JP5064311B2 - 銀粒子固着繊維シートおよびその製造方法 - Google Patents

銀粒子固着繊維シートおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、銀粒子固着繊維シートおよびその製造方法に関する。
銀は、抗菌作用および脱臭作用を有することが知られており、種々の生活用品等に利用されている。例えば、浄水器、空気清浄機等のフィルター材の他、洗濯機のような家電製品等にも用いられている。
銀は、空気中の湿気等と接触することによりイオン化して、抗菌性を発揮することが知られている。また、銀イオンは酸素と結びついてラジカルを作り、銀塗膜に接触する臭気成分等を捉えて安定な化合物にし、臭気を消滅させるとされている。
銀を繊維シートに適用する方法としては、銀を添加した繊維材料を用いて繊維シートを形成する方法と、繊維シートの表面に銀を後から固着させる方法が知られている。
前者の方法としては、例えば、特許文献1に、「鞘部及び芯部の2層構造を有する合成繊維において、合成繊維の鞘部に銀ゼオライト抗菌剤及びセピオライトを含有させてなることを特徴とする抗菌性繊維」を用いる方法が記載されている。
後者の方法としては、例えば、特許文献2に、特定のオルガノアルコキシシラン、親水性有機溶剤、水、ゼオライトおよび銀、銅、亜鉛の金属塩とを特定量配合してなる組成物を繊維表面にコーティングする方法が記載されている。また、特許文献3〜4には、無電解メッキにより繊維表面に金属被膜を形成する方法が記載されている。
また、特許文献5には、繊維シートの抗菌剤として含浸可能な液体として、「少なくとも下記(I)、(II)及び(III):
(I)銀コロイド粒子、
(II)溶液中で銀イオンを金属銀に還元し得る電位を有する金属のイオン又は(及び)該イオンが銀イオンの還元の際に酸化されたイオンの1種又は2種以上、
(III)ヒドロキシカルボン酸イオン、縮合リン酸イオン及び(又は)アミンカルボン酸イオンの1種又は2種以上を必須の成分として含有し、且つ、(I)の銀コロイド粒子が(II)の銀イオンを金属銀に還元し得る電位を有する金属のイオンによって生成せしめられたものである銀コロイド溶液よりなる抗菌性、殺菌性又は防黴性組成物」が記載されている。
特開平9−87928号公報 特開平2−264074号公報 特開2000−96431号公報 特開2003−105552号公報 特開2004−161632号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、銀ゼオライトを繊維に均一に含有させることは困難であるという問題がある。
また、繊維材料に銀を混ぜ込んだ場合、繊維表面に露出している銀の割合が少なくなるので、使用する銀の量に対して得られる効果が小さくなり、経済的ではないという問題がある。
また、特許文献2に記載された方法は、銀ゼオライトを含むコーティング剤が繊維間に充填されて、通気性を阻害するため、例えば、フィルター材等の用途には適さないという問題がある。また、表面が硬くなるため、繊維シート本来の柔らかい感触が得られないという問題もある。更に、有機溶剤に銀ゼオライトを混合しても直ちに沈殿が始まるので、繊維または繊維シート表面への均一なコーティングが困難である。また、ゼオライトのような多孔性粒子に銀や銀化合物を担持させた場合、溶液として均一な懸濁状態を保持することが困難である。また、銀をゼオライトに担持させる工程が必要になるため、コストが高くなる等の問題がある。
特許文献3〜4に記載された方法は、無電解メッキをするために前処理等が必要であるため、工程が多く、複雑になり、コストが高くなる等の問題がある。また、繊維シートに対するメッキ被膜の密着性が十分でない場合があり、メッキ被膜の剥離が生ずるおそれがある。また、これらの方法では廃液が比較的多く出るので、環境保護の観点から好ましくなく、その処理が必要となるため、コストが高くなる。
また、これらの方法では、無電解メッキを行う前に、基材表面を活性化するために、パラジウム、ニッケル、銅等の金属を基材表面に析出させる。そのため、最終的に得られる金属被膜にはこれらの金属が含まれることとなり、実質的に銀のみからなる金属被膜を有する繊維シートを製造することはできなかった。
特許文献5に記載の方法は、銀と、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の他の金属イオンとの併用であるため、金属被膜中に他の金属が含まれることになるので、例えば、銀が有する抗菌性や脱臭性といった特性を効率的に発揮することができないという問題がある。
そこで、本発明は、バインダーを使用しなくても繊維シート基材の表面に銀を固着でき、かつ、無電解メッキ法に比べて簡便に実施でき、かつ、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を形成し得る、銀粒子固着繊維シートの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を表面に有することにより、抗菌性や脱臭性を効率的に発揮できる銀粒子固着繊維シートを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、繊維表面の少なくとも一部に銀粒子が固着した銀粒子固着繊維シートの製造方法であって、カルボン酸銀塩と、沸点が70〜250℃の脂肪族第一級アミンと、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤とを含有する溶液を繊維シート基材に含浸させる工程(A)と、前記溶液からなる含浸液を含浸した前記繊維シート基材を乾燥および加熱して、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させる工程(B)とを有する銀粒子固着繊維シートの製造方法を提供するものである。
