本発明は、他の核酸分子、特にRNAを切断することができる核酸酵素又は触媒(酵素)DNA分子に関する。本発明は、また、開示された酵素DNA分子を含む組成物及びその酵素及び組成物を製造及び使用する方法に関する。
天然の状況外で作用し、天然では示さない反応も触媒する触媒が求められたことにより“酵素工学”技術の開発がもたらされた。酵素工学に用いられた通常の経路は“合理的な設計”法であり、新しい酵素の構築を促進することを天然酵素の理解に頼ってきた。残念ながら、タンパク質の構造と化学の領域における熟達状態は新規な生物学的触媒の生成を日常的にするには不十分である。
最近、新規な触媒を開発する異なる方法が用いられた。その方法は、高分子の不均一なプールの構築及び所望の反応を触媒する該プールから分子を単離する試験管内選択法の適用を必要とする。高分子のプールから触媒を選択することは、構造特性や化学的性質の網羅的な理解に依存しない。従って、その方法は“不合理な設計”と呼ばれた(Brennerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5381−5383,1992)。
今までの酵素DNA分子の合理的な設計に伴うほとんどの努力は触媒作用を基本的に新しくしたり改良した分子をもたらさなかった。しかしながら、天然での生物のダーウィン的進化後にパターン化される“特定分子生成”又は“試験管内生成”として我々が記載した方法による不合理な設計法を適用することにより、望ましい機能特性をもつDNA分子の生産がもたらされる可能性がある。
この手法は、溶液中のRNA分子(例えば、Millら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,58:83,1967;Greenら,Nature,347:406,1990;Chowriraら,Nature,354:320,1991;Joyce,Gene,82:83,1989;Beaudryら,Science,257:635−641,1992;Robertsonら,Nature,344:467,1990を参照されたい)、及び固体支持体に結合するリガンドに結合したRNA(Tuerkら,Science,249:505,1990;Ellingtonら,Nature,346:818,1990)にいろいろな程度の成功で適用されている。また、固体支持体に直接結合したぺプチド(Lamら,Nature,354:82,1991);及びウイルスコートタンパク質内で発現したぺプチドエピトープ(Scottら,Science,249:386,1990;Devlinら,Science,249:249,1990;Cwirlaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6378,1990)にも適用されている。
触媒RNAの発見から10年が過ぎた(Krugerら,Cell,31:147−157,1982;Guerrier−Takadaら,Cell,35:849−857,1983)。既知の天然に存在するリボザイムのリストは増加し続けており(Cech,The RNA World,Gesteland & Atkins(eds.),pp.239−269,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1993);Pyle,Science,261:709−714,1993;Symons,Curr.Opin.Struct.Biol.,4:322−330,1994を参照されたい)、最近では試験管内生成により得られた合成リボザイムが増加してきた(Joyce,Curr.Opin.Struct.Biol.,4:331−336,1994;Breakerら,Trends Biotech.,12:268−275,1994;Chamanら,Curr.Opin.Struct.Biol.,4:618−622,1994を参照されたい)。
DNAも同様に触媒活性を有すると考えることは合理的なことであり、ほとんどがRNAと同じ官能基を含むと考えられる。しかしながら、ある種のウイルスゲノムと複製中間体を除いて、生物体のDNAのほとんど全部が完全な二重らせんとして存在し、二次及び三次複合構造をとることを防止している。従って、DNA酵素が天然に見られないことは驚くべきことではない。
本発明の出現まで、ヌクレオチド切断能力を有する触媒DNA分子の設計、合成及び使用は開示も証明もされていない。従って、本明細書に開示された発見や発明は、他の核酸、特にRNAを切断する酵素DNA分子を含む著しく効率のよい触媒分子を設計する手段として試験管内生成の可能性を強調する点で特に重要である。
発明の要約
本発明は、特定の切断部位において基質の核酸(NA)配列を切断することができる合成又は工学的(即ち、天然に存在しない)触媒DNA分子(又は酵素DNA分子)を記載する。本発明は、また、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素DNA分子を企図する。
好ましい触媒DNA分子は、予め選択された基質核酸配列において切断部位を限定しているヌクレオチド配列に特異的な部位特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する。該DNA分子は、コア領域を隣接している第1及び第2基質結合領域を有し、該第1基質結合領域は予め選択された基質核酸配列の第1部分に相補的な配列を有し、該第2基質結合領域は予め選択された基質核酸配列の第2部分に相補的な配列を有する。コア領域は下記式の配列を有する。
(I.) T(ステム)′AGC(ステム)″Z、
(式中、(ステム)′及び(ステム)″は各々3連続ヌクレアーゼであり、(ステム)′:(ステム)″対としてハイブリダイズした場合、少なくとも2つのG:C対を含む3つの塩基対を含み、Z=WCGR又はWCGAAであり、W=A又はT及びR=A又はGである。)好適実施態様においては、式Iは配列番号120(8−17)を定義している。
また、下記式の配列を有するコア領域も企図する。
(II.) RGGCTAGCXACAACGA(配列番号)
(式中、X=T、C又はAであり、R=A又はGである。)好適実施態様においては、式Iは配列番号121(10−23)を定義している。
他の実施態様においては、エンドヌクレアーゼ活性は、基質核酸配列において一本鎖核酸を含む切断部位を限定しているヌクレオチド配列に特異的である。他の好適態様においては、切断部位は二本鎖核酸である。同様に、基質核酸配列は、一本鎖、二本鎖、部分的一本鎖又は二本鎖、ループ、又はその組合わせである。
企図した他の実施態様においては、基質核酸配列は1以上のヌクレオチド類似体が含まれている。態様においては、基質核酸配列は大きな分子の一部、又はそれに結合されている。
種々の実施態様においては、その大きな分子はRNA、修飾したRNA、DNA、修飾したDNA、ヌクレオチド類似体、又はその複合物からなる群より選ばれる。他の例においては、その大きな分子は核酸配列と非核酸配列の複合物を含んでいる。
他の実施態様においては、本発明は、基質核酸配列が1以上のヌクレオチド類似体を含むことを企図している。他の態様は、一本鎖核酸がRNA、DNA、修飾したRNA、修飾したDNA、1以上のヌクレオチド類似体、又はその複合物を含むことを企図している。開示された本発明の実施態様においては、エンドヌクレアーゼは、ホスホエステル結合を切断部位で加水分解的に切断することを含んでいる。
種々の好適実施態様においては、本発明の触媒DNA分子は全部又は一部が一本鎖である。これらの触媒DNA分子は、触媒活性と一致した種々の形をとることが好ましい。従って、態様においては、本発明の触媒DNA分子は1以上のヘアピンループ構造が含まれている。他の態様においては、触媒DNA分子は“ハンマーヘッド”リボザイムと同様の形をとるものである。他の実施態様においては、触媒DNA分子はテトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila)リボザイム、例えば、グループIイントロンから誘導されたものと同様のコンホメーションをとるものである。
同様に、本発明の好ましい触媒DNA分子は、基質分子のもとの向きに無関係に部位特異的エンドヌクレアーゼ活性を示すことができる。従って、好適実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は酵素DNA分子から分離している基質核酸配列を切断することができる。即ち、DNAzymeに結合されていない。他の実施態様においては、酵素DNA分子は結合した基質核酸配列を切断することができる。即ち、自己切断と同じ反応を行うことができる。
本発明は、また、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素DNA分子(触媒DNA分子、デオキシリボザイム又はDNAzyme)を企図し、よってエンドヌクレアーゼ活性には2価の陽イオンの存在が必要である。種々の代替的好適実施態様においては、2価の陽イオンはPb2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+、及びCa2+からなる群より選ばれる。他の態様は、エンドヌクレアーゼ活性が1価の陽イオンの存在を必要とすることを企図する。その代替的実施態様においては、1価の陽イオンはNa+及びK+からなる群より選ばれることが好ましい。
本発明の種々の好適実施態様においては、酵素DNA分子は、配列番号3;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22からなる群より選ばれたヌクレオチド配列を含んでいる。他の好適実施態様においては、本発明の触媒DNA分子は、配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26;配列番号27;配列番号28;配列番号29;配列番号30;配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;配列番号38;及び配列番号39からなる群より選ばれたヌクレオチド配列を含んでいる。
他の好適実施態様は、本発明の触媒DNA分子が配列番号50及び配列番号51からなる群より選ばれたヌクレオチド配列を含んでいる。他の好適実施態様においては、本発明の触媒DNA分子は配列番号52〜101からなる群より選ばれたヌクレオチド配列を含んでいる。本明細書に開示されるように、本明細書に開示されたものと実質的に同じ配列を有する触媒DNA分子も企図される。従って、他の有効な種々の酵素DNA分子を作成するために種々の置換、欠失、挿入、複製及び他の突然変異が本明細書中に記載された分子に行なわれる。前記分子が本明細書に開示された部位特異的切断活性を示す限り、本開示の境界の範囲内である。
本発明の態様においては、更に、本発明の酵素DNA分子の基質結合親和性が約1μM以下であることが好ましい。他の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は約0.1μM未満のKDで基質を結合する。
本発明は、また、有効な代謝回転速度を有する酵素DNA分子を開示する。実施態様においては、代謝回転速度は5hr−1未満である。好適実施態様においては、代謝回転速度は約2hr−1未満である。更に好適な実施態様においては、代謝回転速度は約1hr−1未満である。なお更に好適な実施態様においては、代謝回転速度は約0.6hr−1未満である。
他の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は有効な代謝回転速度を示し、kobsは1min−1未満、好ましくは0.1min−1未満、更に好ましくは0.01min−1未満、なお更に好ましくは0.005min−1未満である。態様においては、kobs値は約0.002min−1以下である。
本発明は、また、開示されたDNA酵素の触媒速度が十分に最適化されている実施態様を企図する。従って、種々の好適実施態様においては、Mg2+の存在によって高められた反応のKmは約0.5〜20mM、好ましくは約1〜10mM、更に好ましくは約2〜5mMである。
本発明は、また、切断部位を限定しているヌクレオチド配列が少なくとも1のヌクレオチドを含む実施態様を企図する。他の種々の好適実施態様においては、本発明の触媒DNA分子は2以上のヌクレオチドの切断部位を限定するヌクレオチド配列を認識及び切断することができる。
種々の好適実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、1以上の基質結合領域が隣接した保存コアを含んでいる。実施態様においては、酵素DNA分子には第1及び第2基質結合領域が含まれている。他の実施態様においては、酵素DNA分子には2以上の基質結合領域が含まれている。
上記のように、本発明の好ましい触媒DNA分子にも保存コアが含まれる。好適実施態様においては、保存コアは1以上の保存領域を含んでいる。他の好適態様においては、1以上の保存領域にはCG;CGA;AGCG;AGCCG;CAGCGAT;CTTGTTT;及びCTTATTTからなる群より選ばれたヌクレオチド配列が含まれている(例えば、図3を参照されたい)。
本発明の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、更に、保存コア内の保存領域間に1以上の可変ヌクレオチド又はスペーサーヌクレオチドを含んでいる。他の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、更に、保存コアと基質結合領域間に1以上の可変ヌクレオチド又はスペーサーヌクレオチドを含んでいる。
態様においては、第1基質結合領域はCATCTCT;GCTCT;TTGCTTTTT;TGTCTTCTC;TTGCTGCT;GCCATGCTTT(配列番号40);CTCTATTTCT(配列番号41);GTCGGCA;CATCTCTTC;及びACTTCTからなる群より選ばれたヌクレオチド配列を含むことが好ましい。他の好適態様においては、第2基質結合領域にはTATGTGACGCTA(配列番号42);TATAGTCGTA(配列番号43);ATAGCGTATTA(配列番号44);ATAGTTACGTCAT(配列番号45);AATAGTGAAGTGTT(配列番号46);TATAGTGTA;ATAGTCGGT;ATAGGCCCGGT(配列番号47);AATAGTGAGGCTTG(配列番号48);及びATGNTGからなる群より選ばれたヌクレオチド配列が含まれている。
本発明の種々の実施態様においては、基質結合領域は長さが変化する。従って、例えば、基質結合領域は1のヌクレオチドから12のヌクレオチドを含む。しかしながら、長さが約3〜25ヌクレオチド、好ましくは約3−15ヌクレオチド、更に好ましくは約3−15ヌクレオチドの基質結合領域が特に好ましいことが理解される。種々の実施態様においては、基質結合領域内の個々のヌクレオチドは基質分子のヌクレオチドと相補的塩基対を結合することができる。他の実施態様においては、非相補的塩基対も形成されている。相補的及び非相補的塩基対合の混合物も本発明の開示された実施態様の範囲内に包含するものとして企図される。
他の好適実施態様においては、本発明の触媒DNA分子は、更に、第3基質結合領域を含んでいる。いくつかの好適実施態様においては、該第3領域にはTGTT;TGTTA;及びTGTTAGからなる群より選ばれたヌクレオチド配列が含まれている。本発明の他の好適実施態様には、基質結合領域間に1以上の可変領域又は“スペーサー”領域を更に含む酵素DNA分子が開示されている。
他の開示された実施態様においては、本発明は、他のDNA分子及びオリゴヌクレオチドから分離した、エンドヌクレアーゼ活性を有する精製した合成酵素DNA分子を企図し、該エンドヌクレアーゼ活性は基質核酸配列内の一本鎖又は二本鎖核酸を含む切断部位を限定するヌクレオチド配列に特異的である。態様においては、エンドヌクレアーゼ活性を有する合成(工学的)酵素DNA分子は基質核酸配列の実質的に一本鎖又は二本鎖領域を含む切断部位を限定しているヌクレオチド配列に特異的である。
他の実施態様においては、本発明は、核酸含有基質を加水分解して基質切断産物を得る触媒活性を有するデオキシリボヌクレオチドポリマーを含む酵素DNA分子を企図している。態様においては、加水分解は部位特異的な方法で起こる。上記のように、ポリマーは一本鎖、二本鎖、又は双方の組合わせである。
本発明は、更に、核酸配列を含む基質を企図する。種々の実施態様においては、核酸配列は、RNA、修飾したRNA、DNA、修飾したDNA、1以上のヌクレオチド類似体、又はその複合物を含んでいる。実施態様は、基質が一本鎖セグメントを含むことを企図する。他の実施態様は、基質が二本鎖であることを企図する。
本発明は、また、核酸含有基質を加水分解して切断産物を得る触媒活性を有するデオキシリボヌクレオチドポリマーを含む酵素DNA分子を企図する。態様においては、酵素DNA分子は基質に対して効果的な結合親和性を有し、切断産物に対して効果的な結合親和性を欠いている。
好適実施態様においては、本発明は、認識ドメイン、可変領域、及びスペーサー領域が隣接した保存コアを限定しているヌクレオチド配列を含む天然に存在しない酵素DNA分子を開示している。従って、好適実施態様においては、ヌクレオチド配列は、分子の5′末端に近接又は隣接する第1可変領域、3′末端→第1可変領域に位置する第1認識ドメイン、3′末端→第1認識ドメインに位置する第1スペーサー領域、3′末端→第1スペーサー領域に位置する第1保存領域、3′末端→第1保存領域に位置する第2スペーサー領域、3′末端→第2スペーサー領域に位置する第2保存領域、3′末端→第2保存領域に位置する第2認識ドメイン、及び3′末端→第2認識ドメインに位置する第2可変領域を限定している。
他の実施態様においては、ヌクレオチド配列は、分子の5′末端に近接又は隣接する第1可変領域、3′末端→第1可変領域に位置する第1認識ドメイン、3′末端→第1認識ドメインに位置する第1スペーサー領域、3′末端→第1スペーサー領域に位置する第1保存領域、3′末端→第1保存領域に位置する第2スペーサー領域、3′末端→第2スペーサー領域に位置する第2保存領域、3′末端→第2保存領域に位置する第2認識ドメイン、3′末端→第2認識ドメインに位置する第2可変領域、及び3′末端→第2可変領域に位置する第3認識ドメインを限定している。
上記態様においては、分子には2つの基質結合ドメインが隣接した保存コア領域が含まれる。他の態様においては、保存コア領域は1以上の保存ドメインを含んでいる。他の好適実施態様においては、保存コア領域は1以上の可変ヌクレオチド又はスペーサーヌクレオチドを含んでいる。他の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、更に、1以上のスペーサー領域を含んでいる。
