その断面波形状の金属又はスレート屋根(壁)には、平坦状面が無く、円弧状の面によってのみ構成されたものである。このような既設屋根の上から、新たに屋根を施工するための母屋(胴縁)を設置する場合には、取付ピースを介して固着する場合が多い。そのために、特許文献1及び2に記載されたものでは、その構造から、取付ピースを既設屋根に設置する場合に平坦な面に設置することには好適であるが、円弧状の面に設置することには不適当である。さらに、取付ピースと母屋材との連結において、ボルトナット等の固着具を多数必要とする場合が多く、特に長尺な母屋(胴縁)等の固着を行う場合には、極めて大変な労力を要するものである。
このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、屋根葺き替え(又は壁取替え)工事において、新設の母屋(胴縁)を、特に図示しないが、金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等の取付ピースが取付可能なあらゆる既設外囲体や外囲体の外面へボルトが露出しているあらゆる既設外囲体(或いは既設構造材や新設構造材)にも溶接することなく取り付けることができるようにすることである。そして、特に断面波形状の屋根(壁)に極めて安定した状態で取付施工することができる新設下地材及びその取付構造を実現することである。
そこで発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、底部の幅方向両側より立上り側部が形成され,該立上り側部の上端より外方下向きに傾斜状の嵌合片が形成された取付ピースと、前記嵌合片に嵌合する被嵌合片が形成された下地部材とからなり、該下地部材は長手方向に長尺に形成され、前記取付ピースと下地部材とが嵌合されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。
請求項2の発明を、前述の構成において、前記取付ピースの両立上り側部は、上端側が幅方向内方側に傾斜形成されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、前述の構成において、前記取付ピースの両立上り側部は、略垂直状に形成されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、前述の構成において、前記取付ピースの両立上り側部は、上端側が幅方向外方側に傾斜形成されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、前述の構成において、前記取付ピースの底部には幅方向両側に延出する長孔とした取付孔が形成されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。
請求項6の発明を、前述の構成において、前記取付ピースの底部には適宜の間隔で大径の逃げ孔が形成されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。請求項7の発明を、前述の構成において、前記取付ピースには、支持板部と該支持板部の幅方向両側から側片が形成された断面略門形状の支持台が具備され、前記支持板部には貫通孔が形成され、前記底部には、被連結孔が形成され、前記底部は前記支持板部に回動自在に支持されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、前述の構成において、前記貫通孔の内周縁から環状のバーリング加工部が形成され、前記底部の被連結孔には前記バーリング加工部が遊挿すると共に、該バーリング加工部は外方に拡開されて、前記支持台と底部とが連結されてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。請求項9の発明を、前述の構成において、 前記支持台は、その両側片の間隔及び高さ寸法がそれぞれ異なるものを複数備えてなる新設下地材としたことにより、上記課題を解決した。
請求項10の発明を、既設外囲体又は既設構造材と、底部の幅方向両側より立上り側部が形成され,該立上り側部の上端より外方下向きに傾斜状の嵌合片が形成された取付ピースと、前記嵌合片に嵌合する被嵌合片が形成された下地部材とからなり、既設外囲体と既設構造材に前記取付ピースが固着具を介して固着され、前記下地部材は長手方向に長尺に形成されると共に、1本の下地部材は複数の前記取付ピースに嵌合固定されてなる新設下地材取付構造としたことにより、上記課題を解決した。
