JP5069621B2 - バランサー装置およびそれを用いた上げ下げ障子 - Google Patents

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本発明は、上下に開閉する上げ下げ障子において、上げ下げ障子の重量とバランスする保持力を発生させ、障子を軽い力で開閉させたり、任意の位置に停止保持できるようにしたバランサー装置およびそれを用いた上げ下げ障子に関するものである。
上げ下げ障子は、上下に開閉する際、開閉操作をする人に障子の大きな荷重が作用するので、開閉力を軽減させるためにバランサー装置が設けられている。バランサー装置としてねじ部を有するスパイラルロッドとトーションばねを用いた装置(例えば特許文献1参照)は、障子の移動によりスパイラルロッドを直進動させてトーションばねを巻き込み、障子を任意の位置で停止させたときはトーションばねの発生するトルクをスパイラルロッドに作用させて障子をその位置に保持できるという保持機能を有しており、簡単な構成の装置として広く用いられている。一方、最近の障子は、気密・水密性を高めるため、軟質性プラスチック材料等の有機系材料で作った気密・水密部材を閉鎖状態で障子框に密着させて気密・水密性を維持する構造になっている。ところが、一般にこのような有機系材料は障子の框に吸着しやすいので、閉鎖状態から障子を開くときの操作力として、通常の開き力の他に、気密・水密部材との摩擦抵抗に打ち勝つための力と、気密・水密部材との吸着を引き剥がすための力が必要となり、開き始めの際に大きな力が要求されことがある。一部の引戸(障子)、引き違い戸(障子)においても、閉鎖状態の戸(障子)を開き始めるための力が大きくなる場合があるので、この操作力を低減するためハンドルや取っ手と連動するアシスト装置が用いられている。しかし、上げ下げ障子は障子の框の一部が取っ手になっているものが多く、上記のような引戸や引き違い戸と同じようなアシスト装置を設けることはむずかしい。
また、上記特許文献1にも示されているように、開放状態(上方位置)から障子を閉めるときスパイラルロッドを引き出す長さが長くなるにつれてトーションばねが巻き込まれてスパイラルロッドに作用するトルクが増大するので、障子の操作力をほぼ一定にするように、上記スパイラルロッドのリード(捻りピッチ)は、閉め始めのリード長さを小さくし、引き出し途中では次第にリード長さを長く形成し、そのまま閉鎖状態(下方位置)に至るようにスパイラルロッドの始端側から終端側に向かってリード長さを変化させてある。そのため、閉鎖状態ではスパイラルロッドのリード長さは最大リード長さになっているから、閉鎖状態から障子を上方に持ち上げて障子を開くとき、トーションばねからスパイラルロッドに作用するトルクは、スパイラルロッドを押し上げる分力が小さく、操作力の軽減にはあまり役立っていない。
実開昭59−171182号公報(実用新案登録請求の範囲、第2図)
本発明の解決課題は、上記のようなバランサー装置において、閉鎖状態の上げ下げ障子を開き始めるときに必要とされる操作力はできるだけ小さく(軽く)し、開き始めてから開き終わるまでの操作力及び開いた状態の障子を閉じるときの操作力は従来のバランサー装置の操作力と同程度で障子を任意の位置で停止保持できるバランサー装置を提供することである。
本発明によれば、筒状のケースと、該ケースの先端側に回転可能に設けられスリットを有する筒状の回転ガイドと、該回転ガイドのスリットに螺合状態で貫通するねじ部を有し上記ケースから引き出し可能に設けられたスパイラルロッドと、該スパイラルロッドの外周に嵌挿され一端を上記ケースの基端側に固定し他端を上記回転ガイドに連結したトーションばねを具備するバランサー装置において、上記スパイラルロッドのねじ部のリードを、該スパイラルロッドの引き出し始めの始端側区帯から引き出し終わりの終端側区帯に向かって、始端側区帯のリード長さを引き出し途中区帯のリード長さより小さく形成し、引き出すにつれてリード長さを大きく形成し、終端側区帯のリード長さを引き出し途中の最大リード長さよりも小さく形成したことを特徴とするバランサー装置が提供され、好ましくは上記スパイラルロッドは終端側区帯の0.5〜2リードの部分で引き出し途中の最大リード長さよりも小さく形成されている上記バランサー装置が提供され、上記課題が解決される。
本発明は上記のように構成され、障子を開放状態から閉鎖するとき、障子の移動に伴って筒状のケースから引き出されるスパイラルロッドのねじ部のリードは、該スパイラルロッドの引き出し始めの始端側区帯から引き出し終わりの終端側区帯に向かって、始端側区帯のリード長さが引き出し途中区帯のリード長さより小さく形成され、引き出すにつれてリード長さが大きくなり、終端側区帯のリード長さは引き出し途中の最大リード長さよりも小さく形成されているから、障子が閉鎖した状態でスパイラルロッドは、最大リード長さより小さいリード部分が回転ガイドに対応している。したがって、閉鎖状態の障子を開き始めるときのスパイラルロッドのリードは、最大リード長さよりも小さいので、トーションばねからのトルクはスパイラルロッドに大きく作用し、かつ該スパイラルロッドを押し上げる(引き上げる)方向に分力が大きく作用し、上げ下げ障子の開き始めの操作力を軽減することができる。