本発明は、更に、種々の組成物を企図する。例えば、上記酵素DNA分子を含む組成物が開示及び企図される。代替的実施態様においては、本発明の組成物は、2集団以上の上記酵素DNA分子を含み、酵素DNA分子の各集団は基質中の異なる配列を切断することができる。他の態様においては、組成物は、2集団以上の上記酵素DNA分子を含み、酵素DNA分子の各集団は異なる基質を認識することができる。種々の実施態様においては、組成物は1価又は2価の陽イオンを含むことが好ましい。
本発明は、更に、本発明の酵素DNA分子を作成、選択、及び単離する方法を企図する。態様においては、核酸(例えば、RNA)を特定部位で切断する酵素DNA分子を選択する方法は、次の工程:(a)配列が天然に存在するか合成かの推定酵素DNA分子、好ましくは一本鎖DNA分子であるものの集団を得る工程;(b)ヌクレオチド含有基質配列と上記DNA分子の集団とを混合して混合物を形成する工程;(c)該混合物を該集団内の該推定酵素DNA分子が該基質配列を切断させるのに十分な時間及び所定の反応条件下で維持し、よって基質切断産物を得る工程;(d)DNA分子の該集団を該基質配列と基質切断産物から分離する工程;(e)基質核酸配列(例えば、RNA)を特異的部位で切断するDNA分子を該集団から単離する工程を含んでいる。
前記方法の態様においては、基質核酸配列を特異的部位で切断するDNA分子は固定化剤で標識される。例においては、該薬剤はビオチンを含んでいる。
上記方法の他の態様においては、切断したい配列−−例えば、予め決められた“標的”ヌクレオチド配列−−をそのために操作した酵素DNA分子を用いて選択することにより開始する。従って、実施態様においては、予め選択された(又は予め決められた)“標的”配列を用いて特異的部位の基質核酸配列を1以上のランダムの配列又はセグメントを含むデオキシリボ核酸配列に結合する又は“標識する”ことにより基質核酸配列を特異的切断部位で切断することができるDNA分子の集団を作成する。態様においては、ランダムの配列は長さが約40ヌクレオチドである。他の態様においては、ランダムの配列は長さが約50ヌクレオチドである。長さが1〜40、40〜50、及び50〜100ヌクレオチドであるランダムの配列が本発明によって企図される。
本発明の実施態様においては、酵素DNA分子の集団を作成するために用いられるヌクレオチド配列は配列番号4、23、50及び51からなる群より選ばれる。他の実施態様においては、“標的”又は“基質”ヌクレオチド配列は1以上のリボヌクレオチドの配列を含んでいる−−例えば、配列番号4及び23の関連する部分、及び配列番号49を参照されたい。また、有効な“標的”又は“基質”ヌクレオチド配列はDNA、RNA、又はその複合物を含むことが本発明によって企図される。
本発明は、また、分離工程が標識したDNA分子をアビジンが結合した固体表面に暴露し、よって標識したDNA分子が固体表面に結合する工程を更に含む上記方法を企図する。前のように、基質はRNA、DNA、双方の複合物、又はヌクレオチド配列を含む分子である。
本発明は、また、(a)基質核酸配列を特異的切断部位で切断することができる酵素DNA分子を供給する工程;及び(b)該酵素DNA分子と該核酸配列とを接触させて該核酸配列を切断部位で特異的に切断させる工程を含む、基質核酸配列を特定の切断部位で特異的に切断する方法を企図する。態様においては、該酵素DNA分子は天然に存在しない(又は合成)DNA分子である。他の態様においては、該酵素DNA分子は一本鎖である。
上記方法の他の態様においては、該基質は核酸を含んでいる。種々の実施態様においては、該基質核酸は、RNA、修飾したRNA、DNA、修飾したDNA、1以上のヌクレオチド類似体、又はその複合物を含んでいる。他の実施態様においては、該特異的切断は、酵素DNA分子のエンドヌクレアーゼ活性によって引き起こされる。反応条件の変更−−例えば、pH、温度、陽イオン%、酵素%、基質%、及び産物%の調整−−もその中に企図される。
本発明は、また、(a)基質核酸配列を特定の切断部位で切断することができる触媒DNA分子とホスホエステル結合含有基質とを混合して反応混合物を形成する工程;及び(b)該混合物を該酵素DNA分子が該ホスホエステル結合を切断することを可能にする所定の反応条件下で維持し、よって基質産物の集団を得る工程を含む、ホスホエステル結合を切断する方法を企図する。実施態様においては、該酵素DNA分子は部位特異的な方法でホスホエステル結合を切断することができる。他の実施態様においては、該方法は、更に、(c)該産物を該触媒DNA分子から分離する工程;及び(d)追加の基質を該酵素DNA分子に付加して新しい反応混合物を形成する工程を含んでいる。
本発明は、また、ホスホエステル結合を切断する酵素DNA分子を操作する方法を企図する。具体的な方法は、次の工程:(a)一本鎖DNA分子の集団を得る工程;(b)遺伝子変化を該集団に導入して変異集団を得る工程;(c)所定の選択基準に適合する該変異集団から個体を選択する工程;(d)該選択した個体を該変異集団の残部から分離する工程;及び(e)該選択した個体を増幅する工程を含んでいる。
詳細な説明
A.定義
本明細書に用いられる“デオキシリボザイム”という用語は、酵素として機能することができるDNA含有核酸を記載するために用いられる。本開示においては、“デオキシリボザイム”という用語は、エンドリボヌクレアーゼ及びエンドデオキシリボヌクレアーゼを含むが、エンドリボヌクレアーゼ活性を有するデオキシリボザイムが特に好ましい。デオキシリボザイムと同じ意味で用いられる他の用語は、“酵素DNA分子”、“DNAzyme”、又は“触媒DNA分子”であり、合成で製造されるとしても生物又は他の供給源から誘導されるとしても全てその酵素活性部分を含むことは理解されなければならない。
“酵素DNA分子”という用語は、また、指定したオリゴヌクレオチド標的又は基質に対して基質結合領域に相補性を有するDNA分子が含まれる。その分子は、また、オリゴヌクレオチド基質を特異的に切断するのに活性である酵素活性を有する。他の方法で述べた酵素DNA分子は、分子間でオリゴヌクレオチド基質を切断することができる。この相補性は、基質の分子間切断を起こさせる基質のオリゴヌクレオチドに対して酵素DNA分子の十分なハイブリダイゼーションを可能にするように機能する。100パーセント(100%)相補性が好ましいが、75〜100%の範囲の相補性が有効であり、本発明によって企図される。
本発明の酵素DNA分子は、ヌクレアーゼ又はリボヌクレアーゼ活性を有するものとして代替的に記載される。これらの用語は、本明細書中で同じ意味で用いられる。
本明細書に用いられる“酵素核酸”という用語は、酵素RNA又はDNA分子、酵素RNA−DNAポリマー、及びその酵素活性部分又は誘導体を包含するが、酵素DNA分子は本発明の酵素活性分子の特に好ましい種類である。
本明細書に用いられる“エンドデオキシリボヌクレアーゼ”という用語は、主としてDNAを含む基質を切断することができる酵素である。本明細書に用いられる“エンドリボヌクレアーゼ”という用語は、主としてRNAを含む基質を切断することができる酵素である。
本明細書に用いられる“塩基対”(bp)という用語は、一般的にはアデニン(A)とチミン(T)又はウラシル(U)との関係、又はシトシン(C)とグアニン(G)との関係を記載するために用いられるが、塩基A、T、C、及びG(及びU)の一般的でない類似体も塩基対合に関与するときがあることは理解されなければならない。DNA又はRNAが二本鎖構造をとる場合に普通対になるヌクレオチドは、“相補的塩基”も言われる。
“相補的ヌクレオチド配列”は、一般的には、結果としての水素結合で特異的にハイブリダイズする他のオリゴヌクレオチド単鎖上のものと十分に相補的である一本鎖分子又はDNA又はRNAセグメント内のヌクレオチドの配列を意味する。
“ヌクレオチド”は、一般的には、糖部分(ペントース)、リン酸基、及び含窒素複素環塩基からなるDNA又はRNAのモノマー単位を意味する。塩基は糖部分にグリコシド炭素(ペントースの1′炭素)を介して結合し、その塩基と糖の組合わせは“ヌクレオシド”である。ヌクレオシドがペントースの3′又は5′位に結合したリン酸基を含む場合、ヌクレオチドと呼ばれる。操作上結合したヌクレオチド配列は典型的には“塩基配列”又は“ヌクレオチド配列”、及び文法上の相当語句と呼ばれ、特にことわらない限り、左→右の向きが5′末端→3′末端の慣用の向きである式で表される。
“ヌクレオチド類似体”は、一般的には、A、T、G、C、又はUと構造的に異なるプリン又はピリミジンヌクレオチドを意味するが、核酸分子の通常のヌクレオチドを置き換えるのに十分に類似しているものである。本明細書に用いられる“ヌクレオチド類似体”という用語は、修飾塩基、異なる又は特異な糖(即ち、“通常”のペントース以外の糖)、又はその2つの組合わせを包含する。塩基が修飾された具体的な類似体の表を下記C項に示す。
“オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド”は、一般的には、一本鎖又は二本鎖ヌクレオチドのポリマーを意味する。本明細書に用いられる“オリゴヌクレオチド”及びその文法上の相当語句は完全な範囲の核酸を含む。オリゴヌクレオチドは、典型的には、線状鎖のリボヌクレオチドを含む核酸分子を意味する。正確なサイズは、当該技術において周知であるように、多くの要因に左右され、最後の使用条件にも左右される。
本明細書に用いられる“生理的条件”という用語は、哺乳動物生物、特にヒトに見られるものに匹敵する反応条件を示すことを意味する。温度、陽イオンの利用可能性、及びpH範囲のような可変部分は下で詳述されるように変動するが、“生理的条件”は通常は約35〜40℃の温度、特に好ましくは37℃、及び約7.0〜8.0のpH、特に好ましくは7.5を含み、更に、陽イオン、好ましくは2価及び/又は1価の陽イオンの利用可能性、特に好ましくは約2〜15mM Mg2+及び0〜1.0M Na+の濃度を含む。本明細書に用いられる“生理的条件”は、遊離のヌクレオシド補因子の存在が含まれてもよい。上述したように、好ましい条件は下で詳述される。
B.酵素DNA分子
種々の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、付加、欠失、及び置換を含む1以上の修飾又は突然変異を組合わせることができる。代替的実施態様においては、その突然変異又は修飾はランダム又は特定の突然変異又は修飾を生じる方法を用いて作成される。これらの突然変異は、例えば、ループ、スペーサー領域又は認識配列(又はドメイン)の長さを変え、ヌクレオチド配列を変える。触媒活性酵素DNA分子内の1以上の突然変異は、第2触媒活性酵素DNA分子内の突然変異と組合わせて両分子の突然変異を含む新しい酵素DNA分子を得ることができる。
他の好適実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、当業者に周知の種々の方法を用いて導入されたランダム突然変異を有するものである。例えば、Cadwellら,PCR Methods and Applications,2:28−33,1992によって記載された方法は、後記実施例に記載されるように変更したその中に開示された使用が特に好ましい。(Cadwellら,PCR Methods and Applications,3(Suppl.):S136−S140,19924を参照も参照されたい。)この変更PCR法によれば、ランダム点突然変異はクローン化遺伝子に導入される。
上記方法は、例えば、リボザイムをコードしている遺伝子を配列分析により求められた1位置あたり0.66±0.13%(95%の信頼区間)の突然変異率で突然変異を誘発させるために用いられ、塩基置換の種類に対して強い選択は認められなかった。これにより、本発明の酵素DNA分子内のいずれの位置にもランダム突然変異を導入することが可能である。
特定又はランダム突然変異を導入するのに有効な他の方法は、Joyceら,Nucleic Acids Res.,17:711−722,1989に開示されている。この後者の方法は、二本鎖DNAの鋳型(コード)鎖の切り出し、突然変異原オリゴヌクレオチドの取込みによる鋳型鎖の再構築、及び続いての部分的ミスマッチの鋳型の転写を必要とする。これにより、選択した位置に既知の又はランダムヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むことにより分子内のいずれの位置にも特定又はランダム突然変異を導入することが可能である。
本発明の酵素DNA分子は、分子の種類や機能によって適するように種々の長さや折りたたみパターンを有するものである。例えば、酵素DNA分子は、酵素DNA分子は長さが約15〜約400以上のヌクレオチドであるが、約250以下の長さが大きすぎることにより又は不恰好にすることにより分子の治療有用性を制限することを避けるために好ましい。種々の好適実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は長さが少なくとも約20ヌクレオチドであり、有効な分子は長さが少なくとも約20ヌクレオチドであるが、好ましい分子は長さが通常は約100ヌクレオチド以下である。
種々の治療適用においては、本発明の酵素DNA分子はデオキシリボザイムの酵素活性部分を含んでいる。種々の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は好ましくは約200以下のヌクレオチドを含んでいる。他の実施態様においては、本発明のデオキシリボザイムは約100以下のヌクレオチドを含んでいる。他の好適実施態様においては、本発明のデオキシリボザイムは、長さが約20〜75ヌクレオチド、好ましくは約20〜65ヌクレオチドである。他の好ましい酵素DNAヌクレオチドは、長さが約10〜50ヌクレオチドである。
他の適用においては、酵素DNA分子は、“ハンマーヘッド”リボザイムと同様の構造をとるものである。その酵素DNA分子は、長さが好ましくは約75〜100ヌクレオチド以下であり、約20〜50ヌクレオチドの長さが特に好ましい。
一般的には、本明細書に開示されたように使用する分子を合成するものである場合には、酵素核酸分子が大きくなるほど合成が難しくなる。当業者は、これらの設計束縛を確かに理解する。しかし、その大きな分子は依然として本発明の範囲内にある。
また、本発明の酵素DNA分子は、デオキシリボザイムの酵素活性部分を含み、1以上の突然変異、例えば、欠失、付加又は修飾が酵素として行うための分子の能力に逆に影響しない限り、存在しないか又は修飾した1以上の塩基対形成配列又はスペーサーと共にデオキシリボザイムも含む。
本発明の酵素DNA分子の認識ドメインは、典型的には触媒ドメインに隣接している2つのヌクレオチド配列を含み、基質核酸内の塩基の相補的配列に対してハブリダイズすることができ酵素DNA分子に高配列特異性を与える典型的には少なくとも約3〜約30塩基、好ましくは約6〜約15塩基の配列を有する。周知の方法による認識部位の修飾又は突然変異により、酵素核酸分子の配列特異性を変えることが可能である。(Joyceら,Nucleic Acids Res.,17:711−712,1989を参照されたい。)
本発明の酵素核酸分子は、認識部位又はドメインが修飾されたものが含まれる。種々の実施態様においては、これらの修飾認識ドメインは、その認識ドメインを含む酵素核酸分子にユニークな配列特異性を与える。認識ドメイン内に存在する正確な塩基は、切断が生じる塩基配列を決定する。基質核酸の切断は、認識ドメイン内で生じる。この切断により、基質切断配列上の2′、3′、又は2′,3′−環状リン酸基及びもとの基質では最初すぐに3′の基質切断配列であったヌクレオチド上の5′ヒドロキシルが脱離する。切断は、認識配列(内部ガイド配列)内に存在する塩基を変えることにより選択部位に再特定される。Murphyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:9218−9222,1989を参照されたい。
更に、酵素DNA分子とその基質間の認識と結合を促進するポリアミンを添加することが有効である。有効なポリアミンの例としては、スペルミジン、プトレッシン又はスペルミンが挙げられる。約1mMのスペルミジン濃度が具体的な実施態様において効果的であり、約0.1〜約10mMの範囲の濃度も有効である。
種々の代替的実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、核酸基質、特にRNA基質を切断する能力が強化又は最適化される。当業者が理解するように、酵素触媒反応速度は基質や酵素の濃度によって変動し、通常は高基質又は酵素濃度で横ばいになる。その作用を考慮すると、酵素触媒反応速度論は反応を定義する次の条件で記載される。
RNA基質を切断する本発明の酵素DNA分子の能力の強化又は最適化は、酵素DNA分子の存在下に種々の量の標識RNA基質との切断反応で求められる。基質を切断する能力は、一般的には触媒速度(kcat)をミカエリス定数(KM)で割ることにより定義される。記号kcatは、基質が飽和値に達したときの酵素反応の最大速度を表す。KMは、反応速度が最大の1/2である基質濃度を表す。
例えば、KM値とkcat値は、本発明においては基質濃度[S]が酵素DNA分子濃度[E]より過剰である実験により求められる。基質濃度の範囲について反応(v0)の初速度は、初期直線相、通常は反応の最初の5%以下から算出される。データ点を式:v=−KM(v0/[S])+Vmaxで示される理論系に最小自乗法によりあてはめる。従って、kcatとKMは、反応の初速度、v0、及び基質濃度[S]により求められる。
種々の代替的実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、核酸基質、好ましくはRNA基質を切断する能力が強化又は最適化される。好適実施態様においては、RNA基質を切断する酵素DNA分子の能力の強化又は最適化は、非触媒速度より約10〜109倍改善される。更に好適な実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、“前駆体”種より約103〜107倍改善された速度でRNA基質を切断することができる。更に好適な実施態様においては、RNA基質を切断する能力の強化又は最適化は、前駆体種より104〜106倍の改善として示される。当業者は、本発明の試験管内生成法で適用される選択束縛によって変動することを理解する。
本発明のデオキシリボザイム及び他の酵素DNA分子及びヌクレアーゼを修飾する種々の好ましい方法を下記の実施例1〜3に記載する。
C.ヌクレアーゼ類似体
上記のように、本明細書に用いられる“ヌクレアーゼ類似体”という用語は、一般的にはA、T、G、C、又はUと構造的に異なるプリン又はピリミジンヌクレオチドを意味するが、核酸分子内のその“通常の”ヌクレオチドを置き換えるのに十分類似しているものである。本明細書に用いられる“ヌクレオチド類似体”という用語は、修飾塩基、異なる(又は特異な)糖、修飾リン酸骨格、又はそれらの修飾の組合わせを包含する。本発明に有効なヌクレオチド類似体の例は、次の表に示されたものが挙げられ、たいていは37 CFR§1.822(本願明細書に含まれるものとする)の修飾塩基の認可された表に見られる。
