アニオン性基含有ポリマー(A)は、前述のように、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A2)、およびポリイソシアネート化合物(A3)を反応して得られるアニオン性基含有ポリマーである。
[アニオン性基非含有・複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1)]
アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1)」と称する場合がある)は、分子内にアニオン性基を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。該イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などが挙げられる。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、イソシアネート反応性化合物(A1)としては、例えば、アニオン性基非含有ポリオール化合物、アニオン性基非含有ポリアミン化合物、アニオン性基非含有ポリチオール化合物(好ましくは、アニオン性基非含有ポリオール化合物やアニオン性基非含有ポリアミン化合物)などを用いることができ、特にアニオン性基非含有ポリオール化合物(アニオン性基非含有で且つ複数のヒドロキシル基を含有する化合物)を好適に用いることができる。イソシアネート反応性化合物(A1)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性化合物(A1)としてのアニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)(以下、「ポリオール(A1)」と称する場合がある)としては、例えば、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油などが挙げられる。
ポリオール(A1)において、多価アルコールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール(1,4−ブタンジオール)、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが含まれる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。一方、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。具体的には、多価アルコールとホスゲンとの反応物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。また、環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
ポリオレフィンポリオールは、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい。
ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリレートを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルなど]が好適に用いられる。
なお、ポリオレフィンポリオールやポリアクリルポリオールにおいて、分子内にヒドロキシル基を導入するために、オレフィンや(メタ)アクリレートの共重合成分として、ヒドロキシル基を有するα,β−不飽和化合物[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど]を用いることができる。
また、ポリオール(A1)としては、分子内に第3級アミノ基を有するポリオール(「第3級アミノ基含有ポリオール」と称する場合がある)も用いることができる。このような第3級アミノ基含有ポリオールとしては、分子内に少なくとも1つの第3級アミノ基を含有しており、かつ分子内に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であれば特に制限されない。第3級アミノ基含有ポリオールにおいて、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)としては、炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基など)等の置換基を有することにより、第3級アミノ基を形成していてもよい。該炭化水素基は、さらに他の置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)を有していてもよい。第3級アミノ基含有ポリオールにおける分子内の第3級アミノ基の数としては、特に制限されず、例えば、1〜6の範囲から選択することができ、好ましくは1〜3(さらに好ましくは1又は2、特に1)であることが好適である。このように、第3級アミノ基含有ポリオールは、第3級アミノ基を分子内に複数有していてもよいが、1つのみ有していていることが特に好ましい。なお、複数の第3級アミノ基を有している場合、第3級アミノ基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。
また、第3級アミノ基含有ポリオールにおける分子内のヒドロキシル基の数としては、少なくとも2つであれば特に制限されないが、例えば、1〜6(好ましくは1〜3)の範囲から選択することができ、特に2であることが好適である。第3級アミノ基含有ポリオールにおいて、ヒドロキシル基は、第3級アミノ基の窒素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基[ポリ(アルキレンオキシ)−アルキレン基]等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。
第3級アミノ基含有ポリオールは、第3級アミノ基が各種有機基に結合している形態を有している。第3級アミノ基が結合している有機基としては、特に制限されないが、炭化水素基が好適である。このような炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基など)、脂環式炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基など)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基など)などが挙げられる。炭化水素基は、置換基を1種又は2種以上有していてもよく、該置換基としては、例えば、他の炭化水素基、イソシアネート反応性基(例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基など)や、非イソシアネート反応性基(例えば、第3級アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)などが挙げられる。
具体的には、第3級アミノ基含有ポリオールとしては、例えば、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−プロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−イソプロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−n−ブチルアミン等のN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)−N−アルキルアミン;N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−プロピルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−イソプロピルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−n−ブチルアミン等のN,N−ビス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]−N−アルキルアミンなどのN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−アルキルアミンや、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−フェニルアミン等のN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)−N−アリールアミン;N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−フェニルアミン等のN,N−ビス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]−N−アリールアミンなどのN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−アリールアミン;これらに対応するN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−シクロアルキルアミンなどが挙げられる。
また、第3級アミノ基含有ポリオールとしては、例えば、N,N,N−トリス(ヒドロキシメチル)アミン、N,N,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N,N−トリス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N,N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N,N−トリス(4−ヒドロキシブチル)アミン等のN,N,N−トリス(ヒドロキシアルキル)アミン;N,N,N−トリス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]アミン、N,N,N−トリス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]アミン、N,N,N−トリス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]アミン、N,N,N−トリス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]アミン、N,N,N−トリス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]アミン等のN,N,N−トリス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]アミンなどのN,N,N−トリス(ヒドロキシ−有機基)アミンなども用いることができる。さらにまた、第3級アミノ基含有ポリオールとしては、例えば、N,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシメチル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(4−ヒドロキシブチル)エチレンジアミン等のN,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシ−アルキル)アルキレンジアミンなどのN,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシ−有機基)アルキレンジアミンなども用いることができる。
ポリオール(A1)としては、多価アルコール、第3級アミノ基含有ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを好適に用いることができる。
なお、本発明では、ポリオール(A1)としてポリテトラメチレングリコールを用いることにより、優れた接着強さを効果的に発揮することができる固形接着剤を得ることができる。従って、ポリオール(A1)としては、ポリテトラメチレングリコールを好適に用いることができる。
また、ポリオール(A1)としてN−メチルジエタノールアミン等の第3級アミノ基含有ポリオールを用いることにより、優れたタック力を迅速に発揮することができる固形接着剤を得ることができる。従って、ポリオール(A1)としては、第3級アミノ基含有ポリオール(特に、N−メチルジエタノールアミン)を好適に用いることができる。
なお、イソシアネート反応性化合物(A1)としての、アニオン性基非含有ポリアミン化合物(A1)やアニオン性基非含有ポリチオール化合物(A1)としては、例えば、前記例示のアニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)に対応するアニオン性基非含有ポリアミン化合物やアニオン性基非含有ポリチオール化合物などが挙げられる。
具体的には、アニオン性基非含有ポリアミン化合物(A1)(以下、「ポリアミン(A1)」と称する場合がある)としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、ヒドラジン及びその誘導体などが挙げられる。前記脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,2−ブチレンジアミン、2,3−ブチレンジアミン、1,3−ブチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンの他、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。
脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−4−アミノメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−3−アミノメチルシクロヘキサン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、メチル−2,3−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,6−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ジアミンなどが挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、4,4´−ジフェニルジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、2,4´−ジフェニルメタンジアミン、4,4´−ジフェニルエ−テルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジアミン、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジアミン、4,4´−ジフェニルプロパンジアミン、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジアミン等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,3−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,4−キシリレンジアミン、ω,ω´−ジアミノ−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルアミノメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
ヒドラジン及びその誘導体としては、例えば、ヒドラジンや、ジヒドラジド系化合物などが挙げられる。ジヒドラジド系化合物には、例えば、カルボジヒドラジド(カルボヒドラジド)、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヒドラジドなどの脂環式ジカルボン酸ジヒドラジド類などが挙げられる。
ポリアミン(A1)としては、エチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,3−キシリレンジアミン等の脂肪族、脂環式及び芳香脂肪族ポリアミンや、ヒドラジン、カルボジヒドラジド等のヒドラジン及びその誘導体を好適に用いることができる。
特に本発明では、イソシアネート反応性化合物(A1)としては、数平均分子量が500以上のイソシアネート反応性化合物(A1-1)と、数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物(A1-2)とを組み合わせて用いることが好適である。このように高分子量のイソシアネート反応性化合物(A1-1)と、低分子量のイソシアネート反応性化合物(A1-2)とを組み合わせて用いることにより、より一層コンタクト接着性を高めることができる。
数平均分子量が500以上のイソシアネート反応性化合物(A1-1)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1-1)」と称する場合がある)の数平均分子量としては、500以上であれば上限は特に制限されないが、例えば、500〜10000の範囲であることが好ましい。より好ましい数平均分子量としては、500〜3000である。イソシアネート反応性化合物(A1-1)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性化合物(A1-1)としては、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1-1)がアニオン性基非含有ポリオール化合物(以下、「ポリオール化合物(A1-1)」と称する場合がある)である場合、前記例示のアニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)の中から数平均分子量が500以上のものを用いることができる。より具体的には、イソシアネート反応性化合物(A1-1)としてのポリオール化合物(A1-1)としては、前記例示のうち、数平均分子量が500以上のポリエーテルポリオール、数平均分子量が500以上のポリエステルポリオール、数平均分子量が500以上のポリカーボネートポリオール、数平均分子量が500以上のポリオレフィンポリオール、数平均分子量が500以上のポリアクリルポリオール、数平均分子量が500以上の第3級アミノ基含有ポリオールなどが挙げられる。
また、数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物(A1-2)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1-2)」と称する場合がある)の数平均分子量としては、500未満であれば下限は特に制限されないが、例えば、48以上500未満の範囲であることが好ましい。より好ましい数平均分子量としては、62〜300である。イソシアネート反応性化合物(A1-2)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性化合物(A1-2)としては、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1-2)がアニオン性基非含有ポリオール化合物(以下、「ポリオール化合物(A1-2)」と称する場合がある)である場合、前記例示のアニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)の中から数平均分子量が500未満のものを用いることができる。より具体的には、イソシアネート反応性化合物(A1-2)としてのポリオール化合物(A1-2)としては、前記例示の多価アルコール[例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)など]や、数平均分子量が500未満のポリエーテルポリオール、数平均分子量が500未満のポリエステルポリオール、数平均分子量が500未満のポリカーボネートポリオール、数平均分子量が500未満のポリオレフィンポリオール、数平均分子量が500未満のポリアクリルポリオール、数平均分子量が500未満の第3級アミノ基含有ポリオールなどが挙げられる。