なお、上記のような構成上、障子を閉鎖するときは従来の障子よりも大きな力を必要とすることになる。しかし、開閉操作する人が上げ下げ障子を閉じるときは、障子を動かし始めるとイナーシャが発生し、また閉鎖間際では操作する人の体重を障子にかけることもできるので、障子に無理なく大きな操作力を加えることが可能であり、多少操作力が大きく(重く)なっても閉鎖間際で重くなったと感じさせない。逆に、障子を開くとき、開き始めは操作する人の体重をかけられないし、静止状態の障子を移動させる際、初動力を必要とするから、操作力が僅かでも違うと、操作力がかなり変わったと感じる。そこで、本発明によれば、上記したように、スパイラルロッドの終端側区帯のリード長さを小さくすることにより、障子を開くときの最初の段階でスパイラルロッドを引き上げるような大きなトルクがスパイラルロッドに作用するようにしたから、障子を操作している人に一層軽くなったような感じを与えることができる。ただし、上記のような構成上、障子が閉鎖した状態で障子には従来のバランサー装置よりも開放方向へ大きな引き上げ力が常に作用していることになるが、この引き上げ力は気密・水密部材との摩擦力や気密・水密部材との吸着力とバランスする力を考慮して障子が自然に開かないように定めればよい。障子が気密・水密部材から離れるのは開放操作の初期の段階であるから、上記スパイラルロッドの終端側区帯の0.5〜2リード部分のリード長さを引き出し途中の最大リード長さよりも小さく形成しておけば、気密・水密部材から離れるのに充分なことが多く、またこの程度ならば障子が閉鎖した状態でトーションばねから発生するトルクにより障子が簡単に引き上がらないようにすることが容易である。
本発明のバランサー装置は、各種の開閉機構、上げ下げ機構、その他の適宜の機構の適所に採用することができるが、図1、図2には、上げ下げ障子に適用した実施例が示されている。
図において、窓枠1内に設けられた障子2は、縦枠3に沿って上下動可能に設けられ、図1は障子が上昇して開口位置にある状態を示し、図2は障子が降下して閉鎖位置にある状態を示している。
上記障子2の荷重とバランスするように、上記窓枠1と障子2間にはバランサー装置4が設けられている。該バランサー装置4は、図3に示すように上記縦枠3にピン5等で取付けられる筒状のケース6を有し、該ケース6の外面には適宜のカバー7が設けられている。
上記ケースの先端には筒状の回転ガイド8が抜け止め状態で回転可能に設けられ、該回転ガイドにはスリット10が形成され、該スリット10にはスパイラルロッド9のねじ部11が螺合状態で貫通している。該スパイラルロッド9は、上記ケース6から引き出し可能に設けられ、後端に向け止め用のピン12を有し、先端には上記障子2に連結するための取付ピン13が設けられている。なお、ケース6を障子2側に連結し、スパイラルロッド9を窓枠1側に連結してもよい。
上記回転ガイド8とケース6の基端に固定したアンカー14には、スパイラルロッド9の外周に嵌挿したトーションばね15が連結されている。この構成により上記回転ガイド8が回転すると、その回転方向により上記トーションばね15は巻き込まれたり、巻き戻されたりして、巻き込み量が変化し、トルクが変化すると同時に全長が伸縮するが、この全長の伸縮による引張り力の変化は筒状のケース1内で吸収され、トルクの変化のみが回転ガイド8を介して上記スパイラルロッド9に作用する。なお、上記スパイラルロッド9は、取付ピン13と障子2の間にトーションばねの巻き込み量を調整する調整機構(図示略)等を設けて固定されているから、スパイラルロッドは回転方向に拘束され、障子の上下移動と共にトーションばねの発生トルクの作用を回転ガイドを介して受ながら上下方向のみに、ケースから引き出されたり、引き込まれたりする。
上記スパイラルロッド9は、一般に、金属材料製の平板材料を捻ってねじ部11を形成してある。このねじ部11のリードは、該スパイラルロッド9の引き出し始めの始端側区帯16から引き出し終わりの終端側区帯17に向かって、始端側区帯16のリード長さを引き出し途中区帯18のリード長さより小さく形成し、引き出すにつれて連続的にリード長さを大きく形成し、終端側区帯17のリード長さを引き出し途中区帯18の最大リード長さよりも小さく形成してある。なお、上記引き出し途中区帯18のリードは、必ずしも引き出し途中区帯の全長に渡って連続的に大きく形成しなくてもよい。例えば、終端側に向かって途中でリード長さを一定にしたり、小さくしたり、複数回リードを徐徐に変化させたりして多種多様の上げ下げ障子の特性に合わせたスパイラルロッドとすることができる。このように特性に合わせることにより、障子の操作力を一定に近づけたり、任意位置に障子を停止させたとき障子が垂れ下がったり、跳ね上がったりすることを防止することができる。
