JP5061679B2 - ポリアミド樹脂及びその製造方法、並びに、樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミド樹脂及びその製造方法、並びに、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物に関する。
ポリアミド樹脂は、一般的に、ジアミンと活性化されたジカルボン酸(例えば、酸ハライドや縮合物)との重合反応によって製造される。しかし、この方法によると、目的生成物であるポリアミドと等量生成してしまう副生成物を重合後に分離する必要があったため、製造工程が複雑となっていた。そこで、例えば特許文献1に記載されているように、ジカルボン酸とジイソシアネートとの重合反応によりポリアミド樹脂を製造することで、気体の副生成物を生じさせてその分離を容易化する方法が知られている。
このようなポリアミド樹脂は、分子内に不飽和結合を有すると、その製膜性や樹脂組成物とした場合の硬化性等が良好となることが知られている。このようなポリアミド樹脂の製造方法としては、(1)ポリイミドやポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の酸部位や水酸基に反応性2重結合を導入する方法(特許文献2、3参照)、(2)ジアミンと無水マレイン酸を重合させる方法(特許文献4参照)、ポリアミドの末端に不飽和2重結合を有する炭化水素オリゴマーを付加する方法(特許文献5参照)、部分的に反応性2重結合をポリアニリンに導入した後、酸クロライドで重合する方法(特許文献6、7参照)等が開示されている。なお、(1)で得られた樹脂を含む光硬化性樹脂組成物は、光の照射によるパターニングを行った後、加熱することによって、対応するポリイミドやベンゾオキサゾールを形成することもできる。
特開平6−172516号公報 特開平2−311563号公報 特開2003−287889号公報 特開平10−182837号公報 特開2001−31759号公報 特開2001−31760号公報 特開平4−132733号公報
近年、上述したようなポリアミド樹脂は、例えば電子材料用途に応用されることが多くなっている。このような電子材料用途においては、例えば他の成分と混合して樹脂組成物とされ、これを硬化することによって絶縁膜等として用いられる。この場合、より低温での硬化が可能であると、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物等の適用範囲を広くできるといった利点がある。しかし、上述した従来技術の方法により得られたポリアミド樹脂は、いずれも低温での十分な硬化性を付与することが困難な傾向にあり、この点で改良の余地があった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低温でも十分な硬化性を付与できるポリアミド樹脂を提供することを目的とする。また、このようなポリアミド樹脂の製造方法、及び、上記ポリアミド樹脂を含み、良好な低温硬化性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のポリアミド樹脂は、アミド結合を含む主鎖と、反応性有機基を有しており主鎖に結合した側鎖とを有し、反応性有機基を有する第1のジカルボン酸と、反応性有機基を有しない第2のジカルボン酸と、ジイソシアネートと、を反応させて得られることを特徴とする。
このような構成を有するポリアミド樹脂は、側鎖に反応性有機基を有していることから、例えば樹脂組成物として硬化する場合に、硬化反応において上記反応性有機基により比較的容易に3次元架橋を生じることができる。したがって、本発明のポリアミド樹脂によれば、低温の条件であっても良好な硬化が可能な低温硬化性を付与することができる。
上記本発明のポリアミド樹脂は、反応性有機基を有する側鎖を複数有していると好ましい。こうすれば、上述したような3次元架橋が一層生じ易くなり、より良好な低温硬化性を付与することが可能となる。
また、本発明のポリアミド樹脂は、反応性有機基を有するジカルボン酸と、ジイソシアネートとを反応させて得られたものであると好ましい。このようなポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構造単位ごとに反応性有機基を有するものとなるため、3次元架橋をより良好に生じ得る。
さらに、本発明のポリアミド樹脂は、反応性有機基を有する第1のカルボン酸と、反応性有機基を有しない第2のジカルボン酸と、ジイソシアネートとを反応させて得られたものであってもよい。こうすれば、ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構造単位であって反応性有機基を有しない単位を一部に含むこととなり、例えば、過度の3次元架橋が生じるのが好ましくない場合等に、好適な硬化性を付与できるようになる。
また、本発明のポリアミド樹脂の製造方法は、反応性有機基を有する第1のジカルボン酸と、反応性有機基を有しない第2のジカルボン酸と、ジイソシアネートとを反応させて、アミド結合を含む主鎖と反応性有機基を有しており主鎖に結合した側鎖とを有するポリアミド樹脂を得ることを特徴とする。
本発明のポリアミド樹脂の製造方法によれば、側鎖に反応性有機基を有するポリアミド樹脂を容易に製造することができる。また、この方法によれば、反応に伴う副生成物は主に気体状であるため、副生成物の除去もほとんど必要なく、反応操作も容易化できる。
ここで、上述した従来技術の場合には、ポリアミド樹脂の製造方法において、以下のような不都合があった。例えば、まず、上記特許文献2、3又は7に記載の方法では、反応の際に酸ハロゲン化物や金属触媒を用いていることから、これらに由来する反応後の副生成物等が得られたポリアミド樹脂中に混入していることがあった。ポリアミド樹脂を電子材料用途に用いる場合、固形不純物、金属不純物、イオン性不純物等が含まれていると、外観不良や性能の低下が生じ易くなるため、好ましくない。反応後に副生成物を分離することもできるが、特性に影響がないレベルまで除去を行う場合、ポリアミド樹脂の製造工程が極めて煩雑となってしまう傾向にあった。