本発明では、イソシアネート反応性化合物(A1-2)としては、数平均分子量が500未満のアニオン性基非含有ポリアミン化合物(A1-2)(以下、「ポリアミン化合物(A1-2)」と称する場合がある)も好適に用いることができる。このようなポリアミン化合物(A1-2)としては、前記例示のアニオン性基非含有ポリアミン化合物(A1)の中から数平均分子量が500未満のもの[例えば、エチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,3−キシリレンジアミン等の脂肪族、脂環式及び芳香脂肪族ポリアミンや、ヒドラジン、カルボジヒドラジド等のヒドラジン及びその誘導体など]を用いることができる。
もちろん、イソシアネート反応性化合物(A1-1)やイソシアネート反応性化合物(A1-2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。例えば、イソシアネート反応性化合物(A1-2)として、ポリアミン化合物(A1-2)を用いる場合、ポリアミン化合物(A1-2)とともにポリオール化合物(A1-2)を用いることができる。このような場合、ポリアミン化合物(A1-2)とポリオール化合物(A1-2)との割合は特に制限されず、目的とする固形接着剤の種類などに応じて適宜選択することができる。
イソシアネート反応性化合物(A1-1)とイソシアネート反応性化合物(A1-2)との割合としては、特に制限されず、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1-1)のイソシアネート反応性基(水酸基など)/イソシアネート反応性化合物(A1-2)のイソシアネート反応性基(水酸基など)(比)=0.05〜4程度の範囲から選択することがコンタクト接着性を付与するために好ましい。
[アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A2)]
アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A2)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A2)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも1つのアニオン性基を有しており、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性化合物(A2)において、アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホ基を好適に用いることができ、中でもカルボキシル基が最適である。また、イソシアネート反応性化合物(A2)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、イソシアネート反応性化合物(A2)としては、例えば、アニオン性基含有ポリオール化合物、アニオン性基含有ポリアミン化合物、アニオン性基含有ポリチオール化合物(好ましくは、アニオン性基含有ポリオール化合物)などを用いることができる。イソシアネート反応性化合物(A2)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性化合物(A2)としてのアニオン性基含有ポリオール化合物(A2)(以下、「ポリオール(A2)」と称する場合がある)としては、例えば、前記ポリオール(A1)の項で例示のポリオールにカルボキシル基が導入されたカルボキシル基含有ポリオールなどが挙げられる。本発明では、ポリオール(A2)としては、アニオン性基を有する低分子量のポリオールが好ましく、特に、下記式(1)で表されるポリヒドロキシカルボン酸を好適に用いることができる。
(HO)XL(COOH)Y (1)
(但し、式(1)において、Lは炭素数1〜12の炭化水素部位を示す。Xは2以上の整数であり、Yは1以上の整数である。)
前記式(1)において、Lの炭化水素部位としては、脂肪族炭化水素部位であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の形態のいずれであってもよい。また、X,Yは同一であってもよく、異なっていてもよい。2つ以上のヒドロキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。さらに、Yが2以上である場合、2つ以上のカルボキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。
このようなポリヒドロキシカルボン酸としては、特に、ジメチロールアルカン酸(なかでも、2,2−ジメチロールアルカン酸)が好適である。ジメチロールアルカン酸としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸などが挙げられる。
なお、イソシアネート反応性化合物(A2)としての、アニオン性基含有ポリアミン化合物やアニオン性基含有ポリチオール化合物としては、例えば、前記例示のアニオン性基含有ポリオール化合物(A2)に対応するアニオン性基含有ポリアミン化合物(前記式(1)で表されるポリヒドロキシカルボン酸に対応するポリアミンカルボン酸など)やアニオン性基含有ポリチオール化合物(前記式(1)で表されるポリヒドロキシカルボン酸に対応するポリチオールカルボン酸など)などが挙げられる。
本発明では、イソシアネート反応性化合物(A2)としてアニオン性基含有ポリアミン化合物やアニオン性基含有ポリチオール化合物を用いることにより、アニオン性基が導入されたアニオン性基含有ポリマー(A)を得ることができる。
[ポリイソシアネート化合物(A3)]
ポリイソシアネート化合物(A3)(以下、「ポリイソシアネート(A3)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリイソシアネート(A3)には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが含まれる。ポリイソシアネート(A3)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネ−ト、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネ−ト、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリイソシアネート(A3)としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンを好適に用いることができる。なお、ポリイソシアネート(A3)として、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートや芳香脂肪族ポリイソシアネートを用いると、変色の少ない樹脂を得ることができる。
なお、本発明では、ポリイソシアネート(A3)としては、前記例示の脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環式ポリイソシアネ−ト、芳香族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。
また、本発明では、ポリイソシアネート(A3)とともに、ジイソチオシアネート系化合物(例えば、フェニルジイソチオシアネートなど)を併用することができる。
[イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)]
本発明では、アニオン性基含有ポリマー(A)は、末端がアルコキシシリル基となっているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーであってもよい。このようなアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーは、例えば、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、およびイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーが好適である。
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)(以下、「イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対して反応性を有している基であれば特に制限されず、例えば、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などが挙げられ、第1級又は第2級アミノ基、メルカプト基が好適である。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)としては、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A4-2)を好適に用いることができる。
なお、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)(以下、「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つの第1級又は第2級アミノ基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。従って、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)は、アミノ基として第3級アミノ基を1つ以上含有していてもよい。また、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A4-2)(以下、「メルカプト基含有アルコキシシラン(A4-2)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つのメルカプト基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基を好適に用いることができる。さらに好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(なかでもメトキシ基、エトキシ基)が挙げられる。このようなアルコキシ基は、通常、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)のケイ素原子に結合しており、その数は、通常、1〜3個(好ましくは2又は3個、特に2個)である。従って、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)としては、特に、分子内にアルコキシ基を2個有している(すなわち、ジアルコキシシリル基を有している)イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)が好適である。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)のケイ素原子には、同一のアルコキシ基が結合されていてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合されていてもよい。
また、イソシアネート反応性基がアミノ基である場合、第2級アミノ基や第3級アミノ基は、炭化水素基(例えば、フェニル基などのアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基など)等の置換基を有することにより、第2級アミノ基や第3級アミノ基を形成していてもよい。なお、該炭化水素基は、さらに他の置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)を有していてもよい。
さらに、イソシアネート反応性基(第1級アミノ基、第2級アミノ基や、メルカプト基など)は、ケイ素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。
従って、例えば、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)がアミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)である場合、アミノアルキル基の形態としてアミノ基を含有していてもよい。このようなアミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、1−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基等のアミノ−C1-3アルキル基や、これに対応する第2級アミノ基(置換基として炭化水素基を1つ有しているアミノ−C1-3アルキル基等)又は第3級アミノ基(置換基として炭化水素基を2つ有しているアミノ−C1-3アルキル基等)などが挙げられる。なお、第2級アミノ基や第3級アミノ基における窒素原子に置換している炭化水素基などの置換基が、さらにアミノ基を有していてもよい。すなわち、例えば、N−アミノアルキル−アミノアルキル基、N−[N−(アミノアルキル)アミノアルキル]アミノアルキル基の形態であってもよい。なお、第1級アミノ基とともに、第2級アミノ基を有していてもよい。第1級又は第2級アミノ基の数は、特に制限されないが、通常、1又は2個である。
より具体的には、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)としては、例えば、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)である場合、下記式(2a)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシラン、下記式(2b)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシラン、下記式(2c)で表されるイソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランを好適に用いることができ、メルカプト基含有アルコキシシラン(A4-2)である場合、下記式(2d)で表されるイソシアネート反応性基としてメルカプト基のみを有しているメルカプト基含有アルコキシシランを好適に用いることができる。
(式(2a)〜(2d)において、R
1、R
2は、同一又は異なって、アルキル基を示し、R
3、R
4はそれぞれアルキレン基を示し、R
5はアリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を示す。また、mは1〜3の整数である。なお、式(2b)におけるR
3及びR
4のアルキレン基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。)
前記式(2a)〜(2d)において、R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基が好適である。また、R2のアルキル基としては、R1のアルキル基と同様のアルキル基を用いることができるが、メチル基やエチル基が好ましい。R3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3程度のアルキレン基が好適である。また、R4のアルキレン基としては、前記R3のアルキレン基と同様に、炭素数1〜3程度のアルキレン基を用いることができる。また、R5において、アリール基としてはフェニル基を好適に用いることができ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基を好適に用いることができ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基を好適に用いることができる。なお、mは1〜3の整数である。
さらに具体的には、前記式(2a)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するアミノアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
前記式(2b)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン;N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。
また、前記式(2c)で表されるイソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニル−β−アミノエチルトリエトキシシラン等のN−フェニル−β−アミノエチルトリアルコキシシラン;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリアルコキシシランや、これらに対応するN−フェニルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランの他、さらに、上記の置換基がフェニル基である第2級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランに対応するN−アルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン(例えば、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノメチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシランなど)や、N−アルキルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)としては、商品名「KBM6063」、同「X−12−896」、同「KBM576」、同「X−12−565」、同「X−12−580」、同「X−12−5263」、同「X−12−666」、同「KBM6123」、同「X−12−575」、同「X−12−577」、同「X−12−563B」、同「X−12−730」、同「X−12−562」、同「X−12−5202」、同「X−12−5204」、同「KBE9703」(以上、信越化学工業社製)なども用いることができる。従って、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)としては、N−(5−アミノペンチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β[N−β(アミノエチル)アミノエチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、1,2−ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピルアミノ)エタン、ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピル)アミン、N−β(アミノエチル)−β(4−アミノメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン及びこれらに対応する炭化水素基(アルキル基やアルキレン基など)の炭素数が異なるアルコキシシラン系化合物などや、第1級又は第2級アミノ基とともに他の基(スチレン性不飽和基、オレフィン性不飽和基、カルボキシル基など)を有するアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともに塩の形態(塩酸塩など)を有しているアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともにアルコキシシリル基を複数有しているアルコキシシラン系化合物も用いることができる。