上記引き出し途中区帯18の最大リード長さよりも小さく形成する終端側区帯17は、適宜のリード数とすることができるが、通常、気密・水密部材と障子框が接する距離はわずかであるので、好ましくは、上記スパイラルロッド9の終端側の約0.5〜2リード部分とすると、気密・水密部材と障子框が接する距離に対応させることができ、スムーズに操作することできる。
上記スパイラルロッド9のリードの大きさは、障子の重量(大きさ)、閉鎖位置と全開位置の開き長さ、トーションばねの特性その他の条件により変化するので具体的な数値で特定することはむずかしいが、一例として示せば、図4に示すように全長約560mmのスパイラルロッドにおいて、始端側区帯16のリード長さ約38mmとし、途中区帯18のリード長さを連続的に次第に大きくして最大リード長さ19を87mmとし、終端側区帯17のリード長さを35mmとすると、後記するように軽い操作力で障子を開閉することができた。
上記の構成により、閉鎖状態の障子2を開く瞬間は、スパイラルロッド9の引き出し終わりの約0.5から2リード部分を最大リード長さよりも小さいリード長さにしてあるため、トーションばね15の発生トルクが大きくスパイラルロッド9に作用し、スパイラルロッド9は押し上げる方向に作用する大きな分力を受けて上方に引き上げられる。そのため、気密・水密部材による摩擦抵抗と、気密・水密部材と障子の吸着により上記障子にかかる重量に抗して、軽い操作力で障子を開き始めることができる。そして、障子が開き始めてからは、障子の重量にバランスするようにスパイラルロッドのリード長さが大きい状態から連続的に小さく形成されているから、小さい(軽い)操作力で障子を全開口することができる。全開した状態では、スパイラルロッドのねじ部のリード長さは、上記のように小さく形成されているから、トーションばねから発生するトルクにより回転ガイド8及びスパイラルロッド9を介して障子2は開放位置に確実に保持され、垂れ下がるおそれはない。
上記障子を閉じる場合は、従来のバランサー装置と同じように、閉じ始めから閉鎖近くまでは軽い操作力で障子を移動させることができる。閉鎖間際では、気密・水密部材の摩擦抵抗が生じるとともに上記スパイラルロッド9の終端側区帯17のねじ部のリード長さを途中区帯18の最大リード長さよりも小さく形成してあるためトーションばね15を従来のバランサー装置の場合よりも余分に巻き込む力が必要になり、この力に打ち勝って障子を下方に移動させなければならない。しかし、上述したように、上げ上げ障子の構造上、障子の閉鎖間際では、操作する人の体重を閉じ力に付加させることができるから、障子の閉鎖力が多少大きくなったことを感じさせないで、閉鎖することができる。
障子を全開した状態の正面図。 障子を全閉した状態の正面図。 バランサー装置の一部省略断面図。 スパイラルロッドの一実施例を示す一部省略正面図。
符号の説明
1 窓枠
2 障子
3 縦枠
4 バランサー装置
6 ケース
8 回転ガイド
9 スパイラルロッド
15 トーションばね

Claims (4)

  1. 筒状のケースと、該ケースの先端側に回転可能に設けられスリットを有する筒状の回転ガイドと、該回転ガイドのスリットに螺合状態で貫通するねじ部を有し上記ケースから引き出し可能に設けられたスパイラルロッドと、該スパイラルロッドの外周に嵌挿され一端を上記ケースの基端側に固定し他端を上記回転ガイドに連結したトーションばねを具備するバランサー装置において、上記スパイラルロッドのねじ部のリードを、該スパイラルロッドの引き出し始めの始端側区帯から引き出し終わりの終端側区帯に向かって、始端側区帯のリード長さを引き出し途中区帯のリード長さより小さく形成し、引き出すにつれてリード長さを大きく形成し、終端側区帯のリード長さを引き出し途中区帯の最大リード長さよりも小さく形成したことを特徴とするバランサー装置。
  2. 上記スパイラルロッドは終端側区帯の0.5〜2リードの部分で引き出し途中区帯の最大リード長さよりも小さく形成されている請求項1に記載のバランサー装置。
  3. 上記スパイラルロッドの途中区帯のリード長さは、終端側区帯に向かって連続的に大きく形成されている請求項1または2に記載のバランサー装置。
  4. 上記請求項1から3のいずれかに記載のバランスー装置を使用した上げ下げ障子。
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