請求項11の発明を、既設外囲体と又は既設構造材又は新設構造材、底部の幅方向両側より立上り側部が形成され,該立上り側部の上端より外方下向きに傾斜状の嵌合片が形成された取付ピースと、前記嵌合片に嵌合する被嵌合片が形成された下地部材とからなり、前記取付ピースには、支持板部と該支持板部の幅方向両側から側片が形成された断面略門形状の支持台が具備され、前記支持板部には貫通孔が形成され、前記底部には、被連結孔が形成され、前記底部は前記支持板部に回動自在に支持され、既設外囲体又は既設構造材又は新設構造材に前記取付ピースが固着具を介して固着され、前記下地部材は長手方向に長尺に形成されると共に、1本の下地部材は複数の前記取付ピースに嵌合固定されてなる新設下地材取付構造としたことにより、上記課題を解決した。
請求項1の発明によれば、取付ピースと下地部材とから構成されたものであり、取付ピースは、底部の幅方向両側より立上り側部が形成され,該立上り側部の上端より外方下向きに傾斜状の嵌合片が形成されたものである。下地部材は、取付ピースの嵌合片に嵌合する被嵌合片が形成されたものである。さらに、下地部材は長手方向に長尺に形成されており、前記取付ピースを既設屋根又は既設壁等の(金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等の取付ピースが取付可能なあらゆる既設外囲体と外囲体の外面へボルトが露出しているあらゆる)既設外囲体に適宜の間隔にて装着することにより、この取付ピースに長手方向に長尺とした下地部材を嵌合するのみで、固着具を使用しないで簡単且つ強固に嵌合固定することができ、極めて簡単に既設外囲体に下地部材を装着することができる。
そして、この下地部材を母屋或いは胴縁として使用することにより、(金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等の取付ピースが取付可能なあらゆる既設外囲体と外囲体の外面へボルトが露出しているあらゆる)既設外囲体に、新設屋根又は新設壁等の新設外囲体を施工することができる。特に、図示しないが、金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等あらゆる新設外囲体も新設下地材に取り付けることができる。このように取付ピースと下地部材とが、固着具を使用しないで簡単且つ強固に嵌合手段により連結固着することができるので、ボルト・ナット或いはビス等の固着手段における孔の位置合わせが全く不要であり、極めて効率的且つ迅速に母屋,胴縁等の新設下地の施工をすることができる。また、取付ピースと下地部材とが嵌合手段によって連結固着することができるので、取付ピースと下地部材との間に溶接手段が不要となり、施行工事における火気の心配がないものである。また、取付ピースの既設外囲体への装着は全て、既設外囲体の外側からできるので、施工工事では騒音,雨漏り等の室内への影響を最小限に抑えることができる。
請求項2の発明によれば、前記取付ピースの両立上り側部は、上端側が幅方向内方側に傾斜形成されたことにより、連結ピースの幅方向の寸法を小さくすることができ、取付ピースを小型にできるものであり、ひいては取付ピースの装着箇所に多量の取付ピースを持ち込むことができるものであり、施工箇所での取付ピースの一時貯蔵(ストックヤード)を容易に確保することができる。請求項3の発明によれば、前記取付ピースの両立上り側部は、略垂直状に形成されたことにより、取付ピースの両立上り側部が略平行となり、取付ピースの力学的強度を向上させることができる。
請求項4の発明によれば、前記取付ピースの両立上り側部は、上端側が幅方向外方側に傾斜形成されたことにより、前記立上り側部と嵌合片とは相互に弾性による変形範囲が大きくなり、取付ピースに対して下地部材の嵌合取付が比較的小さな力にて容易にでき、作業員の労力を低減させることができる。請求項5の発明によれば、前記取付ピースの底部には幅方向両側に延出する長孔とした取付孔が形成されたことにより、取付孔を介して、金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等の取付ピースが取付可能なあらゆる既設外囲体と外囲体の外面へボルトが露出しているあらゆる既設外囲体に装着する場合に既設ボルト,新設ボルトのいずれを使用したとしても、取付孔を底部の幅方向両側に延出する長孔としているので、下地部材の幅方向の位置調整が容易にできる。