なお、前記式(2d)で表されるイソシアネート反応性基としてメルカプト基含有アルコキシシランとしては、例えば、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジプロポキシシラン等の(メルカプトアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するメルカプトアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)としては、反応のし易さ、広く市販され入手のし易さなどの点から、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)を好適に用いることができる。アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)において、イソシアネート反応性基として少なくとも第1級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。また、イソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
さらにまた、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)としては、前記に例示のような少なくとも第1級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(以下、「第1級アミノ基含有アルコキシシラン」と称する場合がある)と、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)とが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)」と称する場合がある)であってもよい。エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)としては、少なくとも第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)との反応により得られる第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物が好適であり、特に、第1級アミノ基及び第2級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)との反応により得られる第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物を好適に用いることができる。
このようなエステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)において、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)としては、不飽和カルボン酸のカルボン酸基(カルボキシル基)のうち少なくとも1つ(好ましくはすべて)がエステルの形態となっている化合物であれば、特に制限されない。不飽和カルボン酸エステル(A4-3)としては、不飽和1価カルボン酸エステルであってもよく、不飽和多価カルボン酸エステル(例えば、不飽和2価カルボン酸エステルなど)であってもよい。不飽和カルボン酸エステル(A4-3)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
不飽和カルボン酸エステル(A4-3)としては、炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子に直接カルボキシル基又はそのエステル(例えば、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)が結合している化合物が好適である。このような化合物としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、2−ブテン酸エステル、3−メチル−2−ブテン酸エステル、2−ペンテン酸エステル、2−オクテン酸エステル等の他、桂皮酸エステル等の不飽和1価カルボン酸エステル;マレイン酸エステル(モノ又はジエステル)、フマル酸エステル(モノ又はジエステル)、イタコン酸エステル(モノ又はジエステル)等の不飽和2価カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸エステル(A4-3)において、エステル部位としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル等の脂肪族炭化水素によるエステル(アルキルエステルなど);シクロヘキシルエステル、イソボルニルエステル、ボルニルエステル、ジシクロペンタジエニルエステル、ジシクロペンタニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、トリシクロデカニルエステル等の脂環式炭化水素によるエステル(シクロアルキルエステルなど);フェニルエステル、ベンジルエステル等の芳香族炭化水素によるエステル(アリールエステルなど)などが挙げられる。なお、エステル部位を複数有する場合、それぞれのエステル部位は、同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)において、エステル部位を形成する炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)は、第1級アミノ基含有アルコキシシランと、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)との反応を阻害しない限り、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などの第3級アミノ基などが挙げられる。
不飽和カルボン酸エステル(A4-3)としては、前記例示の不飽和カルボン酸エステルの中でもアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(以下、これらを「(メタ)アクリル酸エステル」と総称する場合がある)、マレイン酸ジエステルを好適に用いることができる。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノイソプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノイソプロピル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノイソプロピル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノイソプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノイソプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノブチル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノブチル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノブチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルなども用いることができる。さらにまた、マレイン酸ジエステルには、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジオクタデシル等のマレイン酸ジアルキルエステルなどが含まれる。
なお、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)の使用量は、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)が、少なくとも第2級アミノ基を1つ残す量であることが重要である。不飽和カルボン酸エステル(A4-3)の使用量は、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおける第1級アミノ基及び第2級アミノ基1モルに対して0.8〜2モル程度の範囲から選択することができる。なお、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)は、少なくとも第2級アミノ基が残存するような条件で反応させて用いることができる。
より具体的には、第1級アミノ基含有アルコキシシランと、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)とが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物[エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)]としては、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)の炭素−炭素二重結合におけるβ位の炭素原子が、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子に少なくとも結合した化合物等が挙げられる。すなわち、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)は、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子が、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)の不飽和結合(炭素−炭素二重結合)に対してマイケル付加反応を行うことにより得られる化合物である。該反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。また、反応に際しては加熱や加圧を行ってもよい。
具体的には、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)としては、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(2a)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有するアルコキシシラン化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)が下記式(3)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、下記式(4)で表すことができる。
(式(3)において、R
6、R
8は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R
7はアルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。R
9は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基を示す。)
(式(4)において、R
1〜R
3、R
6〜R
9およびmは前記に同じ。)
また、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A4-4)としては、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(2b)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)が前記式(3)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、下記式(5a)又は下記式(5b)で表すことができる。
(式(5a)及び(5b)において、R
1〜R
4、R
6〜R
9およびmは前記に同じ。)
前記式(3)、(4)、(5a)および(5b)において、R1〜R4およびmは前記と同様である。具体的には、R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基が好適である。また、R2のアルキル基としては、R1のアルキル基と同様のアルキル基を用いることができるが、メチル基やエチル基が好ましい。R3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3程度のアルキレン基が好適である。また、R4のアルキレン基としては、前記R3のアルキレン基と同様に、炭素数1〜3程度のアルキレン基を用いることができる。なお、mは1〜3の整数である。
また、R6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などが挙げられる。R7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基が挙げられる。また、R7のアリール基としては、フェニル基が挙げられ、R7のシクロアルキル基としてはシクロヘキシル基などが挙げられる。R8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基が挙げられる。さらにまた、R9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などが挙げられる。R9のアリール基としては、フェニル基が挙げられる。また、R9のアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基において、アルキル基部位、アリール基部位、シクロアルキル基部位としては、前記R7で例示のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基が好適に用いられる。
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)としては、少なくとも第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)を含有しているアルコキシシラン化合物[なかでも、前記式(4)、前記式(5a)や前記式(5b)で表されるようなエステル変性アルコキシシラン(A4-4)]が好適である。
[アニオン性基含有ポリマー(A)]
前述のように、アニオン性基含有ポリマー(A)は、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)、およびポリイソシアネート(A3)の反応生成物であり、分子内にイソシアネート反応性化合物(A2)に由来するアニオン性基を有するポリマーである。アニオン性基含有ポリマー(A)としては、イソシアネート反応性化合物(A1)と、イソシアネート反応性化合物(A2)と、ポリイソシアネート(A3)とを反応させて得られるアニオン性基含有ポリマーであれば特に制限されないが、分子内にアニオン性基とともに、主鎖の末端にアルコキシシリル基を有しているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー[「アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)」と称する場合がある]を好適に用いることができる。
このようなアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)としては、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)、ポリイソシアネート(A3)、およびイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)の反応生成物であり、分子内にイソシアネート反応性化合物(A2)に由来するアニオン性基と、主鎖の末端にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)に由来するアルコキシシリル基と、必要に応じて不飽和カルボン酸エステルに由来する側鎖とを有するポリマーを好適に用いることができる。
具体的には、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)としては、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)、及びポリイソシアネート(A3)の反応により得られるアニオン性基含有ポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応により、アニオン性基含有ポリマーの末端のイソシアネート基が少なくとも部分的にアルコキシシリル化させて得られるアルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーであってもよく、また、前記アニオン性基含有ポリマーの末端のイソシアネート基が部分的にアルコキシシリル化された部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーに、さらに、イソシアネート反応性化合物(A1)を反応させて得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーであってもよい。
すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)としては、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物であるアニオン性基含有ポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応により得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーや、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物であるアニオン性基含有ポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応により、アニオン性基含有ポリマーの末端のイソシアネート基が部分的にアルコキシシリル化させて得られる部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーに、さらに、イソシアネート反応性化合物(A1)[ポリオール(A1)やポリアミン(A1)など]を反応させて得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーが挙げられる。
