅が広いことから、Ch相からSmA相を経由してSmC*相を発現するものが好ましい。この場合、SmC*相を示す単一の液晶材料を用いることもできるが、低粘度でSmC相を示しやすいノンカイラルな液晶(以下、ホスト液晶とする場合がある。)に、それ自身ではSmC相を示さないが大きな自発分極と適当な螺旋ピッチを誘起する光学活性物質を少量添加することにより、上記のような相系列を示す液晶材料が、低粘度であり、より速い応答性を実現できることから好ましい。
上記ホスト液晶としては、広い温度範囲でSmC相を示す材料であることが好ましく、一般に強誘電性液晶のホスト液晶として知られているものであれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、下記一般式:
Ra−Q1−X1−(Q2−Y1)m−Q3−Rb
(式中、RaおよびRbはそれぞれ、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基であり、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基等の置換基を有していてもよく、X1およびY1はそれぞれ、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−C≡C−または単結合であり、mは0または1である。)で表される化合物を使用することができる。ホスト液晶としては、上記化合物を1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記ホスト液晶に添加する光学活性物質としては、自発分極が大きく、適当な螺旋ピッチを誘起する能力を持った材料であれば特に限定されるものではなく、一般にSmC相を示す液晶組成物に添加する材料として知られるものを使用することができる。特に少量の添加量で大きな自発分極を誘起できる材料であることが好ましい。このような光学活性物質としては、例えば、下記一般式:
Rc−Q1−Za−Q2−Zb−Q3−Zc−Rd
(式中、Q1、Q2、Q3は上記一般式と同じ意味を表し、ZaおよびZbは−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−C≡C−、−CH=N−、−N=N−、−N(→O)=N−、−C(=O)S−または単結合であり、Rcは不斉炭素原子を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、Rdは不斉炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニルオキシ基であり、RcおよびRdはハロゲン原子、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい。)で表される化合物を使用することができる。光学活性物質としては、上記化合物を1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
SmA相を経由する強誘電性液晶として、具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製「FELIXM4851−100」などが挙げられる。
液晶層には、上記の強誘電性液晶の他に、液晶表示素子に求められる機能に応じて任意の機能を備える化合物が含有されていてもよい。このような化合物としては、重合性モノマーの重合物を挙げることができる。液晶層中にこのような重合性モノマーの重合物が含有されることにより、上記液晶材料の配列がいわゆる「高分子安定化」され、配向安定性に優れた液晶表示素子を得ることができる。
重合性モノマーの重合物に用いられる重合性モノマーとしては、重合反応により重合物を生じる化合物であれば特に限定されるものではなく、加熱処理により重合反応を生じる熱硬化性樹脂モノマー、および活性放射線の照射により重合反応を生じる活性放射線硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。中でも、活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂モノマーを用いる場合は、重合反応を生じさせるために加温処理をすることが必要であるので、このような加温処理により強誘電性液晶の規則的な配列が損なわれたり、相転移が誘起されてしまったりするおそれがある。一方、活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いる場合は、このようなおそれがなく、重合反応が生じることによって強誘電性液晶の配列が害されることが少ないからである。
活性放射線硬化性樹脂モノマーとしては、電子線の照射により重合反応を生じる電子線硬化性樹脂モノマー、および光照射により重合反応を生じる光硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。中でも、光硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。光硬化性樹脂モノマーを用いることにより、製造工程を簡略化できるからである。