請求項6の発明によれば、前記取付ピースの底部には適宜の間隔で大径の逃げ孔が形成されたことにより、既設外囲体の既設ボルトが既設外囲体の表面から突出していたとしても、前記逃げ孔を既設ボルトの位置に合わせることで、既設ボルトが取付ピースの取付に干渉することなく、取付ピースを容易に既設外囲体の何れの位置にも装着することができる。
請求項7の発明では、前記取付ピースには、支持板部と該支持板部の幅方向両側から側片が形成された断面略門形状の支持台が具備され、前記支持板部には貫通孔が形成され、前記底部には、被連結孔が形成され、前記底部は前記支持板部に回動自在に支持されることにより、下地部材を外囲体に対して横方向だけでなく、縦方向及び斜め方向にも装着することができる。特に、外囲体を構成する既設構造材が正確に設置されず、傾斜状となっている場合や、或いは下地部材を傾斜状態に設置する必要がある場合に、前記支持台に対して取付ピースを支持する傾斜角度を適宜に変化させることができ、新設下地部材を長手方向にあらゆる傾斜角度にて設置することが極めて簡単にできる。また、下地部材を外囲体のあらゆる方向に極めて簡単に設置することができるものである。
さらに、前記支持板部と底部とは、相互に回動自在な構成であると共に、取付ピースを外囲体に装着する際に、前記支持台の貫通孔と、前記底部の被連結孔は、ドリルビス等の固着具或いは既設固定ボルトを貫通させることができ、これらの固着具又は既設固定ボルトを利用し易いものにできる。請求項8の発明では、前記貫通孔の内周縁から環状のバーリング加工部が形成され、前記底部の被連結孔には前記バーリング加工部が遊挿すると共に、該バーリング加工部は外方に拡開されて、前記支持台と底部とが連結される構成としているので、極めて簡単且つ組立を行い易い構成にすることができる。請求項9の発明では、前記支持台は、その両側片の間隔及び高さ寸法がそれぞれ異なるものを複数備えたことにより、外囲体を構成する、種々のサイズの波形スレート屋根,壁等の既設外囲体や、既設構造材や新設構造材に対応させることができる。
請求項10の発明によれば、(金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等の取付ピースが取付可能なあらゆる既設外囲体と外囲体の外面へボルトが露出しているあらゆる)既設外囲体又は既設構造材又は新設構造材に前記取付ピースが固着具を介して固着され、前記下地部材は長手方向に長尺に形成されると共に、1本の下地部材は複数の前記取付ピースに嵌合固着される新設下地材取付構造とした。また、既設外囲体の外面へボルトが露出している場合では、前記取付ピースは既設構造材によって、新たな固着具を使用しないで、ナットのみで簡単且つ強固に嵌合固定することができる。いずれも、極めて強固に装着することができる。また、取付ピースは複数個が供えられ、既設外囲体上に所定間隔に装着されることで、下地部材の嵌合が比較的少ない力で装着できることとなり、作業員の労力を低減でき、且つ安全性も確保されるものである。請求項11の発明では、既設外囲体又は既設構造材又は新設構造材の方向に対して新設下地部材をあらゆる傾斜角度に設置することが、極めて容易にできる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明における新設下地材は、図1に示すように、取付ピース1と下地部材2とから構成され、前記取付ピース1に対して前記下地部材2を、固着具を使用しないで簡単且つ強固に嵌合固定することができる構造としたものである。前記取付ピース1は、図3に示すように、底部11の幅方向両側より立上り側部12,12が形成され,該立上り側部12,12の上端より外方下向きに傾斜状の嵌合片13,13が形成されている。該取付ピース1は長手方向に短尺に形成されたものであり、具体的には長手方向の寸法を特定しないが好ましくは約180mm程度である。