また、上記特許文献5、6の場合、反応性二重結合が末端に導入されるため、3次元架橋を十分に生じることができるポリアミド樹脂を得るのが困難な傾向にあった。
これに対し、本発明のポリアミド樹脂の製造方法によれば、副生成物の混入が少なく、効率よくポリアミド単位を形成することができ、しかも、側鎖に反応性有機基が導入されることになるため、上述したような従来技術の有する不都合を大幅に低減することが可能となる。
また、本発明のポリアミド樹脂の製造方法においては、反応性有機基を有する第1のジカルボン酸と、反応性有機基を有しない第2のジカルボン酸と、ジイソシアネートとを反応させるとより好ましい。
この場合、第1及び第2のジカルボン酸の配合割合を変えることで、得られるポリアミド樹脂に含まれる反応性有機基を有する側鎖の数を好適な範囲に調整することが可能となる。したがって、適度に3次元架橋を生じることができるポリアミド樹脂を容易に得ることが可能となる。
副反応をできるだけ抑制して効率よくポリアミド樹脂を得る観点からは、第1のジカルボン酸及び第2のジカルボン酸の総量に対し、0.7〜1.3当量のジイソシアネートを反応させることが好ましい。
また、第1のジカルボン酸/第2のジカルボン酸の割合は、モル比で0.90/0.10〜0.02/0.98とすることがより好ましい。こうすれば、反応性有機基を有する側鎖が適度に導入されたポリアミド樹脂が、より一層得られ易くなる。
さらに、上記本発明のポリアミド樹脂の製造方法においては、反応性有機基は、フェノール性水酸基であると好ましい。ポリアミド樹脂におけるフェノール性水酸基は、当該ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物等を硬化する際に3次元架橋を特に生じ易い傾向にある。したがって、反応性有機基としてフェノール性水酸基を適用することによって、更に優れた低温硬化性を付与し得るポリアミド樹脂が得られ易くなる。
本発明はまた、本発明のポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を提供する。この樹脂組成物は、硬化可能なものであり、より好ましくは熱硬化可能なものである。本発明の樹脂組成物は、上記本発明のポリアミド樹脂を含むことによって、硬化反応の際に3次元架橋が形成され易い。したがって、従来に比して低温の条件であっても良好に硬化することができる。
本発明によれば、低温でも十分な硬化性を付与できるポリアミド樹脂を提供することが可能となる。また、このようなポリアミド樹脂の好適な製造方法、及び、かかるポリアミド樹脂を含むことにより低温でも良好に硬化し得る樹脂組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
(ポリアミド樹脂及びその製造方法)
好適な実施形態のポリアミド樹脂は、アミド結合を含む主鎖と、この主鎖に結合した側鎖とからなる構造を有している。ポリアミド樹脂における主鎖とは、当該樹脂を構成する分子の構造中、最も長い鎖である。かかる主鎖は、一定の構造単位がアミド結合を介して繰り返し結合された構造を有している。
また、本実施形態のポリアミド樹脂における側鎖は、反応性有機基を有している。ここで、反応性有機基とは、ポリアミド樹脂やこれを含む樹脂組成物が硬化する際に3次元架橋を形成し得る有機基である。この反応性有機基を含む側鎖とは、側鎖を構成する構造単位の一部に反応性有機基が含まれるものであってもよく、反応性有機基そのものであってもよい。前者の場合は、側鎖がアミド結合を含んでいてもよい。
側鎖が有している反応性有機基としては、エポキシ基等と反応して結合を生じることができる官能基が挙げられる。より具体的には、このような反応性有機基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、エポキシ基等が挙げられ、フェノール性水酸基又はエポキシ基が好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。ここで、フェノール性水酸基には、側鎖が有しているベンゼン環に結合した水酸基と、主鎖が有しているベンゼン環に直接結合した水酸基との両方が含まれる。後者の場合、その部分の「側鎖」は、水酸基のみから構成されることになる。
本実施形態のポリアミド樹脂は、ジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させて得られたものであると好ましい。このようなポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構造単位と、ジイソシアネート由来の構造単位とを有するものとなる。両構造単位は、これらが末端に有しているアミド結合、又は、これらの構造単位の末端同士で形成されるアミド結合を介して繰り返し結合されている。側鎖は、ジカルボン酸又はジイソシアネートがもともと有する構造単位であって、これらの反応によって主鎖に組み込まれなかった部分によって構成される。
以下、ジカルボン酸及びジイソシアネートからポリアミド樹脂を得る反応の好適な実施形態について説明する。
ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応においては、ジカルボン酸におけるカルボキシル基と、ジイソシアネートにおけるイソシアネート基とが反応してアミド結合を生じる。ポリアミド樹脂は、このような反応が繰り返し生じる重合反応の結果、生成される。
ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、100℃以上で行うことが好ましく、140〜180℃で行うことが好ましい。このような反応温度とすることで、良好な反応速度が得られ、効率よくポリアミド樹脂を得ることが可能となる。また、イミダゾールやトリアルキルアミン等の3級アミンを触媒として用いることで、より効率よくポリアミド樹脂を生成させることもできる。この場合、上記よりも低い反応温度としても十分に反応が生じ得ることから、高温条件に起因して生じる副反応等も大幅に抑制することが可能となる。
ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応においては、ジイソシアネートは、ジカルボン酸に対して0.7〜1.3当量(モル当量)用いることが好ましく、1.00〜1.20当量用いることがより好ましい。ジイソシアネートの使用量がジカルボン酸に対して0.7当量以下であると、未反応のジカルボン酸が残り易くなり、得られるポリアミド樹脂の特性が低下するおそれがある。一方、1.3当量を超えると、未反応のジイソシアネートと、反応性有機基であるフェノール性水酸基との反応が生じ易くなり、これにより良好な分子量を有するポリアミド樹脂が得られ難くなるおそれがある。
ポリアミド樹脂の側鎖に導入される反応性有機基は、ジカルボン酸及びジイソシアネートのいずれが有していてもよいが、反応性有機基を有するジカルボン酸として多様な化合物を準備できることから、ジカルボン酸が有していることがより好ましい。この場合、得られるポリアミド樹脂においては、ジカルボン酸に由来する構造単位が反応性有機基を含む側鎖を有することになる。
反応性有機基を有するジカルボン酸とは、2つのカルボキシル基及び少なくとも1つの反応性有機基を有する化合物である。反応性有機基は、2つのカルボキシル基間の構造単位に結合している側鎖に含まれるか、又は、2つのカルボキシル基間の構造単位に直接結合している。
このような反応性有機基を有するジカルボン酸としては、2つのカルボキシル基間の構造単位に芳香環を含む芳香族ジカルボン酸が好ましい。この芳香族ジカルボン酸において、反応性有機基を含む側鎖は、芳香環に結合していることが好ましい。反応性有機基がフェノール性水酸基である場合は、ヒドロキシル基が芳香族ジカルボン酸における芳香環に結合しているとより好ましい。反応性有機基としてフェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸としては、例えば、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチレンジサリチル酸、パモ酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、5,5’−チオジサリチル酸等が例示できる。
また、反応性有機基を有するジカルボン酸としては、2つのカルボキシル基間の構造単位にイミド結合を含むものも好ましく、2つのイミド結合を含むジイミドジカルボン酸が更に好適である。ジイミドジカルボン酸は、(1)ジアミンと、トリカルボン酸一無水物との反応や、(2)アミノ安息香酸と、テトラカルボン酸二無水物との反応によって得ることができる。
ジイミドジカルボン酸を製造する際には、(1)の場合、ジアミンに対し、2当量のトリカルボン酸一無水物を反応させる。これにより、ジアミンが有する2つのアミノ基に対し、トリカルボン酸一無水物における酸無水物基がそれぞれ反応してイミド基が生じ、両末端にカルボキシル基を有するジイミドジカルボン酸が得られる。
この場合に用いるジアミンとしては、2つのアミノ基間の構造単位に芳香環を含む芳香族ジアミン、2つのアミノ基間の構造単位が脂肪族炭化水素から構成される脂肪族ジアミン、2つのアミノ基間の構造単位にシロキサン構造を含むシロキサンジアミン等が挙げられる。また、芳香族トリカルボン酸一水和物としては、無水トリメリット酸またはシクロヘキサントリカルボン酸無水物が挙げられる。
より具体的には、芳香族ジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2´−ジメチルビフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4´−ジアミン、2,6,2´,6´−テトラメチル−4,4´−ジアミン、5,5´−ジメチル−2,2´−スルフォニル−ビフェニル−4,4´−ジアミン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4´−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3´―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3´−ジアミノ)ジフェニルエーテル等が例示できる。
また、脂肪族ジアミンとしては、(4,4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、ポリプロピレンオキサイドジアミン(商品名ジェファーミン)等が例示できる。さらに、シロキサンジアミンとしては、ポリジメチルシロキサンジアミン(シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)、KF−8010(アミン当量415)(以上、信越化学工業株式会社製))等を例示できる。なお、ジアミンとしては上述したものを複数組み合わせて用いてもよい。
上記(1)の反応によってジイミドジカルボン酸を得る場合、反応性有機基は、ジアミン及びトリカルボン酸一無水物のいずれか一方が有していてもよく、両方が有していてもよい。特に、ジイミドジカルボン酸の製造を有利に行う観点からは、反応性有機基はジアミンが有していることが好ましい。この場合、反応性有機基は、2つのアミノ基間の構造単位に結合した側鎖に含まれるか、この構造単位に直接結合されている。
反応性有機基を含むジアミンとしては、3,3´−ジアミノ−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジアミノ−2,2´−ジメチル−5,5´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジアミノ−2,2´−ジ(トリフルオロメチル)−5,5´−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−2−メチル−5ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