本発明の目的が繊維シートの処理技術であるために、繊維基材を熱処理や含浸液薬剤で劣化させない条件が取られている。
ここで、前記含浸液における前記脂肪族第一級アミンの含有量は、前記カルボン酸銀塩に対して1.5〜5.0当量であるのが好ましい。
また、前記脂肪族第一級アミンの含有量は、前記カルボン酸銀塩に対して3.0当量より多く、5.0当量以下であるのが好ましい。
また、前記含浸液は、前記カルボン酸銀塩に、前記沸点が90〜250℃の脂肪族第一級アミンを1.5〜5.0当量添加して混合した後、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を添加して調製された含浸液であるのが好ましい。
また、前記カルボン酸銀塩は、ギ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀および酪酸銀からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
また、前記脂肪族第一級アミンの沸点は、前記繊維シート基材がレーヨン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維等の耐熱性が比較的低い有機繊維を含む場合は、70〜200℃であるのが好ましく、前記繊維シート基材がアラミド繊維やガラス繊維等の耐熱性繊維からなる場合は、150〜250℃であるのが好ましい。
また、前記脂肪族第一級アミンは、3−メトキシプロピルアミン、1,3−ジアミノプロパン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
また、前記還元剤は、ギ酸であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、親水性繊維を含むのが好ましい。
また、前記親水性繊維は、セルロース質繊維であるのが好ましいが、界面活性剤、グラフト処理、プラズマ処理などで繊維表面の濡れ性を改善したものでもかまわない。
また、前記繊維シート基材を構成する繊維は、前記親水性繊維を20〜100質量%含むのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、不織布であるのが好ましい。
また、前記不織布は、水流交絡処理不織布であるのが好ましい。バインダーを含まない繊維質素材単独が可能であること、用途的に通気性、通液性構造が望ましいことが多いからである。
また、前記繊維シート基材に固着している前記銀の固着量は、2〜200g/m2であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、アラミド繊維やガラス繊維等の耐熱性繊維からなることが好ましい。前記脂肪族第一級アミンの沸点の選択範囲が拡がる上に、熱処理により高温が適用できてアミン残渣の揮発除去がしやすいからである。
また、前記繊維シート基材は、ガラス繊維を含むのが好ましく、ガラス繊維のみからなるのがより好ましい。
また、前記工程(A)において含浸した前記繊維シート基材を加熱する工程(B)においては、前記繊維シート基材の温度を、前記脂肪族第一級アミンの沸点以上とするのが好ましい。一般の繊維基材であればそれらの融点以下、熱劣化温度以下の110℃〜240℃であるのが好ましく、アラミド繊維の場合はさらに高い温度、300℃前後が、ガラス繊維の場合は400℃前後が適用できる。
これら繊維基材の耐熱性に応じてアミンの沸点が適宜選択される。
また、更に、前記工程(B)で得られた銀粒子固着繊維シートを洗浄する洗浄工程を有するのが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明は、繊維シート基材と、前記繊維シート基材の繊維表面の少なくとも一部に固着している金属被覆物とを有し、前記金属被覆物が実質的に銀化合物のみから構成される銀粒子固着繊維シートを提供する。
ここで、前記繊維シート基材に固着している前記銀の固着量は、2〜200g/m2であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、親水性繊維を含むのが好ましい。
また、前記親水性繊維は、セルロース質繊維であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材を構成する繊維は、前記親水性繊維を20〜100質量%含むのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、不織布であるのが好ましい。
また、前記不織布は、水流交絡処理不織布であるのが好ましい。
また、前記繊維シート基材は、融点が200℃以上の有機繊維、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される少なくとも1種の繊維を含む織物、または不織布であるのが好ましい。これらの耐熱性の繊維は、繊維径が細いほど繊維シート基材の表面積が大きくなるために銀が被覆された表面積が大きいものとなるために被処理気体もしくは液体との接触確率が高くなって抗菌効果などもきわめて効果的なものとなる、望ましい繊維径は20μm以下であり、好ましくは15μm、さらに好ましくは10μm以下である。また、本発明の銀粒子固着繊維シートの製造方法によって得られるのが好ましい。