前記底部11は平坦状に形成され〔図3(A),(C)参照〕、該底部11の幅方向の両側に形成された両立上り側部12,12は、前記底部11の幅方向の内方側に向かって僅かに傾斜状に形成されたものである〔図3(C)参照〕。そして、前記嵌合片13,13は、前記両立上り側部12,12の上端から前記底部11の幅方向外方側に折り返し形成されたものである。すなわち、前記両嵌合片13,13は、前記底部11の幅方向に沿って略『ハ』字形状又は『八』字形状となるように形成されている〔図3(C)参照〕。該嵌合片13は、前述したように傾斜面であり、且つ平坦状面に形成されている〔図3(A)参照〕。
また、前記両立上り側部12,12は、前記底部11の長手方向に沿って、立上り側部12,12の中央箇所に略長方形の空隙部となるように切除部121が形成されている〔図3(A),(B)参照〕。また、前記両嵌合片13,13は前記立上り側部12の切除部121を除いた箇所の立上り側部12,12にそれぞれ形成される〔図3(A),(B)参照〕。前記両嵌合片13,13は、具体的には両立上り側部12,12の長手方向の略中央を除いた両側箇所に形成されることになる。これは、それぞれの立上り側部12に、2つの嵌合片13,13が形成され、両立上り側部12,12で合計4個の嵌合片13,13,…が存在することになる〔図3(A),(B)参照〕。
前記取付ピース1の底部11には、取付孔14が形成されている〔図3(A),(B)参照〕。具体的には、前記底部11の長手方向の両側端部箇所にそれぞれ形成されたものである〔図3(B)参照〕。前記取付孔14は、取付ピース1を前記既設外囲体A上にドリルビス等の固着具3にて固着するための該固着具3が貫通する孔である。この取付孔14は、底部11の幅方向両側に沿って延出する長孔である。また、単に円形状の貫通孔とする実施形態も存在する。この長孔とした取付孔14によって、固着具3によって固着された後において、その取付ピース1の幅方向における位置の微調整が可能となる〔図4(B),(C)及び図5(C)参照〕。
さらに、前記取付ピース1の底部11には適宜の間隔で大径の貫通孔とした逃げ孔15が形成されている〔図3(A),(B)参照〕。この逃げ孔15の大きさは、既設屋根(壁)等の既設外囲体Aの既設固定ボルト7の座金が遊挿される程度の大きさであり、底部11の幅方向に沿って長孔として形成されている。この逃げ孔15によって、取付ピース1は、既設外囲体Aの既設固定ボルト7に干渉されることなく、既設外囲体A上に設置することができる〔図2(B),(C)参照〕。前記立上り側部12,12は、前記底部11に対して傾斜状ではなく、略直角状の立上り側部として形成されることもある。この場合においても、前記両嵌合片13,13は、前述したように、前記底部11の幅方向に沿って略『ハ』字形状又は『八』字形状となるように形成されている〔図8(A)参照〕。また、図3(D),(E)は、取付ピース1の第2実施形態であり、第1実施形態の取付ピース1よりも長手方向に短く形成され、嵌合片13は、立上り側部12の長手方向に沿って全面的に形成されたものである。
下地部材2は、図1に示すように、頂部21の幅方向両側より垂下状側部22,22が形成され、該垂下状側部22,22の下端から内方側に向かって被嵌合片23,23が形成されている。該被嵌合片23は、前記垂下状側部22に対して直角(略直角も含む)に折曲形成されたものである。このような下地部材2は、リップ溝形鋼が使用されることが好適である。さらに、下地部材2は、前記被接合片23,23が形成されたその他の形状の下地材にも適用できる〔図10,図12(B)参照〕。
ここで、前記取付ピース1の両嵌合片13,13の上端箇所の間隔寸法をTaとし、両嵌合片13,13の下端(嵌合片13の先端位置)の間隔寸法をTbとする。また、前記下地部材2の両被嵌合片23,23の先端箇所における間隔寸法をWとすると、W<Tbである。さらにW>Taとなることが好ましい。すなわち、Ta<W<Tbである〔図5(A)参照〕。また前記嵌合片13の垂直方向の高さ寸法をHaとし、前記下地部材2の頂部21と被嵌合片23との内面側同士の間隔をHbとすると、Ha≒Hbである〔図5(A),(B)参照〕。或いは間隔Hbが間隔Haよりも僅かに大きい程度が好ましい。以上のような構成とすることによって、取付ピース1に下地部材2を、効率的に固着具を使用しないで簡単且つ強固に嵌合固定することができる。すなわち、前記取付ピース1上に、前記下地部材2を被せるようにして配置すると、下地部材2の両被嵌合片23,23の間に、取付ピース1の両嵌合片13,13の上端が入り込む。