一方、(2)の反応によりジイミドジカルボン酸を得る場合、テトラカルボン酸二無水物に対し、2当量のアミノ安息香酸を反応させる。これにより、テトラカルボン酸二無水物における2つの酸無水物基に対して、アミノ安息香酸におけるアミノ基がそれぞれ反応してイミド基が生じ、両末端にカルボキシル基を有するジイミドジカルボン酸が得られる。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−スルホニルジフタル酸二無水物、1−トリフルオロメチル−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、フエナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフエン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフイド二無水物、4,4´−(4,4´イソプロピリデンジフェノキシ)−ビス(フタル酸無水物)、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)スルホン等が挙げられる。テトラカルボン酸二無水物としては、これらのものを単独で又は複数種類組み合わせて用いることができる。
上記(2)の反応によってジイミドジカルボン酸を得る場合も、テトラカルボン酸二無水物とアミノ安息香酸の一方が反応性有機基を有していてもよく、両方が有していてもよい。反応性有機基を有するアミノ安息香酸としては、例えば、3−アミノサリチル酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシアントラニル酸、5−ヒドロキシアントラニル酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
以上、反応性有機基を有するジカルボン酸を例示したが、ポリアミド樹脂の製造においては、反応性有機基を有するジカルボン酸(第1のジカルボン酸)及びジイソシアネートに加えて、反応性有機基を有しないジカルボン酸(第2のジカルボン酸)を更に反応させてもよい。こうすることで、ポリアミド樹脂が有する反応性有機基の数を適度に調整することができ、良好な硬化性が得られ易くなる。この場合、ジイソシアネートの配合量は、第1及び第2のジカルボン酸の総量に対して上述したような好適な配合割合を満たすようにすればよい。
第1及び第2のジカルボン酸を併用する場合は、例えば、第1のジカルボン酸として反応性有機基を有するジカルボン酸を用い、第2のジカルボン酸として反応性有機基を有しないジイミドジカルボン酸を用いることが好ましい。反応性有機基を有しないジイミドジカルボン酸は、上述したようなジイミドジカルボン酸の製造において、原料の化合物(ジアミン、トリカルボン酸一無水物、アミノ安息香酸、テトラカルボン酸二無水物)として全て反応性有機基を有しない化合物を用いることによって得ることができる。第1のジカルボン酸/第2のジカルボン酸の割合は、モル比で0.90/0.10〜0.02/0.98とすることが好ましく、0.50/0.50〜0.10/0.90とすることがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂の製造においては、反応性有機基を有するカルボン酸を更に用いてもよい。反応性有機基を有するカルボン酸とは、一つのカルボキシル基と、少なくとも一つの反応性有機基を有する化合物である。このような化合物を更に用いることで、末端に反応性有機基を有するカルボン酸に由来する構造単位を有するポリアミド樹脂が得られる。そして、このポリアミド樹脂は、末端にも反応性有機基を有することから、より良好な低温硬化性を付与し得るものとなる。反応性有機基を有するカルボン酸を用いる場合、反応性有機基を有するジカルボン酸/反応性有機基を有するカルボン酸の割合は、モル比で0.70/0.30〜0.97/0.03程度であると好ましい。
反応性有機基を有するカルボン酸としては、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、2,3,5−トリヒドロキシ安息香酸、3−メチルサリチル酸、4−メチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、3−ヒドロキシ−o−トルイル酸、3−ヒドロキシ−p−トルイル酸、2,6−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、フェノールフタレイン、ジフェノール酸、4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
(樹脂組成物)
次に、上述したポリアミド樹脂を含む樹脂組成物の好適な実施形態について説明する。樹脂組成物としては、ポリアミド樹脂のほか、硬化剤、硬化促進剤や希釈剤を更に含むものが好ましい。まず、硬化剤は、ポリアミド樹脂の硬化反応を良好に生じさせ得る成分である。
硬化剤としては、エポキシ樹脂が挙げられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、りん含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、或いは、これらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤は、ポリアミド樹脂の硬化を促進し得る成分である。この硬化促進剤を含むことで樹脂組成物に架橋が生じ易くなり、十分な低温硬化性を付与することが一層容易となる。硬化促進剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、ナフトイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ベンゾトリアゾール、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、キノリン、イソキノリン、ジピリジル、ジキノリル、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、ベンゾシンノリン、ベンゾフタラジン、ベンゾキノキサリン、ベンゾキナゾリン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、ペリミジン、トリアジン、テトラジン、プテリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピロールジオン、イソインドールジオン、ピロリジンジオン、ベンゾイソキノリンジオン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、アミノシラン、フェニルアミノシラン等の含窒素化合物からなる硬化促進剤が挙げられる。これらは、硬化温度に応じて適宜選択して配合させることが好ましく、上記のものを単独で又は組み合わせて配合させてもよい。