また、本発明は、本発明の銀粒子固着繊維シートを含む抗菌性繊維シートを提供する。
また、本発明は、本発明の銀粒子固着繊維シートを含む脱臭性繊維シートを提供する。
また、本発明は、本発明の銀粒子固着繊維シートを含む、抗菌性および/または脱臭性を有する不織布フィルターを提供する。
また、本発明は、本発明の銀粒子固着繊維シートを含む導電性繊維シートを提供する。
本発明の銀粒子固着繊維シートの製造方法によれば、バインダーを使用しなくても繊維シート基材の表面に銀を固着でき、かつ、無電解メッキ法に比べて簡便に実施でき、かつ、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を形成することができる。
また、本発明の銀粒子固着繊維シートは、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を表面に有することにより、抗菌性や脱臭性を効率的に発揮できる。その結果、銀の使用量を抑えることができ、比較的安価に製造することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の銀粒子固着繊維シートの製造方法(以下「本発明の製造方法」という。)は、繊維表面の少なくとも一部に銀粒子が固着した銀粒子固着繊維シートの製造方法であって、カルボン酸銀塩と、沸点が70〜250℃の脂肪族第一級アミンと、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤とを含有する溶液を繊維シート基材に含浸させる工程(A)と、前記溶液からなる含浸液を含浸した前記繊維シート基材を乾燥および加熱して、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させる工程(B)とを有する銀粒子固着繊維シートの製造方法である。
以下、本発明の製造方法に用いる溶液を説明する。
前記溶液は、カルボン酸銀塩と、沸点が70〜250℃の脂肪族第一級アミンと、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤とを含有する。前記溶液は、前記工程(A)において、繊維シート基材に含浸するのに用いるため、本発明においては「含浸液」とも言う。
前記カルボン酸銀塩としては、脂肪族カルボン酸銀塩、芳香族カルボン酸銀塩等が挙げられる。中でも、低温度処理に適する点から脂肪族カルボン酸銀塩が好適に挙げられる。
前記脂肪族カルボン酸銀塩としては、ギ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀(別名:プロパン酸銀)および酪酸銀(別名:ブタン酸銀)からなる群から選択される少なくとも1種が低温反応性と低温分解性という理由からより好ましく、酢酸銀が反応制御のしやすさ、分解除去性という理由から更に好ましい。
これらのカルボン酸銀塩は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記カルボン酸銀塩は、公知の合成方法で得ることができ、例えば、上記のようなカルボン酸と酸化銀とを反応させることにより得ることができる。
前記カルボン酸銀塩の使用量は、特に限定されないが、前記溶液の銀濃度が2質量%以上となる量であるのが十分な銀の固着量を確保できる点から好ましい。前記溶液の銀濃度は3質量%以上であるのがより銀の固着量が多くなり、導電性や、抗菌性といった性能をより発揮できる点から好ましく、更に銀の固着量が多くなり、導電性もより高くなる点から4質量%以上であるのがより好ましい。また、前記溶液の銀濃度は、10質量%以下であるのが、銀固着量とコストとのバランスの観点から好ましい。
前記脂肪族第一級アミンとしては、沸点が70〜250℃であるものを用いる。沸点が70℃以上であることにより、配合薬剤の保管中の前記脂肪族第一級アミンの揮発を防いで長期保管の安定性を維持することができ、沸点が250℃以下であることにより、前記工程(B)において加熱した際に前記脂肪族第一級アミンは気化することができる。
前記脂肪族第一級アミンの沸点は、前記繊維シート基材がセルロース質繊維、アクリル繊維、PET繊維等の耐熱性が比較的低い有機繊維を含む場合は、70〜200℃であるのが好ましく、前記繊維シート基材がアラミド繊維やガラス繊維等の耐熱性繊維からなる場合は、150〜250℃であるのが好ましい。
前記脂肪族第一級アミンとしては、鎖状脂肪族第一級アミン、環状脂肪族第一級アミン等が挙げられる。
また、前記脂肪族第一級アミンとしては、モノアミン化合物、ジアミン化合物等のポリアミン化合物が挙げられる。
前記脂肪族第一級アミンは、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
前記脂肪族第一級アミンとしては、具体的には、n−ブチルアミン(77℃)、2−メトキシエチルアミン(90℃)、3,3′−ジアミノジプロピルアミン(115℃)、3−メトキシプロピルアミン(116℃)、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン(122℃)、2−ジメチルアミノエタノール(139℃)、1,3−ジアミノプロパン(140℃)、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン(143℃)、N−メチルエタノールアミン(159℃)、1−アミノ−2−プロパノール(160℃)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(165℃)、2−アミノエタノール(171℃)、1,2−ジアミノシクロヘキサン(183℃)、ベンジルアミン(185℃)、3−アミノ−1−プロパノール(188℃)、1−ピペリジンエタノール(199℃)、2−(2アミノエチルアミノ)エタノール(244℃)等が挙げられる。