本発明では、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)としては、イソシアネート反応性化合物(A1)としてのポリオール(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)としてのポリオール(A2)、及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物であるアニオン性基含有ポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応により、アニオン性基含有ポリマーの末端のイソシアネート基が部分的にアルコキシシリル化させて得られる部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーに、さらに、イソシアネート反応性化合物(A1)としてのポリアミン(A1)[特にポリアミン化合物(A1-2)]を反応させて得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー[以下、「末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー(A−a)」と称する場合がある]が特に好ましい。このように、ポリアミン化合物(A1-2)を鎖延長剤として用いることにより、優れた耐水性を発揮することができる固形接着剤を得ることができる。
より具体的には、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー(A−a)において、前記アニオン性基含有ポリマーは、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物であり、該反応は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを調製する公知乃至慣用の方法に準じて行うことができる。具体的には、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(A3)を混合し、必要に応じて加熱することにより、アニオン性基含有ポリマーを調製することができる。該アニオン性基含有ポリマーとしては、末端がイソシアネート基となっているものが好ましい。この反応では、ポリオール(A1)とともに、ポリアミン(A1)が用いられていてもよい。
なお、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(A3)を混合又は反応する際には、反応促進のために重合触媒を用いることができる。また、反応又は混合は溶媒中で行うことができる。
また、前記アニオン性基含有ポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。該反応により、前記アニオン性基含有ポリマーの末端のイソシアネート基が部分的にアルコキシシリル化されて、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーが得られる。この部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーは、アニオン性基含有ポリマーの末端のイソシアネート基を部分的にアルコキシシリル化したものであるので、アニオン性基を有するとともに、末端にイソシアネート基およびアルコキシシリル基を有するポリマーである。なお、アニオン性基含有ポリマー中のイソシアネート基と、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応率であるシリル化率(%)としては、例えば、5〜60(%)[好ましくは10〜50(%)、さらに好ましくは20〜40(%)]の範囲から適宜選択することができる。
アニオン性基含有ポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との混合又は反応に際しては、アニオン性基含有ポリマーを調製する場合と同様に、重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができる。また、混合又は反応に際しては、溶媒を用いることができる。
さらに、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーと、ポリアミン(A1)[特にポリアミン化合物(A1-2)]との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。該反応により、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー中の残存している末端のイソシアネート基が、ポリアミン(A1)のアミノ基(第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基)と反応して(この反応により鎖延長されて)、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー(A−a)であるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製することができる。なお、この反応では、ポリアミン(A1)[特にポリアミン化合物(A1-2)]とともに、ポリオール(A1)[特にポリオール化合物(A1-2)]が用いられていてもよい。
部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーと、ポリアミン(A1)との混合又は反応に際しては、アニオン性基含有ポリマーや部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを調製する場合と同様に、重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができる。また、混合又は反応に際しては、溶媒を用いることができる。
特に、前記部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーと、ポリアミン(A1)との混合又は反応は、前記部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーの水(C)への分散前、分散中または分散後のいずれであってもよいが、分散中又は分散後が好ましい。すなわち、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを水(C)に分散させる際に、ポリアミン(A1)を水(C)とともに添加するか、又は水(C)に分散させた後に、ポリアミン(A1)を添加して混合して、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーと、ポリアミン(A1)とを反応させることが好ましい。なお、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーは、ポリアミン(A1)との反応により、鎖延長される。
より具体的には、前記重合触媒(アニオン性基含有ポリマーを調製する際に用いられる重合触媒、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを調製する際に用いられる重合触媒や、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを調製する際に用いられる重合触媒など)としては、有機錫化合物、金属錯体、アミン化合物などの塩基性化合物、有機燐酸化合物などが挙げられる。有機錫化合物には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫メトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテートなどが含まれる。また、金属錯体としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体などが挙げられる。さらに、アミン化合物等の塩基性化合物には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製の商品名「DABCO」シリーズや「DABCO BL」シリーズ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の複数の窒素原子を含む直鎖或いは環状の第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などが含まれる。さらにまた、有機燐酸化合物としては、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸、燐酸トリフェニル等が挙げられる。
このようにして、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)が調製されうる。なお、これらの混合に際しては、各成分の混合順序は問わず、各成分の種類に応じて適宜混合の順序を選択することができる。しかしながら、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー(A−a)において、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー(A−a)を効率よく得るためには、まず、ポリオール(A1)及びポリオール(A2)の混合物に、ポリイソシアネート(A3)を加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、アニオン性基含有ポリマーを調製した後に、該反応混合液にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)を加えて反応させることにより、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを調製し、さらにその後に、ポリアミン(A1)を水(C)とともに加えて、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを水に分散させる際に、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーとポリアミン(A1)とを反応させて(該反応により、部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーが鎖延長される)、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー(A−a)であるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製することが好ましい。
以上、イソシアネート反応性化合物(A1)としてポリオール(A1)を用い、イソシアネート反応性化合物(A2)としてポリオール(A2)を用いてアニオン性基含有ポリマーを調製するとともに、イソシアネート反応性化合物(A1)としてのポリアミン(A1)と部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーとを反応させてアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製する場合の方法について詳細に述べたが、このアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の調製方法とは混合順序が異なる場合やアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の成分自体が異なる場合でも、前記調製方法と同様の方法を利用して、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製することができる。例えば、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)が、イソシアネート反応性化合物(A1)としてのポリオール(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)としてのポリオール(A2)、及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物であるアニオン性基含有ポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応により得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーである場合、好ましいアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の調製方法としては、まず、ポリオール(A1)及びポリオール(A2)の混合物に、ポリイソシアネート(A3)を加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、アニオン性基含有ポリマーを調製した後に、該反応混合液にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)を加えて反応させることにより、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを調製する方法が挙げられる。
なお、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)が、イソシアネート反応性化合物(A1)としてのポリオール(A1)およびポリアミン(A1)と、イソシアネート反応性化合物(A2)としてのポリオール(A2)と、ポリイソシアネート(A3)と、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)との反応生成物である場合、前記末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマー(A−a)の調製方法以外の末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーの方法としては、(i)ポリオール(A1)と、ポリアミン(A1)と、ポリオール(A2)との混合物に、ポリイソシアネート(A3)とを加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、アニオン性基含有ポリマーを調製した後に、該反応混合液にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)を加えて反応させる方法や、(ii)ポリオール(A1)と、ポリオール(A2)との混合物に、ポリイソシアネート(A3)とを加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、アニオン性基含有ポリマーを調製した後に、該反応混合液にポリアミン(A1)を加えて反応させ、さらに、この反応混合液にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)を加えて反応させる方法などが挙げられる。もちろん、このような調製方法では、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを調製した後に、末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ポリマーを水(C)に分散させることができる。
アニオン性基含有ポリマー(A)におけるアニオン性基の含有率は、特に制限されないが、例えば、0.5〜4質量%(好ましくは1〜3質量%、さらに好ましくは1.2〜2.5質量%)の範囲から適宜選択することができる。アニオン性基含有ポリマー(A)中のアニオン性基の含有率が、0.5質量%未満であるとアニオン性基含有ポリマー(A)の分散安定性(固形接着剤中における樹脂成分の分散安定性など)が低下し、スティックの形状に成型しにくくなり、一方、4質量%を超えると耐水性が低下する。従って、イソシアネート反応性化合物(A2)は、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)中のアニオン性基の含有量が0.5〜4質量%となるような割合で用いることができる。
なお、ポリイソシアネート(A3)と、イソシアネート反応性化合物(A1)及びイソシアネート反応性化合物(A2)との割合としては、ポリイソシアネート(A3)におけるイソシアネート基/イソシアネート反応性化合物(A1)及びイソシアネート反応性化合物(A2)におけるイソシアネート反応性基(NCO/NCO反応性基)(当量比)が、1より大きく1.5以下(好ましくは1より大きく1.3以下、さらに好ましくは1より大きく1.2以下)となるような範囲から選択することができる。該NCO/NCO反応性基の比が大きすぎると(例えば、1.5(当量比)を越えると)、固形接着剤の安定性が低下するとともに、コンタクト性が低下する。一方、該NCO/NCO反応性基の比が小さすぎると(例えば、1以下(当量比)であると)、シリル基を導入することができなくなり、また固形接着剤の接着性が低下する。
あるいは、ポリイソシアネート(A3)は、アニオン性基含有ポリマー(A)中のイソシアネート基の含有量が、0.05〜4.0質量%(好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜2.5質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。イソシアネート基の含有量は、多すぎても(例えば、4.0質量%を越えても)、少なすぎても(例えば、0.05質量%未満であっても)、固形接着剤の接着性が低下する。なお、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、アニオン性基含有ポリマー(A)中のイソシアネート基の含有量は、末端のイソシアネート基をアルコキシシリル化する前のイソシアネート基の割合を意味する。
また、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)におけるアルコキシシリル基のケイ素原子と結合しているアルコキシ基の酸素原子の含有率は、特に制限されないが、例えば、0.1〜1.2質量%(好ましくは0.15〜0.9質量%、さらに好ましくは0.2〜0.6質量%)の範囲から適宜選択することができる。アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)中のアルコキシシリル基のケイ素原子と結合しているアルコキシ基の酸素原子の含有率が、0.1質量%未満であるとアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の耐水性が低下し、一方、1.2質量%を超えると貯蔵安定性が低下する。従って、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)中のアルコキシシリル基のケイ素原子と結合しているアルコキシ基の酸素原子の含有率が0.1〜1.2質量%となるような割合で用いることができる。
[塩基性化合物(B)]
塩基性化合物(B)としては、塩基性無機化合物であってもよく、塩基性有機化合物であってもよい。塩基性化合物(B)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩などのアルカリ金属化合物や、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩などのアルカリ土類金属化合物の他、アンモニアなどが挙げられる。