硬化促進剤の配合量は、特に制限されないが、例えば、ポリアミド樹脂の特性を維持するために、ポリアミド樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部であると好ましく、0.05〜10質量部であると更に好ましい。なお、本明細書においては、「質量部」は実質的に「重量部」と同等である(以下同様)。
また、樹脂組成物は、希釈剤を更に含むことで、ポリアミド樹脂等の成分を溶解又は分散することが可能となり、樹脂組成物の取り扱い性が向上するようになる。
希釈剤としては、ポリアミド樹脂や硬化促進剤といった樹脂組成物の他の成分を良好に溶解又は分散させ得るものが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等を例示できる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
さらに、樹脂組成物は、架橋剤を更に含有してもよい。架橋剤を含むことによって、樹脂組成物の硬化性が更に向上する傾向にある。架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、フェノール系、アミン系、酸無水物系、エポキシ系の架橋剤が好適である。
架橋剤の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して1〜90質量部とすることができ、5〜70質量部とするとより好ましい。架橋剤の配合量がポリアミド樹脂に対して1質量部以下である場合、架橋剤としての上述した効果が得られ難い傾向にある。一方、90質量部を超えると、架橋剤の特性が支配的となって、ポリアミド樹脂が本来有する特性が十分に得られなくなるおそれがある。
樹脂組成物は、粒子、特に無機粒子を更に含んでいてもよい。このような粒子を含むことで、樹脂組成物やその硬化物の熱膨張率、電気特性を改善することもできる。粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等からなる無機粒子が好ましい。この粒子としては、最大粒径が500nm以下であるものを含有させることが好適である。最大粒径が500nmを超える粒子を用いると、樹脂組成物の硬化物からなる膜を形成した場合に、膜厚によっては膜中の粒子の占める割合が大きくなりすぎ、これが膜に欠陥を生じさせる要因となる場合がある。
樹脂組成物における粒子の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して1〜90質量部とすることが好ましく、10〜50質量部とすることがより好ましい。粒子の配合量が1質量部未満であると、粒子の添加による上述した効果が十分に得られない場合がある。一方、90質量部を超えると、樹脂組成物の硬化膜を形成した場合に粒子に起因する欠陥が生じる可能性が高まり、信頼性の低下を招くおそれがある。
さらに、樹脂組成物は、難燃剤を更に含有してもよい。難燃剤を含むと、樹脂組成物やその硬化物の難燃性が向上する。難燃剤としては、一般の添加型の難燃剤を特に制限無く含有させることができる。難燃剤の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部とすることが好ましい。難燃剤の配合量が0.1質量部未満であると、十分な難燃性が得られない場合があり、50質量部を超えると樹脂組成物の物性が不都合に低下するおそれがある。
本実施形態の樹脂組成物は、通常、熱による硬化が可能なものであるが、例えば、光により硬化が促進する構造や成分が含まれること等によって樹脂組成物が光硬化性を有する場合は、増感剤を更に含有してもよい。増感剤を含むことで、光の吸収が促進され、より良好な硬化が可能となる傾向にある。増感剤としては公知の化合物を適用でき、照射される光の波長に応じて適宜選択することが好ましい。増感剤の配合量は、樹脂組成物の固形分に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%とすることがより好ましい。このような範囲で増感剤を含有させることで、樹脂組成物の特性を維持しながら良好な硬化を行うことが可能となる。
本実施形態の樹脂組成物は、上述した成分以外に、所望の特性に応じてゴム系エラストマ、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を含有していてもよい。
(樹脂組成物からなる接着層及びその製造方法)
上述した樹脂組成物は、樹脂組成物層を形成することができる。樹脂組成物から構成される層は、例えば電子部品等に搭載される基板等の上に形成されて、その上に形成される他の基板等との接着を行う接着層等として機能することができる。また、樹脂組成物層は、更に硬化されることによって、基板等を保護する保護層や層間の絶縁層を形成することもできる。接着層は、これを形成させるべき基体の上に直接塗布する方法や、一旦樹脂組成物フィルムを形成した後、これを基体と貼り合わせる方法によって形成することができる。
まず、直接塗布により樹脂組成物層を形成する場合は、樹脂組成物をそのまま、又は、有機溶媒に溶解させた溶液の状態で、スピンコーター、マルチコーター等により基体の所望の面上に塗布する。次いで、樹脂組成物が希釈剤を含む場合や有機溶媒を用いた場合等は、塗布によって形成された層の加熱や当該層に対する熱風吹き付け等により、希釈剤又は有機溶媒を揮発させ、これらを除去する。こうして、樹脂組成物(主に固形分)から構成される樹脂組成物層が得られる。
