JP5064311B2 - 銀粒子固着繊維シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
前者の方法としては、例えば、特許文献1に、「鞘部及び芯部の2層構造を有する合成繊維において、合成繊維の鞘部に銀ゼオライト抗菌剤及びセピオライトを含有させてなることを特徴とする抗菌性繊維」を用いる方法が記載されている。
後者の方法としては、例えば、特許文献2に、特定のオルガノアルコキシシラン、親水性有機溶剤、水、ゼオライトおよび銀、銅、亜鉛の金属塩とを特定量配合してなる組成物を繊維表面にコーティングする方法が記載されている。また、特許文献3〜4には、無電解メッキにより繊維表面に金属被膜を形成する方法が記載されている。
(I)銀コロイド粒子、
(II)溶液中で銀イオンを金属銀に還元し得る電位を有する金属のイオン又は(及び)該イオンが銀イオンの還元の際に酸化されたイオンの1種又は2種以上、
(III)ヒドロキシカルボン酸イオン、縮合リン酸イオン及び(又は)アミンカルボン酸イオンの1種又は2種以上を必須の成分として含有し、且つ、(I)の銀コロイド粒子が(II)の銀イオンを金属銀に還元し得る電位を有する金属のイオンによって生成せしめられたものである銀コロイド溶液よりなる抗菌性、殺菌性又は防黴性組成物」が記載されている。
また、繊維材料に銀を混ぜ込んだ場合、繊維表面に露出している銀の割合が少なくなるので、使用する銀の量に対して得られる効果が小さくなり、経済的ではないという問題がある。
また、これらの方法では、無電解メッキを行う前に、基材表面を活性化するために、パラジウム、ニッケル、銅等の金属を基材表面に析出させる。そのため、最終的に得られる金属被膜にはこれらの金属が含まれることとなり、実質的に銀のみからなる金属被膜を有する繊維シートを製造することはできなかった。
また、本発明は、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を表面に有することにより、抗菌性や脱臭性を効率的に発揮できる銀粒子固着繊維シートを提供することを目的とする。
ここで、前記含浸液における前記脂肪族第一級アミンの含有量は、前記カルボン酸銀塩に対して1.5〜5.0当量であるのが好ましい。
また、前記脂肪族第一級アミンの含有量は、前記カルボン酸銀塩に対して3.0当量より多く、5.0当量以下であるのが好ましい。
また、前記含浸液は、前記カルボン酸銀塩に、前記沸点が90〜250℃の脂肪族第一級アミンを1.5〜5.0当量添加して混合した後、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を添加して調製された含浸液であるのが好ましい。
また、前記カルボン酸銀塩は、ギ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀および酪酸銀からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
また、前記脂肪族第一級アミンの沸点は、前記繊維シート基材がレーヨン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維等の耐熱性が比較的低い有機繊維を含む場合は、70〜200℃であるのが好ましく、前記繊維シート基材がアラミド繊維やガラス繊維等の耐熱性繊維からなる場合は、150〜250℃であるのが好ましい。
また、前記脂肪族第一級アミンは、3−メトキシプロピルアミン、1,3−ジアミノプロパン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
また、前記還元剤は、ギ酸であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、親水性繊維を含むのが好ましい。
また、前記親水性繊維は、セルロース質繊維であるのが好ましいが、界面活性剤、グラフト処理、プラズマ処理などで繊維表面の濡れ性を改善したものでもかまわない。
また、前記繊維シート基材を構成する繊維は、前記親水性繊維を20〜100質量%含むのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、不織布であるのが好ましい。
また、前記不織布は、水流交絡処理不織布であるのが好ましい。バインダーを含まない繊維質素材単独が可能であること、用途的に通気性、通液性構造が望ましいことが多いからである。
また、前記繊維シート基材に固着している前記銀の固着量は、2〜200g/m2であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、アラミド繊維やガラス繊維等の耐熱性繊維からなることが好ましい。前記脂肪族第一級アミンの沸点の選択範囲が拡がる上に、熱処理により高温が適用できてアミン残渣の揮発除去がしやすいからである。
また、前記繊維シート基材は、ガラス繊維を含むのが好ましく、ガラス繊維のみからなるのがより好ましい。