一方、塩基性有機化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、塩基性含窒素複素環化合物などのアミン系化合物を好適に用いることができる。脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリs−ブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミンなどのトリアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミン;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミンなどのモノアルキルアミン;トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリイソペンタノールアミン、トリヘキサノールアミンなどのトリアルコールアミン;ジメタノールアミン、ジエタノールアミンなどのジアルコールアミン;メタノールアミン、エタノールアミンなどのモノアルコールアミンなどの他、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどが挙げられる。芳香族アミンには、例えば、N,N−ジメチルアニリンなどが含まれる。塩基性含窒素複素環化合物としては、例えば、モルホリン、ピペリジン、ピロリジンなどの環状アミンの他、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、N−メチルモルホリンなどが挙げられる。アミン系化合物としては、トリアルキルアミンやトリアルコールアミンなどの第三級アミン化合物が好適である。
本発明では、塩基性化合物(B)としては、耐水性などの観点から、アミン系化合物(特に、脂肪族アミン)を好適に用いることができる。
本発明の固形接着剤において、塩基性化合物(B)の含有割合は、アニオン性基含有ポリマー(A)に対して0.5〜10モル%(mol%)である。塩基性化合物(B)の含有割合が、アニオン性基含有ポリマー(A)に対して0.5モル%未満であるとアニオン性基含有ポリマー(A)の分散性が低下し、一方、10モル%を超えると耐水性が低下する。塩基性化合物(B)の含有割合としては、アニオン性基含有ポリマー(A)に対して1〜8モル%(特に1.5〜5モル%)が好適である。
なお、塩基性化合物(B)の含有により、アニオン性基含有ポリマー(A)が中和され、アニオン性基含有ポリマー(A)中のアニオン性基が塩となる。
[水(C)]
本発明では、水(C)としては、水道水、イオン交換水や純水などを用いることができる。なお、水(C)の使用量は、親水性有機溶剤(D)の使用量に応じて適宜選択することができる。
[親水性有機溶剤(D)]
親水性有機溶剤(D)としては、親水性(水溶性)を有する有機溶剤(親水性有機溶剤)であれば特に制限されない。なお、親水性有機溶剤(D)はゲル化剤(E)を溶解させることが可能なものが好ましく、そのため、ゲル化剤(E)の種類などに応じて適宜選択することが重要である。親水性有機溶剤(D)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
親水性有機溶剤(D)としては、揮発性を有する親水性有機溶剤(水溶性有機溶剤)、及び/又は、非揮発性を有する親水性有機溶剤を用いることができる。本発明では、親水性有機溶剤(D)としては、非揮発性を有する親水性有機溶剤(「非揮発性親水性有機溶剤(D1)」と称する場合がある)を好適に用いることができる。非揮発性親水性有機溶剤(D1)としては、非揮発性(又は不揮発性)を有する親水性有機溶剤であれば特に制限されないが、特に、非揮発性及び親水性を有している非プロトン性極性有機溶剤を好適に用いることができる。
このように、親水性有機溶剤(D)として、揮発性を有する親水性有機溶剤を用いずに、非揮発性親水性有機溶剤(D1)を用いると、沸点が高いので(非揮発性であるので)、アニオン性基含有ポリマー(A)やゲル化剤(E)などを溶解させる際には、高温で混合することができ、より一層容易に、固形接着剤を調製することができる。さらに、高温での混合が可能であることにより、アニオン性基含有ポリマー(A)として、重量平均分子量が高いものを用いても、溶解させることができるので、初期の接着性を高めるために、下記に示されるような疎水性ポリマー(F)やゴム成分(G)を用いなくてもよい。そのため、分散性が低いゴム成分(G)等を用いなくてもよいので、固形接着剤を製造する際の粘度安定性又は分散安定性を高めることができ、固形接着剤の製造作業性を大きく改善することができる。しかも、疎水性ポリマー(F)やゴム成分(G)を用いない場合、固形接着剤中の不揮発分を減少させることが可能となり(例えば、固形接着剤中の不揮発分を10〜30質量%にまで低減させることが可能となり)、これにより、固形接着剤を作製する際の容器への充填が容易になり、固形接着剤を、より一層優れた製造作業性で製造することができる。
なお、非揮発性親水性有機溶剤(D1)は、揮発性を有する親水性有機溶剤と併用する場合、固形接着剤の調製に際して、アニオン性基含有ポリマー(A)を貧溶媒と良溶媒とを用いたゲル化方法を利用してゲル化させるために用いることができる。
本発明では、非揮発性親水性有機溶剤(D1)としては、沸点が150℃以上(好ましくは160〜300℃)である親水性有機溶剤が好適である。
このような非揮発性親水性有機溶剤(D1)としては、例えば、非揮発性及び親水性を有しているアミド系有機溶剤(「アミド系非揮発性親水性有機溶剤」と称する場合がある)等の窒素化合物系非揮発性親水性有機溶剤や、非揮発性及び親水性を有しているスルホキシド系有機溶剤(「スルホキシド系非揮発性親水性有機溶剤」と称する場合がある)等の硫黄化合物系非揮発性親水性有機溶剤などが挙げられる。具体的には、窒素化合物系非揮発性親水性有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、δ−バレロラクタム(2−ピペリドン)、γ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム等のラクタム系非揮発性親水性有機溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のジアルキルホルムアミド系非揮発性親水性有機溶剤;アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系非揮発性親水性有機溶剤などのアミド系非揮発性親水性有機溶剤が挙げられる。また、硫黄化合物系非揮発性親水性有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のジアルキルスルホキシド系非揮発性親水性有機溶剤などのスルホキシド系非揮発性親水性有機溶剤の他、ジメチルスルホン等のスルホン系非揮発性親水性有機溶剤などが挙げられる。
また、非揮発性親水性有機溶剤(D1)としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系非揮発性親水性有機溶剤;ベンゾニトリル等のニトリル系非揮発性親水性有機溶剤;エチレンカーボネート(炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート等のカーボネート系非揮発性親水性有機溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグライム系非揮発性親水性有機溶剤;テトラメチル尿素等の尿素系非揮発性親水性有機溶剤なども用いることができる。
本発明では、非揮発性親水性有機溶剤(D1)としては、アミド系非揮発性親水性有機溶剤が好適である。アミド系非揮発性親水性有機溶剤としては、ラクタム系非揮発性親水性有機溶剤が好ましく、ラクタム系非揮発性親水性有機溶剤の中でも、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系非揮発性親水性有機溶剤(特に、N−メチル−2−ピロリドン)が好適である。
また、親水性有機溶剤(D)としては、揮発性を有する親水性有機溶剤(「揮発性親水性有機溶剤(D2)」と称する場合がある)も好適に用いることができる。揮発性親水性有機溶剤(D2)としては、特に、揮発性及び親水性を有するプロトン性有機溶剤を好適に用いることができる。
本発明では、揮発性親水性有機溶剤(D2)としては、沸点が120℃以下(好ましくは100℃以下、さらに好ましくは60〜80℃)である親水性有機溶剤が好適である。
このような揮発性親水性有機溶剤(D2)としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アセタール類、エステル類などが挙げられ、アルコール類を好適に用いることができる。アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。揮発性親水性有機溶剤(D2)としては、アルコール類の中でも、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(特に、エチルアルコール)を好適に用いることができる。
本発明では、非揮発性親水性有機溶剤(D1)や揮発性親水性有機溶剤(D2)等の親水性有機溶剤(D)の使用量としては、ゲル化剤(E)の溶解性等の観点から、ゲル化剤(E)を十分に溶解させることが可能な量であることが重要である。親水性有機溶剤(D)の割合としては、水(C)および親水性有機溶剤(D)の全量に対して5質量%以上(例えば、5〜80質量%)であることが好ましく、さらに好ましくは7質量%以上(例えば、7〜70質量%)であり、なかでも10〜60質量%であることが好適である。親水性有機溶剤(D)の割合が、水(C)および親水性有機溶剤(D)の全量に対して5質量%未満であると、ゲル化剤(E)の溶解性が低下する。一方、親水性有機溶剤(D)の割合が多すぎると[例えば、水(C)および親水性有機溶剤(D)の全量に対して80質量%を超えると]、初期の接着性が低下する。
また、親水性有機溶剤(D)として、非揮発性親水性有機溶剤(D1)と揮発性親水性有機溶剤(D2)とを併用して、貧溶媒と良溶媒とを用いたゲル化方法を利用してアニオン性基含有ポリマー(A)をゲル化させる場合、非揮発性親水性有機溶剤(D1)の使用量としては、特に制限されないが、貧溶媒と良溶媒とを用いたゲル化方法を利用してアニオン性基含有ポリマー(A)をゲル化させる観点から、例えば、固形接着剤の総量100質量部に対して20質量部以下(好ましくは3〜10質量部、さらに好ましくは4〜8質量部)の範囲から適宜選択することができる。この際、揮発性親水性有機溶剤(D2)の使用量としては、前記親水性有機溶剤(D)の使用量[具体的には、水(C)および揮発性親水性有機溶剤(D2)の全量に対して、好ましくは5質量%以上(例えば、5〜80質量%)、さらに好ましくは7質量%以上(例えば、7〜70質量%)、なかでも好ましくは10〜60質量%]の範囲から適宜選択することができる。非揮発性親水性有機溶剤(D1)の使用量が、固形接着剤の総量100質量部に対して20質量部を超えていると、固形接着剤の初期接着性が低下する。なお、非揮発性親水性有機溶剤(D1)の使用量が、固形接着剤の総量100質量部に対して3質量部未満であると、固形化が困難になる。
従って、本発明の固形接着剤において、親水性有機溶剤(D)として、(1)非揮発性親水性有機溶剤(D1)が主として用いられている場合、揮発性を有する親水性有機溶剤に溶解可能な疎水性ポリマー(F)や、ゴム成分(G)は、用いられていてもよいが、用いられていない方が好ましく、一方、(2)揮発性親水性有機溶剤(D2)が主として用いられている場合、揮発性を有する親水性有機溶剤に溶解可能な疎水性ポリマー(F)や、ゴム成分(G)が用いられていることが好ましい。なお、親水性有機溶剤(D)として、(2)揮発性親水性有機溶剤(D2)が主として用いられている場合、前述のように、固形接着剤の調製に際して、アニオン性基含有ポリマー(A)を貧溶媒と良溶媒とを用いたゲル化方法を利用してゲル化させるために、非揮発性親水性有機溶剤(D1)を用いることができる。
なお、アニオン性基含有ポリマー(A)の重量平均分子量が高い場合、アニオン性基含有ポリマー(A)の溶解性を高めるために、親水性有機溶剤(D)として、非揮発性親水性有機溶剤(D1)を主として用いること[特に、揮発性親水性有機溶剤(D2)を用いずに、非揮発性親水性有機溶剤(D1)のみを用いること]が好ましい。一方、アニオン性基含有ポリマー(A)の重量平均分子量が低い場合、親水性有機溶剤(D)として、非揮発性親水性有機溶剤(D1)が主として用いられていてもよく、揮発性親水性有機溶剤(D2)が主として用いられていてもよい。
このように、本発明では、親水性有機溶剤(D)の種類により、製造時の温度を調整することが重要である。具体的には、親水性有機溶剤(D)として、(1)非揮発性親水性有機溶剤(D1)が主として用いられている場合、親水性有機溶剤(D)が非揮発性を有しているので、高温下[例えば、80℃以上(80〜95℃など)]で、各成分を混合することが可能である。そのため、アニオン性基含有ポリマー(A)は、重量平均分子量が高くても、固形接着剤を製造することが可能となり、これにより、初期の接着性を優れたレベルで確保することができる。
一方、親水性有機溶剤(D)として、(2)揮発性親水性有機溶剤(D2)が主として用いられている場合、高温下で、各成分を混合することが困難となるので、アニオン性基含有ポリマー(A)としては、重量平均分子量が低いものを用いなければならず、これにより、初期の接着性が低くなる場合がある。このように、初期の接着性が低くなる場合は、揮発性親水性有機溶剤(D2)に溶解可能な疎水性ポリマー(F)や、ゴム成分(G)を用いることにより、初期の接着性を優れたレベルで確保することができる。しかしながら、揮発性親水性有機溶剤(D2)に溶解可能な疎水性ポリマー(F)やゴム成分(G)[特に、ゴム成分(G)]が用いられていると、固形接着剤を製造する際の分散安定性が低下するため、固形接着剤を製造する際には、これらの成分を十分に分散するように混合することが重要である。
[ゲル化剤(E)]
ゲル化剤(E)としては、アニオン性基含有ポリマー(A)をゲル化させることができれば特に制限されず、公知のゲル化剤から適宜選択することができるが、例えば、糖アルコール系ゲル化剤、アミノ酸系ゲル化剤、脂肪族カルボン酸系ゲル化剤などを用いることができる。ゲル化剤(E)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
糖アルコール系ゲル化剤としては、糖アルコールを原料とするゲル化剤であれば特に制限されないが、炭素数4以上の糖アルコールと芳香族アルデヒドとの反応物[すなわち、炭素数4以上の糖アルコールと芳香族アルデヒドとの反応により、糖アルコールがベンザル化されたベンザル化物(糖アルコールのベンザル化物)]を好適に用いることができる。このような糖アルコールのベンザル化物としては、特に、糖アルコールにベンジリデン基が2つ導入された糖アルコールのジベンザル化物が好適である。
このような糖アルコール系ゲル化剤において、炭素数4以上の糖アルコールとしては、例えば、トレイット、エリトリットなどのテトリット;アラビット、リビット、キシリットなどのペンチット;ソルビット、マンニット、イジット、タリット、ガラクチット(ズルシット)、アリットなどのヘキシット;ヘプチット;オクチット;ノニット;デシット;ドデシットなどの単糖類アルコールが挙げられる。炭素数4以上の糖アルコールとしては、これらの糖アルコールの中でも、キシリット(キシリトール)やソルビット(ソルビトール)などの炭素数5〜7の糖アルコールが好ましく、特にソルビットが好適である。一方、芳香族アルデヒドとしては、例えば、ベンズアルデヒドの他、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒドなどが挙げられ、ベンズアルデヒドが好適である。
具体的には、糖アルコール系ゲル化剤としては、例えば、キシリットとベンズアルデヒドとの反応物であるジベンザル化キシリット(ジベンジリデンキシリトール)や、ソルビットとベンズアルデヒドとの反応物であるジベンザル化ソルビット(ジベンジリデンソルビトール)などが挙げられる。
糖アルコール系ゲル化剤としては、例えば、商品名「ゲルオールD」(新日本理化社製;ジベンジリデンソルビトール)などが市販されている。
また、アミノ酸系ゲル化剤としては、アミノ酸を原料とするゲル化剤であれば特に制限されないが、アミノ酸と高級脂肪酸との反応物又はその塩(いわゆる「アミノ酸石鹸」)を好適に用いることができる。アミノ酸石鹸は、アミノ酸と高級脂肪酸との反応により、アミノ酸におけるヒドロキシル基が高級脂肪酸におけるカルボキシル基とエステル化反応した構成を有しており、また、必要に応じてアミノ酸におけるカルボキシル基が塩の形態となった構成を有していてもよい。
このようなアミノ酸系ゲル化剤において、アミノ酸としては、例えば、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−アラニン、L−アルギニン、L−イソロイシン、グリシン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−シスチン、L−システイン、L−セリン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−トレオニン、L−バリン、L−ヒスチジン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−メチオニン、L−リシン、L−ロイシン等の天然蛋白質を構成する主要α−アミノ酸の他、アザセリン、L−α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、L−アロイソロイシン、L−アロトレオニン、L−エチオニン、エルゴチオネイン、L−オルニチン、L−カナバニン、S−(カルボキシメチル)−L−システイン、L−キヌレニン、クレアチン、サルコシン、L−シスタチオニン、L−システイン酸、L−シトルリン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、3,5−ジヨード−L−チロシン、タウリン、L−チロキシン、L−ノルバリン、L−ノルロイシン、L−ホモセリン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、L−ランチオニンなどが挙げられ、グルタミン酸が好適である。一方、高級脂肪酸としては、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)などの脂肪族飽和モノカルボン酸や、オレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸などが挙げられ、ラウリン酸やステアリン酸が好適である。また、アミノ酸石鹸が塩の形態を有している場合、アミノ酸石鹸における塩の形態としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩などの形態が挙げられ、ナトリウム塩の形態であることが好ましい。
具体的には、アミノ酸系ゲル化剤としては、例えば、グルタミン酸とラウリン酸との反応物であるN−ラウロイル−L−グルタミン酸−α、γ−ジ−n−ブチルアミド(味の素社製)などが挙げられる。
さらに、脂肪族カルボン酸系ゲル化剤としては、脂肪族カルボン酸を原料とするゲル化剤であれば特に制限されないが、炭素数8以上の脂肪族カルボン酸の塩(いわゆる「脂肪酸石鹸」)を好適に用いることができる。このような脂肪族カルボン酸系ゲル化剤において、炭素数8以上の脂肪族カルボン酸としては、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸や、オレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸などを用いることができる。このような脂肪酸石鹸における塩の形態としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩などの形態が挙げられる。