一方、フィルムを用いる方法においては、所定の支持体上に樹脂組成物を塗布して樹脂組成物フィルムを得た後、このフィルムを基体上に貼り付ける等して積層し、これにより樹脂組成物層を形成する。樹脂組成物フィルムは、支持体上に、樹脂組成物をそのまま又は上述した溶液の状態で塗布した後、塗布後の層から加熱や熱風吹き付けにより希釈剤や有機溶媒を揮発・除去することによって形成することができる。樹脂組成物フィルムからの支持体の除去は、樹脂組成物層を形成させる基体上への積層前に行ってもよく、積層後に行ってもよい。
樹脂組成物フィルムを形成するための支持体としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、4フッ化エチレン等からなるフィルムや、離型紙、あるいは、銅箔やアルミ箔等の金属箔等が適用できる。これらの支持体の厚さは、10〜150μmであると好ましい。また、支持体の表面(例えば樹脂組成物のフィルムが形成される面)には、マット処理、コロナ処理、離型処理等が更に施されていてもよい。
樹脂組成物フィルムは、支持体を剥離したフィルム単体で、又は、支持体上に積層された積層体の状態で保管することができる。保管による劣化を小さくする観点からは、積層体の状態で保管することが好ましい。樹脂組成物フィルムの保管は、一定の長さに裁断してシート状にして、または、巻き取ってロール状にして行うことができる。保存性、作業性や生産性を良好にする観点からは、上記の積層体において、樹脂組成物フィルムの表面を更に保護フィルムで覆った後、これをロール状に巻き取って保管することが好ましい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、4フッ化エチレンからなるフィルムや、離型紙が例示できる。これらの保護フィルムには、樹脂組成物からなるフィルムへの対向面にマット処理、エンボス加工、離型処理が施されていてもよい。
上述したような樹脂組成物層を形成させるべき基体としては、特に限定されず、銅やアルミ等の金属、ポリイミド等の樹脂、セラミックやガラス等の無機材料からなる基体を適用できる。例えば、樹脂からなる絶縁基板上に金属からなる配線が形成されたような基板上に形成することもできる。そして、基体上に形成された樹脂組成物層は、硬化することによって保護層、接着層、絶縁層等としての機能を有することができる。硬化は、加熱によって生じさせることができるが、樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂等の種類によっては、光の照射によって生じさせることもできる。加熱により硬化させる場合、好適な温度は、樹脂組成物中の硬化促進剤の有無やその種類によって異なるが、130〜230℃とすることが、樹脂組成物の硬化物層の特性劣化が少なく、また作業性が良好であることから好ましい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ポリアミド樹脂の合成]
(実施例1)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン45mmol、無水トリメリット酸94.5mmol、及び、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)133.3gを加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、反応性有機基を含むジカルボン酸として5−ヒドロキシイソフタル酸30mmolを溶解させた後、ジイソシアネートとして、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート82.5mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例1のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
(実施例2)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン54mmol、無水トリメリット酸113.4mmol、及び、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)140.9gを加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、反応性有機基を含むジカルボン酸として5−ヒドロキシイソフタル酸23.1mmolを溶解させた後、ジイソシアネートとして、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート84.9mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例2のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
(実施例3)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン57mmol、無水トリメリット酸119.7mmol、及び、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)139.3g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、反応性有機基を含むジカルボン酸として5−ヒドロキシイソフタル酸14.3mmolを溶解させた後、ジイソシアネートとして、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート78.4mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例3のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