他の有効な類似体としては、公開された国際出願第WO92/20823号(この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする)に記載されたもの、又はその中に開示された方法で製造された類似体が含まれる。DeMesmaekerら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:226−229,1994;DeMesmaekerら,Synlett 733−736(Oct.1993);Nielsenら,Science,254:1497−1500,1991;及びIdziakら,Tetrahedron Letters,34:5417−5420,1993に記載された類似体も開示された発明に有効であり、前記文献の記載は本願明細書に含まれるものとする。
D.酵素DNA分子の操作方法
本発明は、また、所定の活性を有する核酸分子の製造方法を企図する。好適実施態様においては、核酸分子は酵素DNA分子である。他の態様においては、所望の活性は触媒活性である。
実施態様においては、本発明は、酵素DNA分子を合成する方法を企図し、特定の又は所定の反応を触媒するために“操作される”。酵素DNA分子を調製する方法は本明細書に記載される。例えば、下記の実施例1〜3を参照されたい。他の実施態様においては、本発明の酵素DNA分子はアデノシン三リン酸(ATP)のような小分子又はリガンドを結合するために操作される。(Sassanfarら,Nature,364:550−553,1993を参照されたい。)
他の実施態様においては、本発明は、酵素DNA分子の集団が変異酵素DNA分子(又は“デオキシリボザイム”又は“DNAzyme”と呼ばれる)の異種集団を得る突然変異を誘発させる条件に供することを企図する。その後、所望の特性を有する酵素DNA分子は、その集団から選択及び/又は分離され、続いて増幅される。
また、酵素DNA分子の認識ドメインの長さを変えることにより酵素DNA分子に突然変異が導入される。酵素DNA分子の認識ドメインは、基質核酸配列内の塩基の相補的配列と関連がある。認識ドメインの長さを変える方法は、当該技術において既知であり、例えば、PCRが含まれる。有効な手法は下記の実施例に記載されている。
酵素DNA分子の認識ドメインの長さの変化は、酵素DNA分子の結合特異性に対して所望の効果を与えることができる。例えば、認識ドメインの長さの増加は酵素DNA分子と基質のオリゴヌクレオチドの相補的塩基配列間の結合特異性を増大し、ハイブリッド基質における具体的な配列の認識も高められる。更に、認識ドメインの長さの増加は基質に結合する親和性を増大させる。種々の実施態様においては、酵素DNA分子内の修飾認識ドメインは、酵素DNA分子とその基質間の結合特異性や親和性の増大を与える。
最近、ある種のオリゴヌクレオチドが相補的配列を有するオリゴヌクレオチド以外の分子を認識及び結合することができることが言及された。そのオリゴヌクレオチドは、“アプタマー”という名前もよく示されている。例えば、Ellingtonらには種々の有機色素を結合することができるRNA分子が記載されており(Nature,346:818−822,1990)、Bockらにはヒトトロンビンを結合するssDNA分子が記載されている(Nature,355:564−566,1992)。同様に、Jellinekらには塩基性線維芽細胞成長因子に対するRNAリガンドが記載されている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:11227−11231,1993)。従って、本発明の触媒活性DNA酵素が典型的にはアプタマーと関連がある種々の性能を示すために本明細書に記載された方法に従って操作されることが本明細書において企図される。
従って、当業者は、本発明の酵素DNA分子がPCRや3SR(自己配列複製−−下記実施例1を参照されたい)を含む本明細書に開示される種々の方法により認識ドメインのようなヌクレオチド配列で修飾されることを理解しなければならない。例えば、追加のヌクレオチドはプライマーに追加のヌクレオチドを含めることにより酵素DNA分子の5′端に付加される。
本発明の酵素DNA分子は、また、部位特定突然変異誘発の使用によりランダムでない方式で調製又は操作される。例えば、部位特定突然変異誘発は、実質的にMorinagaら,Biotechnology,2:636,1984に記載されるようにデオキシリボザイムに適用するために本明細書に記載されるように変更して行なわれる。酵素DNA分子を操作する有効な方法は、更に下記の実施例に記載されている。
開示された実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、2つの基質結合(又は認識)ドメイン又は塩基対合相互作用により基質と相互作用する配列が隣接した保存コアを含んでいる。種々の実施態様においては、保存コアは1以上の保存ドメイン又は配列を含んでいる。他の態様においては、酵素DNA分子は、塩基対合に関係する領域(又は配列)間に“スペーサー”領域(又は配列)を含んでいる。他の態様においては、更に、保存コアは1以上の保存されない可変ヌクレオチド又は“スペーサー”ヌクレオチドにより種々の間隔で“中断されている”。
種々の実施態様においては、酵素DNA分子の集団は、少なくとも2種類の異なるデオキシリボザイム分子でつくられている。例えば、態様においては、その分子は異なる配列を有する。他の態様においては、デオキシリボザイムは、ヌクレオチド配列の5′末端に近接又は隣接している認識ドメインを限定している核酸配列を有する核酸分子である。種々の代替的実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、更に、3′末端→認識ドメインに位置する1以上のスペーサー領域、3′末端→認識ドメインに位置する1以上のループ及び/又はスペーサー領域を含んでいる。他の態様においては、本発明のデオキシリボザイムは、同じ分子の他の領域に対してハイブリダイズすることができる1以上の領域を含んでいる。開示された方法に従って得られた酵素DNA分子の他の特性は他で記載される。
他の実施態様においては、突然変異誘発条件としては酵素DNA分子内に特定又はランダムヌクレオチド置換を導入する条件が含まれる。典型的な突然変異誘発条件の例は、本明細書の他の部分及びJoyceら,Nucl.Acids Res.,17:711−722,1989;Joyce,Gene,82:83−87,1989;及びBeaudryら,Science,257:635−41,1992に記載された方法に開示されている。
他の実施態様においては、本発明の変異酵素核酸分子の異種集団は、正確に同じヌクレオチド配列をもたない少なくとも2種の核酸分子を含むものである。他の態様においては、その異種集団から所定の活性を有する酵素DNA分子又は他の酵素核酸が所定の活性を行う能力に基づいて選択される。種々の態様においては、所定の活性は、高触媒活性、低KM、高基質結合能、修飾基質特異性等を含むが限定されない。
酵素性能の態様とみなされる他のパラメーターとしては、触媒活性又は能力、基質結合能、酵素代謝回転速度、フィードバック機序に対する酵素感受性等が含まれる。ある態様においては、基質特異性は、特に酵素が2以上の相対する基質を認識及び結合することができ、その各々が他の基質に対して酵素の性能に影響する状態においては酵素性能の態様とみなされている。
本明細書に用いられる基質特異性は、リボヌクレオチドのみ、デオキシリボヌクレオチドのみ、又はその双方の複合物のような具体的な基質に対する本明細書に記載される酵素核酸分子の特異性を意味する。基質分子は、また、ヌクレオチド類似体を含む。種々の実施態様においては、本発明の酵素核酸分子は、ハイブリッド又は非ハイブリッド基質の具体的な領域に優先的に結合するものである。
“基質特異性”として本明細書に同定された用語又はパラメーターは、配列特異性が含まれる。即ち、本発明の酵素核酸分子は、具体的な核酸配列を有する核酸基質を“認識”し、それに結合する。例えば、本発明の酵素核酸分子の基質認識ドメインが単に一連の1又は2のリボヌクレオチド(例えば、rA)を有する基質分子に一列に結合する場合には、酵素核酸分子はその配列を欠く核酸基質分子を認識又は結合しない傾向がある。
選択工程について、種々の実施態様においては、選択は所定の活性を有する変異酵素核酸を変異酵素核酸の異種集団から物理的に分離する手段が含まれる。たいてい、選択はサイズ、触媒活性の存在、又は変異核酸を他の核酸、ぺプチド、又は溶液中であるか又は固体マトリックスに結合した他の分子に対してハイブリダイズすることによる分離を含んでいる。
種々の実施態様においては、所定の活性は、所定の活性を有する変異酵素核酸がある様式で活性によって標識されるようになるものである。例えば、所定の活性は酵素DNA分子活性であり、よって基質上の変異酵素核酸の活性が変異酵素核酸を共有結合するようにさせる。次に、変異酵素核酸は、共有結合によって選択される。
他の実施態様においては、所定の活性を有する変異酵素核酸を選択することは変異酵素核酸の増幅が含まれる(Joyce,Gene,82:83−87,1989;Beaudryら,Science,257:635−41,1992)。所定の特性又は活性を有する酵素核酸分子を選択する他の方法は、実施例の項に記載されている。
E.組成物
本発明は、また、本発明の酵素DNA分子の1以上の種類又は集団を含む組成物を企図する。例えば、異なる種類又は集団は異なるヌクレオチド配列を認識及び切断することができる。組成物は、更に、リボ核酸含有基質が含まれる。本発明の組成物は、更に、本明細書に記載されたように鉛イオン、マグネシウムイオン、又は他の2価又は1価の陽イオンを含むものである。
酵素DNA分子は、好ましくは約0.05〜約2μMの濃度で存在する。酵素DNA分子は、基質に対する酵素DNA分子の濃度比が典型的には約1:5〜約1:50で存在する。酵素DNA分子は、更に好ましくは約0.1〜約1μMの濃度で組成物中に存在する。組成物は、更に好ましくは約0.1〜約0.5μMの濃度で酵素DNA分子を含む。基質は、好ましくは約0.5〜約1000μMの濃度で組成物中に存在する。
当業者は、天然に存在する供給源及び合成供給源を含む多くの核酸含有基質源があることを理解する。適切な基質源としては、HIV−1、HIV−2、HTLV−I、及びHTLV−IIを含む種々のウイルスやレトロウイルスの病原体が含まれるが限定されない。
他の適切な基質としては、ピコルナウイルス、ヘパドナビリデ(例えば、HBV、HCV)、パピローマウイルス(例えば、HPV)、ガンマヘルペスビリネ(例えば、EBV)、リンホクリプトウイルス、白血病ウイルス(例えば、HTLV−I及びHTLV−II)、フラビウイルス、トガウイルス、ヘルペスウイルス(アルファヘルペスウイルス及びベータヘルペスウイルスを含む)、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザウイルス、及び免疫不全疾患及び症候群に寄与するウイルス及びレトロウイルス(例えば、HIV−1及びHIV−2)を含む又はそれらによって生産されたものを含むウイルス及びレトロウイルスが含まれるが限定されない。更に、適切な基質としては、非ヒト霊長類及びサル及びネコの免疫不全ウイルス及びウシ白血病ウイルスを含むが限定されない他の動物に感染するウイルスやレトロウイルスの病原体が挙げられる。
上記のように、マグネシウムイオン、鉛イオン、又は他の適切な1価又は2価陽イオンが組成物中に約1〜100mMの範囲の濃度で存在させることができる。予め選択されたイオンは、好ましくは約2〜約50mMの濃度で組成物中に存在させ、約5mMの濃度が特に好ましい。当業者は、イオン濃度が水溶液中その供給源(例えば、マグネシウム)の溶解度の限度及び活性コンホメーションで同じ組成物中に存在する酵素DNA分子をもつことを必要とすることによってのみ束縛されることを理解する。
本発明は、また、本発明の酵素DNA分子、ハイブリッドデオキシリボヌクレオチド−リボヌクレオチド分子、及び上記濃度のマグネシウム又は鉛イオンを含む組成物を企図する。上記のように、マグネシウムの代わりに他の1価又は2価イオン(例えば、Ca2+)も用いられる。
本発明は、また、本発明の酵素DNA分子、核酸含有基質(例えば、RNA)、及び約1ミリモルより大きい濃度の予め選択されたイオンを含む組成物を企図し、前記基質は、該酵素DNA分子に存在する認識ドメインより長さが大きい。
態様においては、組成物は酵素DNA分子−基質複合体であり、酵素DNA分子とその基質間の塩基対合は近接している。他の実施態様においては、酵素DNA分子とその基質間の塩基対合は1以上の非相補的対で中断されている。種々の代替的実施態様においては、本発明の組成物は、更に、1価の陽イオン、2価の陽イオン、又は双方を含むものである。
他の態様においては、本発明の酵素DNA分子は、2価陽イオンの存在下又は不在下で効率よく機能することができる。態様においては、2価陽イオンが存在し、Pb2+、Mg2+、Zn2+、又はCa2+を含む。また、本発明の酵素DNA分子は、1価陽イオンの存在下又は不在下に効率よく機能することができる。Pb2+又はMg2+について本明細書に記載されたものと同じ1価又は2価陽イオン濃度が本明細書に開示されたように有効であることは予想される。
任意により、1価陽イオンは、2価陽イオンのほかに、又は“代替物”として存在させてもよい。例えば、ナトリウム(Na+)又はカリウム(K+)のような1価陽イオンは、解離イオンとしてか又はNaCl又はKClのような解離性化合物として存在する。
実施態様においては、組成物中に存在する1価陽イオンの濃度は0〜1.0Mの範囲である。他の実施態様においては、1価陽イオンは、約0〜200mMの範囲の濃度で存在する。他の実施態様においては、1価陽イオンは、約1〜100mMの範囲の濃度で存在する。また、1価陽イオンの濃度は約2〜50mMの範囲である。他の実施態様においては、濃度は約2〜25mMの範囲である。
F.酵素DNA分子を用いる方法
本明細書に開示される酵素DNA分子を用いる方法は、従来技術の酵素及び/又はアンチセンスオリゴヌクレオチドについて当該技術において周知である多くの異なる用途を包含する。上記のように、隣接する核酸を連結する結合(例えば、ホスホエステル結合)を切断することができる分子は、種々の適用を含む多くの使用がある。例えば、本明細書に開示された性能、構造、及び/又は機能を有する酵素DNA分子は、mRNAのような標的核酸配列を試験管内及び生体内で不活性化する医薬品や医療用品(例えば、創傷デブリードマン、凝血溶解用等)、及び家庭用品(例えば、洗剤、口腔衛生用品、肉の柔化剤)に有効である。本明細書に開示された化合物、組成物及び方法の産業的用途も企図され、十分に本発明の範囲内である。
本発明は、また、一本鎖核酸、ループ核酸、部分的又は完全な二本鎖核酸を切断する有効な方法を記載する。これらの方法の大部分は、本発明の新規な酵素活性核酸分子を用いる。種々の実施態様においては、基質の一本鎖核酸セグメント又は部分(又は基質全体)は、DNA、修飾したDNA、RNA、修飾したRNA、又はその複合物を含んでいる。好ましくは、核酸基質は基質切断配列が又はその近傍が一本鎖であることだけを必要とするので本発明の酵素核酸分子は酵素認識配列によって基質切断配列に対してハイブリダイズすることができる。
本発明の方法によって切断される核酸基質は、化学的に合成又は酵素的に生産されるか又はファージ、ウイルス、原核細胞、又は真核細胞、例えば、動物細胞、植物細胞、酵母細胞及び細菌細胞のような種々の供給原から分離される。化学的に合成された一本鎖及び二本鎖核酸は、リサーチジェネティクス(アラバマ州ハンツビル)を含むが限定されない多くの製造業者から市販されている。
RNA基質は、アプライドバイオシステムズ(カリフォルニア州フォスターシティ)オリゴヌクレオチドシンセサイザーを用いて製造業者の説明書に従って合成される。一本鎖ファージも核酸基質源である。(Messingら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:3642−3646,1977,Ynisch−Perronら,Gene,33:103−119,1985を参照されたい。)一本鎖ファージを含む細菌細胞は、すぐに使える適切な一本鎖核酸基質源である。
本発明の方法によって切断できる一本鎖RNAは、ピコルナウイルス、トガウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス又はレトロウイルスのようなRNAウイルスによって供給される。上記のように、種々の原核細胞及び真核細胞が適切な核酸基質の優れた供給源である。
本発明の方法は、原核細胞、真核細胞、植物、動物、酵母又は細菌細胞を含む細胞の内部に存在する一本鎖核酸又はループ核酸又は二本鎖核酸の一本鎖部分に用いられる。これらの条件下、本発明の酵素核酸分子(例えば、酵素DNA分子又はデオキシリボザイム)は抗ウイルス剤又は遺伝子発現の調節剤として作用する。本発明の酵素DNA分子のその使用の例は後述される。
本発明の方法の大部分においては、一本鎖核酸の切断は予め決められた塩基配列の3′末端で起こる。その予め決められた塩基配列又は基質切断配列は、典型的には1〜約10ヌクレオチドを含む。他の好適実施態様においては、本発明の酵素DNA分子は、切断部位の上流、又は上流と下流のヌクレオチドを認識することができる。種々の実施態様においては、酵素DNA分子は、切断部位の上流の約2〜10ヌクレオチドを認識することができる。他の実施態様においては、酵素DNA分子は、切断部位の上流の約2〜10ヌクレオチドと下流の約2〜10ヌクレオチドを認識することができる。他の好適実施態様は、長さが約30ヌクレオチドまでのヌクレオチド配列を認識することができる酵素DNA分子を企図し、約20ヌクレオチドまでの長さが更に好ましい。
本明細書に開示された方法は、酵素DNA分子の認識ドメインのヌクレオチド配列を変えることによりいずれのヌクレオチド配列でも切断することができる。これにより、制限エンドヌクレアーゼ部位を存在させずに選択された位置で一本鎖核酸を切断することが可能である。
本発明の酵素DNA分子は、適切な切断部位での部位特異的加水分解により酵素DNA分子に依然として結合している一本鎖核酸基質のいずれの部分からも分離される。酵素DNA分子を基質から分離すること(又は“切断産物”)により酵素DNA分子が他の切断反応を行うことを可能にする。
一般的には適切な核酸切断条件−−好ましくは生理的条件下−−核酸基質を本発明の酵素DNA分子の有効な量で処理する。核酸基質がDNAを含む場合には、切断条件は2価の陽イオンの存在を約2〜10mMの濃度で含む。
酵素DNA分子の有効量は、一本鎖核酸内に存在する予め決められた塩基配列を切断するために要する量である。酵素DNA分子は、好ましくは1:20の基質切断部位に対するDNA分子のモル比で存在する。この比は、用いられる具体的な核酸切断条件下に具体的な酵素DNA分子の処理の長さ及び効率によって変動するものである。