本発明では、ゲル化剤(E)としては、糖アルコール系ゲル化剤、アミノ酸系ゲル化剤(特に、糖アルコール系ゲル化剤)を好適に用いることができる。糖アルコール系ゲル化剤(特に、ジベンジリデンソルビトール)は、親水性有機溶剤(D)としてのエチルアルコールやイソプロピルアルコールに対して溶解性を有している。従って、ゲル化剤(E)として糖アルコール系ゲル化剤(特に、ジベンジリデンソルビトール)を用いる場合、親水性有機溶剤(D)としては、エチルアルコール及び/又はイソプロピルアルコール(特に、エチルアルコール)を用いることが好ましい。
ゲル化剤(E)の使用量としては、特に制限されないが、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して0.01〜10質量部(好ましくは0.02〜5質量部、さらに好ましくは0.03〜3質量部)程度の範囲から選択することができる。ゲル化剤(E)の使用量が、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して0.01質量部未満であると、固形になり難く、一方、10質量部を超えていると、固形接着剤の接着性が低下する。
[疎水性ポリマー成分(F)]
本発明の固形接着剤では、さらに、揮発性親水性有機溶剤(D2)や非揮発性親水性有機溶剤(D1)等の親水性有機溶剤(D)に溶解可能な疎水性ポリマー成分が用いられていてもよい。本発明では、親水性有機溶剤(D)として揮発性親水性有機溶剤(D2)が主として用いられている場合、特に、揮発性親水性有機溶剤(D2)に溶解可能な疎水性ポリマー成分(F)[単に「疎水性ポリマー成分(F)」と称する場合がある]が用いられていることが好ましい。従って、疎水性ポリマー成分(F)は、揮発性親水性有機溶剤(D2)の種類などに応じて適宜選択することができる。疎水性ポリマー成分(F)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
疎水性ポリマー成分(F)としては、揮発性親水性有機溶剤(D2)に溶解可能であり、且つ疎水性(非水分散性及び/又は非水溶性)を有しているポリマー成分であれば特に制限されない。疎水性ポリマー成分(F)としては、例えば、揮発性親水性有機溶剤(D2)に溶解可能であり且つ疎水性を有している粘着付与樹脂(タッキファイヤー)などが挙げられる。疎水性ポリマー成分(F)(特に粘着付与樹脂)を用いることにより、固形接着剤の接着性を向上させることができる。
前記粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂の他、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などの粘着付与樹脂のうち、揮発性親水性有機溶剤(D2)に溶解可能であり且つ疎水性を有しているものが挙げられる。
粘着付与樹脂としては、テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂(特にテルペン系粘着付与樹脂)を好適に用いることができる。テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
なお、フェノール系粘着付与樹脂としては、各種フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物などが挙げられる。前記フェノール類としては、例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどが挙げられる。具体的には、フェノール系粘着付与樹脂には、例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド系樹脂などが含まれる。また、フェノール系粘着付与樹脂としては、前述のフェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前述のフェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなども用いることができる。
また、ロジン系粘着付与樹脂には、例えば、未変性ロジン(生ロジン)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが含まれる。未変性ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどが挙げられる。前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンや変性ロジンをエステル化したロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;ロジンアルコール類;ロジン類の金属塩;ロジンフェノール樹脂などが挙げられる。
さらに、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂やエラストマー系粘着付与樹脂などの他の粘着付与樹脂としては、それぞれ、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
疎水性ポリマー成分(F)の使用量としては、特に制限されないが、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して200質量部以下(例えば、1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜40質量部)の範囲から選択することができる。疎水性ポリマー成分(F)の使用量が、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して200質量部を超えていると、布製品に接着した場合の風合いが低下する。なお、疎水性ポリマー成分(F)の使用量が、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して1質量部未満であると、固形接着剤の接着性が低下する。
[ゴム成分(G)]
本発明の固形接着剤では、さらに、ゴム成分(G)が用いられていてもよい。特に、親水性有機溶剤(D)として揮発性親水性有機溶剤(D2)が用いられている場合、ゴム成分(G)が用いられていることが好ましい。ゴム成分を用いることにより、固形接着剤を塗布した際の風合いが良好となり、ごわごわ感がなく、やわらかな感じの風合いとなり、しかも、初期接着性を向上させることができる。ゴム成分(G)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ゴム成分(G)は、疎水性ポリマー成分(F)とともに用いられていることが好ましい。従って、固形接着剤は、親水性有機溶剤(D)として揮発性親水性有機溶剤(D2)が用いられている場合、さらに、疎水性ポリマー成分(F)と、ゴム成分(G)とを含有していることが好ましい。
ゴム成分(G)としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンターポリマーなどが挙げられる。ゴム成分(G)としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を好適に用いることができる。
ゴム成分(G)の使用量としては、特に制限されないが、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して200質量部以下(例えば、1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜40質量部)の範囲から適宜選択することができる。ゴム成分(G)の使用量が、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して200質量部を超えていると、安定な製造が困難になる。なお、ゴム成分(G)の使用量が、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)100質量部に対して1質量部未満であると、接着後の布地の風合いが低下する。
[固形接着剤]
本発明の固形接着剤は、アニオン性基含有ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)と、水(C)と、親水性有機溶剤(D)と、ゲル化剤(E)とを含有しており、且つ、前記アニオン性基含有ポリマー(A)は、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A2)及びポリイソシアネート化合物(A3)の反応により得られるアニオン性基含有ポリマーであり、特に、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)の反応により得られるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)が好適である。
このように、本発明の固形接着剤は、接着成分としてのアニオン性基含有ポリマー(A)[特にアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)]が、塩基性化合物(B)、水(C)、親水性有機溶剤(D)およびゲル化剤(E)と組み合わせられているので、洗濯後の接着強さが良好であり、耐洗濯性を顕著に向上させることができる。具体的には、本発明の固形接着剤により有効に接着させた状態の繊維製品や皮革製品を市販の家庭用洗濯機で一般的な洗濯用合成洗剤を用いて洗濯しても、洗濯中に剥がれることがなく、また、洗濯後も接着させた状態を有効に保持させることができる。もちろん、本発明の固形接着剤は、布や皮革等の繊維材への塗布作業性、繊維材に対する接着強さ、繊維材を接着させた際のしみ出し防止性、および貯蔵安定性が良好である。
特に、本発明では、前述のように、親水性有機溶剤(D)として非揮発性親水性有機溶剤(D1)を用いることにより、優れた製造作業性で固形接着剤を製造することができる。しかも、この場合、疎水性ポリマー成分(F)やゴム成分(G)を用いなくてもよいので、優れた透明性で硬化させて、布等の被着体同士を優れた外観性で接着させることができる。
本発明の固形接着剤は、前述のように、アニオン性基含有ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)と、水(C)と、親水性有機溶剤(D)と、ゲル化剤(E)とからなっており、アニオン性基含有ポリマー(A)、塩基性化合物(B)、水(C)及び親水性有機溶剤(D)からなる樹脂組成物が、前記ゲル化剤(E)によりゲル化された形態を有していることが好ましい。前記樹脂組成物としては、アニオン性基含有ポリマー(A)、塩基性化合物(B)、水(C)及び親水性有機溶剤(D)の混合物であってもよく、該混合によりアニオン性基含有ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)とが反応した反応生成物を含む反応組成物であってもよい。このアニオン性基含有ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)との反応としては、アニオン性基含有ポリマー(A)におけるアニオン性基が塩基性化合物(B)により部分的に又は全体的に中和される中和反応が挙げられる。すなわち、アニオン性基含有ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)との反応により、アニオン性基含有ポリマー(A)におけるアニオン性基が塩となっている。
なお、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、樹脂組成物としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)及び水(C)とが反応した反応生成物を含む反応組成物であってもよい。この場合、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)と、水(C)との反応としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)における末端のアルコキシシリル基が水(C)により加水分解される加水分解反応が挙げられる。すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)と、水(C)との反応により、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)における末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的にシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている。すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)における末端のアルコキシシリル基のうち少なくとも1つのアルコキシル基が水(C)との加水分解反応の影響を受けている。なお、シラノール基とは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するケイ素原子からなる基のことを意味しており、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
従って、前記アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)及び水(C)とが反応した反応生成物としては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)におけるアニオン性基が塩基性化合物(B)により中和されてアニオン性基の塩となっており、且つ末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水(C)により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている水性シラノール化ポリマーが挙げられる。すなわち、本発明の固形接着剤としては、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)におけるアニオン性基が塩基性化合物(B)により中和され、且つ末端のアルコキシシリル基が水(C)により加水分解された樹脂組成物が、親水性有機溶剤(D)の存在下、ゲル化剤(E)によりゲル化されていることが好ましい。
このように、本発明では、固形接着剤は、アニオン性基含有ポリマー(A)と、塩基性化合物(B)と、水(C)と、親水性有機溶剤(D)と、ゲル化剤(E)とを混合して調製することができ、その混合の順序は特に制限されない。本発明における固形接着剤としては、アニオン性基含有ポリマー(A)に、塩基性化合物(B)及び水(C)を配合して、望ましくは激しい攪拌などを行って、中和反応や加水分解反応等の反応を促進させることにより、水溶液又は水分散液とし、この水溶液又は水分散液に親水性有機溶剤(D)を加えて混合し、さらにゲル化剤(E)と、必要に応じて消泡剤等とを加えて攪拌等により混合してゲル化することにより、調製することができる。なお、固形接着剤であるので、特定の形状に成形する場合は、その成形方法は特に制限されず、例えば、固化する前に特定の形状に成形するための容器に入れたり、固化した後に特定の形状に加工成形したりして、特定の形状に成形することができる。
なお、本発明では、塩基性化合物(B)は、アニオン性基含有ポリマー(A)を調製する際に予め用いることができる。具体的には、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)及びポリイソシアネート(A3)の反応生成物と、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A4)とを反応させる際に、塩基性化合物(B)を加えることにより、塩基性化合物(B)の存在下、前記反応を行うことができる。
本発明の固形接着剤では、ゲル化前で親水性有機溶剤(D)を含んでいない状態の樹脂組成物[すなわち、アニオン性基含有ポリマー(A)、塩基性化合物(B)及び水(C)からなる樹脂組成物;「ゲル化前の樹脂組成物」と称する場合がある]において、カルボキシル基などのアニオン性基の中和率は、特に制限されないが、例えば、アニオン性基含有ポリマー(A)に対し0.5〜10モル%(好ましくは1〜5モル%)であることが望ましい。
また、固形接着剤において、樹脂分又は不揮発分としては、特に制限されず、例えば、10〜60質量%の範囲から選択することができるが、好ましくは15〜60質量%であり、特に20〜60質量%であることが好ましい。なお、この樹脂分又は不揮発分は、固形接着剤中のアニオン性基含有ポリマー(A)などの樹脂分(ポリマー分)の割合を意味している。従って、樹脂分又は不揮発分には、非揮発性親水性有機溶剤(D1)の量は含まれない。
なお、固形接着剤には、その水溶液又は水分散液の粘度調整等のために、非揮発性親水性有機溶剤(D1)や揮発性親水性有機溶剤(D2)等の親水性有機溶剤(D)以外の有機溶剤が含まれていてもよい。
また、固形接着剤には、濡れ性改質親水性溶剤が含まれていてもよい。該濡れ性改質親水性溶剤としては、特に制限されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤、アルギン酸ナトリウム、ムコ多糖類、アクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
さらにまた、本発明の固形接着剤には、保湿剤が含まれていてもよい。保湿剤を用いることにより、固形接着剤の塗布性を改良することができる。該保湿剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用の保湿剤を用いることができる。具体的には、保湿剤としては、例えば、エチレングリコール、数平均分子量が400以下のポリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類や、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のカルビトール類などのエチレングリコール誘導体;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール誘導体;グリセリン、1,3−ブタンジオールなどの多価アルコール類;ソルビトール等の多糖類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
本発明では、固形接着剤には、消泡剤、充填材、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤(顔料や染料など)、防かび剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料、各種タッキファイヤー(エマルジョンタッキファイヤーなど)、カップリング剤(チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤など)、光硬化触媒、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、架橋剤などの各種添加剤又は成分、溶剤などが含まれていてもよい。
