JP5066655B2 - 電子撮像機器 - Google Patents
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Description
ここに、レンズやレンズを覆うレンズカバーに一部の可視光を鏡面反射させるようなコーティングを施して本来透明であるはずのこれらレンズ等の構成部品にミラー的な外装部品としての役割を付与することで新たな意匠的な貢献をさせることが可能である。
しかし、可視光を反射させることは反射させた波長域の光が欠落した状態で撮像機器内に取り込まれることとなるため取り込まれた画像が実際の視感特性とは大きく異なった画像となってしまう可能性がある。そのため、撮像機器においてレンズに一部の光を反射させたとしても、実際の視感特性を維持した撮影画像を得ることができるような撮像機器が求められることとなる。尚、レンズを覆うカバーガラスが外装部品として配設されている場合にはそのカバーガラスについても同様の課題が発生していた。
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、その目的は、レンズあるいはレンズのカバーガラスにおいて一部の可視光を反射させても取り込んだ画像を実際の視感特性と同等の画像として認識することが可能な電子撮像機器を提供することである。
このような構成とすれば、レンズ又はカバーガラスに形成された可視光反射膜によって可視光の一部を反射させて所望の可視光の反射色とすることができる。その場合に、反射させることで欠落する波長域の可視光は電子撮像機器内部の色補正機能によって補正して本来の可視光を反射させていない場合の撮影画像と同等の視感特性を維持することが可能となる。
また、「透過性金属薄膜層」は例えば金、銀、プラチナのような酸化されにくい金属光沢を有する金属のごく薄い膜構造体をいう。一般に透過性を有する金属薄膜層の膜厚は数nm〜数十nmのオーダーとなる。
これら誘電体多層薄膜層及び透過性金属薄膜層の成膜方法に特に限定的な意味はないが一般的には蒸着法やスパッタリング法で成膜されることが好ましい。
また、「直接あるいは他のコート層を介して」とは可視光反射膜と基材としてのレンズ又はカバーガラスとの密着性に問題がある場合に密着性を向上させるコート層を介する場合も含む意味である。他のコート層とは例えばレンズ基材表面に形成されたハードコート膜等が該当する。ハードコート膜としてはオルガノシロキサン系ハードコート膜が好ましい。オルガノシロキサン系ハードコート膜はオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子から構成されている。ハードコート膜はコート用のハードコート液に浸漬し、その後公知の方法にて溶媒を蒸発させて形成される。ハードコート液は水又はアルコール系の溶媒にオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子ゾルを混合させた溶液である。
「レンズ」あるいは「カバーガラス」の素材は有機系あるいは無機系の両方を含むものとする。従って「カバーガラス」とあるもののこの概念にはプラスチックも含むものとする。
このような構成とすれば、通常の使用状態で可視光反射膜の表面に接触することがないため、可視光反射膜が汚れたり傷ついたりするおそれが無くなる。
また、請求項3に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記レンズ又は前記ガラスの前面には反射防止膜が形成されていることをその要旨とする。
このような構成とすれば、レンズ又は前記ガラスの前面での可視光の反射が低減されることとなり可視光反射膜に達する可視光の総量が増加するため、可視光反射膜での反射光のコントラストが向上することとなる。
ここに、電子撮像機器は色補正機能として一般的にカラーマトリックス回路が組み込まれている。カラーマトリックス回路はR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)の三原色を3次元ベクトルの積として表したもので、基準となるRGBに対して所定のパラメータを用いた行列変換によってRGBの値を決定するものである。カラーマトリックス回路では適性なパラメータを設定できれば上記欠落した波長域の可視光を補うような計算が正確にできるため補正後の撮影画像をより実際の視感特性に近いものとすることが可能である。しかし、反射光についてカラーバリエーションを設定する場合には個別にパラメータを機器内に組み込まなければならないという繁雑さがある。
一方、ホワイトバランス機能は色の違いを色温度に基づいて判断するとしたものであって、基準とされる白色の色温度と測定される画像の白色の色温度との違いを比較して色温度の差に基づいて画像の色を補正する比較回路によって実行される機能である。従って、前もってパラメータを設定する必要がなく、カラーバリエーションを設定する場合に対応しやすいというメリットがある。
また、請求項5に記載の発明では請求項4に記載の発明の構成に加え、前記可視光反射膜で反射される可視光域にある光を70%より高い反射率としないようにしたことをその要旨とする。
ホワイトバランス機能では上記のようにパラメータを設定する必要はないものの、測定するデータとしてある波長域の欠落割合があまり大きいとその波長域のデータが不足して白色について正確な補正ができなくなってしまう可能性がある。特に100%の反射率とした波長域が持続する領域を有する設計の可視光反射膜では測定データとしてまったく取り込まれない部分が多いため補正は困難である。また、100%ではなくとも70%程度の反射率、つまり30%程度の透過率ではその傾向が大きい。一方で可視光反射膜としては例えば50%程度の反射率であっても十分反射膜として認識できるため、可視光反射膜の反射率は70%より高くしない設計が好ましい。
また、請求項6に記載の発明では請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記可視光反射膜は保護膜によって覆われていることをその要旨とする。