従って、好適実施態様においては、処理は、典型的には、水溶液中でRNA含有基質と酵素を混合して切断混合物を形成する工程、次にそのようにして形成した混合物をRNA切断条件下に酵素DNA分子がRNA内に存在する予め決められたヌクレオチド配列でRNA基質を切断する十分な時間維持する工程を含んでいる。種々の実施態様においては、イオン源−−即ち、1価又は2価陽イオン、又は双方が供給される。
本発明の実施態様においては、酵素DNA分子が一本鎖核酸を切断するのに必要な時間が予め決められた。時間は、約1分〜約24時間であり、反応成分の濃度及び反応の温度によって変動する。その時間は、酵素DNA分子が存在する予め決められたヌクレオチド配列で一本鎖核酸を切断するような通常は約10分〜約2時間である。
本発明は、更に、核酸切断条件が約2〜100mMの濃度で2価の陽イオン源(例えば、PbOAc)の存在を含むことを企図する。核酸切断条件としては、2価陽イオンを典型的には約2〜約10mMの濃度で含み、約5mMの濃度が特に好ましい。
核酸切断条件に含む最適陽イオン濃度は、一定のカチオン濃度で切断した一本鎖核酸量を求めることにより容易に求められる。当業者は、最適濃度が用いられる具体的な酵素DNA分子によって変動することを理解する。
本発明は、更に、核酸切断条件がpH約6.0〜約9.0を含むことを企図する。好適実施態様においては、pHは、pH約6.5〜8.0の範囲である。他の実施態様においては、pHは生理的条件に匹敵する。即ち、pHは約7.0〜7.8であり、pH約7.5が特に好ましい。
当業者は、酵素DNA分子が依然として活性コンホメーションであるようなpHが核酸切断に用いられる限り本発明の方法が広範囲のpHで作用することを理解する。活性コンホメーションの酵素DNA分子は、一本鎖核酸を予め決められたヌクレオチド配列で切断する能力により容易に検出される。
種々の実施態様においては、核酸切断条件は種々の温度範囲が含まれている。上記のように、生理的条件と一致した温度範囲が特に好ましいが、商業的適用と一致した温度範囲も本明細書に企図される。実施態様においては、温度は約15〜約60℃の範囲である。他の態様においては、核酸切断条件は約30〜約56℃の範囲である温度が含まれる。他の態様においては、核酸切断条件は、約35〜約50℃の温度が含まれる。好適実施態様においては、核酸切断条件は、約37〜約42℃の温度範囲を含んでいる。核酸切断条件と一致した温度範囲は、所望の切断速度及び具体的な温度での具体的な酵素DNA分子の安定性によってのみ束縛される。
種々の方法においては、本発明は、ポリアミンの存在を含む核酸切断条件を企図している。本発明を行うのに有効なポリアミンとしては、スペルミジン、プトレッシン、スペルミン等が挙げられる。態様においては、ポリアミンは、約0.01〜約10mMの濃度で存在する。他の態様においては、ポリアミンは、約1〜約10mMの濃度で存在する。核酸切断条件は、約2〜約5mMの濃度でポリアミンの存在を含むものである。種々の実施態様においては、ポリアミンはスペルミジンである。
G.ベクター
本発明は、また、好ましくは標的細胞(例えば、植物又は動物)内の酵素DNA分子の発現を可能にする方法で、ベクター内に位置する本発明の酵素DNA分子をコードしている核酸セグメントを含む発現ベクターを特徴とする。
従って、一般的には、本発明のベクターは、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、又はファージベクターが含まれることが好ましい。適切なベクターは、一本鎖DNA(ssDNA)−−例えば、環状ファージミドssDNAを含むことが好ましい。本発明の有効なベクターは、環状である必要がないことも理解されなければならない。
態様においては、追加の酵素DNA分子をコードしている配列の各々を隣接しているヌクレオチド配列が供給されることが好ましく、その配列は第1酵素DNA分子によって認識される。介在又は隣接配列は、好ましくは少なくとも1ヌクレオチドを含んでいる。介在又は隣接配列は、長さが更に好ましくは約2〜20ヌクレオチドであり、長さが約5〜10ヌクレオチドの配列が特に好ましい。
ポリヌクレオチドの尾部の付加は、本発明の酵素DNA分子の3′端を保護するのに有効である。酵素末端トランスフェラーゼを用いることによりポリマー配列を結合して与えられる。
本発明のベクターは、2以上の酵素DNA分子が含まれる。実施態様においては、第1酵素DNA分子は、分子内切断活性を有し、他の酵素DNA配列を放出するためにヌクレオチド配列を認識及び切断することができる。即ち、ベクターから他の酵素DNA分子を“放出”するために機能することができる。例えば、ベクターは第1酵素DNA分子が発現される場合にその第1分子が第2酵素DNA分子、第3酵素DNA分子等をコードしている追加のヌクレオチド配列を隣接しているヌクレオチド配列を切断することができるように構築されることが好ましい。前記第1酵素DNA分子(即ち、“放出する”分子)が分子内にオリゴヌクレオチド配列を切断することができると考えると、追加(例えば、第2、第3等)の酵素DNA分子(即ち、“放出される”分子)は“放出する”分子と同じ特性をもつことを必要としない。例えば、実施態様においては、“放出される”(即ち、第2、第3等)酵素DNA分子は特定のRNAはを切断することができ、第1(“放出する”)酵素DNA分子は“放出された”分子を遊離することを可能にするヌクレアーゼ活性を有する。他の実施態様においては、“放出される”酵素DNA分子はアミド結合切断活性をもち、第1(“放出する”)酵素DNA分子はヌクレアーゼ活性をもっている。
また、第1酵素DNA分子は、第2(及び第3、第4等)酵素DNA分子と別のベクター上でコードされ、分子内切断活性を有する。本発明に記載されたように、第1酵素DNA分子は自己切断酵素DNA分子(例えば、デオキシリボザイム)であり、第2酵素DNA分子は所望のタイプの酵素DNA分子である。ベクターがこれらの核酸配列からDNAを発現させる場合、そのDNAは隣接領域の各々を切断する適切な条件下で能力を有し、よって1コピー以上の第2酵素DNA分子を放出する。所望される場合には、数種の異なる第2酵素DNA分子が同じ細胞又は担体内に置かれ異なるデオキシリボザイムが作製される。1以上のベクターは、1以上のリボザイム又はデオキシリボザイムを“放出する”と“放出される”酵素核酸分子の組合わせで含むこともその組合せが所望の結果:予め決められた核酸配列を切断することができる酵素核酸分子の放出を得る限り企図される。
本発明の酵素DNA分子を分離及び精製する方法も企図される。本明細書に記載される方法のほかに、種々の精製法(例えば、HPLCを用いるもの)及びクロマトグラフィー分離法が当該技術において利用できる。例えば、公開された国際出願第WO 93/23569号に記載された方法を参照されたい。その明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
本明細書に記載された実施態様の種々の組合わせは本発明の範囲内に含まれるものであることは理解されなければならない。本発明の他の特徴及び利点は、上記説明、下記実施例、及び請求の範囲から明らかである。
以下の実施例は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
1.酵素DNA分子のインビトロ進化:概要
インビトロ選択及びインビトロ進化技術は、新規触媒組成物又は構造の経験的知識なしに新規触媒を単離することを許容する。これらの方法を使用して、新規な触媒特性を有するRNA酵素を得ていた。例えば、鉛カチオンで自己分解性切断するリボザイムは、tRNAPhe分子のランダム化されたプールに由来している(Pan et al.,Biochemistry,31:3887−3895,1992)。DNAを切断することができる(Beaudry et al.,Science,257:635−641,1992)又は改変された金属依存性を有する(Lehman et al.,Nature,361:182−185,1993)グループIリボザイム変異体が単離されている。
ランダムRNA配列から出発して、ポリメラーゼ様反応を触媒する分子が得られている(Bartel et al.,Science,261:1411−1418(1993))。本実施例では、インビトロ進化手順中の選択条件を変化させることにより進化した酵素の特異的触媒特性の精錬について述べる。
ダーウィン型進化は以下の3工程の反復実施を必要とする:(a)遺伝的変異の導入;(b)いくつかの適合基準に基づく個体の選択;および(c)選択した個体の増幅。これらの工程の各々はインビトロで実現することができる(Joyce,Gene,82:83,1989)。遺伝子は、化学的修飾、ランダム化変異誘発オリゴヌクレオチドの取込み、またはポリメラーゼによる不正確なコピー生成によって変異を誘発できる(Cadwell et al.,PCR Methods and Applications 2:28−33,1992;Cadwell et al.,PCR Methods and Applications,3(Suppl.):S136−S140,1994;Chu et al.,Virology,98:168,1979;Shortle et al.,Meth.Enzymol.,100:457,1983;Myers et al.,Science,229:242,1985;Matteucci et al.,Nucleic Acids Res.,11:3113,1983;Wells et al.,Gene 34:315,1985;McNeil et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3545,1985;Hutchison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83:710,1986;Derbyshire et al.,Gene,46:145,1986;Zakour et al.,Nature,295:708,1982;Lehtovaara et al.,Protein Eng.,2:63,1988;Leung et al.,Technique,1:11,1989;Zhou et al.,Nucl.Acids Res.,19:6052,1991を参照のこと)。
遺伝子生成物は、例えばリガンドと結合する能力または化学的反応を遂行する能力によって選択することができる(例えば、Joyce,上掲書,1989;Robertson et al.,Nature,344:467,1990;Tuerk et al.,Science,249:505,1990を参照のこと)。選択される遺伝子生成物に対応する遺伝子は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような互変プライマー法(reciprocal primer method)によって増幅できる(Saiki et al.,Science,230:1350−54,1985;Saiki et al.,Science,239:487−491,1988を参照のこと)。
代替として、核酸増幅を、自家内配列複製(3SR)を用いて実施してもよい(Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:1874,1990を参照のこと(この文献は参照することにより本明細書に組み込まれる))。3SR法にしたがえ、標的核酸配列を、レトロウイルスに必須の以下の3つの酵素活性:(1)逆転写酵素、(2)RNアーゼH、および(3)DNA依存性RNAポリメラーゼを用いることによって等温条件下でインビトロで指数関数的に増幅(複製)させることができる。cDNA中間体を用いたレトロウイルスのRNA複製を模倣することによって、この反応は最初の標的のcDNAおよびRNAコピーを蓄積させる。
要約すると、酵素DNA分子集団の進化を企図する場合、cDNA中間体を用いた逆転写と転写反応の連続的シリーズよってRNA標的配列を複製する。このデザインに必須の要素は以下のとおりである:(a)オリゴヌクレオチドプライマーが標的に特異的であり、かつ、得られたcDNAが転写鋳型として適性なようにT7 RNAポリメラーゼ結合部位をコードする5’伸長部を含むこと;(b)RNアーゼHによる中間体RNA−DNAハイブリッド中の鋳型RNAの分解により両方の鎖の完成までcDNA合成が進行することができること;及び(c)反応生成物(cDNA及びRNA)は次工程のための鋳型として機能し、指数関数的複製を可能にすること。
酵素DNA分子を進化させる場合、本実施例に開示されるように、このデザインの種々の重大な要素は幾分異なる。例えば、(1)オリゴヌクレオチドプライマーは標的に特異的であり、かつ好ましくは或る様式、例えば、ビオチン化により「マーク」又は標識されており、得られた適性な鋳型鎖を容易に同定できること、及び(2)使用するインビトロ選択手順が、好ましくは最も好ましい放出(release)メカニズムの同定に依存していること。
インビトロのダーウィン型進化の実現における主要な障害は、変異と増幅(これはともに遺伝子型に関係する)を選択(これは表現型に関連する)を一体化する必要性である。その遺伝子型と表現型とが同一分子内で統合されている核酸酵素の場合、作業は単純化される。
A.酵素DNA分子の設計
一本鎖DNAは興味深い3次構造を呈することは周知である。例えば「tDNA」の構造は、対応のtRNAと非常に似ている(Paquette et al.,Eur.J.Biochem.,189:259−265,1990を参照のこと)。更に、少なくとも或る触媒活性を維持しながら、ハンマーヘッド型リボザイム内の35リボヌクレオチドの内31程を置換することができる(Perreault et al.,Nature,344:565−567,1990;Williams et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:918−921,1992;Yang et al.,Biochemistry,31:5005−5009,1992を参照のこと)。
インビトロ選択技術を巨大なランダム配列DNAへ適用し、標的リガンドへ高親和性で結合する特異的DNA「アプタマー」を回収する(Bock et al.,Nature,355:564−566,1992;Ellington et al.,Nature,355:850−852,1992;Wyatt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:1356−1360,1994)。最近になって、2つのグループが、アプタマー(G−四分子構造を形成し、かつタンパク質トロンビンに高親和性で結合する15量体DNAである)の最初のNMR構造決定を達成した(Wang et al.,Biochemistry,32:1899−1904,1993;Macaya et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:3745−3749,1993)。これらの知見は、X線結晶学的分析により実証された(Padmanabhan et al.,J.Biol.Chem.,268:17651−17654,1993)。
基質分子と高い親和性かつ特異性で結合する能力は、良好な酵素の必要条件である。更に酵素は、当該酵素内又は補因子内で十分に位置づけられた官能基を利用し、特定の化学変換を促進しなければならない。更に酵素は、反応過程の間未変化のままで、触媒代謝回転で動作することができなければならない。或るものでは、情報高分子であることという要件を追加する。情報高分子は、触媒活性の責任を負う特定の命令(ordering)を有するサブユニットを含んでいる。これらの基準を、意味論上及び化学的理由上の双方において論議することが快く受け入れられ、これらの基準は、単純な溶媒効果から基質拡散の限界時における生物学的な酵素の動作への影響に及ぶ化学的速度の増強現象を区別するのに役立つ。
以下に詳述するように、本発明者等は、ランダム配列から出発して、DNA触媒及びDNA酵素を迅速に得る一般的方法の開発しようと努力した。最初の標的として、本発明者等は、DNAの能力範囲内にあると感じた反応、すなわち二価の金属補因子によって補助されるRNAホスホジエステルの加水開裂を選択した。この反応は、ハンマーヘッド型及びヘアピン型モチーフを含む種々の天然RNA酵素によって行われる反応と同一である(例えば、Forster et al,Cell,49:211−220,1987;Uhlenbeck,Nature,328:596−600,1987;Hampel et al,Biochemistry,28:4929−4933,1989を参照のこと)。
tRNA分子のランダム化ライブラリーを用いて開始して、中性pH下でPb2+依存性、部位特異的RNAホスホエステラーゼ活性を有するリボザイムを得ることができたことが示された(Pan et al,Biochemistry,31:3887−3895,1992;Pan et al,Nature,358:560−563,1992)。これは、酵母tRNAPheの偶然の自己切断反応に類似している(Dirheimer et al,Biochimie,54:127−144,1972)。この反応は、tRNA内の規定された部位におけるPb2+イオンの特定の配位に依存する(Rubin et al,J.Biomol.Struct.Dyn.,1:639−646,1983;Brown et al,Biochemistry,24:4785−4801,1985を参照のこと)。
本明細書に記載されるように、本発明者等のゴールには、最初はDNAの5’末端に付着した短いリーダー配列内に存在し、最終的には迅速な代謝回転で分子間様式で切断することができる別々の分子内に位置するDNA特定のRNAホスホエステルのPb2+依存性切断を実行することができるDNAの開発が含まれる。
DNAが標的ホスホエステル及び周辺ヌクレオチドとどのように相互作用するかということについての仮説は立てられていなかった。約1014のランダム50量体配列のプールを用いて開始し、インビトロ選択の実行を許容した。5日間かけて5ラウンドの選択を行った後、集団は全体として、1mM Pb2+の存在下、約0.2分−1の速度で標的ホスホエステルを切断する能力を獲得した。これは、同一の反応条件下における自発的切断速度と比較して、約105倍増加したことになる。
集団から固体を単離し、配列決定し、触媒活性についてアッセイした。この情報に基づいて、反応を分子間フォーマットへ転換し、単純化することにより、1mM PbOAcの存在下、23℃、pH7.0における1分−1の代謝回転速度で進行する反応において、38量体DNA酵素による19量体基質の部位特異的切断を許容した。
B.インビトロ選択スキーム