また、固形接着剤には、貯蔵安定性、接着強さ、布や皮革等の繊維材への塗布作業性、繊維材を接着させた際のしみ出し防止性、耐洗濯性を良好な状態で保持することができる範囲で、接着成分のポリマー(接着成分として機能するポリマー)として、前記アニオン性基含有ポリマー(A)以外のポリマーが含まれていてもよい。このようなアニオン性基含有ポリマー(A)以外のポリマーとしては、例えば、その他の水溶性又は水分散可能なポリマー(ポリビニルピロリドン、水溶性又は水分散可能なポリウレタン系ポリマーなど)などが挙げられる。なお、固形接着剤中に、接着成分のポリマーとして、アニオン性基含有ポリマー(A)以外のポリマーが含まれている場合、接着成分のポリマー全体に対するアニオン性基含有ポリマー(A)の割合としては、貯蔵安定性、接着強さ、布や皮革等の繊維材への塗布作業性、繊維材を接着させた際のしみ出し防止性、耐洗濯性を良好な状態で保持することができる範囲であれば特に制限されないが、例えば、50質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)の範囲から選択することが望ましい。
なお、充填材としては、例えば、炭酸カルシウムや各種処理が施された炭酸カルシウム、フュームドシリカ、クレー、タルク、各種バルーン、ノイブルシリカ、カオリン、ケイ酸アルミニウム、酸化チタンなどが挙げられる。また、可塑剤には、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪族カルボン酸エステルなどが含まれる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリエチレンイミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、コロイダルシリカなどを用いることができる。
本発明の固形接着剤において、接着成分のポリマーとして用いられているアニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)は、固形接着剤中では水性シラノール化ポリマーの形態となっており、固形接着剤中の水が蒸発して減少する条件下では、固形接着剤中の水性シラノール化ポリマーにおけるシラノール基が縮合反応を起こして、硬化(架橋)が生じる。すなわち、固形接着剤は、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、反応により硬化・架橋が生じ、接着性が発現されている。一方、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)以外のアニオン性基含有ポリマーである場合、固形接着剤は、硬化に際しては反応せずに、水の蒸発により固化して接着性が発現されている。従って、本発明の固形接着剤では、アニオン性基含有ポリマー(A)の種類によって(特に、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)であるか否かによって)、接着成分としてのポリマーの構造が異なるだけでなく、接着性を発現する機構や、前記ポリマー構造の異なりによる作用・効果が顕著に異なっている。
特に、本発明では、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)におけるアニオン性基の含有率と、アルコキシシリル基のケイ素原子と結合しているアルコキシ基の酸素原子の含有率とをコントロールするとともに、塩基性化合物(B)の含有量をコントロールすることにより、繊維質材料(布や不織布等)や該繊維質材料による各種製品(衣服等)などの繊維製品や、皮革材料(牛革等)や該皮革材料による各種製品(牛革製鞄等)などの皮革製品に対する接着性をより一層良好にすることができるとともに、耐水性を顕著に向上させることができ、しかも、一般的な家庭用洗濯機および洗濯用合成洗剤(例えば、弱アルカリ性の洗濯用合成洗剤など)を使用して洗濯した際の接着保持性(すなわち、耐洗濯性)をより一層高めることができる。このように、本発明では、水性タイプのポリマー(水性シラノール化ポリマー)が、硬化後には、優れた接着性を発現しているとともに、優れた耐水性及び耐洗濯性を発揮している。
なお、本発明の固形接着剤では、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、固形接着剤中の水性シラノール化ポリマーにおけるシラノール基の縮合反応が、主として硬化に関与しているため、硬化速度の水の乾燥速度への依存性が、他のアニオン性基含有ポリマー(A)よりも少なく、初期接着強度が高くなっている。また、水の減少により架橋反応が進行しており、この架橋反応は水がある程度存在していても進行し、水を保持したままでも、凝集力を発現することが可能である。そのため、本発明の固形接着剤を用いて繊維製品や皮革製品の接着を行う際には、アニオン性基含有ポリマー(A)としてアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を用いることにより、貼り合わせる際の仮押さえ・圧締を行う必要がなく又はそれに要する時間を短縮することができ、接着の作業性を向上させることができ、さらに初期接着強度を改善することができる。
さらにまた、本発明の固形接着剤では、接着成分としてのポリマーであるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)は、比較的低分子量のポリマーであり、硬化した後は、シロキサン結合が形成されて、より高分子量のポリマー(特に、網目状に架橋構造が形成された高分子量のポリマー)となっている。従って、固形接着剤を製造する際には、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)、塩基性化合物(B)、水(C)および親水性有機溶剤(D)からなる樹脂組成物は、溶液又はコロイド分散液として調製されているため、ゲル化剤(E)を用いてスティック状接着剤(固形接着剤)に成形するのに好適である。
さらに、本発明の固形接着剤は、優れた保形性を発揮することができ、塗布する際に崩れにくく又は折れにくく、塗布時の破損を抑制又は防止することができる。
なお、本発明の固形接着剤において、アニオン性基含有ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)である場合、水を含んでいるにもかかわらず、水性シラノール化ポリマー[すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)]のシラノール基が安定に存在している。これは、例えば、シラノール基が、系中に多量に存在する水分子により保護されて、シラノール基間の縮合反応が抑制又は防止されているためや、シラノール基が、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)としてのアミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)に由来する第2級アミノ基や第3級アミノ基の窒素原子に結合している置換基(例えば、不飽和カルボン酸エステル(A4-3)に由来する長鎖の置換基又はそのエステル部位など)により保護され、シラノール基間の縮合反応が抑制又は防止されているためなどであると思われる。従って、本発明の固形接着剤は、貯蔵安定性が優れているとともに、硬化速度が速い1液架橋型タイプの固形接着剤とすることができる。
従って、本発明の固形接着剤は、繊維製品や皮革製品を接着させるための繊維製品及び皮革製品用固形接着剤(スティック状接着剤)として好適に用いることができ、特に、繊維製品を接着させるための繊維製品用固形接着剤として好適に用いることができる。
本発明の固形接着剤により貼り合わせることができる被着体である繊維製品や皮革製品としては、繊維製品又は皮革製品であれば特に制限されない。具体的には、繊維製品としては、例えば、布(織布)、不織布、フェルト、編み布(編んだ布)、フリース生地等の繊維質材料や、これらの繊維質材料による各種製品などが挙げられる。なお、繊維質材料における繊維素材としては、特に制限されず、例えば、天然繊維素材(植物系繊維素材や動物系繊維素材など)、半合成繊維素材、合成繊維素材のいずれであってもよい。具体的には、繊維質材料の繊維素材としては、綿、麻、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン系繊維、セルロース系繊維、絹繊維、羊毛などが挙げられる。また、繊維質材料による各種製品としては、少なくとも一部に繊維質材料が用いられた製品であればよく、例えば、衣服、ハンカチ、タオル、エプロン、ゼッケン、帽子、ふとんカバー、カーテン、布製袋、布製鞄、人形などが挙げられる。
一方、皮革製品としては、天然皮革や合成皮革等の皮革材料や、これらの皮革材料による各種製品などが挙げられる。なお、皮革材料における天然皮革や合成皮革としては、従来公知の天然皮革や合成皮革であれば特に制限されず、例えば、天然皮革としては、牛革、ワニ皮などが挙げられる。また、皮革材料による各種製品としては、少なくとも一部に皮革材料が用いられた製品であればよく、例えば、衣服、袋、鞄、ベルト、人形などが挙げられる。
このような繊維製品や皮革製品等の被着体としては、同一の素材からなる被着体(繊維製品や皮革製品に)同士であってもよく、異なる素材からなる被着体であってもよい。被着体はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。
なお、本発明の固形接着剤は、被着体に塗布した後、直ちに被着体同士を貼り合わせる方法や、被着体に塗布した後、所定時間経過させて、粘着性が発現している状態で被着体同士を貼り合わせるコンタクト接着方法などの種々の方法により用いることができる。なお、本発明では、コンタクト接着とは、貼り合わせる被着体のうち少なくとも何れか一方の貼着面に塗布して、所定時間経過後に粘着性が発現している状態で、2つの被着体を貼り合わせて接着させることを意味している。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。また、実施例1〜3は、参考例として記載する。実施例及び比較例で用いた材料は下記の通りである。
[アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1)]
(1)商品名「PTMG2000」[三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g;「イソシアネート反応性化合物(A1-a)」と称する場合がある]
(2)商品名「アミノアルコールMDA」[日本乳化剤社製;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン(N−メチルジエタノールアミン);水酸基価:941.6mg−KOH/g;「イソシアネート反応性化合物(A1-b)」と称する場合がある]
(3)イソホロンジアミン[「イソシアネート反応性化合物(A1-c)」と称する場合がある]
[アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A2)]
(1)2,2−ジメチロールブタン酸[水酸基価:758.1mg−KOH/g;「イソシアネート反応性化合物(A2-a)」と称する場合がある]
[ポリイソシアネート化合物(A3)]
(1)イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%、IPDI;「ポリイソシアネート(A3-a)」と称する場合がある]
[イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)]
(1)商品名「KBM602」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン]:1モルに対して、2−エチルヘキシルアクリレート:2モルの割合で用い、混合して、50℃で7日間反応させて反応生成物[「アミノ基含有アルコキシシラン(A4-a)」と称する場合がある]を得た。
[塩基性化合物]
(1)トリエチルアミン
[水]
(1)イオン交換水(脱イオン水)
[揮発性親水性有機溶剤]
(1)エタノール
[ゲル化剤]
(1)商品名「ゲルオールD」[新日本理化社製;ジベンジリデンソルビトール;「ゲル化剤(a)」と称する場合がある]
(2)ステアリン酸ナトリウム[「ゲル化剤(b)」と称する場合がある]
[非揮発性親水性有機溶剤]
(1)N−メチル−2−ピロリドン
(2)ε−カプロラクタム
[疎水性ポリマー]
(1)商品名「YSポリスターN125」[ヤスハラケミカル社製;テルペンフェノール系樹脂;「疎水性ポリマー(a)」と称する場合がある]
(2)商品名「ARUFON UC−3000」[東亞合成社製;アクリル系樹脂;「疎水性ポリマー(b)」と称する場合がある]
(3)商品名「クリアロンK100」[ヤスハラケミカル社製;水素添加テルペン系樹脂;「疎水性ポリマー(c)」と称する場合がある]
(4)商品名「パインクリスタルKE604」[荒川化学社製;淡色ロジン;「疎水性ポリマー(d)」と称する場合がある]
[ゴム成分]
(1)商品名「クインタック3520」[日本ゼオン社製;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体;「ゴム成分(a)」と称する場合がある]
(実施例1)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、イソシアネート反応性化合物(A1-a):150部、イソシアネート反応性化合物(A1-b):6部、イソシアネート反応性化合物(A2-a):12部、ポリイソシアネート(A3-a):55部、トリエチルアミン:8部、及びメチルエチルケトン:80部を配合し、75〜80℃の温度で窒素気流下3時間反応を行い、残存イソシアネート基が1.5%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物を得た。
このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーの反応混合物全量に、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-a):14部を配合して混合した後、75〜80℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマー(カルボキシル基は塩の形態を有していてもよい)を含む反応混合物(「ポリマー原液A」と称する場合がある)を得た。
次に、ポリマー原液A:20部に対し、ゴム成分(a):5部、疎水性ポリマー(a):8部、及びメチルエチルケトン:20部を加え、溶解させた後、脱イオン水:30部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させた後、エタノール:35部を加えて攪拌し、さらに、80℃でN−メチル−2−ピロリドン:6部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて攪拌して、シラノール化樹脂組成物を調製した。前記シラノール化樹脂組成物を、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は31質量%である。
(実施例2)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、イソシアネート反応性化合物(A1-a):150部、イソシアネート反応性化合物(A1-b):6部、イソシアネート反応性化合物(A2-a):12部、ポリイソシアネート(A3-a):55部、トリエチルアミン:8部、及びメチルエチルケトン:80部を配合し、75〜80℃の温度で窒素気流下3時間反応を行い、残存イソシアネート基が1.5%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物を得た。
このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーの反応混合物全量に、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-a):14部を配合して混合した後、75〜80℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマーを含む反応混合物を得た。
さらに、カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマーを含む反応混合物を40℃まで冷却した後、イソシアネート反応性化合物(A1-c):2.8部を高速攪拌下配合して、架橋反応を進行させて、カルボキシル基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(カルボキシル基は塩の形態を有していてもよい)を含む反応混合物を(「ポリマー原液B」と称する場合がある)を得た。
次に、ポリマー原液B:20部に対し、ゴム成分(a):5部、疎水性ポリマー(a):8部、及びメチルエチルケトン:20部を加え、溶解させた後、脱イオン水:30部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させた後、エタノール:35部を加えて攪拌し、さらに、80℃でN−メチル−2−ピロリドン:6部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて攪拌して、シラノール化樹脂組成物を調製した。前記シラノール化樹脂組成物を、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は31質量%である。
(実施例3)
実施例1と同様にしてポリマー原液Aを調製した。
次に、ポリマー原液A:20部に対し、ゴム成分(a):5部、疎水性ポリマー(a):6部、疎水性ポリマー(b):2部、及びメチルエチルケトン:20部を加え、溶解させた後、脱イオン水:30部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させた後、エタノール:35部を加えて攪拌し、さらに、80℃でN−メチル−2−ピロリドン:6部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて攪拌して、シラノール化樹脂組成物を調製した。前記シラノール化樹脂組成物を、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み、室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は31質量%である。
(比較例1)
実施例1と同様にしてポリマー原液Aを調製した。
次に、ポリマー原液A:20部に対し、ゴム成分(a):5部、疎水性ポリマー(a):8部、及びメチルエチルケトン:20部を加え、溶解させた後、脱イオン水:50部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させた後、ゲル化剤(b):3部を加えて攪拌して、シラノール化樹脂組成物を調製した。前記シラノール化樹脂組成物を、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み、室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。
(比較例2)
実施例1と同様にしてポリマー原液Aを調製した。
次に、ポリマー原液A:20部に対し、ゴム成分(a):5部、疎水性ポリマー(c):8部、及びメチルエチルケトン:20部を加え、溶解させた後、脱イオン水:30部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させた後、エタノール:35部を加えて攪拌し、さらに、80℃でN−メチル−2−ピロリドン:6部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて攪拌して、シラノール化樹脂組成物を調製した。前記シラノール化樹脂組成物を、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。