光硬化性樹脂モノマーとしては、波長が150nm〜500nmの範囲内の光を照射することにより、重合反応を生じるものであれば特に限定されるものではない。中でも波長が250nm〜450nmの範囲内、特に300nm〜400nmの範囲内の光を照射することにより重合反応を生じる紫外線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。照射装置の容易性等の面において利点を有するからである。
紫外線硬化性樹脂モノマーが有する重合性官能基は、上記波長領域の紫外線照射により、重合反応を生じるものであれば特に限定されるものではない。特に、アクリレート基を有する紫外線硬化型樹脂モノマーを用いることが好ましい。
また、紫外線硬化性樹脂モノマーは、一分子中に一つの重合性官能基を有する単官能性モノマーであってもよく、また、一分子中に二つ以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーであってもよい。中でも、多官能性モノマーを用いることが好ましい。多官能性モノマーを用いることにより、より強いポリマーネットワークを形成することができるため、分子間力および配向膜界面におけるポリマーネットワークを強化することができる。これにより、温度変化による強誘電性液晶の配列の乱れを抑制することができる。
多官能性モノマーの中でも、分子の両末端に重合性官能基を有する2官能性モノマーが好ましく用いられる。分子の両端に重合性官能基を有することにより、ポリマー同士の間隔が広いポリマーネットワークを形成することができ、重合性モノマーの重合物を含むことによる強誘電性液晶の駆動電圧の低下を防止できるからである。
また、紫外線硬化性樹脂モノマーの中でも、液晶性を発現する紫外線硬化性液晶モノマーを用いることが好ましい。このような紫外線硬化性液晶モノマーが好ましい理由は次の通りである。すなわち、紫外線硬化性液晶モノマーは液晶性を示すことから、配向膜の配向規制力により規則的に配列することができる。このため、紫外線硬化性液晶モノマーを、規則的に配列した後に重合反応を生じさせることにより、規則的な配列状態を維持したまま固定化することができる。このような規則的な配列状態を有する重合物が存在することにより、強誘電性液晶の配向安定性を向上させることができ、優れた耐熱性および耐衝撃性を得ることができる。
紫外線硬化性液晶モノマーが示す液晶相としては、特に限定されるものではなく、例えば、N相、SmA相、SmC相を挙げることができる。
本発明に用いられる紫外線硬化性液晶モノマーとしては、例えば、下記式(20)、(21)、(23)に示す化合物を挙げることができる。
上記式(20)、(21)において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等の結合基を介して結合していてもよい。
また、上記式(23)おいて、Yは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。
上記の中でも、好適に用いられるものとして、下記式の化合物を例示することができる。
また、上記重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の異なる重合性モノマーを用いる場合には、例えば、上記式で示される紫外線硬化性液晶モノマーと他の紫外線硬化性樹脂モノマーとを用いることができる。
重合性モノマーとして紫外線硬化性液晶モノマーを用いた場合、重合性モノマーの重合物としては、主鎖に液晶性を示す原子団を有することにより主鎖が液晶性を示す主鎖液晶型重合物であってもよく、側鎖に液晶性を示す原子団を有することにより側鎖が液晶性を示す側鎖液晶型重合物であってもよい。中でも、重合性モノマーの重合物が側鎖液晶型重合物であることが好ましい。液晶性を示す原子団が側鎖に存在することにより、この原子団の自由度が高くなるため、液晶性を示す原子団が配向しやすくなるからである。また、その結果として強誘電性液晶の配向安定性を向上させることができるからである。
液晶層中における重合性モノマーの重合物の存在量は、強誘電性液晶の配列安定性を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されないが、通常、液晶層中に0.5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは1質量%〜20質量%、さらに好ましくは1質量%〜10質量%の範囲内である。上記範囲よりも多いと、駆動電圧の増加や、応答速度の低下を生じる場合があるからである。また、上記範囲よりも少ないと強誘電性液晶の配列安定性が不十分となり、液晶表示素子の耐熱性や耐衝撃性を損なってしまう可能性があるからである。
ここで、液晶層中における重合性モノマーの重合物の存在量は、液晶層中の単分子液晶を溶剤で洗い流した後、残存する重合性モノマーの重合物の重量を電子天秤で測量することによって求めた残存量と、上記液晶層の総質量とから算出することができる。