これらの中でも、3−メトキシプロピルアミン、1,3−ジアミノプロパン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であるのが錯塩の形成と還元剤の作用効果という理由から好ましく、低温で処理したい場合は、3−メトキシプロピルアミンが、比較的低温で被膜を形成でき、特に被膜と繊維シート基材との密着性に優れるものを得ることができる点から好ましい。
前記溶液における前記脂肪族第一級アミンの含有量は、前記カルボン酸銀塩に対して1.5〜5.0当量であるのが、前記カルボン酸銀塩の溶液中での安定性、過剰な脂肪族第一級アミンの環境等への影響という観点から好ましい。
また、前記カルボン酸銀塩の溶液中での安定性がより高くなり、均一な被膜を形成し易くなるという理由から、前記カルボン酸銀塩に対して3.0当量より多く、5.0当量以下であるのが好ましい。例えば還元剤としてギ酸を用いる場合には、このようにアミンの当量が多いほうが配合後の液体で銀の還元を抑える安定作用をもたらす。また、還元剤による銀微粒子を析出させる前の液体を繊維シート基材に含浸して乾燥・加熱処理をすることで、前記脂肪族第一級アミンが気化して、カルボン酸銀塩の還元反応が起こり、加熱工程により繊維シート基材の表面に銀微粒子が沈着して結晶の成長が行われる。
前記脂肪族第一級アミンは、溶液中で前記カルボン酸銀塩に配位して一種のアミン錯体を形成し、前記カルボン酸銀塩を安定化させ、沈殿を抑制する。その結果、繊維シート基材への均一なコーティングが可能となる。また、上記工程(B)において加熱する際に、前記脂肪族第一級アミンが気化することにより、前記カルボン酸銀塩は反応性が高くなり、還元されて銀を析出する。こうして形成された被膜は、本来不要である脂肪族第一級アミンは基本的に含まず、実質的に銀のみで構成されることとなる。
0価の金属原子は表面の活性が極めて高いため溶媒中で凝集してバルクの金属粒子となって沈澱を生じるが、前記脂肪族第一級アミンを特定量使用することにより、カルボン酸銀塩の沈殿を抑制することができる。
前記還元剤としては、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの還元剤を用いることにより、カルボン酸銀塩のアミン錯体を還元して金属銀の繊維表面での析出固着が可能になる。
特に、ギ酸は、還元作用が活性であるため、加熱工程での還元による銀金属粒子の析出制御の点から好ましい。更に、ギ酸は、沸点が100.6℃と低く、加熱工程で160℃以上になると容易にCOに分解して揮散することも作業環境にとって好ましい。
前記溶液における前記還元剤の含有量は、酸化還元当量で0.3〜5倍であることが好ましく、0.4〜3倍であることがより好ましい。
カルボン酸銀塩がモノカルボン酸の銀塩であり、還元剤としてギ酸を使用する場合、ギ酸のモル換算での使用量は、カルボン酸銀塩1モルに対して、0.5〜1.5モルであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0モル、更に好ましくは0.5〜0.75モルである。
前記溶液は、更に、溶媒を含有するのが好ましい。
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、プロピレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、メタノールは、カルボン酸銀塩の還元剤としても作用でき、ギ酸と併用することで銀の析出を制御でき、更に、沸点が低いことから容易に除去できる点から好ましい。
前記溶液における溶媒の含有量は、混合の利便性、後続の工程、繊維シート基材への銀微粒子の付着量制御等の点から適宜調整すればよい。特に、溶液の銀含有量が上述した範囲になるように調整するのが好ましい。
前記溶液の調製方法は、特に限定されないが、例えば、溶媒の非存在下または存在下で前記カルボン酸銀塩に前記脂肪族第一級アミンを1.5〜5.0当量添加して混合した後、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を添加して調製するのが好ましい。
次に、前記繊維シート基材について説明する。
前記繊維シート基材としては、繊維を含むシートであれば特に限定されず、不織布、織布、編布等が挙げられる。
通気性の関係しない用途、例えば、電磁波遮蔽材、導電シート、液体の抗菌剤等の場合は、緻密な織物や不織布でも問題ないが、空気置換型の空気清浄機、マスク等への応用の場合は、通気性に優れ、圧力損失が少ない点から不織布が好ましい。
前記不織布としては、繊維ウエブに水流交絡処理を施して得られる水流交絡処理不織布が、繊維の緻密絡合部分と実質的に繊維質素材単独から構成でき、かつ、構造が穴あき構造に近く、繊維密度の疎密構造の交互構成になったものとなるため、より通気性または通液性に優れ、更に、強度にも優れる点から好ましい。
前記水流交絡処理不織布は、例えば、特開2006−57211号公報等に記載された方法により製造することができる。