そして、そのままの状態から、さらに前記下地部材2を取付ピース1に向かって押さえつけることによって、下地部材2の両被嵌合片23,23の先端が前記両嵌合片13,13の傾斜面に沿って相互移動する。このとき、両嵌合片13,13は、前記両被嵌合片23,23に対して楔状に食い込むことになる。そして、前記両被嵌合片23,23の先端が前記両嵌合片13,13の下端に到達すると同時に該両嵌合片13,13の先端に前記両被嵌合片23,23の先端が噛合うようにして、固着具を使用しないで簡単且つ強固に嵌合固定することができる。このようにして、取付ピース1と下地部材2とが溶接することなく嵌合固定される。
この取付ピース1と下地部材2との嵌合状態では、前記嵌合片13の垂直方向における高さ方向の寸法Haが下地部材2の頂部21と被嵌合片23との内方側の寸法Hbと略同等とすることにより、下地部材2に嵌合した取付ピース1の嵌合片13がその高さ方向において、下地部材2の被嵌合片23と頂部21とを支持し、取付ピース1に嵌合固定された下地部材2のガタツキを防止することができるものである。また、前記取付ピース1の立上り側部12,12は、傾斜状となるように底部11の幅方向両側より折曲形成されていることで、前記下地部材2の両被嵌合片23,23の先端が前記両立上り側部12,12に当接し、下地部材2の幅方向におけるガタツキを防止することができる〔図5(B)参照〕。
前記取付ピース1の両立上り側部12,12は、略垂直状に形成される実施形態も存在する〔図8(A)参照〕。前記取付ピースの両立上り側部12,12が、略垂直状に形成されたことにより、両立上り側部12,12は略平行となり、取付ピース1の力学的強度を向上させることができる。さらに、両立上り側部12,12は、上端側が幅方向外方側に傾斜形成される実施形態も存在する〔図8(B)参照〕。両立上り側部12,12の上端側が幅方向外方側に傾斜形成されたことにより、前記立上り側部12と嵌合片13とは相互に弾性による変形範囲が大きくなり、取付ピース1に対して下地部材2の嵌合取付が比較的小さな力にて容易にでき、作業員の労力を低減させることができる。
次に、取付ピース1の第3実施形態について説明する。この実施形態では、図10,図11等に示すように、前記取付ピース1を構成する部材として、支持台18が加えられたものである。まず、前記底部11,立上り側部12及び嵌合片13からなる部位を嵌合本体部10と総称する。前記支持台18は、図11に示すように、支持板部181と、該支持板部181の幅方向両側に形成された側片182,182から構成されたものであり、前記支持板部181と両側片182,182によって、断面略門形状に形成されている〔図11(A),(C)参照〕。
該側片182は、前記支持板部181に対して略直角に折曲形成されたものであって、略長方形の帯板形状に形成されたものである。両側片182,182は、同一形状であり、特に既設外囲体Aを構成する波形状等の金属又はスレート屋根等の既設外囲体Aや、該既設外囲体Aの既設構造材6や、新設構造材100に対して2点設置などができることによって、安定した設置とすることができる〔図13(A)参照〕。前記支持板部181は、前記嵌合本体部10を回動自在に支持すると共に、該支持台18を介して、前記嵌合本体部10を既設外囲体Aに装着するものである〔図10(A)、図13参照〕。
前記支持板部181は、平坦状に形成され、その略中心箇所に貫通孔183が形成されている〔図11(B),(C),(D)及び(E)参照〕。該貫通孔183には、後述する既設固定ボルト7又はドリルビス等の固着具3の外螺子軸が貫通する〔図10(B),図13(A)参照〕。また、前記嵌合本体部10の底部11には、被連結孔111が形成されている。該被連結孔111は、前記支持台18の貫通孔183と位置が一致するようにして、前記支持板部181上に嵌合本体部10の底部11が設置される。前記被連結孔111にも前記既設固定ボルト7又は固着具3の外螺子軸が貫通する。