保護膜としては上記のようなハードコート膜が想定される。
本実施の形態では光学系3の最前列の凸レンズ3aの裏面(筐体側)に対して図2に示すような可視光反射膜5が成膜されている。尚、図2は可視光反射膜5の厚さが誇張されて図示されている。可視光反射膜5は下記実施例のような誘電体多層薄膜層又は透過性金属薄膜層を既知の方法で成膜させた可視光を鏡面反射させる膜体である。本実施の形態の可視光反射膜5では可視光域の光を部分的に反射させて鏡面としている。
光学系3の後方には視感度補正フィルタ8を介してCCD素子からなるCCDイメージセンサ9が配設されている。視感度補正フィルタ8は分光感度特性を人間の目の特性と同等の色合いとするために配置されている。つまり、取り込んだ光について可視光域の波長域に特化した感度特性に補正するものである。
このように構成することによって、一部の可視光を鏡面反射させてCCDイメージセンサ9に達する可視光が一部欠落してもホワイトバランス回路6あるいはカラーマトリックス回路7によって補正して撮影画像と同等の視感特性を維持した画像を得ることが可能である。また可視光反射膜5によって光学系3から筐体4側が目視されることがなく、このような可視光反射膜5を有する凸レンズ3aがデジタルスチルカメラ1全体のデザインに貢献することとなる。
また、実施の形態としては図3に示すように、レンズカバー2の裏面に対して可視光反射膜5を成膜するようにしてもよい。レンズカバー2はアクリル製であるため、直接可視光反射膜5を成膜する際の密着性が劣る。そのため、本実施の形態ではハードコート層11を介して可視光反射膜5が成膜されている。尚、図3は可視光反射膜5及びハードコート層11の厚さが誇張されて図示されている。
また、可視光反射膜5は凸レンズ3aの表面あるいはレンズカバー2の表面に成膜させることも可能であるが、その場合には保護層としてハードコート層によって被覆することが好ましい。
この実施例1によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例2によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例3によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例4によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例5によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例6によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例7によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例8によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例9によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
この実施例10によってシミュレーションした結果を表6及び表7に示す。
ホワイトバランス機能による画像の補正については実際のデジタルスチルカメラのレンズ前面に実施例1〜実施例10の可視光反射膜を成膜したフィルターを配置して当該デジタルスチルカメラの自動ホワイトバランス機能を利用した。撮影対象は普通紙にカラープリンターによって印刷したカラー図形を撮影することとした。撮影条件としては蛍光灯と自然光(太陽光)の下での撮影対象の撮影画像を、それぞれ自動ホワイトバランス機能によって補正処理を行った場合を「有」とし、と補正処理を行わない場合を「無」としてその結果を表示した。
確認方法は実際の視感特性を維持できている(変色がない)場合を○、わずかに実際の視感特性とずれがある(わずかな変色)場合を△、実際の視感特性と大きく異なる(変色が大きい)場合を×として表した。
また、表7に実施例1〜実施例10の可視光反射膜を通した撮影画像についてカラーマトリックス機能によって補正を行った結果を示す。
カラーマトリックス機能による画像の補正については上記と同じデジタルスチルカメラの画像補正機能をすべて解除した状態で撮影した画像をパソコンに取り込み、カラー修正機能を有する画像編集用ソフトを利用してパソコンのモニター上で補正をした。撮影についての各条件は上記と同様である。
また、実施例10では70nm付近で70%の反射率となっているためカラーマトリックス機能での補正が十分ではなかった。
Claims (6)
- レンズ又は同レンズの前面に配置されたカバーガラスの表面及び裏面の少なくとも一方に直接あるいは他のコート層を介して誘電体多層薄膜層又は透過性金属薄膜層からなる可視光反射膜を形成し、可視光の一部を反射させるようにするとともに、反射されずに透過した光に基づいて色補正機能によって撮影した画像を撮影環境に対応した適正な色状態に補正するようにしたことを特徴とする電子撮像機器。
- 前記可視光反射膜は前記レンズ又は前記ガラスの裏面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子撮像機器。
- 前記レンズ又は前記ガラスの前面には反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子撮像機器。
- 前記色補正機能とはホワイトバランス機能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子撮像機器。
- 前記可視光反射膜で反射される可視光域にある光は70%より高い反射率としないことを特徴とする請求項4に記載の電子撮像機器。
- 前記可視光反射膜は保護膜によって覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子撮像機器。
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