強誘電性液晶で構成される液晶層の厚みは、1.2μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.3μm〜2.5μm、さらに好ましくは1.4μm〜2.0μmの範囲内である。液晶層の厚みが薄すぎるとコントラストが低下するおそれがあり、逆に液晶層の厚みが厚すぎると強誘電性液晶が配向しにくくなる可能性があるからである。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができる。例えば、真空注入方式、液晶滴下方式等を用いることができる。
真空注入方式では、あらかじめ第1配向処理基板および第2配向処理基板を用いて作製した液晶セルに、強誘電性液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。この際、液晶層の厚みは、ビーズなどのスペーサにより調整することができる。
また液晶滴下方式では、第2配向処理基板の第2配向層上に、インクジェット法により強誘電性液晶を等方性液体の状態で吐出する。また、第1配向処理基板の周囲にシール剤を塗布する。次いで、第1配向処理基板および第2配向処理基板を、強誘電性液晶がネマチック相または等方相を示す温度まで加熱し、第1配向層および第2配向層の配向処理方向が略平行になるように対向させ、減圧下で重ね合わせて、シール剤を介して接着させる。これにより液晶層を形成することができる。
4.偏光板
本実施態様においては、第1配向処理基板および第2配向処理基板の外側に偏光板がそれぞれ設けられていてもよい。これにより、入射光が直線偏光となり、液晶分子の配向方向に偏光した光のみを透過させることができる。通常、各偏光板は、偏光軸が90°ねじれて配置される。これにより、電圧無印加状態と電圧印加状態とにおける液晶分子の光軸の方向や複屈折率の大きさを制御し、液晶分子を白黒シャッターとして用いることにより、明状態と暗状態とをつくることができる。例えば、電圧無印加状態では、第1配向処理基板側の偏光板の偏光軸を液晶分子の配向方向(第1配向層の配向処理方向)と揃うように設置することにより、第1配向処理基板側の偏光板を透過した偏光は方向を90°回転することができず、第2配向処理基板側の偏光板により遮断され、暗状態となる。これに対し、電圧印加状態では、液晶分子の配向方向が各偏光板の偏光軸に対し角度θ(望ましくはθ=45°)を持つようになるので、液晶分子により偏光の方向が回転して、偏光が第2配向処理基板側の偏光板を透過し、明状態となる。このように本発明の液晶表示素子は、強誘電性液晶を白黒シャッターとして用いるものであるので、応答速度を速くすることができるという利点を有する。そして、印加電圧により透過光量を制御することにより階調表示が可能となる。
本実施態様に用いられる偏光板は、光の波動のうち特定方向のみを透過させるものであれば特に限定されるものではなく、一般に液晶表示素子の偏光板として用いられているものを使用することができる。
5.液晶表示素子の駆動方法
本実施態様の液晶表示素子は、強誘電性液晶の高速応答性を利用することができるので、1画素を時間分割し、良好な動画表示特性を得るために高速応答性を特に必要とするフィールドシーケンシャルカラー方式による駆動が適している。
また、本発明の液晶表示素子の駆動方法は、フィールドシーケンシャル方式に限定されるものではなく、カラーフィルタ方式によりカラー表示を行ってもよい。
本実施態様の液晶表示素子は、強誘電性液晶が単安定性を示すので、TFTを用いたアクティブマトリックス方式により駆動させることが好ましい。TFT素子を用いたアクティブマトリックス方式を採用することにより、目的の画素を確実に点灯、消灯できるため高品質なディスプレイが可能となるからである。さらに、電圧変調により階調制御が可能になる。
TFTを用いたアクティブマトリックス方式の場合、第1配向処理基板および第2配向処理基板のいずれが、TFT基板であってもよく、共通電極基板であってもよい。
図20にTFTを用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子の一例を示す斜視図を示す。図20に例示するように、液晶表示素子1は、第1基材2上に共通電極(第1電極層3)が形成された共通電極基板(第1配向処理基板5)と、第2基材12上にTFT素子61がマトリックス状に配置され、ゲート電極62x、ソース電極62yおよび画素電極63が形成されたTFT基板(第2配向処理基板15)とを有している。ゲート電極62xおよびソース電極62yはそれぞれ縦横に配列しており、ゲート電極62xおよびソース電極62yに信号を加えることによりTFT素子61を作動させ、強誘電性液晶を駆動させることができる。ゲート電極62xおよびソース電極62yが交差した部分は、図示しないが絶縁層で絶縁されており、ゲート電極62xおよびソース電極62yの信号とは独立に動作することができる。ゲート電極62xおよびソース電極62yにより囲まれた部分は、液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素には少なくとも1つ以上のTFT素子61および画素電極63が形成されている。そして、ゲート電極およびソース電極に順次信号電圧を加えることにより、各画素のTFT素子を動作させることができる。なお、図20において、液晶層、第1配向層および第2配向層は省略されている。