約1014一本鎖DNA分子の出発プールを生成した。これは全て5’ビオチン部分、連続的に単一リボヌクレオチドを含む固定化ドメイン、50のランダムデオキシリボヌクレオチドからなる潜在的触媒ドメイン、及び、3’末端に位置する第二の固定化ドメインを含んでいる(図1)。
プライマー結合部位が隣接する50のランダムヌクレオチドを含む合成DNAを用いて開始したnested PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術によりプールを構築した。nested PCRプライマーは3’−アデノシンリボヌクレオチドを有する5’−ビオチン化合成オリゴデオキシヌクレオチドであった。リボヌクレオチド末端化オリゴヌクレオチドは、PCRという面において鋳型特異的の伸長を効率的にプライム(prime)した。この場合において、単一の包埋されたリボヌクレオチドを含む伸長生成物が生じた。
図1は、標的RNAホスホエステルを切断するDNAを単離するための選択的増幅スキームを示している。50のランダムヌクレオチドのストレッチ(stretch)を含む二本鎖DNAをPCRにより増幅した。この増幅は、3’末端がアデノシンリボヌクレオチドで末端化されている(これは、記号「N」又は「rA」により示され、「N」及び「rA」は共にアデノシンリボヌクレオチドを表す)5’−ビオチン化DNAプライマー(例えば、プライマー3−−3a又は3b)を用いて行った。プライマーはTaqポリメラーゼにより伸長し、単一の包埋されたリボヌクレオチドを含むDNA生成物をえた。得られた二本鎖DNAをストレプトアビジンマトリックス上に固定化し、非ビオチン化DNA鎖を0.2N NaOHを用いた洗浄により除去した。緩衝液でカラムを再平衡化した後、カラムを、1mMPbOAcを添加した同一溶液で洗浄した。Pb2+依存性自己切断を起こしたDNAをカラムから遊離させ、溶離液中に集め、PCRにより増幅した。次いでPCR産物を使用して次ラウンドの選択的増幅を開始した。
PCR生成物をストレプトアビジンアフィニティーマトリックスを通過させ、二本鎖DNAの5’−ビオチン化鎖の非共有付着物を得た。非ビオチン化鎖を、0.2N NaOHを用いた簡素な洗浄により除去した。結合鎖を、0.5M NaCl、0.5M KCl、50mM MgCl2及び50mM HEPES(pH7.0)(23℃)を含む緩衝液中で平衡化した。次に、同一の緩衝液中に1mM PbOAcを添加して、標的ホスホエステルにおいてPB2+依存性切断の発生を許容し、これによりDNAのサブセットをストレプトアビジンマトリックスから遊離させた。原則としては、個々のDNAは、種々の方法、例えばビオチンとストレプトアビジンとの間の相互作用の破壊又はデオキシリボヌクレオチド結合の切断等により、DNA自体の遊離を促進するだろう。リボヌクレオシド3’−O−P結合の切断は、この結合の相対的不安定性に基づくと、最も有望な遊離メカニズムであり、かつPB2+依存性加水切断を最も迅速に遊離を引き起こすと考える。しかしながら、原則としては、インビトロ選択手順は、このメカニズムを最良に実行することができる個体だけでなく、最も有望な遊離メカニズムを同定するかもしれない。
Pb2+添加時にマトリックスから遊離したDNA分子を溶離液中に集め、エタノール沈殿により濃縮し、nested PCR増幅に付した。分子の出発プール構築において、第一PCR増幅は、ランダム領域に隣接するプライマー(プライマー1及び2)を利用し、第二のPCR増幅は、3’末端リボアデニレートを有する5’ビオチン化プライマー(プライマー3b)を利用し、これにより標的RNAホスホエステルを再導入した。全選択的増幅手順は実行に3〜4時間を要求した。
この手順の各ラウンドの間、分子を3つの方法で精製した。第一の方法は、PCR増幅に続き、フエノールで2回、クロロホルム/イソアミルアルコールで1回洗浄し、次いでエタノール沈殿する方法である。第二の方法は、DNAのストレプトアビジンへの付着に続き、強力な変性条件下で全ての非ビオチン化分子を洗い流す方法である。第三の方法は、Pb2+での溶離後、エタノール沈殿する方法である。ゲル電気泳動精製は行わない。したがって、分子を特定の長さに束縛する選択圧は存在しない。
C.触媒DNAの選択
インビトロ選択を連続的に5ラウンド行った。進行的にPb2+の添加にしたがい反応時間を減少させ、進行的に選択の厳密性を増加させた。1〜3ラウンドの間、反応時間は1時間であった。4ラウンドでは20分間であった。5ラウンドでは1分間であった。選択の各ラウンド後に得られた分子集団を有する一本鎖DNAの出発プールを、インビトロ選択の間使用したものと同一の条件下で、自己切断活性についてアッセイした。(図2)。
このアッセイのために、5’−ビオチン部分ではなく5’−32Pを用いて分子を調製した。これは出発材料及び5’切断生成物両方の検出を許容した。5分間のインキュベート後、最初のプール(G0)又は第一及び第二ラウンドの選択後に得られた集団においては検出可能な活性は存在しなかった。第三ラウンド(G3)後に得られたDNAは、低レベルの活性を示した。この活性は、第五ラウンド(G5)の選択後に得られたDNAについての自己切断活性の約50%に達し、着実に増加した。長いインキュベート後であっても、切断は標的ホスホエステルにおいてのみ検出された。Pb2+を反応混合物から除外したとき、この活性は失われた。
図2は、DNAの出発プール(G0)及び1〜5ラウンドの選択後に得られた集団(G1〜G5)の自己切断活性を示している。反応混合物は50mM MgCl2、0.5M NaCl、0.5M KCl、50mM HEPES(pH7.0(23℃))及び3nM[5’−32P]−標識DNAを含んでいた。
これを、1mM PbOAcの存在下又は非存在下、23℃で5分間インキュベートした。
記号「Pre」は108−ヌクレオチド前駆体DNA(配列番号4)を表し、「Clv」は28−ヌクレオチド5’−切断生成物(配列番号5)を表し、「M」は5’−切断生成物に対応するプライマー3a(配列番号6)を表している。
示された28−ヌクレオチド5’−切断生成物(Clv)は、好ましくは配列5’−GGGACGAATTCTAATACGACTCACTATN−3’(「N」は、3’末端に追加の2’,3’−環状ホスフェートを有するアデノシンリボヌクレオチド(配列番号5)を表す。)を有している。代替の態様においては、「N」は、分子の3’末端に追加の2’又は3’ホスフェートを有するアデノシンリボヌクレオチドを表す。
図2において、「G0」レーンの「Pre」バンドは、108−ヌクレオチド前駆体DNA(各DNAは50のランダムヌクレオチドを含んでいる)を含んでいる。それゆえ、与えられた全ての「Pre」サンプリングは、広範囲の前駆体DNAを含んでいるだろう。また、各サンプリングは、その前後のサンプリングで異なると考えられる。「G1」〜「G5」レーンは「Pre」バンドを含んでいる。このバンドでは触媒DNA分子が次第に濃縮されていくが、異なるDNA分子(すなわち、50ヌクレオチドランダム化ドメインが異なっている。)を多数含んでいる。「G5 Pre」DNA由来の異なる配列サンプルを図3に示す。
ショットガンクローニング技術を使用して、G5集団から個体を単離した。サブクローンの中から20の完全ヌクレオチド配列を決定した(図3)。(Cadwell et al,PCR Methods and Applications,2:28−33,1992及びCadwell et al,PCR Methods and Applications,3(Suppl.):S136−S140,1994)を参照のこと。20の配列のうち、5つは唯一のものであり、2つは2倍生じ、1つは3倍生じ、1つは8倍生じた。個々の変異体の全てが、DNAの出発プールにおいてランダム化された50ヌクレオチド領域内に共通配列要素を共有している。これらは全て2つの椎定鋳型領域を含んでいる。1つは、切断部位のちようど上流に位置するヌクレオチドのストレッチに相補的な領域であり、他方は、少なくとも4ヌクレオチド下流に位置するヌクレオチドに相補的な領域である。これら2つの椎定鋳型配列の間に、1〜11ヌクレオチドの可変ドメイン、続いて固定配列5’−AGCG−3’、更に3〜8ヌクレオチドの第二の可変ドメイン、最後に固定配列5’−CG−3’又は5’−CGA−3’が存在する。2つの推定鋳型配列外存在するヌクレオチドは、配列及び長さにおいて高度に可変性であった。配列決定した全てのサブクローンにおいて、最初にランダム化した50ヌクレオチドに対応する領域は、全50ヌクレオチドの長さを残していた。
図3は、5ラウンドの選択後の集団から単離した個々の変異体の配列の整列化を示している。固定基質ドメイン:(5’−GGGACGAATTCTAATACGACTCACTATrAGGAAGAGATGGCGAC−3’又は、5’−GGGACGAATTCTAATACGACTCACTATNGGAAGAGATGGCGAC−3’、Nはアデノシンリボヌクレオチドを表す)(配列番号13)を、逆三角形で同定される標的リボアデニレートと共に上端に示す。推定される塩基対相互作用に一般的に関連する基質ヌクレオチドを垂直の棒で示す。50の初期ランダム化ヌクレオチドに対応する配列を、基質ドメインに逆平行に整列化した。全ての変異体は、固定配列5’−CGGTAAGCTTGGCAC−3’(配列番号1)(「プライマー部位」、表示せず)により3’末端化されていた。基質ドメインと塩基対を形成ずることが推定される初期ランダム化領域内のヌクレオチドを図の右側及び左側に示す。酵素DNA分子の推定される塩基対形成(又は基質結合)領域を、各配列において個別に囲んだ。推定触媒ドメイン内の高度に保存されたヌクレオチドを2つの囲んだカラム内に示す。
追加データが、触媒ドメインの有意な二次構造モデルの構築に有用であることが予想されるが、ハンマーヘッド型及びヘアピン型リボザイムと同様に、本発明の酵素DNA分子の触媒ドメインは、塩基対形成相互作用を通して基質と相互作用する2つの基質結合領域(又は認識ドメイン)によって隣接される保存されたコアを含んでいると考えられることに注目している。ハンマーヘッド型及びヘアピン型リボザイムと同様に、触媒DNAは、塩基対形成に関連する2つの領域間の不対合基質ヌクレオチドの短いストレッチ、この場合においては5’−GGA−3’を要求すると考えられる。
9つの別個の変異体のそれぞれが、基質ドメインとの推定相補性について異なるパターンを示すことに注目することも興味深い。或る場合においては、塩基対形成は隣接していた。他方では、1以上のモノ相補的対により妨害された。一般的には、切断部位の上流に位置するヌクレオチドは、下流に位置するヌクレオチドよりもより強固な相互作用を形成する傾向にある。結合の研究及び部位特異的変異誘発分析により、更なる見識を得、この推定を更に実証することができるだろう。
触媒機能についての配列要件についての更なる見識を得るために、9つの変異体のうちの6つについての自己切断活性を、本明細書に記載した選択条件下で試験し、評価した(図3)。驚くべきことではないが、20のサブクローンの内の8つで生じた配列が、最も反応性が高いことが証明された(一次反応速度定数=1.4分−1)。研究した全ての変異体は、自己切断アッセイにおいて活性であり、標的RNAホスホエステルにおける切断に対応する単一の5’標識生成物を生じた。
優勢なサブクローンを、種々の反応条件下で更に分析した。自己切断活性はPB2+依存性であったが、Mg2+を反応混合物から取り除いた場合でも影響を受けなかった。更に、Na+又はK+が適合する一価のカチオンについての要求性が存在した。0〜1.0Mの範囲の一価カチオンの濃度の上昇につれて、反応速度も直線的に増加した(r=0.998)。反応に影響するであろうその他の変数、例えばpH、温度及びその他の二価金属の存在は、更なる評価が進行中である。
2.材料及び方法
A.オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類似体
合成DNA及びDNA類似体は、オペロン・テクロノジーズ(Operon Technologies)より購入した。19ヌクレオチド基質5’−pTCACTATrAGGAAGAGATGG−3’(又は5’−pTCACTATNGGAAGAGATGG−3’、「N」はアデノシンリボヌクレオチドを表す。)(配列番号7)は、鋳型として5’−CCATCTCTTCCTATAGTGAGTCCGGCTGCA−3’(配列番号9)を使用し、既報(Breaker et al,Biochemistry,33:11980−11986,1994)にしたがい、5’−pTCACTATrA−3’(又は5’−pTCACTATN−3’、「N」はアデノシンリボヌクレオチドを表す。)(配列番号8)を逆転写酵素伸長することにより調製した。プライマー3、すなわち5’−GGGACGAATTCTAATACGACTCACTATrA−3’(又は5’−GGGACGAATTCTAATACGACTCACTATN−3’、式中、「N」はアデノシンリボヌクレオチドを表す。)(配列番号6)を[γ−32P]ATP及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(プライマー3a)で5’−標識するか、又は、[γ−S]ATP及びT4ポリヌクレオチドキナーゼで5’−チオリン酸化し、次いN−ヨードアセチル−N’−ビオチニルヘキシレンジアミンでビオチン化した(プライマー3b)。
B.DNAプールの調製
DNAの出発プールは、合成オリゴマー5’−GTGCCAAGCTTACCG−N50−GTCGCCATCTCTTCC−3’(配列番号4)(「N」はG、A、T及びCの等モル混合物を表す)を使用したPCRにより調製した。500pmolのランダム化オリゴマー、1000pmolのプライマー1(5’−GTGCCAAGCTTACCG−3’、配列番号10)、500pmolesのプライマー2(5’−CTGCAGAATTCTAATACGACTCACTATAGGAAGAGATGGCGAC−3’、配列番号11)、500pmoleのプライマー3b、10μCi[α−32P]dATP及び0.2Uμl−1 Taq DNAポリメラーゼを含む2mlのPCRを、50mM KCl、1.5mM MgCl2、10mM Tris−HCl(pH8.3(23℃))、0.01%ゼラチン及び各0.2mMのdNTPの存在下、92℃で1分間、50℃で1分間、72℃で2分間インキュベートし、次いで92℃で1分間、50℃で1分間及び72℃で1分間のサイクルを5回行った。得られた混合物をフェノールで2回、クロロホルム/イソアミルアルコールで1回抽出し、エタノール沈殿によりDNAを単離した。
C.インビトロ選択
DNAの出発プールを、500μLの緩衝液A(1M NaCl及び50mM HEPES(pH7.0(23℃))中に再懸濁し、ストレプトアビジンカラム(AffiniTip Strep 20、ゲノシス(Genosys)、ウッドランド(The Woodlands)、テキサス)を繰り返し通過させた。カラムを、容積100−μlの緩衝液Aで5回、続いて容積100−μlの0.2N NaOHで5回洗浄し、次いで容積100−μlの緩衝液B(0.5M NaCl、0.5M KCl、50mM MgCl2及び50mM HEPES(pH7.0(23℃))で5回平衡化した。固定化一本鎖DNAを、容積20−μlの緩衝液B(1mM PbOAcを添加)を3回用い、1時間かけて溶離した。全ての固定化及び溶離工程は23℃下で行った。溶離液を等容積の緩衝液C(50mM HEPES(pH7.0(23℃)及び80mM EDTA)中に集め、DNAをエタノール沈殿させた。
得られたDNAを、20pmoleプライマー1、20pmoleプライマー2、0.05Uμl−1Taqポリメラーゼ、50mM KCl、1.5mM MgCl2、10mM Tris−HCl(pH8.3(23℃))、0.01%ゼラチン及び各0.2mMのdNTPを含む100−μLPCR中、92℃で10秒間、50℃で30秒間及び72℃で30秒間の30サイクルで増幅した。反応生成物をフェノールで2回、クロロホルム/イソアミルアルコールで1回抽出し、DNAをエタノール沈殿により回収した。約4pmolの増幅DNAを、100pmoleのプライマー1、100pmoleのプライマー3b、20μCi[α−32P]dATP及び0.1Uμl−1 Taqポリメラーゼを含む第二のnestedPCR(総容積200μL)に添加し、92℃で1分間、50℃で1分間及び72℃で1分間のサイクルを10回行い増幅した。PCR生成物をもう一度抽出し、沈殿させた。得られたDNAを50μLの緩衝液A中に再懸濁した。これを使用して次ラウンドの選択を開始した。
第三ラウンドの最後にnested PCRを容積100μlで行ったことを除いて、第二及び第三ラウンドを前記と同様にして行った。第四ラウンドの間、Pb2+添加後の溶離時間を20分間(溶離容積20μlを2回)に減少させ、回収したDNAの半分のみを第一のPCRに使用した。これは、15回の温度サイクルを含んでいた。第五ラウンドの間、溶離時間を1分間(溶離容積20μlを2回)に減少させ、回収したDNAの4分の1のみを第一のPCRに使用した。これは15回の温度サイクルを含んでいた。5ラウンドの選択後に得られたDNAを、既報(Tsang et al,Biochemistry,33:5966−5973,1994)と同様にしてサブクローニングし、配列決定した。
D.触媒DNAの動力学的分析
DNA及び種々のサブクローニング化個体の集団は、5’−32P標識を用いて、非対称性PCRにより、10pmoleのプライマー3a、0.5pmoleのインプット(input)DNA及び0.1Uμl−1 Taqポリメラーゼを含む25−μl反応混合物中、前記と同一の条件下で、92℃で1分間、50℃で1分間及び72℃で1分間のサイクルを10回行うことにより調製した。得られた[5’−32P]−増幅生成物を、10%ポリアクリルアミド/8Mゲル中の電気泳動により精製した。
自己切断アッセイは、緩衝液B中で10分間のDNAプレインキュベーション後に行った。PbOAcを終濃度1mMになるまで添加することにより反応を開始させた。等量の緩衝液Cの添加により反応を終了させた。反応生成物を、10%ポリアクリルアミド/8Mゲル中の電気泳動により分離した。多代謝回転条件下における動力学的アッセイを緩衝液B中で行った。この緩衝液は50μg ml−1 BSAを含んでおり、材料の容器壁への付着を防止した。基質及び酵素分子を、Pb2+を含まない反応緩衝液中で5分間別々にプレインキュベートし、その後に組み合わせ、PbOAcを終濃度1mMになるまで添加することにより反応を開始させた。
3.分子間切断をするデオキシリボザイムの進化
A.分子間フォーマットへの転換
研究した変異体の触媒及び基質ドメイン間の推定される塩基対形成相互作用の種々のパターンに基づくと、DNA触媒反応を分子間フォーマットへ転換することは道理上簡単であると考えられる。その実行において、本発明者等は、触媒の2つの基質結合領域を単純化し、それぞれが基質どの7〜8塩基対の連続ストレッチを形成することを望んだ。更に、本発明者等は、2つの塩基対形成領域及び介在配列5’−GGA−3’に限定される最小基質を提供することを望んだ(図4A)。