また、前記工程(A)において含浸した前記繊維シート基材を加熱する工程(B)においては、前記繊維シート基材の温度を、前記脂肪族第一級アミンの沸点以上とするのが好ましい。一般の繊維基材であればそれらの融点以下、熱劣化温度以下の110℃〜240℃であるのが好ましく、アラミド繊維の場合はさらに高い温度、300℃前後が、ガラス繊維の場合は400℃前後が適用できる。
これら繊維基材の耐熱性に応じてアミンの沸点が適宜選択される。
また、更に、前記工程(B)で得られた銀粒子固着繊維シートを洗浄する洗浄工程を有するのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、親水性繊維を含むのが好ましい。
また、前記親水性繊維は、セルロース質繊維であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材を構成する繊維は、前記親水性繊維を20〜100質量%含むのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、不織布であるのが好ましい。
また、前記不織布は、水流交絡処理不織布であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、融点が200℃以上の有機繊維、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される少なくとも1種の繊維を含む織物、または不織布であるのが好ましい。これらの耐熱性の繊維は、繊維径が細いほど繊維シート基材の表面積が大きくなるために銀が被覆された表面積が大きいものとなるために被処理気体もしくは液体との接触確率が高くなって抗菌効果などもきわめて効果的なものとなる、望ましい繊維径は20μm以下であり、好ましくは15μm、さらに好ましくは10μm以下である。また、本発明の銀粒子固着繊維シートの製造方法によって得られるのが好ましい。
また、本発明の銀粒子固着繊維シートは、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を表面に有することにより、抗菌性や脱臭性を効率的に発揮できる。その結果、銀の使用量を抑えることができ、比較的安価に製造することができる。
本発明の銀粒子固着繊維シートの製造方法(以下「本発明の製造方法」という。)は、繊維表面の少なくとも一部に銀粒子が固着した銀粒子固着繊維シートの製造方法であって、カルボン酸銀塩と、沸点が70〜250℃の脂肪族第一級アミンと、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤とを含有する溶液を繊維シート基材に含浸させる工程(A)と、前記溶液からなる含浸液を含浸した前記繊維シート基材を乾燥および加熱して、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させる工程(B)とを有する銀粒子固着繊維シートの製造方法である。
前記溶液は、カルボン酸銀塩と、沸点が70〜250℃の脂肪族第一級アミンと、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤とを含有する。前記溶液は、前記工程(A)において、繊維シート基材に含浸するのに用いるため、本発明においては「含浸液」とも言う。
前記脂肪族カルボン酸銀塩としては、ギ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀(別名:プロパン酸銀)および酪酸銀(別名:ブタン酸銀)からなる群から選択される少なくとも1種が低温反応性と低温分解性という理由からより好ましく、酢酸銀が反応制御のしやすさ、分解除去性という理由から更に好ましい。
これらのカルボン酸銀塩は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族第一級アミンの沸点は、前記繊維シート基材がセルロース質繊維、アクリル繊維、PET繊維等の耐熱性が比較的低い有機繊維を含む場合は、70〜200℃であるのが好ましく、前記繊維シート基材がアラミド繊維やガラス繊維等の耐熱性繊維からなる場合は、150〜250℃であるのが好ましい。
また、前記脂肪族第一級アミンとしては、モノアミン化合物、ジアミン化合物等のポリアミン化合物が挙げられる。
前記脂肪族第一級アミンは、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
これらの中でも、3−メトキシプロピルアミン、1,3−ジアミノプロパン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であるのが錯塩の形成と還元剤の作用効果という理由から好ましく、低温で処理したい場合は、3−メトキシプロピルアミンが、比較的低温で被膜を形成でき、特に被膜と繊維シート基材との密着性に優れるものを得ることができる点から好ましい。