また、本実施態様の液晶表示素子はセグメント方式による駆動も可能である。
6.液晶表示素子の製造方法
本実施態様の液晶表示素子は、液晶表示素子の製造方法として一般に用いられる方法により製造することができる。例えば、真空注入方式、液晶滴下方式等を用いることができる。
以下、本実施態様の液晶表示素子の製造方法の一例として、TFT素子を用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子の製造方法について説明する。
真空注入方式では、まず、第1基材上に、ゲート電極およびソース電極をマトリックス状に形成し、さらにTFT素子および画素電極を設置する。次いで、ゲート電極、ソース電極、TFT素子および画素電極上にポリイミドを印刷し、ラビング処理を施してラビング膜を形成する。このようにして得られる基板を第1配向処理基板とする。
次に、第2基材上に真空蒸着法により透明導電膜を成膜し、全面共通電極とする。次いで、共通電極層上に、フォトリソグラフィー法により隔壁をパターン状に形成する。次いで、隔壁で画定される所定の領域に、インクジェット法により光異性化型材料を塗布し、光配向処理を施して、光異性化型材料を含有する光配向膜をパターン状に形成する。次いで、隔壁で画定される所定の領域に、インクジェット法により光二量化型材料を塗布し、光配向処理を施して、光二量化型材料を含有する光配向膜をパターン状に形成する。これにより、光異性化型材料を含有する光配向膜からなる第1配向パターンと、光二量化型材料を含有する光配向膜からなる第2配向パターンとを有する第2配向層が得られる。このようにして得られる基板を第2配向処理基板とする。
次いで、一方の基板の周囲にシール剤を塗布し、第1配向処理基板および第2配向処理基板を、第1配向層および第2配向層の配向処理方向が略平行になるように対向させ、貼り合わせ、熱圧着させる。そして、注入口からキャピラリー効果を利用して強誘電性液晶を等方性液体の状態で注入し、注入口を紫外線硬化樹脂等により封鎖する。その後、強誘電性液晶を徐冷することにより配向させる。
また、液晶滴下方式では、まず、第1基材上に、ゲート電極およびソース電極をマトリックス状に形成し、さらにTFT素子および画素電極を設置する。次いで、ゲート電極、ソース電極、TFT素子および画素電極上にポリイミドを印刷し、ラビング処理を施してラビング膜を形成する。このようにして得られる基板を第1配向処理基板とする。
次に、第2基材上に真空蒸着法により透明導電膜を成膜し、全面共通電極とする。次いで、共通電極層上に、フォトリソグラフィー法により隔壁をパターン状に形成する。次いで、隔壁で画定される所定の領域に、インクジェット法により光異性化型材料を塗布し、光配向処理を施して、光異性化型材料を含有する光配向膜をパターン状に形成する。次いで、隔壁で画定される所定の領域に、インクジェット法により光二量化型材料を塗布し、光配向処理を施して、光二量化型材料を含有する光配向膜をパターン状に形成する。これにより、光異性化型材料を含有する光配向膜からなる第1配向パターンと、光二量化型材料を含有する光配向膜からなる第2配向パターンとを有する第2配向層が得られる。このようにして得られる基板を第2配向処理基板とする。
次に、第1配向処理基板を強誘電性液晶が等方相になる温度まで加熱し、この第1配向処理基板の第1配向層上に、インクジェット装置を用いて強誘電性液晶を等方性液体の状態で塗布する。次いで、第1配向処理基板および第2配向処理基板を、第1配向層および第2配向層の配向処理方向が略平行になるように対向させ、減圧下で重ね合わせて、シール剤を介して接着させる。
その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された強誘電性液晶を配向させる。
強誘電性液晶を配向させる際、強誘電性液晶に重合性モノマーが添加されている場合には、強誘電性液晶を配向させた後、重合性モノマーを重合させる。重合性モノマーの重合方法としては、重合性モノマーの種類に応じて適宜選択され、例えば、重合性モノマーとして紫外線硬化性樹脂モノマーを用いた場合は、紫外線照射により重合性モノマーを重合させることができる。
また、重合性モノマーを重合させる際には、強誘電性液晶で構成される液晶層に電圧を印加してもよく電圧を印加しなくてもよいが、中でも、液晶層に電圧を印加しない状態で重合性モノマーを重合させることが好ましい。
II.第2実施態様
次に、本発明の液晶表示素子の第2実施態様について説明する。