前記繊維シート基材としては、親水性繊維を含むものが、吸湿性であるために空気中のOH基の取り込みを行って銀イオンが生成しやすくなる点、金属被覆物との密着性に優れる点等から好ましい。また、このような優れた特性を発揮し易い点から、前記繊維シート基材を構成する繊維は、前記親水性繊維を20〜100質量%含むのが好ましい。
前記親水性繊維としては、例えば、レーヨン繊維、キュプラアンモニウムレーヨン繊維、シルク繊維、コットン繊維、麻繊維、リヨセル等のセルロース質繊維が好適に挙げられる。
これらの中でも、銀粒子の析出沈着性に優れ、銀固着量が多いという点からレーヨン繊維が好ましい。レーヨン繊維が銀粒子の析出沈着性に優れている理由の1つは、繊維の断面が菊花状になっているために磨耗による脱落に抵抗性があるためと推測される。
レーヨン繊維の繊維径と長さは、特に限定されないが、例えば、乾式法カードウエブ不織布の製法であれば、1.7デシテックス×40mm、3.3デシテックス×51mm等を使用できる。
また、PET繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維等の親水性が低い繊維も、活性剤等を用いて吸水性を高める表面処理や、フィブリル化等により繊維の表面積を拡大する等して吸水性を高めたものも、親水性繊維として使用できる。
前記繊維シート基材に用いる繊維の融点は特に限定されず、前記工程(B)における加熱に耐えられる材料を適宜選択すればよいが、例えば、160℃以上であるのが好ましく、200℃以上であるのがより好ましい。また、ポリオレフィン繊維のように融点が110〜160℃のものでも、レーヨン繊維等と併用することで好適に使用できる。
更に、ガラス繊維、アラミド繊維、導電性繊維等の融点が200℃以上の有機繊維と、レーヨン繊維等の親水性繊維とを併用したものが、耐熱性と密着性等のバランスに優れる点から好適に使用できる。
前記繊維シート基材としては、繊維の主体にレーヨン繊維、キュプラアンモニウムレーヨン繊維およびコットン繊維からなる群から選択される少なくとも1種の吸水性繊維を含むものが好ましい態様の1つであり、前記吸水性繊維を好ましくは繊維全体の10質量%以上、より好ましくは繊維全体の20〜100質量%含むものが望ましい。
また、前記繊維シート基材としては、耐熱性に優れる観点から、アラミド繊維等の融点が200℃以上の有機繊維、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される少なくとも1種の繊維を含む織物または不織布も好適に用いることができる。
前記繊維シート基材の単位質量は、目的の用途に応じて適宜選択することができるが、強度と銀成分の固着用基材としての経済性とのバランスから5〜200g/mが好ましく、20〜120g/mがより好ましく、特に不織布においては30〜70g/mが更に好ましい。
前記工程(A)において、上述した溶液(含浸液)を繊維シート基材に含浸させる方法は、特に限定されず公知の方法を採用できる。例えば、容器に前記溶液を入れておき、そこに前記繊維シート基材を投入して、含浸させる方法;前記繊維シート基材に前記溶液をノズル等から噴出させて含浸させる方法等が挙げられる。特に、連続生産が可能である点から、パッダーを用いて前記繊維シート基材に前記溶液を含浸させる方法が好ましい。
次に、工程(B)では、上述した工程(A)において前記溶液を含浸させた前記繊維シート基材を乾燥処理および加熱処理して、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させる。
工程(B)において前記溶液を含浸させた前記繊維シート基材を乾燥する方法は、前記加熱処理によって乾燥を行う方法が効率良く、好ましい。
工程(B)において加熱処理する際の温度は、繊維シート基材の熱損傷を防ぐことができ、かつ、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させることができるように適宜設定すればよい。例えば、使用する繊維シート基材の耐熱性や前記溶液に用いる脂肪族第一級アミンの沸点にもよるが、一般的には、工程(B)において前記繊維シート基材を加熱する際の前記繊維シート基材の温度は、セルロース系の有機繊維主体では110℃〜240℃が好ましく、130〜190℃がより好ましく、150〜170℃が更に好ましい。一方、アラミド繊維などの耐熱性繊維配合の繊維シート基材ではそれらの温度はさらに高く、最高で300℃前後に加熱することも可能であるし、ガラス繊維シート基材であれば350℃前後の加熱も可能になるから、アミンの選択範囲が高沸点側に広がってくるので、配合薬剤の保存安定性の点でも好ましいこととなる。
加熱時間は、加熱温度等の条件によって適宜設定すればよいが、要は、乾燥後にアミンが蒸発するための短時間(例えば数十秒以下)であるのが好ましい。
工程(B)において加熱処理する方法は、特に限定されないが、例えば、オーブン、ドライヤー、アーチドライヤー、ホットプレス等を用いて加熱する方法を採用できる。
また、熱板加圧接触(ホットプレス)や、熱ドラム式ヒーターの上面に加熱ヒーターを併用する加熱方法でも効率よく熱を伝えることができ、短時間(例えば10秒単位)の処理で、カルボン酸銀塩の還元反応の進行とアミンの昇華、ギ酸などの還元剤の分解昇華を行って、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させることができ、前記繊維シート基材の熱損傷を抑制できる点から好ましい。