前記支持板部181に形成された貫通孔183には、図11(B)乃至(D)に示すように、その内周縁から環状のバーリング加工部184が形成されている。該バーリング加工部184は、前記支持板部181に貫通孔183を穿孔する際に、形成されるバリをそのままの状態で使用してもよいし、円筒形状の部位としてプレス加工等によって成形されても構わない。前記バーリング加工部184は、前記嵌合本体部10の底部11に形成された被連結孔111に遊挿するものである。
前記バーリング加工部184は、略扁平状の円周状立ち上り部として形成され、前記底部11の被連結孔111に、余裕を有して挿入し、前記嵌合本体部10が、前記バーリング加工部184を回転中心として、滑らかに回動することができるようになっている。前記バーリング加工部184は、前記被連結孔111に遊挿した状態で、外方に拡開される。このバーリング加工部184の拡開は、カシメ等の手段によって行われる。バーリング加工部184が拡開によって拡げられた部位を、連結端縁184aと称する〔図11(B),(C)及び(E)参照〕。該連結端縁184aは、前記嵌合本体部10の底部11に形成された被連結孔111の直径より大きくなり、前記支持台18と前記嵌合本体部10とを連結するものである。
このようにして構成された前記支持台18と嵌合本体部10とは、相互に回動自在な構成であると共に、取付ピース1を既設外囲体Aに装着する際に、前記支持台18の貫通孔183と、前記嵌合本体部10の被連結孔111は、ドリルビス等の固着具3或いは既設固定ボルト7を貫通させることができ、これらの固着具3又は既設固定ボルト7を利用し易いものにできる。また、前記支持台18の支持板部181の幅方向両側に形成された両側片182,182の間隔S及び該側片182の高さ方向の高さKを種々異なる寸法としたものを数種類備えることで、既設外囲体Aや、該既設外囲体Aの既設構造材6や、新設構造材100に対応することができ、さらに前記側片182,182を種々のサイズにしたものを備えることで、既設外囲体Aや既設構造材6や新設構造材100等の取付可能部の寸法に対応させることができる。
また、前記支持台18の支持板部181には、貫通孔183のみが形成され、前記嵌合本体部10の被連結孔111側にバーリング加工部112が形成されることもある〔図11(E)参照〕。さらに、前記支持台18の貫通孔183及び前記嵌合本体部10の被連結孔111のいずれにもバーリング加工部184が形成されないこともある。この場合には、前記貫通孔183と被連結孔111に前記固着具3又は既設固定ボルト7が貫通することで、ボルト頭部や、ナット等にて、支持台18と嵌合本体部10とが連結される構造となる。
既設外囲体Aは、例えば金属又はスレート等でその断面形状が、図1(A),図2(A),(B)に示すように、略サインカーブ状の波形に形成されており、実際には複数の既設建築用板材5,5,…より構成されている。ここで、該既設建築用板材5は、断面は波形状に形成されておりその高さ方向の中央より上方側を弧状山形部51とし、また下方側を弧状谷部52と称する。その既設外囲体Aは、図2に示すように、弧状谷部52箇所が母屋,胴縁等の既設構造材6上に固定された既設固定ボルト7,7,…にて固定されている。
前記既設構造材6は、具体的には、図1に示すように、断面略「C」字形状のリップ溝形鋼等が使用されている。またアングル鋼等の略「L」字形状の形鋼材が使用されることもある。既設固定ボルト7は、前記既設構造材6がリップ溝形鋼の場合には、ドリルビスが使用され、前記既設構造材6がアングル材の場合ではフックボルトが使用されることになる。そして、前記既設構造材6に前記既設外囲体Aの弧状山形部51の頂部を貫通し、該弧状山形部51の頂部側から前記既設構造材6にねじこまれて固定される。このように、金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等の取付ピースが取付可能なあらゆる既設外囲体と外囲体の外面へボルトが露出しているあらゆる既設外囲体に溶接することなく取り付けることができる。また、特に図示しないが、既設外囲体Aから屋根板材或いは壁材等の既設建築用板材5が設けられていない既設構造材6、或いは、新たに設置する母屋,胴縁等の新設構造材100に、本発明における取付ピース1を介して新設下地材を取付される本実施形態も存在する。