本実施態様の液晶表示素子は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、第1配向パターンおよび第2配向パターンからなる第1配向層とを有する第1配向処理基板、および、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成され、第1配向パターンおよび第2配向パターンからなる第2配向層とを有する第2配向処理基板を、上記第1配向層の第1配向パターンおよび上記第2配向層の第2配向パターンが対向し、上記第1配向層の第2配向パターンおよび上記第2配向層の第1配向パターンが対向するように配置し、上記第1配向層および上記第2配向層の間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、上記強誘電性液晶が、単安定性を示し、かつハーフV字型スイッチング特性を示すものであり、上記第1配向パターンがラビング膜からなるパターンであり、上記第2配向パターンが、反応性液晶用配向膜と、上記反応性液晶用配向膜上に形成され、反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層とからなるパターン、光二量化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与する光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、あるいは、光異性化反応を生じることにより配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンのいずれかであることを特徴とするものである。
本実施態様の液晶表示素子について図面を参照しながら説明する。
図21および図22は、本実施態様の液晶表示素子の一例を示す断面図である。
図21に例示する液晶表示素子1においては、第1基材2上に第1電極層3および第1配向層4が形成された第1配向処理基板5と、第2基材12上に第2電極層13および第2配向層14が形成された第2配向処理基板15とが対向しており、第1配向処理基板5の第1配向層4と第2配向処理基板15の第2配向層14との間には強誘電性液晶が挟持され、液晶層10が構成されている。第1配向層4は、第1配向パターン4aおよび第2配向パターン4bからなり、この第1配向パターン4aおよび第2配向パターン4b間には絶縁部28が形成されている。また、第2配向層14は、第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14bからなり、この第1配向パターン14aおよび第2配向パターン14b間にも絶縁部28が形成されている。第1配向パターン4a,14aはラビング膜からなるパターンであり、第2配向パターン4b,14bは、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、あるいは、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである。さらに、第1配向層4の第1配向パターン4aと第2配向層14の第2配向パターン14bとが対向し、第1配向層4の第2配向パターン4bと第2配向層14の第1配向パターン14aとが対向している。
また、図22に例示する液晶表示素子1においては、第1配向パターン4a,14aはラビング膜からなるパターンであり、第2配向パターン4b,14bは反応性液晶用配向膜17と反応性液晶層18とからなるパターンである。第1配向処理基板5では、第1電極層3上に隔壁16が形成され、この隔壁16上に第1配向パターン4aおよび反応性液晶用配向膜17が連続して形成され、反応性液晶用配向膜17上に反応性液晶層18が形成されている。また、第2配向処理基板15では、第2電極層13上に第1配向パターン14aおよび反応性液晶用配向膜17が連続して形成され、反応性液晶用配向膜17上に反応性液晶層18が形成されている。なお、他の構成は、図21に示す液晶表示素子と同様である。
強誘電性液晶は自発分極を有するので、強誘電性液晶と第1配向層表面および第2配向層表面との相互作用としての極性効果によって自発分極の向きが決まる。
本実施態様においては、第1配向層の第1配向パターンおよび第2配向パターンと、第2配向層の第1配向パターンおよび第2配向パターンとの間に、強誘電性液晶が挟持されている。
図21に示す例においては、第1配向層の第1配向パターンおよび第2配向層の第1配向パターンがラビング膜からなるパターンであり、第1配向層の第2配向パターンおよび第2配向層の第2配向パターンが、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、あるいは、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンであるので、それぞれの構成材料に応じて、第1配向パターンと第2配向パターンとを異なる極性を有するものとすることができる。
また、図22に示す例においては、第1配向層の第1配向パターンおよび第2配向層の第1配向パターンがラビング膜からなるパターンであり、第1配向層の第2配向パターンおよび第2配向層の第2配向パターンが反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターンであるので、それぞれの構成材料に応じて、第1配向パターンと第2配向パターンとを異なる極性を有するものとすることができる。
これにより、強誘電性液晶と第1配向パターンとの極性表面相互作用、および、強誘電性液晶と第2配向パターンとの極性表面相互作用が異なるものとなる。