図4A及び4Bは、触媒代謝回転で進行する分子間反応におけるRNAホスホエステルのDNA触媒切断を示している。図4Aは、19量体基質と38量体DNA酵素との間に形成された複合体を図示したものである。基質は単一のアデノシンリボヌクレオチド(「rA」又は「N」(矢印に隣接する)これはデオキシリボヌクレオチドに隣接している。)を含んでいる。合成DNA酵素は、図3示す最も頻繁に出現した変異体の38ヌクレオチド部分である。推定触媒ドメイン内に位置する高度に保存されたヌクレオチドを「四角」で囲んだ。図示されるように、1つの保存された配列は「AGCG」であり、もう一方は「CG」(5’→3’方向に読む)であった。
図4は、インビトロ選択の間に使用したものと同一の条件下における、[5’−32P]−標識基質のDNA触媒切断についてのKm(負の勾配)及びVmax(y切片)を決定するために使用したイーディー−ホフスティー(Eadie−Hofstee)プロットを示している。切断の初速度を、5nMのDNA酵素及び0.125、0.5、1、2又は4μMのいずれかの基質を含む反応について測定した。
触媒ドメインの設計において、本発明者等は、最も反応性の高い変異体組成物(5’末端における2つのヌクレオチド及び3’末端における11のヌクレオチドが切断されている。)に強く依存した。2つの鋳型領域の間に存在する15ヌクレオチドは未変化のままであり、3’鋳型領域に単一のヌクレオチドが挿入され、基質と塩基対を形成することができるヌクレオチドの連続的ストレッチを形成した。基質を、配列5’−TCACTATrA ● GGAAGAGATGG−3’(又は5’−TCACTATN ● GGAAGAGATGG−3’)(「N」はアデノシンリボヌクレオチドを表す)(配列番号12)(下線を引いたヌクレオチドは、触媒DNA分子との塩基対形成に関連する2つの領域に対応する)に単純化した。
デオキシリボヌクレオチドの全体を含む38量体触媒DNA分子(触媒)及びその他の全DNA配列内に包埋された単一リボヌクレオチドを含む19量体基質を使用した単純化された反応系は、迅速な代謝回転での効率的DNA触媒ホスホエステル切断を許容した。0.01μMの触媒及び1μMの基質の存在下での90分間のインキュベートの間、基質の46%が切断された。これは触媒の46回の代謝回転に相当する。この反応の予備的動力学的分析を行い、多代謝回転条件下で評価した。DNA触媒は、ミカエリス−メンテン動力学を示した。kcat及びKmはそれぞれ1分−1及び2μMであった(図4B参照)。Kmの値は、ワトソン−クリック相互作用に基づく触媒と基質との間の予想される解離常数よりもかなり大きかった。基質を同一反応条件下(但し、触媒の非存在下)でインキュベートしたところ、4×10−6分−1のkuncut値を得た。これは、0.5mM Pb2+の存在下、pH7.0及び37℃でのより不安定な1−ニトロフェニル−1,2−プロパンジオールの加水分解についての既報(Breslow et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:4080−4083,1991).の値5×10−3分−1と一致した。
ホスホエステル切断反応は、隣接ホスフェート上のリボヌクレオシド2’−ヒドロキシルによる攻撃を含む加水分解メカニズムにより進行し、末端2’(3’)環状ホスフェートを有する5’生成物及び末端5’−ヒドロキシルを有する3’生成物を生成すると考えられる。このメカニズムのサポートにおいて、3’−切断生成物は、T4ポリヌクレオチドキナーゼ及び[γ−32P]ATPを用いて効率的にリン酸化された。
これは、遊離5’−ヒドロキシルの利用可能性と一致する。
B.考察
5ラウンドのインビトロ選択後、標的RNAホスホエステルのPb2+依存性切断を効率的に触媒する一本鎖DNA分子集団を得た。この集団から単離した代表的な個体の共通の特徴に基づき、触媒及び基質ドメインの単純化バージョンを構築し、分子間関係における迅速な触媒代謝回転の実証を誘導した。したがって、38量体触媒ドメインはDNA酵素、又は「デオキシリボザイム」と呼ばれるものの例を提供する。
この分子が、迅速な代謝回転で進行し、かつ、ミカエリス−メンテン動力学にしたがう反応において化学的変換を促進することができる情報性高分子であるという事実に基づく、この分子の酵素としての言及は、酵素を構築するものについて全ての人が認める概念を満足させないだろう。ある者は、酵素は本質的にポリペプチドでなければならないと主張するかもしれない。しかしながら、RNA酵素の概念を認めるならば、DNA酵素に関する同様の見解を採用することは妥当であると考える。本発明者等がランダム配列DNAのプールからこの分子の生成を極めて迅速に行うことができたということを考慮すると、合成DNA酵素の多数の例が近い将来に現れることを予想している。
RNAホスホエステルのPb2+依存性切断を、DNA触媒の最初の標的として選択した。なぜなら、この反応は、切断部位に隣接して存在する2’ヒドロキシルの脱保護を促進する配位Pb2+−ヒドロキシルの適切な位置のみを要求する単純な反応だからである(Pan et al,in The RNA World,Gesteland & Atkins(eds.),pp.271−302,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1993)を参照のこと)。Pb2+は、プリンのN7部位に配位し、グアニンの06部位に配位し、ウラシルの04部位に配位し、シトシンのN3部位に配位することが知られている(Brown et al,Nature,303:543−546,1993)。したがって、RNAと比較した糖組成及びDNAの立体配座の差異は、DNAが十分に規定されたPb2+−結合ポケットを形成することを妨げそうにはない。
その他の全DNA配列内に単一のリボヌクレオチドを含む基質を選択した。なぜなら、切断に対する唯一の許された部位が提供されており、得られた全ての触媒活性が唯−DNAに起因することを保証するからである。基質認識は、触媒及び基質間で塩基対形成相互作用する2つの領域に依存すると考えられる。しかしながら、2つの領域間に存在する対を形成しない基質ヌクレオチド5’−GGA−3’は、基質認識、金属の配位又は触媒機能のその他の側面において重要な役割を果たすだろう。
全RNA分子、その他のRNA−DNA複合体及び1以上のヌクレオチド類似体を含む分子は許容される基質であろう。本明細書に記載するように、本明細書に記載されるインビトロ進化手順を首尾よく使用して、所望の特異性を有する酵素DNA分子を生成してもよい。この系についての更なる分析も進行中である。
更に、酵素及び基質間の推定塩基対形成相互作用が、配列に関して一般化されるか否かを決定する研究が、本明細書に記載される方法を使用して進行中である。本明細書に記載されるPb2+−依存性デオキシリボザイムを、DNAの構造的及び酵素特性を探索するためのモデル化合物として考慮してもよいだろう。
DNA触媒の迅速な開発のために本明細書の開示において使用される方法はかなり一般的なものであるので、本発明者等がその他の補因子を使用して、潜在的な触媒ドメインに付着する標的結合の切断の引き金を引くことを許容するだろう。
この点に関して、その他のカチオンの存在下において機能するDNA酵素の開発(実施例4)と同様に、生理的条件下において標的RNAを特異的に切断するMg2+依存性DNA酵素の開発が興味の対象となる。そのような分子は、標的mRNAの特異的な不活性化に対する伝統的なアンチセンス及びリボザイムアプローチの代替物を提供するだろう。
したがって、酵素活性を示すことができる生物学的巨大分子のリストにおいて、DNAは、RNA及びタンパク質に加わる。DNAの触媒能力の全範囲は探索中であるが、これらの探索は、本研究において使用する方法等のインビトロ選択法に基づいて急速に進行するだろう。
DNA酵素は、その他の巨大分子触媒と比較していくつかの重要な利点を提供する。第一は、ほとんどの研究所が自動化DNA合成機にアクセスし、DNAホスホラミダイトのコストが極めて適切なものとなった時代において、容易に調製されることである。第二に、DNA酵素は、特にRNAと比較して極めて安定な化合物であるので、生物物理学的研究における使用を促進することができることである。第三は、現在、RNA切断活性を欠くアンチセンスDNAを利用している治療学的応用へ適用することができることが期待されていることである。インビトロ選択は、DNA類似体を用いて実行することができるだろう。このDNA類似体は、ヌクレアーゼ耐性、例えばホスホロチオネート含有DNAである。これらのDNA類似体はデオキシヌクレオシド5’−トリホスフェートの形態で調製することができる限り、DNA依存性ポリメラーゼによって基質として許容される。最後に、DNA酵素は、触媒機能の巨大分子的基礎の理解についての新規な窓を提供する。例えば、同一の化学的変換を触媒するタンパク質基礎酵素、RNA基礎酵素及びDNA基礎酵素の比較分析を行うことは興味深いだろう。
4.触媒DNAのその他のファミリー
DNAの出発プールを、DNA出発プールが40ランダムヌクレオチドを含んでいたことを除いて前記実施例2Bと本質的に同様にしてPCRにより調製した。したがって、本実施例に記載するDNA出発プールは、合成オリゴマー5’GGG ACG AAT TCT AAT ACG ACT CAC TAT rA GG AAG AGA TGG CGA CAT CTC N40GT GAC GGT AAG CTT GGC AC3’(配列番号23)、(NはG、A、T及びCの等モル混合物である。)を使用したPCRにより調製した。DNA分子を、標的rAへ続くホスホエステルを切断する能力について選択した(図6Aも参照のこと)。
選択的増幅を、Pb2+、Zn2+、Mn2+又はMg2+のいずれかの存在下で行い、少なくとも4つの触媒DNA分子の「ファミリー」を生成した。図5に示されるように、特異的活性を示す触媒DNA分子が種々のカチオンの存在下で生成した。
図5は、選択した触媒DNAの4つのファミリーの特異的エンドリボヌクレアーゼ活性を示すポリアクリルアミドゲルの写真表示である。分子中のPb2+依存性ファミリーの選択を、対照として平行して繰り返した。3つのレーンの各グループにおいて、第一のレーンは、金属カチオン非存在下における選択した集団の活性の欠如を示している。第二のレーンは、金属カチオンの存在下において観察された活性を示している。第三のレーンは出発プール(G0)の活性の欠如を示している。現在、反応性の順番は、Pb2+>Zn2+>Mn2+>Mg2+であることが観察された。これは、対応の金属水酸化物のpKaを反映している。
予め選択した二価カチオンの存在下における各5ラウンド(G5)又は6ラウンド(G6)の選択的増幅の後、所望のエンドヌクレアーゼ活性を得た。以下に示すMg2+の存在下における選択的増幅についての説明は、例示であることを意図する。
使用した二価金属が1mM Pb2+ではなく1mM Mg2+であったことを除いて、本明細書の実施例2に記載の方法にしたがい、6ラウンドのインビトロ選択増幅を行った(Breaker et al,Chem.& Biol.,1:223−229,1994(この文献は本質的に同一の手順を記載しており、参照することにより本明細書に組み込まれる。)も参照のこと)。
6ラウンド後に、個々のクローンを単離し、これらのクローンのうちの24のヌクレオチド配列を決定した。全ての配列は、5’GGG ACG AAT TCT AAT ACG ACT CAC TAT rA GG AAG AGA TGG CGA CA(配列番号23の部位1〜44)で始まり、CGG TAA GCT TGG CAC 3’(配列番号23の部位93〜107)で終わっていた。
出発プールのTCTC N40 GTGA(配列番号23の部位45〜92)に対応する中間のセグメントは下記の通り変動した。
括弧内の最初の数字は、特定の配列を有するクローンの数を示している。ある変異(太字で強調)は、最初にランダム化したヌクレオチド部位以外の部位で起こったことに注目すべきである。
前記に列挙した第二の配列(すなわち、配列番号25)は、24のクローンのうち5つで生じ、これを更なる研究のためのリード化合物(すなわち、主化合物)として選択した。切断活性を、濃度1mMの種々の二価金属イオン及び1M NaClの存在下、pH7.0、23℃で測定した。
リード化合物を、Mg2+の存在下における活性について選択したけれども、4つ全ての二価金属の存在下で活性であった。逆に、Mn2+、Zn2+又はPb2+の存在下における活性について選択したDNA分子は、Mg2+の存在下において活性を全く示さなかつた。
更に、Mg2+の存在下における6ラウンドのインビトロ選択後に得たDNA集団は、全てをホスホロチオネート含有DNA類似体として調製したとき、〜10−3分−1の観察された速度でMg2+依存性切断活性を示した。各立体中心にRP配置を有するようにホスホロチオネート含有類似体を酵素に調製した。そのような化合物は、非修飾DNAと比較して、細胞ヌクレアーゼによる分解に比較的耐性を有した。
リード化合物を40ヌクレオチド部位(下線部)で再ランダム化し、15%の頻度(3つの可能性のある塩基置換のそれぞれが5%の可能性)で変異を導入した。再ランダム化集団を追加の7ラウンドのインビトロ選択に付した。最後の4ラウンドの間、1mM Pb2+の存在下で反応性の分子を集団から取り除き、残りを1mM Mg2+の存在下における反応に挑戦させた。7回目のラウンド後、個々のクローンを単離し、これらのクローンのうち14のヌクレオチド配列を決定した。全ての配列は、5’GGG ACG AAT TCT AAT ACG ACT CAC TAT rA GG AAG AGA TGG CGA CAT CTC (配列番号23の部位1〜48)で始まり、GTG ACG GTA AGC TTG GCA C3’(配列番号23の部位89〜107)で終わっていた。
40の部分的にランダム化した部位(N40、配列番号23の部位49〜88)に対応する中間のセグメントは下記の通り変動した。
括弧内の数字は、特定の配列を有するクローンの数を示している。太字で示すヌクレオチドは、リード化合物とは異なるヌクレオチドである。
これらのクローンの切断活性についての正式な分析が進行中である。集団は全体として、〜10−2分−1の観察された速度でのMg2+依存切断活性を示した。これは、Pb2+の存在下における活性と比較可能なレベルであった。
図6A及び6Bは、それぞれ本明細書に記載する選択的増幅方法により得た「前駆体」触媒DNA分子及びいくつかの触媒DNA分子のうちの1つの二次元図を示している。図6Aは出発プールの1つの例示分子であり、これは、配列番号23に現される分子の全体的な配置を示している。図示されるように、種々の相補的ヌクレオチドがランダム(N40)領域に隣接している。
図6Bは、本明細書に記載の手順により生成したMg2+依存性触媒DNA分子(又は「DNAzyme」)の1つの略図である。基質核酸内のリボヌクレオチドの位置は矢印で示される(図示した分子は、配列番号23の「最初」及び「最後」の配列だけでなく、配列番号25に同定される配列を含んでいる)。
本明細書に開示されるように、エンドヌクレアーゼ活性は、インビトロ進化を経て前記の各「ファミリー」において増強を続けた。そのため、本明細書に開示されるガイドラインを使用して、更に望ましい特異性を有する酵素DNA分子を生成してもよい。
5.大きなRNA配列の切断
前記の拡張と同様にして、前記に示したその他の全DNA基質内に包埋した単一のリボヌクレオチドよりも全RNA基質を切断するDNA酵素を開発した(Breaker et al,Chem.& Biol.,1:223−229,1994、Breaker et al,Chem.& Biol.,2:655−660,1995を参照のこと)。標的配列として、配列5’GUAACUAGAGAU3’(配列番号49)を有する、HIV−1 RNAのU5LTR領域内の12の高度に保存されたヌクレオチドのストレッチを選択した。
前記実施例に記載の方法にしたがい、以下に示す組成を有する1014DNA分子のプールを生成した。
NはデオキシリボヌクレオチドG、A、T及びCの等モル混合物であり、「r(GUAACUAGAGAU)」として同定される配列は、リボヌクレオチドから構成される(適宜、追加のdA残基を、5’末端のリボヌクレオチド部分に先行する配列へ添加して、最初の5’ヌクレオチド配列を改変し、「GGAAAAA」を読む最初の配列を生じさせ、長さ99残基である配列番号50で示される配列を生じさせてもよい。明らかなことに、これは本明細書に詳細に記載される様に特定の酵素DNA分子を操作するためになされてもよい修飾の単なる1例である。
初期ライブラリーを、10Uul−1 Superscript II逆転写酵素(RT、ギブコ(Gibco)BRL)、3mM MgCl2、75mM KCl、50mM Tris*HCl(pH8.3)及び各0.2mMのdNTPを含む反応混合物50−ul中、100pmolsの5’−GTGCCAAGCTTACCG−N50−GTCGCCATCTCTTCC−3’(N=G、A、T又はC)についての50pmolsの5’−ビオチン−d(GGAAAAA)r(GUAACUAGAGAU)d(GGAAGAGATGGCGAC)−3’の鋳型特異的伸長により生成した。極微量の[5’−32P]−標識プライマーが反応混合物中に含まれており、伸長効率をモニターすることを許容した。RTを除く全ての成分を組み合わせ、65℃で5分間インキュベートし、45℃で10分間冷却した。RTを添加し、混合物を45℃で45分間インキュベートし、Na2 EDTAの添加によりクエンチした。NaClを終濃度1Mになるまで添加し、伸長生成物を4つのストレプトアビジンアフィニティーカラム(Genosys)を繰り返して通過させることにより固定化した。カラムを、37℃下、容量100−ulの洗浄緩衝液(1M NaCl,50mM Tris*HCl(pH7.5)、0.1mM Na2EDTA)で5回、続いて容積100−ulの0.1N NaOHで5回、容積100−ulの洗浄緩衝液で5回洗浄し、反応緩衝液(10mM MgCl2、1M NaCl、50mM Tris*HCl(pH7.5))の3×20−ulアリコートを用いて、37℃下で1時間かけて溶離した。溶離した分子を回収し、プライマー5’−ビオチン−GGAAGAGATGGCGAC−3’及び5’−GTGCCAAGCTTACCG−3’を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。PCR生成物を、前記のようにしてストレプトアビジンカラム中に固定化し、容積100−ulの洗浄緩衝液で5回洗浄し40ulの0.1N NaOHを用いて溶離し、非ビオチン化鎖を得た。単離したDNAをエタノール沈殿し、プライマー伸長反応における鋳型として使用し、次ラウンドを開始した。2〜10ラウンドは、反応スケールを伸長の間は5倍減少させ、PCRの間は2倍減少させたことを除いて前記と同様にして行った。