(比較例3)
実施例1と同様にしてポリマー原液Aを調製した。
次に、ポリマー原液A:20部に対し、ゴム成分(a):5部、疎水性ポリマー(d):8部、及びメチルエチルケトン:20部を加え、溶解させようとしたが、疎水性ポリマー(e)がメチルエチルケトンに溶解せず、ゲル状またはダマの状態となった。そのため、シラノール化樹脂組成物を調製して、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得ることができなかった。
なお、ポリマー原液Aやポリマー原液Bにおけるカルボキシル基含有ポリマー(カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマーまたはカルボキシル基含有アルコキシシリル基末端ポリマー)について、各種の特性や割合などを表1に示した。表1において、「NCO/NCO反応性基(当量比)」は、ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基(NCO)と、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物及びアニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物におけるイソシアネート反応性基(NCO反応性基:−OHや−NH2など)との割合(NCO/NCO反応性基)(当量比)を示している。「カルボキシル基含有率(%)」は、カルボキシル基含有ポリマー中のカルボキシル基(COOH)の含有率(%)を示している(なお、カルボキシル基が塩の形態となっている場合は、塩の形態を有していないものとみなしている)。「中和率(%)」は、カルボキシル基含有ポリマー中のカルボキシル基が塩基性化合物(トリエチルアミン)により中和されて塩となった割合(%)を示している。「シリル化率(%)」は、カルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマー中のイソシアネート基と、アミノ基含有アルコキシシラン化合物との反応率(%)を示している。「鎖延長率(%)」は、カルボキシル基含有ポリマーにおける末端のイソシアネート基が、鎖延長又は架橋された割合を示している(なお、実施例1〜2や比較例1〜3では、鎖延長をしていないので、鎖延長率(%)は0%である)。「OR含有率(%)」は、シラノール化樹脂中のアルコキシシリル基のケイ素原子(Si)と結合しているアルコキシ基の酸素原子(O)の含有率(%)を示している。「重量平均分子量」は、カルボキシル基含有ポリマーの重量平均分子量を示している。
(評価)
実施例1〜3、比較例1〜3に係るスティック状の固形接着剤(スティック状接着剤)について、下記の測定方法又は評価方法により、スティック製造性、スティック保形性、スティック塗布作業性、初期接着強さ、常態接着強さ、耐洗濯性(洗濯後の接着強さ)、風合い、しみ出し防止性、貯蔵安定性を評価した。なお、評価結果は表2に示した。
[スティック製造性の評価方法]
固形接着剤であるスティック状接着剤を製造する際のシラノール化樹脂組成物とゲル化剤(ジベンジリデンソルビトールやステアリン酸ナトリウム)との混合物の製造後の液の状態を観察し、下記の基準により、スティック製造性を評価した。
(評価基準)
○:粗粒、皮張り等全くなく、均一な液である。
△:粗粒あるいは皮張りが少しでも見られる。
×:ゲル状、または、いわゆる「ダマ」が多数発生し製造困難である。
[スティック保形性の評価方法]
スティック状接着剤を、9号綿帆布(150mm×25mm、厚さ:0.75mm)の表面に、全面的に且つ均一的に塗布し(塗布量:約80g/m2)、この9号綿帆布の表面に塗布した際及び塗布した後のスティック状接着剤の形状を目視により観察して、下記の評価基準によりスティック保形性を評価した。
(評価基準)
○:崩れずに元の形状を保持している。
△:少し崩れている。
×:もろく、直ぐに崩れる。
[スティック塗布作業性の評価方法]
スティック状接着剤を、9号綿帆布(150mm×25mm、厚さ:0.75mm)の表面に、全面的に且つ均一的に塗布し(塗布量:約80g/m2)、この9号綿帆布の表面に塗布した際のスティック状接着剤の塗りやすさを感覚で評価し、下記の基準によりスティック滑り性を評価した。
(評価基準)
○:塗りやすい。
△:少し引っかかり、塗りにくい。
×:極めて塗りにくい又は塗れない。
[初期接着強さの測定方法]
被着体として、2枚の9号綿帆布(150mm×25mm、厚さ:0.75mm)を用い、スティック状接着剤を、2枚の9号綿帆布のそれぞれの表面に、全面的に且つ均一的に塗布(各面の塗布量:約80g/m2)し、この2枚の9号綿帆布を、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下、スティック状接着剤の塗布面どうしを重ね合わせて貼り合わせ、すぐにハンドローラー2往復により圧締した。その後、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下で10分間養生した後、島津製作所社製のオートグラフにより、引張速度:300mm/minの条件で、T形剥離接着強さを測定し、接着強さ(N/25mm)を評価した。なお、表中の初期接着強さの単位は「N/25mm」である。
[常態接着強さの測定方法]
被着体として、2枚の9号綿帆布(150mm×25mm、厚さ:0.75mm)を用い、スティック状接着剤を、2枚の9号綿帆布のそれぞれの表面に、全面的に且つ均一的に塗布(各面の塗布量:約80g/m2)し、この2枚の9号綿帆布を、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下、スティック状接着剤の塗布面どうしを重ね合わせて貼り合わせ、すぐにハンドローラー2往復により圧締した。その後、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下で1日間養生した後、島津製作所社製のオートグラフにより、引張速度:300mm/minの条件で、T形剥離接着強さを測定し、接着強さ(N/25mm)を評価した。なお、表中の常態接着強さの単位は「N/25mm」である。
[耐洗濯性の評価方法(洗濯後の接着強さの測定方法)]
被着体として、2枚の9号綿帆布(150mm×25mm、厚さ:0.75mm)を用い、スティック状接着剤を、2枚の9号綿帆布のそれぞれの表面に、全面的に且つ均一的に塗布(各面の塗布量:約80g/m2)し、この2枚の9号綿帆布を、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下、スティック状接着剤の塗布面どうしを重ね合わせて貼り合わせ、すぐにハンドローラー2往復により圧締した。その後、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下で1日間養生した後、市販の洗濯用合成洗剤(商品名「トップ」:ライオン社製;弱アルカリ性)を溶解した23℃の水道水(濃度:0.5g/L)を使用して、市販の家庭用洗濯機にて30分間洗濯し、その後2回すすぎを行った後、23℃の水道水に1日間浸漬させた。水道水中から9号綿帆布を取り出し、濡れた状態で、島津製作所社製のオートグラフにより、引張速度:300mm/minの条件で、T字剥離接着強さを測定し、洗濯後の接着強さ(N/25mm)を評価した。なお、表中の洗濯後の接着強さの単位は「N/25mm」である。
(風合いの評価方法)
スティック状接着剤を、2枚の綿生地(厚さ0.2mm)の表面に、それぞれ、60mmの距離を3往復させて塗布した後、すぐに、スティック状接着剤の塗布部どうしを重ね合わせて貼り合わせ、さらに、ハンドローラー2往復により圧締した。その後、風合いの程度を手触りで確認し、下記の評価基準によりしみ出し防止性を評価した。
(評価基準)
○:綿生地の風合いを保っている。
△:やや硬く感じる。
×:かなり硬く感じる。
(しみ出し防止性の評価方法)
スティック状接着剤を、2枚の綿生地(厚さ0.2mm)の表面に、それぞれ、60mmの距離を3往復させて塗布した後、すぐに、スティック状接着剤の塗布部どうしを重ね合わせて貼り合わせ、さらに、ハンドローラー2往復により圧締した。その後、しみの程度を目視で観察し、下記の評価基準によりしみ出し防止性を評価した。
(評価基準)
○:しみ出しが全くない。
△:しみ出しが生じており、その面積がスティック状接着剤の塗布面積の10%未満である。
×:しみ出しが生じており、その面積がスティック状接着剤の塗布面積の10%以上である。
(貯蔵安定性の評価方法)
スティック状接着剤を、50℃のパーフェクトオーブン中に60日間静置した後、室温で1日間静置した。その後、スティック状接着剤の色調や状態を目視により観察し、また、前記スティック塗布作業性の評価方法と同様の方法により、9号綿帆布(150mm×25mm、厚さ:0.75mm)の表面に塗布して、塗布作業性および洗濯後の接着強さを評価して、貯蔵安定性を、下記の基準により評価した。
(評価基準)
○:スティック状接着剤の色調や状態に変化が見られず、また、塗りやすく、洗濯後の接着強さの低下もなく、いずれも問題がない。
△:スティック状接着剤の色調に少し黄変が見られる、または、スティック状接着剤の状態に少し分離が見られる、または少し重くなっており、少し塗りにくくなっている、または、洗濯後の接着強さが15.0N/mm2以下になっている。
×:スティック状接着剤の色調がかなり変色している、または、スティック状接着剤の状態にかなり分離が見られる、またはゲル化している、または極めて塗りにくいまたは塗れない、または洗濯後の接着強さが10.0N/mm2以下になっている。
表2から明らかなように、実施例1〜3に係るスティック状接着剤は、初期接着強さや常態接着強さが優れており、しかも、弱アルカリ性の洗濯用合成洗剤等の洗剤を使用して洗濯させた後にも、その優れた接着強さを高いレベルで保持し、良好な接着強さで接着した状態を維持しており、耐水性のみならず、耐洗濯性が優れている。また、使用した際には、風合いが良好であり、しかも、接着させた後には、しみ出しが生じておらず、しみ出し防止性が優れている。さらに、貯蔵安定性も良好であり、長期間、保存又は保管することができる。さらにまた、塗布作業性も優れており、布等の被着体に容易に塗布することができ、しかも、塗布した際のスティック状接着剤の保形性も良好である。さらには、固形状に成型する際の材料である液は、粗粒や皮張りが全くなく、液の状態が良好であり、スティック状接着剤の製造性が優れている。
一方、比較例1に係るスティック状接着剤は、経時で耐水性が低下し、貯蔵安定性が極めて低い。また、比較例2に係るスティック状接着剤は、疎水性ポリマーとして、スティック状接着剤に含まれる親水性有機溶剤(具体的には、エチルアルコール)には溶けないポリマーが用いられているので、塗布した際には、崩れ易くなっており、スティック保形性が極めて低く、使用困難である。
(実施例4)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、イソシアネート反応性化合物(A1-a):150部、イソシアネート反応性化合物(A1-b):12部、イソシアネート反応性化合物(A2-a):25部、ポリイソシアネート(A3-a):91部、トリエチルアミン:17部、及びメチルエチルケトン:100部を配合し、80〜85℃の温度で窒素気流下5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物を得た。
このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーの反応混合物全量に、アミノ基含有アルコキシシラン(A4-a):15部を配合して混合した後、75〜80℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマー(カルボキシル基は塩の形態を有していてもよい)を含む反応混合物を得た後、さらに、脱イオン水:540部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させて、カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマー(カルボキシル基は塩の形態を有していてもよい)を含む混合液(「ポリマー原液C」と称する場合がある)を得た。
次に、ポリマー原液C:150部に、脱イオン水:25部を加えて、85℃で攪拌させたところに、N−メチル−2−ピロリドン:20部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は28質量%である。
(実施例5)
実施例4と同様にしてポリマー原液Cを調製した。
次に、ポリマー原液C:150部に、脱イオン水:25部を加えて、85℃で攪拌させたところに、ε−カプロラクタム:20部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は28質量%である。
(実施例6)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、イソシアネート反応性化合物(A1-a):150部、イソシアネート反応性化合物(A1-b):12部、イソシアネート反応性化合物(A2-a):25部、ポリイソシアネート(A3-a):91部、トリエチルアミン:17部、及びメチルエチルケトン:100部を配合し、80〜85℃の温度で窒素気流下5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを含む反応混合物(カルボキシル基は塩の形態を有していてもよい)を得た後、さらに、脱イオン水:515部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマー(カルボキシル基は塩の形態を有していてもよい)を含む混合液(「ポリマー原液D」と称する場合がある)を得た。
次に、ポリマー原液D:150部に、脱イオン水:25部を加えて、85℃で攪拌させたところに、N−メチル−2−ピロリドン:20部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は28質量%である。
(実施例7)
実施例4と同様にしてポリマー原液Cを調製した。
次に、ポリマー原液C:150部に、85℃で且つ攪拌下、N−メチル−2−ピロリドン:20部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は32質量%である。
(実施例8)
実施例4と同様にしてポリマー原液Cを調製した。
次に、ポリマー原液C:150部に、脱イオン水:10部を加えて、85℃で攪拌させたところに、N−メチル−2−ピロリドン:12部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は32質量%である。
(実施例9)
実施例4と同様にしてポリマー原液Cを調製した。
次に、ポリマー原液C:150部に、脱イオン水:40部を加えて、85℃で攪拌させたところに、N−メチル−2−ピロリドン:20部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は26質量%である。
(実施例10)
実施例4と同様にしてポリマー原液Cを調製した。
次に、ポリマー原液C:150部に、脱イオン水:25部を加えて、85℃で攪拌させたところに、N−メチル−2−ピロリドン:40部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は26質量%である。
(実施例11)
実施例4と同様にしてポリマー原液Cを調製した。
次に、ポリマー原液C:150部に、脱イオン水:40部を加えて、85℃で攪拌させたところに、N−メチル−2−ピロリドン:40部にゲル化剤(a):2部を溶解させた溶液を加えて、1時間攪拌して、いわゆる「スティック糊」用の容器に流し込み室温で放冷させて、スティック状の固形接着剤(スティック糊)を得た。なお、該固形接着剤において、樹脂分(ポリマー分)又は不揮発分は24質量%である。
なお、ポリマー原液Cやポリマー原液Dにおけるカルボキシル基含有ポリマー(カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマーまたはカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマー)について、各種の特性や割合などを表3に示した。表3において、「NCO/NCO反応性基(当量比)」、「カルボキシル基含有率(%)」、「中和率(%)」、「シリル化率(%)」、「鎖延長率(%)」、「OR含有率(%)」や、「重量平均分子量」は、表1の場合と同様である。
(評価)
実施例4〜11に係るスティック状の固形接着剤(スティック状接着剤)について、前記の測定方法又は評価方法により、スティック製造性、スティック保形性、スティック塗布作業性、初期接着強さ、常態接着強さ、耐洗濯性(洗濯後の接着強さ)、風合い、しみ出し防止性、貯蔵安定性を評価するとともに、さらに、下記の評価方法により、透明性を評価した。なお、評価結果は表4に示した。
(透明性の評価方法)
スティック状接着剤を、透明なアクリル製板(25mm×100mm、厚さ:5mm)の表面に、全面的に且つ均一的に塗布し(塗布量:約80g/m2)、温度:23℃且つ湿度:55%RHの条件下、24時間放置した後、アクリル製板の下面側に新聞紙を敷いて、アクリル板の上面側(スティック状接着剤を塗布した側)から観察し、下記の基準により、スティック状接着剤による皮膜の透明性を評価した。
(評価基準)
○:新聞紙の文字が十分に判読できる(皮膜が透明である)。
△:新聞紙の文字の判読が難しい(皮膜が半透明である)。
×:新聞紙の文字が見えない(皮膜が不透明である)。
表4から明らかなように、実施例4〜11に係るスティック状接着剤は、初期接着強さが良好であるとともに、常態接着強さが優れており、しかも、弱アルカリ性の洗濯用合成洗剤等の洗剤を使用して洗濯させた後にも、その優れた接着強さを高いレベルで保持し、良好な接着強さで接着した状態を維持しており、耐水性および耐洗濯性が優れている。また、使用した際には、風合いが良好であり、しかも、接着させた後には、しみ出しが生じておらず、しみ出し防止性が優れている。特に、硬化物(皮膜)の透明性が優れており、布等の被着体に塗布して接着させても、目立たず、優れた外観性を発揮させることができる。さらに、貯蔵安定性も良好であり、長期間、保存又は保管することができる。さらにまた、塗布作業性も優れており、布等の被着体に容易に塗布することができ、しかも、塗布した際のスティック状接着剤の保形性も良好である。さらには、固形状に成型する際の材料である液は、粗粒や皮張りが全くなく、液の状態が良好であり、スティック状接着剤の製造性が優れている。
このように、実施例4〜11に係るスティック状接着剤では、親水性有機溶剤として、揮発性親水性有機溶剤が用いられておらず、非揮発性親水性有機溶剤が用いられているので、85℃という高温下で攪拌して、カルボキシル基含有イソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ポリマー又はカルボキシル基含有イソシアネート基末端ポリマーを水に容易に分散させることができ、また、非揮発性親水性有機溶剤に溶解された状態のゲル化剤により、有効にゲル化させることができる。