次に、下地部材2上に施工する屋根,壁等の新設外囲体Bについては、例えば主に金属製の折板建築用板8から構成されるものであって、主板81の幅方向両側部に山形部82,82が形成されたものである。折板建築用板8の第1タイプは、図2(A),(B)に示すように、半山形状の山形部82,82同士を重合させて連結するものであり、その山形部82,82の頂部同士が重合された状態で受金具に装着された剣先ボルトが貫通してナット等の固着具にて溶接することなく固着されるものである。
折板建築用板8の第2タイプは、図7(A)に示すように、前記山形部82,82の頂部の外端より被嵌合屈曲部833が形成されている。該被嵌合屈曲部833は、上方に向かって略逆「L」字形状に形成され、対向する被嵌合屈曲部833,833上にキャップ材834が嵌合固定される。折板建築用板8の第3タイプは、図7(B)に示すように、該山形部82,82に連結部83,83が形成されたものである。該連結部83,83の一方に下馳部831が形成され、他方側の半山形に形成された上馳部832が形成され、該下馳部831及び上馳部832は、共に円弧状に形成され、重合状態で馳締連結される。特に、図示しないが、金属折板、瓦棒、横葺き、ALC、窯業系サイディング等あらゆる新設外囲体も新設下地材に溶接することなく取り付けることができる。
次に、本発明の新設下地材を既設外囲体Aに取り付ける構造について説明する。前記取付ピース1は、既設建築用板材5の複数の弧状山形部51,51,…に設置される。実施形態では、連続する3個(2個又は4個以上でもよい)の弧状山形部51,51,…上に設置される〔図4(A),(B)参照〕。このとき、取付ピース1の逃げ孔15に既設外囲体Aの既設固定ボルト7の突出部が収まるようにする〔図4(B)参照〕。
次に、前記取付ピース1は、その底部11に形成された取付孔14に固着具3によって既設外囲体Aに固着される。前記固着具3は、具体的にはドリルビスが使用され、該固着具3によって弧状山形部51に貫通させると共に、固着具3先端を既設構造材6にねじ込み、取付ピース1を既設外囲体Aに設置固定される〔図4(C)参照〕。このとき、固着具3と取付孔14との間には取付座金4が装着される。取付ピース1は、既設建築用板材5の複数の弧状山形部51,51,…に亘って設置されるものであり、実施形態では、取付ピース1は3個の弧状山形部51に設置されているので、既設建築用板材5が断面波形状であっても前記取付ピース1を安定した状態で設置させることができる。
前記取付ピース1は、既設建築用板材5の長手方向に直交する方向に沿って適宜の間隔をおいて設置される。前記取付ピース1は、長手方向に短尺に形成され、前記下地部材2は長手方向に長尺に形成され、1本の下地部材2が複数の前記取付ピース1,1,…にて嵌合固定(固着)される。図6(A)は、既設外囲体Aに取付ピースが所定間隔をおいて列を構成して配置された平面略示図である。図6(B)は、既設外囲体に配置された取付ピースに下地部材2が、固着具を使用しないで簡単且つ強固に嵌合固定され、新設外囲体Bが施工されている状態の平面略示図である。本発明の新設下地材は、主に既設外囲体Aを既設屋根としたものであり、下地部材2は母屋とし新設外囲体Bは新設屋根としているが、新設下地材を胴縁とし、既設外囲体Aを既設壁とし、新設外囲体Bを新設壁とすることもある(図9参照)。
第3実施形態の取付ピース1は、前記下地部材2を既設外囲体Aに対して横方向だけでなく、縦方向及び斜め方向のあらゆる傾斜角度に装着することができる〔図10(A),図14(A)参照〕。特に、既設外囲体Aを構成する既設構造材6が正確に水平でなく、傾斜状となっている場合や、或いは下地部材2を傾斜状態に設置する必要がある場合に使用される。まず、第3実施形態の取付ピース1を既設外囲体Aに装着するには、前記支持台18が弧状山形部51の頂部箇所に設置される〔図12(C),(D)参照〕。このとき、前記支持台18の両側片182,182の下端縁は、弧状山形部51の頂部から左右両側の所定の位置に接触する。
これによって、既設外囲体Aが構成する平面に対して、支持台18の支持板部181は常時、略平行な状態にすることができる。そして、前記支持台18の貫通孔183と、前記嵌合本体部10の被連結孔111に、既設外囲体Aの既設固定ボルト7の外螺子軸が貫通するようにして、補強座金91によって前記バーリング加工部184を覆いつつ、ナット92にて締め付ける。前記補強座金91には、貫通孔91aが形成されており、前記既設固定ボルト7又は固着具3の外螺子軸が貫通することができるようになっている。また、既設固定ボルト7が使用されない場合には、ドリルビス等の固着具3を使用するものである。