生成した酵素DNA分子を、包埋したRNA標的配列内に位置するホスホエステルを切断する能力について選択した。pH7.5、37℃における10mM Mg2+存在下における酵素DNA分子活性に基づいて、10ラウンドのインビトロ選択増幅を行った。選択工程の間、「好ましい」切断部位及びその好ましい部位で切断する「最良の」触媒についての競争が存在した。最も効率的な切断能力を有する2つの部位及び2つの触媒ファミリーが出現した(図7)。
図7は、基本的に本明細書に記載されるようにして行った10ラウンドのインビトロ選択的増幅のある結果を示している。示されるように、2つの部位及び触媒の2つのファミリーが、最も効率的な標的配列切断を示すものとして出現した。
切断条件は図7に示されるものと本質的に同一であった。すなわち、10mM Mg2+、pH7.5、37℃であった。反応2時間後に集めたデータを示す。切断(%)を、世代数(0〜10)に対してプロットした。基質中の示された部位で標的配列を切断することができる触媒DNA分子の数/普及率(prevalence)を、G↓UAACUAGAGAUで切断したものを縞模様の垂直棒で、GUAACUA↓GAGAUで切断したものを開かれた垂直棒(僅かに陰影)で示した。図7において、矢印(↓)は、切断が起こる2つの隣接ヌクレオチド間の部位を示している。
8及び10ラウンド目の選択的増幅後に得た集団に由来する種々の個体をクローニングした。第8ラウンド由来の29個体及び第10ラウンド由来の32個体のヌクレオチド配列を決定した(それぞれ、表2及び3を参照のこと)。
表2及び3の上部の「ヌクレオチド配列」の下に、出発プールにおいてランダム化された50ヌクレオチド(すなわちN50)に対応する同定された各クローン部分を示す。したがって、与えられたクローンの全体のヌクレオチド配列は通常、「N50」に先行、「N50」に続く及び「N50」を含むヌクレオチド配列を含んでいる。基質配列は付着しており、自己切断は起こっていないと椎定する。例えば、(非自己切断)クローンの全体配列は通常、配列番号50の残基番号1〜33、続くランダム化N50領域を現す領域、、続く配列番号50の残基番号84〜98又は配列番号51の残基番号1〜34、続くランダム化N50領域を現す残基、続く配列番号51の残基番号85〜99を含んでいる。しかしながら、各クローンのN50(又はN40)領域又はその一部は、特定の酵素DNA分子の特異性及び/又は活性の決定において特に重要である。このことは、基質及びDNAzymeが別の分子である反応においては特に明確である(例えば、図8及び9を参照のこと)。
クローン番号は、第8ラウンド及び第10ラウンド後に得られた個体についてそれぞれ8−x及び10−xと名付けた。配列番号を列挙し、各クローンの「N50」領域と対応させた。
1.10−4、10−40と同一。
2.8−20、8−32、8−38、10−1、10−34と同一。10−11に対して1つの変異。10−29に対して3つの変異。
3.10−5に対して1つの変異。
4.10−30に対して1つの変異。
続いて種々のクローンの自己切断活性を測定した。クローン8−5、8−17及び10−3は部位5’ GUAACU↓AGAGAU 3’で効率的に切断することを見いだした。一方、クローン10−14、10−19及び10−27は部位5’ G↓UAACUAGAGAU 3’で効率的に切断することを見いだした。分子のRNA部分を配列5’ GGAAAAAGUAACUAGAGAUGGAAG 3’(配列番号51の残基番号1−24)に伸長したとき、クローン8−17、10−14及び10−27は完全な活性を保持したが、クローン8−5、10−3及び10−19では活性が低下した。続いて、クローン10−23は、伸長したRNAドメインを含む自己切断反応において高レベルの活性を示すことを見いだした。
当業者が同様のことを理解しない場合、本明細書の開示にしたがい操作したポリヌクレオチド分子の「N50」領域に先行又は続くヌクレオチド配列、すなわち「N50」領域に隣接する基質結合領域を、例えば長さ、ヌクレオチド配列、核酸の種類等について種々の方法で改変し、特定の特異性を有する酵素DNA分子を生成してもよいことに注意すべきである。例えば、配列番号51の残基番号1−24がRNAヌクレオチドとして記載されているが、これらは代替としてDNA、RNA又はその複合物を含んでいてもよい。すなわち、例えば配列番号51を、核酸残基番号1−7がDNAを含み、残基番号8−19がRNAを含み、残基番号20−99がDNAを含むことができるだろう。同様に、「N50」に続くヌクレオチドはRNA、DNA又はその複合物を含んでいてもよい。「N50」(又は「N40」。実施例4を参照のこと)領域に先行又は続く領域の長さは、本明細書に記載されるように変化してもよい。更に、N50又はN40領域に先行及び/又は配列を短縮、拡張又は全体として削除してもよい。
更に、前記のように、本実施例に記載する方法における標的配列としてHIV−1RNAの特定の領域を選択した。そのような配列は、標的として使用する唯一のものではない。明らかに、当業者は、本明細書に記載される教示にしたがい、その他の標的配列に特異性を有する酵素DNA分子を操作し、設計するだろう。本明細書に記載されるように、そのような標的配列を構築し、DNA、RNA又は配列番号50及び51に記載されるその複合物を含む大きな配列へ挿入してもよい。
酵素及び基質ドメインを別分子に分割することにより、自己切断反応は分子間反応へ容易に転換した。クローン8−17及び10−23をプロトタイプ分子として選択した。両方とも、多代謝回転で進行する反応における別個の全RNA基質の切断においてDNA酵素として作用することが示された(図8)。続いて、基質結合アームを、切断部位を画する未対合のヌクレオチドの各側における7塩基対へ縮小した(図9)。
図8は、本発明の2つの触媒DNA分子であるクローン8−17及び10−23のヌクレオチド配列、切断部位及び代謝回転速度を現している。反応条件は示したとおりである。すなわち、10mM Mg2+、pH7.5及び37℃であった。クローン8−17として同定されたDNAzymeを左に示す。RNA基質の切断部位は矢印によって示される。この基質配列(5’−GGAAAAAGUAACUAGAGAUGGAAG−3’)は、DNAzymeから単離したもの(すなわち中間切断物が示される)であり、それ自体が標識されていた。同様に、本明細書において10−23として同定されたDNAzymeを右に示す。RNA基質の切断部位を矢印で示す。更に基質配列を示す。8−17酵素について、代謝回転速度は約0.6時間−1であった。10−23酵素について、代謝回転速度は約1時間−1であった。
図8に示すように、別の基質分子を切断することができる触媒DNA分子であるクローン8−17のヌクレオチド配列は以下の通りである。5’−CTTCCACCTTCCGAGCCGGACGAAGTTACTTTTT−3’(配列番号56の残基番号1−34)。同図において、別の基質分子を切断することができる触媒DNA分子であるクローン10−23のヌクレオチド配列は以下の通りである。
更に、図9は本発明の2つの触媒DNA分子であるクローン8−17及び10−23のヌクレオチド配列、切断部位及び代謝回転速度を現している。反応条件は示したとおりである。すなわち、10mM Mg2+、pH7.5及び37℃であった。図8に示されるように、クローン8−17として同定されたDNAzymeを左に示す。RNA基質の切断部位は矢印によって示される。この基質配列(5’−GGAAAAAGUAACUAGAGAUGGAAG−3’)は、DNAzymeから単離したもの(すなわち中間切断物が示される)であり、それ自体が標識されていた。同様に、本明細書において10−23として同定されたDNAzymeを右に示す。RNA基質の切断部位を矢印で示す。更に基質配列を示す。8−17酵素について、Kobsは約0.002分−1であった。10−23酵素について、kobs値は約0.01分−1であった。
図9に示すように、別の基質分子を切断することができる触媒DNA分子であるクローン8−17のヌクレオチド配列は以下の通りである。5’−CCACCTTCCGAGCCGGACGAAGTTACT−3’(配列番号56の残基番号4−30)。同図において、別の基質分子を切断することができる触媒DNA分子であるクローン10−23のヌクレオチド配列は以下の通りである。5’−CTAGTTAGGCTAGCTACAACGATTTTTCC−3’(配列番号85の残基番号5−33、5’末端において「TTG」が「CTA」で置換されている)。
RNA切断DNA酵素の触媒速度は、今は十分に最適化されていない。前記及び過去の研究報告の通り、本発明者等は、プロトタイプ分子を部分的にランダム化し、選択的増幅の追加のラウンドを行うことにより触媒速度を改善することができた。しかしながら、本発明者等は、8−17及び10−23のMg2+に対するKmが、それぞれ約5mM及び2mM(pH7.5、37℃で測定)であることを見いだした。これは細胞内条件と確かに適合するものである。
6.普遍的な基質酵素の調製
前記は、予め選択した配列を有する標的核酸を触媒的に切断する能力を有する本発明の酵素を示したものである。更に、全DNAである核酸、デオキシリボヌクレオチド(すなわちDNA)配列内に包埋されたリボヌクレオチド(すなわちRNA成分)を有する核酸又は全体がDNAである核酸を切断する酵素が示される。更に、改変することができる基質及びその基質を切断することができる酵素を調製する。
本発明によって、全ての標的となる基質、すなわち約10〜30ヌクレオチドの長さの予め選択したヌクレオチド配列を含むものを、生理的条件下において効率的かつ特異的な動力学的態様で切断することができる酵素が提供される。この酵素は容易に製造することができかつ安価である。更に、RNA構造の探索及び組換えRNA、例えば配列特異的エンドリボヌクレアーゼ等の操作をするための、標的RNA、特にメッセンジャーRNA(mRNA)の不活性化に有用である。
RNAの不活性化について、この酵素は標的細胞RNAの不活性化に有用であり、、例えば「アンチセンス」オリゴデオキシヌクレオチドを使用してmRNA機能をブロックすることができる。しかしながら、本発明の酵素は、アンチセンス試薬よりも優れている。なぜなら、本発明の酵素は、標的の認識及び切断を提供し、触媒代謝回転で機能することができるからである。一方、アンチセンス分子は等モルの様式(すなわち、非触媒的)での認識を提供するのみであり、RNA不活性化反応についてはその他の細胞性酵素に依存しなければならない。
以下に示すセクションは、前記「10−23」及び「8−17」モチーフに基づく改良酵素の調製について記載している。これらの改良酵素は、予め選択した標的配列をすべて切断することができる一般的酵素である。また、本明細書において詳述するように、標的特異性は、酵素の基質結合領域の配列にのみ依存する。
前記実施例5に記載するように、「10−23」及び「8−17」と命名した2つのモチーフを、選択的増幅の連続的ラウンドの間に同定した。これらを分子間切断反応について作り直したところ、この態様で効率的な遂行を示した。
シミュレートした生理的条件下(2mM MgCl2、150mM KCl、pH7.5、37℃、kcat=約0.01分−1の速度)における、図9に示される別々の基質分子の部位特異的触媒切断を提供する反応(すなわち、分子間切断)を使用して、更なる研究を行った。
切断は、酵素に相補的なオリゴヌクレオチドが隣接する基質の未対合プリンヌクレオチドにしたがい起こった。5’及び3’切断生成物は、それぞれ2’(3’)ホスフェート及び5’ヒドロキシルを有して(bore)いた。これは隣接ホスフェートの2┤ ヒドロキシルによる攻撃を含む反応メカニズムを示している。「8−17」及び「10−23」モチーフ酵素の両方においては、基質配列を、酵素の基質結合アームが相補的な様式で改変される限り、触媒活性の喪失なしに改変することができる。8−17酵素は、切断部位の直ぐ下流に位置するrG−dT「ゆらぎ」対について特別の要求を有する。この部位におけるワトソン−クリック対の置換は触媒活性を除去した。10−23酵素の基質結合アームは、標準ワトソン−クリック塩基対形成により基質全体と相互作用した。8−17及び10−23モチーフ酵素の触媒コアは、それぞれ13及び15のデオキシヌクレオチドを含む2つの基質結合アームの間に位置していた。
触媒コアの配列要求性をより正確に定義するために、各モチーフの1014の変異体からなるライブラリーを生成し、次いでコアのいたるところにヌクレオチド部位あたり25%の頻度でランダム変異を導入した各ライブラリーを6つの異なるインビトロ選択プロトコルに付した。このプロトコルは全52ラウンドの選択的増幅を含んでいた。この選択方法及び戦略を変更して、2つのプロトタイプ分子に関連する配列の徹底的な試験を行った。選択した集団由来の個体をクローニングし、配列決定し、触媒活性について試験した。この手順を以下に示すようにして行った。
8−17及び10−23分子に基づく再選択は、各モチーフについて6つの異なる系列を含んでいた。各系列は5〜21ラウンドのインビトロ選択を伴い、選択プロトコル及び反応時間に関しては異なっていた。全ての切断反応は、2mM MgCl2、150mM NaCl及び50mM Tris*HCl(pH7.5)中、37℃で行った。反応時間は、初期のラウンドでの60分間から後期のラウンドにおける1分間へと変化した。鋳型の各出発プールは、プロトタイプに相補的な配列に基づいており、それぞれ7つのヌクレオチドの固定化結合アーム及び各ヌクレオチド部位が25%の縮重でランダム化された触媒コアを有していた。8−17及び10−23モチーフについて、鋳型はそれぞれ以下の配列を有していた(小文字はPCRプライマー部位。基質結合アームに下線、ランダム化部位をイタリックにした)。
鋳型特異的伸長に使用するプライマーは、配列5’−ビオチン−r(GGAAAAA−GUAACUAGAGAUGG)d(AAGAGATGGCGAC)−3’を有していた。8−17を基本とする選択用のPCRプライマーは5’−GTGCCAAGCTTACCGAGTAACT−3’及び、5’−d(GGAAGGACAGACGACC−CATC)rUであった。10−23を基本とした選択用PCRプライマーは5’−GTGCCAAGCTTACCGGGAAAAA−3’及び5’−d(GGAAGGACAGACGACCTAGTT)rAであった。PCRプライマーは結合アームを包含しており、したがって、これらの配列を固定していた。各セットのPCRプライマーの1つは3’末端リボヌクレオチドを含んでおり、これが非鋳型鎖のアルカリ加水分解による二本鎖PCR生成物からの鋳型鎖の単離、続くポリアクリルアミドケル電気泳動による精製を許容した。ケルを基礎とする選択スキームをいくつかの系列に使用した。PCRプライマーは、5’−ビオチン−GTGCCAAGCTTACCG−3’及び、5’−GAAAAAGTAACTAG−AGATGGAAGGACAGACGACC−3’でであった。伸長反応を固体担体中、プライマー5’−r(GGAAAAAGUAACUAGAGAUGGAAG)−3’を使用して行った。極微量の[α−32P]−dATPを混合物中に含めて伸長生成物を標識し、アルカリを用いて溶離し、変性ポリアクリルアミドケル精製により精製し、エレクロトエルーション(electroelution)により回収した。次いで分子を反応させ、切断を起こした分子をゲル電気泳動により単離した。
初期選択の8回目と10回目のラウンド後に、前記と同様にして個々の分子をクローニングし、配列決定した。第8ラウンドの17番目のクローン(8−17)及び第10ラウンドの23番目のクローン(10−23)は、それぞれ配列5’−cacggttcga−atggcGTTATGCATCACACTATTTTTCATTGAAGCAGGCCGAGCCTTCCACCTTCcagcggtag−agaagg−3’及び、5’−cacggttcgaatggcATGTTAAGTTCGTCCCTTTTTAGCAACATCGATCGGATT−GGTTTCCCcagcggtagagaagg−3’を有していた(小文字はPCRプライマー部位。基質結合アームに下線、ランダム化部位をイタリックにした)。分子間反応のために、合成オリゴデオキシヌクレオチドを、基質結合アームの外側領域を欠くクローン化配列を基礎として調製した。これらを使用して、初期ライブラリーの構築に使用したプライマー(前記参照)と同一の配列を有する全RNA基質を切断した。続いて、DNA酵素の基質結合アームをそれぞれ7ヌクレオチドに縮小し、RNA基質に完全に相補的にした。
8−17酵素の場合において、クローン化個体間の配列の変動は、触媒コアが短い内部ステムループ(stem−loop)、続く未対合の4〜5ヌクレオチド領域から構成されることを示唆している(図10)。ステムは通常、3つの塩基対を含んでおり、このうち少なくとも2つはG−Cであった。ループは不変であり、配列5’−AGC−3’を含んでいた。ステムを伸ばすか又はループを改変した配列合成構築物は触媒活性を示さなかった。下流基質結合ドメインに対するステムの3’半分部分に結合する未対合領域は、配列5’−WCGR−3’又は5’−WCGAA−3’(W=A又はT、R=A又はG)を含んでいた。この領域に配列5’−TCGAA−3’を有する変異体は最高レベルの触媒活性を示したが、8−17酵素に関する増強はその他の基質配列に対して一般化されなかった。
10−23酵素モチーフの触媒コアの8番目のヌクレオチド部位は、T、C又はAのいずれかの変異を許容した。しかし、この部位のT(プロトタイプと同じ)が最高レベルの活性を提供した。RNA基質と基質結合ドメインの対応の相補的DNA酵素との多数の異なる組み合わせは、10−23モチーフが全ての基質配列に関して一般的であることを明らかにした。
10−23及び8−17モチーフ変異体についての触媒活性を、多代謝回転反応を使用して測定したところ、異日に行った同一の実験について通常<20%の変動を示した。単一及び多代謝回転実験で得られた動力学的値は類似していた。合成RNA基質を用いて得た値は、インビトロ転写基質を用いて得た値よりも都合よく僅かに低かった。報告されているkcat及びKm値は、kobs対kobs/[S]の改変イーディー−ホフスティープロットの最良適合線のそれぞれy切片及び負の勾配から決定した。各プロットは、Kmをまたぐ[S]範囲([E]の10倍をこえる[S])について10のデータポイントから構成されていた。kobs値は通常最初の10%の反応について得られた5つのデータポイントに基づいていた。基質及び酵素分子を別々に反応緩衝液中で10分間プレインキュベートし、次いで組み合わせて反応を開始した。
全ての反応は、0.01%ドデシル硫酸ナトリウムの存在下で行い、材料の容器壁への付着を防いだ。50mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−1−プロパンスルホン酸の添加によりpHを維持した。動力学的値は緩衝液の同一性により影響を受けなかった。反応生成物を、変性20%ポリアクリルアミドゲル中の電気泳動により分離し、ホスホイメージャー(phosphorimager)を使用して定量化した。