上述したように、光二量化型材料を含有する光配向膜および反応性液晶層は、ラビング膜に比べて相対的に正極性が強い傾向にあると考えられる。そのため、第2配向パターンが光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである場合には、電圧無印加状態において、第1配向パターン(ラビング膜)と第2配向パターン(光二量化型材料を含有する光配向膜)とでは、光二量化型材料を含有する光配向膜側が正極性、ラビング膜側が負極性となると想定される。また、第2配向パターンが、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターンである場合には、電圧無印加状態において、第1配向パターン(ラビング膜)と第2配向パターン(反応性液晶用配向膜および反応性液晶層)とでは、反応性液晶層側が正極性、ラビング膜側が負極性となると想定される。したがって、これらの場合には、自発分極の正極を第1配向パターン(ラビング膜)側に向かせることができる。
すなわち、図23に例示するように、第1配向層の第1配向パターン4aが設けられている領域23では、液晶分子LCの自発分極Psの正極(+)を第1配向層の第1配向パターン4a側に向かせることができる。一方、第1配向層の第2配向パターン4bが設けられている領域24では、液晶分子LCの自発分極Psの正極(+)を第2配向層の第1配向パターン14a側に向かせることができる。
また、上述したように、ラビング膜は、光異性化型材料を含有する光配向膜に比べて相対的に正極性が強い傾向にあると考えられる。そのため、第2配向パターンが光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである場合には、電圧無印加状態において、第1配向パターン(ラビング膜)と第2配向パターン(光異性化型材料を含有する光配向膜)とでは、ラビング膜側が正極性、光異性化型材料を含有する光配向膜側が負極性となると想定される。したがって、自発分極の正極を第2配向パターン(光異性化型材料を含有する光配向膜)側に向かせることができる。
すなわち、図24に例示するように、第1配向層の第1配向パターン4aが設けられている領域23では、液晶分子LCの自発分極Psの正極(+)を第2配向層の第2配向パターン14b側に向かせることができる。一方、第1配向層の第2配向パターン4bが設けられている領域24では、液晶分子LCの自発分極Psの正極(+)を第1配向層の第2配向パターン4b側に向かせることができる。
このように第1配向パターンおよび第2配向パターンの表面極性を考慮して、第1配向パターンおよび第2配向パターンを所定の組み合わせとすることにより、自発分極の向きを制御することができる。これにより、第1配向層の第1配向パターンまたは第2配向パターンが設けられている領域毎に自発分極の向きを反転させることができ、極性反転駆動が可能となる。
また、強誘電性液晶においては、液晶分子の方向と、自発分極の向きと、層法線の方向とは、所定の関係にあるので、液晶分子の方向および自発分極の向きにより、層法線の方向が決まる。したがって、第1配向層の第1配向パターンおよび第2配向パターンがそれぞれ設けられている領域では、自発分極の向きを一定の方向に揃えることにより、配向欠陥の発生を抑制し、モノドメイン配向を得ることができる。
さらに、第1配向パターンにラビング膜を用いることにより、ジグザグ欠陥やヘアピン欠陥の発生を効果的に抑制することが可能である。
以下、本実施態様の液晶表示素子における各構成について説明する。なお、偏光板、液晶表示素子の駆動方法、および液晶表示素子の製造方法については、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
1.第1配向処理基板
本実施態様における第1配向処理基板は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、第1配向パターンおよび第2配向パターンからなる第1配向層とを有するものである。第1配向パターンは、ラビング膜からなるパターンであり、第2配向パターンは、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターン、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、あるいは、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンのいずれかである。
なお、第1基材、第1電極層、ラビング膜、反応性液晶用配向膜、反応性液晶層、光二量化型材料を含有する光配向膜、光異性化型材料を含有する光配向膜、第1配向パターンおよび第2配向パターンの形状、ならびに、第1配向パターンおよび第2配向パターンの形成方法等については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
第1配向処理基板においては、第1電極層と第1配向層との間に濡れ性変化層が形成され、この濡れ性変化層表面に、撥液性領域および親液性領域からなる濡れ性変化パターンが形成されていてもよい。この場合、親液性領域上にのみ第1配向層が形成される。