このときは、前記支持台18を弧状山形部51の頂部に設置し、前記補強座金91でバーリング加工部184を覆いつつ、前記固着具3を被連結孔111及び貫通孔183に貫通させ、固着具3先端を既設外囲体Aを構成する既設構造材6にねじ込み、前記取付ピース1を既設外囲体Aに設置固定する〔図12(C)参照〕。また、前記固着具3の代わりに既設固定ボルト7を使用して、前記取付ピース1を既設外囲体Aに設置固定することもできる〔図12(D)参照〕。この場合には、前記既設固定ボルト7を前記被連結孔111及び貫通孔183に貫通させ、前記補強座金91を介してナット92にて締め付ける。
このようにして、複数の弧状山形部51に亘って設置された取付ピース1に下地部材2が嵌合固定される〔図13(A)参照〕。そして、前記下地部材2を母屋とし、この母屋に新設外囲体Bを新設屋根として施工する〔図13(B)参照〕。さらに、図示しないが、前記支持台18及び嵌合本体部10に共にバーリング加工部184(112)が形成されず、支持台18と嵌合本体部10とが分離している場合には、まず前記支持台18が弧状山形部51の頂部に設置され、前記支持板部181に嵌合本体部10の底部11が設置され、貫通孔183と被連結孔111との位置を一致させ、前記既設固定ボルト7又は固着具3の外螺子軸を貫通させて、固着するものである。
取付ピース1が複数の弧状山形部51,51,…に設置され、それぞれの弧状山形部51に設置された取付ピース1の嵌合本体部10を前記支持台18の支持板部181上にて同一の角度に設定する。このときそれぞれの取付ピース1の嵌合本体部10は、略同一の傾きとなれば良い。そして、複数の取付ピース1に、下地部材2を嵌合する。図10(A)は、既設外囲体Aに下地部材2を母屋としたときに、屋根とした既設外囲体Aの横方向に対して斜め状に設置したものであり、既設外囲体Aの既設構造材6が傾斜している状態である。
図14は、前記下地部材2が既設構造材6に対して斜め,横,縦のあらゆる方向に設置されることができることを示すものであり、図14(A)では、その既設構造材6に合わせて第3実施形態の取付ピース1を既設外囲体Aに装着したもので、前記下地部材2は、既設外囲体Aを構成する既設建築用板材5の長手方向に直交する方向(横方向)に対して、角度θで傾斜していることが示されている。図14(B)は、第3実施形態の取付ピース1によって、下地部材2を既設外囲体Aの横方向に装着した構成である。図14(C)は、第3実施形態の取付ピース1によって、下地部材2を既設外囲体Aの縦方向に装着した構成である。
本発明における第3実施形態の取付ピース1は、前述したように、新設下地材は、前記既設外囲体A上に施工されるものである。また、既設外囲体Aから屋根板材或いは壁材等の既設建築用板材5が設けられていない既設構造材6、或いは、新たに設置する母屋,胴縁等の新設構造材100に、本発明における新設下地材が直接施工される実施形態も存在する。この実施形態では、既設構造材6或いは新設構造材100は、種々の鋼材が使用され、具体的な鋼材としては、断面円形状の鋼製管〔図15(A)参照〕,C形鋼〔図15(B)参照〕,I形鋼〔図16(A)参照〕、或いはH形鋼〔図16(B)参照〕等が使用される。
既設構造材6或いは新設構造材100に断面円形状の鋼製管が使用される実施形態では、前記取付ピース1の支持台18の両側片182,182は、管の弧状部分に跨るようにして配置され、ドリルビス等の固着具3によって、前記支持台18が既設構造材6或いは新設構造材100に固着されるものである。また、既設構造材6或いは新設構造材100にC形鋼〔図15(B)参照〕,I形鋼〔図16(A)参照〕が使用される実施形態では、前記取付ピース1の支持台18の両側片182,182は、C形鋼又は,I形鋼の平坦部分に跨るように設置され、前記支持板部181の裏面側に平坦部が当接して、固着具3によって固着される。さらに、既設構造材6或いは新設構造材100にH形鋼〔図16(B)参照〕が使用される場合には、前記支持台18の両側片182,182がH形鋼の両フランジ間に亘って配置され、前記支持板部181の裏面側に両フランジが当接するようにして支持され、前記固着具3にて支持固定される。