(実施例4)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン57mmol、無水トリメリット酸119.7mmol、及び、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)140.9gを加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、反応性有機基を含むジカルボン酸として5−ヒドロキシイソフタル酸14.3mmol、反応性有機基を含むカルボン酸として2,4−ジヒドロキシ安息香酸1.4mmolを溶解させた後、ジイソシアネートとして、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート78.4mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例4のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
(実施例5)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン57mmol、無水トリメリット酸119.7mmol、及び、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)139.7gを加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、反応性有機基を含むジカルボン酸として5−ヒドロキシイソフタル酸14.3mmol、反応性有機基を含むカルボン酸として4−ヒドロキシ安息香酸1.4mmolを溶解させた後、ジイソシアネートとして、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート78.4mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例5のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
(実施例6)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン45mmol、無水トリメリット酸94.5mmol、及び、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)108.8gを加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、ジカルボン酸としてイソフタル酸11.3mmol、反応性有機基を含むカルボン酸として2,4−ジヒドロキシ安息香酸1.1mmolを溶解させた後、ジイソシアネートとして、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート61.9mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例6のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
(比較例1)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン171mmol、シロキサンジアミンとしてX−22−161−B(信越化学工業(株)製商品名、アミン当量1500)9mmol、無水トリメリット酸378mmol、及び、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)424.7g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン200mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、ジイソシアネートとして、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート198mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、比較例1のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
[ポリアミド樹脂の評価]
実施例1〜6及び比較例1のポリアミド樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた結果、表1に示す結果となった。重量平均分子量の測定は、測定カラムとしてGL−S300MDT−5(日立化成工業株式会社製)を2本直列させたものを用いて行った。この際、溶離液としては、液体クロマトグラフィー用ジメチルホルムアミド1Lに、リチウムブロマイド0.03mol及びリン酸0.06molを加えて溶解させた後、さらに液体クロマトグラフィー用テトラヒドロフラン1Lを加えたものを用いた。
Figure 0005061679

[樹脂組成物の調製]
(実施例7)
実施例1のポリアミド樹脂のNMP溶液30gに、NC−3000H(エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製商品名)を1.58g、硬化促進剤として2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製商品名)0.016gを加え、これを適当な粘度となるまでN,N−ジメチルアセトアミドで希釈して、樹脂組成物を作製した。
(実施例8)
実施例2のポリアミド樹脂のNMP溶液30gに、NC−3000H(エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製商品名)を1.22g、硬化促進剤として2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製商品名)0.012gを加え、これを適当な粘度にN,N−ジメチルアセトアミドで希釈して、樹脂組成物を作製した。
(実施例9)
実施例3のポリアミド樹脂のNMP溶液30gに、NC−3000H(エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製商品名)を0.29g、硬化促進剤として2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製商品名)0.003gを加え、これを適当な粘度にN,N−ジメチルアセトアミドで希釈して、樹脂組成物を作製した。