なお、濡れ性変化層については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
第1電極層と第1配向層との間、および、第2電極層と第2配向層との間に、濡れ性変化層がそれぞれ形成されている場合には、第1配向処理基板の第1基材と濡れ性変化層との間、および、第2配向処理基板の第2基材と濡れ性変化層との間の少なくともいずれか一方に、パターン状の遮光部が形成され、第1配向処理基板および第2配向処理基板の濡れ性変化層の撥液性領域が遮光部が設けられている領域に配置されていることが好ましい。これにより、撥液性領域での強誘電性液晶の配向乱れによる光漏れを防ぐことができるからである。
上記遮光部は、第1配向処理基板または第2配向処理基板のいずれか一方に設けられていてもよく、第1配向処理基板および第2配向処理基板の両方に設けられていてもよい。
また、第1配向処理基板においては、第1配向パターンおよび第2配向パターンの間に絶縁部が形成され、この絶縁部表面が撥液性領域、絶縁部の開口部内の層表面が親液性領域となっていてもよい。この場合、親液性領域上にのみ第1配向層が形成される。
なお、絶縁部については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
第1配向層の第1配向パターンおよび第2配向パターンの間、ならびに、第2配向層の第1配向パターンおよび第2配向パターンの間に絶縁部がそれぞれ形成されている場合には、第1配向処理基板の絶縁部および第2配向処理基板の絶縁部の少なくともいずれか一方が遮光部であることが好ましい。これにより、上述したように、撥液性領域での強誘電性液晶の配向乱れによる光漏れを防ぐことができるからである。
上記絶縁部は、第1配向処理基板または第2配向処理基板のいずれか一方に設けられていてもよく、第1配向処理基板および第2配向処理基板の両方に設けられていてもよい。
さらに、第1配向処理基板においては、第1配向パターンおよび第2配向パターンの間に隔壁が形成されていてもよい。
なお、隔壁については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記隔壁は、第1配向処理基板または第2配向処理基板のいずれかに形成される。
また、第1配向処理基板においては、第1基材と第1電極層との間に着色層が形成されていてもよい。
なお、着色層については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.第2配向処理基板
本実施態様における第2配向処理基板は、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成され、第1配向パターンおよび第2配向パターンからなる第2配向層とを有するものである。第1配向パターンは、ラビング膜からなるパターンであり、第2配向パターンは、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターン、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、あるいは、光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンのいずれかである。
なお、第2配向処理基板の各構成については、上記第1配向処理基板と同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.液晶層
本実施態様における液晶層は、第1配向処理基板の第1配向層および第2配向処理基板の第2配向層の間に強誘電性液晶を挟持させることにより構成されている。
本実施態様において、第2配向パターンが、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、あるいは、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターンである場合、強誘電性液晶は、第2配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して平行に強誘電性液晶のチルト角の約2倍変化するものであることが好ましい。
上述したように、電圧無印加状態では、極性表面相互作用によって、液晶分子の自発分極の正極が第1配向パターン側(ラビング膜側)を向く傾向にある。そして、第1配向パターン側(ラビング膜側)の電極が正極、第2配向パターン側(光二量化型材料を含有する光配向膜あるいは反応性液晶層側)の電極が負極となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響により、液晶分子の自発分極の正極は第2配向パターン側(光二量化型材料を含有する光配向膜あるいは反応性液晶層側)を向くようになる。次いで、第1配向パターン側(ラビング膜側)の電極が負極、第2配向パターン側(光二量化型材料を含有する光配向膜あるいは反応性液晶層側)の電極が正極となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子の自発分極の正極は第1配向パターン側(ラビング膜側)を向くようになる。この場合、自発分極の向きは、電圧無印加状態と同様になる。