本発明の製造方法は、更に、前記工程(B)で得られた銀粒子固着繊維シートを洗浄する洗浄工程を有するのが好ましい態様の1つである。本発明の製造方法においては、基本的に、前記加熱処理だけでも十分な銀金属の繊維シート基材表面への固着が達成され、反応に関与したカルボン酸、脂肪族第一級アミン等の有機成分は加熱処理により昇華または蒸発する。しかしながら、処理条件によってはこれらの有機成分が金属被覆物中や、繊維表面に微量に残存する場合があり、臭気の問題等が生じる可能性がある。そこで、更に、前記洗浄工程を実施することにより、残存する有機成分を除去することが有効である。
洗浄方法は、特に限定されないが、例えば、50℃の温水に前記工程(B)で得られた銀粒子固着繊維シートを浸漬し、加圧ロールで脱水を行い乾燥させる方法が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されない。
また、パッダーを用いて洗浄すると連続的に長尺シートの洗浄が行える点から好ましい。
上述した本発明の製造方法は、基本的に、前記繊維シート基材に、カルボン酸銀塩を含有する前記溶液を含浸して、乾燥と加熱処理だけで還元された銀金属が繊維シート基材表面に析出沈着して固着するというものであり、無電解メッキ等の方法に比べて簡便に実施できる。また、本発明の製造方法により得られた銀粒子固着繊維シートは、繊維シート基材に対する金属被覆物の固着力が高いため、バインダー等を使用する必要がない。そのため、金属被覆物を実質的に銀化合物のみで構成することができ、銀化合物の表面は有効にイオン化源またはラジカル発生源にすることができる。
また、本発明の製造方法によれば、繊維シート基材表面に析出、固着した銀は、微粒子になっており、その1次粒子の平均粒子径は40〜100nmであり、それらが2次凝集体になって繊維シート基材表面に固着していると考えられる。
以下、本発明の銀粒子固着繊維シートについて詳細に説明する。
本発明の銀粒子固着繊維シートは、繊維シート基材と、前記繊維シート基材の繊維表面の少なくとも一部に固着している金属被覆物とを有し、前記金属被覆物が実質的に銀化合物のみから構成される銀粒子固着繊維シートである。
本発明の銀粒子固着繊維シートは、前記金属被覆物が銀化合物を1g/m以上含むのが好ましく、5g/mがより好ましく、10g/m以上であればさらに効果的である。銀の固着量がこの範囲であると、抗菌性、脱臭性、導電性等の銀が発揮し得る特性と、通気性、コストとのバランスに優れる。例えば、エアフィルターなどに組み込んで抗菌脱臭性の効果を期待する場合は空気の処理風量に比例的な考え方で設計されるものである。
かかる重量表現を繊維シート基材の重量に対比する場合は、銀の比重が10.5ときわめて高く、レーヨン繊維の1.5に対して7倍程度あるので、体積比的感覚に換算して評価することも重要である。即ち、銀100g/mは、レーヨン並みの比重に換算した体積的感覚では、100g/m/(10.5/1.51)=14.5g/m程度であり、繊維シート基材が58g/mの場合、繊維シート基材に対して14.5/58=25%の銀が上乗せされたものということになる。
本発明において、前記「銀化合物」は、金属銀(Ag)、酸化銀、カルボン酸銀等の銀を含む化合物を意味し、金属銀(Ag)であるのが好ましい。
本発明の銀粒子固着繊維シートに用いられる繊維シート基材は、本発明の製造方法で説明したものと同様である。
本発明において、銀被覆繊維とは、少なくとも繊維表面の一部は、金属銀の微粒子が固着した状態を意味する。
前記金属被覆物を構成する銀化合物は、銀微粒子であるのが好ましい。また、その1次粒子の平均粒子径は3〜500nmであるのが好ましく、5〜250nmであるのがより好ましく、40〜100nmであるのが更に好ましい。平均粒子径がこの範囲の銀微粒子で前記金属被覆物が構成されると、繊維基材シートと金属被覆物との密着性に優れる。
本発明の銀粒子固着繊維シートの製造方法は、特に限定されないが、上述した本発明の製造方法であるのが好ましい。本発明の製造方法によれば、無電解メッキ法に比べて簡便に、繊維シート基材表面に実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を形成することができる。また、バインダーを使用しなくても繊維シート基材の表面に銀を固着できる。更に、無電解メッキ法に比べて廃液が少なく、環境への負担が少ない。
繊維シート基材表面の材料として吸液率の高いレーヨン等の吸水性繊維を用いた場合、溶液中で繊維は膨潤しているが、該繊維の乾燥することによる収縮と、該溶液中の溶媒の蒸発による濃縮化と加熱の作用によるカルボン酸銀塩の還元反応とがほぼ同時に進行するため、銀金属粒子の1次沈着と2次凝集体形成が繊維表面に固着するように起こる。
上述した本発明の銀粒子固着繊維シートは、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を表面に有することにより、抗菌性や脱臭性を効率的に発揮できる。その結果、銀の使用量を抑えることができ、比較的安価に製造することができる。
本発明の銀粒子固着繊維シートの用途は、特に限定されないが、上述した優れた特性を有するため、抗菌性繊維シート、脱臭性繊維シート、抗菌性および/または脱臭性を有する不織布フィルター、導電性繊維シートとして好適に使用できる。
特にこれらの用途においては、銀被覆繊維中の銀の固着量は少なくともの1mあたり1g以上、さらに好ましくは5g以上、なお好ましくは10g以上含むのが好ましい。