また、前記カルボン酸銀塩の溶液中での安定性がより高くなり、均一な被膜を形成し易くなるという理由から、前記カルボン酸銀塩に対して3.0当量より多く、5.0当量以下であるのが好ましい。例えば還元剤としてギ酸を用いる場合には、このようにアミンの当量が多いほうが配合後の液体で銀の還元を抑える安定作用をもたらす。また、還元剤による銀微粒子を析出させる前の液体を繊維シート基材に含浸して乾燥・加熱処理をすることで、前記脂肪族第一級アミンが気化して、カルボン酸銀塩の還元反応が起こり、加熱工程により繊維シート基材の表面に銀微粒子が沈着して結晶の成長が行われる。
0価の金属原子は表面の活性が極めて高いため溶媒中で凝集してバルクの金属粒子となって沈澱を生じるが、前記脂肪族第一級アミンを特定量使用することにより、カルボン酸銀塩の沈殿を抑制することができる。
特に、ギ酸は、還元作用が活性であるため、加熱工程での還元による銀金属粒子の析出制御の点から好ましい。更に、ギ酸は、沸点が100.6℃と低く、加熱工程で160℃以上になると容易にCO2に分解して揮散することも作業環境にとって好ましい。
カルボン酸銀塩がモノカルボン酸の銀塩であり、還元剤としてギ酸を使用する場合、ギ酸のモル換算での使用量は、カルボン酸銀塩1モルに対して、0.5〜1.5モルであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0モル、更に好ましくは0.5〜0.75モルである。
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、プロピレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、メタノールは、カルボン酸銀塩の還元剤としても作用でき、ギ酸と併用することで銀の析出を制御でき、更に、沸点が低いことから容易に除去できる点から好ましい。
前記繊維シート基材としては、繊維を含むシートであれば特に限定されず、不織布、織布、編布等が挙げられる。
通気性の関係しない用途、例えば、電磁波遮蔽材、導電シート、液体の抗菌剤等の場合は、緻密な織物や不織布でも問題ないが、空気置換型の空気清浄機、マスク等への応用の場合は、通気性に優れ、圧力損失が少ない点から不織布が好ましい。
前記水流交絡処理不織布は、例えば、特開2006−57211号公報等に記載された方法により製造することができる。
前記親水性繊維としては、例えば、レーヨン繊維、キュプラアンモニウムレーヨン繊維、シルク繊維、コットン繊維、麻繊維、リヨセル等のセルロース質繊維が好適に挙げられる。
レーヨン繊維の繊維径と長さは、特に限定されないが、例えば、乾式法カードウエブ不織布の製法であれば、1.7デシテックス×40mm、3.3デシテックス×51mm等を使用できる。
工程(B)において前記溶液を含浸させた前記繊維シート基材を乾燥する方法は、前記加熱処理によって乾燥を行う方法が効率良く、好ましい。
加熱時間は、加熱温度等の条件によって適宜設定すればよいが、要は、乾燥後にアミンが蒸発するための短時間(例えば数十秒以下)であるのが好ましい。
また、熱板加圧接触(ホットプレス)や、熱ドラム式ヒーターの上面に加熱ヒーターを併用する加熱方法でも効率よく熱を伝えることができ、短時間(例えば10秒単位)の処理で、カルボン酸銀塩の還元反応の進行とアミンの昇華、ギ酸などの還元剤の分解昇華を行って、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させることができ、前記繊維シート基材の熱損傷を抑制できる点から好ましい。
洗浄方法は、特に限定されないが、例えば、50℃の温水に前記工程(B)で得られた銀粒子固着繊維シートを浸漬し、加圧ロールで脱水を行い乾燥させる方法が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されない。
また、パッダーを用いて洗浄すると連続的に長尺シートの洗浄が行える点から好ましい。
また、本発明の製造方法によれば、繊維シート基材表面に析出、固着した銀は、微粒子になっており、その1次粒子の平均粒子径は40〜100nmであり、それらが2次凝集体になって繊維シート基材表面に固着していると考えられる。
本発明の銀粒子固着繊維シートは、繊維シート基材と、前記繊維シート基材の繊維表面の少なくとも一部に固着している金属被覆物とを有し、前記金属被覆物が実質的に銀化合物のみから構成される銀粒子固着繊維シートである。
本発明の銀粒子固着繊維シートは、前記金属被覆物が銀化合物を1g/m2以上含むのが好ましく、5g/m2がより好ましく、10g/m2以上であればさらに効果的である。銀の固着量がこの範囲であると、抗菌性、脱臭性、導電性等の銀が発揮し得る特性と、通気性、コストとのバランスに優れる。例えば、エアフィルターなどに組み込んで抗菌脱臭性の効果を期待する場合は空気の処理風量に比例的な考え方で設計されるものである。