電圧無印加状態あるいは第2配向パターン側の電極への正極性の電圧印加状態から、第2配向パターン側の電極への負極性の電圧印加状態としたとき、この印加電圧の負極性と、液晶分子の自発分極の負極性との反発によって、図17に例示するように、液晶分子LCが角度約2θ回転する。すなわち、第2配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が、第1配向処理基板面に対して平行に、強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する。
第2配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したとき、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化するものは70%以上存在することが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
なお、上記の比率の測定方法については、上記第1実施態様に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、第2配向パターンが、光二量化型材料を含有する光配向膜からなるパターン、あるいは、反応性液晶用配向膜と反応性液晶層とからなるパターンである場合に、「第2配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する」ことについては、上記第1実施態様において、第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域にて、「第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する」ことと同様に考えればよいので、ここでの説明は省略する。
一方、本実施態様において、第2配向パターンが光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである場合、強誘電性液晶は、第1配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して平行に強誘電性液晶のチルト角の約2倍変化するものであることが好ましい。
上述したように、電圧無印加状態では、極性表面相互作用によって、液晶分子の自発分極の正極が第2配向パターン側(光異性化型材料を含有する光配向膜側)を向く傾向にある。そして、第1配向パターン側(ラビング膜側)の電極が負極、第2配向パターン側(光異性化型材料を含有する光配向膜側)の電極が正極となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響により、液晶分子の自発分極の正極は第1配向パターン側(ラビング膜側)を向くようになる。次いで、第1配向パターン側(ラビング膜側)の電極が正極、第2配向パターン側(光異性化型材料を含有する光配向膜側)の電極が負極となるように電圧を印加すると、印加電圧の極性の影響によって、液晶分子の自発分極の正極は第2配向パターン側(光異性化型材料を含有する光配向膜側)を向くようになる。この場合、自発分極の向きは、電圧無印加状態と同様になる。
電圧無印加状態あるいは第1配向パターン側の電極への正極性の電圧印加状態から、第1配向パターン側の電極への負極性の電圧印加状態としたとき、この印加電圧の負極性と、液晶分子の自発分極の負極性との反発によって、図17に例示するように、液晶分子LCが角度約2θ回転する。すなわち、第1配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が、第1配向処理基板面に対して平行に、強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する。
第1配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したとき、強誘電性液晶の分子方向がチルト角の約2倍変化するものは70%以上存在することが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
なお、上記の比率の測定方法については、上記第1実施態様に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、第2配向パターンが光異性化型材料を含有する光配向膜からなるパターンである場合に、「第1配向パターン側の電極が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する」ことについては、上記第1実施態様において、第2配向層の第1配向パターンが設けられている領域にて、「第2電極層が負極となるように電圧を印加したときに、強誘電性液晶の分子方向が第1配向処理基板面に対して強誘電性液晶のチルト角θの約2倍変化する」ことと同様に考えればよいので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。