また、これら抗菌性繊維シート、および脱臭性繊維シートはさらに、通気性でフィルター機能の不織布シートなどの繊維質素材とサンドイッチさせて用いることも効果的であり、適宜の応用形態が生まれる。さらにその一例は、抗菌性繊維シートを通気性または通液性のカートリッジに充填して空気と液体の処理に使うことも可能である。
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.溶液(含浸液)の調製
(合成例1)
酢酸銀6.68g(40mmol)を容器に入れ、メタノール170gを加えた後、1,2−ジアミノシクロヘキサン9.14g(80mmol)を添加し、撹拌して、無色透明な溶液を得た。この溶液に95質量%のギ酸0.97g(20mmol)を添加し、23℃で15分間撹拌した。得られた溶液は、透明で、銀濃度は2.3質量%であった。
(合成例2)
酢酸銀6.68g(40mmol)を容器に入れ、メタノール30gを加えた後、3−メトキシプロピルアミン10.69g(120mmol)を添加し、撹拌して、無色透明な溶液を得た。この溶液に、95質量%のギ酸1.92g(40mmol)を添加し、23℃で30分間撹拌した後、濾過した。得られた溶液は、暗色透明で、銀濃度は8.7質量%であった。
(合成例3)
酢酸銀6.68g(40mmol)を容器に入れ、メタノール30gを加えた後、3−メトキシプロピルアミン(12.47)g(140mmol=3.5倍)を添加し、撹拌して、無色透明な溶液を得た。この溶液に、95質量%のギ酸1.92g(40mmol)を添加し、23℃で30分間撹拌した後、濾過した。得られた溶液は、暗色透明で、銀濃度は8.4質量%であった。
2.脂肪族第一級アミンの比較
(実施例1〜3)
下記第1表に示す各溶液を、第1表に示す銀濃度になるようにメタノールを添加して希釈した。希釈した各溶液をレーヨン不織布(CleanEra社製 Lint Free Wipers IO−250、レーヨン100%、水流交絡処理品、目付け量36g/m2、縦300mm×横200mm)に、該溶液を過剰量含浸したものをゴムロール/スチールロールのパッダーローロールを用いて絞りを行い、80℃で1時間乾燥した後、160℃のオーブンで20分間加熱処理して、各銀粒子固着繊維シートを得た。
得られた各銀粒子固着繊維シートの銀固着量、塗膜固着度(密着性)および導電性を以下の方法により評価した。結果を下記第1表に示す。
また、合成例1〜3の溶液を25℃環境、密閉ガラス瓶で1週間保管して、溶液の安定性を比較した。その結果、合成例1〜3の溶液はいずれも異常が無かった。
(銀固着量)
過剰量含浸したものをゴムロール/スチールロールのパッダーローロールを用いて絞った後の重量に含浸液中の正味銀含有濃度を乗じて、銀固着量を求めた。
(塗膜固着度)
得られた銀粒子固着繊維シートの表面にセロハンテープを貼付け、手で剥離し、剥離後のシート表面およびセロハンテープを目視で観察した。
セロハンテープにほとんど銀が付着していないものを「◎」、セロハンテープに銀がわずかに付着しているものを「○」、セロハンテープに銀がかなりに付着しているものを「×」とした。
(導電性)
上記の合成で得られた溶液をガラス板に広げた繊維シートに含浸し、スキーザーで液の均一化と余剰液の排除を行った。これを乾燥温度80℃で乾燥後、120℃以上180℃のオーブンで所定時間加熱処理を行って銀の繊維表面への固着を行った。
室温に放冷した銀粒子固着繊維シートを電流系で計測して導電性の測定を行って、シート抵抗値とした。
第1表に示す結果から明らかなように、沸点が200℃以下の第一級脂肪族アミンを用いた実施例1〜3は、銀固着量が多く、密着性も良好だった。
3.セルロース質繊維シート基材の比較
(実施例4〜8)
下記第2表に示す各繊維シート基材(縦300mm×横200mm)に、合成例2の溶液を、パッダーを用いて含浸し、80℃で1時間乾燥した後、160℃のオーブンで20分間加熱処理して、各銀粒子固着繊維シートを得た。
得られた各銀粒子固着繊維シートの銀固着量および導電性を上記と同様の方法により評価した。結果を第2表に示す。
第2表に示す結果から明らかなように、種々のセルロース質繊維で構成される繊維シート基材を用いた実施例4〜8は、いずれも銀固着量が多かった。更に、実施例5〜8は導電性にも優れていた。
4.ガラスクロスを用いた実施例
(実施例9)
日本板硝子株式会社製のガラスクロス(フィラメント径9μm、目空き平織り、厚さ2.2mm、目付け200g/m、ヒートクリーニング品)に、合成例1の有効銀濃度9.4%の溶液を含浸して150℃で10分乾燥、続いて300℃で20分加熱処理をした。
実施例9の銀粒子固着繊維シートをFE−SEM(Keyence社製 VE−8800で撮影した写真を図1に示す。図1に示すSEM写真で見られるように、フィラメント繊維束の直径10μm繊維フィラメント表面に粒子径が数百nmの銀が固着されたものであった。
また、粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標))で繊維束表面を圧着してその表面の観察を行って銀粒子の脱落の有無を確認したが、脱落は認められず、しっかりと固着されていることが確認された。
また、得られた銀粒子固着繊維シートの銀固着量および導電性を上記と同様の方法により評価した。結果を第3表に示す。
5.銀濃度の比較
(実施例10〜14)