切断は、単一の未対合ヌクレオチドの3’側、好ましくはプリン、続くピリミジンにおいて起こった。A及びUに囲まれている標的部位は、シミュレートした生理的条件下において約0.1分−1の触媒速度で最も効率的に切断された。
A*U部位においてRNAを切断するDNA酵素を使用して、全てのmRNA開始コドン(A*UG)を標的とすることができる。テストケースとして、HIV−1gag/polmRNA(5’−GGAGAGAGA*UGGGUGCG−3’)の翻訳開始部位に対応する17量体のRNAの合成及びインビトロ転写バージョンを調製した。両方の基質バージョンとも、シミュレートした生理的条件下、対応の10−23DNA酵素により、0.15分−1のkcat及び0.47nMのKm値で進行する反応で、予想される部位で切断された(触媒効率、kcat/Km=3.2x108M−1分−1)(図11)。触媒速度は、1〜250mMの範囲のMgCl2濃度の増加に伴い上昇した(Mg2+に対する見かけのKmは180mM、pH7.5、37℃)。触媒速度は、7.0〜8.5の範囲のpH上昇につれておおよそ対数直線的に上昇した。これは、切断されたホスホエステルに隣接する2’−ヒドロキシルの脱保護を含む反応メカニズムと一致していた。50mM MgCl2(pH8.0、37℃)の存在下において、RNAの実験室操作に有用な条件は、kcatが3.4分−1であり、Kmが0.76nMであった。生理的条件下及び実験室条件下における10−23DNA酵素の触媒効率を、既知のRNA切断RNAの値と都合よく比較した。タンパク質酵素リボヌクレアーゼと比較したとき、DNA酵素は〜104倍低いkcatを有したが、Kmは〜105倍以上であった。
10−23酵素を使用して、生物学的に関連する種々のRNAを切断することができる。本発明者等は、HIV−1 gag/pol、env、vPr、tat、nef IGF−R及びE100リガーゼmRNAの翻訳開始部位を囲む15〜17ヌクレオチドに対応する合成RNA基質を調製した。各基質は、各7〜12ヌクレオチド基質結合アームが隣接する10−23触媒コアを含む合成DNA酵素により、予想される部位で切断された(表4)。全ての場合について、シミュレートした生理的条件下における触媒速度は約0.1分−1であった。しかしながら、Km値は基質のヌクレオチド組成により変動した。グアノシンに富むgag/pol基質については、7−又は8−ヌクレオチド基質結合アームを使用したとき、Km<1nMであった。env及びvpr基質は、7−ヌクレオチド結合アームを使用したとき、都合よく非常に低いKmで切断された。しかし、アームを8ヌクレオチドに増加したとき、Kmは実質的に改善された。
測定し、表4に示す動力学的値は、多代謝回転条件下、合成DNA酵素の>10倍をこえる合成RNA基質を用いて得た。反応条件は、2mM MgCl2、150mM NaCl、pH7.5、37℃であった。25mM NaCl2で得た。
本発明のDNA酵素がサポートする基質結合領域(アーム)についての変異の更なる証明として、アームの長さを、表4に示されるHIV−1 gag遺伝子開始コドン標的ヌクレオチド配列を使用して4〜13ヌクレオチド残基に系統的に変化させた。反応は、図13に示すようにアームの長さを変化させたことを除いて、前記と同様にして調製した各DNA酵素構築物について別々に行った。触媒DNA酵素の動力学的特性を、2mM Mg2+、150mM NaCl、pH7.5、37℃の条件下、前記通りに測定し、酵素の多代謝回転を測定した。HIV−1 gag造伝子に対して相補的に結合するように修飾した10−23モチーフを使用して、kcat(分−1)及びKm(nM)を測定した。図13に示す。
結果は、5〜13ヌクレオチド/アーム/基質結合領域の全範囲において有用な触媒速度が観察され、好ましい範囲7〜10ヌクレオチドでは特に効率的であったことを示している。更に結果は、最大触媒の半分の有効酵素濃度(Km)は5〜13ヌクレオチドの長さでは100〜0.05ナノモル(nM)であり、7〜13の長さが特に好ましいことを示している。
種々の修飾を10−23DNA酵素に取り込み、10%ウシ胎仔血清中における安定性について試験した(図13)。これらの修飾には、1)DNAの3’末端における「逆方向」(3’、3’−結合)チミジレート、2)両基質結合アームの遠位末端における5つの2’−O−メチル残基、3)両基質結合アームの全ての部位における2’−O−メチル残基、4)触媒コア内の5つのピリミジン−ピリミジン部位におけるホスホロチオネート残基、5)両基質結合アームの遠位末端における3つのホスホロチオネート残基が含まれる。最高の保護は、逆方向のチミジレート(t1/2>60分)により提供された。その他の全ての修飾は、未修飾のDNAと比較して増強された血清安定性を示した。ただし、コア内のP=S置換は例外であった。全ての修飾DNA酵素は触媒活性を保持した。
したがって、本発明は、予め選択した全ての基質核酸配列を切断するように設計することができる、部位特異的エンドヌクレアーゼ活性を有する触媒DNA分子を記載している。DNA分子(酵素)は第一及び第二の基質結合領域(アーム)を有し、これはコア領域に隣接している。各アームは標的基質核酸配列の一部に相補的な配列を有しており、第一及び第二のアームは一緒になって切断される基質核酸配列を規定している。相補性とは、基質結合領域が共有結合性ワトソン−クリック塩基対形成を用いて標的配列に結合することを意味する。
アームの種々の長さをとることができる。しかしながら、長さが酵素の触媒速度(kcat)及び有効濃度(Km)に影響することが観察されたので、好ましいアームの長さは各相補性の5〜13ヌクレオチド、好ましくは約6〜11ヌクレオチド、より好ましくは約7〜10ヌクレオチドである。
コア領域は以下の式に基づく種々の配列を有することができる。
(I.) T(ステム)’AGC(ステム)“Z(式中、(ステム)’及び(ステム)”は、それぞれ3つの連続ヌクレオチドであり、(ステム)’:(ステム)“対としてハイブリダイズするときは少なくとも2つのG:C対を含む3つの塩基対を含み、Z=WCGR又はWCGAAであり、W=A又はTであり、R=A又はGである。)このステム構造を図10に示す。図10は、3つの相補的ヌクレオチド対を示している。特に好ましいのは、モチーフ8−17のコア領域のプロトタイプ構造“TCCGAGCCGGACGA”(配列番号120)であり、これは図10に示される。
別の態様においては、コア領域は以下の式で示される配列を有することができる。
(II.) RGGCTAGCXACAACGA(配列番号122)
(式中、X=T、C又はAであり、R=A又はGである。)特に好ましいのは、モチーフ10−23のコア領域のプロトタイプ構造“RGGCTAGCTACAACGA”(配列番号121)であり、これは図10に示される。
前記デザインを有するDNA酵素は、図12に示されるように、アームの長さに依存した有用な触媒速度範囲及び有効触媒濃度を示すことができる。8−17又は10−23モチーフの本発明のDNA酵素は、通常生理的条件下で、約0.005〜0.1分−1、好ましくは約0.01〜0.1分−1、より好ましくは約0.03〜0.1分−1の触媒代謝回転速度(kcat)を有する。特に好ましい酵素は、約0.1分−1の速度を有する。8−17又は10−23モチーフの本発明のDNA酵素は、通常生理的条件下で、約0.05〜1000ナノモル(nM)、好ましくは約0.7〜900nM、より好ましくは約1.0マイクロモル(uM)未満、特に好ましくは約0.1(uM)の触媒の最大有効濃度の半分濃度(Km)を有する。
前述の記載は、更に、好ましいDNA酵素が、生理的条件下における使用のためにDNA酵素を安定化するヌクレオチド修飾を有していることを示している。種々の修飾のすべてを、酵素が本明細書において定義され、測定される酵素活性を維持する限り利用することができ、それゆえ、本発明は特定の安定化修飾に限定されない。好ましい修飾は、主題となるDNA分子のエキソ又はエンド型核分解性(nucleolytic)消化に対する感受性を低下させる。1つの態様においては、修飾は、1以上のヌクレオシドホスホロチオネート残基の組み込みを含んでいる。これはZhang et al,Biochem.Pharmacol.,50:545−556(1995)or by Stein,C.A.,Trends Biotechnol.,14:147−149(1996)に記載されている。ホスホロチオネート残基はアーム又はコアに存在することができ、ある態様においてはコア内のジピリミジン上に残基を含んでいる。別の修飾は、糖ヌクレオチドのリボース又はデオキシリボース成分の2’部位へO−メチル基を置換し、2’O−メチルリボヌクレオチドを形成することを含んでいる。これも周知であり、前記Zhang et al.に記載されている。更なる修飾は、逆方向の末端ヌクレオチドをDNA分子の3’末端へ付着させ、3’末端をブロックし、遊離の5’末端を現すことである。この構造は3’エンドヌクレアーゼをブロックし、3’末端における3’−3’結合ヌクレオチドの形成(すなわち逆方向のヌクレオチド)により生成する。3’末端における3’逆方向ヌクレオチドの調製は周知であり、オリゴヌクレオチド合成中、出発材料として末端3’残基逆位を有する修飾固体担体を使用して調製する。この目的に好ましい固体担体材料はdT−5’−CPG500(グレン・リサーチ(Glen Research)、スターリング(Sterling)、VA))であり、これは修飾された残基を有する制御された有孔ガラス樹脂である。
特定の態様及び実施例を含む前記の明細書は、本発明の説明を意図するものであり、本発明を限定するものとして解釈するべきではない。その他多数の変形及び修飾を、本発明の真の精神及び範囲を離れることなく行うことができる。
標的RNAホスホエステルを切断するDNAを分離する選択的増幅を示すスキームである。図示されたように、50のランダムヌクレオチドの伸長物を含む二本鎖DNA(その上に示された“N50”を有する分子)をPCRで増幅し、5′ビオチニル化DNAを用い、アデノシンリボヌクレオチド(rA)により3′端で終結する。(ビオチンラベルを丸で囲んだ文字“B”で示す。)このプライマーをTaqポリメラーゼで伸長して埋め込まれた1つのリボヌクレオチドを含むDNA産物を得る。得られた二本鎖DNAをストレプトアビジンマトリックス上に固定化し、0.2N NaOHで洗浄することにより非ビオチニル化DNA鎖を除去する。カラムを緩衝化溶液で再平衡化した後、1mM PbOAcを加えた同じ溶液でカラムを洗浄する。Pb2+依存性自己切断を受けるDNAをカラムから放出させ、溶離液に集め、PCRで増幅する。次に、PCR産物を用いて次のラウンドの選択的増幅を開始する。
DNAの出発プール(G0)と鉛陽イオン(Pb2+)の存在下に第1〜第5ラウンドの選択(G1〜G5)後の集団の自己切断活性を示す写真である。記号Preは108−ヌクレオチド前駆DNA(配列番号4);Clvは28−ヌクレオチド5′切断産物(配列番号5);及びMはプライマー3a(配列番号6)を表し、長さが5′切断産物に対応する。
5ラウンドの選択後の集団から分離した個々の変異体を示す配列アラインメントである。上部に所定の基質ドメインを示し、標的リボアデニル酸塩を逆三角形により同定した。推定した塩基対合相互作用に一般に関係する基質ヌクレオチドを縦のバーで示す。50のはじめがランダムのヌクレオチドに対応する配列を基質ドメインと逆平行に並べる。変異体の全てを所定の配列5′−CGGTAAGCTTGGCAC−3′(図示されていない;配列番号1)で3′終結する。基質ドメインと塩基対を形成すると考えられるはじめがランダムの領域内のヌクレオチドを図面の左右に示す。酵素DNA分子の推定塩基対形成領域は、図示された各配列において個別に四角に囲まれている。保存領域は、中央に位置した2つの大きなボックスで示されている。
触媒の代謝回転で進行する分子間反応におけるRNAホスホエステルのDNA触媒切断を示す図である。図4Aは、19量体基質(3′−TCACTATrAGGAAGAGATGG−5′、配列番号2)と38量体DNA酵素(5′−ACACATCTCTGAAGTAGCGCCGCCGTATAGTGACGCTA−3′、配列番号3)間に形成された複合体を示す線図である。基質は、デオキシリボヌクレオチドが隣接した1つのアデノシンリボヌクレオチド(“rA”、矢印の隣り)を有する。合成DNA酵素は、図3に示された最も高い頻度で生じる変異体の38−ヌクレオチド部分である。推定触媒ドメイン内に位置する高度に保存されたヌクレオチドは“四角に囲まれている”。示されたように、一方の保存配列は“AGCG”であり、もう一方は“CG”である(5′→3′の方向に読取り)。
触媒の代謝回転で進行する分子間反応におけるRNAホスホエステルのDNA触媒切断を示す図である。図4Bは、試験管内選択で用いられるものと同じ条件下で[5’−32P]標識基質をDNA触媒切断するKm(負のスロープ)とVmax(y切片)を求めるために用いたイーディー・ホフステープロットを示すグラフである。切断の初速度は、5nM DNA酵素及び0.125、0.5、1、2、又は4μM基質を含む反応について求めた。
ポリアクリルアミドゲルを示す写真であり、選択した触媒DNAの4ファミリーの特異的エンドリボヌクレアーゼ活性を示す。対照としてPb2+依存性ファミリーの分子の選択を平行方式で繰り返した(第1グループ)。第2グループでは、陽イオンとしてZn2+を用い、第3グループでは陽イオンはMn2+であり、第4グループでは陽イオンはMg2+である。ゲル上の第5の位置はマーカーとして切断産物のみからなる。わかるように、上記4グループの各々には3レーンがある。3レーンの各グループにおいては、第1レーンは金属陽イオンの存在しないときの選択した集団の活性がないことを示し、第2レーンは金属陽イオンの存在するときの活性が見られたことを示し、第3レーンは出発プールの活性のないことを示す(G0)。
各々“前駆体”の触媒DNA分子と本明細書に開示された選択的増幅法により得られた数種の触媒DNA分子の1つを示す二次元図である。図6Aは、出発プールからの具体的な分子を示す図であり、配列番号23で示される分子の全体の配置を示す。示されたように、種々の相補的ヌクレオチドはランダム(N40)領域を隣接する。
各々“前駆体”の触媒DNA分子と本明細書に開示された選択的増幅法により得られた数種の触媒DNA分子の1つを示す二次元図である。図6Bは、本明細書に記載された方法で作成したMg2+依存性触媒DNA分子(又は“DNAzymes”)の1つを示す図である。基質核酸内のリボヌクレオチドの位置を図6A及び図6B共に矢印で示す。
実質的に実施例5のように行なわれた10ラウンドの試験管内選択的増幅の結果のいくつかを示すグラフである。示されたように、触媒の2つの位置と2つのファミリーが標的配列の最も効率のよい切断を示すものとして現れた。切断条件は実質的に図7に示された通り、即ち、10mM Mg2+、pH7.5、及び37℃とした。反応を2時間行った後に集めたデータを示す。世代数(ここでは0〜10)に対してプロットした切断(%)を示す。基質の指示された部位で標的配列を切断することができる触媒DNA分子の数/有効を縦のバーで示し、G↓UAACUAGAGAUでの切断は斜線バーで示され、GUAACUA↓GAGAUでの切断は白い(陰のない)バーで示されている。
本発明の2つの触媒DNA分子、クローン8〜17及び10〜23のヌクレオチド配列、切断部位、及び代謝回転速度を示す図である。反応条件は、示された通り、即ち、10mM Mg2+、pH7.5、及び37℃とした。クローン8〜17として同定したDNAzymeを左に示し、RNA基質の切断部位は矢印で示されている。基質配列(5′−GGAAAAAGUAACUAGAGAUGGAAG−3′)−−DNAzymeから分離している(即ち、分子内切断を示す)−−はそのままで標識される。同様に、10〜23として同定したDNAzymeを右に示し、RNA基質の切断部位は矢印で示されている。また、基質配列を示す。8〜17酵素については、代謝回転速度は約0.6hr−1であり、10〜23酵素については、代謝回転速度は約1hr−1であった。非相補的対合を黒い丸(●)で示し、相補的対合を縦の線(|)で示す。
本発明の2つの触媒DNA分子、クローン8〜17及び10〜23のヌクレオチド配列、切断部位、及び代謝回転速度を示す図である。反応条件は、示された通り、即ち、10mM Mg2+、pH7.5、及び37℃とした。図8のように、クローン8〜17として同定したDNAzymeを左に示し、RNA基質の切断部位は矢印で示されている。基質配列(5′−GGAAAAAGUAACUAGAGAUGGAAG−3′)−−DNAzymeから分離している(即ち、分子内切断を示す)−−はそのままで標識される。同様に、10〜23として同定したDNAzymeを右に示し、RNA基質の切断部位は矢印で示されている。また、基質配列を示す。8〜17酵素については、kobsは約0.002min−1であった。10〜23酵素については、kobs値は約0.01min−1であった。非相補的対合を黒い丸(●)で示し、相補的対合を縦の線(|)で示す。
8〜17及び10〜23触媒モチーフの組成を示す略図である。DNA酵素(下の鎖)は、指定されていない相補的ヌクレオチド(横の線)間でワトソン・クリックの相補的対合(縦の線)によりRNA基質(上の鎖)を結合する。切断は、矢印で示された位置で起こる。ここで、R=A又はG及びY=U又はCである。
実施例6に記載された多代謝回転条件下の10〜23DNA酵素の触媒活性を示すグラフである。反応の最初の10%について初速度を測定し、一定の酵素濃度(0.004nM)及び種々の濃度の基質(0.02〜4nM)を用いた。HIV−1 gag/pol mRNAの出発コドン領域に対応する17量体RNA基質を試験管内転写により調製した。反応条件:2mM MgCl2、150mM NaCl、pH7.5、37℃。2つの独立した実験からのデータを示し、ミカエリス・メンテンの式:v=kcat[E]/(Km+[S])にあてはめる。
実施例6に記載された本発明のDNA酵素の基質結合領域の長さの変化の影響を示す2つのパネルである。わかるように、相補的基質結合領域の長さは第1及び第2基質結合領域(アーム)の各々について4〜13ヌクレオチドの長さ(n)で変化し、触媒活性を測定し、kcat(min−1)及びKm(ナノモル[nM])として示した。
実施例6に記載された本発明のDNA酵素の基質結合領域の長さの変化の影響を示す2つのパネルである。わかるように、相補的基質結合領域の長さは第1及び第2基質結合領域(アーム)の各々について4〜13ヌクレオチドの長さ(n)で変化し、触媒活性を測定し、kcat(min−1)及びKm(ナノモル[nM])として示した。
実施例6に記載されるDNA酵素のヌクレオチド残基に対する修飾の影響を示すグラフである。DNA酵素をRPMI−1640培養液中10%加熱不活性化ウシ胎児血清中37℃でインキュベートし、未修飾DNA(白い丸)、逆方向チミジル酸塩(黒い丸)、各アーム内に5つの2′−O−Me残基(白い四角)、コア内に5つのP=S残基(白い三角)、及び各アーム内に3つのP=S残基(黒い三角)を比較した。