(実施例10)
実施例4のポリアミド樹脂のNMP溶液30gに、NC−3000H(エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製商品名)を0.88g、硬化促進剤として2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製商品名)0.009gを加え、これを適当な粘度にN,N−ジメチルアセトアミドで希釈して、樹脂組成物を作製した。
(実施例11)
実施例5のポリアミド樹脂のNMP溶液30gに、NC−3000H(エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製商品名)を0.83g、硬化促進剤として2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製商品名)0.008gを加え、これを適当な粘度にN,N−ジメチルアセトアミドで希釈して、樹脂組成物を作製した。
(実施例12)
実施例6のポリアミド樹脂のNMP溶液30gに、NC−3000H(エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製商品名)を0.14g、硬化促進剤として2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製商品名)0.001gを加え、これを適当な粘度にN,N−ジメチルアセトアミドで希釈して、樹脂組成物を作製した。
(比較例2)
比較例1のポリアミド樹脂のNMP溶液30gに、NC−3000H(エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製商品名)を1.58g、硬化促進剤として2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製商品名)0.016gを加え、これを適当な粘度にN,N−ジメチルアセトアミドで希釈して、樹脂組成物を作製した。
[特性評価]
(樹脂組成物フィルムの作製)
実施例7〜12及び比較例2で得られた樹脂組成物の溶液を、支持体であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に均一に塗布した後、130℃、15分加熱して乾燥させ、PETフィルム上に樹脂組成物フィルムを形成した。その後、PETフィルムを剥離して、樹脂組成物フィルムを得た。
(DSCの測定)
実施例7〜12及び比較例2の各樹脂組成物フィルム(5mg)について、示差走査熱量分析装置(DSC:パーキンエルマ社製 PYRIS1 DSC)を用い、50〜350℃の温度範囲(10℃/分昇温)での発熱量および発熱温度の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
(動的粘弾性の測定)
実施例7〜12及び比較例2の各樹脂組成物フィルムに対し、更に200℃、1時間の加熱を施して樹脂組成物を硬化させ、硬化フィルムを得た。得られた各硬化フィルムについて、動的粘弾性測定装置(DVE:UBM(株)製広域動的粘弾性測定装置E−4000)を用い、昇温速度5℃/分、チャック間距離20mm、周波数10Hz、振幅5μm、自動静荷重、引張り法で、50〜350℃の温度範囲におけるtanδの最大値(Tg:ガラス転移温度)を求めた。得られた結果を表2に示す。
Figure 0005061679
表2より、実施例7〜12の樹脂組成物から得られた各樹脂組成物フィルムは、比較例2の樹脂組成物フィルムに比して低い温度で明瞭な発熱ピークを示しており、低温でも効率良い硬化を生じていることが判明した。また、実施例7〜12の樹脂組成物から得られた各硬化フィルムは、いずれも高いTgを有しており、十分な耐熱性を有していることも確認された。

Claims (9)

  1. アミド結合を含む主鎖と、反応性有機基を有しており前記主鎖に結合した側鎖と、を有し、
    前記反応性有機基を有する第1のジカルボン酸と、前記反応性有機基を有しない第2のジカルボン酸と、ジイソシアネートと、を反応させて得られることを特徴とするポリアミド樹脂。
  2. 前記反応性有機基を有する前記側鎖を複数有することを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂。
  3. 前記反応性有機基が、フェノール性水酸基であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリアミド樹脂。
  4. 反応性有機基を有する第1のジカルボン酸と、反応性有機基を有しない第2のジカルボン酸と、ジイソシアネートと、を反応させて、アミド結合を含む主鎖と前記反応性有機基を有しており前記主鎖に結合した側鎖とを有するポリアミド樹脂を得る、ことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
  5. 前記第1のジカルボン酸及び前記第2のジカルボン酸の総量に対し、0.7〜1.3当量の前記ジイソシアネートを反応させることを特徴とする請求項記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  6. 前記第1のジカルボン酸/前記第2のジカルボン酸の割合を、モル比で0.90/0.10〜0.02/0.98とすることを特徴とする請求項4又は5記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  7. 前記反応性有機基が、フェノール性水酸基であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂を含むことを特徴とする樹脂組成物。
  9. 硬化可能であることを特徴とする請求項記載の樹脂組成物。
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