かかる重量表現を繊維シート基材の重量に対比する場合は、銀の比重が10.5ときわめて高く、レーヨン繊維の1.5に対して7倍程度あるので、体積比的感覚に換算して評価することも重要である。即ち、銀100g/m2は、レーヨン並みの比重に換算した体積的感覚では、100g/m2/(10.5/1.51)=14.5g/m2程度であり、繊維シート基材が58g/m2の場合、繊維シート基材に対して14.5/58=25%の銀が上乗せされたものということになる。
本発明において、前記「銀化合物」は、金属銀(Ag)、酸化銀、カルボン酸銀等の銀を含む化合物を意味し、金属銀(Ag)であるのが好ましい。
繊維シート基材表面の材料として吸液率の高いレーヨン等の吸水性繊維を用いた場合、溶液中で繊維は膨潤しているが、該繊維の乾燥することによる収縮と、該溶液中の溶媒の蒸発による濃縮化と加熱の作用によるカルボン酸銀塩の還元反応とがほぼ同時に進行するため、銀金属粒子の1次沈着と2次凝集体形成が繊維表面に固着するように起こる。
本発明の銀粒子固着繊維シートの用途は、特に限定されないが、上述した優れた特性を有するため、抗菌性繊維シート、脱臭性繊維シート、抗菌性および/または脱臭性を有する不織布フィルター、導電性繊維シートとして好適に使用できる。
特にこれらの用途においては、銀被覆繊維中の銀の固着量は少なくともの1m2あたり1g以上、さらに好ましくは5g以上、なお好ましくは10g以上含むのが好ましい。
また、これら抗菌性繊維シート、および脱臭性繊維シートはさらに、通気性でフィルター機能の不織布シートなどの繊維質素材とサンドイッチさせて用いることも効果的であり、適宜の応用形態が生まれる。さらにその一例は、抗菌性繊維シートを通気性または通液性のカートリッジに充填して空気と液体の処理に使うことも可能である。
1.溶液(含浸液)の調製
(合成例1)
酢酸銀6.68g(40mmol)を容器に入れ、メタノール170gを加えた後、1,2−ジアミノシクロヘキサン9.14g(80mmol)を添加し、撹拌して、無色透明な溶液を得た。この溶液に95質量%のギ酸0.97g(20mmol)を添加し、23℃で15分間撹拌した。得られた溶液は、透明で、銀濃度は2.3質量%であった。
酢酸銀6.68g(40mmol)を容器に入れ、メタノール30gを加えた後、3−メトキシプロピルアミン10.69g(120mmol)を添加し、撹拌して、無色透明な溶液を得た。この溶液に、95質量%のギ酸1.92g(40mmol)を添加し、23℃で30分間撹拌した後、濾過した。得られた溶液は、暗色透明で、銀濃度は8.7質量%であった。
酢酸銀6.68g(40mmol)を容器に入れ、メタノール30gを加えた後、3−メトキシプロピルアミン(12.47)g(140mmol=3.5倍)を添加し、撹拌して、無色透明な溶液を得た。この溶液に、95質量%のギ酸1.92g(40mmol)を添加し、23℃で30分間撹拌した後、濾過した。得られた溶液は、暗色透明で、銀濃度は8.4質量%であった。
(実施例1〜3)
下記第1表に示す各溶液を、第1表に示す銀濃度になるようにメタノールを添加して希釈した。希釈した各溶液をレーヨン不織布(CleanEra社製 Lint Free Wipers IO−250、レーヨン100%、水流交絡処理品、目付け量36g/m2、縦300mm×横200mm)に、該溶液を過剰量含浸したものをゴムロール/スチールロールのパッダーローロールを用いて絞りを行い、80℃で1時間乾燥した後、160℃のオーブンで20分間加熱処理して、各銀粒子固着繊維シートを得た。
得られた各銀粒子固着繊維シートの銀固着量、塗膜固着度(密着性)および導電性を以下の方法により評価した。結果を下記第1表に示す。
また、合成例1〜3の溶液を25℃環境、密閉ガラス瓶で1週間保管して、溶液の安定性を比較した。その結果、合成例1〜3の溶液はいずれも異常が無かった。
過剰量含浸したものをゴムロール/スチールロールのパッダーローロールを用いて絞った後の重量に含浸液中の正味銀含有濃度を乗じて、銀固着量を求めた。
得られた銀粒子固着繊維シートの表面にセロハンテープを貼付け、手で剥離し、剥離後のシート表面およびセロハンテープを目視で観察した。
セロハンテープにほとんど銀が付着していないものを「◎」、セロハンテープに銀がわずかに付着しているものを「○」、セロハンテープに銀がかなりに付着しているものを「×」とした。
上記の合成で得られた溶液をガラス板に広げた繊維シートに含浸し、スキーザーで液の均一化と余剰液の排除を行った。これを乾燥温度80℃で乾燥後、120℃以上180℃のオーブンで所定時間加熱処理を行って銀の繊維表面への固着を行った。
室温に放冷した銀粒子固着繊維シートを電流系で計測して導電性の測定を行って、シート抵抗値とした。
(実施例4〜8)
下記第2表に示す各繊維シート基材(縦300mm×横200mm)に、合成例2の溶液を、パッダーを用いて含浸し、80℃で1時間乾燥した後、160℃のオーブンで20分間加熱処理して、各銀粒子固着繊維シートを得た。