合成例2の溶液を、下記第3表に示す銀濃度になるようにメタノールを添加して希釈した。希釈した各溶液をレーヨン不織布(CleanEra社製 Lint Free Wipers IO−250、レーヨン100%、水流交絡処理不織布、目付け量36g/m2、縦300mm×横200mm)に、パッダーを用いて含浸し、80℃で1時間乾燥した後、160℃のオーブンで20分間加熱処理して、各銀粒子固着繊維シートを得た。
得られた各銀粒子固着繊維シートの銀固着量および導電性を上記と同様の方法により評価した。結果を第3表に示す。
第3表に示す結果から明らかなように、含浸液の銀濃度が特定の範囲であると銀固着量が多くなり、導電性も良好になる。
更に、実施例13の銀粒子固着繊維シートをCCDカメラ(Keyence社製 VHX)で撮影した写真(50倍)を図2(A)、FE−SEM( Keyence社製 VE−8800で撮影した写真((A)50倍、(B)500倍)を図2(B)に示す。また、比較のため、被覆前のレーヨン不織布のCCDカメラおよびSEMによる写真をそれぞれ図3(A)および図3(B)に示す。
6.熱水洗浄の比較
(実施例15)
実施例13の銀粒子固着繊維シートを90℃の熱水に30分間浸漬して、洗浄し、乾燥させた。
被覆前の繊維シート基材、実施例13の銀粒子固着繊維シートおよび実施例15の銀粒子固着繊維シートについて、パイロライザー付きGC−MS(島津製作所社製、QP−2010plus)を用いてガスクロマトグラフィーを行った。その結果を、それぞれ、図4(A)〜図4(C)に示す。
図4(A)は、被覆前の繊維シート基材のクロマトグラムであり、セルロース以外の有機物の存在は認められなかった。
図4(B)は、実施例13の銀粒子固着繊維シート(即ち、未洗浄品)のクロマトグラムであり、質量59.05,72.05,105.05において、わずかに有機物の存在が認められた。
図4(C)は、実施例15の銀粒子固着繊維シート(即ち、洗浄品)のクロマトグラムであり、被覆前の繊維シート基材と同様に、セルロース以外の有機物の存在が認められなかった。
以上に示した実施例から明らかなように、本発明の銀粒子固着繊維シートの製造方法によれば、バインダーを使用しなくても繊維シート基材の表面に銀を固着できた。また、無電解メッキ法に比べて簡便に実施できた。また、実質的に銀化合物のみから構成される金属被覆物を形成することができた。また、更に、洗浄工程を行うことにより、銀粒子固着繊維シートに残存する有機物を除去できた。
図1は、実施例9の銀粒子固着繊維シートをFe−SEMで撮影した写真である。 図2(A)は、実施例13の銀粒子固着繊維シートをCCDカメラで撮影した写真であり、図2(B)は、実施例13の銀粒子固着繊維シートをFE−SEMで撮影した写真である。 図3(A)は、被覆前のレーヨン不織布をCCDカメラで撮影した写真であり、図3(B)は、被覆前のレーヨン不織布をFE−SEMで撮影した写真である。 図4(A)は、被覆前の繊維シート基材のGC−MSチャートであり、図4(B)は、実施例13の銀粒子固着繊維シート(未洗浄品)のGC−MSチャートであり、図4(C)は、実施例15の銀粒子固着繊維シート(洗浄品)のGC−MSチャートである。

Claims (8)

  1. 繊維表面の少なくとも一部に銀粒子が固着した銀粒子固着繊維シートの製造方法であって、
    カルボン酸銀塩と、沸点が70〜250℃の脂肪族第一級アミンと、ギ酸、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸、ホスフィン酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤とを含有する溶液を繊維シート基材に含浸させる工程(A)と、
    前記溶液からなる含浸液を含浸した前記繊維シート基材を乾燥および加熱して、前記繊維シート基材の繊維表面に銀を析出し固着させる工程(B)とを有する銀粒子固着繊維シートの製造方法。
  2. 前記含浸液における前記脂肪族第一級アミンの含有量は、前記カルボン酸銀塩に対して1.5〜5.0当量である請求項1に記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
  3. 前記カルボン酸銀塩は、ギ酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀および酪酸銀からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
  4. 前記脂肪族第一級アミンは、3−メトキシプロピルアミン、1,3−ジアミノプロパン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
  5. 前記繊維シート基材は、親水性繊維を含む請求項1〜4のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
  6. 前記繊維シート基材を構成する繊維は、前記親水性繊維を20〜100質量%含む請求項5に記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
  7. 前記繊維シート基材は、ガラス繊維を含む請求項1〜4のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
  8. 前記工程(A)において含浸した前記繊維シート基材を加熱する工程(B)においては、前記繊維シート基材の温度を、前記脂肪族第一級アミンの沸点以上とする請求項1〜7のいずれかに記載の銀粒子固着繊維シートの製造方法。
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