得られた各銀粒子固着繊維シートの銀固着量および導電性を上記と同様の方法により評価した。結果を第2表に示す。
(実施例9)
日本板硝子株式会社製のガラスクロス(フィラメント径9μm、目空き平織り、厚さ2.2mm、目付け200g/m2、ヒートクリーニング品)に、合成例1の有効銀濃度9.4%の溶液を含浸して150℃で10分乾燥、続いて300℃で20分加熱処理をした。
実施例9の銀粒子固着繊維シートをFE−SEM(Keyence社製 VE−8800で撮影した写真を図1に示す。図1に示すSEM写真で見られるように、フィラメント繊維束の直径10μm繊維フィラメント表面に粒子径が数百nmの銀が固着されたものであった。
また、粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標))で繊維束表面を圧着してその表面の観察を行って銀粒子の脱落の有無を確認したが、脱落は認められず、しっかりと固着されていることが確認された。
また、得られた銀粒子固着繊維シートの銀固着量および導電性を上記と同様の方法により評価した。結果を第3表に示す。
(実施例10〜14)
合成例2の溶液を、下記第3表に示す銀濃度になるようにメタノールを添加して希釈した。希釈した各溶液をレーヨン不織布(CleanEra社製 Lint Free Wipers IO−250、レーヨン100%、水流交絡処理不織布、目付け量36g/m2、縦300mm×横200mm)に、パッダーを用いて含浸し、80℃で1時間乾燥した後、160℃のオーブンで20分間加熱処理して、各銀粒子固着繊維シートを得た。
得られた各銀粒子固着繊維シートの銀固着量および導電性を上記と同様の方法により評価した。結果を第3表に示す。
(実施例15)
実施例13の銀粒子固着繊維シートを90℃の熱水に30分間浸漬して、洗浄し、乾燥させた。
被覆前の繊維シート基材、実施例13の銀粒子固着繊維シートおよび実施例15の銀粒子固着繊維シートについて、パイロライザー付きGC−MS(島津製作所社製、QP−2010plus)を用いてガスクロマトグラフィーを行った。その結果を、それぞれ、図4(A)〜図4(C)に示す。
図4(B)は、実施例13の銀粒子固着繊維シート(即ち、未洗浄品)のクロマトグラムであり、質量59.05,72.05,105.05において、わずかに有機物の存在が認められた。
図4(C)は、実施例15の銀粒子固着繊維シート(即ち、洗浄品)のクロマトグラムであり、被覆前の繊維シート基材と同様に、セルロース以外の有機物の存在が認められなかった。
Claims (8)
- 繊維表面の少なくとも一部に銀粒子が固着した銀粒子固着繊維シートの製造方法であって、
カルボン酸銀塩と、沸点が70〜250℃の脂肪族第一級アミンと、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤とを含有する溶液を繊維シート基材に含浸させる工程(A)と、
前記溶液からなる含浸液を含浸した前記繊維シート基材を乾燥および加熱して、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させる工程(B)とを有する銀粒子固着繊維シートの製造方法。 - 前記含浸液における前記脂肪族第一級アミンの含有量は、前記カルボン酸銀塩に対して1.5〜5.0当量である請求項1に記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
- 前記カルボン酸銀塩は、ギ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀および酪酸銀からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
- 前記脂肪族第一級アミンは、3−メトキシプロピルアミン、1,3−ジアミノプロパン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
- 前記繊維シート基材は、親水性繊維を含む請求項1〜4のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
- 前記繊維シート基材を構成する繊維は、前記親水性繊維を20〜100質量%含む請求項5に記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
- 前記繊維シート基材は、ガラス繊維を含む請求項1〜4のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
- 前記工程(A)において含浸した前記繊維シート基材を加熱する工程(B)においては、前記繊維シート基材の温度を、前記脂肪族第一級アミンの沸点以上とする請求項1〜7のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
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